開始 - みる会図書館


検索対象: 法律のひろば 2015年3月号
32件見つかりました。

1. 法律のひろば 2015年3月号

重判例研究 なお、成年後見開始の審判は、直接的 さらに、成年後見の実務との関係につ 要請の調和にあると捉え、前者の要請か には審判時点における本人の行為能力に ら、時効の期間の満了前 6 か月以内の間 いてみても、例えば、時効期間満了前 6 か月以内に成年後見開始の申立てがあついて判断するものであるから、本件事 に精神上の障害により事理を弁識する能 力を欠く常況にある者に法定代理人がなり、成年後見人に就任したものの、その案のように、時効期間の満了の後に成年 いことという要件を導き、後者の要請か時点で既に時効期間の満了が切迫した場後見開始の審判がされた場合、時効期間 ら、少なくとも時効期間の満了前の申立合、成年後見人は現実的に困難な対応をの満了前 6 か月以内の期間に事理弁識能 てに基づき後見開始の審判がされたこと迫られることになる。成年後見の現在の力を欠く常況にあったと認められるかに という要件を導いている。成年後見開始実務上、大半の事件が申立てからおおよっいて更に事実認定をすることが必要と なる。本判決も、このような見地から本 の申立ての有無は客観的かっ画一的に判そ 2 、 3 か月以内で審判に至っていると 断し得る事実であり、成年後見開始の申みられる ( 最高裁事務総局家庭局「成年件を原審に差し戻している。 立てがあれば、相当期間内に審判がされ後見関係事件の概況」 ( 平成年 ) ほか ることが想定され、事件記録が家事事件参照 ) が、民法 158 条 1 項の類推適用 ( 他に類推適用の可否が問題となる場 手続法に基づく閲覧・謄写申請の対象との可否が、成年後見開始の申立てから審合 なり得ることからも、前記要件の解釈に判までの時間によって左右されること本判決は、民法 158 条 1 項の類推適 用を認める場合を明らかにしたものであ は合理性がある。関係者の行為規範とい は、好ましくない。前記解釈によれば、 るが、その場合を「少なくとも」時効期 う見地からみても、前記解釈は、時効をそのような事態も回避することができ、 援用しようとする者にとっては、時効期民法 158 条 .1 項が時効完成猶予期間を間の満了前の申立てに基づき後見開始の 間満了前に成年後見開始の申立てがある 6 か月とした趣旨が、後見人による財産審判がされたときとし、時効期間の満了 場合には、民法 158 条 1 項の類推適用等の調査事務に要する期間を考慮したも前の申立てに基づき後見開始の審判がさ により時効の完成が猶予される可能性がのと解されること ( 富井政章『民法原論』れたとき以外の場合を一切排除する趣旨 あることを予見すべきことになる一方、大正Ⅱ年合冊版 658 頁 ) とも整合すではないことを示唆している。そこで、 今後どのような場合に類推適用が認めら 3 事理弁識能力を欠く常況にある本人又はる。 れるかが問題となるところ、権利者の要 このように、本判決の示した解釈は、 その親族等においては、同項の類推適用 を受けたければ、時効期間の満了前 6 か民法 158 条 1 項の趣旨を踏まえて本人保護性及び時効を援用しようとする者の引 月以内に成年後見開始の申立てをすれば保護と関係者の利益等の調和を図り、類予見可能性の確保との調和の観点からすの よいこととなる点で、妥当なものといえ推適用の範囲を適切に画そうとするものると、①時効を援用しようとする者が本法 る。 とい、んよ、つ 人の事理弁識能力を欠く常況の原因を作

2. 法律のひろば 2015年3月号

田判例研究 なお、成年後見開始の審判は、直接的 さらに、成年後見の実務との関係につ 要請の調和にあると捉え、前者の要請か には審判時点における本人の行為能力に ら、時効の期間の満了前 6 か月以内の間 いてみても、例えば、時効期間満了前 6 か月以内に成年後見開始の申立てがあついて判断するものであるから、本件事 に精神上の障害により事理を弁識する能 り、成年後見人に就任したものの、その案のように、時効期間の満了の後に成年 力を欠く常況にある者に法定代理人がな いことという要件を導き、後者の要請か時点で既に時効期間の満了が切迫した場後見開始の審判がされた場合、時効期間 ら、少なくとも時効期間の満了前の申立合、成年後見人は現実的に困難な対応をの満了前 6 か月以内の期間に事理弁識能 てに基づき後見開始の審判がされたこと迫られることになる。成年後見の現在の力を欠く常況にあったと認められるかに という要件を導いている。成年後見開始実務上、大半の事件が申立てからおおよっいて更に事実認定をすることが必要と なる。本判決も、このような見地から本 の申立ての有無は客観的かっ画一的に判そ 2 、 3 か月以内で審判に至っていると 断し得る事実であり、成年後見開始の申みられる ( 最高裁事務総局家庭局「成年件を原審に差し戻している。 立てがあれば、相当期間内に審判がされ後見関係事件の概況」 ( 平成年 ) ほか 他に類推適用の可否が問題となる場 ることが想定され、事件記録が家事事件参照 ) が、民法 158 条 1 項の類推適用 手続法に基づく閲覧・謄写申請の対象との可否が、成年後見開始の申立てから審合 なり得ることからも、前記要件の解釈に判までの時間によって左右されること本判決は、民法 158 条 1 項の類推適 用を認める場合を明らかにしたものであ は、好ましくない。前記解釈によれば、 は合理性がある。関係者の行為規範とい るが、その場合を「少なくとも」時効期 う見地からみても、前記解釈は、時効をそのような事態も回避することができ、 援用しようとする者にとっては、時効期民法 158 条 .1 項が時効完成猶予期間を間の満了前の申立てに基づき後見開始の 間満了前に成年後見開始の申立てがある 6 か月とした趣旨が、後見人による財産審判がされたときとし、時効期間の満了 場合には、民法 158 条 1 項の類推適用等の調査事務に要する期間を考慮したも前の申立てに基づき後見開始の審判がさ により時効の完成が猶予される可能性がのと解されること ( 富井政章『民法原論』れたとき以外の場合を一切排除する趣旨 あることを予見すべきことになる一方、大正Ⅱ年合冊版 658 頁 ) とも整合すではないことを示唆している。そこで、 今後どのような場合に類推適用が認めら 3 事理弁識能力を欠く常況にある本人又はる。 れるかが問題となるところ、権利者の要 このように、本判決の示した解釈は、 その親族等においては、同項の類推適用 を受けたければ、時効期間の満了前 6 か民法 158 条 1 項の趣旨を踏まえて本人保護性及び時効を援用しようとする者の引 月以内に成年後見開始の申立てをすれば保護と関係者の利益等の調和を図り、類予見可能性の確保との調和の観点からすの よいこととなる点で、妥当なものといえ推適用の範囲を適切に画そうとするものると、①時効を援用しようとする者が本法 る。 とい、んよ、つ。 人の事理弁識能力を欠く常況の原因を作

3. 法律のひろば 2015年3月号

特集インターネットと人権侵害 インターネットにおける人権侵害の現況 図インターネット上の人権侵害情報による人権侵犯事件 ( 開始件数 ) 5 ) 、この両事案のうち、当機関がプロ際関係に関して事実らしく受け取られる 4 インターネット上の人権侵犯事 ハイダ等に対し削除要請を行ったものはおそれのある中傷的な書き込みが掲載さ 件の現状 136 件である。開始及び処理件数の最れているとの申告を受けて調査を開始し インターネット上の人権侵害情報によ近 5 年間の動向は、図、表 1 のとおりでた事案。 当該書き込みは、被害者の名誉及びプ る人権侵犯事件については、手続の開始ある ライバシーを著しく侵害するものと認め 件数及び処理件数ともにここ数年高い水 られたことから、当該掲示板を開設して 準で推移している。平成年中に新規に 5 インターネット上の人権侵犯事 いるプロバイダに対して削除を要請した 開始した事件数は 957 件で、前年に比 件の具体例 ところ、当該書き込みは削除されるに至 べて肥・ 6 パーセントの増加となった。 った。 当機関において最近処理を行ったイン このうち、プライバシ 1 侵害事案が 60 0 件、名誉毀損事案が 342 件であり ( 注タ 1 ネット上の人権侵害情報に関する人③インタ 1 ネット上の掲示板に、自己 権侵犯事件には、以下のような事の氏名や年齢とともに過去の風俗店にお ける勤務歴等が書き込まれているとの申 案がある。 年 件 5 ①インターネット上の掲示板告を受けて調査を開始した事案。 2 損理一 2 9 平毀処成 8 当該書き込みは、被害者のプライバシ に、被害者を特定できる記載をし 名件 1 を侵害すると認められたため、法務局 た上で、「職場で迷惑な存在であ 年 厚反 る」などと誹謗中傷する書き込みから当該掲示板上の削除依頼フォームに 害 る平 がされているとの申告を受けて調より掲示板管理者に対して削除を要請し よ 、削除されなかった。そこで法務局 査を開始した事案。 情 当該書き込みは、個人攻撃に及から本件掲示板のプロバイダに対して削 プ 害成 ち 侵 平 ぶものであり、被害者の名誉を毀除を要請したところ、当該書き込みは削 人 損すると認められたため、本件掲除されるに至った。 の年 数 示板の管理者に対して削除を要請④何者かが被害者になりすまし、イン 成 つ」 件 始 お平 開 したところ、当該書き込みは削除ターネットサイトに被害者の顔写真を掲 ろ ひ タ 載したほか、氏名、生年月日、住所の一 されるに至った。 年 の ン イ 2 ②インタ 1 ネット上の掲示板部、携帯電話番号、メ 1 ルアドレス及び法 平 に、被害者の氏名及び被害者の交被害者をかたった卑猥な内容の書き込み 7 表 ( 件 ) 957 671 658 636 786 391 8 355 227 平成 24 年 21 1 平成 22 年 平成 21 年 680

4. 法律のひろば 2015年3月号

特集インターネットと人権侵害 インターネットにおける人権侵害の現況 図インターネット上の人権侵害情報による人権侵犯事件 ( 開始件数 ) 5 ) 、この両事案のうち、当機関がプロ際関係に関して事実らしく受け取られる 4 インターネット上の人権侵犯事 バイダ等に対し削除要請を行ったものはおそれのある中傷的な書き込みが掲載さ 件の現状 136 件である。開始及び処理件数の最れているとの申告を受けて調査を開始し インターネット上の人権侵害情報によ近 5 年間の動向は、図、表 1 のとおりでた事案。 当該書き込みは、被害者の名誉及びプ る人権侵犯事件については、手続の開始ある。 ライバシーを著しく侵害するものと認め 件数及び処理件数ともにここ数年高い水 られたことから、当該掲示板を開設して 準で推移している。平成年中に新規に 5 インターネット上の人権侵犯事 いるプロバイダに対して削除を要請した 開始した事件数は 957 件で、前年に比 件の具体例 ところ、当該書き込みは削除されるに至 べて・ 6 パ 1 セントの増加となった。 った。 このうち、プライバシー侵害事案が 60 当機関において最近処理を行ったイン 0 件、名誉毀損事案が 342 件であり ( 注タ 1 ネット上の人権侵害情報に関する人③インタ 1 ネット上の掲示板に、自己 権侵犯事件には、以下のような事の氏名や年齢とともに過去の風俗店にお ける勤務歴等が書き込まれているとの申 案がある。 年 件 ①インターネット上の掲示板告を受けて調査を開始した事案。 2 損理 2 9 誉 当該書き込みは、被害者のプライバシ に、被害者を特定できる記載をし 平 名件 - っ ーを侵害すると認められたため、法務局 た上で、「職場で迷惑な存在であ 年 る」などと誹謗中傷する書き込みから当該掲示板上の削除依頼フォ 1 ムに 害 がされているとの申告を受けて調より掲示板管理者に対して削除を要請し よ たか、削除されなかった。そこで法務局 査を開始した事案。 当該書き込みは、個人攻撃に及から本件掲示板のプロバイダに対して削 プ 害成 ち侵平 ぶものであり、被害者の名誉を毀除を要請したところ、当該書き込みは削 人 損すると認められたため、本件掲除されるに至った。 の年 っ ) 上 2 数 示板の管理者に対して削除を要請④何者かが被害者になりすまし、イン 成 件 つ」 平 したところ、当該書き込みは削除ターネットサイトに被害者の顔写真を掲ば タ 載したほか、氏名、生年月日、住所の一ひ 年 されるに至った。 ン イ幻 ②インタ 1 ネット上の掲示板部、携帯電話番号、メールアドレス及び 平 に、被害者の氏名及び被害者の交被害者をかたった卑猥な内容の書き込み 7 表 ( 件 ) 1 2 1000 800 600 400 200 0 957 671 658 6 786 391 600 355 2 227 平成 24 年 21 1 平成 22 年 平成 21 年 680 758 4

5. 法律のひろば 2015年3月号

出した場合 ( 原因作出型 ) 、②時効を援期間の満了後になった理由が、例えば、年 5 月日民集巻 4 号 554 頁、最一 用しようとする者が故意に本人による権交通事故等で脳の機能に著しい障害を受 小判昭和年 7 月日民集巻 6 号 11 利行使ないし時効中断措置を妨害した場けて長期間入院を余儀なくされたという 13 頁参照 ) 。 合 ( 権利行使妨害型 ) 、③補助開始の申場合など、申立てが遅れたことを本人の民法 158 条 1 項の類推適用は、その引 立てをしたが、裁判所に促されて成年後責に帰すべき事由によるものとはいい難性質上一般条項である権利濫用・信義則の 見開始の申立てをした場合や、任意後見 、傷病の性質等から本人による権利行違反の主張に優先して判断されるもので 契約が締結されてその登記がされた後、使ないし時効中断措置が困難であることあるから、裁判所としては、前記民法 1 実体的には精神上の障害により事理弁識が明らかであるような場合 ( 重度傷病 58 条 1 項の類推適用の要件が備わって 能力を欠く常況に至った者について、更型 ) についてどう考えるかも問題であ いると認められれば、援用権者の関与や に任意後見監督人選任の申立てがされ、 る。民法 158 条 1 項の類推適用の枠組帰責性等について判断するまでもなく、 申立てを受けた家庭裁判所において、「本みとの関係で容易には肯定し難しいとこ類推適用を認めて時効の主張を排斥する 人の利益のため特に必要がある」と認めろと思われるが、傷病の性質や入院の事ことができる。他方、民法 158 条 1 項 て法定後見開始の審判をした場合 ( 任意実に客観・明白性が認められる場合にの類推適用の効果は、法定代理人の就任 後見契約に関する法律川条 1 項 ) など、 は、時効を援用しようとする者の予見可後 6 か月は時効が完成しないことであ 成年後見開始と異なる後見制度の開始の能性を不当に害するとはいい難く、本判 り、それが認められるためには、法定代 申立てが時効期間満了前にされ、成年後決が「後見開始の申立てがされた時期、理人がその就任から 6 か月以内に当該権 見開始の審判がされた場合 ( 異種申立状況等によっては」類推適用を認める余利を行使しあるいは時効中断措置を講ず 型 ) 等が考えられる。 地があると判示していることに鑑み、類ることを要するのに対し、権利濫用・信 他方、権利行使に関する協議・交渉中推適用の余地を認める考えもあり得よ義則違反については、このような明確な の場合 ( 協議・交渉型 ) について、現在う。 限定があるわけではない。そこで、民法 1 LO 8 1 民法 ( 債権関係 ) 改正の審議過程におい 条項の類推適用とは別に、権利 て、協議による時効の完成猶予の規定の ⑤時効援用の権利濫用・信義則違反と濫用・信義則違反の主張が採用される場 の関係 創設が検討されているところであるが、 合があるとすれば、同項の類推適用の要 同改正規定の施行前に同様の効果を民法時効の主張を排斥するアプローチとし件のいずれかを満たさず、あるいは効果 158 条 1 項の類推適用によって認めるては、他に、本件第一審及び原審が検討の点で権利者の保護に欠ける場合におい ことは難しいと思われる。 した時効援用の権利濫用ないし信義則違て、時効の主張が正義衡平に反するよう な相当限定された場合ということになる さらに、成年後見開始の申立てが時効反の構成も考えられる ( 最三小判昭和

6. 法律のひろば 2015年3月号

出した場合 ( 原因作出型 ) 、②時効を援期間の満了後になった理由が、例えば、年 5 月日民集巻 4 号 554 頁、最一 用しようとする者が故意に本人による権交通事故等で脳の機能に著しい障害を受 小判昭和年 7 月日民集巻 6 号 11 利行使ないし時効中断措置を妨害した場けて長期間入院を余儀なくされたという 13 頁参照 ) 。 合 ( 権利行使妨害型 ) 、③補助開始の申場合など、申立てが遅れたことを本人の民法 158 条 1 項の類推適用は、そのタ 立てをしたが、 裁判所に促されて成年後責に帰すべき事由によるものとはいい難性質上一般条項である権利濫用・信義則の 見開始の申立てをした場合や、任意後見 く、傷病の性質等から本人による権利行違反の主張に優先して判断されるもので法 契約が締結されてその登記がされた後、使ないし時効中断措置が困難であることあるから、裁判所としては、前記民法 1 実体的には精神上の障害により事理弁識が明らかであるような場合 ( 重度傷病 58 条 1 項の類推適用の要件が備わって 能力を欠く常況に至った者について、更型 ) についてどう考えるかも問題であ いると認められれば、援用権者の関与や に任意後見監督人選任の申立てがされ、 る。民法 158 条 1 項の類推適用の枠組帰責性等について判断するまでもなく、 申立てを受けた家庭裁判所において、「本みとの関係で容易には肯定し難しいとこ類推適用を認めて時効の主張を排斥する 人の利益のため特に必要がある」と認めろと思われるが、傷病の性質や入院の事ことができる。他方、民法 158 条 1 項 て法定後見開始の審判をした場合 ( 任意実に客観・明白性が認められる場合にの類推適用の効果は、法定代理人の就任 後見契約に関する法律川条 1 項 ) など、 は、時効を援用しようとする者の予見可後 6 か月は時効が完成しないことであ 成年後見開始と異なる後見制度の開始の能性を不当に害するとはいい難く、本判 り、それが認められるためには、法定代 申立てが時効期間満了前にされ、成年後決が「後見開始の申立てがされた時期、理人がその就任から 6 か月以内に当該権 見開始の審判がされた場合 ( 異種申立状況等によっては」類推適用を認める余利を行使しあるいは時効中断措置を講ず 型 ) 等が考えられる。 地があると判示していることに鑑み、類ることを要するのに対し、権利濫用・信 他方、権利行使に関する協議・交渉中推適用の余地を認める考えもあり得よ義則違反については、このような明確な の場合 ( 協議・交渉型 ) について、現在う。 限定があるわけではない。そこで、民法 民法 ( 債権関係 ) 改正の審議過程におい 158 条 1 項の類推適用とは別に、権利 て、協議による時効の完成猶予の規定の ⑤時効援用の権利濫用・信義則違反と濫用・信義則違反の主張が採用される場 の関係 創設が検討されているところであるが、 合があるとすれば、同項の類推適用の要 同改正規定の施行前に同様の効果を民法時効の主張を排斥するアプローチとし件のいずれかを満たさず、あるいは効果 158 条 1 項の類推適用によって認めるては、他に、本件第一審及び原審が検討の点で権利者の保護に欠ける場合におい ことは難しいと思われる。 した時効援用の権利濫用ないし信義則違て、時効の主張が正義衡平に反するよう さらに、成年後見開始の申立てが時効反の構成も考えられる ( 最三小判昭和 な相当限定された場合ということになる

7. 法律のひろば 2015年3月号

用しようとする者の予見可能性を不当に 6 か月以内の間にが精神上の障害によは、紛争の背景等も視野に入れて、本件硯 における本人の要保護性を具体的に検 奪うものとはいえないとして、上記成年り事理を弁識する能力を欠く常況にあっ 被後見人の保護を図っているものといえたと認められるかどうかなどの事実認定討した結果、類推適用を否定したもの で、本人保護の在り方をどう考えるかが引 る」と説示した。そして、前記趣旨を踏の必要から、原審に差し戻した。 判断に影響しているとみられる。 まえ、民法 158 条 1 項の類推適用の可 この点、本判決は、成年後見開始の審法 第一審判決、原判決との比較 能性について、「上記の者についてその 判を受けることとなった本人について、 後に後見開始の審判がされた場合におい 本件第一審判決及び原判決は、ともに て、民法 158 条 1 項の類推適用を認め民法 158 条 1 項の類推適用を否定した一般に本人の意思や監護状況等は必ずし し難いことを踏ま も確実なものとはい、 たとしても、時効を援用しようとする者が、その理由は異なっている。第一審は、 の予見可能性を不当に奪うものとはいえ民法 158 条 1 項の文理を基に、成年後え、個別の意思や監護状況を問題にする ないときもあり得るところであり、 ( 後見開始の審判がされていない者についてまでもなく、まさに後見的な見地から、 見開始の ) 申立てがされた時期、状況等当然に同項を類推適用することは認めらその財産を維持確保することが本人保護 につながると考えているように思われ によっては、同項の類推適用を認める余れす、平成間年判決は本件と事案を異に 地があるというべきである」と説示しすることを理由に類推適用を否定している。なお、本人の意思という観点からは、 る。これに対し、原審は、一般論として被相続人死亡後の遺留分放棄の意思表示 た。その上で、同項の類推適用の要件、 効果に関し、「時効の期間の満了前 6 箇は類推適用の可能性を肯定した上で、本の成否も問題となり得るが、相続開始後 月以内の間に精神上の障害により事理を件においては、 >< が < 死亡以前から及の遺留分放棄については家庭裁判所の許 弁識する能力を欠く常況にある者に法定びその家族と同居して身上監護を受け、可 ( 民法 1043 条 1 項 ) を要しないと これに不満を訴えることもなく、遺留分される分、その意思表示の認定には慎重 代理人がない場合において、少なくと も、時効の期間の満了前の申立てに基づ減殺請求権を行使する意向を周囲に伝えを要し、本件でもそのような主張はされ き後見開始の審判がされたときは、民法ることもなかったことから、 >•< の保護にていない 158 条 1 項の類推適用により、法定代欠けることがないことを理由に類推適用 理人が就職した時から 6 箇月を経過するを否定したものである ( 時効援用の権利 ③本判決の解釈とその合理性等 までの間は、その者に対して、時効は、濫用の該当性の有無については、本件第本判決は、民法 158 条 1 項の趣旨 完成しないと解するのが相当である」と一審、原審ともに、が成年後見開始審を、精神上の障害により事理弁識能力を の判断を示した。ただし、本件について判を不当に遅らせたとは認められないこ欠く常況にある者の保護と時効を援用し は、前記要件に照らし、時効期間満了前となどを理由に否定している。 ) 。原審ようとする者の予見可能性という二つの

8. 法律のひろば 2015年3月号

子 ( >< と前夫との子 ) 、二女 0 、養子 ( の長男でもある ) 及び二男の 6 第回 判例研究 人である。及びは、平成幻年 8 月 5 日 ( < の相続開始から 1 年経過前 ) 、引 ◇精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者に法 につき成年後見開始の申立てをし、同申の 定代理人がない場合と民法 158 条 1 項の類推適用の可否 ( 時効 立てを受けた家庭裁判所は、平成年 4 法 の期間の満了前の申立てに基づき後見開始の審判がされた場合 月日 ( < の相続開始から 1 年経過後 ) 、 に、民法 158 条 1 項の類推適用を認めた事例 ) 成年後見を開始して Z 弁護士を成年後見 ( 一財 ) 日本法律家協会 人に選任する旨の審判をし、同審判は確 民事法判例研究会 定した。 Z 弁護士は、同月四日、の成 年後見人として、に対し、 >< の遺留分 上の障害により事理を弁識する能力を欠 ( 4 分の 1 ) につき遺留分減殺請求権を 精神上の障害により事理を弁識する く常況にある者に法定代理人がない場合行使する旨の意思表示をした。 能力を欠く常況にある者に法定代理 において、少なくとも、時効の期間の満本件は、前記事実関係の下で、 >< ( 原 人がない場合と民法 158 条 1 項の 了前の申立てに基づき後見開始の審判が告・控訴人・上告人 ) が、 ( 被告・被 類推適用の可否 ( 時効の期間の満了 されたときは、民法 158 条 1 項の類推控訴人・被上告人 ) に対し、遺留分減殺 前の申立てに基づき後見開始の審判 がされた場合に、民法 158 条 1 項適用により、法定代理人が就職した時か請求権を行使したことにより不動産の共 ら 6 か月を経過するまでの間は、その者有持分及び預金債権を取得し、一部の不 の類推適用を認めた事例 ) 最高裁第一一小法廷平成年 3 月日判決 ( 平成 動産についてはの処分により持分を侵 に対して時効は完成しない。 年 ( 受 ) 第 1420 号遺留分減殺請求事件 ) 害されて損害を受けたと主張して、所有 ( 判時 2224 号頁、判タ 1402 号療頁、 金判 1447 号頁、民集田巻 3 号 229 頁 ) 権の一部移転登記手続並びに預金相当額 ・事実のモデル 万 3181 円、損害賠償金 万 東京高等裁判所判事関口剛弘 < は、平成四年 1 月 1 日、その遺産の 7899 円及び遅延損害金の支払を求め 全てを長男であるに相続させる旨の自る事案であり、は遺留分減殺請求権の 筆証書遺言 ( 本件遺言 ) をした後、平成 1 年の時効消滅 ( 民法 1042 条前段 ) ・判決要旨 跚年川月日に死亡した。 < の法定相続を主張して争った ( なお、、は、別 時効の期間の満了前 6 か月以内に精神人は、妻 ( 大正 8 年生 ) 、長男、養途、に対して遺言無効等確認の訴えを

9. 法律のひろば 2015年3月号

用しようとする者の予見可能性を不当に 6 か月以内の間にが精神上の障害によは、紛争の背景等も視野に入れて、本件硯 における >•< 本人の要保護性を具体的に検 奪うものとはいえないとして、上記成年り事理を弁識する能力を欠く常況にあっ 被後見人の保護を図っているものといえたと認められるかどうかなどの事実認定討した結果、類推適用を否定したもの で、本人保護の在り方をどう考えるかが引 る」と説示した。そして、前記趣旨を踏の必要から、原審に差し戻した。 ひ の 判断に影響しているとみられる。 まえ、民法 158 条 1 項の類推適用の可 律 この点、本判決は、成年後見開始の審法 第一審判決、原判決との比較 能性について、「上記の者についてその 判を受けることとなった本人について、 後に後見開始の審判がされた場合におい 本件第一審判決及び原判決は、ともに て、民法 158 条 1 項の類推適用を認め民法 158 条 1 項の類推適用を否定した一般に本人の意思や監護状況等は必ずし し難いことを踏ま たとしても、時効を援用しようとする者が、その理由は異なっている。第一審は、 も確実なものとはい、 の予見可能性を不当に奪うものとはいえ民法 158 条 1 項の文理を基に、成年後え、個別の意思や監護状況を問題にする ないときもあり得るところであり、 ( 後見開始の審判がされていない者についてまでもなく、まさに後見的な見地から、 見開始の ) 申立てがされた時期、状況等当然に同項を類推適用することは認めらその財産を維持確保することが本人保護 につながると考えているように思われ によっては、同項の類推適用を認める余れず、平成川年判決は本件と事案を異に 地があるというべきである」と説示しすることを理由に類推適用を否定している。なお、本人の意思という観点からは、 た。その上で、同項の類推適用の要件、 る。これに対し、原審は、一般論として被相続人死亡後の遺留分放棄の意思表示 効果に関し、「時効の期間の満了前 6 箇は類推適用の可能性を肯定した上で、本の成否も問題となり得るが、相続開始後 月以内の間に精神上の障害により事理を件においては、 >< が < 死亡以前から及の遺留分放棄については家庭裁判所の許 弁識する能力を欠く常況にある者に法定びその家族と同居して身上監護を受け、可 ( 民法 1043 条 1 項 ) を要しないと 代理人がない場合において、少なくと これに不満を訴えることもなく、遺留分される分、その意思表示の認定には慎重 も、時効の期間の満了前の申立てに基づ減殺請求権を行使する意向を周囲に伝えを要し、本件でもそのような主張はされ き後見開始の審判がされたときは、民法ることもなかったことから、の保護にていない。 158 条 1 項の類推適用により、法定代欠けることがないことを理由に類推適用 理人が就職した時から 6 箇月を経過するを否定したものである ( 時効援用の権利 ③本判決の解釈とその合理性等 までの間は、その者に対して、時効は、 濫用の該当性の有無については、本件第本判決は、民法 158 条 1 項の趣旨 完成しないと解するのが相当である」と一審、原審ともに、 >* が成年後見開始審を、精神上の障害により事理弁識能力を の判断を示した。ただし、本件について判を不当に遅らせたとは認められないこ欠く常況にある者の保護と時効を援用し は、前記要件に照らし、時効期間満了前となどを理由に否定している。 ) 。原審ようとする者の予見可能性という二つの

10. 法律のひろば 2015年3月号

子 ( >< と前夫との子 ) 、二女 0 、養子 ( の長男でもある ) 及び二男の 6 第回 日判例研究 人である。及びは、平成幻年 8 月 5 日 ( < の相続開始から 1 年経過前 ) 、引 ◇精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者に法 につき成年後見開始の申立てをし、同申の 定代理人がない場合と民法 158 条 1 項の類推適用の可否 ( 時効 立てを受けた家庭裁判所は、平成年 4 法 の期間の満了前の申立てに基づき後見開始の審判がされた場合 月日 ( < の相続開始から 1 年経過後 ) 、 に、民法 158 条 1 項の類推適用を認めた事例 ) 成年後見を開始して Z 弁護士を成年後見 ( 一財 ) 日本法律家協会 人に選任する旨の審判をし、同審判は確 民事法判例研究会 定した。 Z 弁護士は、同月四日、 >< の成 年後見人として、に対し、の遺留分 上の障害により事理を弁識する能力を欠 ( 4 分の 1 ) につき遺留分減殺請求権を 精神上の障害により事理を弁識する く常況にある者に法定代理人がない場合行使する旨の意思表示をした。 能力を欠く常況にある者に法定代理 において、少なくとも、時効の期間の満本件は、前記事実関係の下で、 ( 原 人がない場合と民法 158 条 1 項の 了前の申立てに基づき後見開始の審判が告・控訴人・上告人 ) が、 ( 被告・被 類推適用の可否 ( 時効の期間の満了 されたときは、民法 158 条 1 項の類推控訴人・被上告人 ) に対し、遺留分減殺 前の申立てに基づき後見開始の審判 がされた場合に、民法 158 条 1 項適用により、法定代理人が就職した時か請求権を行使したことにより不動産の共 ら 6 か月を経過するまでの間は、その者有持分及び預金債権を取得し、一部の不 の類推適用を認めた事例 ) 最高裁第一一小法廷平成年 3 月日判決 ( 平成 動産についてはの処分により持分を侵 に対して時効は完成しない。 年 ( 受 ) 第 1420 号遺留分減殺請求事件 ) 害されて損害を受けたと主張して、所有 ( 判時 2224 号頁、判タ 1402 号頁、 金判 1447 号頁、民集巻 3 号 229 頁 ) 権の一部移転登記手続並びに預金相当額 ・事実のモデル 万 3181 円、損害賠償金 4697 万 東京高等裁判所判事関口剛弘 < は、平成四年 1 月 1 日、その遺産の 7899 円及び遅延損害金の支払を求め 全てを長男であるに相続させる旨の自る事案であり、は遺留分減殺請求権の 筆証書遺言 ( 本件遺言 ) をした後、平成 1 年の時効消滅 ( 民法 1042 条前段 ) ・判決要旨 年川月日に死亡した。 < の法定相続を主張して争った ( なお、、は、別 時効の期間の満了前 6 か月以内に精神人は、妻 >< ( 大正 8 年生 ) 、長男、養途、に対して遺一一一口無効等確認の訴えを