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検索対象: 法律のひろば 2015年2月号
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1. 法律のひろば 2015年2月号

特集認知症とトラブル法律家に何ができるか 認知症高齢者の虐待事案の現況 申立代理人弁護士や後見人候補弁護士を アの請求権者 ( 主体的要件 ) とは、①ておく必要がある。 原則としては鑑定により審判が行わ 探し、当該弁護士が申立てから後見人業本人、②配偶者、③ 4 親等内の親族 ( 従 務までを賄う形で後見人となり、虐待の姉妹まで ) 、④未成年後見人・未成年後れるので、①鑑定費用が必要であり、 なされる状況を個別に解決する方法によ見監督人、⑤保佐人・保佐監督人・補助②本人の判断能力を判断するため、医 り、虐待状況を解消することが必要とな人・補助監督人、⑥任意後見契約受任師の診断書を入手する必要がある。近 る ( この場合広義の後見には補助・保佐者・任意後見人・任意後見監督人、⑦検時はむしろ要後見状態が明らかな場合 など、鑑定を経ない方が多い運用とな ・後見の 3 種類があるが、虐待時には主察官、⑧市区町村長である。 っている として狭義の後見類型が活用される。 ) 。 実際には、特に狭義の後見の場合には ①はあまり想定されず、⑦の検察官の申イ審理 後見開始の要件 家裁調査官・書記官等により、申立 立てはまずなく、②③及び⑧の市区町村 この場合の後見開始の具体的な手続の長申立てが多くなっている。 ての経緯、経歴、精神状態の概要、生 概略は以下の通りである。 イの管轄 ( 裁判所 ( 相手方 ) の要件 ) 活状態、財産状態等の聴き取りがなさ ①実体的要件 は、本人の住所地の家庭裁判所 ( 旧家審れるのが通常である。 〇精神上の障害により事理を弁織する能 規条、条、条の 7 ) であり、入所 本人の陳述聴取も原則として行われ 力を欠く常況にあること ( 民法 7 条 ) 施設とのすれをどうするかなどの問題が るが、客観的に本人の意思陳述が難し 〇「事理を弁識する能力を欠く , 【自分ある。 いと判断される場合、病院等に入院 の行為の結果 ( 法的権利関係の変動の ( ウについては後記参照。 ) し、生括状況が明らかな場合、緊急性 等を考慮し、省略される場合がある。 結果 ) について合理的な判断をする能③申立て ( 行為 ) ( をすること ) カかないこと ア手続 虐待事案の区長申立ての場合、省略さ 〇「常況にある」二時的に意思能力を 後見申立てに関する書式一式は、裁れることが多いともいわれる。 回復することがあっても大部分の時間 判所のホ 1 ムペ 1 ジから、ダウンロー 近親者 ( 主に推定相続人 ) に意向照 ドできる において意思能力を欠く状態であれば 会がなされる。現在は「同意書」の取 足りる 東京家裁 ( 本庁・立川支部 ) では、 得をもって代える場合が多いが、同意 ②手続的要件 即日事情聴取を行っているため、予約書がないと決定が行われないという意 ア「請求権者」 ( 主体 ) により 制を採用している。予約の際、申立人味ではない。意向照会で、推定相続人ろ イ「家庭裁判所」 ( 相手方 ) に の氏名、後見・保佐等の申立類型、来 が反対したからといって、後見開始のの ウ「後見開始の審判の請求 ( 申立て ) 」 ( 行 庁人数、その他を連絡しておく必要が審判をなし得ないということではな法 ある。また、時間も 2 時間程度は空け く、あくまで意見を聞くだけである 為 ) がされること

2. 法律のひろば 2015年2月号

特集認知症とトラブル法律家に何ができるか 現代における認知症をめぐる諸問題 は認知症の人が多いとされる。 2013 いうケースが存在している。 え込んでいた介護負担の軽減をも目的と 認知症の症状は人によって大差があしている。措置時代には、家族や親戚で年肥月に老健局高齢者支援課認知症・虐 り、症状の進行も様々である。多少の物介護を担い、それでも不足した場合に施待防止対策推進室が公表した 2012 年 忘れが進行して、昼夜逆転による徘徊やしとして福祉的支援をするという考え方度の高齢者虐待の状況では、在宅の被虐 1 5627 人に対しては 反社会的な行動が出現すると、付きっきであった。福祉はお上からの施しであ待高齢者総数万 ・ 3 パーセント ) が認知 りの介護が必要となる。認知症介護におり、それを受けることは家の恥と捉える 7393 人 ( 人もいた。 症高齢者であった。虐待の発生要因とし ける家族の監督義務については、 201 4 年 4 月の名古屋高裁の判決は記憶に新筆者が老人ホ 1 ム勤務していた時にては、最も多いのが「虐待者の障害・疾 しい。徘徊した認知症の男性が鉄道事故も、親が亡くなった高齢の精神障害者が病」で・ 0 パーセント、次いで「虐待 により死亡し、その遺族が損害賠償を命入所してくるケ 1 スがあった。障害者と者の介護疲れ・介護ストレス」・ じられたことは、福祉専門職をも震撼さして生まれ、生涯を座敷牢で過ごし年老 1 セント、「家庭における経済的困窮 ( 経 ・ 5 パーセントであっ いていくということは、稀な話ではなか済的問題 ) 」 せた。介護保険制度は、介護の社会化を 謳い在宅介護を推奨してきたが、在宅介った。また、入所者の中には先天性の身た。高齢者虐待防止法では、介護保険サ 1 ビス事業所の専門家による虐待も同様 護は家族による介護を前提としなけれ体障害者として生まれた女性で、高齢に なり介護を要する状態となり、同居するに公表している。養介護施設従事者等に ば、特に認知症介護の多くは成り立たな い。まして、家族の監督義務が問われる甥夫婦が農機小屋に作った簡易な部屋による高齢者虐待については、法施行後一 となれば、時間の見守りが必要とな居住させられ、一日一回だけ運ばれてく向に減らない状況であり、筆者はこの状 る。したがって徘徊を未然に防ぐためのる食事を三度に分けて食べ、障害者年金況に問題提起をしている ( 注 4 ) 。 短絡的解決方法として「閉じ込める」こは全く自由に使えなかったというケ 1 ス徘徊防止や転倒防止に対抗する手立て として、認知症の人が動き回らないよう もあった。これらは、姥捨て山があった とを選択してしまうことも予測される。 とされる時代の話ではなく、平成時代のにと、べッドに紐でしばりつけたり、車 この状態は、家族が見守るという状態に はほど遠く、家族による認知症の人の行実際の出来事である。現在では、高齢者椅子から立ち上がることができないよう 虐待の防止、高齢者の養護者に対する支に腰ベルトを使用したりする行為が考え 動監視に発展し、認知症の人の人権とい ったものは全く無視されることになる。援等に関する法律 ( 以下「高齢者虐待防られる。さらに、徘徊や夜間の奇声を止 止法」とする。 ) が 2006 年 4 月に施めるためにと向精神薬を過剰投与するこ ろ ともある。これらは身体拘東とされるひ 行されたことにより、このような状況は 四高齢者虐待の状況 高齢者虐待と判断されるものである。 が、措置時代の高齢者介護では日常的に 介護を社会化する背景には、家族が抱高齢者虐待において、被害者になるの実施されていた。 2000 年に介護保険 9

3. 法律のひろば 2015年2月号

なければならない。なぜならば、一言葉に ( 2 ) 厚生労働省「若年性認知症の実態等に関する調査 しないことに対して本人の自己責任であ結果の概要及び厚生労働省の若年性認知症対策につい て」 http く /www.mh一w.go.jミh0ud0uZ289Z037h0319 ー ると放置されてしまうことも危惧される からである。相手の状況に応じた積極的 2. h ( 3 ) 2 013 年 3 月に三菱—リサーチ & コンサル 介入による権利擁護行為も重要である。 厚生労働省は、今後の認知症施策の方ティングは、平成年度厚生労働省委託調査により「平 向性として「認知症になっても本人の意成年度仕事と介護の両立に関する実態把握のための 思が尊重され、できる限り住み慣れた地調査研究事業報告書」を公表した。 http ://www.mhlw. go.jp/bunya/koyoukintou/h24—itakuchousa. hョ】ー 域の良い環境で暮らし続けることができ る社会」の実現を掲げている。その体現 ( 4 ) 筆者は、「養介護施設従事者等による高齢者虐待の ワ 3 -0- 11 -4- 状況公表の現状と課題」福祉研究 107 号 ( のためには、医療や介護に従事する者の 年 ) 5 的頁において、養介護施設従事者等による高 スキル向上もさることながら、地域社会 齢者虐待が減少しない要因には、都道府県の高齢者虐 が認知症高齢者を理解し、その家族とも に丸ごと支、んていくことができる地域環待の状況の公表の仕方に問題があるのではないかと述 境をつくっていくことが今後一番の課題べている。また、マスメディアの高齢者虐待の状況の 公表への言及が年々減少している傾向についても、高 である。 齢者虐待の啓発活動としての効果に疑問があると問題 ( 注 ) 提起している。 ( 1 ) コラージュ法とは、世紀初期に芸術領域で誕生 ( 5 ) 厚生労働省は平成年に「身体拘束ゼロへの手引 した美術の技法を 1800 年代に精神医学領域におい き高齢者ケアに関わるすべての人に」を作成し、身体 て治療に援用したり、 1970 年代にアメリカで作業 拘束廃止への取組を始めた。 http ://www.pref.ibaraki. 療法の一環として集団絵画療法として取り入れたりし jp/bukyoku/hoken/kaig0/anzenansin/01-07.pdf たもので、現在では個人療法にも用いられている。画 ( 6 ) 加藤悦子「介護殺人ー司法福祉の視点から』 ( クレ ス出版、 2005 年 ) 用紙に写真や絵などを自由に貼り付けて制作していく ことを基本とし、コラージュ完成後に行われるシェア ( 7 ) 厚生労働省「健康日本幻 ( 第 2 次 ) の推進に関す 丿ングにより、クライエントの語りを受容し、クライ る参考資料」 http ://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/ エント理解を深めることを重視する実践を筆者は行っ dI/kenkounippon21 ー 02 .pdf ている。 ( よしだ・てるみ ) 次冫を告 ■特集■インターネットと 人権侵害 * インタ 1 ネットにおける人権侵害の 現況 : ・ : 溝渕章展・中野渡守 * インタ 1 ネット上のトラブルの解決 手段・ : ・ : 久保健一郎 * 私事性的画像記録の提供等による被 害の防止に関する法律の概要 ・ : 水越壮夫 * 児童のインターネット上のいじめと 解決に向けた取組・ : ・ : 島田敦子 * インタ 1 ネット上の実名報道におけ る人権侵害 : ・ ・ : 板倉陽一郎 * 検索とプライバシー侵害・名誉毀損 に関わる近時の判例 森亮二 ほか連載など 法律のひろば 2015.2 ・ 12

4. 法律のひろば 2015年2月号

月刊法律のひろば 2015 VOL68 No. 2 February ◆特集◆ 認知症とトラブル 法律家に何ができるか ー現代における認知症をめぐる諸問題 / 吉田輝美 4 ー認知症患者による事故と監督者の責任 ー認知症徘徊事故を契機として / 古笛恵子 13 ー認知症等高齢者の消費者被害 ー防止策の現状と今後の対策 / 坂井崇徳 21 ー認知症高齢者等への法的サポート ー成年後見制度の役割 / 髙岡信男 32 ー認知症高齢者の虐待事案の現況 / 野本雅志 40 ー認知症の方への支援 ー現場からの報告 / 髙梨友也 50 ー我が国と諸外国における認知症施策 / 翁川純尚 57 ◆最近の判例から◆ 妊娠中の軽易業務への転換を契機とする降格措置の有効性・適法性 最高裁平成 26 年 10 月 23 日第一小法廷判決 / 小島冬樹・足立格・児島幸良 64 ひろば時論 / 2 ■検察の国際性の向上 ■無戸籍者問題に対する取組状況 ・ひろば法律速報 / 73 ・訟務情報 / 76 ・次号予告 / 12 弊社新刊図書・雑誌のご案内・・ " ・ http : ″ gyosei. jp 装丁 /Kaz イラスト /Nao

5. 法律のひろば 2015年2月号

養護者と高齢者とを切り離すものであ本人が保護を求めていることが明確て虐待者との分離が実現しても、対象高 こ決定 齢者の入所契約が結べないほど意思能力 である場合 り、高齢者の生活環境・権利擁護。、 が減退又は失われている状況であれば、 的な影響を及ばすものであるから、あるなどが想定される。 新たに自分の財産を活用して本来入所可 程度厳格に解する必要があり、現に養護 ろ 者から暴力を振るわれ、あるいは減食や 能な入所施設への入所契約を結ぶこともの 2 市区町村権限行使の指示・指 できず、いつまでも扶助的給付に頼って法 放任により健康に重大な支障が生じてい 導・促し 生活しなければならず、抜本的解決には るなど、虐待を行っている養護者との一 このような措置を、相談を受けた弁護結びつかない。 時的な切り離しが緊急に求められるよう このような場合に、虐待者からの完全 な、特に緊急性が高い場合に限ると解さ士が直接とることはできないが、相談の 窓口となった市区町村職員と、相談窓な分離を図り、その財産管理権を回復し れている ( なお、②の立入調査の場合、 て、高齢者本人の意思決定を支援し、あ ③の立入調査時の警察署長に対する援助ロ、各種事例検討会の席上、市区町村・ 社協などとのアドバイザ 1 契約、顧問契るいは、それに成り代わって財産管理・ 要請 ( 法条 1 項 ) が義務化する要件は、 養護者と高齢者との引き離しの問題は生約などに基づいて、あるいは、個別の案身上管理を十分に行うためには、前記の じないので通報の場合と同様にある程度件中の後見人として本人に代理して、こ区長申立てなどによる後見開始審判を得 のような措置を必要に応じて実施するよることによって、あるいは、弁護士自身 緩やかに解されてよいと思われる。 ) 。 「緊急性が高いと判断される例」としう意見を述べ、実施するよう促すことにが親族等の申立代理人となり後見人候補 て、 よって、事実上対応できるよう工夫・検者として推薦してもらうという方法など で、弁護士が直接後見人として本人の保 生命が危ぶまれるような状況が明ら討すべきである。 護・財産の管理ができるようにすること かな場合 が必要となる場合が多い。 骨折・頭蓋内出血、重症の火傷など 成年後見制度 この場合、本人と関わっていた介護へ の深刻な身体的外傷、極端な栄養不 高齢者虐待防止法と成年後見制度 、地域包括支援センター職員、ケ 良・脱水症状があるときや、うめき声 ショートスティ先施設の しかし、そのような虐待防止法上の緒アマネジャー か聞こえるなどの深刻な状況が推測さ れる場合 手段で、一時身柄の保護ができたとして従業員などから、申立てに必要な情報を も、依然として、虐待者が認知症高齢者集約し、区長申立てを行うか、専門相談 凶器となり得る器物 ( 刃物、大きな 食器など ) を使った暴力の予想・脅しの財産を事実上管理したり、独り占めし等で当該地域に巡回相談などを実施して いる弁護士を通じて、弁護士会の斡旋、 行為があり、状況によっては生命の危たりしている状況であれば、それ以上の 対応は困難となる。また、施設に入所し後見人推薦窓口などの制度を利用して、 険も生じ得る場合

6. 法律のひろば 2015年2月号

ただ、反対意向があり推定相続人間で産の管理に関する事務を行うに当たって現することができる。 争いがある場合、第三者が後見人に選は、成年被後見人の意思を尊重し、かっ、 保全処分 ( 事前 ) その心身の状態及び生活の状況に配慮し 任されることが多くなる。 このように、虐待防止のためには、直 鑑定は原則として必要だが、精神料なければならない ( 民法 858 条 ) 。 ろ 医である必要はなく、内科の主治医等 ちに搾取されている年金の振込口座を凍の 律 結・確保する必要があるが、鑑定内容に 法 が一般的である。 4 後見人選任後の対応 争いがあり別鑑定が必要な場合や、養護 ウ不服申立て 者などが申立てについて異議を述べたり 虐待者の金銭管理の排除 後見開始等の審判に対して、不服が して選任決定に時間がかかりそうな場合 後見人に選任されると、前記の通り、 あれば、 2 週間以内に即時抗告ができ るが、誰を後見人とするかの審判に対原則として本人の財産の管理権は事実上などには、選任決定を待っていては対応 しては不服申立てはできないとされて制限され、包括的な管理権・代理権が後が遅くなるので、この場合には、後見等 の審判開始申立てと同時に財産管理者の いる 見人に付与されることになる。 虐待者が本人の通帳や印鑑をこれを任選任申立てをして緊急的な財産管理を行 う必要がある。ただしこの財産管理者に ( 法定 ) 後見人の権限 ( 後見等開始の意に引き渡さない場合でも、金融機関に 後見届・登録を行うことによって、従来は取消権がないので、さらに強力な権限 効果 ) の手帳や実印・銀行印は使用できなくなで保全が必要な場合には、裁判所に対し ①取消権 り、通帳も再発行 ( 理由は紛失・盗難なて後見命令の申立てを行って本人が財産 その行為は後見人が「取り消すこと」 ど ) 手続をすれば、虐待者が抵抗しても、管理者の同意なくして成した行為を取り ができる ( 民法 9 条 ) 。 ただし、日用品の購入その他「日常生一切本人の財産を引き出したり使用した消すことが可能である。 活に関する行為はこの限りでない ( 同りすることができなくなり、後は後見人 損害賠償等の原状回復請求 ( 事後 ) が全てを管理・使用できるようになるた 条ただし書 ) 。 後見人就任時までに、既に本人の財産 ②代理権 ( 成年後見人に対する包括的め、経済的虐待を阻止することが可能で ある。 の処分、預金の流用・払戻しなどがあっ な代理権の付与 ) ・財産管理権 たと疑われる場合は、適当な時期まで遡 被後見人の財産を管理し、かっ、その って金融機関口座の履歴を調査し、収支 虐待者との分離 財産に関する法律行為について被後見人 身体的虐待も、本人の居住場所を移転を明確にして使途不明金を算定し、これ を代表する ( 民法 859 条 ) 。 について、状況により、損害賠償を請求 ③本人意思配慮義務・身上配慮義務したり適切な施設に入所させることで、 成年被後見人の生活、療養看護及び財虐待者と分離した上で、平穏な生活を実したり、虐待者の財産の差押えなど強制

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ため、円満に後見業務を進めることがで 助を要請することが可能 ( 法肥条 1 項 ) ニ弁護士が対応し得る方策 きたものである。 であり、一定の場合にはそれが市町村長 ( 虐待対策における弁護士の これらの例は、養介護事業従事者の一 の義務ともなり ( 同条 2 項 ) 、やむを得 役割 ) 人から虐待のおそれの通報を受け、一時 ない場合には、一時保護などの手段を選 ろ ひ 入所措置をとって虐待対象者を分離し、 択することができる ( 法 9 条 2 項 ) 。 の 高齢者虐待防止法上の手段 面会制限をして接触を防いだ上で、区長 なお、「養介護施設従事者等による 申立てによる成年後見人選任という手順 前提としての「高齢者虐待にかかる高齢者虐待の場合には、養介護施設又は で、スム 1 ズに本人保護が実現された例通報 ( 法 7 条、 8 条、 幻条 1 項 53 項 ) 」養介護事業などにおいて、その業務に従 といえる。 法は、「養護者による高齢者虐待を受事する養介護施設従業者等による高齢者 一方では、客観状況としては、明らか けたと思われる高齢者」を「発見した者」虐待を受けたと思われる高齢者を発見し に本人の財産を任意後見契約・財産管理は、当該高齢者の「生命又は身体に重大たときには ( 高齢者の生命又は身体に重 契約を結んだ形で完全に自由にされてしな危険が生じている場合」には、市町村大な危険が生じていない場合でも ) 、通 まっている経済的虐待状況におかれた高 への通報義務があり ( 法 7 条 1 項 ) 、そ報義務があることが、養護者による虐待 齢者の場合でも、入所施設の入所契約自のような場合でなくとも通報の努力義務の場合と異なっている ( 法幻条 1 項 ) 。 体を虐待者が行っていて、施設の協力をがあり、通報をしても秘密漏示罪の規定 得られす、施設の主治医も協力を拒否すその他の守秘義務に関する法律の規定に 「養護者」による虐待への対応とし るような状況で、虐待者を囲い込んでしよる規制で妨げられることがなく、通報て認められている市区町村権限 まい、成年後見申立て自体ができない、 者特定情報の守秘義務を定めることでそ市区町村又は市区町村長が、「養護者 という事例もあった。 の通報を促している ( 同条 3 項、 8 条 ) 。 による高齢者虐待により生命又は身体に この場合、診断書の取得、鑑定の実施通報を受け、また、高齢者自身からの虐重大な危険が生じているおそれがあると すらできない状況なので、そのままでは待の届出を受けた市町村は、高齢者の安認められる」場合などには、当該高齢者 ど、つしよ、つもない。このよ、つな場合に、 全の確認その他の通報・届出にかかる事に対して以下の措置をとることができ、 客観状況から、囲い込みによる経済的・実の確認措置をとり ( 法 9 条 1 項 ) 、高又はとる義務が生ずる場合もある。 身体的虐待の疑いが強いことを疎明し、齢者虐待対応協力者と対応を協議するこ①各種措置・一時保護 ( 法 9 条 2 項 ) 裁ととなる。 診断書・鑑定なしでの申立てを行い、 ②立入調査 ( 法Ⅱ条 1 項 ) 判所が職権で鑑定を実施して何とか後見この場合に、後述するように、必要に③立入調査時の警察署長に対する援助 審判に至ったこともある。 応じて立入調査もでき ( 法い条 1 項 ) 、 要請 ( 法条 1 項 ) その際必要に応じて警察署長に対する援④面会の制限 ( 法条 )

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特集認知症とトラブル法律家に何ができるか 現代における認知症をめぐる諸問題 て妻を殺害し、自分も後を追うつもりが死 また、女性が認知症になり男性が家事 七おわりに , にきれなかった。夫が刑期を終え、出所後 ( ~ 全般を担うという、予期せぬ介護も人生 の生活の場として、筆者の勤める老人ホ 1 日本国民は日本国憲法Ⅱ条において基 には起こる。女は家庭で男は仕事という ムへ措置入所となった。 価値世代の男性介護者にとっては、人生本的人権の保障がなされ、また条では の転機である。介護と仕事や家事などを個人の尊重が謳われている。そして条 これは老老介護の果ての夫婦間介護殺両立する働き盛りの男性介護者を「ケアにおいては、人間らしい生活を営む権利 が全ての人に保障されている。人が人と 人であるが、介護殺人では子が親を殺すメン」と近年では呼んでいる。 事件や、親が子を殺すこともある。その 「男性介護者と支援者の全国ネットワして人間らしい生活を実現していくため 背後には、生活困窮により無理心中に至 1 ク」は、 2009 年 3 月に、介護するには、自己実現として、自分の望む生活 るケースや、親族に助けを求められす一側もされる側も、性別に関係なく、介護をつくりあげていく必要がある。しか 人で介護負担を背負うケ 1 スなど、社会 に参加する誰をも支え合う社会づくりをし、認知症の人の場合には、自己実現す 保障や福祉サービスに結びつかず、追い目指し、ケアメン支援を始めた。家族なるための意思決定能力が低下したり、良 詰められ孤立している生活状況があるのど無償で介護する人たちを「ケアラー」し悪しの判断ができない状況となり、自 も事実である。 と称し、 5 世帯に 1 世帯はケアラ 1 世帯分の望む生活を自らっくっていくことが だともいわれている。日本にはまだないできなくなってしまうのである。したが って、支援者は認知症の人の尊厳を前提 介護者支援政策を望んでいる人々もい 六ヶアする人のケア る としてその人が望むであろう視点に立脚 厚生労働省資料によると、 2010 年在宅で介護する人も、専門職として介し、認知症の人が人間らしい生活を営む で平均寿命と健康寿命との差は、男性護サービスに従事する人も、介護する人ことができるよう、権利の保障を講じな ・一 1 っ 0 年、女性 ・ 68 年といわれるが社会から認め支えられてこそ、認知症ければならないものである。また、これ ( 注 7 ) 。平均寿命と健康寿命との差は、介護と向き合っていくことができるものらに関連する法制度等も、社会的弱者の 日常生活に制限のある「不健康な期間」と考える。特に認知症介護は、認知症に立場から論じられなければならないもの を意味するとされ、介護を要する期間と なる前の関係性が強制的に消えてなくなである。 さらに、認知症の人が「大丈夫 , 「困 言い換えることができる。すると、平均るといっても過言ではない。身近な人が といつも話し、自ら支援をろ っていないー 的な介護期間は川年以上であるともいえ認知症になり記憶がなくなっていく過程 において、それを介護する側が常に関係求めない場合もある。認知症の人の言葉の る。間歳を超え、我が身の自立で精一杯 を、そのままその人の自己決定であると法 な状態で、長期にわたって配偶者の介護性をつくりあげていかなければならない 安易に捉えてしま、つことのないよ、つにし という困難さがある を担、つことは難しい。

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〇べッドに縛り付けたり、意図的に薬を裸にして放置する 原因が必要とされるのかは一つの問題で醜 過剰に服用させたりして、身体拘束、〇キス、性器への接触、セックスを強要あろう。 抑制をする する ②施設等利用の高齢者に対する虐待の ②ネグレクト ⑤経済的虐待 規制 ( 「養介護施設従事者等」による ろ ひ 〇入浴しておらず異臭がする、髪が伸び〇日常生活に必要な金銭を渡さない、使虐待の規制 ) の 放題だったり、皮膚が汚れている わせない 法 2 条 5 項 1 号の「施設」の「業務に法 〇水分や食事を十分に与えられていない〇本人の自宅等を本人に無断で売却する従事する者」及び、同 2 号の「事業」 , ことで、空腹状態が長時間にわたって〇年金や預貯金を本人の意思・利益に反おいて「業務に従事する者」は、別途の 続いたり、脱水症状や栄養失調の状態 して使用する、強制的に通帳を管理す規律になっている にある る これは、要するに、 1 号の「養介護施 〇室内にゴミを放置するなど、劣悪な住 設の業務従事者」は、各法の規定する各 環境の中で生活させる 虐待の主体 ( 法 2 条 3 項 ) 種の老人養護・介護のための緒「施設」 〇高齢者本人が必要とする介護・医療サ①在宅高齢者に対する虐待の規制 ( 「養 ( 養介護施設。典型的には有料老人ホ 1 1 ビスを、相応の理由なく制限したり 護者」による虐待の規制 ) ムや介護老人保健施設など。ただし、介 使わせない 「養護者」とは、「高齢者を現に養護護保険法に規定する「地域包括支援セン 〇同居人による高齢者虐待と同様の行為する者」で②以外の者である。 ター」が含まれることが注目される。 ) を放置する 「養護」とは、特に法に定義規定はなを「利用 ( 利用の最たるものが「入所」 ③心理的虐待 いが、「心身の健康状態や社会的条件に になる。 ) する高齢者に対して、当該施 〇排泄の失敗を嘲笑したり、それを人前よって不利な状況にある者を保護し世話設の業務に従事する者が行う虐待を禁止 で話すなどにより高齢者に恥をかかせをすることーと解されるので、本法におしている。 る いては、「当該高齢者の日常生活におい これに対して、 2 号は、特定の施設を 〇怒鳴る、罵る、悪口を一一一一口う て何らかの世話・保護をしていること 前提としない、主としていわゆる居宅 ( 在 〇侮辱 ( の意 ) を込めて、子供のようにをいうとされる。同居の有無は問われな宅 ) サービス等 ( ショ 1 トスティを含 扱う む。 ) を中心とした「養介護事業」につ 〇高齢者が話しかけているのを意図的に しかし、単なる「同居人による虐待」 いて、その事業の業務に従事する者が、 無視する は、明文上は虐待には該当しないことに「当該事業のサ 1 ビスを受ける高齢者」 ④性的虐待 なるのが問題とされている。「養護」しに対して行う虐待行為を禁止しているも のとい、つにすぎない。 〇排泄の失敗に対して懲罰的に下半身をているというために、どのような条件・

10. 法律のひろば 2015年2月号

られる症状ではない周辺症状は多様であ 認知症高齢者とのコミュニケーションが柔軟なものとなった。補助という制度 る。抑うつ状態、妄想、幻覚、不眠など 認知症が進行するに従いコミュニケー を設け、保佐や補助にも代理権の付与を ションが困難になる。コミュニケーショ の精神症状や、徘徊、質問や行動の繰り 誌めた。これにより、本人の判断能力の 返し、介護への抵抗、暴言・暴力などのンが困難となった本人との間で、本人の程度と必要性に応じた支援が可能となっ ろ 行動面の症状がある。 ニ 1 ズを的確に把握できるように努めるている。②補助の開始、同意権・代理権ひ ことが重要である。 の付与、保佐の代理権の付与について本 人格の変化 人の同意を必要とし、成年後見人等には 認知症の方の中には、まるで人が変わ 生活支援の在り方 本人の意思尊重義務を課して自己決定の ったようだといわれる言動をとるケ 1 ス 社会福祉士や介護福祉士には「心身の尊重を図っている。③日常生活に関する がある。加齢による人格の変化はもとも状況に応じた介護」が義務付けられ、身行為については取消しできない ( 同意は との人格が先鋭化するもので認知症の人体介護に限らず、心理・社会面にも配慮不要 ) ものとして、本人が地域で生活で 格の変化とは異なる。認知症による人格した支援を行うことが求められている。 きるよう配慮している ( 民法 9 条ただし の変化は脱抑制と表現されるような変化したがって、成年後見人等においても、書、条 1 項ただし書 ) 。④配偶者後見 であり、「慎みがなくなった」と感じる本人の心身の状況に応じた介護、かっ、心制度が廃止された。成年後見人等の保護 変化である。 理・社会面にも配慮した介護が行われる者を複数選任することが可能となり、法 ように努めなければならない。成年後見人がなることも可能となった。⑤監督人 症状のあらわれ方 人等は家族などの近親者やケア・マネジを家庭裁判所が職権で選任できることに 認知症には、認知機能の中で正常に保ャ 1 と相談し、本人の意思を尊重し、尊厳なった。⑥本人の保護のために市町村長 たれている領域と障害がある領域の両方を保持し、本人の有する能力及び適性に に申立権が認められた ( 精神保健及び精 がみられる場合がある。物忘れは多いが応じて自立した生活が送れるように誠実神障害者福祉法条のⅡの 2 、知的障害 計算は間違えない、長年携わっていた仕に後見事務を遂行しなければならない。 者福祉法条、老人福祉法条 ) 。⑦戸 事はこなすというようなケ 1 スである 籍に記載するのではなく、東京法務局の 血管性認知症ではこのような傾向がある 後見登記等ファイルへの記載による公示 三成年後見制度導入による改 とされ、症状の分布が均一でないことか 方法になった ( 後見登記等に関する法 善点 ら「まだら」と表現される。アルッハイ 律 ) 。⑧本人の判断能力の鑑定期間が大 マー型認知症では全般的に機能が障害さ 認知症に対する偏見・誤解が解消され幅に短縮され、鑑定費用も低額化され れることが多く、まだら認知症に対してつつあるが、旧制度の禁治産・準禁治産て、法定成年後見制度の利用がしやすく 全般的認知症といわれる。 制度から成年後見制度に転換することに なった。⑨公正証書と結びつけた任意後 よって改善された点は多々ある。①制度見制度が創設され ( 任意後見契約法 ) 、