120 LAW FORUM ローワォーラ 4 最新立法インフォメー ション 日公認心理師法 [ 平成 27 年 9 月法律第 68 号 ] 略し、 3 日衆・本会議趣旨説明の後 同日同委員長提出、委員会審査を省 国会 ) 衆・文部科学委において起草、 [ 審議経過 ] 2015 年 9 月 2 日 ( 189 政令で定める日 ( 2015 年 9 月 16 日 ) から 2 年以内で [ 施行期日 ] 一部を除き、公布日 ける。 る受験資格等について経過措置を設 する。⑤既存の心理職資格者等に係 を用いた名称を使用することを禁止 理師の名称または心理師という文字 る。④公認心理師でない者が公認心 を受けなければならないこととす 係る主治医があるときは、その指示 関する支援を要する者に当該支援に 連携を保たなければならず、心理に って医師、教員その他の関係者との 課するとともに、業務を行うに当た 失墜行為を禁止し、秘密保持義務を する。③公認心理師について、信用 資格を有する者に対して試験を実施 および厚生労働大臣 ) が一定の受験 について、主務大臣 ( 文部科学大臣 心理師として必要な知識および技能 うことを業とする者をいう。②公認 状態の観察、その結果の分析等を行 心理に関する支援を要する者の心理 る専門的知識および技術をもって、 の他の分野において、心理学に関す を用いて、保健医療、福祉、教育そ は、登録を受け、公認心理師の名称 [ 趣旨・内容 ] ①「公認心理師」と 心理専門職の国家資格 9 日参・本会議可決、 8 日趣旨説明および質 可決、全会一致。 9 月 7 日参・文教 [ 審議論点 ] 成立、全会一致。 疑の後可決、 科学委付託、 化の意義等 国会 ) 井坂信彦議員他 5 名提出、同 [ 審議経過 ] 2015 年 5 月 26 日 ( 189 月 16 日 [ 施行期日 ] 一部を除き、 2015 年 9 備のための施策を講ずる。 の多様化の推進その他雇用環境の整 的地位への登用等の雇用管理の方法 の就業形態の設定、採用および管理 が不当に妨げられないよう、労働者 望する雇用形態により就労すること がその意欲と能力に応じて自らの希 む措置等を講ずる。⑤国は、労働者 図り、 3 年以内に法制上の措置を含 遇および均衡の取れた待遇の実現を 容、責任の程度等に応じた均等な待 される労働者との間において業務内 を講することにより、派遣先に雇用 用等の待遇についての規制等の措置 教育訓練の実施、福利厚生施設の利 派遣労働者について、賃金の決定、 その他の施策を講ずる。④政府は、 者の待遇に係る制度の共通化の推進 働者および通常の労働者以外の労働 にするため、事業主が行う通常の労 相違が不合理なものとならないよう う。③国は、雇用形態による待遇の 待遇の相違等について調査研究を行 務の相違および賃金、教育訓練等の ②国は、労働者の雇用形態による職 て行われることを基本理念とする。 ることを可能とすること等を旨とし の従事する職務に応じた待遇を受け 労働者が、雇用形態にかかわらずそ じた待遇の確保等のための施策は、 [ 趣旨・内容 ] ①労働者の職務に応 [ 平成 27 年 9 月法律第 69 号 ] 関する法律 確保等のための施策の推進に 労働者の職務に応じた待遇の 日衆・厚生労働委付託、 27 日趣旨説 明、 29 日、 6 月 2 日、 10 日および 12 日質疑、 19 日修正議決、同日衆・本 会議討論の後委員長報告のとおり修 正議決、民主、共産、生活、社民反 対。 7 月 8 日参・厚生労働委付託、 14 日趣旨説明、 8 月 18 日、 19 日およ び 9 月 1 日質疑、 8 日質疑および討 論の後可決、 9 日参・本会議討論の 後可決、成立、民主、共産、社民、 生活等反対。 [ 審議論点 ] 労働者の職務に応じた 待遇の確保のための具体的な方策、 衆議院における修正の趣旨等 勤労青少年福祉法等の一部を 改正する法律 [ 平成 27 年 9 月法律第 72 号 ] [ 趣旨・内容 ] ①題名を「青少年の 雇用の促進等に関する法律」に改め る。②公共職業安定所は、一定の労 働関係法令違反の求人者からの求人 の申込みを受理しないことができ る。③学校卒業見込者等を条件とす る募集を行う者は、青少年の適職の 選択に資する情報を提供するように 努める。また、募集に応じる者等の 求めに応じ、当該情報を提供しなけ ればならない。④中小企業の事業主 について、青少年の職場への定着の 促進等に関する取組等の実施状況が 優良なものであること等の基準に適 合する旨の認証制度を創設する。⑤ 国は、無業青少年に対し、職業生活 に関する相談の機会の提供、職業生 活における自立支援施設の整備等の 措置を講ずるように努める。⑥職業 生活設計の策定等を支援するキャリ アコンサルタントの登録制度を創設 する。⑦国は、労働者の職務経歴等 記録書 ( ジョブカード ) の様式を定 法学セミナー 2016 / 01 / no. 732
■提出の背景 最近、「ドローン」と呼ばれる無人航空機の利用 が活発になってきており、これに設置した小型カメ ラを使って上空から撮影した映像がニュース番組等 で利用されることが多くなっている。また、ドロー ンを使って離島に医療物資等を配達することが検討 されるなど、ドローンの様々な分野における活用へ の期待が高まっている。 その一方で、 2015 年 4 月には、首相官邸の屋上に 落下したドローンが発見されるという事件が発生し た。このほか、ドローンの落下事故が各地で発生し ており、その飛行の安全性に関する懸念が示され、 法整備や規制の必要性が指摘された。 こうした状況を受け、政府は、緊急的な措置とし て、ドローンの基本的な飛行のルールを定めること を優先することとし、「航空法の一部を改正する法 律案」を 2015 年 7 月 14 日に国会に提出した。同法案 は、同年 9 月 11 日に可決、成立した ( 施行期日を定 める政令により、同年 12 月 10 日から施行 ) 。 ■改正法の概要 航空法において「無人航空機」の定義規定が設け られた。具体的には、「無人航空機」とは、航空の 用に供する飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船 その他政令で定める機器であって構造上人が乗るこ とができないもののうち、遠隔操作・自動操縦によ り飛行させることができるもの ( 国土交通省令で定 める一定のものを除く。 ) をいうものとした。 無人航空機の飛行の禁止空域が定められた。すな わち、①無人航空機の飛行により航空機の航行の安 全に影響を及ほすおそれがある国土交通省令で定め る空域および②当該空域以外の空域であって、国土 交通省令で定める人・家屋の密集している地域の上 空においては、国土交通大臣の許可を受けた場合を 除き、無人航空機の飛行を禁止した ( 違反者には、 50 万円以下の罰金 ) 。 無人航空機 ( ドローン ) の 飛行ルールを整備 航空法の一部改正 法学セミナー 2016 / 01 / no. 732 009 LAW FORUM [ ローワォーラ 立法の話題 無人航空機の飛行の方法についても定められた。 国土交通大臣の承認を受けた場合を除き、①日出か ら日没までの間において飛行させること、②無人航 空機およびその周囲の状況を目視により常時監視し て飛行させること、③無人航空機と地上・水上の人・ 物件との間に距離を保って飛行させること等の方法 により無人航空機を飛行させることを義務付けた ( 違反者には、 50 万円以下の罰金 ) 。 なお、都道府県警察等の国土交通省令で定める者 が航空機の事故等に際し捜索、救助等の緊急性があ る目的で行う無人航空機の飛行については、禁止空 域および飛行の方法の規制が適用されないこととさ れている。 ・今後の展望等 無人航空機に関する措置としては、今回成立した 政府立法に先行して、議員立法で「国会議事堂、内 閣総理大臣官邸その他の国の重要な施設等及び外国 公館等の周辺地域の上空における小型無人機の飛行 の禁止に関する法律案」が提出されていた。この法 案は、上空における小型無人機の飛行が禁止される 周辺地域の対象施設として、原案に、原子力事業所 を追加する等の修正をした上で衆議院を通過したも のの、参議院では継続審議とされた。 今回の改正法は、緊急的な措置であり、附則には、 政府が、関連する技術の進歩の状況、無人航空機の 利用の多様化の状況等を勘案し、無人航空機の飛行 の安全に一層寄与し、かっ、無人航空機を使用する 事業の健全な発展に資する方策について検討を加え る旨の規定が置かれている。この規定に基づき、多 方面にわたる関係者との調整を行った上で、無人航 空機の機体の機能の改善、操縦者の技量の確保等を しつつ、事業の健全な発展を図るために必要な措置 が講じられることが想定されている。 無人航空機について、今後、新たな産業・サービ スの創出等に向けた検討が行われ、その有効活用が 飛躍的に進むことを期待したい。
め、その普及に努める。⑧技能検定 の実技試験の実施方法を見直す。 [ 施行期日 ] 2015 年 10 月 1 日 ( ②・ ③は 2016 年 3 月 1 日、⑤・⑥・⑧は 同年 4 月 1 日 ) [ 審議経過 ] 2015 年 3 月 17 日 ( 189 国会 ) 内閣提出、 4 月 13 日参・厚生 労働委付託、 14 日趣旨説明、 16 日質 疑の後可決、 17 日参・本会議可決、 1 名反対。 8 月 28 日衆・厚生労働委 付託、 9 月 2 日趣旨説明、 4 日質疑 の後可決、 11 日衆・本会議可決、成 立、全会一致。 [ 審議論点 ] 適職の選択に資する情 報の積極的な提供の重要性、労働関 係法令違反企業からの求人不受理の 在り方、職業能力の開発の必要性等 労働者派遣事業の適正な運営 の確保及び派遣労働者の保護 等に関する法律等の一部を改 正する法律 評成 27 年 9 月法律第 73 号い [ 趣旨・内容 ] ①一般労働者派遣事 業と特定労働者派遣事業の区別を廃 止し、労働者派遣事業を全て許可制 とする。②厚生労働大臣は、労働者 派遣法の規定の運用に当たり、派遣 就業は臨時的かつ一時的なものであ ることを原則とするとの考え方を考 慮しなければならない。③業務単位 の期間制限を廃止し、事業所単位の 期間制限 ( 派遣先の同一の事業所に おける派遣労働者の受入れは 3 年を 上限とし、これを延長するときは、 過半数労働組合等からの意見聴取を 必要とする。意見があった場合には 対応方針等の説明義務を課す。 ) お よび個人単位の期間制限 ( 派遣先の 同一の組織単位ごとの業務における 同一の派遣労働者の受入れは 3 年を 上限とする。 ) を設ける。④派遣元 事業主に対し、同一の派遣労働者に 係る期間制限の上限に達する見込み がある派遣労働者の雇用安定措置 ( 派遣先への直接雇用の依頼等 ) を 義務付ける。⑤派遣元事業主に対し、 派遣労働者への計画的な教育訓練等 の実施や均衡待遇を確保するために 考慮した内容についての説明を義務 付ける。⑥派遣先に対し、派遣労働 者について、派遣元事業主の求めに 応じ、当該派遣労働者と同種の業務 に従事する労働者が業務遂行に必要 な能力を付与するための教育訓練に ついては、派遣労働者に対しても実 施するよう配慮することを義務付け る。 [ 施行期日 ] 一部の規定を除き、 2015 年 9 月 30 日 [ 審議経過 ] 2015 年 3 月 13 日 ( 189 国会 ) 内閣提出、 5 月 12 日衆・本会 議趣旨説明および質疑、同日衆・厚 生労働委付託、 13 日趣旨説明、 15 日、 20 日、 27 日、 28 日、 29 日、 6 月 2 日、 10 日および 12 日質疑、 19 日討論の後 可決、同日衆・本会議討論の後可決。 7 月 8 日参・本会議趣旨説明および 質疑、同日参・厚生労働委付託、 14 日趣旨説明、 30 日質疑、 8 月 4 日、 11 日、 20 日、 26 日、 27 日、 9 月 1 日 および 3 日質疑、 8 日質疑および討 論の後修正議決、 9 日参・本会議討 論の後委員長報告のとおり修正議 決、民主、維新、共産、無所、社民、 生活等反対。 9 月 11 日衆・本会議討 論の後修正に同意、成立、民主、維 新、共産、生活、社民反対。 [ 審議論点 ] 労働者派遣事業を全て 許可制にする意義、派遣労働者の正 社員化に向けた取組、新たな期間制 限の在り方と過半数労働組合等から 121 の意見聴取の実効性、派遣労働者の 雇用安定措置の在り方等 医療法の一部を改正する法律 1 [ 平成 27 年 9 月法律第 74 号 ] [ 趣旨・内容 ] ①医療機関の業務の 連携を推進するための方針を定め、 当該方針に沿って、参加する法人の 医療機関の業務の連携を推進するこ とを目的とする一般社団法人は、地 域医療連携推進法人として都道府県 知事の認定を受けることができる。 当該方針において、介護事業等の地 域包括ケアシステムの構築に資する 事業の連携を推進する旨を記載した 場合は、当該事業等を行う法人を参 加法人とすることができる。②一定 の基準に該当する医療法人に対し、 計算書類について、会計基準に従っ た作成、公認会計士等による外部監 査の実施、公告等を義務付ける。③ 医療法人への理事の忠実義務、任務 懈怠時の損害賠償責任等を規定する ほか、社員総会等の機関に関する規 定を整備する。 [ 施行期日 ] 一部を除き、公布日 ( 2015 年 9 月 28 日 ) から 2 年以内で 政令で定める日 [ 審議経過 ] 2015 年 4 月 3 日 ( 189 国会 ) 内閣提出、 7 月 28 日衆・厚生 労働委付託、 29 日趣旨説明、 8 月 5 日質疑および討論の後可決、 7 日衆・ 本会議可決、民主、維新、共産、生 活、社民反対。 9 月 9 日参・厚生労 働委付託、 10 日趣旨説明、 15 日質疑 および討論の後可決、 16 日参・本会 議可決、成立、民主、維新、共産、 社民、生活等反対。 [ 審議論点 ] 地域医療連携推進法人 制度創設の目的と必要性、その業務 の在り方、地域医療への影響等
064 れば、偏在により調剤の確保と医薬品の適正な供給 は期し難く、濫立により濫売・廉売等の過当競争が 生じ経営カ坏安定になり、ひいては施設に不備・欠 陥を生じ、品質の低下した医薬品の販売等の悪影響 をきたす恐れがあるので、適正配置規制は合憲であ る等、主張した。 1 審 ( 広島地判昭和 42 年 4 月 17 日行裁例集 18 巻 4 号 501 頁 ) は、憲法上の論点に立ち入らず本件不許可 歴史学からのポイント解説 そもそも、なぜ適正配置規制が薬事法に加えら れたのだろうか。本件改正当時の厚生省薬務局薬 事課長による解説書では、 Y の主張と同じく医薬 品の乱売・廉売等の過当競争による悪影響のおそ れを理由に挙げるが、さらにはその背景としてス ーパーマーケット等の新規業者による医薬品小売 業への参入を指摘する 13 ) 当初厚生省は「中小企業団体の組織に関する法 律」 ( 昭和 32 年法律第 185 号 ) にもとづく医薬品小 売商業組合を都道府県ごとに設立させ、そこで価 格を含む販売調整事業を担わせようと試みた。し かしスーパーマーケットを中心とするアウトサイ ダーの存在によって調整効果は充分に発揮されな かった。 そこで同省が次に用いたのは、薬局等開設許可 。←の際の行政指導による調整であった 14 ) 。すなわち、 「国民に対して良質な医薬品を適正に、かっ、必 要に応じて支障なく供給する社会的使命をもっ て」いる薬局等は「全国的に適正に配置されるこ ~ とが望ましい」として、「周辺の薬局等の経営を 圧迫」する「スーパー・マーケット等の医薬品販 売業の許可にあたっては、特に慎重に検討し、必 要に応じて県当局があっせんを行ない、許可申請 者と地元商業組合等薬業団体と協議せしめ両者協 調のもとに事業を実施し得るよう指導するととも に、その協議事項が遵守されるための実行確認の 措置をも講ずること」を都道府県に通知したので ある。いくつかの都府県では行政指導の際の内規 として適正配置規制が定められ、これがようやく 実効を挙げた。 法学セミナー 2016 / 01 / no. 732 処分を取消した ( x 勝訴 ) のに対し、原審 ( 広島高 判昭和 43 年 7 月 30 日行裁例集 19 巻 7 号 1346 頁 ) は、 Y の主張を採用し、薬事法 6 条 2 ・ 4 項および本件条 例 3 条を合憲と判断した ( その他の諸論点も X 敗訴 ) 。 これを受け X が上告。 しかし、行政不服審査法 ( 昭和 37 年法律第 160 号 ) によって行政庁の不作為に対する救済が講じられ ると、行政指導を理由として薬局等の開設許可を 保留することが困難となった 15 ) 。薬局等の開設許 可は、構造設備が法定基準に合致し、申請者に欠 格事由がなければ当然与えられるべきという、い わゆる羈束行為であったためである 16 よってよ り直接的に調整を裏付けるもの、すなわち法的根 拠が必要となった。これが適正配置規制を加える 本件改正へとつながる。 なお、本件改正については、自民党所属参議院 議員の高野ー夫 ( 日本薬剤師会会長 ) および中山 福蔵 ( 全国薬業士連合会会頭 ) が中心となった議 員立法によって成立した点に注意したいの。議員 立法は、医薬品小売業界の「スーパーマーケット の進出や乱売薬店の増加で、薬局の生活圏が脅か されているとした声を受け入れた結果であっ た。 しかし、その立法に際しては「参議院法制局も 衆議院法制局も、また内閣法制局も、いずれも、 いかなる業種であろうとも適正配置は憲法違反で ある、公衆浴場の適正配置を憲法違反でないとす る最高裁判所の判例もまちがっているという見解 をとっていたので、薬局の適正配置も同様だとの 考え方であって、意見の一致をみることが容易に できなかった期」と高野が回顧している点は留意 される。適正配置規制は当初から憲法違反のおそ れがあると考えられており、だからこそ閣法では なく議員立法というかたちで制定されたといえ よう ) 。
法学セミナー 2016 / 01 / no. 732 074 なった日から二年を経過しない者 0 住民との関係が加わった許可法 略 「欠格事由」は、いわば消極的な許可基準です。欠 [ 1 ] ペット霊園規制条例の特徴 格事由に該当すれば「許可の基準」に照らすまでもな 条例で許可制度を定める場合には、関係する住民の く排除されます。そのため、「許可の基準」の前に置 意見を聞く手続などカ齟み込まれることも多いもので す。許可する行斑ヤが意見を聴くのではなく、許可を かれているのです。 求める者が住民の意見を聴く手続が定められている場 ■許可後に必要となる規定 合、条文が少々、複雑となります。ただ、条文が複雑 になっても、いいえ、複雑になればなるほど、「時系 〇民間事業者による信書の送津に関する法律 第 10 条低名等の変更 ) 列 ( 手続の川頁 ) 」というシンプルな原則に従い、条文 第 11 条 ( 事業計画の遵守義務 ) を組み立てることが大切です。 第 12 条 ( 事業計画の変更 ) こうした例として「千葉市ペット霊園の設置の許可 10 条から 12 条までは、申請書に記載された事項に 等に関する条例」があります。題名のとおり、ペット ついての変更手続などが定められています。記載事項 霊園に関する規制条例です。墓地などについての規制 の変更については、原則として、総務大臣への「届出」 法としては「墓地、埋葬等に関する法律」という法律 が必要です。ただ、「事業計画」についてだけは、そ がありますが、ペット霊園は対象としていません。で の重要から「届出」ではなく、総務大臣の「認可」が すから、この条例は市独自の規制ということができま 必要とされています。これが 12 条です。「『事業計画 す。法律と交差する部分がありませんので、手続のす の変更』の方が重要なので『氏名等の変更』より先に べてが条例で完結することになります。以下、実体的 規定する」という選択はあるかもしれませんただ 規定部分の目次を場面に分けて掲載します。 「届出」が原則で、例外的に「認可」が必要な場合が 〇千葉市ペット霊園の設置の許可等に関する条例 午可の根拠規定 第 4 条 ( 設置等の許可 ) あるのですから、「原則から例外へ」の考え方に従い、 申請前の手続 第 5 条 ( 事前協議 ) 届出ですむ「氏名等の変更」を先に規定しています。 第 6 条 ( 標識の設置等 ) 第 7 条 ( 説明会の開催等 ) 気になるのが 11 条の「事業計画の遵守義務」です。 午可の申請・許可 第 8 条 ( 許可の申請 ) これは変更手続に関する規定ではありません。ですか 第 9 条 ( 許可の基準 ) 第 10 条 ( 許可等の通知 ) 許可後、設置までの手続 ら、許可が得られたあとの場面 ( 「許可の担の次 ) 第 11 条 ( 工事着手届 ) 第 12 条 ( 工事完了届等 ) に置くこともできたように思います。ただ、「事業計 第 13 条 ( 維持管理 ) 設置後の規定 画の変更」の手続に引っ張られてこの場所で規定した 第 14 条 ( 地位の承継 ) 第 15 条 ( 中止、変更及び廃 のでしよう。たとえば、「書類はコピーしてみんなに 止の届出 ) 配って、原本は田中部長に返しておいてね。そういえ 第 16 条 ( 報告及び検査 ) 監督規定 第 17 条改善勧告 ) ば田中部長、近頃元気ないようだけれど何か聞いてい 第 18 条改善命令 ) 第 19 条 ( 許可の取消し ) ない ? いずれにしても、原本を部長に渡す際に、次 第条使用禁止命令 ) 第 21 条公表 ) の指示を仰いでおいてね」という場合の「そういえば 田中部長 ~ 」に当たるようなものです。さて、その後 [ 2 ] 申請前の手続など の規定も見てみましよう。 先ほどの信書便法と比べてみると、「許可の申請」 〇民間事業者による信書の送達に関する法律 第 13 条 ( 事業の譲渡し及ひ譲受け等 ) の前に一連の規定があるのが分かります。許可の申請 第 14 条 ( 相続 ) をしようとする者 ( 申請予定者 ) にも、事前の手続を 第 15 条 ( 事業の休止及ひ廃止並びに法人の解散 ) 課しており、それに関する手続が定められているので 13 条、 14 条は事業を続ける場合であり、 15 条は事 す。ペット霊園は、その必要性を理解する住民であっ 業をやめる ( 休止の場合も含めて ) 場合ということに ても、「自分の家の裏庭 ( 近く ) には存在してほしく なります。事業の許可という流れで定められている一 ない (Not ln My Backyard) 」と考えがちな施設の 群の条文はここで終わりとなります。 ひとつです。そのため、住民の不安を減らしトラブル 一三ロ 1 三ロ
063 憲法判例再読 02 歴史学からのポイント解説 学者であった岡田与好が疑問を投げかけるところ 当該事件は、地方裁判所への提訴が昭和 39 年、 から論争は始まる。岡田はい歴史的観点から「営 高度成長期のただ中におけるスーバーマーケット 業の自由」は「国家からの自由」としての基本的 という、非常に歴史的特色ある舞台設定である。 人権ではなくむしろ公序 (PubIic PoIicy) であっ 大量生産・大量消費の時代を迎え、当時スーパー たとして、国家不千渉主義を経済的自由と把握す マーケットに代表される大型量販店の出店が急増 ることを当然としてきた法学界を痛烈に批判した。 した。「流通革命 2 ) 」と呼ばれた、中間業者の排 同論争は「日本の学界風土では珍しく論争らし ー除やセルフサービスの販売方式、また大幅な値引 い論争に発展した 4 ) 」 : と評されたように華々しい き販売、さらには多品種を扱うという手法は、 ものであった一方、法学と経済史との間での学問 となっては驚くものではないが当時は新規かつ大 上の対話不全ゃある種の感情的なすれ違いもまた きな衝撃であった。それは医薬品小売業界にとっ 浮き彫りとなり、その評価は分かれた。しかし近 ても例外ではなく、スーパーマーケットの新規参 年では、あらためて法学的観点から同論争を再評 入は既存小売業者にとって深刻な問題となってい 価する向きも見られる 5 ) た。というのが、当該事件の時代的背景要素の一 これを踏まえて歴史学からは、本件不許可処分 つである。 に至るまでの背景要素を探るとともに、一高度成長 さて、本最高裁判決にて主題となる経済的自由 期の日本がどのような ( 法的 ) 、競争秩序のもとに に関しては、まさに同時期の昭和 40 年代半ばから あったのかを補足したい。これによって「営業の 50 年代にかけて、法学と経済史の間にいわゆる「営 業の自由」論争が起こったことに注意したい 3 ) 。 自由」の実際が、当時どのようなものであったか 当時の学説上、当然に「職業の自由」に含まれる を考える一助になればと思う。 と解されていた「営業の自由」について、経済史 がおおむね百メートルに保たれているものとする。 ロ事案 ただし、知事は、この適用に当たっては人口、交通 事情、その他調剤及び医薬品の需給に影響を与える 各般の事情を考慮し、広島県薬事審議会の意見を聞 昭和 38 年法律第 135 号による一部改正 ( 同年 7 月 12 かなければならない」と定めていた 12 ) 日施行。以下、本件改正という ) 後の薬事法 6 ) によれ X は、上記「あらすじ」で述べた経緯で本件不許 ば、薬局等の開設は、本件改正前からの許可条件 ( 本 可処分の取消しを求めた。憲法上の論点に関する当 件改正後の 6 条 1 項 ) 7 ) に加え、薬局等の設置場所が 事者の主張を見ると、 X は、①適正配置規制は既存 配置上適正でなければ原則として許可されないこと 業者の利益保護に過ぎす、すぐ近くに薬局があるこ になり ( 本件改正により追加された 2 項 ) 8 ) 、その適正 とや、激しい業者間竸争により安価に薬品を入手で 配置の基準は各都道府県条例で定めるとされた ( 同 きることは国民の利益となる、②薬局は、製品を製 4 項 ) 9 ) 。厚生省 ( 当時 ) は通達で上記条例の「準則」 造せず販売するのみなので、公衆浴場の距離制限と を都道府県知事に通知し。 ) 、各都道府県は、「おお は性質が異なり、公衆浴場法判決 ( 昭和 30 年 1 月 26 むねこの条例準則に従って」条例を制定した 11 ) 。広 日刑集 9 巻 1 号 89 頁 ) は援用できない、③ Y の主張 島県も、「薬局等の配置の基準を定める条例」 ( 昭和 は事実や合理的予測に基づかず単に想像上のもので 38 年広島県条例第 29 号。以下、本件条例という ) を定め、 ある等、主張した。これに対し Y は、国民の保健衛 その 3 条は、「・・・・・・薬局等の設置場所の配置の基準 生に重大な関係を持っ点で公共性がある薬局の開設 は、薬局開設の許可等を受けている適用地域内の既 を業者の自由に任せ、その偏在・濫立を防止する等 設の薬局等・・・・・・の設置場所から新たに薬局開設の許 その配置の適正を保っための必要な措置を講じなけ 可等を受けようとする薬局等の設置場所までの距離
066 法学セミナー 2016 / 01 / no. 732 を、適正配置規制は含まない。 は、本件規制とは別に、その対策が経済政策的観点 適正配置規制の上記目的は、公共の福祉に合致し、 からなされるべきである。 かっ、それ自体としては重要な公共の利益なので、 仮に、上記の危険発生の可能性を認めるとしても、 上記目的を達成するための手段として、適正配置規 行政上の監督体制の強化等の手段により危険を有効 に防止し得る。監督員の監視の限界はあるが、競争 制が必要性および合理性を有するかが問題となる。 激化地域を集中的に監視すればよく、医薬品の貯蔵 の不備は立ち入り検査を適宜行えばよいし、医薬品 ④適正配置規制の必要性および合理性 の製造番号の改ざんなどは薬局に当該医薬品が到着 適正配置規制は、開業そのものを禁止するのでは する前段階で生じることなのだから、これらの監督 なく設置場所を制限するだけではある。しかし、薬 により防止できないような「専ら薬局等の経営不安 局を自己の職業とし、これを開業する場合には、経 営上の採算のほかに諸般の生活上の条件を考慮して 定に由来する不良医薬品の供給の危険が相当程度に おいて存すると断じるのは、合理性を欠く」。 開業場所を選択するのが通常であり、特定の場所で さらに、医薬品販売の際の指導・注意の不備は薬 開業できないことは開業そのものの断念にもつなが り得る以上、適正配置規制を通じた開業場所の地域 局の経営不安定化により生じるとは思われないし、 的制限は、「実質的には職業選択の自由に対する大 医薬品の乱売により医薬品の濫用が生じ得るとして きな制約的効果を有する」 27 ) 。 も、それは医薬品の過剰生産・販売合戦・誇大広告 Y は、適正配置規制が無ければ、薬局等が偏在し、 により生じるものなので、誇大広告の規制や一般消 過当な販売競争が行われ、その結果、医薬品の適正 費者への啓蒙強化で対処すればよく、「薬局等の設 供給上種々の弊害を生じると主張する 置場所の地域的制限によって対処することには、そ の合理性を認めがたい」。そして、「無薬局地域等の ( i ) しかし、不良医薬品の供給防止のために、薬事法 や薬剤師法は、罰則や許可取消等の制裁や行政上 解消を促進する目的のために設置場所の地域的制限 のような強力な職業の自由の制限措置をとること の是正措置、そして強制調査などの規制を設けてお り、これらが遵守されれば「不良医薬品の供給の危 は、目的と手段の均衡を著しく失するものであって、 険の防止という警察上の目的を十分に達成すること とうていその合理性を認めることができない」。 ができるはずである」。もっとも、規制をいくら強 ⑤結論 化しても規制に対する違反そのものを根絶すること 適正配置規制は、不良医薬品の供給の防止等の目 はできないので、さらに予防的措置を講じる必要性 的のために必要かっ合理的な規制とはいえず、立法 が全く無いとはいえない。しかし、適正配置規制の 府の合理的裁量の範囲を超え、違憲無効である。 ような強力な規制が憲法上許されるためには、この 「措置による職業の自由の制約と均衡を失しない程 度において国民の保健に対する危険を生じさせるお ロ憲法学上の意義 それのあることが、合理的に認められることを必要 本判決は、小売市場許可制判決とあいまって、職 とする」。 ( ⅱ ) 「競争の激化ー経営の不安定ー法規違反という因 業の自由の制約に対する最高裁の審査手法を定式化 果関係に立つ不良医薬品の供給の危険が、薬局等の した点で重要であるとしばしば指摘されてきた四 ) 。 段階において、相当程度の規模で発生する可能性が ①規制目的二分論とその批判 ある」との Y の主張は、「単なる観念上の想定にす ぎず、確実な根拠に基づく合理的な判断とは認めが 本判決の直後は、職業の自由規制の審査につき、 小売市場許可制判決の判示と本判決の判旨②後半 たい」。実際上どの程度にこのような危険があるか および③の部分を併せ、 ( ア ) 積極目的は、規制手 は明らかにされておらず、薬局経営者や薬剤師が経 済的理由のみから制裁を伴う法規違反を行うことは 段が不合理であることが明白な場合に限り違憲 ( 明 白性の原則 ) 、 ( イ ) 消極目的は、重要な公共の利益 容易には考えられないからである。また、乱売や不 当な取引方法等の医薬品の流通過程における弊害 のために必要かっ合理的な措置であり、より緩やか 、二 11
C 0 1 u m n あったが、現在ではそのような不安はほとんどなくな・が、平成 1 6 年には過半数を超え、 24 年には 53.6 % まで 数秒前の会話も忘れてしまう人もいるが、そのような : 需要は増えることはあっても減ることはないと思われ 特急の車掌さんをしていた方等々、みなさん、当時の : ば、私自身の事案でも成年被後見人の財産が 8 , 000 円 で、お話を聞いている私も温かい気持ちになることが・ 8 月分概数 ) 」によると、生活保護世帯を世帯類型別 できる。また、戦争中東京空襲から逃げた話、戦後の・にみると、最も受給率が高いのは高齢者世帯で全体の あれば、私自身の幼い頃の記憶を思い出して共感を覚 : 23 年度社会保障費用統計によると、社会保障給付費 ( 年 しかし翻って考えると、司法書士の成年後見業務が : 107 兆 4 , 950 億円となり過去最高の水準となり、また、 65 歳以上の高齢者人口は、過去最高の 3 , 190 万人 ( 前 : 出が増え続けていくことは、その負担を将来の人々 ( 現 司法書士 生活と の 061 高齢化社会を考える : が、平成 11 年に 50 % を割り、 24 年には 42.3 % となり、 身も毎年少しずつ成年後見人の依頼が増えてい : 子どもとの同居の割合は大幅に減少している。逆に ・人暮らしまたは夫婦のみの世帯は、ともに大幅に増加 しており、昭和 55 年には合わせて 3 割弱であったもの 増加しているという。このように高齢者の割合が増え : ているにもかかわらず一人暮らしまたは夫婦のみの世 ・帯が増えているとすれば、今後も成年後見人に対する : る。成年後見人となる人材確保が今後緊急の課題とな ろう。 心配なこともある。高齢者の貧困化である。たとえ : の預金しかない方がいた。そのような場合は、生活保 厚生労働省の「生活保護の被保護者調査 ( 平成 27 年 : 49.3 を占めたという。生活保護を受給するまでではな くても、不動産等・預金等の資産が乏しくその生活費 を年金等社会保障に依存している高齢者も多い。平成 : 金・医療・福祉その他を合わせた額 ) は、平成 23 年、 国民所得に占める割合は、昭和 45 年度の 5.8 % から 31 .0 % に上昇し、こちらも過去最高の水準となったという : のである。このまま高齢者の生活保護受給や年金の支 ・在の子供 ) に先送りすることになる。これは大きな問 ・題である。早急な対策が必要であろう。 司 の同居率をみると、昭和 55 年にほほ 7 割であったもの・ にもかかわらず、 65 歳以上の高齢者について子どもと も 25.1 % ( 前年 24.1 % ) と過去最高となったという。 年 3 , 079 万人 ) となり、総人口に占める割合 ( 高齢化率 ) る。平成 26 年版高齢化社会白書 ( 内閣府 ) によると、 ピードで進行していることの表れということもでき 増加しているということは、高齢化社会がかなりのス えたり勉強になったりもするのである。 いていた東京空襲の話を思い出す。戦後の池袋の話で・ そのような話を聞いたとき、私の父母や祖父母から聞・ 池袋闇市の話等を聞かせいてくれる方も少なくない。 ような話をしているときのご本人はとても嬉しそう ご本人にとって最も輝いていた時代なのだろう。その・護等社会保障を申請することになる。 記憶は鮮明で積極的にかっての仕事を話してくれる。 スキーで全国的にも優秀な成績を修めていた方、寝台 : たとえば、長年にわたってピアノの先生をしていた方、 人でも昔の記憶は鮮明に残っていたりするのである。 うなことはない。たしかに直近の記憶は極めて曖昧で、 しないようなイメージがあるが、実際は決してそのよ った。一般に成年被後見人については全く会話が成立・ とうまく信頼関係を築けるのだろうかといった不安も・ る。初めて依頼を受けた頃は成年被後見人 ( ご本人 ) 法書士による成年後見業務が増えている。私自
法学セミナー 2016 / 01 / no. 732 078 連立内閣を組織した。同年 9 月の第 12 次憲法改正で 官の定年延長 ( 65 歳から 67 歳へ ) は、 2006 年 10 月の は、憲法制定当初に近い議院内閣制が復活した。大 任期満了時に予定される次回の国民議会選挙時に、 統領の執行権行使には首相の助言が必要とされ、議 AL に近い最高裁長官が任命されているリスクを回 会の権限が強化された ( 【図表 1 ))6) 避する政治的意図があったとみられている 8 。また、 政治聞争と議会政治の混迷しかし、 BNP と AL 2006 年 10 月に発足した非政党選挙管理内閣は、与野 の二大政党を中軸とする政治闘争は議会ポイコット 党何れにも偏しない中立的立場から総選挙を実施す 等の乱暴な手法へとエスカレートしたために、議会 べく、政党間の対立が激化して治安が悪化したこと 制民主主義は十分に機能しなかった。 1994 年 12 月に を理由に、 2007 年 1 月 11 日、非常事態宣言を発令し、 は国民議会議員補欠選挙をめぐる BNP の不正を糾 BNP のジア総裁、 AL のハシナ総裁を含む政治家、 弾して AL 等の野党議員が辞任し、 1995 年には議会 官僚、企業家等を汚職容疑で逮捕し、利益誘導型の や選挙のポイコット運動、ハルタル ( ゼネスト ) 、 政治にメスを入れた ( 両総裁とも 2008 年に釈放 ) 。 街頭運動等の手法による政治闘争が慣行化した。ジ の措置は軍が準備した汚職容疑者リストに基づき、 アの BNP 政権は同年 11 月、国民議会を解散し、 1996 その後援の下で実行された。しかし、 2008 年 12 月の 年 2 月に総選挙を実施したが、 AL 等の野党は選挙 総選挙で勝利した AL のハシナ政権は、 2011 年 6 月、 をポイコットし、選挙無効を主張した。 BNP 政権 第 15 次憲法改正により、この非政党選挙管理内閣の は同年 3 月、反政府運動に対処すべく、政権党に有 制度を廃止し、かっ軍による国家権力の掌握と憲法 利であるとされた総選挙をより公平に実施するため 停止に対し、極刑を含む厳罰によって対処すること に、第 13 次憲法改正により、非政党暫定政府を選挙 を規定した 9 。ハシナ政権は同改正憲法に基づき、 管理内閣として選挙期間中のみ政権を担当させる制 第 10 次の国民議会選挙の実施準備を進めた。野党が 度を導入した。そのうえで、 BNP は議会を解散し、 猛反発してハルタル ( ゼネスト ) 、デモ等の反政府 6 月、総選挙を実施した。結果は、ムジプル・ラー 運動を組織し、選挙をポイコットする中、政府は マンの娘ハシナ率いる AL が勝利した。しかし、 2014 年 1 月 5 日、 5 万人規模の兵士を全国に派遣し、 2001 年 10 月の総選挙では BNP がイスラム主義政党 JI 国民議会選挙を実施した。与党は普通選挙による と共闘して勝利し、再度ジアを首相とする連立政権 300 議席中 234 議席を獲得した ( 【ボイント】参昭 ) が誕生した。こうして繰り返される政権交代の中、 政治と法の関係変化と国民意識 2014 年 1 月 12 AL と BNP の政治闘争は、 JI をも巻き込みつつ、汚 日、 AL 総裁ハシナは、バングラデシュ史上初の 2 職摘発の応酬、暴力事件等を伴う報復合戦へとエス 期連続首相に就任した。これに対し、 15 日、 BNP カレートしていった。ところが、 BNP と JI の連立政 ジア総裁は実力行使による反政府運動を否定し、対 権下で、非合法イスラム武装主義勢力による爆弾事 話の道を探ることを表明した。その背景には、特に 件が頻発したことから、同勢力との緊密な関係が噂 暴力行為を伴う反政府運動を嫌う世論の反応が強い された JI およびこれと連立政権を組んだ BNP は国民 影響を与えているように思われる。 2014 年 8 月の世 の支持を失い、 2008 年 12 月の総選挙では AL が圧勝 論調査 (Dhaka Tribune) では、回答の約 75 % がハ し、第 2 次ハシナ政権が誕生した 7 シナ政権の実績を評価し、約 78 % が BNP 等の反政 軍・諸政党間の政治聞争手段としての法建国 40 府運動を望んでいないが、約 72 % はハシナ政権が 年余りのバングラデシュの歴史の中で、憲法を停止 BNP と対話しない姿勢を批判している 10 。そこには、 する戒厳令布告が 2 回、憲法の枠内で基本権等を停 従来政治闘争の道具としてきた憲法等の枠内での、 止する非常事態宣言が 5 回、憲法改正が 16 回 ( 2014 ルールに基づく政治対話を望む国民の意識カ反映し 年 9 月 ) 行われていることは、憲法以下の法制度が ーこには、国民意識を介して、法カ政治を ている。 政治闘争の手段として用いられていることを物語っ コントロールし始める契機が示唆されている。そし ている ( 【図表 1 】 ) 。例えば、 2004 年、 AL のハルタ て、そうした国民意識の変化の背景として、近年の ル ( ゼネスト ) 戦術に対し、 BNP は予防拘禁の手段 経済事情の変化が看過できない。 により、 AL の活動家を多数逮捕した。また、同政 2 バングラデシュにおける経済発展 権下、 2004 年 5 月の第 14 次憲法改正による最高裁長 ヾ、ヾ、
012 田歳の君に ーあなたは、死刑を言い渡しますか ? 龍谷大学教授 石塚伸ー 法学セミナー 2016 / 01 / no. 732 法学入門の授業で先生が言ってたけど、選挙権の のはじめに ある人は、みんな裁判員として有罪無罪の認定と刑 2015 年 4 月、法学部に入学した翔太くんと亜梨沙 の量定に参加する義務があるんだって」 さんは、基礎ゼミの同じクラスになりました。大学 翔太「ばくのクラスの先生は、義務じゃなくて、権 生活にも慣れ、期末試験も終わり、ようやく夏休み 利だって言ってたよ。辞退もできるんだって」 だと思ったのですが、大学ではサマーセッション ( サ 亜梨沙「そりやそうよね。死刑とか言い渡すの嫌だ マセ ) の集中授業があって、休み中にもかかわらず、 もの。夢みそう・・ ほとんど毎日、大学に通っています。 の裁判員にな。たら ? 翔太「ねえねえ。忙しくて新聞読む時間がなかった その夜、翔太くんはなかなか寝付けませんでした。 んだけど、 6 月に大事な法案が通って、来年の参議 " ばくらも裁判員になるのかなあ ~ " 。そして、こん 院選挙では、ばくたちも投票するらしいよ」 な夢を見ました。 亜梨沙「そりやそうよ。わたし 4 月生まれだから、 来年成人式だもの」 「ケベル先生、こんにちは一 ! 」 翔太「違うよ。選挙年齢が 20 歳から 18 歳になるんだ おじさんの人形が現れました。 「やあ、こんにちは。元気かね ? なんでも考えか 亜梨沙「えー。じゃ、高 3 も選挙にいくわけ ? そ んでも知って、なんでもかんでもやってみよう。」 んな、こどもには無理よ。ちょっと待って。ネット どうも偉い博士のようです。亜梨沙さんも一緒で で調べてみる。『選挙権年齢引下げ』でしよ。総 す 2 。 務省のサイトにこんなことが書いてあるわ」 翔太・亜梨沙「博士なんですか ? なんでも知って るんですか ? 」 「平成 27 年 6 月、公職選挙法等の一部を改正する 博士「もちろん。わからんことがあれば、聞いてく 法律が成立し、公布されました ( 平成 28 年 6 月 19 日 れたまえ」 施行 ) 。今回の公職選挙法等の改正は、年齢満 18 年 亜梨沙「それじゃ、伺いますが、裁判員ってどんな 以上満 20 年未満の者が選挙に参加することができる 人がなるんですか ? 」 こと等とするとともに、当分の間の特例措置として 博士「よかろう。ます、裁判員裁判について説明し 選挙犯罪等についての少年法等の適用の特例を設け ておこう」 ることを目的として行われました」 1 ) [ 1 ] 裁判員裁判ーーどんな制度ですか ? 翔太「いまの高校生は、僕らの時代と比べると子ど 2004 年『裁判員の参加する刑事裁判に関する法律』 もつほいからなあ」 ( 平成 16 年 5 月 28 日法律第 63 号 ) ( 以下「裁判員法」と 亜梨沙「それじゃ、わたしたちも裁判員になるわけ ? いう ) が制定され、 5 年の準備期間を経て、 2009 年