保険者の過失について、「どのような有さない場合に、保険者の過失の判断に の説明責任」塩崎勤Ⅱ山下丈Ⅱ山野嘉 体制を基準に過失の有無を判断するのか際して、保険募集人の主観的状況が考慮朗編『保険関係訴訟』 ( 民事法研究会、 ワ 3 0 0 は実はむずかしい問題であるが、一般論すべき特段の事情の一 . つに取り込まれる 【 0 ワ〕 0 一頁 つ」 、ま としては現在の保険業界で最大公約数と可能性があることに留意すべきである。 ろ ひ ( 注 ) いえるような体制を基準に判断すること の 律 ( 1 ) 大森忠夫「保険法冖補訂版〕」 ( 有斐閣、 1985 になると思われ」る ( 注四と説かれてい 法 4 参考文献 年 ) 131 頁 るように、監督指針に基づく体制整備に ( 2 ) 西島梅治「保険法〔第三版〕」 ( 悠々社、 1998 よって、今後、損害保険契約の締結の際本件判決の研究として、磯野直文「団 年 ) 頁 に自社引受の既加入契約の確認を行うこ体信用生命保険契約の告知義務違反に係 ( 3 ) 山下友信米山高生編「保険法解説」 ( 有斐閣、 2 とが常態化していくとすれば、既加入のる保険者の過失」共済と保険巻 7 号 ( 2 010 年 ) 53 5 頁 ( 山下友信筆 ) 保険契約の保険金支払歴とその内容調査 014 年 ) 頁があり、裁判例を概説す ( 4 ) 東京地判平成 9 年 1 月日判タ 966 号 252 頁 の実施の有無を、保険者の過失の判断要るものとして山下友信Ⅱ永沢徹編『論点 も同旨を判示する。 ワ 3 0 一 1 -4 素の一つと捉えるのか否かの解釈に影響体系保険法 2 』 ( 第一法規、 ( 5 ) 仙台高判平成年Ⅱ月日については、結論及び を与える可能性がある。補償重複に関す年 ) 180 頁 ( 遠山聡筆 ) がある。また、 その理論構成の当否について議論があることを付言し る監督指針は損害保険契約を対象とした注に掲げた文献のほか、団体信用生命保ておく。 ものであり、生命保険をその対象とはし険、団体保険に関する研究として以下が ( 6 ) 本件判批として福田弥夫・保険事例研究会レポー ト 171 号 ( 2002 年 ) 1 頁がある ていないか、かかる新規制の影響にも留ある ( 7 ) 研究会では、住宅ロ 1 ンと生命保険契約とが一体 意が必要である ・輿石進「団体信用生命保険」金判 11 となっている点に団体信用生命保険の特質が認めら 第二に、多様な保険募集人の登場であ っ 0 【ロ写 ( ワ〕 00 ワ〕 年 ) 14 4 頁 れ、これが保険者の過失の解釈にも影響を及ほすこと る。今日では金融機関をはじめ様々な業・長谷川秀之「団体信用生命保険の直面 はむしろ妥当であるとの意見もあった。 態が保険募集に参入し、かっ、専属・乗する諸問題」生命保険経営ハ巻 4 号 ( 2 ( 8 ) 研究会では、本件でこの点が当事者間において争 合、契約締結代理権・告知受領権の有虹 003 年 ) れ頁 いとならなかった点で、事案全体としての結論に影響 なども様々である。同一の保険募集人が・拙稿「団体保険契約における契約者・ を与えたのではないかとの意見もあった。 同一被保険者の保険契約を複数取り扱う保険料集金者の法的地位ー米国の判例 1 11 っ 0 11 ( 9 ) 大森・前掲 ( 注 ) 頁、山下米山編・前 場合であっても、既加入契約と新規契約法理からの示唆」ほうむ ( 損保ジャパ 掲 ( 注 ) 3 536 頁 ( 山下筆 ) の引受保険会社が異なることは珍しいこ ン ) 的号 ( 2003 年 ) 頁 ( 四山下友信・保険事例研究会レポート 171 号 とではない。このような場面において、 ・小口光・戸田健一郎「団体生命保険契 とりわけ当該保険募集人が告知受領権を約における被保険者に対する重要事項 ( いぐち・ひろのぶ ) 002 年 ) 8 頁
保険者の過失について、「どのような有さない場合に、保険者の過失の判断に の説明責任」塩崎勤Ⅱ山下丈Ⅱ山野嘉な ( 0 体制を基準に過失の有無を判断するのか際して、保険募集人の主観的状況が考慮朗編『保険関係訴訟』 ( 民事法研究会、 ワ 3 0 0 0 は実はむずかしい問題であるが、一般論すべき特段の事情の一 . つに取り込まれる 年 ) 5 2 0 頁 つ」 、ま としては現在の保険業界で最大公約数と可能性があることに留意すべきである。 ろ ひ ( 注 ) いえるような体制を基準に判断すること の 律 ( 1 ) 大森忠夫「保険法冖補訂版〕」 ( 有斐閣、 1985 になると思われ」る ( 注四と説かれてい 法 4 参考文献 るように、監督指針に基づく体制整備に ( 2 ) 西島梅治「保険法〔第三版〕」 ( 悠々社、 1998 よって、今後、損害保険契約の締結の際本件判決の研究として、磯野直文「団 年 ) 頁 に自社引受の既加入契約の確認を行うこ体信用生命保険契約の告知義務違反に係 ( 3 ) 山下友信日米山高生編「保険法解説」 ( 有斐閣、 2 とが常態化していくとすれば、既加入のる保険者の過失」共済と保険巻 7 号 ( 2 010 年 ) 535 頁 ( 山下友信筆 ) 保険契約の保険金支払歴とその内容調査 014 年 ) 頁があり、裁判例を概説す ( 4 ) 東京地判平成 9 年 1 月日判タ 966 号 252 頁 の実施の有無を、保険者の過失の判断要るものとして山下友信Ⅱ永沢徹編『論点 も同旨を判示する。 素の一つと捉えるのか否かの解釈に影響体系保険法 2 』 ( 第一法規、 2014 ( 5 ) 仙台高判平成年Ⅱ月日については、結論及び を与える可能性がある。補償重複に関す年 ) 180 頁 ( 遠山聡筆 ) がある。また、 その理論構成の当否について議論があることを付言し る監督指針は損害保険契約を対象とした注に掲げた文献のほか、団体信用生命保ておく。 ものであり、生命保険をその対象とはし険、団体保険に関する研究として以下が ( 6 ) 本件判批として福田弥夫・保険事例研究会レポー ト 171 号 ( 2002 年 ) 1 頁がある ていないが、かかる新規制の影響にも留ある。 ( 7 ) 研究会では、住宅ロ 1 ンと生命保険契約とが一体 意が必要である ・輿石進「団体信用生命保険」金判 11 となっている点に団体信用生命保険の特質が認めら 第二に、多様な保険募集人の登場であ っ 0 【 0 ロ万 ( ワ〕 00 ワ〕 年 ) 14 4 頁 れ、これが保険者の過失の解釈にも影響を及ばすこと る。今日では金融機関をはじめ様々な業・長谷川秀之「団体信用生命保険の直面 はむしろ妥当であるとの意見もあった。 態が保険募集に参入し、かっ、専属・乗する諸問題」生命保険経営ハ巻 4 号 ( 2 ( 8 ) 研究会では、本件でこの点が当事者間において争 合、契約締結代理権・告知受領権の有 003 年 ) れ頁 いとならなかった点で、事案全体としての結論に影響 なども様々である。同一の保険募集人が ・拙稿「団体保険契約における契約者・ を与えたのではないかとの意見もあった。 同一被保険者の保険契約を複数取り扱う保険料集金者の法的地位ー米国の判例 ( 9 ) 大森・前掲 ( 注 1 ) 131 頁、山下 = 米山編・前 場合であっても、既加入契約と新規契約法理からの示唆」ほうむ ( 損保ジャパ 掲 ( 注 ) 3 536 頁 ( 山下筆 ) の引受保険会社が異なることは珍しいこ ( 四山下友信・保険事例研究会レポート 171 号 ン ) 的号 ( 2 0 0 3 年 ) 頁 002 年 ) 8 頁 とではない。このような場面において、 小口光・戸田健一郎「団体生命保険契 ( いぐち・ひろのぶ ) とりわけ当該保険募集人が告知受領権を約における被保険者に対する重要事項
賠償・補 - - : 線険判例研究 に死亡保険金の請求を行ったところ、 定を行うのは団体保険金課 ( 以下「団金課に提出した本件医療証明書の「初診 は、亡 < が告知日前 3 か月以内に医師体保険金課」という。 ) であって、個人時の所見および経過」の欄には「今後も の治療・投薬を受けていたことを告知し保険の引受判断を行うのは契約医務部契外来フォローの予定である」と記載さ なかったことが告知義務違反に当たると約課、同保険の支払査定を行うのは保険れ、亡 < は引き続き通院治療が必要であ して、に対して本件団信契約のうち亡金課 ( 以下「保険金課」という。 ) であることが明らかにされており、保険金 < の加入部分を解除する意思表示をなしって、団体信用生命保険と個人保険とで課は、本件医療証明書の経過欄の記載を た。本件告知義務違反にかかわる具体的はそれぞれの所管部署が異なっている。確認して、亡 < が継続して通院治療を受 な事実は、亡 < が平成四年肥月日から ⑥本件の争点は、亡 < が本件団信契約ける事実を容易に知ることができた。 平成年 3 月肥日の間の 9 回、間質性肺に追加加入した当時、には亡 < による②団体保険金課は、本件団信契約を 炎で通院し治療・投薬を受けたことである。告知義務違反の事実を知らなかったこと解除するに当たり、個人保険に係る情報 について過失があり、は本件約款条が収録されたデータベースにアクセスし ④ところで、本件団信契約の他にも、 を保険者、亡 < を被保険者とする個人 2 項ただし書によって亡の加入部分をて、本件個人保険契約に係る情報を入手 保険契約や団体信用生命保険契約が締結解除することができなかったかどうかでし、同情報から本件告知義務違反事実の されており、本件で問題となるのは以下ある。なお、本件団信契約につき亡 < に存在を確認したのであるから、 >* 団体保 である。 告知義務違反があったこと、告知義務違険課も、本件団信契約の引受判断に際し 亡 < は、平成 9 年 8 月頃、との間で、 反の事実を知らなかったことについてのて、同様に個人保険のデータベ 1 スにア 個人保険契約 ( 以下「本件個人保険契約」の過失は本件団信契約の引受部門であクセスして短時間で本件告知義務違反事 という。 ) を締結しており、亡は、平る団体保険課を基準として判断すべき実が存在することを確認し得たというべ 成四年に間質性肺炎に催患した際、に ものであることについて当事者間に争いきである。 ③したがって、には、亡 < による告 本件個人保険契約に基づく入院給付金及がない。 知義務違反の事実を知らなかったことに び手術給付金の支払を求め、同年肥月川 ついて過失があり、本件約款条 2 項た 日、から亡 < に保険金が支払われた ( こ >< の主張 だし書によっては本件団信契約を解除 の際、亡 < からに同月 7 日付け総合医 療証明書 ( 以下「本件医療証明書」とい①亡 < は、本件団信契約への追加加入することができない。 ろ う。 ) が提出されている。 ) 。 の直前である平成四年月川日、間質性 ひ の において、団体信用生命保険の引肺炎による入院に関して本件個人保険契 律 2 の主張 法 受判断を行うのは団体保険課 ( 以下「約に基づき入院給付金等の支払を受けて 団体保険課」という。 ) 、同保険の支払査おり、その支払に当たり、亡 < が保険①団体保険課は、団体信用生命保険
「贈債・補償・険・法 - ) 判例研究 に死亡保険金の請求を行ったところ、定を行うのは団体保険金課 ( 以下「団金課に提出した本件医療証明書の「初診 は、亡 < が告知日前 3 か月以内に医師体保険金課」という。 ) であって、個人時の所見および経過」の欄には「今後も の治療・投薬を受けていたことを告知し保険の引受判断を行うのは契約医務部契外来フォローの予定である」と記載さ なかったことが告知義務違反に当たると約課、同保険の支払査定を行うのは保険れ、亡 < は引き続き通院治療が必要であ して、に対して本件団信契約のうち亡金課 ( 以下「保険金課」という。 ) であることが明らかにされており、保険金 < の加入部分を解除する意思表示をなしって、団体信用生命保険と個人保険とで課は、本件医療証明書の経過欄の記載を た。本件告知義務違反にかかわる具体的はそれぞれの所管部署が異なっている。確認して、亡 < が継続して通院治療を受 な事実は、亡 < が平成四年月日から ⑥本件の争点は、亡が本件団信契約ける事実を容易に知ることができた。 平成年 3 月肥日の間の 9 回、間質性肺に追加加入した当時、には亡 < による②団体保険金課は、本件団信契約を 炎で通院し治療・投薬を受けたことである。告知義務違反の事実を知らなかったこと解除するに当たり、個人保険に係る情報 について過失があり、は本件約款条が収録されたデータベ 1 スにアクセスし ④ところで、本件団信契約の他にも、 を保険者、亡 < を被保険者とする個人 2 項ただし書によって亡 < の加入部分をて、本件個人保険契約に係る情報を入手 保険契約や団体信用生命保険契約が締結解除することができなかったかどうかでし、同情報から本件告知義務違反事実の されており、本件で問題となるのは以下ある。なお、本件団信契約につき亡 < に存在を確認したのであるから、 >* 団体保 である。 告知義務違反があったこと、告知義務違険課も、本件団信契約の引受判断に際し 亡 < は、平成 9 年 8 月頃、との間で、 反の事実を知らなかったことについてのて、同様に個人保険のデ 1 タベ 1 スにア 個人保険契約 ( 以下「本件個人保険契約」の過失は本件団信契約の引受部門であクセスして短時間で本件告知義務違反事 という。 ) を締結しており、亡 < は、平る団体保険課を基準として判断すべき実が存在することを確認し得たというべ ものであることについて当事者間に争いきである。 成四年に間質性肺炎に罹患した際、に ③したがって、には、亡 < による告 本件個人保険契約に基づく入院給付金及がない。 知義務違反の事実を知らなかったことに び手術給付金の支払を求め、同年月川 ついて過失があり、本件約款条 2 項た 日、から亡 < に保険金が支払われた ( こ >< の主張 だし書によっては本件団信契約を解除 の際、亡 < からに同月 7 日付け総合医 療証明書 ( 以下「本件医療証明書」とい①亡 < は、本件団信契約への追加加入することができない。 ろ う。 ) が提出されている。 ) 。 の直前である平成四年月間日、間質性 ひ の >* において、団体信用生命保険の引肺炎による入院に関して本件個人保険契 律 2 の主張 法 受判断を行うのは団体保険課 ( 以下「約に基づき入院給付金等の支払を受けて 団体保険課」という。 ) 、同保険の支払査おり、その支払に当たり、亡 < が保険①団体保険課は、団体信用生命保険
・債な物贖第業絵、判例研究 者ないし被保険者側に当該情報の提供を引受の可否を決する際、原則として、申険課が、本件申込書兼告知書に何ら告知 義務付けることで、保険者において、低込書兼告知書及び被保険者名簿を突き合義務違反を疑うべき事情の存しない本件 コストで当該情報を収集しながらも適切わせ真に申込書兼告知書が提出されてい団信契約を引き受けるに当たって、個人 に危険度の判定をすることを可能ならしるか、及び申込書兼告知書に記載漏れ等保険のデ 1 タベースにアクセスしなかっ たことが注意義務違反に当たるというこ めている」。このような告知義務制度にがないかのみの確認をするとの運用を行 おいては、「保険契約者ないし被保険者っていた。「膨大な数に上る団体信用生とはでき」ず、「には本件約款条 2 が誠実に当該情報を告知してくれること命保険の追加加入の全てにつき ( が幹項ただし書にいう過失は認められないと を前提として、保険者が、自ら積極的に事会社として引き受けているものに限っ解するのが相当である。」 当該情報を収集することはせずに、保険ても、毎月 1 万 2000 人ないし 1 万 8 料等の額を決定し、引受の可否を判断す 000 人である : : : ) 、個人保険のデー ることが予定されているのであるから、 タベ 1 スにアクセスして、告知義務違反 三研究 本件約款条 2 項ただし書にいうの過の有無を確認しなければならないとする 失というのも、保険契約者ないし被保険と : 、それに要する時間や費用によ 本件判決の意義 者の告知義務違反を考慮してもなおに 、保険料の高額化や引受判断の遅延を よる解除を認めることが衡平に反すると 招き、団体信用生命保険の特色を損なう保険契約者又は被保険者の告知義務違 考えられるような注意義務違反をいうもおそれがある。」 反に基づく保険者の保険契約解除権に関 のと解するのが相当である。」 「むしろ上記運用を是認し、の負担して、保険者の解除権行使を阻却する事 「団体信用生命保険は、住宅ローン等を軽減させることで、より低額な保険料由を定める保険法条 2 項 1 号 ( 同号は の貸付けに係る債権者 ( 金融機関 ) ・債やより迅速な引受判断を実現させる方平成年保険法施行前商法 678 条 1 項 務者 ( 被保険者 ) 双方の便宜のため、保が、保険契約者ないし被保険者の利益とただし書を継承したものであり、損害保 険料を低額にするとともに、引受判断をなるのであるから、そもそも告知義務制険契約に関する保険法条 2 項 1 号、傷 迅速に行うという一一つの要請に応えるこ度が被保険者に誠実な告知を期待してい 害疾病定額保険契約に関する保険法別条 とが求められる生命保険であって、 る点に鑑みても、団体保険課が、上記 2 項 1 号も同様の規律を定めている。な が団体信用生命保険を引き受けるに当運用に従ったことで告知義務違反の事実お、本件は平成年保険法施行前商法が たり負う注意義務というのも、これら一一を看過することがあったとしても、当該適用される事件である。 ) にいう保険者のろ つの要請に反しない程度のものに限られ告知義務違反をした被保険者との関係過失は、従来から告知義務違反の成否をの るといわなければならない。」 で、それが衡平に反するということはで主要争点とする紛争において、予備的な法 団体保険課は、団体信用生命保険のきないというべきである。 ・ : 団体保争点として浮上する場合が大半である。
犢・補償・ - 険、判例研究 者ないし被保険者側に当該情報の提供を引受の可否を決する際、原則として、申険課が、本件申込書兼告知書に何ら告知 義務付けることで、保険者において、低込書兼告知書及び被保険者名簿を突き合義務違反を疑うべき事情の存しない本件 団信契約を引き受けるに当たって、個人 コストで当該情報を収集しながらも適切わせ真に申込書兼告知書が提出されてい に危険度の判定をすることを可能ならしるか、及び申込書兼告知書に記載漏れ等保険のデータベースにアクセスしなかっ めている」。このような告知義務制度にがないかのみの確認をするとの運用を行たことが注意義務違反に当たるというこ おいては、「保険契約者ないし被保険者っていた。「膨大な数に上る団体信用生とはでき」ず、「には本件約款条 2 が誠実に当該情報を告知してくれること命保険の追加加入の全てにつき ( が幹項ただし書にいう過失は認められないと を前提として、保険者が、自ら積極的に事会社として引き受けているものに限っ解するのが相当である。」 当該情報を収集することはせずに、保険ても、毎月 1 万 2000 人ないし 1 万 8 料等の額を決定し、引受の可否を判断す 000 人である : : : ) 、個人保険のデ 1 ることが予定されているのであるから、 タベースにアクセスして、告知義務違反 三研究 本件約款条 2 項ただし書にいうの過の有無を確認しなければならないとする 、それに要する時間や費用によ 失というのも、保険契約者ないし被保険と : 本件判決の意義 者の告知義務違反を考慮してもなお >* に り、保険料の高額化や引受判断の遅延を よる解除を認めることが衡平に反すると 招き、団体信用生命保険の特色を損なう保険契約者又は被保険者の告知義務違 反に基づく保険者の保険契約解除権に関 考えられるような注意義務違反をいうもおそれがある。」 のと解するのが相当である。」 「むしろ上記運用を是認し、の負担して、保険者の解除権行使を阻却する事 「団体信用生命保険は、住宅ローン等を軽減させることで、より低額な保険料由を定める保険法条 2 項 1 号 ( 同号は の貸付けに係る債権者 ( 金融機関 ) ・債やより迅速な引受判断を実現させる方平成年保険法施行前商法 678 条 1 項 務者 ( 被保険者 ) 双方の便宜のため、保が、保険契約者ないし被保険者の利益とただし書を継承したものであり、損害保 険料を低額にするとともに、引受判断をなるのであるから、そもそも告知義務制険契約に関する保険法条 2 項 1 号、傷 害疾病定額保険契約に関する保険法別条 迅速に行うという一一つの要請に応えるこ度が被保険者に誠実な告知を期待してい とが求められる生命保険であって、 る点に鑑みても、 >* 団体保険課が、上記 2 項 1 号も同様の規律を定めている。な が団体信用生命保険を引き受けるに当運用に従ったことで告知義務違反の事実お、本件は平成年保険法施行前商法が たり負う注意義務というのも、これら一一を看過することがあったとしても、当該適用される事件である。 ) にいう保険者のろ つの要請に反しない程度のものに限られ告知義務違反をした被保険者との関係過失は、従来から告知義務違反の成否をの るといわなければならない。」 で、それが衡平に反するということはで主要争点とする紛争において、予備的な法 団体保険課は、団体信用生命保険のきないというべきである。 ・ : 団体保争点として浮上する場合が大半である。 1
の引受可否を決する際、原則として、保の貸付けに関して、保険契約者兼死亡保ら、の運用は合理的でありそれに従っ 険契約者である金融機関から送付される険金受取人を金融機関、被保険者を債務たことに過失はないというべきである。 申込書兼告知書及び被保険者名簿を突き者として締結される団体信用生命保険に⑤そもそも本件医療証明書からすれ 合わせて、真に申込書兼告知書が提出さは次の特色がある。第一に、債務者、金ば、亡 < が平成四年肥月 7 日以降も通院 ろ れているか、及び申込書兼告知書に記載融機関双方の便宜のため、割安な保険料しフォローしてもらう予定であったことの 漏れ等がないかの確認をするのみであで大きな保障を受けさせることとされては認識できるが、本件告知義務違反にか法 る。例外的に、申込書兼告知書の告知事おり、そのために告知事項は個人保険にかわる具体的な事実は保険金課及び 項が「ある」に「〇」が付されている場比べ簡単なものとされ、原則として医師団体保険金課には全く分からない 合及び申込金額が 3000 万円以上であによる診査も行われていない。第二に、 ⑥亡 < は、間質性肺炎に罹患し手術を る場合については個人保険の照会を行っ団体信用生命保険を引き受けるか否かの受けしかも告知直前まで通院治療を受け ている 回答は融資実行の可否に関わるため、早続けているのであり、それにもかかわら 亡 < の追加加入は前記の例外には当た急な対応が要求されており、個人保険とず通院していることを殊更に隠し告知義 らず、団体保険課は原則どおりの対応同じように時間をかけて引受の可否を判務違反を行っているのであるから、この をしたため告知義務違反の事実を知らな断する時間的余裕がない。 ような不誠実な被保険者と、総合医療証 かったが、この運用は次のとおり合理的④仮に主張のとおり、が、団体信明書に今後の通院フォロ 1 が必要である なものであり、それに従った >* 団体保険用生命保険の引受に当たり、逐一個人保と記載されている情報を持っているにす 課の対応に過失はない。 険の有無等を確認しなければ保険会社に ぎないとを比較してみると、の過失 ②告知義務制度は、保険者が生命保険過失があるということになると、被保険を認めなければならない理由はない。 の危険選択を行い引受の可否を判断する者の氏名、生年月日等を入力して個人保 に当たり、判断のための資料が保険契約険のデータベースを検索する必要が生 者又は被保険者側に偏在しているため、 じ、仮に個人保険が発見され入院給付金 一一判旨 保険契約者ないし被保険者に告知義務を支払歴等が判明した場合には、それらが 負わせて、保険者が適切な情報を低コス告知義務違反に該当するかどうかを判断請求棄却・確定 トで迅速に収集することができるようにするためその支払理由まで遡り調査を行保険者は、「引受の可否を判断するに するものであり、それを超えて保険者が う必要があり、これらの対応のために要際して、危険度に関する情報を収集し危 積極的に被保険者の健康状態について情する費用は膨大であって保険料の増額を険度を判定する必要があるところ、当該 報を収集することは予定されていない。 招き、また引受判断に時間が必要となつ情報は構造的に保険契約者ないし被保険 ③特に、金融機関による住宅ローン等て早急な回答ができなくなるのであるか者側に偏在していることから、保険契約 1
の引受可否を決する際、原則として、保の貸付けに関して、保険契約者兼死亡保ら、の運用は合理的でありそれに従っ 険契約者である金融機関から送付される険金受取人を金融機関、被保険者を債務たことに過失はないというべきである。 申込書兼告知書及び被保険者名簿を突き者として締結される団体信用生命保険に⑤そもそも本件医療証明書からすれ ば 合わせて、真に申込書兼告知書が提出さは次の特色がある。第一に、債務者、金ば、亡 < が平成四年月 7 日以降も通院 ろ れているか、及び申込書兼告知書に記載融機関双方の便宜のため、割安な保険料しフォローしてもらう予定であったことの 漏れ等がないかの確認をするのみであで大きな保障を受けさせることとされては認識できるが、本件告知義務違反にか法 かわる具体的な事実は保険金課及び >* る。例外的に、申込書兼告知書の告知事おり、そのために告知事項は個人保険に 項が「ある」に「〇」が付されている場比べ簡単なものとされ、原則として医師団体保険金課には全く分からない 合及び申込金額が 3000 万円以上であによる診査も行われていない。第二に、 ⑥亡 < は、間質性肺炎に罹患し手術を る場合については個人保険の照会を行っ団体信用生命保険を引き受けるか否かの受けしかも告知直前まで通院治療を受け ている 回答は融資実行の可否に関わるため、早続けているのであり、それにもかかわら 亡 < の追加加入は前記の例外には当た急な対応が要求されており、個人保険とず通院していることを殊更に隠し告知義 らず、団体保険課は原則どおりの対応同じように時間をかけて引受の可否を判務違反を行っているのであるから、この ような不誠実な被保険者と、総合医療証 をしたため告知義務違反の事実を知らな断する時間的余裕がない。 かったが、この運用は次のとおり合理的④仮に >< 主張のとおり、が、団体信明書に今後の通院フォローが必要である なものであり、それに従った団体保険用生命保険の引受に当たり、逐一個人保と記載されている情報を持っているにす 課の対応に過失はない。 ぎない >* とを比較してみると、の過失 険の有無等を確認しなければ保険会社に ②告知義務制度は、保険者が生命保険過失があるということになると、被保険を認めなければならない理由はない。 の危険選択を行い引受の可否を判断する者の氏名、生年月日等を入力して個人保 に当たり、判断のための資料が保険契約険のデータベースを検索する必要が生 者又は被保険者側に偏在しているため、 じ、仮に個人保険が発見され入院給付金 一一判旨 保険契約者ないし被保険者に告知義務を支払歴等が判明した場合には、それらが 負わせて、保険者が適切な情報を低コス告知義務違反に該当するかどうかを判断請求棄却・確定 トで迅速に収集することができるようにするためその支払理由まで遡り調査を行保険者は、「引受の可否を判断するに う必要があり、これらの対応のために要際して、危険度に関する情報を収集し危 するものであり、それを超えて保険者が 積極的に被保険者の健康状態について情する費用は膨大であって保険料の増額を険度を判定する必要があるところ、当該 報を収集することは予定されていない。 招き、また引受判断に時間が必要となつ情報は構造的に保険契約者ないし被保険 ③特に、金融機関による住宅ローン等て早急な回答ができなくなるのであるか者側に偏在していることから、保険契約
解除に関して次のように規定していた。 ) 一第回 賠償・補償・保険法判例研究 1 項保険契約者または被保険者は、 団体信用生命保険の被保険者による告知義務違反と保険契 保険契約の締結または追加加入の際、 ろ 当会社が所定の書面をもって告知を求ひ 約の解除の可否 律 めた事項について、その書面により、 法 ( 東京地判平成年 8 月 7 日判タ 1391 号 287 頁 ) 告知することを要します 2 項保険契約者または被保険者が、 賠償・補償・保険法判例研究会代表 ( 前日本大学法学部教授 ) 伊藤文夫 故意または重大な過失によって前項の ( 日本大学法学部講師 ) 井口ロ信 告知の際に事実を告げなかったかまた は事実でないことを告げた場合には、 約に追加加入した際、は亡 < に告知義 当会社は、保険契約または保険契約の 務違反があることを過失により知らなか その被保険者についての部分を将来に 【一事実の概要 ったので本来本件団信契約の解除はでき 向かって解除することができるものと 訴外亡 < は、訴外損害保険会社かず、よってによる解除は不法行為であ します。ただし、当会社がその事実を ら住宅購入資金 1700 万円を借り入れって、それによって死亡保険金が借入金 知っていた場合または過失のため知ら るに際して、が自らを保険契約者兼保の一括弁済に充当されず、がに対し なかった場合を除きます 15 5 5 万余円等を支払わ 険金受取人として被告生命保険会社とて借入金残高 3 項当会社は、被保険者が死亡しま の間で締結している団体信用生命保険契ざるを得なくなったとの理由により、合 たは高度障害状態になった後において f1719 万余円の損害賠償を求めた事 約 ( 以下「本件団信契約」という。 ) に も、前項によって保険契約または保険 被保険者として追加加入した。その後、案である。 契約のその被保険者についての部分を 亡 < は、平成年 3 月日、に「団 < が死亡したことから、がに死亡保 解除することができます。この場合に 険金の支払を求めたのに対して、は亡体信用生命保険申込書兼告知書」を提出 は、保険金を支払いません。もし、す < の告知義務違反を理由としてに本件し、同月引日、本件団信契約に被保険者でに保険金を支払っていたときは、当 会社は、その返還を請求します・ : 団信契約のうち亡 < の追加加入部分を解として追加加入して、は、同日、亡 < 1700 万円を貸し付け 除する意思表示をなし、死亡保険金の支に住宅購入資金 亡 < は、平成幻年 5 月日、間質性 た。本件団信契約に適用される団体信用 払を拒否した。 本件は、亡 < の唯一の相続人である原生命保険普通保険約款 ( 以下「本件約款」肺炎により死亡し、唯一の相続人である 告が、に対して、亡 < が本件団信契という。 ) 条は、告知義務違反によるが前記借入金債務等を相続した。が 旨ロ
解除に関して次のように規定していた。 第回 賠償・補償・保険法判例研究 1 項保険契約者または被保険者は、 団体信用生命保険の被保険者による告知義務違反と保険契 保険契約の締結または追加加入の際、 当会社が所定の書面をもって告知を求 約の解除の可否 めた事項について、その書面により、 ( 東京地判平成四年 8 月 7 日判タ 1391 号 287 頁 ) 告知することを要します 2 項保険契約者または被保険者が、 賠償・補償・保険法判例研究会代表 ( 前日本大学法学部教授 ) 伊藤文夫 故意または重大な過失によって前項の ( 日本大学法学部講師 ) 井口浩信 告知の際に事実を告げなかったかまた は事実でないことを告げた場合には、 約に追加加入した際、は亡 < に告知義 当会社は、保険契約または保険契約の 務違反があることを過失により知らなか 1 その被保険者についての部分を将来に 一事実の概要 ったので本来本件団信契約の解除はでき 向かって解除することができるものと 訴外亡 < は、訴外損害保険会社かず、よって >* による解除は不法行為であ します。ただし、当会社がその事実を 1700 万円を借り入れって、それによって死亡保険金が借入金 ら住宅購入資金 知っていた場合または過失のため知ら るに際して、が自らを保険契約者兼保の一括弁済に充当されず、 >< がに対し なかった場合を除きます 険金受取人として被告生命保険会社とて借入金残高 1555 万余円等を支払わ 3 項当会社は、被保険者が死亡しま の間で締結している団体信用生命保険契ざるを得なくなったとの理由により、合 たは高度障害状態になった後において f1719 万余円の損害賠償を求めた事 約 ( 以下「本件団信契約ーという。 ) に も、前項によって保険契約または保険 被保険者として追加加入した。その後、案である。 契約のその被保険者についての部分を 亡は、平成年 3 月日、 >* に「団 < が死亡したことから、がに死亡保 解除することができます。この場合に は、保険金を支払いません。もし、す 険金の支払を求めたのに対して、は亡体信用生命保険申込書兼告知書」を提出 < の告知義務違反を理由としてに本件し、同月訂日、本件団信契約に被保険者でに保険金を支払っていたときは、当 会社は、その返還を請求します・ : 団信契約のうち亡 < の追加加入部分を解として追加加入して、は、同日、亡 < 1700 万円を貸し付け 除する意思表示をなし、死亡保険金の支に住宅購入資金 亡 < は、平成幻年 5 月日、間質性 た。本件団信契約に適用される団体信用 払を拒否した。 本件は、亡 < の唯一の相続人である原生命保険普通保険約款 ( 以下「本件約款」肺炎により死亡し、唯一の相続人である 告 >< が、に対して、亡 < が本件団信契という。 ) 条は、告知義務違反によるが前記借入金債務等を相続した。が 一三ロ 法律のひろば 2015.3 ・ 66