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検索対象: 法律のひろば 2015年2月号
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1. 法律のひろば 2015年2月号

特集認知症とトラブル法律家に何ができるか 認知症等高齢者の消費者被害 参加、講演会やシンポジウムの開催、ま体を知ることが難しいという問題があ括ケアシステム」の構築の要となってお り、事例検討を通じてネットワ 1 ク構築 た、気づきのポイントや弁護士会消費者る。なぜなら、ネットワークの現状は各 につなげるという多職種協同による地域 相談窓口や消費生活センターの電話連絡地域ごとに異なるためである。 したがって、地元の弁護士が地元の福ケア会議 ( 介護保険法 115 条の第 6 先などを記載したカードなどの見守りア イテムの配布など、地道な活動から検討祉制度について一定程度把握した上での項 ) を主催するセンターでもある この地域ケア会議が現時点では地域包 前記のような講師派遣や、弁護士会から するべきである。 も見守りネットワークへの定期的な情報括支援センタ 1 とその他の機関との懇談 発信ができるような仕組みが必要であの場となる可能性が高いため、これを実 相談対応 施している自治体においてはできる限り 弁護士会の法律相談センタ 1 も本人のる。 相談でないと十分な対応をしないとい、つ見守りネットワ 1 クに流すのであれ地元の弁護士も出席できるように努力す 時代があった。しかし、それでは高齢者、ば、単位会ごとに事務局 ( 社協など ) とべきである。 その他、全国で 7000 を数える地域 特に認知症等高齢者の消費者相談には到協定を結び、提供した情報を流してもら 包括支援センタ 1 において、地元弁護士 うなどの施策が必要となるだろう。 底対応できない。 会との相談窓口を紹介するだけでなく、 高齢者の相談については、相談需要は 消費者関係の委員会と高齢者・障が地域の弁護士が連携をとれるように弁護 あっても、高齢でそこまで足を運べない 士会による専門相談員名簿、地元の高齢 い者関係の委員会の連携 という認知症等高齢者は多数存在する 消費者問題に関係する委員会と高齢者・消費者問題を扱う弁護士事務所の名 したがって、出張相談などの制度がな いところは制度化を図り、受付の電話番者・障がい者の権利に関する委員会にお簿提供なども検討されるべきだろう。 いては、行政同様に会内でも縦割りの状②社会福祉協議会 号が記された広報物を見守りネットワー 社会福祉協議会においては、各種ボラ ク自体に配布するなどして、これまでの況があることは否めず、定期的な懇談会 受動的な相談体制を改める必要があるとなどを設けて、専門知識や人の交流を図ンティアの拠点となっており、自治体と の関係が深いところであるから、その主 いえる る必要がある 宰する成年後見推進機関運営委員会など ⑤高齢者見守りネットワークの構成組を通じて成年後見の首長申立て、市民後 ③情報提供 見などの適正な運営に対する意見を反映 織への働きかけ 各地域ごとに個別のネットワークづく ろ させるべきである。 りが必要とされる中で、市民を顧客とす①地域包括支援センター ひ の 地域包括支援センタ 1 については、住この点、市民後見人 ( 社会貢献型後見 る弁護士には、消費者問題と福祉問題に 律 法 またがる一定の知識がなければ、どこにみ慣れた地域で、重度な要介護状態とな人 ) については、養成、選任、監督を地 自分の知識を提供してよいのか、それ自っても生活をできるようにとの「地域包域の社会福祉協議会あるいはそれに準す四

2. 法律のひろば 2015年2月号

ことが想定されており、見守り訪問によ連携が仕組みづくりの要件とされていた 位会では意見書を公表するとともに、ネ鮖 り消費者被害を発見する典型的な第一次ことと同様のことが弁護士会にも求めら ットワークづくりへの関与の動きが起こ 2 っている。 的人物との想定がされており、公務員とれていたわけである。 しての守秘義務も課されているところか 例えば、大阪弁護士会消費者保護委員 ろ ら行政との情報共有は比較的行いやす ②高齢者の消費者被害の予防と救済の会においては、高齢消費者被害プロジェひ ためのネットワークづくり 、。平成年 3 月現在、民生委員は全国 クトチ 1 ムの設置がなされ、市町村との律 で約万人であり、都市部ではおおよそ そして、超高齢社会における消費者ト懇談会を順次行うとともに、具体的なも 2205440 世帯に 1 人、町村部では ラブルの増加を背景に、地方消費者行政のとしては見守り用のアイテムなどを収 間 5200 世帯に 1 人、配置することに推進の見地から、地域の見守りの仕組み集し、弁護士会としてのアイテムも ( 例 なっている づくりを推進すべく、平成年月四日えば訪問販売お断りステッカ 1 など ) 作 付けで「高齢者の消費者被害の予防と救成準備中である。 済のためのネットワークづくりに関する 他方、東京弁護士会消費者問題特別委 5 弁護士会・弁護士の現在の対応 意見書」を全国の基礎自治体及び広域自員会でも意見書の公表とともに、ネット 消費者・福祉部門の連携づくり 治体向けに公表した。 ワークづくりのために東京三会の弁護士 日弁連は平成年Ⅱ月日付「消費 加えて同月日付けで各単位会に対し会の消費者問題特別委員会と高齢者・障 者・福祉部門の連携づくり 5 高齢者・障て「高齢者の消費者被害の予防と救済の害者の権利に関する特別委員会の各委員 がいのある人の消費者被害の防止・救済ためのネットワ 1 クづくりに関する意見が共同で各市区町村に働きかけることと なっている のために」において、消費者部門と高齢書と各地における意見交換の実施につい 者障がい者部門の連携を提唱している。 て ( 依頼 ) 」という書面の内容を執行し、 その中で、弁護士及び弁護士会の役割にその中で日弁連同様、各地自治体への意 弁護士 一章が割かれており、ここでは、消費者見書を公表し、「地方自治体の取組に協個別の弁護士においても、消費者、高 問題に取り組む弁護士は成年後見制度やカ」するように各単位会に依頼した。 齢者・障がい者に各別取り組む弁護士は 具体的にはネットワークづくり及び地多数存在する 福祉問題の研修を、高齢者・障がい者問 題に取り組んでいる弁護士は消費者法関方自治体のネットワ 1 ク活動への支援を 当職の知る範囲では、消費生活部門で 係の研修をそれぞれ意識して受講すべきするようにとの内容である。 は消費者センターの相談担当やアドバイ ということのほか、事例検討会、弁護士 ザーとしてかかわるほか、福祉部門にお 各単位会の活動、大阪弁護士会、東 相互の連携、などということが述べられ いては民生委員、自治会、地域包括支援 ている 京弁護士会など センター、社会福祉協議会との各懇談会 行政における消費者部門と福祉部門の平成年月現在、それをうけて各単や、成年後見推進機関運営委員等の委員

3. 法律のひろば 2015年2月号

養護者と高齢者とを切り離すものであ本人が保護を求めていることが明確て虐待者との分離が実現しても、対象高 こ決定 齢者の入所契約が結べないほど意思能力 である場合 り、高齢者の生活環境・権利擁護。、 が減退又は失われている状況であれば、 的な影響を及ばすものであるから、あるなどが想定される。 新たに自分の財産を活用して本来入所可 程度厳格に解する必要があり、現に養護 ろ 者から暴力を振るわれ、あるいは減食や 能な入所施設への入所契約を結ぶこともの 2 市区町村権限行使の指示・指 できず、いつまでも扶助的給付に頼って法 放任により健康に重大な支障が生じてい 導・促し 生活しなければならず、抜本的解決には るなど、虐待を行っている養護者との一 このような措置を、相談を受けた弁護結びつかない。 時的な切り離しが緊急に求められるよう このような場合に、虐待者からの完全 な、特に緊急性が高い場合に限ると解さ士が直接とることはできないが、相談の 窓口となった市区町村職員と、相談窓な分離を図り、その財産管理権を回復し れている ( なお、②の立入調査の場合、 て、高齢者本人の意思決定を支援し、あ ③の立入調査時の警察署長に対する援助ロ、各種事例検討会の席上、市区町村・ 社協などとのアドバイザ 1 契約、顧問契るいは、それに成り代わって財産管理・ 要請 ( 法条 1 項 ) が義務化する要件は、 養護者と高齢者との引き離しの問題は生約などに基づいて、あるいは、個別の案身上管理を十分に行うためには、前記の じないので通報の場合と同様にある程度件中の後見人として本人に代理して、こ区長申立てなどによる後見開始審判を得 のような措置を必要に応じて実施するよることによって、あるいは、弁護士自身 緩やかに解されてよいと思われる。 ) 。 「緊急性が高いと判断される例」としう意見を述べ、実施するよう促すことにが親族等の申立代理人となり後見人候補 て、 よって、事実上対応できるよう工夫・検者として推薦してもらうという方法など で、弁護士が直接後見人として本人の保 生命が危ぶまれるような状況が明ら討すべきである。 護・財産の管理ができるようにすること かな場合 が必要となる場合が多い。 骨折・頭蓋内出血、重症の火傷など 成年後見制度 この場合、本人と関わっていた介護へ の深刻な身体的外傷、極端な栄養不 高齢者虐待防止法と成年後見制度 、地域包括支援センター職員、ケ 良・脱水症状があるときや、うめき声 ショートスティ先施設の しかし、そのような虐待防止法上の緒アマネジャー か聞こえるなどの深刻な状況が推測さ れる場合 手段で、一時身柄の保護ができたとして従業員などから、申立てに必要な情報を も、依然として、虐待者が認知症高齢者集約し、区長申立てを行うか、専門相談 凶器となり得る器物 ( 刃物、大きな 食器など ) を使った暴力の予想・脅しの財産を事実上管理したり、独り占めし等で当該地域に巡回相談などを実施して いる弁護士を通じて、弁護士会の斡旋、 行為があり、状況によっては生命の危たりしている状況であれば、それ以上の 対応は困難となる。また、施設に入所し後見人推薦窓口などの制度を利用して、 険も生じ得る場合

4. 法律のひろば 2015年2月号

特集 べきことと、成年後見制度の今後の運用 てもその予算の有無にかかわらず積極的囲 2 地方消費者行政への協力 について検討する。 に受けるようにしていくべきである。当 高齢者見守りネットワークへの参加職の経験でも、やはり弁護士は費用がか また、地方消費者行政への協力とい、つ かる、敷居が高いという意識は、自治体 ろ 地方の高齢者見守りネットワー 点では、日弁連の取組に参加している先以外の高齢者見守りネットワ 1 クを構成ひ ク支援に向けて 進的な弁護士だけでは、日本全国の地方する地域包括支援センタ 1 や社会福祉協 日弁連消費者委員会は立法や消費者消費者行政への協力はおばっかない。各議会、民生委員らにはまだまだ根強く、 庁・国民生活センターなどで行われてき単位会の委員会等において、十分な人数弁護士の方から積極的に会議に出席した た具体的啓発活動などに協力してきた。 の弁護士を地方の実情に合わせた高齢者いと言った場合には喜んで席を用意して しかし、認知症等高齢者の消費者問題見守りネットワ 1 クへ参加させるように くれるものであり、また、実際に顔が見 は、全国的な対応では不十分な、消費者するべきである。 える関係で話をすることがその後の協力 側からみればまさに地方消費者行政の充もちろん、具体的にどのようなことを関係を築く第一歩ではないかと思われ 実問題なのであって、さらに地方消費者していくのかについては、例えば東京弁る。 行政の充実を進めるため、これに協力し護士会でさえも、自治体との協議が不充また、自治体との折衝をする際に常に 分な現状であり、日弁連の依頼から 1 年問題となる予算についても、単位会とし ていく姿勢が必要である。 この点、日弁連は、平成年月四日経過した今も、必すしも内容が定まってて依頼を受けられるのであれば、自治体 の意見書で「各弁護士会と連携し、高齢いないのが実情である。その原因は、大の予算が付くまで、期間限定のプロジェ 者の消費者被害の予防と救済のための見部分の消費者弁護士側の福祉行政への理クトとして、法律相談などと同様に補助 守りネットワ 1 クづくりへの参加・協解不足と、実働できる消費者弁護士の数金や日当を会から支払うようなことも検 力、見守り活動のための研修への講師派の不足である可能性が考えられる。委員討すべきだろう。自治体やその他の団体 遣、高齢者向けの相談体制の整備等、ネ会活動への参加の余裕がない昨今の若手も、必要だと思えば次年度からは予算が ットワークづくり及びその活動に可能な弁護士の財政難も関係しているかもしれ付くものであるし、いくつかの先例がで 限りの支援・協力を行う」としているない。 きれば他の自治体へも波及する。行政へ しかし、司法改革によりその是非は別の法曹の関与を推進し、「法の支配」を が、認知症等高齢者の消費者問題は優れ としても弁護士は以前とは比べものにな広げるまたとない機会である。 て地方消費者行政の問題であることか らないほど増加したのであるから、でき もっとも、弁護士は実際に高齢者の相 ら、単位会の取組について定期的にフィ 1 ドバックを行い、消費者庁、厚生労働る限りそれぞれが地元の自治体などと懇談を日常的一次的に受ける立場にはなり 省をはじめとした国との交渉、連携のカ談会などを通じて対話をする機会を作得ないと思われるので、参加方法として とする必要がある。 、講師や会議への出席依頼などについ は後方支援的な事例検討会や懇談会への

5. 法律のひろば 2015年2月号

特集認知症とトラブル法律家に何ができるか 認知症高齢者の虐待事案の現況 禁止される「虐待」行為自体は、 2 条事故などで、事後的に損害賠償請求訴訟の名簿を備えている場合は、その名簿登 などを、被害者本人あるいはその親族な載者が、虐待案件についての後見人候補 4 項 1 号・ 2 号とも基本的に共通であり ( 法 2 条 5 項 1 号 ) 、 2 条 4 項の「養護者どから相談されて交渉・訴訟対応するぐ者として推薦されて虐待案件に対応した による虐待」とも、ほば同様な規定とならいであった。そのような対応自体は今り、裁判所の直接選任 ( いわゆる一本釣 り ) によって後見人等に選任されて関わ っているが、 2 条 5 項の方は、養介護施後もますます増えてくると思われる 設又は事業の従業員が主体なので、「放しかし、近時は、そのような弁護士のる場合もある。 任 ( ネグレクト ) ーについては、「高齢者通常業務、訴訟業務などとは別ルート具体的には、訪問している介護ヘルバ ーから、長男と二人暮らししている高齢 を養護すべき職務上の義務」を著しく怠で、虐待の現場、まさにこれから起こる、 ることとされており、その養護義務の根起こっているという場面から関わる機会の母親が、最近目の下あたりに青あざが 拠・内容が明確化している点が異なってが増えてきており、今後ますますその役残っていることが多く、長男が語気鋭く いる 割の重要性は増してくるものと思われ叱責している声が聞こえている、との通 報があり、担当地区の区職員が訪問して ③「財産上の不当取引による被害」のる。 現在でも、少なからぬ弁護士が、自治調査したところ、高齢の母親から、叩か 防止等 ( 法条 ) なお、法は、必ずしも虐待とはいえな体、社会福祉協議会、地域包括支援センれた、もう家を出たいとの申出があっ いが、養護者や親族、養介護施設従事者ターなどの行政団体や福祉団体で行われた。長男に問い質したが、触っただけだ、 等以外の「第三者」による場合も、「不ている公的専門相談に、弁護士会等から体質的に痣になりやすいだけで暴力など 当に財産上の利益を売る目的の高齢者と派遣・斡旋され、又は個人的つながりか振るっていないと反発し、虐待を認めな の取引」による高齢者の被害についてはら担当するようになっている。その過程かった。そのため、長男の留守中にやや これを保護することとし、いわゆる市区で、被害者本人だけでなく、被害者との遠方の特別養護老人ホームに緊急入所さ 町村申立ての後見申立てを認めてその保日常生活でかかわる、介護職員、区の福せ、母子分離した状態で、区長申立てで 、地弁護士が第三者専門職後見人となり、母 護を拡張している。 祉・高齢者担当職員、介護ヘルバー 域包括支援センター職員など、日々直接親の入所先は秘匿し、面会も禁止して後 認知症高齢者と関わっている人々から、見手続を進めた、という例があった。こ 3 弁護士が ( 認知症 ) 高齢者の虐 虐待事例について相談を受けたり、事例のような場合、虐待息子からの激しい抵 待と関わる場面 検討会などへの参加を要請されて対応を抗がみられる場合もあるが、第三者専門ろ 家として裁判所が選任した立場にあるこの 弁護士は、従来は、通常業務では特にする場面が多くなっている その他、各弁護士会が、弁護士会等のとを丁寧に説明することで、後見人との法 虐待の被害者等からの相談を受ける状況 にはなく、せいぜい、虐待の被害、介護推薦などで後見人等に選任される候補者関係では攻撃をしてくることがなかった

6. 法律のひろば 2015年2月号

特集認知症とトラブル法律家に何ができるか 認知症等高齢者の消費者被害 本的対策をとるとともに、弁護士等専門とは、裁判所の選任名簿とはまた違った 職後見人の裁量を認めた上で、原則に立地域ネットワ 1 ク内での消費者問題の解 ち返り、地域の特性に応じた単位会との決につながると考えられる。 協議・運用を行い、 裁判所による監督の 実効性をあげていく必要がある 四おわりに 例えば定期預金の活用などの運用指針 を示すだけでも過失による損害は減少す以上述べたとおり、認知症等高齢者の ると考えられるし、監督も簡易なもので消費者被害の問題については、基礎自治 済むようになろう ( 地元の信用金庫など体への高齢者等見守りネットワークへの との連携による成年後見人用の定期預金参加を通じて、地元の弁護士が地元の問 題にかかわる体制を作ることや、成年後 の新商品の開発なども検討されてもよい のではないだろうか。 ) 。 見制度の運用の改善と安定が重要であ る 首長申立ての低調さ この点、基礎自治体との協力を検討す 全国の申立件数約 3 万 5000 件のうる際、司法書士会などと比べると、地区 ち、首長申立ては平成年度で 5046 法曹などの半私的団体以外に市町村など 件、そのうち東京 ( 841 件 ) 、大阪 ( 4 の基礎自治体との公的なカウンタ 1 トを必ずしも持たない弁護士会の弱点を 8 5 件 ) 、横浜 ( 4 7 4 件 ) 、さいたま ( 2 感じることが多々ある 6 7 件 ) 、千葉 ( 213 件 ) 、神戸 ( 2 0 0 件 ) の上位 6 家庭裁判所管轄で半数を単位会の消費者関連委員会、高齢者関 占め、その他、名古屋、京都、岡山、静連委員会では、人員の問題はあっても、 岡以外は 100 件未満であり、十分に活委員会内の弁護士グループに担当自治体 用されていないと言わざるを得ない を作り、少しずつでもネットワークとの 間に顔が見える関係を築くことが肝要で 介護保険法や高齢者虐待防止法上では 後見制度活用が法令上定められているのはないだろうか ( さかい・たかのり ) であるから、行政に対して、首長申立て の際の援助を単位会として申し出ること はできよう。例えば、成年後見人の候補 になる地域の弁護士の名簿を提供するこ 31 ・法律のひろば 2015.2

7. 法律のひろば 2015年2月号

るだけの信用性の高い機関が行っているえ、大変重要な立場である。 専門職後見人の資格と裁量の制限 のあれば、その活用は認知症等高齢者の④その他 ( 東京家庭裁判所の現状など ) 消費者被害防止に役立っと思われ、今後 町内会、商店街やその他民間連携を積近時、弁護士をはじめとする専門職後 各単位会においても研究し、弁護士 ( 会 ) 極的に図っている自治体においては、そ見人の不正問題などが全国で報じられ、 ろ ひ は養成、選任、監督の各段階について、 の民間業者自体に接触し、事業者との懇一定の財産を信託とする後見支援信託制 の 社会福祉協議会をサポートするべきであ談会を持っことも考えられる。 度の導入の後、多数の成年後見事件を抱 る。 える家庭裁判所はさらに成年後見人等へ さらに、日常生活自立支援事業につい の監督を強める方向で運用を行ってい 3 成年後見制度の問題 る ては意思決定支援の方法として重要であ るが、日常生活自立支援事業を利用して 消費者問題の解決方法としては権限例えば東京家裁では、専門職後見人の いたにもかかわらず十分な管理が行えず が広範に過ぎること 各団体に対して監督責任を負わせる意味 財産的被害を被ったというニュースもあ 認知症等の疑いのある高齢者の親族かで各団体の名簿提出者以外の後見人選任 り ( 平成年肥月肥日付け毎日新聞朝刊ら相談され、受任を迷うケ 1 スは少なく 禁止がなされており、さらには、報告遅 「知症 1 人暮らしに死角」 1000 万ない。 延ケースだけでなく、単に被後見人の一 円無断引き出し ) 、その運用など、微妙 その場合には、成年後見審判開始 ( あ定資産を要件として、専門職後見人に対 な問題について法的援助ができるアドバ るいは保佐審判開始 ) の申立てを行い、 する監督人選任がされつつある。 イザ 1 としての弁護士が必要と考えると後見人や保佐人が付いた状態で訴訟を受 これらの運用の改革は、監督を必要と ころである。 任することもあり得る。弁護士自身が成する後見等事件の累積 ( 平成年月末 ③民生委員 年後見人等になった場合には煩雑な財産日現在で万 6564 件、平成年より 定期的に民生委員同士の情報交換のた管理事務も同時に引き受けざるを得ない約万 3 6000 人増加 ) により、これ以 め、自治体において、民生委員の会議をことがある。適切な後見人がいなけれ上従前のようなきめ細かい監督機能を果 主催している。弁護士も単位会からの派ば、やむを得ない場合もあり、悩ましい たすのが難しい裁判所が、専門職団体、 遣という形でオブザー バー参加をさせて 問題である。 専門職へ、監督業務・監督責任の分担を もらい、事例検討や研修講師などに協力 この点、例えば、問題解決の後に引き求めるものと理解することができる。 させてもらう方法等があるだろう。 継げる成年後見人として、市民後見人の この点、確かに被後見人の激増は今後 直接認知症等高齢者に接し、問題発生普及が今後期待されるところである ( いも続くとみられるが、これまで裁判所の 前にその自宅の中を見ることができる介わゆるリレ 1 方式 ) 。 監督を前提に困難事案の後見を担ってき 護ヘルバー以外の関係者であり、守秘義 た弁護士の戸惑いも大きい。裁判所は監 務があるので情報連携もしやすいとい 督事務については人員の増員も含めた抜

8. 法律のひろば 2015年2月号

特集認知症とトラブル法律家に何ができるか 認知症等高齢者の消費者被害 として、あるいは介護保険法に基づく地 消費者被害への利用 7 その他 域包括支援センタ 1 が主宰する地域ケア 認知症等高齢者への消費者被害を覚知 現行法では成年後見制度のほか、詐 会議などへの出席を通じて、認知症等高した地域包括支援センターや消費生活セ 齢者の消費者問題について個別にアドバ ンタ 1 等などが、支援が必要と判断した欺・強迫・意思能力無効などの民法上の イスを行うなどしている状況である 場合、市区町村と連携をとり、いわゆる主張のほかに、消費者契約法による取消 首長申立てによる後見開始を検討するこし ( 同法 4 条、 5 条 ) などの消費者保護 とがある の諸法がある。 成年後見制度の現在 また、特定商取引法は「老人その他の 東京都の統計では、平成年 4 月から 成年後見申立ての増加 平成年肥月まで、区市町村長が成年後判断力の不足に乗じ」て訪問販売に係る 売買契約又は役務提供契約を締結させる 認知症等高齢者の消費者被害対策を検見等審判を申し立てた累積申立件数は 3 ことを禁止している ( 同法 7 条 4 号、同 討する上では、その予防と二次被害防止 520 件であるが、平成年 ( 584 件 ) 、 施行規則 7 条 2 号 ) が、これは行政上の のため、社会福祉協議会の日常生活自立平成年 ( 684 件 ) 、平成年 ( 831 支援事業のほかに、認知症が進行してい 件 ) で半数以上を占めており、近時急激指導、刑罰の対象となるが、民事上の特 段の効力を有しない。 る場合の成年後見制度の利用が欠かせなに増加している。 、 0 しかし、認知症等高齢者の被害の多 法的問題がある場合には、首長申立て 、訪問販売、電話勧誘販売の典型的な 成年後見人等を選任しておくことによの場合は候補者として弁護士を選ぶか、 、取消権の行使によって、意思無能力裁判所で弁護士などの専門職後見人を付在宅被害においては全ての商品と役務に の立証負担なく類型的に不当取引行為、けることが多い。専門職成年後見人としついて法定書面受領後 8 日間はいわゆる 不当契約から解放され、代理権があれて弁護士は司法書士に次ぐ担い手であクーリングオフが可能である ( 特定商取 引法 2 条 1 項及び 3 項、 9 条、条 ) 。 ば、加害者からの不当利得の回収ができり、消費者問題をはじめ、困難事案には るためである。 ほば弁護士が選任され、信頼関係のもさらに二次被害を念頭においた過量販売 解除権 ( 同法 9 条の 2 ) も平成年改正 全国の成年後見制度利用の審判申立件と、広い裁量を与えられている。 数は、平成幻年の 2 万 7397 件から平消費者被害について、認知症高齢者かで創設された。 成年の 3 万 4689 件までは順次増加ら直接依頼を受けることは難しいため、 ていたが、平成年は後見開始申立て消費者問題を扱う弁護士にとっては、成 三さらなる認知症等高齢者の ろ が減少したために微減となっている。し年後見制度の利用は重要なツールであ ひ 消費者被害防止対策に向けて の かし、高齢者人口の増加からすると、今る。 律 法 ここでは、特に高齢者見守りネットワ 後は中長期的には激増する可能性が高 、 0 ークについての今後弁護士 ( 会 ) が行、つ

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特集認知症とトラブル法律家に何ができるか 認知症高齢者の虐待事案の現況 執行をすることにより損害を回復するこ整理、個人民事再生、破産などの諸制度され、かっ、「高齢者虐待の早期発見に とが必要な場合もある。 を利用して抜本的に救済を図る必要があ努めなければならないーと法に明示され る場合もある。 ている ( 法 5 条 1 項 ) 。 高齢消費者保護の実施 ( 押し売り・ したがって、弁護士はその期待と責務 に応える力量を不断に涵養して、積極的 押し買い ) 所有不動産の管理 ( 借地権の管理・ に高齢者等虐待案件に対応していく必要 直接には虐待の問題ではないが、高齢処分 ) がある 者の判断能力の低下や、一人暮らしで充複雑・多数の不動産の管理ができなく 分な抵抗力・交渉力も減退している状況なっていわゆるごみ屋敷となって荒れる ( 注 ) の高齢者に、必要もないものを言葉巧みままになったり、借地権を簡単に地主に に売り付けたり、反対に必要なもので売「返却ーしてしまったりして財産を失う ( 1 ) 日本弁護士連合会高齢者・障害者の権利に関する る気がないのに強引に廉価で売らせるなような事態もよくある。これらも後見人委員会暠齢者虐待防止法活用ハンドブック」 ( 民事 法研究会、 2006 年 ) ど、消費者としての高齢者を食い物にすが本人に代わって管理等を行って財産を ( 2 ) 一般財団法人医療経済研究機構「家庭内におけ る悪質業者は後を絶たず、これらも広義保全・回復する必要がある。 る高齢者虐待に関する調査」 ( 平成年度 ) 参照。 では経済的虐待的側面もある。また、経 ( 3 ) 前掲 ( 注 1 ) 芻頁 済的虐待の結果このような事態に陥るこ 刑事処分 ( 告訴・告発 ) ( のもと・まさし ) ともまま見られる。このような場合各種 損害賠償では対応しきれないような経 の救済手段があるが、最も強力かっ徹底済的損失、身体的虐待などに対しては、 的なのは成年後見開始による取消権の行刑事処分も辞さないということで対処す 使であることは論を待たない。 る必要がある場合もある。 債務の整理 ( 任意整理、個人民事再 5 おわりに 生、破産 ) このような形で、認知症高齢者虐待か 経済的虐待の果てに、あるいは ( セル フ ) ネグレクトの結果などで、虐待者がら高齢者を守るため、弁護士は様々な観 本人の名前でサラ金等から多額の借金を点から法的助力をすることが望まれてい して返済が困難となっている場合も多々る。特に弁護士は、「高齢者の福祉に職 ある。個別の借入れの無効・取消しで対務上関係のある者ーの一人として、「高 応できない場合には、成年後見人が任意齢者虐待を発見しやすい立場にある」と 49 ・法律のひろば 2015.2

10. 法律のひろば 2015年2月号

特集認知症とトラブル法律家に何ができるか 認知症高齢者の虐待事案の現況 申立代理人弁護士や後見人候補弁護士を アの請求権者 ( 主体的要件 ) とは、①ておく必要がある。 原則としては鑑定により審判が行わ 探し、当該弁護士が申立てから後見人業本人、②配偶者、③ 4 親等内の親族 ( 従 務までを賄う形で後見人となり、虐待の姉妹まで ) 、④未成年後見人・未成年後れるので、①鑑定費用が必要であり、 なされる状況を個別に解決する方法によ見監督人、⑤保佐人・保佐監督人・補助②本人の判断能力を判断するため、医 り、虐待状況を解消することが必要とな人・補助監督人、⑥任意後見契約受任師の診断書を入手する必要がある。近 る ( この場合広義の後見には補助・保佐者・任意後見人・任意後見監督人、⑦検時はむしろ要後見状態が明らかな場合 など、鑑定を経ない方が多い運用とな ・後見の 3 種類があるが、虐待時には主察官、⑧市区町村長である。 っている として狭義の後見類型が活用される。 ) 。 実際には、特に狭義の後見の場合には ①はあまり想定されず、⑦の検察官の申イ審理 後見開始の要件 家裁調査官・書記官等により、申立 立てはまずなく、②③及び⑧の市区町村 この場合の後見開始の具体的な手続の長申立てが多くなっている。 ての経緯、経歴、精神状態の概要、生 概略は以下の通りである。 イの管轄 ( 裁判所 ( 相手方 ) の要件 ) 活状態、財産状態等の聴き取りがなさ ①実体的要件 は、本人の住所地の家庭裁判所 ( 旧家審れるのが通常である。 〇精神上の障害により事理を弁織する能 規条、条、条の 7 ) であり、入所 本人の陳述聴取も原則として行われ 力を欠く常況にあること ( 民法 7 条 ) 施設とのすれをどうするかなどの問題が るが、客観的に本人の意思陳述が難し 〇「事理を弁識する能力を欠く , 【自分ある。 いと判断される場合、病院等に入院 の行為の結果 ( 法的権利関係の変動の ( ウについては後記参照。 ) し、生括状況が明らかな場合、緊急性 等を考慮し、省略される場合がある。 結果 ) について合理的な判断をする能③申立て ( 行為 ) ( をすること ) カかないこと ア手続 虐待事案の区長申立ての場合、省略さ 〇「常況にある」二時的に意思能力を 後見申立てに関する書式一式は、裁れることが多いともいわれる。 回復することがあっても大部分の時間 判所のホ 1 ムペ 1 ジから、ダウンロー 近親者 ( 主に推定相続人 ) に意向照 ドできる において意思能力を欠く状態であれば 会がなされる。現在は「同意書」の取 足りる 東京家裁 ( 本庁・立川支部 ) では、 得をもって代える場合が多いが、同意 ②手続的要件 即日事情聴取を行っているため、予約書がないと決定が行われないという意 ア「請求権者」 ( 主体 ) により 制を採用している。予約の際、申立人味ではない。意向照会で、推定相続人ろ イ「家庭裁判所」 ( 相手方 ) に の氏名、後見・保佐等の申立類型、来 が反対したからといって、後見開始のの ウ「後見開始の審判の請求 ( 申立て ) 」 ( 行 庁人数、その他を連絡しておく必要が審判をなし得ないということではな法 ある。また、時間も 2 時間程度は空け く、あくまで意見を聞くだけである 為 ) がされること