株式買取請求権 - みる会図書館


検索対象: 法律のひろば 2015年12月号
84件見つかりました。

1. 法律のひろば 2015年12月号

かについては、裁判所の合理的な裁量に評価手法に要素として含まれていない市が、これを行うことはできないとする新 委ねられていると解すべきである。しか場における取引価格との比較により更にたな判断を示したものである。この点に、 しながら、一定の評価手法を合理的であ減価を行うことは、相当でないというべ本決定の意義がある。これに対し、本決 るとして、当該評価手法により株式の価きである。」 定は、鑑定費用について、非流動性ディ 格の算定を行うこととした場合におい 「したがって、非上場会社において会スカウントを織り込んだ鑑定人の鑑定結ひ て、その評価手法の内容、性格等からし社法 785 条 1 項に基づく株式買取請求果価格と各当事者が主張する価格とのか律 法 て、考慮することが相当でないと認めらがされ、裁判所が収益還元法を用いて株い離に応じた負担を命じているところ、 れる要素を考慮して価格を決定すること式の買取価格を決定する場合に、非流動このような扱いは他の判例にも見られる は許されないというべきである。」 性ディスカウントを行、つことはできない が ( 注 2 ) 、学説からは批判かある ( 注 3 ) 。 「非流動性ディスカウントは、非上場と解するのが相当である。」 ともあれ、本件における争点は、非上 会社の株式には市場性がなく、上場株式 「鑑定人に支払った鑑定料 120 万円場株式会社において組織再編等に反対の に比べて流動性が低いことを理由としてについては当事者の合意に照らして鑑定株主が株式買取請求権を行使した場合 減価をするものであるところ、収益還元結果と各当事者の主張金額とのかい離に に、反対株主と会社との間で買取価格に 法は、当該会社において将来期待される応じて分担させることとする。」 つき協議が調わないときに当事者の申立 純利益を一定の資本還元率で還元するこ てに基づき裁判所が市場価格のない非上 とにより株式の現在の価格を算定するも 場会社株式の価格を決定するに当たり当 三研究 のであって、同評価手法には、類似会社 該株式の流動性の欠如を理由とする減価 比準法等とは異なり、市場における取引 結論に賛成であるが、理由付けの一部を行、つことが許されるか否かにある。ま 価格との比較という要素は含まれていなに疑問が残る た、この問題は、株式買取請求権の趣旨を 、 0 吸収合併等に反対する株主に公正な 踏まえて検討する必要があることから、 本決定 ( 注 1 ) の意義 価格での株式買取請求権が付与された趣 以下では、非上場会社における反対株主 旨が、吸収合併等という会社組織の基礎本決定は、吸収合併に反対した吸収合の株式買取請求権制度の趣旨と同請求権 に本質的変更をもたらす行為を株主総会併消滅会社の株主が当該会社に対し買取行使の場合の買取価格の評価方法を確認 の多数決により可能とする反面、それに りを請求した株式に係る会社法 786 条した上で、本事案の争点となった非流動 反対する株主に会社からの退出の機会を 2 項に基づく価格決定申立てにおいて、性ディスカウントの可否を検討する。 与えるとともに、退出を選択した株主に裁判所が収益還元法を用いて非上場会社 反対株主の株式買取請求権 は企業価値を適切に分配するものであるの株式の買取価格を決定する場合に、非 ことをも念頭に置くと、収益還元法によ流動性ディスカウントを考慮することの 制度の趣旨 って算定された株式の価格について、同可否が争点となった事案で、最高裁判所反対株主の株式買取請求権とは、会社

2. 法律のひろば 2015年12月号

以前より判例上も学説上も評価方法をめては裁判所との協議に基づいて考慮すべ流動性ディスカウントを不要とする理由 R き」としている ( 注邑。株式買取価格評付けとして「株式売却を意図していない ぐって錯綜し、状況は定まっていないと されてきたが ( 注リ、近時の & < の隆興価において非流動性ディスカウントを考が離脱を余儀なくされた」ことを判示し により、実務上用いられるインカム・ア慮すべきか実務上の取扱いが定まっていていることに対し、流動性のないことがば プローチを重視する裁判例が多く ( 注、 なかったため、それがカネボウ事件決定原因で価値が低いのであれば減価すべきひ において争点となった。 その中でも方式が主流となりつつ であって、株主に売却する意図があるか律 法 カネボウ事件では、インカム・アプロないかは問題ではないとされ ( 注 ) 、非 あることが指摘されている ( 注 ) 。 ーチの法における非流動性ディス流動性ディスカウントは考慮すべきとす る説 ()a 説 ) を提唱していることから、 非流動性ディスカウントの考慮カウントの考慮の可否が争点となった。 原審 ( 東京地決平成年 3 月Ⅱ日金判 1 見解の対立がある ( 注。ちなみに、中 の可否をめぐる先例・学説の状況 非流動性ディスカウントとは、非上場 289 号 8 頁 ) ・抗告審ともに、鑑定人東正文教授は、非流動性ディスカウント 会社株式の換金の際には追加的なコストの「本件株式買取価格の決定においての考慮の要否は、制度趣旨から検証し法 かかかるため、非上場会社の株価が上場は、株式売却を意図していない少数株主的な価値判断をすべきであると指摘して が会社から離脱することを余儀なくされおり ( 注 % ) 、この問題を考える上で参考 会社より低く評価される減価をい、つ ( 注リ。 米国の近時の判例では、締め出されるた場合における少数株主に対する売却をになる。 少数株主保護の観点から、継続企業価値前提とする非流動性ディスカウントを考 4 本決定の検討 「非流動性ディス の按分比例を分配すべきとして基本的に慮する必要はないー カウントによる調整は客観的な根拠がな 非流動性ディスカウントを認めず ( 注リ、 反対株主の株式買取制度の趣旨 これを受けた 1999 年模範事業会社法く、鑑定の客観性を担保する観点をも考以上のように、非上場会社の株式に係 改正では株式買取請求権行使の際の公正慮してこれを採用しない」とする意見る反対株主の株式買取請求権行使事例に 価格算定では非流動性ディスカウントをを、専門家的学識と経験に基づき行ったおける価格決定裁判で裁判所が当該株式 考慮しない旨が明示された ( 注。 判断として十分合理性があるとし、非流の非流動性の欠如を理由とするディスカ ウントを行うことの可否をめぐり、学説 ガイドラインでは、非流動性ディスカ動性ディスカウントを採用しなかった。 これに対し、学説では、カネボウ事件では見解の対立が見られるところ、本決 ウントについて「見込むべき水準に合意 はないが、類似取引等を参考とし、情報の原審又は抗告審を妥当とし、裁判所は定は、吸収合併等に反対する株主に公正 の入手可能性や確実性に問題がある場合株式買取請求権の行使事例においては非な価格での株式買取請求権が付与された があるので特別に対処すべき」旨の注意流動性ディスカウントを行うべきでない趣旨について、「会社組織の基礎に本質 を促しており ( 注、さらに裁判目的のとする見解 ( 注 (< 説 ) がある。一方、的変更をもたらす行為を株主総会の多数 江頭憲治郎教授は、同事件の抗告審が非決により可能とする反面、それに反対す 企業価値評価業務では、「取扱いについ

3. 法律のひろば 2015年12月号

1 商事法判例研究 の基礎的変更等に反対する株主が、会社 一方、近時の学説では、対価の柔軟化き、平成年最決では、改正前と同様「ナ に対し自己の有する株式を公正な価格で及び株主総会決議を不要とする略式再編カリセバ価格」が「公正な価格」となる 買い取ることを請求することにより、投制度の導入を背景に、少数株主に「公正としており、学説の多くも同基準は排除 下資本の回収を図る権利として法定されな価格」を保障することで多数派の機会されていないと解釈している ( 注 9 ) 。ち たものである。昭和年商法改正により主義的行動をチェックする機能が重視さなみに、本事案はシナジーが生じないケ ースであるから、「ナカリセバ価格」が 米国州法を参考に導入され、特に閉鎖型れ ( 注 6 ) 、重要な決定を機に会社からの のタイプの会社において存在意義が大き離脱を保障するにとどまらず、少数株主「公正な価格」となる。 い ( 注 4 ) 。制度の趣旨は、株主利益に重保護の機能を積極的に評価する立場が有 非上場会社の反対株主の株式買取 大な関係がある事項に多数決を認めるとカである ( 注 7 ) 。 価格評価 ともに、少数派株主に投下資本を確実に 回収する途を与えて経済的に救済するも 評価方法 買取価格の定め のと説明されてきた ( 注 5 ) 。 反対株主の株式買取制度は、会社法制株式の評価には複数の方法があり ( 注 四、ガイドラインは、一般論として、 これを判例について見ると、最三小決定時、買取価格に改正があり、制定前は 1 1 1 平成年 4 月四日民集簡巻 頁「 ( 合併 ) 承認ノ決議ナカリセバ其ノ有ス企業価値の評価方法にはそれぞれ長所・ 「楽天対株式買取価格決定申立事べカリシ公正ナル価格 ( 408 条ノ 3 短所があるため、評価アプローチの選定 件」 ( 以下「平成年最決」という。 ) が、① ) 」すなわち「組織再編がなされなか及び併用又は折衷する場合には、評価の その趣旨は「吸収合併等という会社組織った場合に既存株主が置かれた立場」を目的、評価対象会社を取り巻く環境、そ の基礎に本質的変更をもたらす行為を株前提に公正な価格 ( いわゆる「ナカリセれぞれの評価アプローチが持っ特性、業 主総会の多数決により可能とする反面、 バ価格」 ) を規定していたところ、制定種的な特性、その他各種要素に鑑みなが それに反対する株主に会社からの退出の後は、制定前の立場を改め、「公正な価ら、適切と思われるアプローチを選定す べきとしている ( 注リ。 機会を与えるとともに、退出を選択した格」と規定 ( 会社法 785 条 ) した。こ 株主には、吸収合併等がされなかったとの改正により、株式買取請求権に、①企株式買取価格の価格決定申立てでは、 した場合と経済的に同等の状況を確保業再編がなされなかった場合の経済状態制度趣旨に従い「公正な価格」を形成す し、さらに、吸収合併等によりシナジー の保証機能のほか、②企業再編によるシることが裁判所の合理的な裁量の範囲内 その他の企業価値の増加が生ずる場合にナジーに再分配機能が付加され ( 注 8 ) 、 にあり、上場会社では特段の事情がない ろ は、上記株主に対してもこれを適切に分反対株主への組織再編によって生ずるシ限り市場価格を参考に算定されると解す ひ ること ( 注リについて、学説の理解も概ねの 配し得るものとすることにより、上記株ナジー分配が可能となった。 法 シナジーが生じない場合、改正前の「ナ一致しているとされる ( 注リ。非上場会 主の利益を一定の範囲で保障することに ある」と判示している カリセバ価格ー基準が存続するかにつ社では株価の算定自体に難しさがあり、

4. 法律のひろば 2015年12月号

2 ( 木村・前掲 ( 注 1 ) 5 頁 ( ) 江頭憲治郎「判批」別冊ジュリ 205 号 ( 201 ( 3 ) 川島・前掲 ( 注 1 ) 四頁 9 ) マーケット・アプローチでは、非上場会社の株価 1 年 ) 頁 ( 4 ) 江頭憲治郎「株式会社法第 6 版」 ( 有斐閣、 2 0 2 ( ) 江頭憲治郎「裁判における株価の算定」司研 12 15 年 ) 8 3 45 8 3 5 頁。制度の詳細については、 を上場会社の株価から推定するため、国税庁法令解釈 0 つ」 通達 180 や実務において上場会社の株価に対し 5 5 頁。米国のデラウェア州裁 藤田友敬「新会社法における株式買取請求権制度」江 2 号 ( 2012 年 ) ろ % の減価が行われるが、ガイドラインのインカム・ 頭憲治郎先生還暦記念「企業法の理論 ( 上 ) 』 ( 商事法 判所が Weinberger v. UOP, 457 A 2d 701 , 7 こ (Del. ひ アプローチの基本式では、現在価値にそのような減価の 2 63 頁以下、中東正文「株式買取 務、 2 0 0 7 年 ) 1983 ) で方式を採用し、以降、一般的になった。 請求権と非訟事件手続」名法 223 号 ( 2008 年 ) を行う要素はなく、同様の減価を行うことに根拠はな法 James COX 年 ffomas Lee Hazen on Corporations ( ガイドライン 3 4 152 頁 ) 。 233 頁以下、川島いづみ「反対株主の株式買取請求 second 2d ed. , VO 一 . lll , 2003. Aspen. p. 1381. ( 川島・前掲 ( 注 1 ) 四頁 ( ) ガイドライン頁 権」江頭憲治郎編「株式会社法大系」 ( 有斐閣、 20 ( リ飯田秀聡『株式買取請求権の構造と買取価格算定 ( 訂 ) ガイドラインのインカム・アプローチの基本式に 13 年 ) 187 頁以下を参照。 含まれる割引率の算定過程には、値 ( 株式市場に対 の考慮要素』 ( 商事法務、 2013 年 ) ( 5 ) 落合誠一編「会社法コンメンタール肥」頁〔柳 111 頁、 Cox する個別株式の感応度 ) が含まれる。非上場会社は 明昌〕 ( 商事法務、 2 009 年 ) 雀 Hazen, supra note 16, at p. 1383. 値が直接推定できないため、類似上場会社の値を利 ( 6 ) 落合・前掲 ( 注 5 ) 頁〔柳明昌〕 ( 四 ) Mode1 Business C0も0 「 ations Act 513.01 ( 4 ) ( 三 ) 用するなどの工夫が必要であり ( ガイドライン 5 ( 7 ) 落合・前掲 ( 注 5 ) 頁〔柳明昌〕、川島・前掲 ( 注 ) ガイドライン頁 頁 ) 、鑑定も東証芻業種の卸売業の〃値を使用して ( 幻 ) ガイドライン頁 いる。江頭教授は、割引率に上場会社の株価に関係す ( 2 0 0 8 年 ) ( 後藤元「判批」商事 18 3 8 号 ( 8 ) 藤田・前掲 ( 注 4 ) 2 8 25 2 8 3 頁 る数値を用いた場合、算出された金額をいくらか減価 頁、石綿学「判批」金判 13 4 5 号 ( 2 010 年 ) 1 頁 ( 9 ) 藤田・前掲 ( 注 4 ) 2 81 頁 調整すべきとされ ( 江頭・前掲 ( 注 4 ) 5 四頁 ) 、 ( 川 ) 東京地方裁判所商事研究会編「類型別会社非訟」 ( 判 ( ) 江頭・前掲 ( 注 ) 頁 ガイドラインでは、収益還元法において割引率を類似 ( 圏 ) 川島・前掲 ( 注 1 ) 頁 例タイムズ社、 2009 年 ) 圏 5 頁 企業の値を参考に決定する場合、インカム・アプロ 1 ( 中東教授は、カネボウ事件の原審に関し、株式買 ( ) ガイドライン 657 頁 チではなく、 マ 1 ケット・アプローチにおける類似上 取請求制度の趣旨から検討するべき法的判断であるに ( リ川島・前掲 ( 注 4 ) 2 0 0 頁 場会社法に対応するとしている ( ガイドライン頁 ) 。 も関わらず、裁判所が非流動性ディスカウントの要否 ( リ柴田和史「非上場株式の評価」浜田道代・岩原紳 したがって、そのような場合に非流動性を考慮するこ を自ら検討せず鑑定人に頼るのは、裁判所の使命を放 年 ) 頁 作編「会社法の争点』 ( 有斐閣、 2 0 0 9 とは、否定されるべきではないと考えられる。収益還 棄するに等しい、と強く批判されている。中東正文「判 ( リ江頭憲治郎「結合企業法の立法と解釈」 ( 有斐閣、 元法に内在する要素との関係については、川島・前掲 号 ( 2 0 0 8 年 ) 頁 批」金判 12 9 0 1995 年 ) 291 頁。非上場会社の株式買取価格決 ( 注 1 ) 5 四頁参照。 定公表事案では、裁判所は評価すべき会社のその時点 ( ) ただし、本決定は、楽天対事件決定が判示 ( ) 秋坂・前掲 ( 注 1 ) 254 頁 するシナジーの適正配分について引用しておらず、 又は前後の実態 ( 配当又は収益の有無、今後の事業継 島いづみ教授は、より普遍的な立場をとるものと評価 ) 川島・前掲 ( 注 1 ) 頁、弥永・前掲 ( 注 1 ) 3 頁 続性、保有資産状況、入手可能情報 ) に応じて評価方 ( 大塚・前掲 ( 注 1 ) 頁、川島・前掲 ( 注 1 ) 四 されている。川島・前掲 ( 注 1 ) % 頁 式を選択し、場合によっては組み合わせて価格を決定 頁、弥永・前掲 ( 注 1 ) 3 頁 ( ) 最一決昭和囎年 3 月 1 日民集巻 2 号 161 頁及 しており、裁判所の評価方法に一定の方向性は認めが び楽天対事件許可抗告審 たいとされる。柴田・前掲 ( 注 ) ー礙頁 ( みつい・よしえ )

5. 法律のひろば 2015年12月号

商事法判例研究 利益ないしキャッシュ・フローの合計を得ない事態に追い込まれたことに対することは裁判所の合理的な裁量の範囲にあ り、 >< の享受していた財産的地位 ( 株式 補償措置であるのに、市場性がないとい 株主資本コストである割引率で割り引い た現在価値で評価 ) 、②マーケット・アうだけで % も減額されることは制度の価値 ) は、収益獲得能力から算定された プロ 1 チ ( 上場の同業他社や類似取引事趣旨を著しく没却するもので相当でない価値そのものではなく、換価の困難性を こと、同ディスカウントがガイドライン反映したものであるべきと判示した ( 札 例と比較して評価 ) 及び③ネットアセッ ト・アプロ 1 チ ( 会社の純資産を基準にで示されている利益還元法の基本式に組幌高決平成年 9 月日民集巻 2 号 4 0 3 頁 ) 。なお、は、インカム・アプロ 評価し、企業の清算価値を算定 ) を検討み込まれていないことを主張した。 ーチの法による算定で非流動性デ しかし、札幌地裁は、本件で算定しな した。その結果、札幌地裁は、②は < 社 イスカウントを否定した東京高決平成 が譲渡制限会社で比較対象となるようなければならないのは、株式価値ではなく 上場会社が存在せず、③は < 社が清算さ買取価格であり、価格のつきやすさ、売年 5 月日金判 1345 号肥頁を参照・ 引用し、非流動性ディスカウントを行、つ れる可能性は非常に低いため、いずれもれやすさということも考慮せざるを得 ことは許されないと主張したが、札幌高 評価手法として相応しいとはいえず、ず、会社支配権を取得することが困難な が実現できたであろう利益は < 社の利益少数株式であることを考慮すると、相当裁は、同事件は、元来上場株式であり、 の分配程度であるから、①を相当とした程度の非流動性ディスカウントはやむを粉飾決算による上場廃止後に公開買付が 行われた等、流動性が本件とは大きく異 ・キャッシュ・フロ得ないとし、 % の減額については、「高 上で、 < 社のフリ ーを見積もる資料がないこと、配当は平度な専門的知識ないし経験に基づいて決なるとして原決定の判断を是認した。そ 成幻年のみしか実施されなかったことかめられた数値」で著しく不合理と見なすこで、 >< が原決定を不服として、許可抗 ら、フリー・ 告を行ったのが、本件である。 キャッシュ・フロー法と配 ような事情は認められないとした。 は、原々決定の買取価格について、 当還元法は採用できないが、吸収合併が なければ計上したであろう将来利益は過非流動性ディスカウントを採用した原々 ニ決定要旨 年度の利益から合理的に算定できるた決定の判断は、株式買取請求権の制度趣 原決定破棄、原々決定取消し。 め、利益還元法が適しているとして、旨を全く考慮せず、安易に鑑定結果をそ 「買取価格を ( 将来利益の現在価値合 鑑定の算定を合理的であると認め、買取のまま是認するもので著しく合理性に欠 計額から非流動性ディスカウントを行わ 価格を円と決定した ( 札幌地決平成けるとして、札幌高裁に抗告した。 年 6 月日民集的巻 2 号 382 頁 ) 。 札幌高裁は、原々決定の理由を付加・ずに発行済株式総数で除した ) 1 株につ ろ これに対し、は、鑑定で行われた訂正して円を買取価格とし、 >< の抗告き 106 円とする。」 ひ の 「非上場会社の株式の価格の算定につ 非流動性ディスカウントにつき、株主買を棄却した。その際、札幌高裁は、非流 律 法 いては、様々な評価手法が存在するが、 取請求権は、反対株主としては株式を手動性ディスカウントと本件株式価値につ 放したくないにも関わらず手放さざるをいては、株式の換価の困難性を考慮するどのような場合にどの評価手法を用いる

6. 法律のひろば 2015年12月号

認会計士を鑑定人に選定し、同鑑定人 は、以下概要の鑑定 ( 以下「鑑定」と 3 ( 第 2 回 ) 東京商事法研〈 いう。 ) を行った。鑑定は、 < 社が直 0 裁判所が非上場会社の株式買取価格を収益還元法によ 近 5 年間安定的に利益計上し合併後も事 決定する場合に、非流動性ディスカウントを行うことを業継続するので、評価方法は、予想利益 を一定の割引率で割り引くことにより株律 否定した事例 法 主価値を評価する利益還元法が合理的で 最一小決平成年 3 月日民集巻 2 号 365 頁 あり、また、本件吸収合併は支配権異動 を伴わないグル 1 プ内再編でシナジ 1 効 国士舘大学法学部准教授滿井美江 果が極めて限定的であることから、株主 総会の決議がなければその株式が有した ( 3387 万 7000 株 ) の約 9 ・ 6 であろう価格が「公正な買取価格」であ / ( 万 5950 株。以下「本件株式」ると判断した。そして、将来利益の現在 という。 ) を有する株主である。 >•< は、価値合計額を約 3 億 6158 万 3000 訴外 < 株式会社 ( 以下「 < 社」という。 ) 本件株主総会に先立ち、書面により < 社円と計算した上で、非上場会社株式は上 に対し本件吸収合併に反対する旨を通知場会社のように市場で容易に現金化でき と株式会社 ( 以下「社」という。 ) は、 いずれも酒類及び飲食料品等の卸売等をし、本件株主総会において本件吸収合併ないため、非流動性ディスカウントとし に反対した。前記のとおり、吸収合併契て % 割り引いて 2 億 7118 万 700 目的とするいわゆる譲渡制限会社で、訴 0 円と見積もり、発行済株式総数で除 外甲株式会社の子会社である。社と < 約が承認されたことから、は、平成 社は、平成年 6 月 6 日、社を吸収合年 9 月日、 < 社に対し本件株式を公正し、 1 株当たりの公正な買取価格を円 とした。 併存続会社、 < 社を吸収合併消滅会社とな価格で買い取ることを請求した。 原々審 ( 札幌地裁 ) は、 < 社の買取価 して、同年川月 1 日を効力発生日として平成年川月 1 日、本件吸収合併の効 吸収合併 ( 以下「本件吸収合併ーという。 ) 力が生じ、消滅した < 社の権利義務を一格を算定する評価方法として、日本公認 般承継した社は、同年川月日、 >< に 会計士協会作成「企業価値評価ガイドラ を行う内容の合併契約を締結した。 社は平成年 8 月 7 日の臨時株主総対し本件株式を 1 株当たり円で買い取イン」 ( 経営研究調査会研究報告第号。 会、 < 社は同年 8 月 8 日の臨時株主総会ることを申し入れたが、協議が調わず、平成年 5 月新日制定、平成年 7 月 3 ( 以下「本件株主総会」という。 ) を開催は、同年Ⅱ月幻日、札幌地裁に対し本日改正。以下「ガイドライン」という。 ) にある三つの企業価値評価法である①イ 件株式の買取価格決定を申し立てた。 し、前記合併契約の承認を決議した。 ンカム・アプロ 1 チ ( 会社の将来の期待 >< ( 申立人 ) は、 < 社の発行済株式総平成年 6 月日、札幌地裁は、公 商事法判例研究

7. 法律のひろば 2015年12月号

商事法判例研究 る株主に会社からの退出の機会を与えるした。ガイドラインのインカム・アプロずれも株主が売渡し又は移転が強制され とともに、退出を選択した株主には企業ーチの基本式に、将来の期待利益ないしる以上、非流動性ディスカウントを行う 価値を適切に分配するもの」と説示しキャッシュ・フローの現在価値に非流動のはより不当であるから本決定の射程が て、楽天対事件許可抗告審の立場性ディスカウントを行う要素はない ( 注及ぶとする指摘がある ( 注芻 ) 。これに対 を踏襲し ( 注 % ) 、収益還元法により非上四 ) 。適正に企業価値を算定した後、更し、③譲渡制限株式の売買価格決定事案 場株式の価格を決定するに当たり非流動に非流動性を理由に減価することは、株には、本決定が「多数決により退出を余 性ディスカウントを行うべきでないとす式買取請求権制度の趣旨からは認められ儀なくされる株主に適切な企業価値を分 るべきではない ( 注。従来、実務及び配することを念頭におく」としており、 る立場に立っことを明らかにした。 下級審決定の一部に、インカム・アプロ射程は及ばないと解される ( 注。 なお、本決定が収益還元法を前提に判 1 チを採用し鑑定と同様の非流動性デ 価格決定の評価方法 示を行ったことから、収益還元法以外の イスカウントを行っているものがあり、 また、本決定は、どのような場合にど の評価手法を用いるかについては、裁判根拠なく非上場会社株式の評価額が低く株価算定方法が用いられた場合の非流動 所の合理的な裁量に委ねられており、そなるおそれがあっただけに、本決定が明性ディスカウントの可否が依然問題とな の評価手法の内容、性格等から考慮が相確にこれを否定した意義は大きい。ただるが、収益還元法以外の評価手法におけ 当でないと認められる要素の考慮は許さし、要素の算定過程に上場会社の株価がる株式価格の評価要素に当該株式の非流 れないと判示するものである。よって、含まれる場合は、非流動性の考慮を検討動性ディスカウントが含まれるか否かに 会社法 786 条 2 項に基づく価格決定のすることが考えられる ( 注訂 ) 。本決定のより、同ディスカウントの考慮の可否を判 申立てを受けた裁判所には、評価方法に理由付けを疑問とする批判 ( 注もあり、断する余地が残されていると考えられる ついて合理的な裁量があるとの従来から非上場会社株式の価格算定の実務に鑑み ( 注 ) ると、理由付けの一部に疑問が残る。 の裁判所の立場 ( 注を維持し、さらに、 ( 1 ) 本件判批として、秋坂朝則〔判批〕新・判例解説 採用した評価方法についてその手法が考 watch 商法部号 ( 2015 年 ) 1 頁以下、大塚和成〔判 5 本決定の射程 慮しない要素を考慮することは許されな ワ 3 -0 ・ 11 ′ 0 年 ) 頁、川島いづみ〔判 批〕銀法 786 号 ( いことを、最高裁として明確にしたもの本決定は、反対株主に付与される株式 ワ 1 -0 : 8 : 0- 批〕商事 号 ( 2015 年 ) 頁以下、木村健 買取請求権の趣旨を判一小している。①譲 とい、つことかできる ( 注。 ほか〔判批〕商事 2071 号 ( 2015 年 ) 頁以下、 0 つ」 渡制限株式の一般承継人に対する売渡請 、ま 滝琢磨〔判批〕経理情報 1415 号 ( 2015 年 ) ろ 頁以下、廣瀬孝〔判批〕ジュリ 14 8 6 号 ( 2 015 非流動性ディスカウントの考慮求及び特別支配株主による売渡請求、ま ひ の 本決定では、鑑定人が所属法人の実た、②全部取得条項付種類株式の全部取年 ) 頁以下、弥永真生〔判批〕ジュリ 1483 号 ( 2 律 法 . 015 年 ) 2 頁以下がある 務で使用する % の非流動性ディスカウ得の価格決定事案に射程が及ぶものか、 ( 2 ) 東京地決平成年 9 月日金判 1463 号頁 ントを収益還元法に適用することを否定判示からは明らかでないが、①・②のい

8. 法律のひろば 2015年12月号

・ : 関口剛弘・ めた事例 ) ・ 親権者変更の確定審判に基づく戸籍の届 出と戸籍事務管掌者の違法な処分 ・ : 常岡史子・ 大塚英明 0 求を却下し、その余の請求を一部認 容、一部棄却した事例 : ■商事法判例研究 東京商事法研究会■訴務情報・①② 3 ④⑤⑥②①⑨⑩のの 準共有株式について権利行使者の指定・ ・ひろば法律速報 通知を欠いてなされた議決権行使と会 ・英米法研究 ①② 3 ④ 3 ⑥②①⑨⑩ e 岡原記念英米法研究会 社法 106 条ただし書の会社の同意 : 中村信男⑨ 合衆国憲法が規定する「事件争訟性」を ・ 30 ⑩の 満たす当事者適格 : ・ : 紙谷雅子①裁判所が非上場会社の株式買取価格を収 益還元法により決定する場合に、非流 政治的寄付の総額制限と表現の自由 動性ディスカウントを行うことを否定 : 小杉丈夫 0 した事例 : ・ : 滿井美江・ 証券発行開示書類における意見の記載と 米連邦証券法ⅱ条同項 : : : ・ : 田中利彦・ ■賠償・補償・保険法判例研究 賠償・補償・保険法判例研究会 ・サ・税務訴訟 林仲宣団体信用生命保険の被保険者による告知 義務違反と保険契約の解除の可否 馬券払戻金の所得区分と通達課税 : : : : ・ ・井口浩信 3 弁護士法に基づく照会と税理士の守秘義 務 : ・ ・「原子力損害」の範囲について ・ : 松嶋隆弘⑩ 相続税対策と名義預金・ : ワルソー条約四条 1 項を除斥期間と定め たものとして適用し、損害賠償請求を ・保険判例研究 保険判例研究会 棄却した事例 : ・ ・ : 松嶋隆弘① 破産手続開始決定前の保険契約について ・ハラスメント判例ファイル 同決定後に保険事故が発生した場合に ハラスメント判例研究会 おける保険金請求権の破産財団への帰 属の有無 : ・ : 酒井優壽①被告 ( 弁護士法人 ) に雇用されていたと ころ解雇された原告が、被告に対し、 精神障害にある者の自殺行為未達による 障害と免責 : ・ : 長谷川仁彦・解雇が無効であると主張して、地位確 認、解雇後の賃金及び賞与、上司から 酒気帯び運転免責条項の解釈と飲酒の有 のパワーハラスメントに対して慰謝料 ・ : 深澤泰弘・ 等の支払を求めた事案において、解雇 自動車保険 ( 人身傷害保険 ) 契約に基づ は無効であるとしたが、地位確認請求 き、死亡被保険者の遺言執行者である については、被告で勤務する意思を喪 原告につき本件訴えの当事者適格を認 失していたとして棄却し、将来分の請 めることはできないとされた事例 ・ひろばの書棚 2 1 79 ・法律のひろば 2015.12

9. 法律のひろば 2015年12月号

月刊法律のひろば 2015 VOL68 No. 1 2 December ◆特集◆ 日本の知財戦略 ー新しい活用に向けた法整備 ー「知的財産推進計画 2015 」の概要 / 内閣官房知的財産戦略推進事務局 4 ー特許法等の近時の改正の概要 / 深津拓寛・松田誠司 10 ー国際的知財紛争と知的財産高等裁判所の果たす役割 ーアップル対サムスン (iPhone) 知財高裁大合議事件における FRAND 宣言が された標準規格必須特許に基づく権利行使を素材として / 飯村敏明 21 ー企業における知的財産の活用の取組 / 守屋文彦 28 ー職務発明制度・営業秘密の保護に関する論点 / 萩原恒昭 36 一知的財産に関する国際的な動向と企業の海外展開における課題 / 長澤健一 44 ◆読み切り◆ 「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律」の概要 土倉健太 51 平成 27 年版犯罪白書のあらまし / 冨田寛 57 ◆連載◆ 商事法判例研究第 2 回一一東京商事法研究会 裁判所が非上場会社の株式買取価格を収益還元法により決定する場合に、非流動性デ イスカウントを行うことを否定した事例 / 滿井美江 66 ひろば時論 2 0 日韓検察庁親善サッカー大会 ■法の支配の担い手としての職員育成 ・ひろば法律速報 / 73 ・訟務情報 / 75 ・次号予告 / 27 ・年間主要目次 / 77 弊社新刊図書・雑誌のご案内・・・・・ h p : //gyosei. jp 1 装丁 /Kaz イラスト /Nao

10. 法律のひろば 2015年12月号

特集日本の知財戦略ー新しい活用に向けた法整備 国際的知財紛争と知的財産高等裁判所の果たす役割 一部とならなければ到底得られなかった件によるライセンスを受ける意思を有し 本判決等における前記争点に関 であろう規模のライセンス料収入が得らないとの特段の事情は、厳格に認定され する判示事項の概要 れるとい、つ利益を得ることができるととるべきであるとした。 本件特許権に基づく損害賠償請求権 , もに、本件宣言を含めてイ条件でのライセンス料相 の— A-4 ポリシーの要求する < 当額の範囲内での損害賠償請求 の行使の権利濫用の成否 ( ①事件 ) ア < z 条件でのライセンス料相 z 宣言をした者については、自らの意⑦必須宣言特許による場合であって 当額を超える損害賠償請求 思で取消不能なライセンスをも、条件でのライセンス料相 ⑦宣言をした特許権者が、条件で許諾する用意がある旨を宣言して当額の範囲内での損害賠償請求について いるのであるから、条件でのは、制限されるべきではないとした。 当該特許権に基づいて、 gæX<<ZQ 条件 でのライセンス料相当額を超える損害賠ライセンス料相当額を超えた損害賠償請 その理由として、①規格に準 償請求をすることは、権利の濫用に当た求権を許容する必要性が高くないといえ拠した製品を製造、販売等しようとする 者は、 < Z 条件でのライセンス料 るとし、そのような請求を受けた相手方ることを挙げている は、特許権者が宣言をした事これに対し、特許権者が、相手方が相当額については、将来支払うべきこと 実を主張、立証すれば、ライセンス料相条件によるライセンスを受けを想定して事業を開始しているものと想 当額を超える請求を拒むことができるとる意思を有しない等の特段の事情が存す定されること、②のポリ した。 シ 1 の 3 ・ 2 項が「の保有者は : ることについて主張、立証をすれば、 : の使用につき適切かっ公平に補 その理由として、①規格に準条件でのライセンス料を超える 拠した製品を製造、販売等しようとする損害賠償請求部分についても許容される償を受ける」ことをもの ポリシーの目的の一つと定めており、特 者における「特許権者とのしかるべき交とした。 その理由として、そのような相手方に許権者に対する適切な補償を確保するこ 渉の結果、将来、条件による ライセンスを受けられるであろう」とのついては、そもそも宣言によとは、この点からも要請されていること 信頼は保護に値するが、宣一一一一口る利益を受ける意思を有しないのであるを挙げている。 がされている本件特許についてから、特許権者の損害賠償請求権がただし、宣言に至る過程 条件でのライセンス料相当額を超える <ZQ 条件でのライセンス料相当額に限やライセンス交渉過程等で現れた諸般の 0 2 損害賠償請求権の行使を許容すること定される理由はないことを挙げている。事情を総合した結果、当該損害賠償請求 は、このような期待を抱いて規もっとも、条件でのライセ権が発明の公開に対する対価として重要ろ の 格に準拠した製品を製造、販売する者のンス料相当額を超える損害賠償請求を許な意味を有することを考慮してもなお、 律 法 ライセンス料相当額の範囲内の損害賠償 信頼を害することになること、②必須宣容することには、⑦記載のとおり弊害が 言特許を保有する者は、規格の存することから、相手方が条請求を許すことが著しく不公正であると 0