競技者 - みる会図書館


検索対象: 法律のひろば 2015年10月号
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1. 法律のひろば 2015年10月号

特集スポーツ振興の未来ー法的立場からみた課題と紛争解決 スポーツ紛争の解決手段と仲裁制度における代理人の実務 実現及び国際社会の調和ある発展に寄与断 ( ーー 2012 ー 003 ( 軟する必要がある。また、競技団体の定款 することを目的とする」と規定したこと式野球 ) ) があったが、規則が改正されや規程、規則等は、改正等が行われるこ は、スポーツが公益や一般法秩序にも深たわけである。これらの者の地位に関わとも多い。遺憾ながら、一旦規定してい く関連していることの証左である。実際る紛争については、仮処分を含む裁判所た自動応諾条項を廃止した例もある。 にも、スポ 1 ツに深く関与している競技の利用の可能性があると思われるので、 スポ 1 ッ仲裁規則 3 条 1 項は、「この 者等は多く、そのような競技者等の地位留意が必要である。 規則において『競技団体』とは、次の各 にとって競技団体の決定等が与える影響 号に定めるものをいう。」とした上、公 は、経済的なものや精神的なものも含め 益財団法人日本オリンピック委員会、公 一一仲裁の利用 重大なものであり、法的利益と評価すべ 益財団法人日本体育協会、公益財団法人 きことも多いと考える。争訟性を広く解 日本障害者スポーツ協会、各都道府県体 仲裁合意 することは、これら競技者等の権利利益 育協会とともに、第 5 号として「前 4 号 の確保にとって必要であり、また、競技スポ 1 ッ仲裁には、当事者間に、当該に定める団体の加盟若しくは準加盟又は 団体の健全性ないしガバナンス強化、真紛争をスポーツ仲裁パネルに付託する旨傘下の団体」と「傘下の団体」を含む旨 の意味での自律性を促進する効果もあるの合意が必要である。競技団体又はその規定している。これは、自動受諾条項を と考える。争訟性が肯定されても仲裁合機関が競技者等に対して行った決定に対採択した競技団体の傘下の団体について 意がある場合は、紛争の解決は仲裁に委する不服については日本スポ 1 ッ仲裁機も、自動受諾条項の効果を及ほそうとし ねられるのであるから、争訟性の肯定は構の仲裁にその解決を委ねる旨の条項た規定である。実際にこのことを認めた ものとして、例えば 仲裁合意や自動応諾条項の採択を促進す ( 自動応諾条項 ) を規則中に採択してい る効果も有する。 る競技団体が増加しているが、まだ採択 09 ー 001 事件の仲裁判断において、 他方、日本スポ 1 ッ仲裁機構は、 20 していない競技団体も相当数ある。 20 「機構は、本件仲裁申立てを受けて、申 13 年 9 月 1 日にスポ 1 ッ仲裁規則を改 14 年 9 月 8 日現在で、自動応諾条項を立人と被申立人との間に申立てに係る紛 正し、競技団体の評議員、理事、職員そ採択している競技団体は部である ( 注争をスポ 1 ッ仲裁パネルに付託する旨の の他のスポ 1 ッ競技の運営に携わる者 6 ) 。 合意があるか ( スポ 1 ッ仲裁規則第 2 条 は、同規則上の「競技者等ーには該当し もっとも、競技団体の採択している仲 2 項 ) 、または競技団体の規則中に競技引 ない旨を明定した。」 印会長候補選任の理裁条項は、団体により異なる。つまり、 者等からの不服申立て等についてスポーの 事会決議取消しが求められた事案で競技仲裁条項の文言ないし対象紛争類型の範ッ仲裁パネルによる仲裁にその解決を委法 者等に該当することを前提として仲裁判囲等について差異があり得ることに留意ねる旨を定めているか ( 同規則同条 3

2. 法律のひろば 2015年10月号

競技団体に、スポ 1 ッ業界における事実オリンピック委員会 (ZOO) や、加盟財産権を国際レベルで保障したり、イン 上の「立法権」が与えられ、そうした競国サッカ 1 協会 (ZC>) に対して、政治テグリティ確保のための規制を国際レベ 技団体が作る団体内規則や関係者との契的な干渉を厳しく規制していることも多ルで整備するといった「恩典」 ( 注リを 現に、 ZOO やの人事、活動等与える代わりに、国際的なガバナンス規 約が、業界における「法規範、としてのく、 ろ 制に服させるという規制の在り方もありひ 機能を果たしている。しかしながら、そについて、当該国の政府 ( スポ 1 ッ省な 律 うしたことを無制限に認めれば、競技団ど ) が干渉した場合に、資格停止処分を得るところであろう。 法 下すなどの例も多く見られる ( 注四。すしかしながら、前記各国とは異なり、 体が、「立法権」を濫用的に行使して、 関係者の基本的人権を侵害する「立法」なわち国際競技団体が、「団体自治の確競技団体の団体自治尊重の観点から、法 を行うおそれがあり、実際にも、競技団保」の観点から、関係各国の国家権力を規制に謙抑的である国も多く、それゆえ 体が作った規則に対して、関係各国の法も制限しようという傾向まで見られるの前記のような規制に対して、競技団体側 の強い抵抗が予想されることから考えれ 律をもとに、その有効性が裁判などによである ってチャレンジされ、その結果効力を否このような中では、そうした国際競技ば、その実現は容易ではない ( 注リ。 かに法が、スポ 1 ッ産業における大 定されるに至ったものも見られる ( 注団体に対して、グッド・ガバナンスとい う観点から、一定の規制を課すための「国きな収入源である欧州地域の経済的活動 このように、スポーツにおける団体自際的な法整備」が必要であるといえる に適用され、国際競技団体にとっての一 定の脅威となるにしても、それら団体 治といっても万能なものでは当然なく、 は、往々にして、団体自治とスポーツの 関係各国の法律などによる限界、すなわ 「法の支配」実現への試みー 0 特殊性 ( 注リを強調して、そうした法律 ち「法の支配」という観点からの限界が 条項等契約スキームによる の適用が免除ないしは制限されると主張 ある。しかしながら、当該競技団体が、 「ガバナンス法整備」 — 0 0 や— < のように国際的に強い する傾向にあるため、そうした脅威も常 影響力を持つ、国際競技団体であるよ、つ世界各国の法制の中には、フランスやに効果的といえる保障はない。 な場合は、いかに関係各国の法律などをイタリア、スペインのように、競技団体そこで、最近では、そのようなハ 1 に関して、積極的に法律を作って規制を口 1 としての規制よりも、国際競技団体 用いてその権限を制限しようとしても、 その影響が部分的なものにとどまるなど行っている国もあり、そのようなガバナという国際的影響力の強い民間団体の 0 限界があることも多い。ことに昨今でンス法制を国際レベルで実現していくの (-•OX という観点からの実効的規制が試み は、 *OO やのような国際競技も一つの考えといえる ( 注Ⅱ ) 。前述したられるようになってきている 団体が、その規則において、傘下の各国ように、競技団体に対して、一定の知的すなわち、昨今、国際的な企業などに

3. 法律のひろば 2015年10月号

特集スポーツ振興の未来ー法的立場からみた課題と紛争解決 スポーツ指導と人権 た大きい。これを避けるためには、学校外で競技を継 ある。そのために、スポ 1 ツの競技団体 これらの違法な指導を受け、女子生徒においては、処分のための手続規定と処続できるシステムが併存していることが望ましいが、 は自殺するに至った。しかし、この女子分基準を整備し、処分に当たる機関が適今のところそのようなシステムは整備されていない。 生徒の悔しい思いは、極めて残念なこと正に運用されることが必要となろう。第 ( 4 ) 県立高校陸上部の顧問教諭の体罰、侮辱的発言に に、スポーツ指導の現場では生かされる三に、暴力を用いた指導者を指導の現場誘発されて陸上部の女子高校生が自殺するに至った事 ことはなかった。このような判断事例が から排除できるよ、つに、指導者資格と処案について、体罰等による損害賠償請求を認めたが、 過去にありながら、これを教訓として生分とが連動することである。しかし、現自殺との因果関係を否定したもの。 かすことができず、スポ 1 ッ指導に暴力状では、相談窓口の設置は形の上では進 ( 5 ) 各競技団体に相談窓口が順次設けられているほか、 中立的な第三者が相談を受ける仕組みとして、日本ス が用いられることが許されてきた結果、んだといえる ( 注 5 ) が、そのほかはまだ ポーツ振興センターに第三者相談調査窓口が設置され 再び桜宮高校で自殺者を生んでしまった未整備と言わざるを得ない。 ている。なお、この窓口は、トップアスリートとその のである。これでは亡くなった女子生徒二度と犠牲者を生まないためには、深 関係者に対象が限定されている は浮かばれない。スポ 1 ッ関係者は ( スい / 反省のもとに、これらの整備を着実に ( いとう・たかし ) ポ 1 ッ法に関わっている筆者を含め進めることが必要である。 て ) 、何よりもまず、この点を猛省すべ きである。また、将来、さらに犠牲者を ( 注 ) 生むよ、つでは、桜宮高校の被害生徒も浮 ( 1 ) 産経ニュース。 13 年 9 月川日「衝撃 事件の核心」 かばれない。スポーツ関係者は、過去の 実例に学び、このよ、つな悲しい事態を決 ( 2 ) 詳細は、菅原哲朗・望月浩一郎ほか編「スポーツ における真の勝利』 ( ェイデル研究所、 2 013 年 ) して繰り返してはならないのである。 頁に所収 ( 3 ) 運動部活動において、違う指導者の下で競技を続 八終わりに けようとすれば、転校するほかなく、そのこと自体簡 スポ 1 ツにおいて暴力を根絶するため単にできることではないばかりか、スポ 1 ッ特待生に とっては、退学して競技継続をあきらめるしか現実に に各競技団体において何が必要か。第一 は選択肢はない。運動部活動には、多くの生徒が競技 に、暴力の被害を申告できる窓口が設置 に身近に取り組んできたという功績もあるが、競技継 されることである。第二に、暴力を用い 続を望む生徒を学校に縛り付けることによる弊害もま た指導者に適正な処分が下されることで 41 ・法律のひろば 2015.10

4. 法律のひろば 2015年10月号

あり、「失敗から学ぶ」教材としては最 も優れているものの一つである。 か タ 八競技別に見たスポーツ事故 デ 計 対策 率 の 比 スポーツ安全保険が 2013 年 4 月か 故例 ら 2014 年 3 月までに保険金を支払っ技 各 事 び ッ たスポ 1 ッ事故 ( 注 ) は図 4 のとおりでの 及 ある。 ッ 入ボ か ン 技 競技別に見ると図 4 のグラフのとおり L ノグ % ' 険競 道 0 、、、 ス ツ . 2 呆 2 ほ % ン ポ % であり、サッカ 1 ( スポ 1 ッ安全保険加ス 一手 3 ト グ 3 ト 6 全 5 ジれステ % 技操 % ビ % 空 2 ラ ダ ッ ニト競体 7 グ 1 2 入者数 1 位 ) 、バレ 1 ポ 1 ル ( 3 位 ) 、野 テフ 1 操新 1 ラ ッ 図 球・ソフトボ 1 ル ( 2 位 ) 、バスケット ポ 【 0 っ ) っ 8 っ 0 0 7 ・ 7. 1 ー CN 8 0 ( 0 フ・ . っ 0 4 ・「 / 1 ー 0 ( 0 0 つ」 8 0 「入 数生じていることが示唆される。 ポ 1 ル ( 4 位 ) という競技人口が多い競 数 ( 0 っ 0 1 一 1 ・ロ 0 0 8 【 0 【 0 0 4 ・ , 度 ル〒 8 【 0 「 / ) 4 ・ 4 ・ワ」っ」ワ」 ) 0 ・ 1 ・つっムっこ 1 ー 3 7 年 数 水泳は、スポーツ安全保険では 201 技が事故発生数でも上位を占めている。 件 ス 生 平 3 年度の事故件数は 322 件 ( 加入者数 スポーツ安全保険の性格上、競技人口に 発 操テ 0 ・ 0 2 % ) と 万 9 5 9 7 人、発生率 体ト 対してスポーツ安全保険加入者数が少な融 ルトボン 全事故発生率の低い競技の一つであるが、 いと推測されるゴルフ等の競技について 技競 ン 一技・ボ 競一ポソッ ッ 事故の中で溺水、飛び込みよる頸髄損傷 カ一・ケミ道ビ競スジ他 は、別の統計からの検討が必要である。 ツレ球ス道ド手グ操ニッ道の計ポ サバ野ハ柔ハ空ラ体テド剣そ合 による四肢麻痺等の重大事故が少なくな ス 事故が多い競技が、裁判等法的紛争に い。これらの重大事故は、水泳を行う際 至る割合が多いように思われるが、実態 保険給付の点で事故発生率や事故発生に競技者が許容している事故とは言いが は異なる。 おおむね 2013 年 8 月までに公刊集件数が少ない競技でありながら、判決にたく、かっ、結果も死亡あるいは高度後 至った事故が多い競技は、スポ 1 ツに内遺障害であるため、紛争化する事故が多 に掲載されたスポ 1 ッ事故一審判決 ( 一 部未掲載含む。 ) 441 件を競技別に整在する危険でも、当事者がその危険が現いといえる。 実化することを許容していない事故が多判決数で上位を占めている競技は、事 理すると図 5 のとおりである。 その他 20 、 8 % サッカー 22.6 % バレーポール 15.4 % バスケット ーポール 。 10.0 % 野球・ ソフトボール 15.2 % その他 2 れ 1 % 運動会等 水泳 20.4 % 2.0 % ウインタースポーツ 8.4 % 野球外 8.2 % 柔道登山外 5.4 % 莎 10 % ツ ゴルフ 77 % 上 陸 4.5 % 望月調査 2013 年 8 月 競技スポーツ 441 事件 法律のひろば 2015.10 ・ 28

5. 法律のひろば 2015年10月号

項 ) について調査したところ、被申立人調停事業において「申立人及び被申立人技又はその運営に関して競技団体又はそ炻 の上部団体である財団法人全日本軟式野 ( 以下「当事者ーという。 ) の一方又は双の機関が競技者等に対して行った決定 球連盟規程第Ⅱ条において『連盟のする方が代理人を置いていない等の理由によ ( 競技中になされる審判の判定は除く。 ) について、その決定に不服がある競技者 り仲裁又は調停が公平に行われない虞が 決定に対する不服申立は、日本スポーツ ろ 仲裁機構の〔スポーツ仲裁規則〕に従っある場合又はそれぞれの手続が円滑に進等 ( その決定の間接的な影響を受けるだ てなされる仲裁により解決されるものと 行しない虞がある場合に、当機構が仲裁けの者は除く。 ) が申立人として、競技法 する。』と定められ、同規程第条にお又は調停の手続に必要な費用の支援を行団体を被申立人としてする仲裁申立て」 いて『支部は、この規程に準拠し、支部う」 ( 同規則 1 条 ) もので、当事者が手 ( 注 7 ) である。「ただし、ドーピング紛 規約を定めなければならない。』と定め続費用支援を求めるときは、仲裁又は調争に関するスポーツ仲裁規則によるべき られているため、同連盟の末端支部に該停の申立てを行った日から、当該手続終仲裁申立ては除く。」仲裁の対象は、競 当する被申立人はこの規定に従うものと了後 1 週間を経過する日までに、書面に技団体等が竸技者等に対して行った決定 判断し、スポ 1 ッ仲裁規則第条 1 項によりそれを必要とする理由を当機構に要である。代表選考や懲戒処分の取消しを 定める確認を行ったうえで、仲裁合意が請しなければならない ( 同規則 5 条 ) 。求める申立てが典型例である。 成立したものとみなし、本件仲裁申立てこの手続費用の支援は、弁護士費用や遠申立人は、申立人に対する決定があっ を受理し、仲裁人選任手続を開始する旨距離の交通費がかかる当事者 ( 競技者等たことを主張立証する必要がある。特に を申立人及び被申立人に通知した。」と と競技団体の双方を含む。 ) にとって、競技団体の文書等が申立人でない第三者 仲裁を受ける権利を実質的に保障する重を名指ししている場合や、不作為的な決 の記載がある。 ー 003 事件の仲裁判断にも同様の記載要な役割を果たしているが、関係機関の定である場合などは、申立人の状況、競 がある 格段の配慮により実現したものである。技団体の規則や文書、事前の決定等、さ らに仲裁判断の先例を研究して、説得力 ある立論が必要である。 2 代理人援助 三仲裁類型 日本スポーツ仲裁機構は、現在、手続 2 特定仲裁、ドーピング、加盟団 スポーツ仲裁規則による仲裁 費用の支援に関する規則を定め、 1 事案 体 日本スポ 1 ッ仲裁機構のスポーツ仲裁 1 当事者につき万円 ( 税別 ) を上限と 日本スポーツ仲裁機構は、スポ 1 ッ仲 して、手続費用の支援を行っている。この中心的な類型は、スポーツ仲裁規則に れは、日本スポーツ仲裁機構の仲裁又はよる仲裁である。これは、「スポ 1 ッ競裁規則による仲裁のほかに、ド 1 ピング

6. 法律のひろば 2015年10月号

特集スポーツ振興の未来ー法的立場からみた課題と紛争解決 どうしてスポーツ事故は繰り返されるのか ? 1 ルのどの部分に生徒を配置するのか、 な危険なことーという評価をし、「そんえば、野球においてデッドボ 1 ルを、サ 移動方向と生徒の向きはどのようにするな危ないことはやめてしまえ」と、スポッカ 1 において捻挫を、バレ 1 ポールに のか ? 「教員等が指導」を求められて ーツ活動自体を否定する意見である。施おいて突き指をしても、これらの事故 いる具体的なガイドラインは ? 設管理者の側に見られがちな傾向であは、競技者が危険性を認識し、かっ、こ スポーツ界では、労働安全衛生と異なる。公園で安全性に欠ける遊具を原因とれを許容しているものであるこれらの り、「安全に注意しよう ! 」というスロした事故が発生した時に、個々の遊具の事故は、避けられない。これらの事故を 1 ガンだけで、事故を予防するための具安全性を検討しないまま、公園の遊具を完全に防 ) 」うとするなら野球もサッカー 体的な基準がない。 これが、スポ 1 ツに全廃するというような対応は、正にこのもバレ 1 ボ 1 ルもできないしかし、こ おいて事故を減少させられない要因の一 れらの事故は避けられなくても法的紛争 立場である。 つではないか。 いずれの意見も正しくない。スポーツとなることはない。当該スポーツに伴う は、さまざまな身体的な活動を伴い、そ不可避な危険であり、スポ 1 ツをする者 の過程においてスポ 1 ツをする者が受傷は、この危険が現実化した場合にも、そ 四避けなければならない事故 する事故を完全に避けることはできなの結果を許容した上で参加をしているか と避けられない事故との違い い。とりわけ、ボクシングに代表されるらである。 同時に、スポーツに参加した者が事故 スポーツに伴う事故が発生し、その再ように相手競技者にダメ 1 ジを与えるこ 発防止を考えるときに二つの意見の対立とを本質的要素とする格闘技や、競技者に被災した場合に、その事故の全てを参 が生じる。 同士の身体接触やポールが身体に衝突す加者が許容しているものではない。スポ ーツに内在する危険でも、当事者がその 一つは、「猪突猛進型ーの意見である。 ることが予定されている競技では、スポ 「スポ 1 ツは危険を内在しており、スポ ーツ事故を完全に避けようとするなら危険が現実化することを許容していない ーツに伴う事故を皆無にすることは不可ば、当該スポーツをしないという選択し事故については、不可避な危険とは考え られておらず、事故を回避できなかった 能である」という理由から、事故を回避かない できなくてもやむを得ないとする意見で この意味では、スポ 1 ツは危険を内在場合には、法的紛争となる。野球におい ある。スポーツ指導者側に見られがちなし、事故を皆無にすることは不可能であてキャッチャーや球審がマスクを着用せ 傾向である。 る。競技者は、一定のスポ 1 ッ事故につすにファールポールが目に当たって失明タ もう一つは、「石橋叩いても渡らず型ー いては、当該競技に参加することで事故する、あるいは、サッカ 1 のゴールが固の の意見である。スポ 1 ッ事故が生じるに被災する危険性を認識し、かっ、これ定されておらず、これが倒れ、下敷きに法 と、当該スポ 1 ツは「事故が生じるようを許容して当該競技に参加している。例なった者が死亡する等の事故は、回避す為

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第三小法廷判決・裁判集民事 155 号 4 位そのものを訴訟の対象とするものであ ( 注 4 ) を定めることが推奨されている。 05 頁参照 ) 。」と最高裁判例を引用したるから、当然不適法である。 ) そのもの 2011 年に制定・施行されたスポーツ 上で、「本件各処分は、被告が、学生スではないが、その実質において本件競技基本法が、条で、「国は、スポ 1 ツに キー連盟としての団体の内部規律を維持の順位の確認を求める請求となんら異な関する紛争の仲裁又は調停の中立性及びば し、組織目的を達成するために、定款らないといわなければならない。なぜな公正性が確保され、スポ 1 ツを行う者のひ 条 4 項に基づきその会員である原告スキらば、本件競技の順位を定める判断は、権利利益の保護が図られるよう、スポ 1 1 部に対し行った懲戒作用である。この当然、本件ペナルティが適当か否かの判 ツに関する紛争の仲裁又は調停を行う機 ような処分に係る被告と原告との間の関断を包含するのであり、原告の主張を前関への支援、仲裁人等の資質の向上、紛 係は、被告の団体内部における問題であ提とする限り、本件ペナルティの有無に争解決手続についてのスポ 1 ッ団体の理 って、一般市民法秩序と直接の関係を有よって、自動的にカーナンバー の自動解の増進その他のスポーツに関する紛争 するものとい、つことはできないイ。 。也こ本車の順位は決定される関係にあるからでの迅速かっ適正な解決に資するために必 件各処分が一般市民法秩序と直接の関係ある。また、当裁判所がその請求を認容要な施策を講ずるものとする。」と定め を有することを基礎付ける具体的な事実したからといって、その判決の効力によたのも、この流れに沿ったものと考えら の主張及び立証はない。」等と判示した。 って直接原告の有する法律上の地位に影れる。 同様の却下判決として、東京地判平成響があるわけでもない。したがって、本もっとも、筆者は、競技団体は全て自 6 年 8 月日 ( 判タ 885 号 264 頁 ) 件ペナルティの取り消しを被告に求める動応諾条項を採用するべきであると考え がある。同判決は、「単なる学術上の争請求は、法律上の争訟に該当しない請求るともに、他方で、裁判所は競技団体を いや、宗教的信念の争い等の場合とならとして不適法なものといわざるを得なめぐる紛争について、争訟性を認める範 、。」と判示した。 囲を広げることができると考える ( 注 んでスポーツ競技における順位、優劣等 の争いについても、それが、私人の法律 このように競技団体内部の紛争は法律 5 ) 。スポ 1 ッ基本法 2 条 1 項が、「スポ 上の地位に直接影響を与えるものではな上の争訟に当たらないとされることが多 1 ツは、これを通じて幸福で豊かな生活 い場合には、これが、司法審査の対象と いことに対応して、日本スポ 1 ッ仲裁機を営むことが人々の権利であることに鑑 なるものでないことは明らかである。」構が設立され、かっ、競技団体がその規み」と定めたことは、スポ 1 ツが個人の とした上で、「本件競技において本件ペ則中に競技団体又はその機関が競技者等幸福追求権に深く関連していることの証 ナルティが課せられなければカ 1 ナンバ に対して行った決定に対する不服につい 左であり、同法 1 条が、同法の目的に関 の自動車が獲得したであろう順位のては日本スポ 1 ッ仲裁機構の仲裁にそのし、「国民の心身の健全な発達、明るく 確認を求める請求 ( これはスポーツの順解決を委ねる旨の条項 ( 自動応諾条項 ) 豊かな国民生活の形成、活力ある社会の

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特集スポーツ振興の未来ー法的立場からみた課題と紛争解決 スポーツ紛争の解決手段と仲裁制度における代理人の実務 2 争訟性 スポーツ紛争の解決手段と 競技団体による代表選考や懲戒処分に 仲裁制度における代理人の実務 ついては、裁判所は、裁判所法 3 条の「法 律上の争訟」に該当しないとして、訴え 東京駿河台法律事務所弁護士 を却下する可能性が高い ( 注 3 ) 。 上柳敏郎 東京地判平成年肥月 1 日 ( 判タ 13 国の仲裁制度や競技団体の紛争解決制度 50 号 240 頁 ) は、学生スキ 1 競技連 一仲裁と訴訟 がある。 盟の会員が、同連盟に対し、競技大会へ 訴訟、仮処分、調停等の裁判所の利用の出場を停止する処分等の無効確認と、 スポーツ仲裁と裁判所の利用 についても、競技者、役員、競技団体等出場者の参加区分が上位から下位に分か 本稿は、スポーツをめぐる紛争の解決のスポーツ関係者から相談を受けた弁護れている競技大会における参加区分の確 手段について、日本スポーツ仲裁機構の士代理人としては、十分に検討する必要認を求めた訴えを、法律上の争訟に当た スポーツ仲裁の運用と代理人の活動を中がある。訴訟については、争訟性があるらず不適法とした。同判決は、「自律的 心に概観しようとするものである ( 注紛争であり、かっ仲裁合意により裁判所規範を有する団体の内部における法律上 利用が排除されていない場合に、利用での紛争については、それが一般市民法秩 スポ 1 ッ紛争の法的な解決手段としきることになる。もっとも、争訟性の有序と直接の関係を有しない内部的な問題 て、スポ 1 ッ仲裁と、訴訟や仮処分等裁無や仲裁合意の範囲については、まだ確にとどまる場合には、原則として当該団 判所の利用がある。このうちスポ 1 ッ仲定的になっていない部分や、認定が微妙体内部の自治的、自律的な解決にゆだね 裁について、日本の競技団体に関連するな部分も残されていると思われる。まるのが相当であり、裁判所の司法審査は 紛争を取り扱う場として、日本スポ 1 ッ た、調停の利用が、場合によっては効を及ばないが、他方、当該紛争が当該団体 仲裁機構 (The Japan Sports Arbitration 奏することもあると思われる。仲裁合意の内部的な紛争にとどまらず、その当事 Agency 】略称のスポーツ仲の有無、後述する特定仲裁合意に基づく者の一般市民法秩序に係る権利利益を侵 裁 ( 注 2 ) と、スポーツ仲裁裁判所 (court スポ 1 ッ仲裁規則による仲裁の可能性、害する場合には、裁判所の司法審査が及引 of Arbitration for Sport 【 ( 「キャ場所、費用、紛争解決の可能性等の要素ぶと解するのが相当である ( 最高裁昭和の 年 3 月日第三小法廷判決・民集引巻法 ス」と略称で呼ばれることが多い。 ) ) がを検討する必要がある。 2 号 234 頁、最高裁昭和年肥月跚日 挙げられる。もっとも、このほかにも各

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考えられているように思われるが、考察し、による制裁の本質につるのと異なり、「認定団体」である て改めて検討を試みることとする。 リ 1 グはの決定に真摯に対応すべ は、単純に二つのリーグが並存するい ことのみをもって処分を下したわけでは き努力義務を負うだけであり、が グに行使できる制裁も、ば ろ 1 の規程における -a ・ーリー ひ の「趣旨に反する行為」を行った場合、 の定款、内規の中で、国内に の グの位置づけ 認定を取り消すことができるのみであっ律 二つのリーグが並存すること自体を明確 グた ( 基本規程囲条 ) 。 に禁する規定は存しないし、また、 2 0 0 5 年に創設されたリ 1 の内規 (lnternal Regulations 201P は、により設置の認められた団体 ArticIe 72 ) には、 affiliate ( 加入登録 ) ではなかった。このような組織が、バス 2 --'0< による支配統治の必要性 されていないリ 1 グ、クラブが存在するケットボ 1 ルの全国リ 1 グを主催すると いうのは、の基本規程、すなわち ところで、ここで、なぜのよう ことを禁じる規定があるが、現在、 丿ーグは >--CQ< の認定団体となってお全国リ 1 グの主催権 ( 注 1 ) は、基本的に な中央競技団体 (zcæ) が、加盟団体や り、 affiliate されている団体という解釈にあり、から主催権を譲渡登録団体等 ( 競技団体 ) を統括できるの か、による統括 ( 轄 ) がなぜ必要 も可能であるとすれば、この規定にも抵されあるいは承認された者以外の者がリ ーグを主催することはできないという規なのか、その存在意義について、改めて 触しない。 むしろ、は、定款上 (General 定 ( 注 2 ) に真っ向から反することであっ検討してみる。 た。また、その競技規定も独自のル 1 ル の定款上、は、「我が国 Statutes, ArticIe 9. la ) 、国内統括団体 を採用していた。 におけるバスケットボ 1 ル競技界を統轄 (NationaI member federation) には、 グは、 そして、 2 0 0 9 年、リー し、代表する団体としてバスケットボー national competitions を十分に支配し 統治する (maintain 印 = con 尊 0 一 and の所属団体の一つである「認定団ルの普及及び振興を図り、オリンピック governance) 義務があるにもかかわら体」 ( 注 3 ) として認定されたが、認定さ競技大会や世界選手権大会へ向けて競技 れた後もの統轄下にはなかった。者を育成強化し、バスケットボ 1 ルを通 グを十分に支配 じて、国民の心身の健全な発展に寄与 し、統治できていない、ということをもすなわち、が、の「連盟 ( 注 4 ) として位置付けられ、の定し、また豊かな人間性を涵養することを って制裁を科したと考えられる では、は・」リーグに対し、 款、基本規程その他諸規程を遵守する義目的とする」 ( 定款 3 条 ) 。 かなる「支配・統治」を及ばすべきであ務 ( 注 5 ) を負い、はその違反に対そのために、は「バスケットボ グがし、除名、公的業務の停止、出場資格の 1 ルの技術の研究や向上と普及や振興に ったのか以下、とリ 1 どのような関係にあったのかという点を停止、罰金、戒告等の懲罰権を行使でき関する基本方針」の確立、競技規則並び

10. 法律のひろば 2015年10月号

規模な国際スポ 1 ツィベントの主催者がた国際競技団体の規則遵守義務を負わな ない ) 強い影響力を持っ競技団体」に対第 定めた団体規則は、それを遵守しない者 い、スポーツ界とは全く関係のない第一二しての、国際レベルでの「法の支配」を が、当該国際競技団体が主催する大会へ者に対して拘束力を及ばすことはできな どう実現するかが問題となる。 の参加資格を失うという不利益を受けるい スポーツにおいて、国際的な法整備の ろ ひ ため、そうした不利益が強制力となっ もう一つは、当該私的団体である国際必要性を考えなければならない局面は、 の て、各加盟団体、選手に規則を遵守させ競技団体が、あたかも治外法権的に、団大別して前記の二つであるといえる。以 る効果が生まれる。こうした形での「法体自治として許容される範囲を超えて、 下、前記の二つについて、個別に検討し 規範」は、スポ 1 ツにおける団体自治のその制定する規則に、基本的人権を侵害ていくこととする 帰結として、古くから、スポ 1 ツ界におする程度にわたる内容のものを盛り込む いて用いられてきた。 場合、その効力が制限されるべきである 三「国際的な法整備」が必要 このような「法規範」は、私的団体がことである。つまり、例えば日本国にお な分野①ー第三者効が必要な 制定した規則を、大会に参加する関係者いて、国会が、基本的人権を侵害する内 場合 が遵守するという意味において、私的な容の法律を制定した場合に裁判所におい 契約関係をその拘束力の源泉とするものて違憲無効とされるのと同様な意味にお スポーツにおいて「国際的な法整備」 であるが、そうであるがゆえに、以下の いて、スポーツ界において、国際競技団が必要といえる第一の分野は、スポ 1 ッ 二つの意味において、その効力・妥当性体が、そうした規則を制定した場合に、 に関する「法規範について、スポーツ に限界を有することになり、ここにおい国際的に影響のある形で、それを無効と界の団体規則等に基づく私的契約関係の て、いわゆる成文法などのハ 1 ド・ロー して救済する方法を担保しなければなら枠組みに入っていない、し 、わば「業界外 がその役割を果たすべき領域が存在するない。もちろん、こうした場合において、 部の」第三者に対しても効力を及ばした ことになる。 当該国際競技団体の規則の効力が及ぶ、 い場合である。これには大きく分けて、 一つは、そうした「法規範」は、当該関係各国の国内法 ( 又は法のような①スポーツ産業において金銭的価値を有 私的団体と契約関係にない第三者を拘東一定の複数の国をカバーする地域の法する無体財産へのフリーライドを防止す できないという点である。例えばいかに律 ) を用いて、その規則を無効としている必要という観点からの規制と、②スポ 世界アンチ・ド 1 ピング機構 (><Q く方法もあるが、そうした救済の効力は 1 ッ産業における重要な産業的価値・イ <) の世界アンチ・ドーピング規程 (* 基本的に当該国内 ( 法の場合はンテグリティ ( 注 2 ) を確保する必要とい 規程 ) が、世界の様々な国際競技域内 ) に限られることになる ( 注 1 ) ので、 う観点からの規制の二つが考えられる 団体に支持されているとしても、そうし特に、「国際的に ( 国家に勝るとも劣ら以下、順に述べる。