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検索対象: 法律のひろば 2015年2月号
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1. 法律のひろば 2015年2月号

特集認知症とトラブル法律家に何ができるか 認知症高齢者の虐待事案の現況 共通の要件 ( 高齢者・養護者に対する相談・指 いわゆる市区町村長申立ての成年後見 導・助言 ( 法 6 条・Ⅱ条 ) も挙げられ等手続開始審判申立てである。 ここで、前記各手段をとるための要件 として、共通して、「生命又は身体に重 なお、前述の「養介護施設従事者等」 措置・一時保護 ( 法 9 条 2 項、老人大な危険が生じている場合」が必要とな による高齢者虐待の場合の防止策にはこ 福祉法間条の 4 第 1 項・条 1 項 ) る場合がある。 の①から④に対応する規定はない。その この場合の重大な危険の解釈は、それ その上で、市町村又は市町村長は、高 代わり、この場合には、「老人福祉法又齢者を一時的に保護するため老人福祉法ぞれの効果としての規制手段の対象者に は介護保険法の規定による権限を適切に 川条の 4 第 1 項 ( ヘルバーの派遣やディ対する権利侵害の度合いの如何によって 行使」することで対応することとなってサービス、ショートスティの実施など「居ある程度柔軟に解釈すべきである いる ( 法条 ) 。これは、養介護者施設宅における介護等」 ) 若しくはⅡ条 1 項すなわち、虐待通報が義務となる場合 従事者等による虐待の場合では、条での規定 ( 「老人ホ 1 ムへの入所等」 ) によの要件については、広く、虐待の防止に 直接老人福祉法川条の 4 やⅡ条の「やむる措置を講ずること ( 法 9 条 2 項 ) がでつなげ深刻な事態を事前に回避するため を得ない措置」が直接適用されるので、 きる。老人短期入所施設等 ( 老人福祉法の要件であるから比較的緩やかに解し、 当然に同措置が可能で、別に規定するま条の 3 ) に入所させることは、その一「当該高齢者の生活課や身体状況に変化 でもないことと、「都道県知事や市長寸 オ例である。これは、一定の場合に、「やが認められるなど、相応の根拠に基づ 長に調査権・質問権等を与え、場合によむを得ない事由により」、介護保険法にき、虐待の疑いがあると判断されると っては指定や認可等を取り消す権限までよる正式手続を経ることなく、いわゆるきーには通報すべきと解すべきとされる 与えられており、虐待についても、それ「やむを得ない措置」 ( 法 9 条 2 項、老人 ( 注 3 ) 。なお、虐待の早期発見に努める らの権限が適切かっ積極的に行使されれ福祉法川条の 4 ・Ⅱ条 1 項 ) として認めべきとされる福祉・医療保険等に関する ば有効な対策となり得るとされる。」かられるものである。 団体並びに医師、保健師などの「高齢者 らだといわれている。しかし、これらの《やむを得ない事由による措置のサービ福祉に職務上関係ある者ー ( 法 5 条 ) に は、一般人以上に強い通報義務ないし通 手段は虐待に特化していない一般的な規スの種類 ( 主なもの ) 》 報努力義務が課されていると解されてお 定なので、養介護施設従事者等による虐〇訪問看護 り、その関係者には弁護士も含まれてい 待の場合にも①から④に当たる規定を設 〇通所介護 ろ る。 けるべきであるといわれる。 〇短期入所生活介護 ひ これに対し、①の虐待通報を受けた場の ⑤区長申立てによる後見等開始審判申 〇小規模多機能型居宅介護 合の措置としての一時保護 ( 措置 ) の要法 立て ( 法 9 条 2 項・条・条 2 項、 〇認知症対応型共同生活介護 老人福祉法条による審判請求 ) 〇特別養護老人ホ 1 ム 件 ( 法 9 条 2 項 ) の場合は、その措置が、

2. 法律のひろば 2015年2月号

= 近 ? 判例 るが、単に妊娠又は出産したことを理由想定し難いといえる として降格措置を執る業務上の必要性が = 五本判決の射程 生じる場面は、一般には想定し難いとい 育児・介護休業法川条 える。 軽易業務への転換以外の事由を 育児休業、介護休業等育児又は家族介 理由とする降格措置 護を行う労働者の福祉に関する法律 ( 以 降格以外の不利益取扱い 本判決は、直接には、均等法施行規則 下「育児・介護休業法ーという。 ) 川条 2 条の 2 の各号に定める各事由のうち、 本判決は、直接には、事業主による降は、使用者が労働者に対し「労働者が育 妊娠中の軽易業務への転換を理由とする格措置について判示したものである。も児休業申出をし、又は育児休業をしたこ 降格措置について判示したものである。 っとも、本判決は、性差別禁止等指針第とを理由として」「解雇その他不利益な もっとも、本判決は、前記の判断基準を 4 の 3 ②が均等法 9 条 3 項の禁止する不取扱いをしてはならない」と定めてお 導くに当たり、均等法の目的 ( 同法 1 利益取扱いに該当し得るものの例示としり、その条文構造は均等法 9 条 3 項と近 似している。また、平成新年厚生労働省 条 ) 、基本的理念 ( 同法 2 条 ) 及びこれて「降格」等を定めていることに触れ、 らに基づいて同法 9 条 3 項が定められた この定めは本判決と同様の趣旨によるも告示 460 号の第 2 のⅡ②は、育児・介 趣旨及び目的を参照していることから、 のといえる旨判示している。このことか護休業法川条により禁止される不利益取 扱いの例示として、性差別禁止等指針第 本判決の趣旨は、軽易業務への転換に限らすれば、性差別禁止等指針第 4 の 3 ② らす、それ以外の事由を理由とする降格に例示されるその他の不利益取扱いに関 4 の 3 ②と同様の例を定めている。 措置についても及ぶ可能性がある。 しても、本判決の趣旨が及ぶ可能性があ本訴訟において、上告人は、育児休業 からの復帰時に上告人を副主任の地位に ただし、その場合でも、均等法 9 条 3 る 項の趣旨及び目的に実質的に反しないも ただし、その場合でも、均等法 9 条 3 復帰させなかった被上告人の措置につい のと認められる「特段の事情」の存否等項の趣旨及び目的に実質的に反しないもて、育児・介護休業法川条に違反するこ についての具体的判断は、いずれの事由のと認められる「特段の事情」の存否等とを予備的請求原因として主張していた を理由とする降格措置であるかによっ についての具体的判断は、不利益取扱い ( 注 5 ) 。 て、大きく異なると考えられる。例えば、 の内容によって、大きく異なると考えら この点につき、櫻井龍子裁判官は、補タ れる。例えば、妊娠中の軽易業務への転足意見において、育児・介護休業法川条の 妊娠中の軽易業務への転換については、 法 業務内容の変更に伴って降格措置を執る換を理由として解雇という措置を執る業が強行規定であること、一般的に降格が 業務上の必要性が生じる場面を想定し得務上の必要性が生じる場面は、一般には同条の禁止する不利益な取扱いに該当す月

3. 法律のひろば 2015年2月号

する症状による労務不提供又は労働能率これに対し、控訴審判決 ( 東京高裁平上の効力について論じた上で、同項違反 の低下 ( 同条 9 号 ) 等を理由とする不利成年月日判決・労判 1042 号 該当性の判断基準について判示してい 益取扱いを禁止している。 頁 ) は、①役割グレードの引下げ及び役る。以下、順に検討する。 割報酬の減額について、就業規則等に明 ろ ひ 示的な根拠がないこと等から人事権の濫 均等法 9 条 3 項施行後の裁判例 均等法 9 条 3 項の私法上の効力律 用に当たり無効・違法とし、②成果報酬 均等法 9 条 3 項施行後において同項違 についても、既に職場復帰しており何ら均等法は、事業主が同法 9 条 3 項に違 反が争われた裁判例として、コナミデジかの成果を上げられる見込みが高い当該反した場合に関して、厚生労働大臣によ タルエンタティンメント事件がある。同労働者の成果報酬額をゼロと査定するこる勧告の対象となり得ること ( 同法四条 事件においては、産前産後休業及び育児とは、均等法等の趣旨に反し、人事権の 1 項 ) 等を定めているが、同法 9 条 3 項 休業を取得した後に復職した女性労働者濫用に当たり違法・無効とした。 が私法上いかなる効力を有するかについ につき、使用者が、①担当職務を変更し、 もっとも、第一審判決及び控訴審判決ては明示していない これに伴い役割グレードを 2 段階引き下とも、使用者の措置が均等法 9 条 3 項に 学説上、均等法における事業主を名宛 げ、役割報酬を減額させたことや、②成違反するとの判断はしていない。第一審人とする「 5 しなければならない」 ( 同 果報酬をゼロと査定したことの有効性・判決は、前記いずれの措置についても同法 5 条 ) 、「 5 してはならない」 ( 同法 6 適法性が争われ、産前産後休業の取得を項違反を否定した。控訴審判決も、担当条、 7 条、 9 条各項 ) との諸規定は、い 理由とする不利益取扱い ( 均等法 9 条 3 職務の変更について、合理的な理由が認ずれも私法上の強行規定であり、これら 項違反 ) の成否も争点となった。 められ、差別的な意図に基づいてなされに違反する事業主の行為は違法であり、 第一審判決 ( 東京地裁平成年 3 月 たものと認めることはできないとして同法律行為として無効であると解されてい 日判決・労判 1027 号頁 ) は、①担項違反を否定した ( 役割報酬の減額及びる ( 注 3 ) 。 当職務の変更及びこれに伴う役割グレ 1 成果報酬のゼロ査定については人事権の本判決も、学説と同様に、均等法 9 条 ドの引下げと役割報酬の減額については濫用としたため判断していない。 ) 。 3 項は強行規定であり、同項に違反する 有効・適法とする一方、②成果報酬につ 不利益取扱いは違法であり、無効である いて、査定対象期間のうち休業前の 3 か と判示した。 月間は一定 0 業績を上げて〔たにもかか = 四本判決の検討 わらずゼロと査定したことは、人事権の 濫用に当たり無効・違法とした。 本判決は、まず均等法 9 条 3 項の私法

4. 法律のひろば 2015年2月号

つん 平成年 ) 頁等。 ることは、均等法 9 条 3 項についての法 ( 4 ) 法曹会「最高裁判所判例解説民事篇 ( 平成 2 年度 ) 」 廷意見と同様であるとして、本判決の趣 六おわりに 一 0 0 ( 法曹会、平成 4 年 ) 406 頁以下 ( 高橋利文 ) 参照。 旨は育児・介護休業法川条にも及ぶもの 本判決は、最高裁が初めて均等法 9 条 ( 5 ) 育児・介護休業法川条に関する裁判例として、本引 とされる。 ひ 件の第一審判決及び控訴審判決、本文記載のコナミデの 3 項について具体的な判断を示したもの さらに、櫻井裁判官は、本件のように 律 妊娠中の軽易業務への転換に伴い降格のであり、その内容は、同法の目的及び基ジタルエンタティンメント事件のほか、医療法人稲門法 会事件 ( 大阪高裁平成年 7 月絽日判決・労経速 2 2 措置が執られ、その後に当該労働者が産本的理念を踏まえて、同項の適用範囲を 24 号 3 頁 ) がある。 前産後休業及び育児休業を取得した場合従前の裁判例と比較してより広く認めた ( 6 ) 「改正男女雇用機会均等法 100 問 100 答」 ( 労 において、育児休業から復帰後の配置等ものであるとの評価が可能である。 今後は、本判決が示した判断基準のあ働法令協会、平成四年 ) 行頁。同書は、「改正男女雇 が「降格」に該当するか否かの判断は、 用機会均等法等質疑応答集」 ( 平成四年 4 月日雇児 てはめ及び射程について、事例や議論が 軽易業務への転換前の職位等 ( 本件でい 発第 0418001 号 ) を書籍化したものである。 えば副主任 ) との比較で行うべきであ蓄積されていくものと考えられる。 ( こじま・ふゆき / あだち・いたる り、復帰後に上告人を副主任の地位に復 こじま・ゆきなが ) 帰させなかった被控訴人の措置は、育 ( 注 ) 児・介護休業法間条との関係で「降格」 ( 1 ) 妊娠・出産等による不利益取扱いに関する裁判例 について、富永晃一「比較対象者の視点からみた労働 に該当するとされる。そして、この点に 法上の差別禁止法理ー妊娠差別を題材として」 ( 有斐 ついては、産前産後休業の取得を理由と する不利益取扱いを禁止する均等法 9 条閣、平成年 ) 芻頁以下参照。本文に挙げた裁判例の ほか、賃金上の不利益取扱いに関する判例として、日 3 項との関係でも同様であるとされる 本シェーリング事件 ( 最高裁平成元年月Ⅱ日判決・ これに対し、厚生労働省は、このような 場合には休業直前の業務、すなわち軽易判タ 723 号頁 ) 、東朋学園事件 ( 最高裁平成年 1 月 4 日判決・判タ 1143 号 233 頁 ) 等がある 業務への転換後の業務に復帰させれば均 等法 9 条 3 項との関係で違法とはならな ( 2 ) 使用者の転勤命令権とその濫用について、東亜ペ イント事件 ( 最高裁昭和礙年 7 月Ⅱ日判決・判タ 60 いとの立場をとっているようである ( 注 6 号頁 ) 参照。 6 ) 。櫻井裁判官の補足意見は、厚生労 働省と異なる立場を明確にしたものと解 ( 3 ) 菅野和夫「労働法」 ( 弘文堂、第川版、平成年 ) 188 頁以下、荒木尚志「労働法」 ( 有斐閣、第 2 版、 され、注目される。

5. 法律のひろば 2015年2月号

〒 101 ・ 0051 東京都千代田区神田神保町 2-17 / Tel ℃ 3-3265-6811 第盲甲』 http ・ //www.yuhikaku.co.jp/ <LO 判 呈 ニ七 00 円 憲法学読本第 2 版 読 学 ~ ー 安西文雄・巻美矢紀・宍戸常寿著 目 立憲主義の背景にある歴史・原理に力点をお法 書 きつつ、現在の憲法をわかりやすく解説。 現代裁判を考える = = 一 8 円裁判 田中成明著◎民事裁判のヴィジョンを索めて考える 法哲学者が、民事司法改革の現況を点検しつ つ、主な現代的課題について考察。 方一七〇〇円 新基本民法 7 家編 大村敦志著◎女性と子どもの法 親しみやすくわかりやすい叙述で民法 ( 親族 法 ) を学ぶ。新基本民法、第 1 弾 ! 2 色刷。 <LO 判 、冫三六 00 円 家事事件手続去 高田裕成編著◎理論・解釈・運用 家事事件手続法の制定過程における議論を下 敷きにその理念と残された課題を解説する。 知的財産法—特許法八冪 駒田泰土・潮海久雄・山根崇邦著事例から説き起こし、最先 端の問題にも触れ、コンパクトに特許法の全体像を学べる。 <LD 判 卩三四〇〇円 特許法入 閣島並良・上野達弘・横山久芳著『著作権法入門』の執筆陣 による待望の続刊。実例や図表も盛り込んだ、基礎固めの一冊。 有最高裁時の判例Ⅶー、三四 = 六円 シュリスト編集室編月刊ジュリスト「最高裁時の判例」「最高 裁大法廷時の判例」欄及び「特集最高裁大法廷判決」を再録。 0 = ◎ <LD 判 田中成明物 第事を手第年 基本 民法 家族編 ・を第第をゞ をリコーア 民事社物の ウイジョンをめて 成文堂 ◆最新刊 っこ 障害 、冫 す菊池馨実・中川純・川島聡編著 <LO 並製 / 258 頁 / CN(DOO 円 き O 抜 >< 高齢化社会を迎えた現在、障害をもっている、または障害に関 わっている人々の生活制限を改善し、共生社会の実現を図るた めの障害法の機能・役割を分かりやすく解説する。法学専攻、 社会福祉専攻の学生はもちろん、法律・福祉分野の実務家等、 障害法に関心のあるすべての人々のための有益書。 4 ◆好評書 ロ 0 0 現代型訴訟の諸相 < 5 上製 / 17 4 頁 / 3 5 0 0 円 稲電久末弥生著 早 公害訴訟や環境訴訟、消費者訴訟、医療訴訟等、いわゆる現代 区 型訴訟が民事訴訟法と多様な訴訟類型の新たな関係を示唆し続 宿℃ 新 けている現在における民事訴訟と行政訴訟の境界を扱う論文集。 都 京 山口厚先生献呈論文集 髙山佳奈子・島田聡一郎編 <0 上製 / 452 頁 / 9000 円 山口厚先生の還暦に際し、刑法総論と各論の全体にまたがる重 「要テーマを取り上げた門下生 6 名による珠玉の論文集。 現代の刑事裁判 <LO 上製 / 464 頁 / 8000 円 渡辺修著 市民の参加を刑事司法へ反映させた裁判員裁判の在り方、包括 的防御権の充実と「可視化」原理の浸透、判例研究方法の工夫の 3 つのコンセプトを軸に現代の刑事裁判を鳥瞰した研究成果。 新版精神保健福祉法講義 <LO 並製 / 280 頁 / 3000 円 大谷實著 平成年の改正精神保健福祉法に完全対応。精神保健福祉法を 体系的・客観的に解説し、法学・医学等の各領域に共通の水準 を提供する。法学関係者のみならす、精神医療関係者必携の書。

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冖。、の、 1- から して、均等法 9 条 3 項違反を否定した。軽易業務への転換がなければされなかっ 均等法 9 条 3 項違反の判断基準 たような降格措置が、軽易業務への転換 また、本件の第一審判決及び原判決も、 原則 本件措置が軽易業務への転換請求のみををきっかけとしてされることを意味して いると解することができる 本判決は、女性労働者につき妊娠中のもって裁量権を逸脱してされたものでは 軽易業務への転換を「契機として」降格 ないことから、均等法 9 条 3 項違反を否 させる事業主の措置は、原則として均等定した。このように、従前の裁判例は、 例外 法 9 条 3 項の禁止する不利益取扱いに該均等法 9 条 3 項の「理由として」との要本判決は、軽易業務への転換を契機と 当する旨判示した。この判示は、一見す件に関して、事業主が差別的意図を有すしてされた降格措置であっても、例外的 ると均等法 9 項 3 項の規定から当然のこることや、他の合理的理由が存在しない に均等法 9 条 3 項の禁止する不利益取扱 いに当たらない場合として、次の二つを とを述べているに過ぎないかのようであこと等、各事由と不利益取扱いとの間に るが、次の点において意義を有している比較的強い因果の結びつきが存在するこ挙げている と解される。 とを要求する傾向にあったといえる。こ①第 1 の例外は、降格につき当該労働 均等法 9 条 3 項は、妊娠又は出産に関れらの裁判例は、人事権の濫用という枠者の承諾が存在する場合の例外である。 する所定の事由を「理由として」される組みで当該措置の有効性・適法性を判断もっとも、この例外に当たるのは、単に 不利益取扱いを禁止している。「理由としていた均等法 9 条 3 項施行前の裁判例労働者の承諾があるだけではなく、当該 して」とは、所定の事由と不利益取扱いと連続性を有し、同項違反を人事権濫用労働者が受ける有利又は不利な影響の内 との間に因果関係があることをいうとさの一態様と位置付けるものであったと評容・程度、事業主による説明内容その他 の経緯や当該労働者の意向等に照らし、 れている ( 性差別禁止等指針第 4 の 3 価することが可能である。 これに対し、本判決は、均等法 9 条 3 「当該労働者につき自由な意思に基づい て降格を承諾したものと認めるに足りる 均等法 9 条 3 項施行後における従前の項の「理由として」との要件について、 裁判例をみると、前記のとおり、コナミ 軽易業務への転換を「契機として」され合理的な理由が客観的に存在するとき」 デジタルエンタティンメント事件控訴審た降格措置であれば原則として足りるとである。そして、本判決は、右「合理的 判決は、事業主が行った担当職務の変更して、事業主の差別的意図に基づく措置な理由」の存否に関して、当該労働者が 措置について、合理的な理由が認めらであることや、軽易業務への転換のみを当該措置による影響につき事業主から適引 れ、差別的な意図に基づいてなされたも理由とする措置であることといった強い切な説明を受けて十分に理解した上でその のでないことから、産前産後休業の取得因果の結びつきを要求していないと解さの諾否を決定し得たか否か、という観点法 から判断すべきとしている を「理由として」されたものではないとれる。ここでいう「契機として」とは、

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特集認知症とトラブル法律家に何ができるか 認知症高齢者の虐待事案の現況 るのかを知り、これを使いこなして、適そのような対応が図られているようであ とい、んる 切な対応をとれるようにする必要がある ( 法 2 条 5 項 1 号と対比 ) 。 る。 ③心理的虐待 ( 認知症 ) 高齢者の虐待に対す その観点から、まず、現行法上の虐待高齢者に対する著しい暴言又は著しく る法規制 拒絶的な対応その他の高齢者に著しい の定義 ( 意義・要件 ) を概説する。 「心理的外傷」を与える言動を行うこと。 「高齢者ーとは、法律 ( 高齢者虐待の これは、①との対比上、いわゆる物理 虐待の種類 ( 法 2 条 4 項、 5 項 ) 防止、高齢者の養護者に対する支援等に 的な「有形力の行使」に至らない、言語 関する法律。以下「高齢者虐待防止法」①身体的虐待 高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じ上・精神的な害悪の告知 ( 脅迫 ) を含め、 又は単に「法ーという。 ) 上の定義では 幅広く高齢者を心理面で侵害する言動ま 「歳以上の者、とされ、「虐待」は、広るおそれのある「暴行」を加えること。 い意味では、「高齢者が、他者からの不②介護・世話の放棄・放任 ( ネグレクで保護の対象を広げたものといえる。 ④性的虐待 適切な扱いにより権利利益を侵害され得 高齢者に対するわいせつな行為をする ( 養護者自身による ) 高齢者を衰弱さ る状態や、生命・身体・健康・生活が損 なわれるような状態に置かれること、でせるような「著しい減食、長時間の放こと又は高齢者に対してわいせつな行為 あり、「人としての尊厳を害する行為全置」、「養護者以外の同居人による虐待行をさせること。 般 , を指すが、法では、虐待一般ではな為の放置」 ( 自身以外の者のネグレクト⑤経済的虐待 く、そのうちの、特定の主体による、特をさらに放置する場合 ) など、養護を著養護者又は高齢者の親族が当該高齢者 の財産を不当に処分することその他当該 定の具体的な虐待の態様を帰納的に定義しく怠ること ( 不作為 ) 。 これについては、「自ら他者に対して高齢者から不当に財産上の利益を得るこ 付けて、これを規制している ( 法 2 条 3 AJ 援助を求めず放置している」という、い 項 55 項 ) 。 よって、現行法上の「高齢者虐待 . のわゆる「自己放任」 ( セルフネグレクト ) 虐待行為の具体例 現実を把握し、実際に虐待の現場でこれについて救済が及ばないことになるので これらの虐待行為の具体例としては以 はないかという問題が指摘されている。 を認定し、法律上認められるに至った 様々な規制手段を活用して、適切な対応しかし、実際には、このような場合も、下のものが上げられている ( 注 2 ) 。 ろ を図るためには、まず、現行法上の「虐「高齢者の権利利益が客観的に侵害され①身体的虐待 ひ 待」と認められる要件をしつかり把握ていることには変わりない , ( 注 1 ) とし〇平手打ちをする。つねる。殴る。蹴るの 法 し、これが認められる場合には、その効て同様の対応が事実上認められるように〇無理矢理食事を口に入れるやけど、 打撲させる 果としてどのような規制手段が活用できすべきであると解されており、実務上も

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ため、円満に後見業務を進めることがで 助を要請することが可能 ( 法肥条 1 項 ) ニ弁護士が対応し得る方策 きたものである。 であり、一定の場合にはそれが市町村長 ( 虐待対策における弁護士の これらの例は、養介護事業従事者の一 の義務ともなり ( 同条 2 項 ) 、やむを得 役割 ) 人から虐待のおそれの通報を受け、一時 ない場合には、一時保護などの手段を選 ろ ひ 入所措置をとって虐待対象者を分離し、 択することができる ( 法 9 条 2 項 ) 。 の 高齢者虐待防止法上の手段 面会制限をして接触を防いだ上で、区長 なお、「養介護施設従事者等による 申立てによる成年後見人選任という手順 前提としての「高齢者虐待にかかる高齢者虐待の場合には、養介護施設又は で、スム 1 ズに本人保護が実現された例通報 ( 法 7 条、 8 条、 幻条 1 項 53 項 ) 」養介護事業などにおいて、その業務に従 といえる。 法は、「養護者による高齢者虐待を受事する養介護施設従業者等による高齢者 一方では、客観状況としては、明らか けたと思われる高齢者」を「発見した者」虐待を受けたと思われる高齢者を発見し に本人の財産を任意後見契約・財産管理は、当該高齢者の「生命又は身体に重大たときには ( 高齢者の生命又は身体に重 契約を結んだ形で完全に自由にされてしな危険が生じている場合」には、市町村大な危険が生じていない場合でも ) 、通 まっている経済的虐待状況におかれた高 への通報義務があり ( 法 7 条 1 項 ) 、そ報義務があることが、養護者による虐待 齢者の場合でも、入所施設の入所契約自のような場合でなくとも通報の努力義務の場合と異なっている ( 法幻条 1 項 ) 。 体を虐待者が行っていて、施設の協力をがあり、通報をしても秘密漏示罪の規定 得られす、施設の主治医も協力を拒否すその他の守秘義務に関する法律の規定に 「養護者」による虐待への対応とし るような状況で、虐待者を囲い込んでしよる規制で妨げられることがなく、通報て認められている市区町村権限 まい、成年後見申立て自体ができない、 者特定情報の守秘義務を定めることでそ市区町村又は市区町村長が、「養護者 という事例もあった。 の通報を促している ( 同条 3 項、 8 条 ) 。 による高齢者虐待により生命又は身体に この場合、診断書の取得、鑑定の実施通報を受け、また、高齢者自身からの虐重大な危険が生じているおそれがあると すらできない状況なので、そのままでは待の届出を受けた市町村は、高齢者の安認められる」場合などには、当該高齢者 ど、つしよ、つもない。このよ、つな場合に、 全の確認その他の通報・届出にかかる事に対して以下の措置をとることができ、 客観状況から、囲い込みによる経済的・実の確認措置をとり ( 法 9 条 1 項 ) 、高又はとる義務が生ずる場合もある。 身体的虐待の疑いが強いことを疎明し、齢者虐待対応協力者と対応を協議するこ①各種措置・一時保護 ( 法 9 条 2 項 ) 裁ととなる。 診断書・鑑定なしでの申立てを行い、 ②立入調査 ( 法Ⅱ条 1 項 ) 判所が職権で鑑定を実施して何とか後見この場合に、後述するように、必要に③立入調査時の警察署長に対する援助 審判に至ったこともある。 応じて立入調査もでき ( 法い条 1 項 ) 、 要請 ( 法条 1 項 ) その際必要に応じて警察署長に対する援④面会の制限 ( 法条 )

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しめようとする意図 ) は認められず、む④みなと医療生活協同組合 ( 協立総合病みを禁止するものであった。これに対 しろ企業運営上の客観的合理性・必要性院 ) 事件 し、均等法 9 条 3 項においては、二つの が認められるとして人事権の濫用を否定産前休業中における降格 ( 看護師長解点において、禁止の対象が拡大されてい した。 る。 任 ) の適法性が争われた事案において、 ②慈恵大学附属病院 ( 佐渡 ) 事件 名古屋地裁平成年 2 月跚日判決 ( 労判 第 1 に、均等法 9 条 3 項は、不利益取 大学附属病院において、女性看護師が 966 号簡頁 ) は、一般論として、降格扱いの内容に関して、解雇だけでなく、 産前休業に入るとその所属を総婦長室付を人事権の行使として裁量的判断により「解雇その他不利益な取扱い」全般を禁 に配転し、復職時に総婦長が業務上の必行うことは原則として許容され、強行法止している。均等法川条 1 項に基づいて 要性等を考慮して新しい勤務場所を指定規違反や人事権の濫用に該当する場合に 定められた指針 ( 平成年厚生労働省告 するという慣行がある場合に、同慣行に限り違法となるに過ぎないとした上で、 示第 614 号、以下「性差別禁止等指針 従ってなされた配転命令の有効性が争わ本件降格措置については、産休取得を理という。 ) は、その第 4 の 3 ②において、 れた。第一審判決 ( 東京地裁昭和年 4 由とするものとは認められないこと等か均等法 9 条 3 項により禁止される不利益 月日判決・判時 1039 号 133 頁 ) ら、適法とした。 取扱いの例として、解雇のほか、有期雇 及び控訴審判決 ( 東京高裁昭和年月 以上のとおり、均等法 9 条 3 項施行前用の雇止め、退職や正社員から非正規社 日判決・同 131 頁 ) とも、同慣行のの裁判例は、原則として、配転・降格・ 員への変更の強要、降格、減給又は賞与 客観的合理性を認め、配転命令を有効と昇格等については人事権の行使として使等の不利益な算定、昇進・昇格の人事考 した。 用者に裁量的判断が認められることを前課における不利益な評価、不利益な配置 ③住友生命保険事件 提としつつ、当該人事異動の必要性・合の変更等を挙げている。 既婚の女性労働者が、使用者から既婚理性等に鑑みて、それが裁量の範囲を逸第 2 に、均等法 9 条 3 項及びこれを受 女性であることを理由として昇給昇格に脱して人事権の濫用に該当するかどう けた同法施行規則 2 条の 2 各号は、不利 おいて違法に差別されているとして、使か、との枠組みによりその有効性・適法益取扱いの「理由」に関して、妊娠、出 か 用者の不法行為責任等を追及した事案で性を判断していたものと解される ( 注 2 ) 。産、産前産後休業の取得だけでなく、産 ある。大阪地裁平成年 6 月日判決 ( 労 前休業を請求したこと ( 同条 5 号 ) 、妊 判 809 号 5 頁 ) は、既婚者であること 娠中の軽易業務への転換を請求し又は軽タ の 均等法 9 条 3 項の規制の内容 を理由として一律に低査定を行うことは 易業務に転換したこと ( 同条 6 号 ) 、育の 斤 人事権の濫用であるとして、不法行為の 旧均等法 8 条 3 項は、妊娠、出産又は児時間を請求し又は育児時間を取得した法 成立を認めた。 産前産後休業の取得を理由とする解雇のこと ( 同条 8 号 ) 、妊娠又は出産に起因

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各議院の情報監視審査会から調ができる。 ある情報が含まれる報告又は記録な の提出を求めた場合において、行 ◆国会法等の一部を改正する法律査のため、行政機関の長に対し、④提出の勧告 ( 平成年法律第号 ) 情報監視審査会は、⑥の審査の政機関の長が理由を疎明してその 必要な特定秘密の提出を求めたと 〔平成年 6 月日公布・原則特定秘密 きは、求めに応じなければなら求め又は要請を受けた場合は、各求めに応じなかったときは、そのば 保護法の施行の日 ( 平成年粍月日 ) ず、行政機関の長が求めに応じな議院の議決で定めるところにより、委員会等は、内閣の声明を要求すひ から施行〕 これについて審査するものとし、 いときは、理由を疎明しなければ ることに代えて、その議院の情報律 法 ならない。 審査の結果必要があると認めると監視審査会に対し、行政機関の長 その理由をその情報監視審査会きは、行政機関の長に対し、当該がその求めに応じないことについ 本法は、特定秘密保護法附則川 条に基づく検討を踏まえ、各議院において受諾し得る場合には、行審査の求め又は要請をした委員会て審査を求め、又はこれを要請す に「情報監視審査会」を設置する政機関の長は、その特定秘密の提等の求めに応じて報告又は記録のることができる。 国会法 104 条の規定により、 提出をすべき旨の勧告ができる。 とともに、国会において特定秘密出をする必要がない 理由を受諾できない場合は、そ⑤情報監視審査会における特定その内容に特定秘密である情報を の提出を受ける際の手続その他国 秘密の保護措置 含む報告又は記録が委員会等に提 会における特定秘密の保護措置をの情報監視審査会は、更にその特 定めようとするものである。主な定秘密の提出が我が国の安全保障各議院の情報監視審査会の事務出されたときは、その報告又は記 に著しい支障を及ばすおそれがあは、その議院の議長が実施する適録は、その委員会等の委員等及び 内容は次のとおりである。 性評価においてその事務を行ったその事務を行う職員に限り、か る旨の内閣声明を要求できる。 国会法の一部改正 声明があった場合、行政機関の場合に特定秘密を漏らすおそれがつ、その審査又は調査に必要な範 ①情報監視審査会の設置等 囲で、利用し、又は知ることがで 行政における特定秘密の保護に長は、その特定秘密の提出をするないと認められた者でなければ、 きるものとする。 行ってはならない。 関する制度の運用を常時監視する必要がない。 議院証言法の一部改正 特定秘密が各議院の情報監視審 要求後間日以内に、内閣が声明 ため、特定秘密の指定・解除及び 議院証言法に基づく証言又は書 適性評価の実施の状況について調を出さないときは、行政機関の長査会に提出されたときは、その特 査し、また、各議院、各議院の委は、先に求められた特定秘密を提定秘密は、その情報監視審査会の類の提出についても、所要の規定 委員及び各議院の議決により定めを整備する。 員会等からの特定秘密の提出の要出しなければならない。 る者並びにその事務を行う職員に 国会職員法の一部改正 求に係る行政機関の長の判断の適③運用改善の勧告 各議院の議長は、両議院の議長 情報監視審査会は、調査の結限り、かっ、その調査又は審査に 否等を審査するため、各議院に情 が協議して定めるところにより、国 必要な範囲で、利用し、又は知る 果、必要があると認めるときは、 報監視審査会を設ける。 ことができるものとする。 会職員等の適性評価を実施する。 国会法等の法律に定めるものの行政機関の長に対し、行政におけ 検討事項 ほか、情報監視審査会に関する事る特定秘密の保護に関する制度の⑥委員会等による国政調査への 政府の対応の審査 ①この法律の施行後、我が国が 項は、各議院の議決により定める。運用について改善すべき旨の勧告 委員会等が国会法 104 条の規国際社会の中で我が国及び国民の ②情報監視審査会に対する特定ができるほか、勧告の結果とられ た措置について報告を求めること定により、その内容に特定秘密で安全を確保するために必要な海外 秘密の提出又は提示の手続