つん 平成年 ) 頁等。 ることは、均等法 9 条 3 項についての法 ( 4 ) 法曹会「最高裁判所判例解説民事篇 ( 平成 2 年度 ) 」 廷意見と同様であるとして、本判決の趣 六おわりに 一 0 0 ( 法曹会、平成 4 年 ) 406 頁以下 ( 高橋利文 ) 参照。 旨は育児・介護休業法川条にも及ぶもの 本判決は、最高裁が初めて均等法 9 条 ( 5 ) 育児・介護休業法川条に関する裁判例として、本引 とされる。 ひ 件の第一審判決及び控訴審判決、本文記載のコナミデの 3 項について具体的な判断を示したもの さらに、櫻井裁判官は、本件のように 律 妊娠中の軽易業務への転換に伴い降格のであり、その内容は、同法の目的及び基ジタルエンタティンメント事件のほか、医療法人稲門法 会事件 ( 大阪高裁平成年 7 月絽日判決・労経速 2 2 措置が執られ、その後に当該労働者が産本的理念を踏まえて、同項の適用範囲を 24 号 3 頁 ) がある。 前産後休業及び育児休業を取得した場合従前の裁判例と比較してより広く認めた ( 6 ) 「改正男女雇用機会均等法 100 問 100 答」 ( 労 において、育児休業から復帰後の配置等ものであるとの評価が可能である。 今後は、本判決が示した判断基準のあ働法令協会、平成四年 ) 行頁。同書は、「改正男女雇 が「降格」に該当するか否かの判断は、 用機会均等法等質疑応答集」 ( 平成四年 4 月日雇児 てはめ及び射程について、事例や議論が 軽易業務への転換前の職位等 ( 本件でい 発第 0418001 号 ) を書籍化したものである。 えば副主任 ) との比較で行うべきであ蓄積されていくものと考えられる。 ( こじま・ふゆき / あだち・いたる り、復帰後に上告人を副主任の地位に復 こじま・ゆきなが ) 帰させなかった被控訴人の措置は、育 ( 注 ) 児・介護休業法間条との関係で「降格」 ( 1 ) 妊娠・出産等による不利益取扱いに関する裁判例 について、富永晃一「比較対象者の視点からみた労働 に該当するとされる。そして、この点に 法上の差別禁止法理ー妊娠差別を題材として」 ( 有斐 ついては、産前産後休業の取得を理由と する不利益取扱いを禁止する均等法 9 条閣、平成年 ) 芻頁以下参照。本文に挙げた裁判例の ほか、賃金上の不利益取扱いに関する判例として、日 3 項との関係でも同様であるとされる 本シェーリング事件 ( 最高裁平成元年月Ⅱ日判決・ これに対し、厚生労働省は、このような 場合には休業直前の業務、すなわち軽易判タ 723 号頁 ) 、東朋学園事件 ( 最高裁平成年 1 月 4 日判決・判タ 1143 号 233 頁 ) 等がある 業務への転換後の業務に復帰させれば均 等法 9 条 3 項との関係で違法とはならな ( 2 ) 使用者の転勤命令権とその濫用について、東亜ペ イント事件 ( 最高裁昭和礙年 7 月Ⅱ日判決・判タ 60 いとの立場をとっているようである ( 注 6 号頁 ) 参照。 6 ) 。櫻井裁判官の補足意見は、厚生労 働省と異なる立場を明確にしたものと解 ( 3 ) 菅野和夫「労働法」 ( 弘文堂、第川版、平成年 ) 188 頁以下、荒木尚志「労働法」 ( 有斐閣、第 2 版、 され、注目される。
〒 101 ・ 0051 東京都千代田区神田神保町 2-17 / Tel ℃ 3-3265-6811 第盲甲』 http ・ //www.yuhikaku.co.jp/ <LO 判 呈 ニ七 00 円 憲法学読本第 2 版 読 学 ~ ー 安西文雄・巻美矢紀・宍戸常寿著 目 立憲主義の背景にある歴史・原理に力点をお法 書 きつつ、現在の憲法をわかりやすく解説。 現代裁判を考える = = 一 8 円裁判 田中成明著◎民事裁判のヴィジョンを索めて考える 法哲学者が、民事司法改革の現況を点検しつ つ、主な現代的課題について考察。 方一七〇〇円 新基本民法 7 家編 大村敦志著◎女性と子どもの法 親しみやすくわかりやすい叙述で民法 ( 親族 法 ) を学ぶ。新基本民法、第 1 弾 ! 2 色刷。 <LO 判 、冫三六 00 円 家事事件手続去 高田裕成編著◎理論・解釈・運用 家事事件手続法の制定過程における議論を下 敷きにその理念と残された課題を解説する。 知的財産法—特許法八冪 駒田泰土・潮海久雄・山根崇邦著事例から説き起こし、最先 端の問題にも触れ、コンパクトに特許法の全体像を学べる。 <LD 判 卩三四〇〇円 特許法入 閣島並良・上野達弘・横山久芳著『著作権法入門』の執筆陣 による待望の続刊。実例や図表も盛り込んだ、基礎固めの一冊。 有最高裁時の判例Ⅶー、三四 = 六円 シュリスト編集室編月刊ジュリスト「最高裁時の判例」「最高 裁大法廷時の判例」欄及び「特集最高裁大法廷判決」を再録。 0 = ◎ <LD 判 田中成明物 第事を手第年 基本 民法 家族編 ・を第第をゞ をリコーア 民事社物の ウイジョンをめて 成文堂 ◆最新刊 っこ 障害 、冫 す菊池馨実・中川純・川島聡編著 <LO 並製 / 258 頁 / CN(DOO 円 き O 抜 >< 高齢化社会を迎えた現在、障害をもっている、または障害に関 わっている人々の生活制限を改善し、共生社会の実現を図るた めの障害法の機能・役割を分かりやすく解説する。法学専攻、 社会福祉専攻の学生はもちろん、法律・福祉分野の実務家等、 障害法に関心のあるすべての人々のための有益書。 4 ◆好評書 ロ 0 0 現代型訴訟の諸相 < 5 上製 / 17 4 頁 / 3 5 0 0 円 稲電久末弥生著 早 公害訴訟や環境訴訟、消費者訴訟、医療訴訟等、いわゆる現代 区 型訴訟が民事訴訟法と多様な訴訟類型の新たな関係を示唆し続 宿℃ 新 けている現在における民事訴訟と行政訴訟の境界を扱う論文集。 都 京 山口厚先生献呈論文集 髙山佳奈子・島田聡一郎編 <0 上製 / 452 頁 / 9000 円 山口厚先生の還暦に際し、刑法総論と各論の全体にまたがる重 「要テーマを取り上げた門下生 6 名による珠玉の論文集。 現代の刑事裁判 <LO 上製 / 464 頁 / 8000 円 渡辺修著 市民の参加を刑事司法へ反映させた裁判員裁判の在り方、包括 的防御権の充実と「可視化」原理の浸透、判例研究方法の工夫の 3 つのコンセプトを軸に現代の刑事裁判を鳥瞰した研究成果。 新版精神保健福祉法講義 <LO 並製 / 280 頁 / 3000 円 大谷實著 平成年の改正精神保健福祉法に完全対応。精神保健福祉法を 体系的・客観的に解説し、法学・医学等の各領域に共通の水準 を提供する。法学関係者のみならす、精神医療関係者必携の書。
00000000H 運営する消費生活協同組合であり、上告 妊娠中の軽易業務への転換を契機とする 人 ( 原告 ) は、被上告人に雇用されてい 降格措置の有効性 - 適法性 る理学療法士である。 妊娠中の労働者が労基法条 3 項に基づいて軽易業務に転換したことを契機 上告人は、平成新年 4 月、被上告人引 として降格させた事業主の措置につき、均等法 9 条 3 項違反の判断基準を示 ひ の 。一 ( ( ( した最高裁判決 よりリハビリ科の副主任に任ぜられた。 律 被上告人のリハビリ科には、訪問 最高裁平成 % 年月日第一小法廷判決 ( 裁時 1614 号 1 頁 ) リ部門と病院リハビリ部門があり、上告 小島冬樹・足立格・児島幸良 ~ 人は、副主任就任当初、病院リハビリ部 ( 弁護士 ) その 門にて業務の取りまとめを行い、 後、訪問リハビリ部門に異動して業務の の軽易業務への転換を契機として女性労取りまとめを行った。 働者を降格させた事業主の措置につい 上告人は、平成年 2 月に妊娠し、 一はじめに て、均等法 9 条 3 項で禁止される不利益被上告人に対し、労基法条 3 項に基づ 雇用の分野における男女の均等な機会取扱いに該当するかが争われた事案であ いて軽易業務への転換を請求し、訪問リ 及び待遇の確保等に関する法律 ( 以下「均る。本判決は、最高裁がこの点について ハビリ業務よりも身体的負担が小さいと 等法」という。 ) 9 条 3 項は、事業主が 初めて具体的な判断基準を示したものでされていた病院リハビリ業務を希望し 女性労働者に対し「妊娠又は出産に関すあり、実務に与える影響も大きいと考えた。これを受け、被上告人は、平成幻年 る事由であって厚生労働省令で定めるもられることから、紹介する次第である。 3 月 1 日、上告人を訪問リハビリ部門か のを理由として」「解雇その他不利益な ら病院リハビリ部門へ異動させた。 被上告人は、平成年 3 月中旬頃、 取扱いをしてはならない」と定める。こ れを受けた均等法施行規則 2 条の 2 第 6 上告人に対し、前記③の異動の際に副主 = ニ本判決の概要 号は、「妊娠又は出産に関する事由」の 任を免ずる旨の辞令を発することを失念 一つとして、労働基準法 ( 以下「労基法」 していたと説明し、副主任を免ずること 事案 についてその時点では渋々ながらも上告 という。 ) 条 3 項の規定による妊娠中 の軽易業務への転換又はその請求を定め本判決に摘示された本件の事実関係を人の了解を得た。被上告人は、平成年 ている まとめると、次のとおりである。 4 月 2 日、上告人に対し、同年 3 月 1 日 被上告人 ( 被告 ) は、医療施設等を付で病院リハビリ部門に異動させるとと 本件は、労基法条 3 項による妊娠中
日寺言 ろ ひ の 律 法 時、グロ ーバル化の進展や技術の進歩に伴い国の具体的な取組の企画・立案に加え、多岐にわたる関係機 上近 境を超えた犯罪が増加しており、そのような状況に関等と検察との総合調整を行うことを業務としている。ま 対応するためには、検察は、国際的な犯罪に適切に対応でた、平成年 1 月訂日には、全国の部制庁地検庁に合計 ひの きるよう態勢を整備することはもとより、各国機関との相 名の国際担当検事を配置し、同年 5 月 1 日には、那覇地 生互理解を深めるなど、その国際性をより向上させる必要が検にも国際担当検事を配置した。部制庁地検等の国際担当 下ある。そこで、最高検は、検察改革の一環として、検察の検事は、①国際捜査共助における中央当局の役割を担う法 国際性の向上に向けた種々の取組を行ってきた。 務省刑事局国際課や、最高検の国際担当検事等との連絡窓 国 まず、平成年 7 月 8 日、最高検に国際分野専門委員会ロとなること、②法務省刑事局国際課又は最高検の国際担 を設置した。同専門委員会は、検察職員が多様な国際関係当検事等から提供された国際捜査共助等に関する情報を集 の 、業務に従事するために必要な知見の集積・活用方策とこれ積し、平素からその知見を高めておくとともに、必要に応 に関連する人的・物的体制の整備の在り方について、外部じて他の検察職員に周知すること、③実際に国際捜査共助 本専門家の講演会や関係機関との意見交換等を実施してい 等が必要となった場合に、自らこれを取り扱って法務省刑 る。また、同専門委員会の下に刑事司法に関する国際フォ事局国際課等との連絡協議を行い、 又は、他の検察職員が ーラム研究会を設置し、同専門委員会委員に加え国際人権これを取り扱うに当たって必要な助言を与えること、④そ 法の専門家を構成員とした上、刑事司法に関する国連のの他海外の捜査機関等の来庁への対応等をその職務内容と している。 規約人権委員会等における最新の議論やその方向性、我が 国への影響等について知見を集積するとともに、我が国検最高検は、部制庁地検等の国際担当検事及び法務省刑事 察に関する適正な情報の国際的発信に資することを目的と局国際課等の法務・検察において国際業務を担当する機関 して、関係機関及び国際人権法の専門家との意見交換等をとの密接な連絡体制を確保し、国際的な犯罪への対応策を 実施している。その上で、同専門委員会及び研究会におい 検討するための協議会を開催し、連携の在り方を確認する て集積した知見を検察職員に提供し、活用している とともに国際捜査共助等に関する具体的な事例を基に各種 さらに、最高検は、同専門委員会等における知見の集の問題点に関する協議や意見交換を行い、 国際捜査共助等 積・提供等の活動を超えて、検察の国際性を向上させるたの手続や問題点等についての情報共有を行うなどして、各 めの具体的な取組を企画・立案することなどを目的とし担当者の専門的知識の向上に努めているところである て、平成年川月 1 日、最高検に国際担当検事を配置した。 最高検の国際担当検事は、検察の国際性を向上させるため ( 最 )
法律のひろは 平成 2 / 年 2 月 1 日発行 ( 毎月 1 回 1 日発行 ) 昭和 2 イ年 2 月 4 日第 3 種郵便 H 〇 URITSU N 〇 HIROBA Feb. 2015 VOL68 / No. 2 集認矢症とトラ、フル 法律家に何ができるか 現代における認知症をめぐる諸問題 / 吉田輝美 認知症患者による事故と監督者の責任 ー認知症徘徊事故を契機として / 古笛恵子 認知症等高齢者の消費者被害 ー防止策の現状と今後の対策 / 坂井崇徳 認知症高齢者等への法的サポート ー成年後見制度の役割 / 髙岡信男 認知症高齢者の虐待事案の現況 / 野本雅志 認知症の方への支援 ー現場からの報告 / 高梨友也 我が国と諸外国における認知症施策 / 翁川純尚 妊娠中の軽易業務への転換を契機とする降格措置の有効性・適法性 最高裁平成 26 年 1 0 月 23 日第一小法廷判決 / 小島冬樹・足立格・児島幸良 判例から きようせい
0 ところで、最高裁平成 2 年Ⅱ月 % 日判措置は軽易業務への転換期間が経過したしている 一般に、労働者の職位はその業務内容 決 ( 判タ 765 号 169 頁 ) は、賃金全後も副主任への復帰を予定していない措 額払の原則 ( 労基法条 1 項 ) との関係置であり ( 本件措置後間もなく、上告人と結びついている。他方、労基法条 3 で、使用者が労働者の同意を得て賃金債の後輩職員が後任として副主任に任ぜら項に基づく軽易業務への転換は、原則と引 れた。 ) 、その点において上告人の意向にして当該労働者が請求した業務に転換さの 権に対してする相殺の有効性について、 その労働者の同意が「自由な意思に基づ反しており、上告人への適切な説明もさせる趣旨であるとされている ( 昭和礙年法 くものであると認めるに足りる合理的なれていないとして、「自由な意思に基づ基発 161 号 ) 。このため、事業主の業 いて降格を承諾したものと認めるに足り務運営上、当該労働者の職位を変更する 理由が客観的に存在するとき」は、同原 ことなく当該労働者が希望する軽易業務 る合理的な理由が客観的に存在するとい 則に違反せず有効との立場をとってい に就かせることが困難な場合もあり得、 る。同最高裁判決は、一般私法の原則でうことはできない」と結論付けた。 ある自由意思の尊重を前提としつつも、②第 2 の例外は、降格措置を執ること事業主及び労働者双方の利害得失に鑑み 労働者の同意による相殺を無条件に許すなく軽易業務へ転換させることに業務上て、降格措置が均等法 9 条 3 項に違反し ないとする例外を認めるべき場合がある と、使用者より弱い立場にある労働者がの必要性から支障がある場合であって、 同意を余儀なくされ、賃金全額払の原則その業務上の必要性の内容・程度及び当といえる。本判決は、このような点を考 の趣旨が没却されることから、その同意該労働者が受ける有利又は不利な影響の慮し、前記「特段の事情」の存在による が労働者の自由意思に基づくものである内容・程度に照らし、均等法 9 条 3 項の例外を認めたものと解される。 本判決は、本件へのあてはめとして、 ことにつき厳格かっ慎重な認定がなされ趣旨及び目的に実質的に反しないものと るよう、「合理的な理由が客観的に存在認められる「特段の事情」が存在すると本件措置による上告人への不利な影響の する」との要件を課したものと解されるきである。本判決は、業務上の必要性の重大性に言及する一方、被上告人側の業 ( 注 4 ) 。本判決も、同様の理由により、有無及びその内容や程度の評価に当たっ務上の必要性の内容・程度や上告人にお 労働者の承諾が自由意思に基づくものでては、当該労働者の転換後の業務の性質ける業務上の負担の軽減の内容・程度は あることを担保するための要件を課したや内容、転換後の職場の組織や業務態勢明らかでないとして、この点を審理させ 及び人員配置の状況、当該労働者の知識るために本件を原審に差し戻した。 ものと解される や経験等を勘案し、また当該労働者が受 本判決は、本件へのあてはめとして、 本件措置による上告人への不利な影響がける有利又は不利な影響の内容や程度の 管理職の地位と手当等の喪失というそれ評価に当たっては、当該措置に係る経緯 自体重大なものであることに加え、本件や当該労働者の意向等をも勘案すべきと
は、通常の事故の当事者間においては不責任が問題となるのは、それ以外の事故る。しかし、認知症患者の監督について加 適切であり、加害者の責任保険の有無、 態様である。 は、超高齢社会における老老介護の現実 賠償資力の有無によって賠償額が異なる 自動車による物損事故の場合、監督義などから、親権者の責任以上に加害者側 、ま ことを正当化しかねず、被害者の救済に務者である家族の一般的な監督義務違反に酷な状況があることは否定できない。 ろ 欠けることになりかねない。 が、被保険自動車の所有、使用、管理にしかし、被害者の救済も図らなければなひ むしろ、過失相殺事由が、不法行為のも及ぶと解される限り、対物賠償責任保らない。被害者、加害者を問わず、高齢律 成立要件としての過失とは異なり、不注険の被保険者による事故として保険で担者、認知症患者による事故の責任の所在 意で足ることからすると、安全防止義務保される。 について、超高齢社会における方向性を 違反とまではいえなくても、事故防止に その他の事故態様における家族の責任決めることが急務である。 努めるべく社会的責務が認められる鉄道については、個人賠償責任保険による担 事業者として事故防止策が十分でなかっ保とならざるを得ない。特約として付保 ( 注 ) た点も否定できなかったことから、過失されることも多い個人賠償責任保険であ ( 1 ) 樫見由美子「自賠法における責任無能力者の問題」 交通法研究号 ( 2014 年 ) 頁・ 相殺を適用することによって、損害賠償るが、広く一般的に普及しているといえ ( 2 ) 窪充見「不法行為法」 ( 有斐閣、 2007 年 ) 額の調整を図るべきであると思われる。 るまでの状況にはない。 結果的には、損害額の 5 割の賠償にと本件において責任保険による担保の有 どめた本件における判断は、現行損害賠無は不明であるし、そのことによって監 ( 3 ) 厚生労働書ホームページ国の施策と方向性「精 神保健福祉法について」 償法理のもとで認知症患者の監督者の事督者の責任を直接左右することはできな ( 4 ) 最高裁昭和年 3 月日判決 ( 民集巻 2 号 34 情も十分に斟酌した結論のように思われ いが、個人賠償責任保険の普及、新たな 7 頁 ) る。 商品開発などが期待されるとともに、あ らためて一般的監視義務違反による責任 ( 5 ) 宇都宮地裁平成年 4 月日判決 ( 判タ 1391 号 224 頁 ) も個人賠償責任保険における保険事故で 4 賠償資力の担保 ( 6 ) 伊藤昌司「親権者の監督責任に関する最高裁判決」 あることを確認することは必要である。 Z *-Ä 8 3 5 号 ( 2 0 0 6 年 ) 前記のとおり、自動車による人身事故 の場合、自賠法 3 条の解釈により、責任 ( こぶえ・けいこ ) 七さいごに 無能力者であっても、運行供用者責任が 認められる。その上、強制保険である自親権者が子の監督者として責任を負う 賠責保険、さらには広く普及している任場面と、家族が認知症患者の監督者とし 意対人賠償責任保険により担保される。 て責任を負う場面は、ともに監督義務者 よって、認知症患者による事故の民事の責任、固有の責任の成否が問題とな
ったことを過失とはいえないとして、こ ことなどの事由と、東海の総資産にはあると思われる。 れを否定した。 対して本件が約 720 万円の財産的損害 であったこと、鉄道事業者としての社会 2 損害賠償法的意義 < の損害賠償額 的責務において、利用客等に対して監視 ろ 以上により控訴審は、 < に対する民法が十分になされていれば、本件事故発生 しかし、認知機能の低下による事故にひ 714 条所定の監督義務者等としての責を防止することができたと推認されるこよって、「現に」損害を被っている被害律 任のみを認めたうえ、その賠償すべき損となどの事由とを総合考慮して、 < は本者を救済するのが、損害の公平な分担を 害額については、責任無能力者自身の賠件事故により原告に発生した損害額の 5 趣旨とする損害賠償に求められることも 償責任を否定した一方で、その代償又は割について賠償責任を負うべきとした。 また否定できない。認知症戡者による事 補充として監督義務者等に賠償責任を認 故という社会問題に対する対策、政策を めることで、被害者の保護及び救済を図 講じることが超高齢社会の責務であるか 五本判決の意義 ろうとしたという同条の趣旨に鑑みて、 らといって、目の前の被害者を現行損害 同法 722 条 2 項に定める被害者に過失 賠償法理に基づいて救済することを後退 社会的意義 相殺事由が認められない場合でも、同項 させる結論が正当化されるものではな 、 0 に体現されている損害の公平な分担の精本件については、最高裁の判断が待た 神に基づき、加害者側の諸事由 ( 加害行れるところであるが、歳の認知症患者その意味において、監督義務者の責任 為の態様、責任無能力者の資力、監督義の徘徊事故によって被った鉄道事業者の に関する民法 714 条の解釈を大きく変 務者等との身分的又は社会的関係、監督損害について、新歳の妻に損害賠償責任更する必要はないと思われる。やはり、 義務者等の監督状況等 ) と被害者側の諸を認めたとして、センセーショナルに報現在においても、責任無能力者の監督義 務者等は、責任無能力者の日常生活全般 事由 ( 被害者の被った損害の性質・内道され、批判的な論調も少なくない。 なかでも、認知症患者の事故について にわたる一般的な監督義務が求められ、 容・程度と被害者が受けた影響、責任 能力者と被害者との関係等 ) とを総合的は、超高齢社会において社会が対応すべそれに対する違反があることをもって、 に勘案して検討すべきとした。 き問題であるとの指摘はそのとおりであ責任無能力者に代わる責任を免れること はできないと解することが、具体的加害 そして本件では、の死亡に至る経る。精神保健福祉法が保護者の規定を削 緯、生前が高額の金融資産を有してお除した今日においては、なおさらであ者と具体的被害者間の具体的な公平の実 現にほかならない。 り、 < が 2 分の 1 の法定相続分を有してる。 その意味において、本件を契機に、監 いたこと、監督義務を怠らなかったとは なお、責任能力の認められる未成年者 いえないものの、相当に充実した在宅介督義務者の責任についての見直し、軽減による加害事故について親権者の民法 7 護を行い、 監督義務の履行に努めていた 化が議論されていることも自然の流れで 09 条の責任が否定された最高裁平成
特集認知症とトラブル法律家に何ができるか 認知症患者による事故と監督者の責任 した。また、精神保健福祉法は、一方でまさに訴外 >< の監督義務者の地位にあっ活全般に対して配慮し、その身上に対し は保護者の自傷他害防止監督義務に関すたとした。 て監護すべき法的な義務を負っていたも る規定を削除しているが、なお保護者に そして、 < が相当に充実した介護を行のと認めることはできないとして、本件 は、依然として精神障害者に治療を受けっていたと認めつつも、 >•< が一旦 1 人で事故当時、監督義務者の立場にあったと はいえないとした。 させ、財産上の利益を保護しなければな外出すると、どこに行くか予測がっかな そして、民法 709 条に基づく損害賠 らないなどの義務が課せられていることい状態にあり、他者の財産を侵害する行 を指摘し、精神障害者に後見人又は保佐為をする危険性もあったといえること、償責任については、本件事故発生に対す 人がない場合には配偶者が保護者となる出入口を出入りすることを把握するためる具体的な予見可能性まで肯定できるこ 旨定められている趣旨は、配偶者が協力の事務所センサ 1 が設置されていたのとが必要である ( 最高裁昭和四年 3 月 扶助義務の一環として、精神障害者の生に、電源を切ったままにして作動させて日判決、最高裁平成年 2 月日判決 ( 判 19 2 7 ロ万 6 一頁、判タ 12 0 6 ロ写 17 活全般に対して配慮し、介護し監督するいなかったことなどから、監督義務を怠時 義務を履行することによって初めて保護らなかったとまでいうことはできない、 7 頁 ) ) ところ、 >< については目を離せ ばらが知らないうちに 1 人で外出して 者としての義務を履行する関係にあると とした。そして民法 714 条の趣旨か い、つ点にある、とした。 ら、 >< による加害行為に対する具体的な徘徊し、所在不明になる危険性があるこ これらにより、配偶者の一方が精神障予見可能性がなくても、およそ監督義務とまでは予見可能であったものの、鉄道 害者となった場合の他方配偶者は、現にを怠ったことにより生じたものである限線路に入り込んだり他人の土地建物に入 同居生活をしている場合には、その保護り、 < は民法 714 条 1 項による責任をり込むなどの行為はしたことがなかった のであるから、本件事故発生について具 者制度の趣旨に照らしても、配偶者の同免れないとした。 体的な予見可能性までは認められなかっ 居義務及び協力扶助義務に基づき、精神 たとして、これを否定した。 障害者の配偶者に対する監督義務を負、つ ③の責任 として、民法 714 条 1 項の監督義務者 一方、は、民法 8 7 7 条 1 項所定の 原告の安全配慮義務違反 に該当するとした。 直系血族間の扶養義務こそ負っていたも なお、原告の安全配慮義務違反につい そして < は、相当以前から重度の認知のの、これは夫婦間の同居義務及び協力 症の状態にあったの同居の配偶者であ扶助義務が生活保持義務であるのと異なては、がどのようにして改札を通過し ること、自身も要介護 1 の認定を受けてり、あくまでも経済的扶養を中心としたて構内に侵入したのか、下車後に本件事 いたとはいえ、や 0 の援助を受けなが扶助の義務にすぎないこと、前記改正前故現場までどのようにして行ったのか判ひ らの介護をしていたものであり、協力の精神保健福祉法条 2 項に定める家庭明していないこと、ホームのフェンスはの 扶助義務の履行が法的に期待できない特裁判所による保護者に選任する裁判もな扉が閉められていたことなどから、原告法 されていないことなどから、が >< の生が >< による本件事故発生を阻止できなか 1 段の事情は認められないことなどから、
月刊法律のひろば 2015 VOL68 No. 2 February ◆特集◆ 認知症とトラブル 法律家に何ができるか ー現代における認知症をめぐる諸問題 / 吉田輝美 4 ー認知症患者による事故と監督者の責任 ー認知症徘徊事故を契機として / 古笛恵子 13 ー認知症等高齢者の消費者被害 ー防止策の現状と今後の対策 / 坂井崇徳 21 ー認知症高齢者等への法的サポート ー成年後見制度の役割 / 髙岡信男 32 ー認知症高齢者の虐待事案の現況 / 野本雅志 40 ー認知症の方への支援 ー現場からの報告 / 髙梨友也 50 ー我が国と諸外国における認知症施策 / 翁川純尚 57 ◆最近の判例から◆ 妊娠中の軽易業務への転換を契機とする降格措置の有効性・適法性 最高裁平成 26 年 10 月 23 日第一小法廷判決 / 小島冬樹・足立格・児島幸良 64 ひろば時論 / 2 ■検察の国際性の向上 ■無戸籍者問題に対する取組状況 ・ひろば法律速報 / 73 ・訟務情報 / 76 ・次号予告 / 12 弊社新刊図書・雑誌のご案内・・ " ・ http : ″ gyosei. jp 装丁 /Kaz イラスト /Nao