060 [ ー hg 新・法令解釈・作成の常識 [ 第 20 回 ] 法令立案についての技術⑥ 雑則的規定の書き方 元衆議院法制局参事 吉田利宏 ■雑則的規定として置かれるもの 今号では雑則的規定を取り上げます。雑則には、法 令全体に渡る事項のうち、総則に置かれるほどは重要 性のない、技術的、手続的な規定が置かれますが、そ れぞれの法令で規定は様々です。さらに、雑則で置かれ たり、他の部分で置かれたりする規定もあります。雑則 には「規定すべき事項のうち他の部分で規定しなかっ たことが置かれる」と理解してもよいかもしれません。 こでは比較的、雑則に置かれることが多い規定を説 明して、雑則的規定の書き方に代えたいと思います。 ■「財政上の措置」と「国の援助」 「財政が豊かなときはよいが、景気が悪くなると補 助金なんかどうなるか分からない。だから、『財政上 の措間の規定を入れておくんだよ」。議院法制局入 局間もない頃、ある与党議員よりそう財政ーヒの措置の 規定の意義を教えてもらいました。なるほど、議員のい うように、財斑 E の措置の規定は、法律に基づく施策 を実現するための予算措置確保を求める意味を持ちま す。財政上の措置は、法律の場合には国 ( 政府 ) の責 務を規定するものですから、責務規定などと並んで総 則に置かれるが一般的です。次の例でも「法制上措置」 の義務付けと併せて総則の最後に規定されています。 〇雨水の利用の推進に関する法律 ( 法制上の措置等 ) 第六条政府は、雨水の利用の推進に関する施策を 実施するために必要な法制上又は財政上の措置そ の他の措置を講じなければならない。 法学セミナー 2016 / 02 / no. 733 合理化に資する設備の開発及ひ利用を促進するた 及ひ利用並びに特定物質の排出の抑制又は使用の 第二十一条国は、特定物質に代替する物質の開発 ( 国の援助 ) 法律 〇特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する 実体的規定として規定されることになります。 援の措置が、その法律における中心的な措置となれば、 関する法律」はその例です。ただ、事業者に対する支 す。次の「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に かりでなく、直接、事業者を対象とする場合もありま ます。さらに「国の援助」の対象は、地方公共団体ば 金銭的な援助を中心としない援助についても規定され なお、雑則的規定に置かれる「国の援助」の内容は、 のとする。 財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めるも 円滑に実施されるよう、必要な情報の提供、助言 れた施策を実施しようとするときは、当該施策が 第十一条国は、地方公共団体力賑興計画に定めら ( 国の援助 ) 〇お茶の振興に関する法律 振興に関する法律」はその例です。 で、こうした取扱いになるのでしよう。次の「お茶の となります。直接的ではなく側面支援の部分があるの の援助」として規定するような場合には、雑則的規定 が地方公共団体に何らかの期待をし、それに対する「国 ただ、そうした財 E の措置を求める規定も、法律
061 新・法令解釈・作成の常識 20 に、第一号法定受託事務については地方自治法別表第 めに必要な資金の確保その他の援助に努めるもの とする。 ーに、第二号法定受託事務については同法別表第二に 確認的に掲げられています。個別法と地方自治法別表 で事務の区分を確認することができるようになってい 0 「施策の実施状況の公表」なと るのです。 表の説明にもあるように、法定受託事務は個別の政 「施策の実施状況」や「法律の施行状況」に関する公 令によっても定めることができ、この場合には個別の 表規定力囃則に置かれることがあります。比較的新し 政令に事務の区分を規定した上で、地方自治法施行令 く導入された制度などの定着や改善のためにデータを 別表にも確認的に掲げられます。第一号法定受託事務 集め、それを公にする意味合いがあります。 については地方自治法施行令別表第一に、第二号法定 受託事務については同令別表第二に掲げられていま 〇行政機関の保有する情報の公開に関する法律 ( 施行の状況の公表 ) す。なお、自治事務は「地方公共団体力拠理する事務 第二十三条総務大臣は、行政機関の長に対し、 のうち、法定受託事務以外のもの」をいいます ( 地方 の法律の施行の状況について報告を求めることが 自治法 2 条 8 項 ) 。 できる。 2 総務大臣は、毎年度、前項の報告を取りまとめ、 〇消費者安全法 その概要を公表するものとする。 ( 事務の区分 ) 第四十七条前条第二項の規定により地方公共団体 〇裁判員の参加する刑事裁判に関する法律 が処理することとされている事務は、地方自治法 ( 運用状況の公表 ) ( 略 ) 第二条第九項第一号に規定する第一号法定 第百三条最高裁判所は、毎年、対象事件の取扱状 受託事務とする。 況、裁判員及ひ黼充裁判員の選任状況その他この 法律の実施状況に関する資料を公表するものとす る。 ・権限の委任 「権限の委任」に関する規定も雑則に置かれます。 0 事務の区分 権限が委任されたならば、その権限に基づく処分は委 任先の行政機関の名で行われ、委任元の行政機関は権 地方公共団体に関する「事務の区分」の規定も雑則 限を失います。「法律による行政の原理」からの要請 に置かれます。地方公共団体の事務は自治事務と法定 受託事務に分けられます。法定受託事務は図のように、 によるものです。 さらに第一号法定受託事務と第二号法定受託事務に分 かれます ( 地方自治法 2 条 9 項 ) 。 ( 権限の壬 ) 第九十七条この法律に規定する国土交通大臣の権 第二号法定受託事務 第一号法定受託事務 限は、国土交通省令で定めるところにより、その 法律又はこれに基づく政 法律又はこれに基づく政 一部を地方整備局長乂は北海道開発局長に委任す 令により市町村又は特別 令により都道府県、市町 ることができる。 区が処理することとされ 村又は特別区が処理する る事務のうち、都道府県 こととされる事務のう が本来果たすべき役割に ち、国が本来果たすべき 係るものであって、都道 役割に係るものであっ ■下位法令への委任規定 て、国においてその適正 府県においてその適正な 処理を特に確保する必要 な処理を特に確保する必 要があるものとして法律 があるものとして法律乂 行政法の教科書のようになって恐縮ですが、行政立 又はこれに基づく政令に はこれに基づく政令に特 法のうち、国民の権利義務にかかわるものを法規命令 に定めるもの 特に定めるもの といいます。法規命令のうち、国民の権利を制限し、 義務を課す内容にかかわるようなものは、法律の委任 現在、法定受託事務を個別法で定める場合には、そ がないと定めることはできません。普通、こうした法 の事務の区分を明らかにする規定が置かれます。さら
憲法判例再読 057 03 保障論の展開過程における、「貴族・対・市民」と「市 民・対・労働者」の対抗関係との文脈の混同を指摘 する論者の分析は、見事という他ない (1) 。しかし、 注意しておきたいのは、一一勿論、この論者には十 分に意識されているところであるが一一その営為が 法解釈学の一端として行われていることによる、歴 史的事象を扱う際の「作法」である。例えば、法制 度保障論の前提となる、明治民法による「一物一権 主義」の選択についても、論者は慎重に「予め立法 者が選択したはずの「法制度としての所有権」の全 貌」と述べるが、ここで示されている「立法者」が、 例えば、法典調査会の穂積陳重・梅謙次郎・富井政 章といった個別具体的な立法関係者に限らない抽象 概念であることには、改めて注意を払っておく必要 があるだろう 42 ) 。国家法と「民衆規範」の関係とし て述べてきたように、法制史学は、土地所有権につ いて「一物一権主義」になじまない運用がなされて きたことを論証してきたが、法制度保障論の論者も このことをよく諒解しており、土地法制は「土地を とりまく「文脈」を強調して土地所有権の制限に向 けて動いている」のに対し、憲法上の財産権は「 ( 近 代的「人権」概念ならではの ) 文脈を無視した普遍妥 当性要求」によって「辛うじて本丸を維持する」よ うな関係であると述べているのである 43 ) いずれにせよ、この有力な二つのロジックは、 1990 年代以降の憲法学内部の通説、とりわけ「戦後 憲法学」への批判をきっかけとして森林法判決を「再 解釈」したものと理解することが出来そうである。 そうであるならば、「再解釈」を施されない段階の 本判決が、「官僚的な文章構成に秀でた最高裁とし ては異例の書生つほい表現」で守ろうとしたもの は 44 ) 、「戦後憲法学」と順接的な価値を見出し、「個 人主義」を強調する ( c ) 道徳的価値論によって説明さ れることになるのかもしれない 45 ) 。 ロ読者のみなさんへ 近年の最高裁は、グローバル化・国際標準の波が 日本社会に残存した前近代的社 押し寄せていた 会関係を払拭する必要のあった 1980 年代後半に 自ら発した森林法判決を、黙殺している。本件と同 じく、単独所有制からの逸脱が問題となるような事 案においてさえ、森林法判決を参照していないので ある 46 。これは、森林法判決の先例的価値の、ある いはそれが肯定した単独所有制の憲法的地位の揺ら ぎを示唆している。 読者の皆さんは、このことをどう評価するだろう か。 実は、単独所有制ーー < 私の物は、私だけの物で ある > ーーーの評価をめぐる問題は、きわめて現代的 な意味を有している。例えば、自然環境保護論やネ ット社会論といった領域では、いわゆるコモンズ論 < みんなの物 > 論 ( ? ) が注目を集めてい ' こでは、 < 私だけの物ではない > ということ る。 が積極的に評価されているといってよいだろう。他 方、より実際的な問題として、区分所有権に関する 問題がある。マンションの所有関係や管理方法等に ついて規律する区分所有法は、何度かの改正をとお して、区分所有権に対する団体的拘東を強めてきて いるといわれる。本来、 < 私だけの物 > であるはず の専有部分でさえ、他の区分所有者の意思の影響を 受けるようになってきているのである。単独所有制 を「近代市民社会」とオーバーラップさせ、これに 憲法上の地位を与えた森林法判決。その先例的価値 の揺らぎは、私たちが、単独所有制の限界と共同所 有制の可能性を現代的に問い直すチャンスでもある ように思われる。 より深く学びたい方へーー参考文献 ①戒能通厚・楜澤能生編『企業・市場・市民社会の基礎 法学的考察』 ( 日本評論社、 2008 年 ) では、基礎法学の立 場からの「所有」概念が近時のコモンズ論との関係で多角 的に論じられており、様々な示唆を与えてくれる。 ②川口由彦『近代日本法制史〔第 2 版〕』 ( 新世社、 2014 年 ) は、土地・農村を専門領域とする法制史研究者による 浩瀚な通史として、本稿の背景を追うのに最適である。 ③中島徹「財産権保障における「近代」と「前近代」 ( 1 ) ~ ( 3 ) 」「法律時報」 84 巻 1 ~ 3 号 ( 2012 年 ) は、憲法学の 立場から森林や漁業等の歴史的変遷を視野に入れた刺激的 な分析を提示している。 1 ) 実際の条文はこのようになっている。 憲法 29 条①財産権は、これを侵してはならない。 ②財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法 律でこれを定める。 ③私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のため に用ひることができる。 2 ) かっては、憲法は法律によって内容形成された財産 権を保障しているにすぎないと考える学説も存在した
法学セミナー 公共空間 を考える 2016P2 HOUGAKU Seminar 論 07 2016 年 2 月 1 日発行毎月 1 回 1 日発行通巻 733 号 956 ( 昭和 31 ) 年 4 月 12 日第 3 種郵便認可 VOL61-02 ISSN 39-3295 特集 ] 技術者として法を語る 駒村圭吾 本企画の趣旨 [ シンポジウム ] 新国立競技場・ 集団的自衛権問題を考える 木村草太・山本理顕 建築家・法律家からの専門技術者としての忠告 [ 座談会 ] 公共空間を考える 木村草太・駒村圭吾・山本理顕 技術者として法を語る 徳 市並図書 般 160944930 徳田博人 日本の憲法構造の危機 辺野古新基地建設問題からみえるもの 立憲民主主義促進法 ReDEMOS からの立法提言 第 3 回「守屋賞 憲法判例再読ーー他分野との対話・ 森林法事件ーー憲法の保障する「財産権」とは何か ? 新・法令解釈・作成の常識 法令立案についての技術⑤雑則的規定の書き方 開発法学のフロンティアーー政治・経済と法・・ 伝統的遊牧社会の変容における開発と法 - ーーモンゴルにおける経済・政治の変動と法改革 プラスアルフアについて考える基本民法 物上代位・その 1 ーー差押え要件の意義・第三者との関係 応用刑法 I ー総論 過失犯論 ( 2 ) ーーー予見可能性の認定の仕方を中心に ・シャーカ切 ロー 編集部 山本龍彦・出口雄一 吉田利宏 松尾弘 武川幸嗣 大塚裕史 連載
をん名、技術者をて法をを ばよいという考え方があるのではないでしようか。 とおりだと思います。機能的な建築であっても、美 「文化専門職」とよく言われますが、彼らは、機 しい形もできるし、醜い形もできるわけです。 建築は都市環境に対して一体どのように働きかけ 能性、安全性、利便性に還元できない何かを、実は ることができるかという問題に対しては、機能だけ 技術的に表現している部分があるわけですよね。建 では実は解決できない話なのですが、いかにも機能 築家もまた文化専門職であると思うのです。そこに 的に解決できるかのように多くの人たちが考えてい も着目すれば建築も、機能主義的な一律性だけでな るような気がします。敷地の内側だけで、発注者の く、やはり地域性とか景観とか、街とか人の流れの 要望にただ従おうとするなら、機能的という言葉に 将来的な予測に基づいた社会設計にならなければな 少しは意味があると思います。何をもって機能的と らないのに、そういう発想がとても薄弱です。 するかは、発注者の特権で決めることができるから プラトンの知と技術の区分の話もありましたが、 です。機能的であれと命令するのが発注者でその命 技術が知を表現する場合、それは両者が適切な形で 令に従う建築家という " プラトン的分離 " が成り立 会話を繰り広げることがどうしても必要になってく っところでは機能的という言葉は有効かもしれませ るのではないかと思います。両者の分断がなされて、 ん。でも、その建築が周辺環境や周辺の地域社会と 知の部分、文化の部分は官僚や事務が独占する。技 術者は受動的に機能的なモノづくりに徹すればよい の関係を問われるとしたら、もはや何をもって機能 のだということになっているのが、大きな問題だと 的とするか、という問いかけ自体が無意味になりま す。つまり、機能的という言葉は実は「命令と執行」 思います。 話は少しずれますが、先ほどの木村さんがどうし の関係を前提としていたのです。それは、官僚制的 な枠組みの中でこそ、極めて有効だったのです。今 たら技術者として巻き返せるかというお話をしたと でも、私たち建築家は機能的な建築をつくれという きに、専門家に相談しないと大変なことになるとい 官僚制的な圧力を常に感じています。 うことを地道に説得していかなければいけないとお 周辺地域社会と共に建築を考えるという場面にな っしやっていました。それはそのとおりだと思いま ると、途端に法律、例えば建築基準法や都市計画法 すが、私が今回の安全保障関連法案の制定過程を見 のような全国一律の法律だけでは周辺との調整がう ていて気になったのは、先にも触れましたけれども、 まくできなくなります。周辺住民との合意を得るに 技術者の分断という問題です。例えば、法律家と自 衛隊が話すということがないのです。憲法学者は 9 は法律とは別の意志決定の仕組みが必要になる。 つの建築が建てられる時、その周辺の環境は全国一 条の専門家ではありますが、それは 9 条に関する学 律ではなく、常に特殊だからです。 説とか判例の専門家、あるいはその背後にある理念 今回の新国立競技場の問題にしても、実はすぐそ や原理の専門家であって、実際の安全保障や防衛に 携わる技術者として議論してきたのかというと、そ ばに住んでいる人たちもいます。都営住宅に住んで いる人たちは追い出されてしまうわけですが、そう れほど活発になされてきていなかったと思います。 いうことに関しては中心的な議論になっていませ 事務と法制官僚は現場の動線を無視して閣議決定 ん。それぞれの地域社会の中でその地域社会に固有 や立法を行い、現場は現場で法律ができる前にすで の建築ができあがっていくという仕組みをつくる必 にアメリカ軍と議論をしているという状況。両者の 回路をなんらか開かないと危険でもあるのですそ 要があるのだと思います。その建築が発注者のため だけではなくて、いかに地域社会に貢献するかとい ういう形で分断化された技術者同士がもう一度議論 うことを考えると、法整備はもちろん重要ですが、 をすることが必要なのではないでしようか。政治は その都度、その建築をめぐる意志決定の仕組みが必 おそらくそれをうまく使っている。技術者同士が団 結して、「こういう線が妥当だ」と言われたら否定 要なのだと思います。 駒村お話をうかがっていると、技術者というのは できないですから。 " 現場を持っている " と感じました。技術を生かす 山本建築を機能として理解しようとしたのはまさ 直接的な場とでもいうのでしようか。安保関連法案 に近代建築運動のひとつの発見だったのですが、正 の場合は、集団的自衛権を行使する戦場、あるいは にそれこそが大問題だったというのは、おっしやる 045 0 一三
050 [ ー hg 憲法判例再読ー他分野との対話 森林法事件 憲法の保障する「財産権」とは何か ? [ 第 3 回 ] 最大判昭和 62 年 4 月 22 日民集 41 巻 3 号 408 頁 山本龍彦慶應義塾大学教授 ( 憲法 ) 出口雄一 ロあらすじ 桐蔭横浜大学教授 ( 日本法制史 ) 法学セミナー 2016 / 02 / n0733 私たちの民法は、その 256 条で、共有物の分割請 求を認めている。例えばあなたが、ある土地を共有 している A さんや B さんと仲違いしても、この民法 上の権利を行使して、土地を分割し、その一部をあ なただけの物にすることができる。しかし、本件当 時の森林法 186 条は、「森林」を共有している者につ いては、この分割請求権を制限していた。 本件は、森林の共有者である兄と仲違いした弟が、 分割請求権を制限する森林法 186 条は憲法 29 条の保 障する財産権を侵害し、違憲であると主張して、本 件森林の現物分割等を請求したものである。 最高裁は、弟の主張を受けいれ、森林法 186 条に よる分割請求権の制限は「憲法上、財産権の制限に 該当」するとして、この条項を違憲無効とした。 ロ争点 ・憲法 29 条にいう「財産権」は、いったい何を 保障しているのか。 ・共有森林の分割を制限する森林法の旧規定は 憲法 29 条に違反するか。 ロ判例を読む前に いは財産権保障とはどのようなものなのだろうか。 えているようだが、そもそも憲法上の財産権、ある 請求権の制限を、憲法上の財産権制限に当たると考 本件の原告 ( 弟 ) は、森林法による共有物の分割 憲法学習者の皆さんに、せひ考えてもらいたいこと それは、「憲法の保障する表現の自由とは何か」な どを問うよりも難しい問題を含んでいる。憲法 29 条 は、 1 項で「財産権は、これを侵してはならない」 と規定しながら、 2 項で「財産権の内容は、・・・・・・法 律でこれを定める」 ( 圏点筆者 ) と規定している 1 2 項を強調すると、憲法上の財産権が、法形式上は 憲法より下位にある法律によって逆規定されるかの ようにもみえ、そもそも法律から自立した憲法上の 財産権など存在しないかのように思えるからであ る 2 ) こうした考えを前提にすると、原告の " 直感 " とは 異なり、森林法 186 条は憲法上の財産権を何ら制限 していないということになる。 2 項を重く受け止め れば、森林法という「法律」が財産権の内容を「定 める」ことになり、森林法以前に一一そもそも森林 法との矛盾が問題となる一一憲法上の財産権は存在 しないものと解されるからである それでよいのだろうか。憲法が上から財産権関連 の法律を統制できないとすると、法律を定める国会 が、勝手気ままに財産法秩序、もっといえば経済秩 序を構築できてしまう。憲法が 29 条を置いている意 味、いいかえれば、憲法の財産権保障の意味をじっ くり考える必要は、この点にある。学説がこの意味 をどう考えてきたかを整理したうえで 4 ) 、森林法判 決がそれに何をつけ加えたのか、検討してみてほし 作家・司馬遼太郎は、この日本で、 もらいたいこと 憲法に関心のある一般読者の皆さんに、ぜひ考えて この日本人た ちが、土地を投機の対象としはじめた昭和 30 年代以
102 LAW FORUM ロー一ラ 4 最新立法インフォメーション 琵琶湖の保全及び再生に関す る法律 [ 平成 27 年 9 月法律第 75 号 ] [ 趣旨・内容 ] ①主務大臣は、琵琶 湖の保全および再生に関し実施すべ き施策 ( 琵琶湖保全再生施策 ) を推進 するため、基本方針を定める。②滋 賀県は、基本方針を勘案して、琵琶 湖保全再生計画を定めることができ る。③国は、琵琶湖保全再生計画に 基づく事業の実施に要する費用につ いて、必要な財政上の措置を講ずる。 ④主務大臣、関係行政機関の長、関 係地方公共団体、関係事業者等は、琵 琶湖保全再生計画の実施に関し、相 互に連携を図りながら協力する。⑤ 主務大臣、関係行政機関の長、関係府 県知事および関係指定都市の長は、 琵琶湖保全再生推進協議会を組織す ることができる。⑥琵琶湖の保全お よび再生に関し、水質の汚濁の防止 のための措置、湖辺の自然環境の保 全および再生、外来動植物による被 害の防止等の施策について定める。 [ 施行期日 ] 2015 年 9 月 28 日 [ 審議経過 ] 2015 年 9 月 1 日 ( 189 国会 ) 衆・環境委において起草、同日 同委員長提出、委員会審査を省略し、 3 日衆・本会議趣旨説明の後可決、 全会一致。 9 月 7 日参・環境委付託、 10 日趣旨説明、 15 日質疑の後可決、 16 日参・本会議可決、成立、全会一致。 [ 審議論点 ] 琵琶湖の総合的な保全 及び再生が困難な状況にある要因等 我が国及び国際社会の平和及 び安全の確保に資するための 自衛隊法等の一部を改正する 法律 [ 平成 27 年 9 月法律第 76 号 ] [ 趣旨・内容 ] ( 1 ) 自衛隊法の改正 ①防衛出動の対象となる事態とし て、存立事態 ( 我が国と密接な関係 にある他国に対する武力攻撃が発生 し、これにより我が国の存立が脅か され、国民の生命、自由および幸福 追求の権利が根底から覆される明白 な危険がある事態 ) を追加する。② 外国における緊急事態に際しての在 外邦人等の保護措置を新設する。③ 合衆国軍隊等の部隊の武器等の防護 のための武器の使用の規定を整備す る。④平時における合衆国軍隊に対 する物品または役務の提供のための 規定を整備する。⑤国外犯に係る罰 則を整備する。 ( 2 ) 国際連合平和維持 活動等に対する協力に関する法律の 改正①国際平和協力業務の実施ま たは物資協力の対象として新たに国 際連携平和安全活動を追加する。② 国際平和協力業務に、防護を必要と する住民、被災民その他の者の生命、 身体等に対する危害の防止等の業務 ( 安全確保業務 ) 、緊急の要請に対応 して行う活動関係者の生命および身 体の保護の業務 ( 駆け付け警護業務 ) 等の業務を加える。③宿営地の共同 防衛のための武器の使用に関する規 定を整備する。④国際連合の要請に 応じ、国際連合平和維持活動に参加 する部隊等の業務の統括に関する業 務に従事させるための自衛官の派遣 に関する規定を整備する。 ( 3 ) 周辺事 態に際して我が国の平和及び安全を 確保するための措置に関する法律の 改正①周辺事態に代え、重要影響 事態 ( 我が国の平和および安全に重 要な影響を与える事態 ) に際して後 方支援活動等を行うこととし、その 対象を合衆国軍隊その他の外国軍隊 等に広げる。②後方支援活動および 法学セミナー 2016 / 02 / no. 733 および質疑、同日衆・我が国及び国 特委付託、 26 日衆・本会議趣旨説明 び国際社会の平和安全法制に関する 国会 ) 内閣提出、 19 日衆・我が国及 [ 審議経過 ] 2015 年 5 月 15 日 ( 189 日 ) から 6 月以内で政令で定める日 [ 施行期日 ] 公布日 ( 2015 年 9 月 30 同会議への必須諮問事項を拡充する。 国家安全保障会議の審議事項および の改正 ( 1 ) ~ ( 5 ) の改正等を踏まえ、 定める。 ( 6 ) 国家安全保障会議設置法 効果的に実施されるための措置等を に必要な外国軍隊の行動が円滑かっ は存立危機武力攻撃を排除するため て、自衛隊と協力して武力攻撃また 撃事態等または存立危機事態におい 基本となる事項を定める。②武力攻 て、対処処置、対処のための手続等、 法制の改正①存立危機事態につい 確保に関する法律その他の事態対処 和と独立並びに国及び国民の安全の 武力攻撃事態等における我が国の平 ( 3 ) に準じて必要な事項を定める。 ( 5 ) 国が実施する船舶検査活動に関し、 際平和共同対処事態に対応して我が 法律の改正重要影響事態または国 して実施する船舶検査活動に関する る規定を整備する。 ( 4 ) 周辺事態に際 共同防衛のための武器の使用に関す 空機への給油を含める。④宿営地の 闘作戦行動のための発進準備中の航 えるとともに、弾丸の提供および戦 または役務の提供に一定の業務を加 る。③後方支援活動として行う物品 に当該外国の領域において実施す 上空のほか、外国の同意がある場合 除き、実施しない。公海およびその われている現場では、一定の場合を を定める。また、現に戦闘行為が行 施することができるように実施区域 捜索救助活動は、円滑かっ安全に実
062 法学セミナー 2016 / 0 no. 733 規命令は、「政令に定めるところにより」などとする 法律の委任規定を受けて定められます。これを「委任 命令」といいます。これとは別に、法律を執行するた めの純粋に手続的な法規命令は「執行命令 ( 実施命令 ) 」 と呼ばれています。たとえば「届出の様式」を定める 省令の規定は、この執行命令に当たるでしよう。執行 命令は、教科書的には、当然に行政機関の命令で定め ることができるとされています。つまり、法律による 個別の委任規定は必要ないのです。ただ、実際には、 次のような執行命令の根拠とも読める規定力囃則には 置かれています。その意味としては、念のための規定 と考えられています。法規命令なのか執行命令なのか、 判然としない場合もあり、それがこうした規定が生ま れる背景となっているのでしよう。ただ、純粋に「念 のため」の意味しかないのかといえば、そうでもあり ません。執行命令を何をもって定めるのかを明らかに する意味があるからです。政令で定めるのか、それと も省令で定めるのかなどを明らかにする意味合いがあ ります。 〇行政手続における特定の個人を識別するための番 号の利用等に関する法律 ( 政令への委任 ) 第六十六条この法律に定めるもののほか、この法 律の実施のための手続その他この法律の施行に関 し必要な事項は、政令で定める。 〇電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達 に関する特別措置法 ( 経済産業省令への委任 ) 第四十二条この法律に定めるもののほか、この法 律の実施のために必要な事項は、経済産業省令で ■地方公共団体の措置 定める。 された処分、行政指導及び届出並びに命令等を定 て第二章から前章までの規定を適用しないことと 第四十六条地方公共団体は、第三条第三項におい ( 地方公共団体の措置 ) 〇行政手続法 す。 合に、以下のような努力義務規定を置くことがありま 法律が国と同様のしくみを地方公共団体に求める場 〇公文書等の管理に関する法律 ( 地方公共団体の文書管理 ) 第三十四条地方公共団体は、この法律の趣旨に のっとり、その保有する文書の適正な管理に関し て必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう 努めなければならない。 国と地方公共団体は対等な関係にあります。ですか ら、国の制度を直接的に適用することを求めるのは避 け、それぞれの地方公共団体でしかるべき措置をとる よう求めたのがこうした規定です。もちろん、どのよ うな方法で実現するかは地方公共団体が決めることで す。行政手続のルール化でいえば、行政手続条例を制 定してもいいし、規則を定めてもいいし、場合によっ ては要綱で実現することもあるかもしれません。 国の立場に立てば、「〇〇しなければならない」と 規定したいところをこらえて「努めなければならない」 としています。自主性を重んじて「宿題をやりなさい」 とはいわず「宿題はどうしたの ? 」と尋ねるようなも のでしようか。 ■主務大臣と主務省令 所管する大臣カ艘数ある場合には「主務大臣は ~ し なければならない」などと表現します。この場合、主 務大臣が具体的にどの大臣を指すのかを明らかにする 規定が必要となります。 C 硬用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する 法律 ( 基本方金 ) 第三条主務大臣は、使用済小型電子機器等の再資 源化を総合的かつ計画的に推進するため、使用済 小型電子機器等の再資源化の促進に関する基本方 針 ( 略 ) を定めるものとする。 2 ・ 3 略 ( 主務大臣等 ) 第十九条この法律における主務大臣は、環境大臣 及び経済産業大臣とする。 2 この法律における主務省令は、環境大臣及び経 済産業大臣の発する命令とする。 める行為に関する手続について、この法律の規定 の趣旨にのっとり、行政運営における公正の確保 と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずるよ う努めなければならない。
憲法判例再読 055 03 範囲を超えるものであるといわなければならない。」 囮ここでは「明らか」という言葉が使われており、裁判 所が非常に緩やかな審査 ( 明白の原則 ) を行ったことが 示唆されている。しかし、 0 ⅱ X ⅲ ) で比較的詳細な検討を 行っていることから窺い知れるように、最高裁は、単独 所有から逸脱する財産法上の規制について比較的厳格な 審査を行ったと考えることができる。もちろん、見方に よっては、森林法の本件規制は何の意味もない馬鹿げた 規制であると考えることもできる。そうなると、非常に 緩やかな審査を額面どおり行っていたとしても違憲と判 断されていた可能性はある。 ロ憲法上の意義 本判決は、森林法の共有物分割請求権制限規定を 違憲と判断した、日本では比較的珍しい法令違憲判 決の 1 つである ( 財産権については唯一の法令違憲判 決である ) 。 理論上興味深いのは、森林法の同規定が憲法上の 財産権制限に当たると述べたことであろう ( 判旨 3 ( ⅱ ) 参照 ) 。先述したように、憲法学における通説的 見解は、財産権の内容は法律によって形成される旨 を規定することで、財産法秩序に対する国家的 ( 社 会国家的 ) 介入の余地を広く認めようとした憲法 29 条 2 項の趣旨を重視し、内容形成に関する立法府の 広範な裁量を肯定しながら、その憲法的防壁として、 同条 1 項にいう憲法上の財産権保障の内容を以下の ように理解した。すなわち、①私有財産制度の核心 保障 ( 制度的保障 ) と、②既得権的利益の保障 ( 現 存保障 ) である。このように理解した場合、実は、 本件当時の森林法の規定は、憲法上の財産権保障に 直接にはかかわらないことになってしまう。森林法 186 条は、①私有財産制度を根底からひっくり返す ものとまではいえないし、②原告 ( 弟 ) の既得権的 利益を侵害したものともいえないからである ( 弟は、 1907 年の旧森林法全面改正時に組み込まれた本件規定 によって既に分割請求権が制限されていた森林を、 1947 年に贈与され、それ以降共有していたにすぎない ) 。そ の意味で、従来の通説的見解を前提にすると、森林 法の本件規定によって憲法上の財産権が制限された とはいえない、ということになる。 本判決は、単独所有制 ( 私の物を、私だけの物とし て持っこと ) に憲法上特別な地位を認めるとともに、 これへの移行を可能にする民法上の分割請求権に憲 法的な重みを与えることにより、この「権利」の制 限、あるいは単独所有制からの逸脱 ( 私の物を、私 だけの物にできないこと ) を、憲法上の財産権制限 とみなしたのである。こうみると、本判決は、憲法 上の財産権保障として、上述した①私有財産制度の 核心保障と②既得権的利益の保障に、③単独所有制 の保障を追加したものと考えることができる。 もっとも、本判決は、なぜ単独所有制が憲法上特 別の地位を認められるのかについて十分な説明を加 えていない。憲法学においては、これを説明するロ ジックとして、 ( a ) べースライン論、 ( b ) 法制度保障論、 ( c ) 道徳的価値論などが主張されている。 ( a ) は、法律 家集団の内部において、く単独所有が所有権制度の 標準形態である > との共通了解が存在しているため に、これを憲法の想定するべースラインとして観念 、 21 ) 。 ( b ) は、日本国憲法制定 しうるとする考えをいっ 者は、明治民法制定者の選択した単独所有 ( 一物一 「 1 つの物 権主義 = ローマ法的・近代的所有権 ) に対する所有権者は 1 人であり、その所有権は『自 由かっ排他的』である」 22 ) という「法制度」を、 日本国憲法上の「法制度」としても追認・摂取した ために、単独所有には憲法上特別な地位が認められ る、とする考えをいう 23 ) 。 ( c ) は、単独所有は近代法 の構成原理である「個人主義」と深く関連している ために、憲法上特別な地位が認められるとする考え をいう。いずれの主張も魅力的であるが、批判もあ り、通説と呼べるような見解が形成されていないの が現状であるといえよう。 ロこの判例から見えるもの 法制史の立場から 森林法判決が強調する「近代市民社会における原 則的所有形態である単独所有」概念は、そもそも、 明治時代以前、すなわち「前近代」において、直接 に生産に関わる農民と、それを支配する領主、更に、 その中間に存在するさまざまな組織や権力の間で折 り重なるように存在してきた土地のあり方一一法制 史では「所有」と区別して「所持」と呼ぶことがあ る一一とは相容れないものである。確かに、明治民 法典に帰結する国家法においては、「一物一権」的 な所有権が規定されるが、とりわけ、土地をめぐる 法規範は、国家法の世界と「民衆規範」の世界が複 雑に絡み合ったものとして把握されることにな る 24 )
LAW JOURNALI ロー・ジャーナル 002 争会 8 日以内に審査 係員 方委 国交大臣の執行停止は 地理 違法と申し立て 国処 っ被所 日、か判 9 な事裁 月わ知等 従長高 、が翁岡 に事、福 ら知はて さ長臣め 、翁大求 でも通をた のに交しし たれ土消ま っこ国取し 、の起 ない日認提 わ行片承を 従を月立訟 に示Ⅱ埋訴 れ指、て行 そのめし執 が正たと代 事是た告に 裁判所 代執行訴訟 ( 知事に対する 勧告・指示を経て ) 抗告訴訟 ( 予定 ) 是正の勧告・指示 埋め立て承認取消の 執行停止国土交通大臣 不服審査の裁決 ( 未 ) = 、 [ 2 ] 沖縄県の動き 沖縄県は、 11 月 2 日、国地方係争委員会に対して、 国土交通大臣の執行停止決定を「違法な関与」とし て審査を申し出ました。また、沖縄県は、 10 月 27 日 の国土交通大臣による埋立承認取消しの執行停止に 対して、 2016 年 1 月早々、自治権侵害等を理由に抗 裁決が出るまで取消処分の 告訴訟を提起するようです。 執行停止を申し立て 2 安保体系純粋憲法体系を飲み込んでしまう 不服審査請求 辺野古新基地建設をめぐって、国と沖縄県の争い 平和新聞幻 15 年 12 月 15 日付より が裁判闘争 ( 国による代執行訴訟提起 ) にまで発展し たことで、マスコミ等において今回の裁判 ( 代執行 いう観点から従来の解釈の作法を組みかえること 訴訟 ) と、 20 年前の「代理署名裁判」 ( 最大判平成 8 ・ で、純粋憲法体系に属する規範を安保法体系の規範 として機能的に組み換えるのです。このような主張 8 ・ 28 民集 50 巻 7 号 1952 頁 ) とが比較されますが、対 象となる法律の性格が大きく異なります。 が通れば、この国の法秩序は崩壊し、政府が「日米 「代理署名裁判」では、駐留軍用地特別措置法に 同盟の信頼が損なわれる」と言えば何でもありにな 基づく適法性が争点となりました。この法律は、米 ってしまいます。これまでは「例外」であった安保 軍に基地を提供するためにつくられた法律です。そ 体系が、本体の憲法体系を飲み込んでしまうことに のため、沖縄県知事の代理署名拒否は安全保障上の なります。 公益を害するという国側の主張が通ったのです。 3 私人なりすまし しかし、今回の訴訟で問題になっている公有水面 埋立法や地方自治法は日米同盟とはまったく関係の 日本の国家は、沖縄の米軍基地問題への関わりに ない法律です。地方自治体の長には、その地域の住 おいて、これまで米軍基地に対して裁判管轄権が及 民の安全や暮らし、自然環境を守る責任と権限があ ばず、国も規制権限が及ばないとする「対米国従属 り、それを規定しているのがこれらの法律です。 ( 主権制限 ) 国家としての顔」と使用期限切れの不 日本には「憲法体系」と「安保法体系」の 2 つの 法占拠を法改正により遡及適用し適法とする等の 法体系があると言われていますが、駐留軍用地特別 「強権的法治国家としての顔」を使って、沖縄の基 措置法は後者で、公有水面埋立法や地方自治法は完 地問題に法的に対応してきました。この 2 つの顔に 全に前者です。 加えて、翁長知事による辺野古埋立承認取消凵 . こ対 県側はこれらの法律に基づいて、知事の承認取消 して、国は、「私人」になりすます新たな「顔」を しは適法だと主張しています。一方、国側は、法律 みせています。国が「私人」になりすます背景には、 がそもそも前提としていない「日米同盟の信頼」を 公約を反故にして辺野古埋立を承認した仲井眞県政 掲げて、これこそがすべてに優先される「公益」だ から、沖縄の民意を汲みとった翁長県政への移行が と主張しているのです。国側は、純粋に憲法体系に あります。仲井眞前知事の辺野古埋立承認に対して 住民等による取消訴訟が提起されていますが、その 属する法規範 ( 公有水面埋立法、行政不服審査法 ) を、 憲法に照らした従来の解釈の作法に則して解釈・運 中で、国は、県の答弁書の形 ( 注 : 国から派遣され 用するのではなく、安全保障上の必要性・公益性と て県代理人となった訟務検事が原稿を作成して , 県の 沖縄県知事 埋め立て 承認取消 沖縄防衛局 私人 ?