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検索対象: 法律のひろば 2015年10月号
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1. 法律のひろば 2015年10月号

れ、「総括基準」として、とりまとめら 直接的な因果関係を持たない経済損 生命・身体的損害を伴わない精神的 れ、仲介委員が行う和解の仲介に当たっ 害 ( 風評被害や間接被害 ) についても損害 て参照されるものとされた。ソフト・ロ 損害と認定 生命・身体的損害を伴わない精神的損 ーたる「中間指針」から派生的に産み出 「中間指針」は、風評被害を「報道等害は、一般不法行為においては、名誉毀 されたソフト・ロ 1 といってよい。「総により広く知らされた事実によって、商損の場合を除くと、ほほ認められていな 括基準」は、避難者の第 2 期の慰謝料、 品又はサ 1 ビスに関する放射性物質によ いようである。これに対し「中間指針」 精神的損害の増額事由等、自主的避難をる汚染の危険性を懸念した消費者又は取は、これを損害として認め、具体的に対 実行した者がいる場合の細目、避難等対引先により当該商品又はサービスの買い象者を示すとともに、損害額を定型化し 象区域内の財物損害の賠償時期の 4 項目控え、取引停止等をされたために生じたている。 につき、基準を定める。 被害」を、間接被害を、「第一次被害が 生じたことにより、第一次被害者と一定 政府指示に基づかない自主的な避難 による損害 の関係にあった第三者に生じた被害」 3 小括】ソフト・ローにおける を、それぞれ意味するものとし、それら 「中間指針は、政府指示に基づかな 「原子力損害」の特徴 い自主的な避難による損害も賠償すべき を損害項目として正面から位置づける。 「中間指針以降の一連の指針は、あこれらの損害は、報道機関、消費者、取損害としてこれを認め、自主的避難を行 った者の生活費増加費用等と自主的避難 くまでも原賠法の規定を補充・具体化す引先等といった「第三者」の意思・判断・ るものである。ただ、広範な地域の多数行動等が介在する点に特徴があるとこを行わず滞在し続けた者の精神的苦痛等 の被害者に対し、迅速・公平に実施するろ、かかる特殊な類型の損害の位置づけの損害を同額としている。 という原子力災害固有の事情を反映し、 は、一般不法行為法上必ずしも明確にな 営業損害の算定方法 一般の不法行為とは、やや異なる項目・ っているとはいえない。「中間指針」は、 範囲をもって損害が認定されることとさかかる損害も、放射性物質による汚染と 「中間指針」は、営業損害の算定方法 れている。結果として、日本法においていう、必ずしも明確ではない危険を回避として、合理的な複数の算定方法がある ことを認め、いずれを選択したとしても は、原子力損害の範囲につき、 1 ド・するための市場の拒絶反応によるものと 合理的と推認する ロ 1 とやや異なったソフト・ロ 1 が形成位置づけ、かかる回避行動が合理的とい ば ろ されつつあるといっても過言ではない。 える場合には、因果関係があるとし、具 ひ 営業及び就業における中間収入の不の おおよその特徴を掲げておけば、次のと体的に特定すべく、産品・地域を示すこ 法 ととしている おりである。 控除 「中間指針」は、政府指小による避難

2. 法律のひろば 2015年10月号

特集スポーツ振興の未来ー法的立場からみた課題と紛争解決 スポーツに関する国際的な法整備 「法整備」が必要な二つの分野について スポーツに関する国際的な法整備 検討を加える。 ニスポーツ法の法源の性質か ら考える「国際的な法整備」 u•-o ーー日法律事務所弁護士山崎卓也 が必要な分野 スポーツの世界において、いかなる事 景とする「法整備」については謙抑的な 一はじめに 柄が「国際的な法整備」が必要といえる 要請が働く。 しかしながら、現実に、スポーツの世分野なのかを考えるに当たっては、いわ オリンピックや、サッカーのワ 1 ルド カップのような大規模な国際スポ 1 ツィ界において、その実現可能性の大小はとゆる「スポーツ法」の法源に関する一般 べントのみならず、スポーツの世界でもかくとして、「国際的な」「法整備」が的性質を理解することが前提として不可 は、大小、様々な規模で国際大会が行わ必要と考えられる領域は存在する。それ欠といえる。 一般に「スポ 1 ッ法」とは、スポーツ れており、それゆえ国際的な取引関係、は後述するように、スポーツにおける団 体自治の限界から導かれる二つの局面、界という特殊な業界において、関係者に 法律関係も頻繁に形成される。 したがって、一般的には、スポ 1 ツにすなわち、①団体自治の「権限上の限界」おいて「法規範 . として遵守されている との関係で、団体とは関係のない第三者ものを対象として呼称されることが多い おいても「国際的な法整備」の必要性は、 あるといえるのであろうが、スポ 1 ツに に効力を及ばす必要がある場合と、②団が、概して、そのような法規範の多くは、 限らず、あらゆる分野において国際的な体自治の「権限濫用抑止」の関係で、団国家が定めた成文法や国際間条約といっ 法整備は、およそ簡単に実現できる事柄体の権限に制限を加える必要がある場合た、いわゆるハ 1 ド・ロ 1 に由来するも ではないことを考えれば、現実的な必要の 2 点である。①はスポーツ団体の権限のではなく、国際オリンピック委員会 ( — 性や実現可能性を無視して、闇雲に国際を広げる観点からの、②はスポ 1 ッ団体 (0) や国際サッカー連盟 的な法整備の必要性を唱えることは、必の権限を狭める観点からの法整備といえのような、大規模国際スポーツィベント る を主催する団体を中心とする、 ) 竸技団体引 ずしも有益とはいえない。 以下では、団体自治が尊重されるスポが定めた団体内規則や関係者間の契約をの さらにいえば、スポーツの世界は、伝 1 ツの世界における「法規範」の特性に「法源」とするものである。例えばオリ法 統的に、団体自治の尊重が重視されてき ンピック憲章や、の規則など大 ており、その観点からも国家権力等を背ついて触れた上で、前記の「国際的な」

3. 法律のひろば 2015年10月号

であるが、実際問題として、—00 やは世界か国にとどまり ( 注 3 ) 、日本も市場に対して、賭けの対象とされている といった大規模国際競技団体が、未締結。 ) 。 競技大会の主催者が、ブックメーカ 1 を スポーツにおいて、こうした「無体財コントロ 1 ルし、経済的利益の還元を得 大会招致国に対する強い交渉力を背景 に、そうした立法的措置等を要求してい産」に関する国際的な保護を検討すべきるためのロジックとしても議論されるこ ろ る実態があることに鑑みれば、後述する他の事例としては、例えば、選手の肖像とがある。なお、そうしたオンラインスひ ような、当該国際競技団体に対するガバ権があげられよう。ここでいう肖像権とポ 1 ッペッティング市場からの経済的利 ナンス規制についての国際的な法整備なは、我が国の判例でいうところのパプリ益の還元を得るためのロジックとして は、スポ 1 ツィベント主催者に、スポ 1 ど一定のコントロ 1 ルが行われることをシティ権、すなわち個人の氏名、肖像と 条件に、こうしたアンブッシュ・マ 1 ケいった個人識別情報の商業的利用に関しッペッティングに関するコントロ 1 ル権 ティング事例に対する適切な国際的保護て働く権利のことであるが、このような ( 知的財産権 ) を創設 ( 注 4 ) すべきであ のための法整備を検討することも一考に意味での肖像権 ( 欧州では一般に image るということもしばしば主張されてお 値するものと思われる。 right 米国ではユ gh ( of publicity と呼ばり、現に、例えばフランスでは、 201 なお、こうした国際大会に関する知的れることが多い。 ) も、スポーツビジネ 0 年にそうした権利が立法上創設されて いる ( 注 5 ) 。現実的な実現可能性はとも スにおいて価値ある権利として取引され 財産権保護についての国際法としては、 いわゆる 5 個のリングから成るオリンピることが多いにもかかわらす、成文法でかくとして、大規模なスポ 1 ツィベント 主催者を中心に、 ック・マ 1 クの保護について定められ保護されている例が世界的にも少なく、 こうした「権利」の創 設、及び「国際的保護」が今後主張され た、オリンピック・シンポルの保護に関それゆえ、権利範囲の曖味さや、権利行 するナイロビ条約 ( Na 一 rob 一 Trea on the 使上の脆弱性が問題となることが多い権ていく可能性もあり、そうした観点から 利である ( そうした肖像がひとたび映像の「国際的法整備」は、後述するような、 Protection of the OIympic Symb01 19 に収録された場合における映像の著作権国際競技団体に対する適切なガバナンス 81 年採択、 1982 年発効 ) がある この条約の締約国は、オリンピック憲章が、国際的な条約に基づく、著作権や著規制などを条件に、検討されてもよいと で定義するオリンピック・シンポル ( 前作隣接権法制のもとに、世界規模での保思われる。 記のオリンピック・マーク ) やこれを含護を受けるのと対照的である。 ) 。 こうした肖像権に関する「国際的な法 む標識について、商標登録を拒絶し、又 は無効とする義務や、商業的利用を禁止整備」の必要性は、近年、欧州を中心に、 する義務を負うものとされている ( ただ急速な規模で拡大している、オンライン し 2 015 年 8 月現在において、締約国スポ 1 ッ賭博 ( スポ 1 ッペッティング ) 2 スポーツにおけるインテグリ ティ確保のための規制 第三者効が必要とされるもう一つの規

4. 法律のひろば 2015年10月号

競技団体に、スポ 1 ッ業界における事実オリンピック委員会 (ZOO) や、加盟財産権を国際レベルで保障したり、イン 上の「立法権」が与えられ、そうした競国サッカ 1 協会 (ZC>) に対して、政治テグリティ確保のための規制を国際レベ 技団体が作る団体内規則や関係者との契的な干渉を厳しく規制していることも多ルで整備するといった「恩典」 ( 注リを 現に、 ZOO やの人事、活動等与える代わりに、国際的なガバナンス規 約が、業界における「法規範、としてのく、 ろ 制に服させるという規制の在り方もありひ 機能を果たしている。しかしながら、そについて、当該国の政府 ( スポ 1 ッ省な 律 うしたことを無制限に認めれば、競技団ど ) が干渉した場合に、資格停止処分を得るところであろう。 法 下すなどの例も多く見られる ( 注四。すしかしながら、前記各国とは異なり、 体が、「立法権」を濫用的に行使して、 関係者の基本的人権を侵害する「立法」なわち国際競技団体が、「団体自治の確競技団体の団体自治尊重の観点から、法 を行うおそれがあり、実際にも、競技団保」の観点から、関係各国の国家権力を規制に謙抑的である国も多く、それゆえ 体が作った規則に対して、関係各国の法も制限しようという傾向まで見られるの前記のような規制に対して、競技団体側 の強い抵抗が予想されることから考えれ 律をもとに、その有効性が裁判などによである ってチャレンジされ、その結果効力を否このような中では、そうした国際競技ば、その実現は容易ではない ( 注リ。 かに法が、スポ 1 ッ産業における大 定されるに至ったものも見られる ( 注団体に対して、グッド・ガバナンスとい う観点から、一定の規制を課すための「国きな収入源である欧州地域の経済的活動 このように、スポーツにおける団体自際的な法整備」が必要であるといえる に適用され、国際競技団体にとっての一 定の脅威となるにしても、それら団体 治といっても万能なものでは当然なく、 は、往々にして、団体自治とスポーツの 関係各国の法律などによる限界、すなわ 「法の支配」実現への試みー 0 特殊性 ( 注リを強調して、そうした法律 ち「法の支配」という観点からの限界が 条項等契約スキームによる の適用が免除ないしは制限されると主張 ある。しかしながら、当該競技団体が、 「ガバナンス法整備」 — 0 0 や— < のように国際的に強い する傾向にあるため、そうした脅威も常 影響力を持つ、国際競技団体であるよ、つ世界各国の法制の中には、フランスやに効果的といえる保障はない。 な場合は、いかに関係各国の法律などをイタリア、スペインのように、競技団体そこで、最近では、そのようなハ 1 に関して、積極的に法律を作って規制を口 1 としての規制よりも、国際競技団体 用いてその権限を制限しようとしても、 その影響が部分的なものにとどまるなど行っている国もあり、そのようなガバナという国際的影響力の強い民間団体の 0 限界があることも多い。ことに昨今でンス法制を国際レベルで実現していくの (-•OX という観点からの実効的規制が試み は、 *OO やのような国際競技も一つの考えといえる ( 注Ⅱ ) 。前述したられるようになってきている 団体が、その規則において、傘下の各国ように、競技団体に対して、一定の知的すなわち、昨今、国際的な企業などに

5. 法律のひろば 2015年10月号

特集スポーツ振興の未来ー法的立場からみた課題と紛争解決 スポーツに関する国際的な法整備 対して要求されているⅡ企業の社ポーツ仲裁裁判所 (o<n) が「司法」規約に定められた差別禁止規定 ( 注 会的責任という観点からの、利害関係人機関として強い影響力を有しているが、 リなどの制定につながっているばかり への説明責任や、持続可能な社会への貢最近、その仲裁人の構成の中立性を疑問でなく、そうした要請が、大規模スポ 1 献という観点からの人権尊重、労働環境視する動きが出てきている ( 注 ) 。こう ツィベントにおける物品等の調達におけ 整備、環境への配慮、腐敗防止義務とい した国際的影響力の大きい「司法 , 機関るサプライチェーンなどにも及ぶ結果、 った要請が、国際競技団体に対しても行 についても、公正中立性などの担保と い例えばロンドン五輪では、組織委員会の われるようになってきているのである。 う観点から、一定の国際的な法整備が考、持続可能な社会への貢献という その一例が、国連グローバル・コンパクえられてしかるべきであろう。 観点から、大会グッズなどの製造過程に トか 2014 年 3 月に発表した「スポ 1 おいての人権侵害、環境破壊かないこと ツのスポンサー契約等に関する腐敗防止 をサプライヤ 1 に求めるとともに、そう 五おわりに 5 さらなる展開・ 実践ガイド」 ( 注 ) である。これは、ス した疑いがある場合についての苦情処理 スポーツを通じた「国際的な ポーツ団体とスポンサ 1 契約をしようと システムを設け、関係者からの申立てを 法整備」 する企業が、の観点から、スポン 受け付けるといった対処を行うにまで至 サ 1 対象である当該スポ 1 ッ団体の不祥以上、スポーツにおける国際的な法整っている ( 注。 2014 年のソチ五輪 事 ( 人権侵害への関与など ) 、不正な利備が必要な場面について見てきたが、前 の際に、ロシア政府の反 *-a 政策が 益供与の防止のためにとるべき手段を六記という観点からの、スポーツ団問題とされたように、メガスポーツィベ つのステップに分けて詳細に解説するも体のグッド・ガバナンスの実現という現ントに対する oc,ox 的要請に基づく人権 のであり、国際競技団体に対して「法の象は、「スポ 1 ツにおける国際的法整備」擁護等の実現への社会的プレッシャーは 支配」を及ばすためのグッド・ガバナン にとどまらず、「スポ 1 ツを通じた国際高まっており ( 注四 ) 、こうした動きは、 ス実現手段として注目される。 的法整備」を実現する役割をも担い始めともすれば、国際間条約など国家間合意 また、昨今では、そのようなスポ 1 ッている。すなわち、オリンピックや、サという枠組みによっては実現の難しい 界における「立法。あるいは「行政」権ッカーワールドカップなど、注目度の高「国際的法整備」に向けての役割を、あ に対する「法の支配」の要請のみならず、 い大規模イベントについては特に、スポる意味スポーツが担い始めてきているも ろ 「司法」制度に対する「法の支配」の必 1 ツが、平和の実現や、持続可能な社会のともいえる ( 注。 ひ の 要性についても議論が起こってきていの実現のためのプラットフォ 1 ムである 律 法 ( 注 ) る。例えばスポ 1 ツ界においては、—O べきとの役割が期待されており、そのこ O 、などに承認されている、スとが、例えば、オリンピック憲章や ( 1 ) ただし後述するいわゆるポスマン判決のように、

6. 法律のひろば 2015年10月号

特集スポーツ振興の未来ー法的立場からみた課題と紛争解決 スポーツに関する国際的な法整備 制類型が、スポーツにおけるインテグリ ー代表チームの組織的なドーピングスキれれば、故意過失の有無にかかわらず、 ティ確保のための規制である。その典型ャンダルを警察機関の捜査によって明らアンチ・ドーピング規程に違反したもの 例は、前述したように、アンチ・ドーピかにできた。 ) 、そうでない場合は、第一一一とみなされる。 ) ( 注 6 ) が採用されている ことである。仮にアンチ・ドーピング法 ング法制であり、本来、アンチ・ド 1 ピ者に対する捜査権限を持ち得ないため、 ングの理念を完全な形で実現するために 2009 年川月には、—00 のロゲ会長制について国際的な刑事法整備が必要で は、規程を含む、スポ 1 ツ界に ( 当時 ) が、 2018 年冬季五輪以降のあるとしても、このような厳格責任の導 おける競技団体の規則に拘東されない第招致都市に対し、ドーピング違反を警察入については、慎重でなければならな 三者に対しても効力が及ぶような規制を当局が捜査するための国内法整備を求めい。 考えなければならないといえる ていく考えを明らかにしている なお、ド 1 ピングと同様に、スポーツ この点、ド 1 ピングに関しては、 20 こうした中では、ドーピング事犯に対におけるインテグリティを脅かすものと して問題となっている八百長行為につい 05 年の第芻回ュネスコ総会において採する各国刑事当局の捜査権限、アンチ・ 択された「スポーツにおけるドーピングドーピング機構との情報共有などを含ても、しばしば国際的な法整備の必要性 防止に関する国際規約」が存在し、我がむ、アンチ・ドーピング法制についてのが主張される ( 注 7 ) が、もし同様にそれ 国も 2006 年肥月に締結しているか 国際的な刑事法整備を考えるのも一案とが国際的な刑事法整備という話に至るの これは、あくまでを中心とした いえる。しかしながら、それを進めるにであれば、当然のことながら、訴追対象 国内レベル及び世界レベルの協力活動を当たっては、当然のことながら、関係者者となる選手などの基本的人権保障への 推進・強化する体制の確立を目的とするの基本的人権保障への配慮が不可欠であ配慮が不可欠というべきである ( 注 8 ) 。 もので、いわゆる規程の内容にる。この点、仮に現状の規程を ついて、関係各国に対し、国際法上の義基礎とした刑事法の国際的整備を考える 四「国際的な法整備」が必要 務を創設するなどを目的とするものでは とした場合は、そもそも規程そ な分野②ー団体自治に対する ない ( 同国際規約 4 条 2 項参照。 ) 。 のものに、訴追対象者である選手などの 「法の支配」の要請 このような中では、規程が第基本的人権保障という観点からは問題な 三者効を有しない以上、例えば、 200 点が多いことが留意されなければならな スポーツにおける団体自治と法 ろ 6 年のトリノオリンピックのときのよう い。その代表例が、近代刑事法の大原則 ひ の支配 の 、大会開催国において、アンチ・ドー である無罪推定の原則や責任主義の原則 律 ピングに関する刑事法が存在する場合はを覆す、厳格責任 (strict liability) の原前述のように、スポーツの世界におい法 格別 ( これによってオ 1 ストリアのスキ則 ( 競技者の検体から禁止物質が発見さては、「団体自治の尊重」の観点から、

7. 法律のひろば 2015年10月号

規模な国際スポ 1 ツィベントの主催者がた国際競技団体の規則遵守義務を負わな ない ) 強い影響力を持っ競技団体」に対第 定めた団体規則は、それを遵守しない者 い、スポーツ界とは全く関係のない第一二しての、国際レベルでの「法の支配」を が、当該国際競技団体が主催する大会へ者に対して拘束力を及ばすことはできな どう実現するかが問題となる。 の参加資格を失うという不利益を受けるい スポーツにおいて、国際的な法整備の ろ ひ ため、そうした不利益が強制力となっ もう一つは、当該私的団体である国際必要性を考えなければならない局面は、 の て、各加盟団体、選手に規則を遵守させ競技団体が、あたかも治外法権的に、団大別して前記の二つであるといえる。以 る効果が生まれる。こうした形での「法体自治として許容される範囲を超えて、 下、前記の二つについて、個別に検討し 規範」は、スポ 1 ツにおける団体自治のその制定する規則に、基本的人権を侵害ていくこととする 帰結として、古くから、スポ 1 ツ界におする程度にわたる内容のものを盛り込む いて用いられてきた。 場合、その効力が制限されるべきである 三「国際的な法整備」が必要 このような「法規範」は、私的団体がことである。つまり、例えば日本国にお な分野①ー第三者効が必要な 制定した規則を、大会に参加する関係者いて、国会が、基本的人権を侵害する内 場合 が遵守するという意味において、私的な容の法律を制定した場合に裁判所におい 契約関係をその拘束力の源泉とするものて違憲無効とされるのと同様な意味にお スポーツにおいて「国際的な法整備」 であるが、そうであるがゆえに、以下の いて、スポーツ界において、国際競技団が必要といえる第一の分野は、スポ 1 ッ 二つの意味において、その効力・妥当性体が、そうした規則を制定した場合に、 に関する「法規範について、スポーツ に限界を有することになり、ここにおい国際的に影響のある形で、それを無効と界の団体規則等に基づく私的契約関係の て、いわゆる成文法などのハ 1 ド・ロー して救済する方法を担保しなければなら枠組みに入っていない、し 、わば「業界外 がその役割を果たすべき領域が存在するない。もちろん、こうした場合において、 部の」第三者に対しても効力を及ばした ことになる。 当該国際競技団体の規則の効力が及ぶ、 い場合である。これには大きく分けて、 一つは、そうした「法規範」は、当該関係各国の国内法 ( 又は法のような①スポーツ産業において金銭的価値を有 私的団体と契約関係にない第三者を拘東一定の複数の国をカバーする地域の法する無体財産へのフリーライドを防止す できないという点である。例えばいかに律 ) を用いて、その規則を無効としている必要という観点からの規制と、②スポ 世界アンチ・ド 1 ピング機構 (><Q く方法もあるが、そうした救済の効力は 1 ッ産業における重要な産業的価値・イ <) の世界アンチ・ドーピング規程 (* 基本的に当該国内 ( 法の場合はンテグリティ ( 注 2 ) を確保する必要とい 規程 ) が、世界の様々な国際競技域内 ) に限られることになる ( 注 1 ) ので、 う観点からの規制の二つが考えられる 団体に支持されているとしても、そうし特に、「国際的に ( 国家に勝るとも劣ら以下、順に述べる。

8. 法律のひろば 2015年10月号

特集 とされるという例も出てきており、いわばグッド・ガ 0 法違反とされた国際競技団体の規則が、それを機 (world Anti-Corruption Agency) のような組織を設け ハナンスの実現方針の違いという点にまで制裁が科せ。 るべきだという意見もあるが反対論も多い。 に改正され、結果的に地域のみならず全世界的な 5 られるという事例が出てきている状況である。 ( 8 ) なお、国際的な刑事協力を定めた例としては、フ 規模で改正が実現することになる例もある。 0 2 ( 2 ) スポ 1 ツにおいて「インテグリティ」が重要な産 ーリガン対策に関する地域の条約、象 Eu 「 0 目 ( Ⅱ ) 包括的なガバナンス法制でないが、国際憲章としば て、スポーツ権などを明記したものに、 1978 年にひ 業的価値とされる理由は、スポーツに期待されている Convention on Spectator V101ence and Misbehaviour at 社会倫理的観点からのみではなく、スポーツの本質的 sports Events and in particular at F00tball Matches' ・ 採択された、ユネスコ「体育スポーツ国際憲章」 がある。 ( lnternational Charter of Physical Education and 価値であるところの試合結果の予測不可能性を確保す るためであるという点が大きい。この意味でドーピン ( 9 ) その典型的な例が、競技団体が制定した、選手の S をきがある。法的な拘東カを有するものではない 移籍の制限に関するルールが争われた、 1995 年の が、各国が守るべき基本的権利を盛り込むというアプ グや八百長のように、試合結果の操作につながる行為 ローチは国際的法整備の一つの在り方として参考にな は、試合結果の予測不可能性を当然の前提としている ポスマン判決 (Union Royale Belge des Societes de ろう。なお、この憲章は 2015 年中に大幅な改正 ( イ F00tbaII Association ASBL v Jean ー Marc Bosman 観客、スポンサ 1 などの期待を裏切ることになり、ス ンテグリテイやグッド・ガバナンスの理念などに関す ( 1995 ) C ー 415Z93 ) である。この事例では契約期間満 ポーツ産業の価値を損なうという意味で「インテグリ る規定を含む ) が予定されており、新しい憲章名は、 了後の移籍に移籍金を課すという移籍制限制度が ティ」確保としての規制が必要なのである。 法違反とされ、その結果、 2001 年にが国 "lnternational Charter 0f Physical Education, Physical ( 3 ) http ://www.彑を.int/treaties/en/ShowResults.jsp? 際移籍のル 1 ルを全面改正し、全世界の国際移籍につ Activity and S をユとなる予定である (Physical Activ ・ 一目 en 年尊 ea 」 d 2 ( 2015 年 8 月日アクセス ) いて契約期間満了後の移籍には移籍金がかからないも ( 4 ) 前述のようにスポーツィベント ( 試合 ) は、それ ぞが付加 ) 。 のとされるよ、つになった。 ( ) スポーツ界においては放送権の販売方式などにつ 自体としては知的財産権の保護対象ではないのが普通 いて独禁法違反性が問題とされることもあり、そのよ であり、それゆえ、賭けの対象とされたとしても、そ ( 川 ) オリンピック憲章条 6 項・ 9 項、規約 うな事例について一定の条件で独禁法の適用を免除・ 条、条参照。こうした規定に基づいて ZOO や Z れについて知的財産権を根拠にコントロールしていく 制限することなどもこうした「恩典」となり得る。 が制裁を受ける例は、当該 ZOO 、の選挙など ことは困難である。 に政府が干渉したことを理由にする場合が多いが、最 ( ) もっとも、新たな条約などの国際的な法整備が難 ( 5 ) T. M. C.Asser lnstituut ほか著 "Study on sports or ・ しいとしても、例えばが、関連条約・勧告の解 近では、 2015 年 5 月に下されたインドネシアサッ ganisers' rights in the European Union" 13 5 頁以下 釈として、適用対象となる「労働者」にプロスポーツ カー協会に対するの制裁のように、インドネ 参照 (http ://ec. europa. eu/sport/news/2014/docs/ 選手が含まれる、といった解釈を行うことによって事 シア政府が、協会が課すクラブライセンスの基準とは study-sor2014-final-report-gc-compatible—en.pdf ( 2 実上の国際的な法整備を行うことは、比較的実現可能 異なる基準を持って臨んだ結果、政府の基準を満たさ 015 年 8 月日アクセス ) ) 。 ないクラブをリ 1 グに参加させないという決定を下し 性の高い選択肢として考えられよう ( 世界的に、関係 労働法制上、プロスポーツ選手が「労働者」として扱 たことに対して、それが不当な干渉として制裁の理由 ( 6 ) 規程 2 ・ 1 条 ( 7 ) < のような国際的組織として、 < 0 <

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・懲罰制度や紛争解決制度の規定 イ ( 高潔性 ) 、⑧危機管理の八つの分野裁定に関する不服申立てに対してその について、それぞれフェアプレ 1 ガイド 是非を判断する場面 は、特定スポ 1 ツにおける代表選 ラインを策定している の三つの場面を想定している。 考や懲罰処分等を独占的に統括してお ガイドラインが対象とする範囲につい これらの紛争について「紛争解決に関 り、国民に適正手続を要請する憲法第訂ば ろ ては、 Z による不適切経理面に限らするガイドライン」は、 条や公平な裁判を受ける権利を与える憲ひ ず、が有する機能としての、意思決・現在の裁判実務では、の各種決定法第条の趣旨を可及的に充足するべ律 く、懲罰制度や紛争解決を整備すること 定機能 ( 立法権限 ) 、業務執行機能 ( 行 をめぐる紛争が、必ずしも「法律上の が求められる。 政権限 ) 、紛争解決機能 ( 司法権限 ) を争訟」とは取り扱われない可能性があ ること はじめとする、運営全般を対象とし の実情に照らして、独立・中立か っ専門性を有する懲罰機関や紛争解決機 ている。これは、の不祥事が不適切・仮に審理の対象とされたとしても審理 関が内の定款や諸規則において具体 経理面に限られないこと及び本事業の目 に長期間を要し、実効的な紛争解決に 的に定められていることが必要になる つながらない可能性が高いこと 的が、競技の普及・振興・競技力向上の ・規定に従った実施 大前提となるの組織基盤を確立・強などから、通常裁判を利用することは、 イすることであることによる。 スポ 1 ッ紛争の特殊性を踏まえた適正な 定められた制度によらない形で懲罰や 解決を期待し得ないと述べている。そし 紛争解決がなされるという事態が生じる ことなく、規定に従ってその制度が実施 スポーツ紛争解決に関するガイドラて、このような現状を踏まえれば、 内部の懲罰手続、紛争解決処理手続を整されていることが必要である。 インの規定 ガイドライン中の「の懲罰、紛争備し、スポ 1 ッ仲裁制度を活用すること -a ・懲罰機関や紛争解決機関が、独立・ 中立であり、専門性を有すること 解決に関するフェアプレーガイドライが、スポ 1 ッ紛争を迅速かっ適正に解決 ・独立性・中立性 ン」 ( 以下「紛争解決に関するガイドラするには重要と提言している。 懲罰機関や紛争解決機関が、当事者か イン」という。 ) では、における懲以上を踏まえ、「紛争解決に関するガ ら独立して公正中立な判断を行えるもの 罰、紛争解決の場面として、 イドライン」では、懲罰制度、紛争解決制 でなければならない。 ①トラブルを発生させた加盟団体や登度の構築に向けた方策として、以下 ・専門性 t+-q の 6 項目を提言している 録者に対して自身が懲罰等不利益 懲罰制度や紛争解決制度を実効的に機 処分を裁定する場面 能させるためには、事案の実態や特性に ・ ZLL の懲罰制度、紛争解決制度 ( 不 ②加盟団体、登録者相互間の契約上や 服申立制度を含む ) が規定され、規定対する深い理解と適正な懲罰又は紛争解 金銭的トラブルを裁定する場面 に従って実施されていること 決に求められる理論的かっ実践的なノウ ③代表選考等の決定、①や②に対する

10. 法律のひろば 2015年10月号

項に違反するとは認められない 行ったこと ( 以下「暴力行為要件」判断するのが相当である。 れているものだけで少なくとも四 という。 ) 、かっ、指定暴力団員の 件に達しており、ほば毎年認知さ 0 これを本件についてみると、① 一 0 四本件処分の適法性 所属する指定暴力団等の指定暴力 < が原告の代表者となった平成貶れているという暴力行為における 0 つ」 特定危険指定暴力団等の指定団員又はその要求若しくは依頼を年以降本件処分時までの間に、原凶器使用の実態があることに加 は、「指定暴力団等」 ( 暴対法 2 条 受けた者が更に反復して同様の暴告の構成員により少なくとも 5 件 え、⑤被告が暴力行為要件に該当ひ の 5 号 ) に対して行われるものであ力行為を行うおそれがあると認めの要件該当暴力行為が複数年にわすると主張する原告の構成員が行 律 法 るところ、原告は、本件処分前のるとき ( 以下「おそれ要件」とい たり反復して敢行されており、本った 7 件の事案の際に原告の代表 平成年 6 月日に 3 条指定処分う。 ) と定めている 件処分時の直近の 1 件は本件処分者等であった者の大半が本件処分 を受けているから、指定暴力団等 被告は、原告の構成員が行ったの約 2 年前という時間的にも近接直前においても原告の代表者等で に該当するものと認められる 7 件の事案について暴力行為要件した時期に敢行されたものであるあり、前記の件の報復等目的の 暴対法条の 8 は、特定危険指 に該当する旨主張するところ、そこと、②平成年以降本件処分時暴力行為に関与した者の大半が本 定暴力団等の指定要件として、①のうち 5 件については、暴力的要までの間において、原告の構成員件処分直前においても原告の構成 当該指定暴力団等の指定暴力団員求行為に関連して凶器を使用してにより件の報復等目的の暴力行員であることに照らせば、原告の がした暴力的要求行為又は当該指人の生命又は身体に重大な危害を為が敢行されており、このうち羽 構成員等が更に反復して要件該当 定暴力団等の指定暴力団員がした 加える方法等による暴力行為に当件は凶器が使用されたものであ暴力行為を行うおそれがあるもの 暴対法貶条の 3 の規定に違反する たるものと認められるから、暴力 をイ・ー 1 牛ま生命身体に重大な危害と認められるから、おそれ要件の 行為に係る準暴力的要求行為 ( 以行為要件に該当するものと認めら を加える方法が執られたものであ存在が認められる。 れる。 下「暴力的要求行為等」という。 ) ること、③原告の構成員に対して さらに、暴対法条の 8 第 1 項 であって、その相手方が拒絶した おそれ要件は、暴力行為要件に少なくとも刀件の暴力的要求行為は、特定危険指定暴力団等として もの ( 1 号 ) 、②当該指定暴力団該当する行為が繰り返されるおそ等に係る中止命令等が発出されての指定に当たり、 1 年を超えない 等の指定暴力団員がした暴対法 れないし可能性をいい、「おそれ」 いることや平成幻年 5 月ⅱ日から範囲内の期間を定めるものとして 条の 2 の規定に違反する行為 ( 以 は客観的に認められる必要がある平成年 5 月四日までの間に原告 いるところ、かかる期間は、要件 下「請求妨害行為」という。 ) ( 2 ところ、かかる要件の有無を判断の構成員により敢行され中止命令該当暴力行為が行われるおそれが 号 ) のいずれかの行為が行われたするに当たっては、要件該当暴力等が発出された暴力的要求行為のあると認められる期間をいうもの 場合において、指定暴力団員又は行為の発生頻度、当該暴力行為に内容、④平成貶年以降本件処分時と解するのが相当である。これを その要求若しくは依頼を受けた者関する構成員の一言動、暴力行為に までの間において、原告の構成員本件についてみると、平成年以 が当該行為に関連して凶器を使用おける凶器の使用状況、暴力的要が敢行した銃器、手りゅう弾その降本件処分時までの間、長期にわ して人の生命又は身体に重大な危求行為等又は請求妨害行為の発生他高度の殺傷力のある凶器等の所 たり、多数の要件該当暴力行為及 害を加える方法による暴力行為を状況等の事情を総合的に勘案して持又は使用に係る事件は、検挙さび暴力的要求行為、報復等目的の 0 0