これに対して、本件は当事者間におい 解除権の行使を認めないことが衡平であ R 裁判例・学説 ると説いている ( 注 3 ) 。 て告知義務違反の事実そのものについて 争いはなく、保険契約を締結しようとす ( 保険者の過失の意義 る保険者において、新たに保険契約を申保険者の保険契約解除権の行使を阻却 ②具体的な判断基準 ろ し込もうとする者に関し、既加入の保険する保険者の過失の意義について、大判 そこで、保険者の「取引上必要な注意」の 1 、 6 1 ワ 3 契約における保険金支払履歴の有無や内大正Ⅱ年川月日大審院民集巻 について、東京地判昭和礙年 1 月日判 1229 号 147 頁は「保険契約者が 容を把握・調査しなかったことが保険者頁は「保険者が自己に被ることあるべき時 の過失に該当するか否かが争点となった不利益を防止する為に取引上必要なる注告知義務違反をしたにかかわらず、取引 ものである。同一の被保険者が同一の保意を欠きたること所謂自己過失を指称す上における衡平の観点からみて保険者を 険者との間で複数の保険契約を締結するるものにして法律上注意義務の存在を前保護することが相当でないと考えられる ことは珍しいことではなく、新たな保険提とし此の義務に違背したる場合を謂、つような保険者の不注意を指すのであるか 契約の申込みに伴う告知を受領するに際ものに非ず」とし、大判昭和 3 年 6 月 6 ら、 ・ : 告知の有無及びその内容程度に して、保険者が自社で引き受けた既加入日評論巻商法 329 頁は保険者の過失従い、通常容易に右の重要な事実を発見 の保険契約の有無やそれらの保険金支払は保険者に重過失がある場合に限らないすることができる程度の注意を保険者が 履歴の有無や内容を把握・調査する必要と判示している。 払えば足りる」と判示する ( 注 4 ) 。名古 があるか否かは、団体信用生命保険に限保険者の解除権の行使が阻却される趣屋高判平成間年 1 月日 (e-æo 事件番 らず全ての保険契約の締結の場面で問題旨について、学説は、衡平の見地からみ号 28090955 ) も、「保険契約者 となり得る。かかる論点について公表さて告知義務違反の事実を知っていた又は側に告知義務違反という不誠実な行為が れた裁判例はほとんどなく、さらに昨今過失よって知らなかった保険者を保護すあるものの、取引上における衡平の観点 の保険募集規制の充実状況をも勘案するる必要はないとし ( 注 1 ) 、保険者に過失からみて : : : 保険契約の解除を認める必 と、理論・実務の双方の観点から検討すがある場合に解除権を認めないのは保険要はないというものであると解されるか べき極めて重要な論点といえる。 者に積極的な調査を要求すると同時に調ら、『過失に因りて之を知らざりしとき』 なお、本件ではの解除権が除斥期間査に際して相当な注意を尽くさせる趣旨とは、告知がなくとも容易に重要な事実 ( 本件保険約款条 4 項、保険法条 4 であるとし ( 注 2 ) 、保険者が告知義務違を発見できるのが通常であるにもかかわ 項 ) の経過により消滅していたか否かも反について悪意の場合には危険選択の機らず、不注意により重要な事実を発見し 争点となっているが、この点は事実認定会があったのであるから解除権を認めるなかった場合をいう」とする。 に帰する問題であることから本研究では必要はなく、また保険者としての通常の 検討しない。 注意を尽くせば事実を知り得たときにも
これに対して、本件は当事者間におい 解除権の行使を認めないことが衡平であ R 裁判例・学説 て告知義務違反の事実そのものについて ると説いている ( 注 3 ) 。 争いはなく、保険契約を締結しようとす 保険者の過失の意義 る保険者において、新たに保険契約を申保険者の保険契約解除権の行使を阻却 ②具体的な判断基準 ろ し込もうとする者に関し、既加入の保険する保険者の過失の意義について、大判 そこで、保険者の「取引上必要な注意」の 1 ^ 0 1 ワ 3 契約における保険金支払履歴の有無や内大正Ⅱ年川月日大審院民集巻 について、東京地判昭和礙年 1 月日判 容を把握・調査しなかったことが保険者頁は「保険者が自己に被ることあるべき時 1229 号 147 頁は「保険契約者が の過失に該当するか否かが争点となった不利益を防止する為に取引上必要なる注告知義務違反をしたにかかわらず、取引 ものである。同一の被保険者が同一の保意を欠きたること所謂自己過失を指称す上における衡平の観点からみて保険者を 険者との間で複数の保険契約を締結するるものにして法律上注意義務の存在を前保護することが相当でないと考えられる ことは珍しいことではなく、新たな保険提とし此の義務に違背したる場合を謂、つような保険者の不注意を指すのであるか 契約の申込みに伴う告知を受領するに際ものに非ず」とし、大判昭和 3 年 6 月 6 ら、 ・ : 告知の有無及びその内容程度に して、保険者が自社で引き受けた既加入日評論巻商法 329 頁は保険者の過失従い、通常容易に右の重要な事実を発見 の保険契約の有無やそれらの保険金支払は保険者に重過失がある場合に限らないすることができる程度の注意を保険者が 履歴の有無や内容を把握・調査する必要と判示している。 払えば足りる」と判示する ( 注 4 ) 。名古 があるか否かは、団体信用生命保険に限保険者の解除権の行使が阻却される趣屋高判平成年 1 月日 (eæo 事件番 らず全ての保険契約の締結の場面で問題旨について、学説は、衡平の見地からみ号 28090955 ) も、「保険契約者 となり得る。かかる論点について公表さて告知義務違反の事実を知っていた又は側に告知義務違反という不誠実な行為が れた裁判例はほとんどなく、さらに昨今過失よって知らなかった保険者を保護すあるものの、取引上における衡平の観点 の保険募集規制の充実状況をも勘案するる必要はないとし ( 注 1 ) 、保険者に過失からみて : : : 保険契約の解除を認める必 と、理論・実務の双方の観点から検討すがある場合に解除権を認めないのは保険要はないというものであると解されるか べき極めて重要な論点といえる。 者に積極的な調査を要求すると同時に調ら、『過失に因りて之を知らざりしとき』 なお、本件ではの解除権が除斥期間査に際して相当な注意を尽くさせる趣旨とは、告知がなくとも容易に重要な事実 ( 本件保険約款条 4 項、保険法条 4 であるとし ( 注 2 ) 、保険者が告知義務違を発見できるのが通常であるにもかかわ 項 ) の経過により消滅していたか否かも反について悪意の場合には危険選択の機らず、不注意により重要な事実を発見し 争点となっているが、この点は事実認定会があったのであるから解除権を認めるなかった場合をいう」とする。 に帰する問題であることから本研究では必要はなく、また保険者としての通常の 検討しない 注意を尽くせば事実を知り得たときにも
賠償・補償・保険法判例研究 っその販売形態も保険募集人による従来月四日が「保険金支払と告知受領の担当る告知受領権者・部署が異なることをも 型の販売のほか通信販売やインタ 1 ネッ部署が異なることを理由に補助参加人のって、保険者に過失がないと構成するこ トによる販売など今日では多種多様であ過失を否定することは、一般通常人であとには慎重であるべきであろう。 ④最後に、本件判決を契機として、今後 って、かかる事情は損害保険についてもれば、同一の会社に対して診断書等を提 同様である。今日の保険市場において、 出した場合には、同一の会社に提出した留意しておくべき点について付言する。 第一に、金融庁「保険会社向けの総合 各保険会社は低廉な保険料と良質な保険ものであると判断すると考えられること 商品の提供、効率的な販売形態等を競っ に照らすと、右信頼に違背するととも的な監督指針」 ( 平成年Ⅱ月 ) 「Ⅱー 4 保険契約の募集上の留意点」 ており、引受判断の迅速性もそうした競に、補助参加人の体制不備の責任を一被 において、「顧客のニーズに基づかない 争要素の一つである。の主張のごと保険者に負わせることになり、妥当でな く、日々の膨大な件数の実態と、告知義いと解される」と指摘しているとおり、補償重複に係る対応」の体制整備が求め 務違反をなした者のために既加入の保険保険会社が大規模化しその内部におけるられている点である。具体的には、①損 契約との照合をなすために要する莫大な権限分掌が複雑化した今日において、外害保険新規契約等の説明に際して、補償 コスト等の事情を斟酌する必要はある。部者である被保険者の立場からは、誰の重複となる保険に既に加入していないか さりとて保険料の低額化と迅速な引受判過失の有無を争うべきなのかがプラインを確認すること、②既に加入している場 ドだからである。 合には、保険料と保険金の関係について 断という要請は団体信用生命保険のみに 内在する固有の事情とはいえず、他の団通説は、保険者の過失の有無は告知受明示的に説明した上で、当該顧客のニ 1 体保険や個人保険、損害保険にも当ては領権を有する者に即して判断され、そのズを踏まえた適切な内容の補償を提供す まるといえよう。そうすると、保険者の証明責任は保険金請求者が負うと解してること、③補償重複に係る顧客に対する 確認・説明の実態を把握・検証できる態 過失についても、団体信用生命保険とそ いるが ( 注 9 ) 、外部者が保険会社の内部に れ以外の他の保険とをことさらに別異において誰が告知受領権者なのかを見極め勢を構築することが求められている。こ 解する理由は見いだし難く、団体信用生るのは困難であり、さらに同一保険会社れらは、損害保険募集の場面において顧 命保険の特質に着目し保険者の過失の程内部においても保険種類によってそれが客意向に反する補償重複を招来しないよ 度も軽減されるという判示にはなお議論異なるという保険者の主張に対して、被う保険会社に体制整備を求める行政監督 上の指針であり、直ちに私法上の効果を の余地がある ( 注 7 ) 。 保険者の反論はおよそ不可能であろう。 次に、本件判決では争点にはならな保険者の過失の証明責任が被保険者にもたらすものでもない。しかし、間接的ろ かったが、保険者の誰の過失を基準とすある点に鑑みると、通常、被保険者が抱ではあるが損害保険契約を締結する際にの るのかが問題となり得る ( 注 8 ) 。 く信頼にも留意する必要があり、今日的既加入契約の内容確認を促すものである法 マ / ことには相違ない。 というのは、前掲大阪地判平成川年 2 な視点からは、単に保険会社内部におけ
犢な幇黷・保険、判例研究 っその販売形態も保険募集人による従来月四日が「保険金支払と告知受領の担当る告知受領権者・部署が異なることをも 型の販売のほか通信販売やインターネッ部署が異なることを理由に補助参加人のって、保険者に過失がないと構成するこ トによる販売など今日では多種多様であ過失を否定することは、一般通常人であとには慎重であるべきであろう。 ④最後に、本件判決を契機として、今後 って、かかる事情は損害保険についてもれば、同一の会社に対して診断書等を提 同様である。今日の保険市場において、 出した場合には、同一の会社に提出した留意しておくべき点について付言する。 各保険会社は低廉な保険料と良質な保険ものであると判断すると考えられること第一に、金融庁「保険会社向けの総合 商品の提供、効率的な販売形態等を競っ に照らすと、右信頼に違背するととも的な監督指針ー ( 平成年Ⅱ月 ) 「Ⅱー 4 ワ 3 ーワ」 保険契約の募集上の留意点」 ており、引受判断の迅速性もそうした競に、補助参加人の体制不備の責任を一被 において、「顧客のニ 1 ズに基づかない 争要素の一つである。の主張のごと保険者に負わせることになり、妥当でな く、日々の膨大な件数の実態と、告知義いと解される」と指摘しているとおり、補償重複に係る対応」の体制整備が求め 務違反をなした者のために既加入の保険保険会社が大規模化しその内部におけるられている点である。具体的には、①損 契約との照合をなすために要する莫大な権限分掌が複雑化した今日において、外害保険新規契約等の説明に際して、補償 コスト等の事情を斟酌する必要はある。部者である被保険者の立場からは、誰の重複となる保険に既に加入していないか さりとて保険料の低額化と迅速な引受判過失の有無を争うべきなのかがプラインを確認すること、②既に加入している場 ドだからである。 合には、保険料と保険金の関係について 断という要請は団体信用生命保険のみに 内在する固有の事情とはいえず、他の団通説は、保険者の過失の有無は告知受明示的に説明した上で、当該顧客のニー 体保険や個人保険、損害保険にも当ては領権を有する者に即して判断され、そのズを踏まえた適切な内容の補償を提供す まるといえよう。そうすると、保険者の証明責任は保険金請求者が負うと解してること、③補償重複に係る顧客に対する 過失についても、団体信用生命保険とそ いるが ( 注 9 ) 、外部者が保険会社の内部に確認・説明の実態を把握・検証できる態 れ以外の他の保険とをことさらに別異において誰が告知受領権者なのかを見極め勢を構築することが求められている。こ 解する理由は見いだし難く、団体信用生るのは困難であり、さらに同一保険会社れらは、損害保険募集の場面において顧 命保険の特質に着目し保険者の過失の程内部においても保険種類によってそれが客意向に反する補償重複を招来しないよ 度も軽減されるという判示にはなお議論異なるという保険者の主張に対して、被う保険会社に体制整備を求める行政監督 上の指針であり、直ちに私法上の効果を の余地がある ( 注 7 ) 。 保険者の反論はおよそ不可能であろう。 次に、本件判決では争点にはならな保険者の過失の証明責任が被保険者にもたらすものでもない。しかし、間接的ろ かったが、保険者の誰の過失を基準とすある点に鑑みると、通常、被保険者が抱ではあるが損害保険契約を締結する際にの るのかが問題となり得る ( 注 8 ) 。 く信頼にも留意する必要があり、今日的既加入契約の内容確認を促すものである法 ことには相違ない。 というのは、前掲大阪地判平成川年 2 な視点からは、単に保険会社内部におけ
参加人の過失を否定することは、一般通入手し、保険金支払履歴の有無やその内れた告知書に何ら告知義務違反を疑うべた 常人であれば、同一の会社に対して診断容を調査すべき義務を負っていたか否かき特段の事情が存在しない場合、保険者 書等を提出した場合には、同一の会社にが争点である。 において同人の個人保険のデ 1 タベ 1 ス 提出したものであると判断すると考えら本件判決は、にかかる義務を認めずにアクセスして告知義務違反の有無を確 ろ れることに照らすと、右信頼に違背するの過失を認めなかったものであってそ認しなかったとしても、保険者に過失がの 律 とともに、補助参加人の体制不備の責任の結論に異論はないが、結論を導く理由あったとはいえない。 法 を一被保険者に負わせることになり、妥づけには議論の余地があり、また本判決思うに、第一点については、前述した 当でないと解される」とする。 を契機として新たに検討すべき論点も考従前の裁判例に照らしても異論のないと この事案は、被保険者から提出されたえられる。 ころと考えられ、第三点についても亡 < 告知書の不備かっ不自然な記載から保険 本判決がの過失を否定した論拠のから提出された告知書には不備や不自然 者において何らかの告知事項があるべき大要は次のとおりである。 な記載がなかったほか、告知内容の信び ことが認識可能であったとしており、本第一に、告知義務の制度趣旨とその構よう性に疑問を抱かせるような特段の事 件判決とは前提を異にするものではある造に鑑み、解除権の行使を阻却する保険情も認められていないことから、前掲大 が、保険者において既加入の保険契約に者の過失とは、被保険者の告知義務違反阪地判平成川年 2 月四日や前掲仙台高判 おける保険金支払履歴の有無や内容を把を考慮してもなお保険者による解除を認平成年Ⅱ月日に照らしても妥当な判 握・調査すべき場合があることを示しためることが衡平に反すると考えられるよ示であり、以上の第一、第三の点の検討 裁判例として意義がある。なお、この控訴うな保険者の注意義務違反をいう。第二 によっても結論を導くことが可能であっ 審である大阪高判平成Ⅱ年Ⅱ月Ⅱ日判時に、団体信用生命保険は住宅ローン等のたと考えられる 1721 号 147 頁は、告知書上の空白貸付けに係る債権者 ( 金融機関 ) ・債務 一方、第二点については議論の余地が 欄について原審と異なる事実認定を行っ者 ( 被保険者 ) 双方の便宜のため、保険ある。本件判決は団体信用生命保険の制 た上で原審の判断を取り消している ( 注 6 ) 。 料を低額化するとともに引受判断を迅速度とその特質に着目し、保険料の低額化 に行、つとい、つ一一つの要請に応えることか と迅速な引受判断という一一つの要請に応 求められる保険であることから、保険者えるために、保険者の過失もかかる要請 3 本件判決の検討 の注意義務もこれらの要請に反しないもに反しない程度のものに限られ、右要請 本件は、結局のところ、本件団信契のとされる。第三に、被保険者においてを実現するためにおける告知書の審査 約の引受判断に際して団体保険課が個同一保険者に既加入の保険契約に基づく にかかわる運用状況も是認されるという 人保険のデ 1 タベ 1 スにアクセスし、亡保険金支払歴がある場合であっても、団 しかし、個人保険・団体保険・団体信 < の既加入の個人保険契約に係る情報を体信用生命保険への加入に際して提出さ用生命保険など多様な商品が存在し、か
参加人の過失を否定することは、一般通入手し、保険金支払履歴の有無やその内れた告知書に何ら告知義務違反を疑うべた 常人であれば、同一の会社に対して診断容を調査すべき義務を負っていたか否かき特段の事情が存在しない場合、保険者 書等を提出した場合には、同一の会社にが争点である。 において同人の個人保険のデータベース 提出したものであると判断すると考えら本件判決は、にかかる義務を認めずにアクセスして告知義務違反の有無を確 ろ れることに照らすと、右信頼に違背するの過失を認めなかったものであってそ認しなかったとしても、保険者に過失がの 律 とともに、補助参加人の体制不備の責任の結論に異論はないが、結論を導く理由あったとはいえない 法 を一被保険者に負わせることになり、妥づけには議論の余地があり、また本判決思うに、第一点については、前述した 当でないと解される」とする。 を契機として新たに検討すべき論点も考従前の裁判例に照らしても異論のないと この事案は、被保険者から提出されたえられる ころと考えられ、第三点についても亡 < 告知書の不備かっ不自然な記載から保険② 本判決がの過失を否定した論拠のから提出された告知書には不備や不自然 者において何らかの告知事項があるべき大要は次のとおりである。 な記載がなかったほか、告知内容の信び ことが認識可能であったとしており、本第一に、告知義務の制度趣旨とその構よう性に疑問を抱かせるような特段の事 件判決とは前提を異にするものではある造に鑑み、解除権の行使を阻却する保険情も認められていないことから、前掲大 が、保険者において既加入の保険契約に者の過失とは、被保険者の告知義務違反阪地判平成間年 2 月四日や前掲仙台高判 おける保険金支払履歴の有無や内容を把を考慮してもなお保険者による解除を認平成年Ⅱ月日に照らしても妥当な判 握・調査すべき場合があることを示しためることが衡平に反すると考えられるよ示であり、以上の第一、第三の点の検討 裁判例として意義がある。なお、この控訴うな保険者の注意義務違反をいう。第二 によっても結論を導くことが可能であっ 審である大阪高判平成Ⅱ年Ⅱ月Ⅱ日判時に、団体信用生命保険は住宅ローン等のたと考えられる。 1721 号 147 頁は、告知書上の空白貸付けに係る債権者 ( 金融機関 ) ・債務 一方、第二点については議論の余地が 欄について原審と異なる事実認定を行っ者 ( 被保険者 ) 双方の便宜のため、保険ある。本件判決は団体信用生命保険の制 た上で原審の判断を取り消している ( 注 6 ) 。料を低額化するとともに引受判断を迅速度とその特質に着目し、保険料の低額化 に行、つとい、つ二つの要請に応えることか と迅速な引受判断という一一つの要請に応 求められる保険であることから、保険者えるために、保険者の過失もかかる要請 3 本件判決の検討 の注意義務もこれらの要請に反しないもに反しない程度のものに限られ、右要請 本件は、結局のところ、本件団信契のとされる。第三に、被保険者においてを実現するため >* における告知書の審査 約の引受判断に際して >* 団体保険課が個同一保険者に既加入の保険契約に基づく にかかわる運用状況も是認されるという。 人保険のデータベ 1 スにアクセスし、亡保険金支払歴がある場合であっても、団 しかし、個人保険・団体保険・団体信 < の既加入の個人保険契約に係る情報を体信用生命保険への加入に際して提出さ用生命保険など多様な商品が存在し、か
保険者の過失について、「どのような有さない場合に、保険者の過失の判断に の説明責任」塩崎勤Ⅱ山下丈Ⅱ山野嘉 体制を基準に過失の有無を判断するのか際して、保険募集人の主観的状況が考慮朗編『保険関係訴訟』 ( 民事法研究会、 ワ 3 0 0 は実はむずかしい問題であるが、一般論すべき特段の事情の一 . つに取り込まれる 【 0 ワ〕 0 一頁 つ」 、ま としては現在の保険業界で最大公約数と可能性があることに留意すべきである。 ろ ひ ( 注 ) いえるような体制を基準に判断すること の 律 ( 1 ) 大森忠夫「保険法冖補訂版〕」 ( 有斐閣、 1985 になると思われ」る ( 注四と説かれてい 法 4 参考文献 年 ) 131 頁 るように、監督指針に基づく体制整備に ( 2 ) 西島梅治「保険法〔第三版〕」 ( 悠々社、 1998 よって、今後、損害保険契約の締結の際本件判決の研究として、磯野直文「団 年 ) 頁 に自社引受の既加入契約の確認を行うこ体信用生命保険契約の告知義務違反に係 ( 3 ) 山下友信米山高生編「保険法解説」 ( 有斐閣、 2 とが常態化していくとすれば、既加入のる保険者の過失」共済と保険巻 7 号 ( 2 010 年 ) 53 5 頁 ( 山下友信筆 ) 保険契約の保険金支払歴とその内容調査 014 年 ) 頁があり、裁判例を概説す ( 4 ) 東京地判平成 9 年 1 月日判タ 966 号 252 頁 の実施の有無を、保険者の過失の判断要るものとして山下友信Ⅱ永沢徹編『論点 も同旨を判示する。 ワ 3 0 一 1 -4 素の一つと捉えるのか否かの解釈に影響体系保険法 2 』 ( 第一法規、 ( 5 ) 仙台高判平成年Ⅱ月日については、結論及び を与える可能性がある。補償重複に関す年 ) 180 頁 ( 遠山聡筆 ) がある。また、 その理論構成の当否について議論があることを付言し る監督指針は損害保険契約を対象とした注に掲げた文献のほか、団体信用生命保ておく。 ものであり、生命保険をその対象とはし険、団体保険に関する研究として以下が ( 6 ) 本件判批として福田弥夫・保険事例研究会レポー ト 171 号 ( 2002 年 ) 1 頁がある ていないか、かかる新規制の影響にも留ある ( 7 ) 研究会では、住宅ロ 1 ンと生命保険契約とが一体 意が必要である ・輿石進「団体信用生命保険」金判 11 となっている点に団体信用生命保険の特質が認めら 第二に、多様な保険募集人の登場であ っ 0 【ロ写 ( ワ〕 00 ワ〕 年 ) 14 4 頁 れ、これが保険者の過失の解釈にも影響を及ほすこと る。今日では金融機関をはじめ様々な業・長谷川秀之「団体信用生命保険の直面 はむしろ妥当であるとの意見もあった。 態が保険募集に参入し、かっ、専属・乗する諸問題」生命保険経営ハ巻 4 号 ( 2 ( 8 ) 研究会では、本件でこの点が当事者間において争 合、契約締結代理権・告知受領権の有虹 003 年 ) れ頁 いとならなかった点で、事案全体としての結論に影響 なども様々である。同一の保険募集人が・拙稿「団体保険契約における契約者・ を与えたのではないかとの意見もあった。 同一被保険者の保険契約を複数取り扱う保険料集金者の法的地位ー米国の判例 1 11 っ 0 11 ( 9 ) 大森・前掲 ( 注 ) 頁、山下米山編・前 場合であっても、既加入契約と新規契約法理からの示唆」ほうむ ( 損保ジャパ 掲 ( 注 ) 3 536 頁 ( 山下筆 ) の引受保険会社が異なることは珍しいこ ン ) 的号 ( 2003 年 ) 頁 ( 四山下友信・保険事例研究会レポート 171 号 とではない。このような場面において、 ・小口光・戸田健一郎「団体生命保険契 とりわけ当該保険募集人が告知受領権を約における被保険者に対する重要事項 ( いぐち・ひろのぶ ) 002 年 ) 8 頁
保険者の過失について、「どのような有さない場合に、保険者の過失の判断に の説明責任」塩崎勤Ⅱ山下丈Ⅱ山野嘉な ( 0 体制を基準に過失の有無を判断するのか際して、保険募集人の主観的状況が考慮朗編『保険関係訴訟』 ( 民事法研究会、 ワ 3 0 0 0 は実はむずかしい問題であるが、一般論すべき特段の事情の一 . つに取り込まれる 年 ) 5 2 0 頁 つ」 、ま としては現在の保険業界で最大公約数と可能性があることに留意すべきである。 ろ ひ ( 注 ) いえるような体制を基準に判断すること の 律 ( 1 ) 大森忠夫「保険法冖補訂版〕」 ( 有斐閣、 1985 になると思われ」る ( 注四と説かれてい 法 4 参考文献 るように、監督指針に基づく体制整備に ( 2 ) 西島梅治「保険法〔第三版〕」 ( 悠々社、 1998 よって、今後、損害保険契約の締結の際本件判決の研究として、磯野直文「団 年 ) 頁 に自社引受の既加入契約の確認を行うこ体信用生命保険契約の告知義務違反に係 ( 3 ) 山下友信日米山高生編「保険法解説」 ( 有斐閣、 2 とが常態化していくとすれば、既加入のる保険者の過失」共済と保険巻 7 号 ( 2 010 年 ) 535 頁 ( 山下友信筆 ) 保険契約の保険金支払歴とその内容調査 014 年 ) 頁があり、裁判例を概説す ( 4 ) 東京地判平成 9 年 1 月日判タ 966 号 252 頁 の実施の有無を、保険者の過失の判断要るものとして山下友信Ⅱ永沢徹編『論点 も同旨を判示する。 素の一つと捉えるのか否かの解釈に影響体系保険法 2 』 ( 第一法規、 2014 ( 5 ) 仙台高判平成年Ⅱ月日については、結論及び を与える可能性がある。補償重複に関す年 ) 180 頁 ( 遠山聡筆 ) がある。また、 その理論構成の当否について議論があることを付言し る監督指針は損害保険契約を対象とした注に掲げた文献のほか、団体信用生命保ておく。 ものであり、生命保険をその対象とはし険、団体保険に関する研究として以下が ( 6 ) 本件判批として福田弥夫・保険事例研究会レポー ト 171 号 ( 2002 年 ) 1 頁がある ていないが、かかる新規制の影響にも留ある。 ( 7 ) 研究会では、住宅ロ 1 ンと生命保険契約とが一体 意が必要である ・輿石進「団体信用生命保険」金判 11 となっている点に団体信用生命保険の特質が認めら 第二に、多様な保険募集人の登場であ っ 0 【 0 ロ万 ( ワ〕 00 ワ〕 年 ) 14 4 頁 れ、これが保険者の過失の解釈にも影響を及ばすこと る。今日では金融機関をはじめ様々な業・長谷川秀之「団体信用生命保険の直面 はむしろ妥当であるとの意見もあった。 態が保険募集に参入し、かっ、専属・乗する諸問題」生命保険経営ハ巻 4 号 ( 2 ( 8 ) 研究会では、本件でこの点が当事者間において争 合、契約締結代理権・告知受領権の有 003 年 ) れ頁 いとならなかった点で、事案全体としての結論に影響 なども様々である。同一の保険募集人が ・拙稿「団体保険契約における契約者・ を与えたのではないかとの意見もあった。 同一被保険者の保険契約を複数取り扱う保険料集金者の法的地位ー米国の判例 ( 9 ) 大森・前掲 ( 注 1 ) 131 頁、山下 = 米山編・前 場合であっても、既加入契約と新規契約法理からの示唆」ほうむ ( 損保ジャパ 掲 ( 注 ) 3 536 頁 ( 山下筆 ) の引受保険会社が異なることは珍しいこ ( 四山下友信・保険事例研究会レポート 171 号 ン ) 的号 ( 2 0 0 3 年 ) 頁 002 年 ) 8 頁 とではない。このような場面において、 小口光・戸田健一郎「団体生命保険契 ( いぐち・ひろのぶ ) とりわけ当該保険募集人が告知受領権を約における被保険者に対する重要事項
認められ、これらの事実に照らせば、被証拠 ( 証拠略 ) によれば、①被告 & は、事業者 ) については、最判平成年 4 月 日民集巻 3 号 1499 頁が「新聞社 告は、本件サイトに人の人格的利益を補助参加人から基本料金及び従量制料金 侵害するような写真が掲載されないようを徴収していること、②被告 & は、補助が、通信社からの配信に基づき、自己の 注意し、掲載された場合には速やかにこ参加人との間の情報提供に関する契約に発行する新聞に記事を掲載した場合にお ろ れを削除すべき義務を負うものと解するおいて、『本件情報に起因して第三者のいて、少なくとも、当該通信社と当該新の のが相当である。」として、ニュ 1 スサ知的財産権、パプリシティ権、プライバ 聞社とが、記事の取材、作成、配信及び法 イト運営者に対して、「人格的利益を侵シ 1 権その他の権利を侵害したという理掲載という一連の過程において、報道主 害するようなコンテンツが掲載されない 由で & が第三者から請求 ( 損害賠償の請体としての一体性を有すると評価するこ ように注意し、掲載されたときは速やか求、使用差止の請求など内容の如何を問 とができるときは、当該新聞社は、当該 に削除すべき義務」を認める。実名報道わず、また訴訟の係属の有無を問わな通信社を取材機関として利用し、取材を に関していえば、プライバシーを侵害すい ) を受けた場合、情報提供元は、自己代行させたものとして、当該通信社の取 材を当該新聞社の取材と同視することが るような実名報道が転載される場合にの責任と費用でこれを解決し、 & にいか は、同様の義務が発生するものといえよなる迷惑も及ばさず、また & が被った損相当であって、当該通信社が当該配信記 害を補償する。』との合意をしており : ・ 事に摘示された事実を真実と信ずるにつ 、第三者から損害賠償の請求を受けた いて相当の理由があるのであれば、当該 そして、「②ア・被告らは、配信元 である補助参加人が、被告に対して、 としても、その最終的な負担を配信元に新聞社が当該配信記事に摘示された事実 その配信する記事が第三者の権利を侵害転嫁していることなどが認められ、これの真実性に疑いを抱くべき事実があるに するものではない旨を保証しているからの事情にかんがみれば、上記主張は上もかかわらすこれを漫然と掲載したなど ら、被告には過失がないと主張する記①の認定判断を覆すものとはいえな特段の事情のない限り、当該新聞社が自 、。」として、ニュースサイト運営者と己の発行する新聞に掲載した記事に摘示 が、新聞社のグループ会社である配信元 が第三者の権利を侵害するものではない新聞社の共同不法行為を認めている。ニされた事実を真実と信ずるについても相 旨を保証しているとしても、そのことかュ 1 スサイト営者としては、「独自の当の理由があるというべきである。」と ら直ちに過失がないと評価できるものと配信された全記事の内容について確認す判示したところの「報道主体としての一 はいえないから、被告らの上記主張をることはほば不可能」との主張は本音で体性 , が認められる余地はなく、ニュ 1 スサイトが同最判に従った抗弁を主張す 採用することはできない。」「イ・被告あろうが、免責事由とはならないので、 ることは困難であろう。 らは、被告が独自の配信された全記事注意が必要である。 の内容について確認することはほば不可なお、ニュ 1 スサイト運営者と新聞社 能である旨を主張するので検討するに、 ( 又はその関係会社であるニュース配信
認められ、これらの事実に照らせば、被証拠 ( 証拠略 ) によれば、①被告は、事業者 ) については、最判平成年 4 月 日民集巻号 告 & は、本件サイトに人の人格的利益を補助参加人から基本料金及び従量制料金 3 1499 頁が「新聞社 侵害するような写真が掲載されないようを徴収していること、②被告 & は、補助が、通信社からの配信に基づき、自己の 注意し、掲載された場合には速やかにこ参加人との間の情報提供に関する契約に発行する新聞に記事を掲載した場合にお ろ れを削除すべき義務を負うものと解するおいて、『本件情報に起因して第三者の いて、少なくとも、当該通信社と当該新の のが相当である。」として、ニュ 1 スサ知的財産権、パプリシティ権、プライノ ヾ聞社とが、記事の取材、作成、配信及び イト運営者に対して、「人格的利益を侵シー権その他の権利を侵害したという理掲載という一連の過程において、報道主 害するようなコンテンツが掲載されない 由で & が第三者から請求 ( 損害賠償の請体としての一体性を有すると評価するこ ように注意し、掲載されたときは速やか求、使用差止の請求など内容の如何を問 とができるときは、当該新聞社は、当該 に削除すべき義務」を認める。実名報道わず、また訴訟の係属の有無を問わな通信社を取材機関として利用し、取材を に関していえば、プライバシ 1 を侵害すい ) を受けた場合、情報提供元は、自己代行させたものとして、当該通信社の取 るような実名報道が転載される場合にの責任と費用でこれを解決し、 & にいか 材を当該新聞社の取材と同視することが は、同様の義務が発生するものといえよなる迷惑も及ばさず、また & が被った損相当であって、当該通信社が当該配信記 害を補償する。』との合意をしており : ・ 事に摘示された事実を真実と信ずるにつ 、第三者から損害賠償の請求を受けた いて相当の理由があるのであれば、当該 そして、「②ア・被告らは、配信元 である補助参加人が、被告に対して、 としても、その最終的な負担を配信元に新聞社が当該配信記事に摘示された事実 その配信する記事が第三者の権利を侵害転嫁していることなどが認められ、これの真実性に疑いを抱くべき事実があるに するものではない旨を保証しているからの事情にかんがみれば、上記主張は上もかかわらすこれを漫然と掲載したなど ら、被告には過失がないと主張する記①の認定判断を覆すものとはいえな特段の事情のない限り、当該新聞社が自 が、新聞社のグループ会社である配信元 、。」として、ニュースサイト運営者と己の発行する新聞に掲載した記事に摘示 が第三者の権利を侵害するものではない新聞社の共同不法行為を認めている。ニされた事実を真実と信ずるについても相 旨を保証しているとしても、そのことかュースサイ運営者としては、「独自の当の理由があるというべきである。」と ら直ちに過失がないと評価できるものと配信された全記事の内容について確認す判示したところの「報道主体としての一 はいえないから、被告らの上記主張をることはほば不可能」との主張は本音で体性」が認められる余地はなく、ニュー 採用することはできない。」「イ・被告あろうが、免責事由とはならないので、 スサイトが同最判に従った抗弁を主張す ることは困難であろう。 らは、被告 >-«が独自の配信された全記事注意が必要である。 の内容について確認することはほば不可なお、ニュースサイト運営者と新聞社 能である旨を主張するので検討するに、 ( 又はその関係会社であるニュース配信