マネロン - みる会図書館


検索対象: 法律のひろば 2015年4月号
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1. 法律のひろば 2015年4月号

不名誉なことでもある な取引を通じて、犯罪組織又はテロ集団こととしている。なお、国際テロリスト 8 実際に、外国銀行がリスク管理を強化 によるマネロン・テロ資金供与が横行すによる国際的な財産の移動については、 し、コルレス契約の見直しを行った事例ることになりかねない。 すでに外為法で規制されている。改正テ もあり、外国銀行のマネロン・テロ資金 こうした一一つの大きな問題が生じ得るロ資金処罰法は法務省所管であり、すで 対策に係る関心は非常に高まっている ため、早急に法整備を進め、こうした事に規制されていた「テロ行為に対する資律 法 これを最も端的に表すこととなった契機態を防止する必要があるとの認識が、 2 金支援」に加え、「アジト提供等の物質 が、最近の米国による制裁金の支払命令 014 年のマネロン・テロ資金対策関連的支援」や「テロ協力者による間接的な である。マネロン・テロ資金に関するも 3 法の制定・改正に至った背景である。資金提供・収集」等を犯罪化するもので のとしては、制裁対象国に対する不正送 ある 金等があり、パリバに至っては 1 昨年の臨時国会は、Ⅱ月日に内閣総 四マネロン・テロ資金対策関 兆円にのばる制裁金を科されている。邦 理大臣が衆議院の解散を表明し、同月幻 連 3 法 銀を含む銀行セクターが多額の制裁金を 日に解散となったが、こうした中でマネ 科されていることに鑑みれば、各国銀行 2014 年秋の臨時国会において、「犯 ロン・テロ資金対策関連 3 法は、極めて は、取引相手国によっては、実行した取罪収益移転防止法改正法」 ( 以下「改正高いプライオリティをもって審議が進め 引が不正取引とみなされ、制裁金の支払犯収法」という。 ) 、「国際テロリストのられた。改正テロ資金処罰法は、 201 等によって自行の経営に影響が及ぶ可能財産凍結法」 ( 以下「テロリスト財産凍 3 年の通常国会に提出・継続審議されて 性があるため、マネロン・テロ資金供与結法」という。 ) 、「テロ資金提供処罰法 いたものであるが、今般の臨時国会解散 に関する厳格な管理を行う必要があると改正法」 ( 以下「改正テロ資金処罰法」表明前のⅡ月Ⅱ日に可決・成立した。ま の認識を高めている という。 ) のマネロン・テロ資金対策関た、改正犯収法及びテロリスト財産凍結 また、法の未整備に伴い生じ得る事象連 3 法が成立した。 法も、 2014 年Ⅱ月四日、参議院本会 の二つ目として、国際的な連携が必要な改正犯収法は国家公安委員会・警察庁議に付され、可決・成立した。これら 3 マネロン・テロ資金対策において、制度所管であり、顧客管理の強化に係る措置法の成立は、マネロン・テロ資金対策が が勧告を満たしていないことにを講じることとしている。テロリスト財いかに重要であると認識されているかを より、我が国が抜け穴として認識され、産凍結法も国家公安委員会・警察庁の所反映した結果であると思われる。 実際にマネロン・テロ資金供与に利用さ管であり、国際テロリストとして国連安 れる可能性があることを挙げることがで保理決議で指定された者について、国内 きる。すなわち、我が国を経由した様々 における規制対象財産の移動を禁止する

2. 法律のひろば 2015年4月号

国・地域及び二つの地域機関が加盟して マネー・ローンダリング及び おり ( 注 2 ) 、事務局は、フランスのパ にある経済協力開発機構 (OQOQ) 内 テロ資金供与対策関連法の に所在している。は、各国が遵ひ 制定・改正の背景 守すべき国際基準である勧告を律 法 財務省国際局国際機構課兼調査課企画官大澤裕次策定し、加盟国と < 事務局が審査 団を組成して、当該勧告の遵守状況を相 互に審査している。また、加盟 備 一はじめに ニ金融活動作業部会 か国・地域及び 2 地域機関以外の国に このところ世界的にテロリズムの動き ついても、型地域体 (FATF-style 設立経緯 るが活発化しているように思われる。こう regional bodies< FSRBs >) に加盟し、 した中、我が国では、昨秋の臨時国会 ( 会金融活動作業部会 (Financial Action 当該地域体べースで勧告の遵守 期【 2014 年 9 月四日 5 Ⅱ月幻日 ) に TaskForce 【以下「」という。 ) 状況に係る審査を受けている。こうした おいて、マネー・ローンダリング及びテは、 19 8 9 年のアルシュ・サミット経 < e 型地域体は、世界に八つあり ( 注 ロ資金供与対策 ( 以下、併せて「マネロ済宣言を受け、マネロン対策の国際基準 3 ) 、これら地域体の加盟国を含めると、 、ノ ン・テロ資金対策ーという。 ) に関する作りを行うために設立された政府間の会実に 190 を超える国・地域において、 3 法 ( 以下「マネロン・テロ資金対策関合である。当初は、麻薬等に関するマネ勧告が適用されていることにな ・ / 連 3 法」という。 ) が成立し ( 注 1 ) 、現ロン対策が中心となっていたが、 200 る。 一在、主務官庁が施行に向けた政省令の策 1 年の米国同時多発テロ事件を契機に、 テロ資金対策にも取り組んでいるほか、 ロ定作業を鋭意進めている。本稿では、マ ネロン・テロ資金対策の国際基準作りに 2012 年 2 月以降、国連安保理決議に 、不おいて中心的な役割を担っている金融活基づく大量破壊兵器の拡散に関する資金 マ動作業部会について紹介するとともに、供与対策等も手がけている。我が国は、 金この度のマネロン・テロ資金対策関連 3 の一員として、設立当初からのメン ーであり、財務省がに関する 資法の制定・改正の背景について解説す ロる。なお、本稿中、意見にわたる部分は国内窓口となっている。 一ア . 筆者個人の見解である。 現在、 < e には、 7 を含むの vFATF のロゴ FATF ( 提供 ) FATF 事務局

3. 法律のひろば 2015年4月号

特集テロ資金・マネーローンダリングをめぐる法整備 マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策関連法の制定・改正の背景 れ得る予防措置の分野で顧客管理措置 定された対策の実施に係る法案は、過 五日本に関する LL<I--LL 声明 やその他の義務が不十分である」 去三度にわたり廃案になるなど、これ ( 2014 年 6 月日公表 ) => 改正犯収法と同法に係る政省令によ までに様々な議論があり、慎重な検討 先に触れた 2014 年 6 月の って対応する。 が行われている 声明では、最も重要な不備事項として、③「テロリスト資産の凍結メカニズム このように、 4 点の指摘事項のうち 3 次の 4 点を挙げている。 が不完全である」 点は、今般のマネロン・テロ資金対策関 ①「テロ資金供与の犯罪化が不完全で => 従来の外為法に加え、テロリスト財連 3 法の成立と今後の関連政省令の施行 ある」 産凍結法によって対応する により対処できることになる。 => 改正テロ資金処罰法によって対応す④「パレルモ条約の締結と完全な実施は、 2 月、 6 月、川月の年 3 回、全体会 る。 かできていない 合を開いており、我が国は、現在、第三 ②「金融及び非金融セクターに適用さ => パレルモ条約とは、組織的犯罪対策次相互審査の結果に対するフォロ 1 アッ を規定した条約 ( 国際的な組織犯罪のプ・プロセスの途上にある。こうした 中、マネロン・テロ資金対策関連 3 法が 防止に関する国際連合条約 ) であり、 我が国では 2003 年に当該条約の締成立し、我が国のマネロン・テロ資金対 結について国会で承認された。しかし策は、 2008 年の対日相互審査以降の ながら、当該条約に規定された対策を過去 6 年で、最も大きく前進した。今後、 国内で実施するための担保法が未成立開催される全体会合において、 となっているため、今なお条約締結に マネロン・テロ資金対策関連 3 法の成立 は至っていない。世界で 180 か国強や政省令の内容をもって、勧告の大部分 が締結している条約であるため、これを遵守できている旨をに説明す までの国会等における議論を適切に踏るとともに、パレルモ条約国内担保法の まえつつ、国内担保法の成立を図って成立に向けて努力し、一日も早く、第三 いく必要がある。また、当該条約の締次相互審査から卒業できるよう、道筋を 結は、の観点だけではなく、 けていきたい。 人身取引規制や腐敗防止等の国際的要 請といった観点からも必要なものとさ れている。しかし、パレルモ条約に規 vFATF 全体会合の様子 ( 於 OECD) ( 提供 ) FATF 事務局 9 ・法律のひろば 2015.4

4. 法律のひろば 2015年4月号

特集テロ資金・マネーローンダリングをめぐる法整備 マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策関連法の制定・改正の背景 ④さらに 2 0 0 3 年に << か鬨の 伴う犯罪収益のマネロンについても対象 2 国際基準 (LL<I-LL 勧告 ) の策 とするよう改訂された。 勧告を改訂し、従前は金融機関等に課さ 定と我が国の対応 我が国においては、前記の勧告改訂等れていた本人確認あるいは疑わしい取引 先述のように、 1989 年にを踏まえ、 2000 年に「組織的な犯罪の報告等に係る義務を、不動産業者・貴 の創設が合意されて以降、次のとおりの処罰及び犯罪収益の規制等に関する法金属商・宝石商等の多額の資金を取り扱 、つ「非金融業者」や士業等の「職業専門 勧告が公表・追加・改訂され、我律 ( 組織的犯罪処罰法 ) 」を施行し、前 が国もこれに対応する形で法整備を進め提犯罪を薬物犯罪に限らず重大犯罪に拡家」にも適用することとした。また、 2 てきた。 004 年には、テロ資金対策に、国境を 大した。 1990 年に薬物犯罪を前提犯罪と その後、 2001 年 9 月Ⅱ日の米国越える資金の物理的移転を防止するため するマネロンの対策強化のために、金融同時多発テロを受け、は「 8 のの措置に関する項目が追加され、「 9 の 機関による顧客の本人確認や疑わしい取特別勧告」 ( テロ資金に関する特別勧告」となった ( 表 1 ) 。 引の当局宛て報告等に関する「の勧特別勧告 ) を追加的に採択し、テロ資金我が国においては、 2007 年に、「組 告」がによって策定された。 供与の犯罪化や、テロリストに関わる資織的犯罪処罰法」と「本人確認法」を母 体とした「犯罪による収益の移転防止に 前記の勧告策定や、それに先立っ 19 産の凍結措置等が設けられた。 88 年の「麻薬及び向精神薬の不正取引 我が国においては、 2002 年に、「テ関する法律 ( 犯罪収益移転防止法 ) 」 ( 以 の防止に関する国際連合条約 ( 麻薬新条ロリズムに対する資金供与の防止に関す下「犯収法」という。 ) を制定し、本人 約 ) 」に対応し、我が国ではまず「国際る国際条約 ( テロ資金供与防止条約 ) 」確認や疑わしい取引の届出等を非金融機 的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を締結し、その国内担保法として、「公関にも適用することとなった。また、犯 を助長する行為等の防止を図るための麻衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の収法の一部施行を機に、資金情報機関 薬及び向精神薬取締法の特例等に関する提供等の処罰に関する法律 ( テロ資金提 (FinanciaI lntelligence Unit 〈 FIU 〉 ) が 法律 ( 麻薬特例法 ) 」という形で法整備供処罰法 ) , を制定したが、これは前記金融庁から国家公安委員会・警察庁に移 がなされた。同法では、勧告にの「特別勧告」と歩調を合わせたもので管され、マネロン対策に係る情報収集の 沿って、薬物犯罪を前提犯罪とするマネある。また、同条約を実施し、併せて勧機能は、国家公安委員会・警察庁が担、つ ロン罪を創設するとともに、薬物犯罪に告における本人確認等の措置を法制化すこととなった。 絡む収益の没収等の措置が定められた。 るために、「金融機関等による顧客等の ②こうした中、 1996 年に本人確認等に関する法律 ( 本人確認法 ) 」 勧告が、薬物犯罪のみならず重大犯罪にを制定した。 5 ・法律のひろば 2015.4

5. 法律のひろば 2015年4月号

特集テロ資金・マネーローンダリングをめぐる法整備 犯罪収益移転防止法改正の概要 ング対策等を講ずる観点から行われた。この年の改 or.j news/conference/2014 、 09 、 1823580. h (l) から 四でも記載したとおり、顔写真のない本 入手可能である。 正について、の指摘事項に対応したものであ 人確認書類の取扱いや法人の実質的支配 ることをに対し、繰り返し説明したものの、 者の確認等について政令や規則の改正に〇平野全国銀行協会会長 ( 三菱東京銀行頭取 ) の 国際的なマネー・ローンダリング対策の強化が求めら 定例記者会見 ( 平成年 9 月毬日 ) より対応すべきものもある。その改正の れる中、厳しいフォローアップが行われ、結果として、 「仮にハイリスク国入りをすれば、大きく二つの影響 検討に当たっては、マネー・ロ 1 ンダリ が出てくる。まず第一は、銀行自身の活動が制約され 勧告で求められている顧客管理等の事項が法 ング対策等の実効性を確保しつつ、事業 る。例えば、コルレス銀行からコルレス契約の解除を 令に明記されていないなどの指摘を受けている 者や顧客に過度の負担とならないよう、 求められる。実際、マネロンに伴う各国当局の対応は ( 5 ) マネー・ローンダリング対策等に関する懇談会報 関係者の意見を聴取しつつ進める必要が 非常に厳しく、コルレス業務を縮小する国際金融機関 ある 告書については、警察庁ホームペ 1 ジ (http://www. は最近多い。そういう対象に日本の金融機関がなる可 npa ・ go ・、 sosikihanzai 、 jafic 、 kondankai / data 、 能性がある。加えて、海外の機関投資家からの取引が houkokusyoh2607. pdf) から入手可能である。 2 国際社会に対する説明 圧縮される。さらに、海外の監督当局から日本の銀行 ( 6 ) 平成年 6 月のサミットにおいて合意された 「法人及び法的取極めの悪用防止に向けた行動計 本改正の経緯に鑑みれば、改正法の内の海外事業に対する監視の目がこれまで以上に厳しく 画原則」においても、「ナショナル・リスク・アセス なることが考えられる。第二は、より懸念しているが 容等、我が国の取組について、 メント」として、国がマネー・ローンダリングのリス 端的に言えば海外送金が遅れるということである。仮 をはじめとする国際社会に対し、十分に / ィリスク国へ クを評価する仕組みの構築が求められている。これを に、日本がハイリスク国入りすれば、、 説明を行っていく必要がある 受けて、警察庁を中心とした関係省庁により、同年 の送金についてはデューデリジェンスをしつかりやら 月には「犯罪による収益の移転の危険性の程度に関 なければならないというのが、まさにマネロンの本質 である。それを各国の金融機関が始めた場合には、日 する評価書」が作成されている。ただし、改正法によ り作成されることとされている「犯罪収益移転危険度 本のお客さまは、ドル建てであろうが、ユーロ建てで 調査書」は、この「犯罪による収益の移転の危険性の あろうが、送金がおそらく遅れる。つまり、現在であ 程度に関する評価書」とは異なるものであり、今後、 れば翌日着くものがおそらく翌日には着かなくなる。 4 「犯罪による収益の移転の危険性の程度に関する評価 まさにご指摘のような、顧客利便性が大きく損なわれ 5 書」を踏まえつつ、作成されることとなる。 るような事態もあり得ると思っている。」 ( 4 ) 平成年の改正は、年の対日相互審査 ( 7 ) 法 4 条は、法 2 条 2 項肥号に掲げる「弁護士 ( 外ろ の 国法事務弁護士を含む ) 又は弁護士法人」を「弁護士 における指摘事項を踏まえるとともに、国内のマネ 律 法 等」と定義している。 ・ローンダリング事犯の実態を考慮しつつ、我が国 としてバランスのとれた実効あるマネー・ローンダリ ( おざき・りようた ) 四 ( 1 ) 改正法の条文は、警察庁ホームペ 1 ジ (http:// www.npa.g0.jp/sY0kanhourei/kaisei/houritsu/261127 2/honbunriyuu.pdf) から入手可能である。 ( 2 ) < e 新勧告については、財務省のホームペー ジ ( http 】 7 /www. mof. go.jp /international— policy 、 conven ま n/ ミ早 40 ー 240216. h ョ 1) から入手可能で ある ( 3 ) 例えば全国銀行協会会長の記者会見では次のよう なコメントがなされている。なお、全文については全 国銀行協会のホームページ (http ://www.zenginkyo. 0

6. 法律のひろば 2015年4月号

特集テロ資金・マネーローンダリングをめぐる法整備 テロ資金の提供等の刑事規制 金抑制措置の必要性は、国際社会では、 既に当然の前提とされている ( 注 9 ) 。 そうした国際的な要請は、まず、国連 の、テロリズムに対する資金供与の防止 に関する国際条約 ( 年採択、 0 0 2 年発効 ) ( 注四として示された。 法政大学教授今井猛嘉 日本も、同条約の締約国である ( 200 の直接的な協力者に資金及びその他の利 2 年締結 ) 。そこで日本は、同条約の国 一はじめにー問題解決に向け 益を提供する者の行為 ( より間接的な協内担保法として、公衆等脅迫目的の犯罪 た国内外での取組の経緯 カ ) をも処罰する必要がある ( 注 6 ) 。第行為のための資金の提供等の処罰に関す に、マネー・ロンダリング対策 ( 注 7 ) る法律 ( 2002 年 ) ( 注Ⅱ ) 、金融機関の テロ資金 ( 注 1 ) を提供する行為を処罰一一 することは、テロの未然防止の観点かとしては、テロ資金提供行為の予防も、顧客等の本人確認に関する法律 ( 200 ら、極めて重要である。テロ行為を企図その重要課題であることを確認した上 2 年 ) を制定し、外国為替及び外国貿易 している者 ( 注 2 ) に対して、これを援助で、国際的に要請されている水準に沿っ法の一部を改正した ( 2002 年 国連と並んで、各国のにつき、 する目的等で資金を提供する者 ( 注 3 ) た対策を、法令に基づき、厳格に行い得 は、 ( 自己又は第三者による ) 犯罪からるように整備する必要がある。 <*-a と国際水準に合致した整備を要請している 得られた資金や、これに由来する資産しては、テロ資金として提供されるべきのが、金融活動作業部会 ( 注 リである。 < は、マネ 1 ・ロン を、その獲得経緯を秘して、金融機関に資産に係る疑わしい取引 ( 注 8 ) を見いだ おいて管理していることも多い。こうしし、これを監視して停止させることが必ダリングに対する国際的な対応につき、 た資産は、その「汚れた」獲得経緯 ( 出要である。そして第三に、マネ 1 ・ロン関係国の意向を集約しつつ政策提言を行 所 ) を、金融取引を通じて洗浄することダリングの対象と疑われる資産が発覚すってきたが、 2001 年の 9 ・Ⅱ同時多 により ( 注 4 ) 、テロ資金として提供されれば、これを凍結し、テロ資金としての発テロの発生を受けて、テロ資金の収 やすくなる。そこで、テロの予防効果を利用可能性を剥奪することが必要であ集、提供行為の予防措置、資金となるべ 高めるためには、第一に、テロ資金提供る。この三つの措置が有機的に連動しき実体 (substance) に係るロンダリン引 行為 ( 注 5 ) として、テロ企図者に対して、 て、はじめて、テロ防止の実効性も上がグ ( 注リ防止措置についても、積極的なの 意見表明を行っている。具体的には、法 直接、テロに利用し得る資金を提供するるのである。 者の行為だけを想定するのではなく、こ こうした、有機的に連動すべきテロ資は、 ( 2003 年に再改訂された ) テロ資金の提供等の刑事規制 ー関連する国内法の改正と国際的視点

7. 法律のひろば 2015年4月号

特集テロ資金・マネーローンダリングをめぐる法整備 マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策関連法の制定・改正の背景 国内法整備が必要かを含め、順次、 2 法令整備の必要性 三我が国の状況 勧告への対応を進めてきた。例え ば、犯収法については、 2011 年に法第三次相互審査において法制上の課題 1 年の対日相互審査 改正を行った。しかし、は、勧として指摘された主要な項目は、「顧客 我が国の場合は、 2008 年に告に定める義務を金融機関に対する監督管理の強化、「テロリストの資産凍結」、 の第三次勧告に基づく相互審査 ( 以下指針等ではなく、強制力のある法令に明「テロ行為への物質的支援の犯罪化」等 に大別することができる。仮にこれらの 「第三次相互審査ーという。 ) の結果に係記することを求め、依然として義務の一 部が我が国の法令で明記されていないこ課題について法整備がなされない場合に る報告書が公表された ( 注 5 ) 。我が国は、 となどが指摘された。このため、警察庁生じ得る事象として、先に述べたよう 勧告の内容や評価について精査するとと に、我が国がマネロン・テロ資金対策の もに、関係省庁で連携をとり、いかなるでは、 2013 年 6 月から有識者懇談会 ハイリスク国として国名公表リストに掲 を開催して検討を行い、 2 014 年 7 月に報告書を取載されるリスクを指摘できる。最近の c-) し オ 欠れ ア 一フ 有 りまとめた ( 注 6 ) 。 等でも、勧告の実施に係るコ を 思慮 シ ス ア 意考 このよ、つに、我が国としミットメントが繰り返し確認されている シ 欠ト 的が ン 国 的ス ク ダ ク て、勧告の遵守に中、グレイ・リストに掲載された場合、 略 ト政ス ス スのリ ン リ ス 加盟国には取引相手国がハイリ 向けて努力を重ねてきた イ リへる イ イ がレ ク が、結果的に、 2014 年スク国であることを念頭に置いた対処が ン ク取起一るグ ラ る ク マ は、り イ 6 月には、我が国求められるため、我が国金融機関が海外 いか , ンて一 に表ブる陥トャしダト ダスラナニ国に対し、第三次相互審査のの金融機関と締結しているコルレス契約 あ欠スミ バカ当 ン丿ゴ ン ガ 、フ該報告書において指摘されたが解除されずとも、個々の海外送金につ 対 し ウ・アナア な連クドコな ア いて追加資料の提出を求められるなど審 , ア衂不備事項の改善が進んでい 供合 レ 金会国 象て、ラク的て也グ 地ガ地ギ乃ないとして懸念を示すとと査が厳格化し、結果的に送金が遅延する 資 LL 4 せらブエ治国せ東 政る見国 鮮見か ( 中中域一一テもに、必要な法案の成立を等の深刻な事態が生じる可能性も考えら 適朝をと域アてれを象 地太一 月ヒ けさ展対 の冐展こ地リ カカ ン 2 含めたマネロン対策の不備れる。また、 (-) 主要国であり、ば 工向励進丿一 ロ年置、進る・ 措ンない国ジ に奨な タフ刈ジハ州への迅速な対処を促す声明の設立メンバ 1 である我が国がひ 善が分ニ マ田抗ラ著てき アアアん欧 対イ顕しべア改組十 ( モ ( イ からハイリスク国に指定され、グレ律 を公表するに至った ( 注 7 ) 。 如る 取 イ・リストに名を連ねることは、極めて 7 表

8. 法律のひろば 2015年4月号

された。 摘を受けている。報告書では、があるとしており、我が国の法令に の指摘に対応する制度を整備すること に関する規定が置かれていないこと 4 取引担当者への権限の委任の確認 は、法人顧客や株主等及び特定事業者に について指摘している。このため、報告 規則Ⅱ条では、法人顧客を代理しようとって非常に大きな負担となる一方、法書では、の指摘に対応するた引 としている者が代理権などの権限を与え人の透明性の確保が世界的な課題であるめ、に関する規定を整備するこの られていることの確認方法について、社 とし、の指摘に沿った制度とすとが必要であるが、特定事業者において法 員証等により当該者が法人顧客の従業員ることが妥当であるとされた。なお、法顧客がであるかどうかの判断が であることをもって権限の確認とするこ人の実質的支配者を明らかにするような難しいことも踏まえ、対象となる とを認めている。しかし、から仕組みを作るとともに、その仕組みを特の範囲が明らかになるよう配意するこ は、社員証等を所持していることは単に定事業者が利用可能にすることが求めらとも必要であるとされた。 その会社等に属していることを証明するれていることも踏まえ、法人顧客等の負 ものに過ぎず、代理権などの権限を与え担軽減の観点も含めた新たな制度につい 3 継続的な顧客管理 られていることの確認方法としては不適ても関係省庁における検討を求めたいと 当であるとの指摘を受けている。このたされた。 継続的な取引における顧客管理 め、報告書では、取引担当者への権限の 継続的顧客管理とは、口座に基づく取 委任の確認方法として、社員証等により の取扱い 引などの継続的な取引関係において、顧 確認する方法を除外することが必要とさ 勧告において、 (Po- 客の属性等に照らし、その行う取引が通 れた。 litically Exposed Persons) とは、外国の常想定される態様と整合的であるかどう 国家元首、政府高官、裁判官、軍当局者かを精査することなどにより、顧客が行 ③法人の実質的支配者 等をいうが、 < e 勧告では、特定事う取引にマネー・ローンダリングの疑い 法人顧客の実質的支配者について、規業者に対し、顧客がであるかど があるかどうかを判断することである。 則川条 2 項では、株式会社等の資本多数うかを判断し、該当する場合は資産、収法 8 条は、特定事業者に対し、特定業務 決原則をとる法人については議決権の 4 入の確認を含む厳格な顧客管理措置を講に係る取引についてマネー・ローンダリ 分の 1 超を有する者、それ以外の法人にずることを求めている。 ングの疑いがある場合には疑わしい取引 ()* は、 A-4 とマネ 1 ・ロー ついては代表する者をいうこととされて の届出を義務付けており、この義務を履 いる。しかし、からは、顧客が ンダリングの関係について、が行するために事業者は、顧客に関する情 法人である場合には実質的支配者こっ 。いその立場の故にマネ 1 ・ローンダリング報その他の事情を勘案して取引にマネ て常に自然人まで遡る必要があるとの指等の犯罪に巻き込まれる潜在的なおそれ ・ローンダリングの疑いがあるかど、つ

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特集テロ資金・マネーローンダリングをめぐる法整備 マネー・ローンダリング対策と弁護士倫理 化したところに意義があると考えられ カナダでは、 2000 年、事業者の通確認しなければならない ( 本規程 2 条 2 る。 報義務を含むマネ 1 ・ロ 1 ンダリング法項 ) 。 が成立した。これに対して弁護士会が違 これらの本人特定事項確認義務は、犯平成 7 年Ⅱ月 9 日東京地裁判決 ( 判タ 921 号 272 頁 ) は、虚偽の土地売買 憲訴訟を提起したところ、各州の裁判所収法によって弁護士以外の職業専門家に 名下の詐欺事件である。売主の替え玉を において、カナダ人権憲章に抵触するこ課せられた義務に準じて定められてい とを理由として、弁護士に対して同法をる。本規程 2 条 1 項及び 8 条 3 項が対象用意して買主から買付証拠金や手付金名 適用することを停止する旨の仮処分決定とする資産管理行為は、財産権の移転を下で金員を詐取した者が買主に対して不 が下された。この結果、カナダ政府は弁伴うので、マネ 1 ・ローンダリングに利法行為責任を負うのは当然として、替え 護士に通報義務を課すことを撤回した用されるおそれがある。本規程 2 条 2 項玉が売主本人であると信じて、替え玉で ( 注 8 ) 。米国やオ 1 ストラリアも、弁護が対象とする取引類型は、勧告ある売主の代理人となって売買契約を締 士の職業上の秘密に配慮し、通報義務をに即して定義されている。勧告結し、手付金等を受領した弁護士も損害 課していない がこれらの取引をマネ 1 ・ローンダリン賠償責任を負った。裁判所は、売主と買 グ規制の対象としたのは、財産権の移転主との間に売買が実在するのかを直接売 を伴い、マネー・ロ 1 ンダリングに利用主に確認するとか、売主を名乗るものが 三顧客デューディリジェンス されるおそれがあると判断されたためと本人であることを充分に確認すべき注意 義務があるとした。第三者から弁護士に 考えられる。 本人特定事項の確認 弁護士が法律事務を遂行すると、法律対する弁護過誤を理由とする損害賠償が 弁護士は、依頼者の金融機関の口座を上の権利義務が発生し、変更され、又は認容された珍しい事例である。マネー・ 管理し、又は依頼者から若しくは依頼者消滅するが、その効果が誰に帰属するのローンダリング対策に限らず、依頼者の のために金員、有価証券その他の資産をか特定されていなければならない。その本人性を確認することが法律上の義務と 預かり、若しくはその管理を行うとき観点から、依頼者の本人特定事項を確認なる場合がある は、依頼者の本人特定事項を確認しなけすることは、弁護士の職務上当然に行わ ればならない ( 本規程 2 条 1 項、 8 条 3 れるべきことであり、本来、その事件の 依頼の目的の検討 ろ 項 ) 。不動産の売買、会社の設立、信託種類に限定があるものではない。本規程 ひ は、弁護士を含む職業専門家の の設定、会社の買収又は売却など一定のは、マネー・ロ 1 ンダリングに利用され 類型の取引について、その準備又は実行るおそれのある依頼について、本人特定に対して、顧客デューディリジェンスを法 をするときも、依頼者の本人特定事項を事項の確認方法を、犯収法に準じて厳格義務付けることを勧告している。顧客デ

10. 法律のひろば 2015年4月号

特集テロ資金・マネーローンダリングをめぐる法整備 犯罪収益移転防止法改正の概要 行うに際しての顧客の氏名、住居、生年 犯罪収益移転防止法改正の概要 月日といった本人特定事項や取引を行、つ 目的等の取引時確認とその確認記録の作 ( 犯罪による収益の移転防止に関する法律 ) 成・保存及び顧客との取引記録の作成・ 保存を義務付け、特定事業者が適切な顧 警察庁刑事局組織犯罪対策部組織犯罪対策企画課犯罪収益移転防止対策室尾嵜青冗太客管理措置を講ずることによりマネ 1 ローンダリングのリスクを抑制するとと 益 ( 犯罪収益 ) は、将来の犯罪活動等にもに、犯罪収益の追跡を可能とし、また、 一はじめに 用いられるだけでなく、健全な経済活動マネ 1 ・ロ 1 ンダリングの可能性がある 平成年Ⅱ月日、犯罪による収益のヘ重大な悪影響を与える。また、犯罪収「疑わしい取引」を届け出ることを義務 移転防止に関する法律の一部を改正する益の多くは、被害者から不当に奪われた付け、犯罪の実態解明や検挙に資する仕 法律 ( 平成年法律第 117 号。以下「改ものであり、没収、追徴その他の手続に組みを構築している。 正法ーという。 ) が公布された ( 注 1 ) 。 よりこれを剥奪し、又は犯罪による被害 改正法は、最近における犯罪による収の回復に充てる必要がある。 三勧告と法改正の経 益の移転に係る状況等に鑑み、犯罪収益しかしながら、犯罪者は、犯罪収益を 緯 移転危険度調査書の作成等に係る国家公口座間で次々と移動させたり、有価証券 安委員会の責務、疑わしい取引の届出に等に形を変えたりするなどして転々と移平成元年のアルシュ・サミット合意に 関する判断の方法、外国所在為替取引業転させる ( このように、犯罪収益の出所基づき設置された、マネー・ローンダリ 者との契約締結の際の確認義務、特定事や帰属を分からなくする行為を「マネング対策を推進する政府間会合である 業者の体制整備等の努力義務の拡充等に < (FinanciaI Action Task Force 【 ・ローンダリング」とい、つ。 ) 。 ついて定めている このため、犯罪による収益の移転防止金融活動作業部会 ) は、平成年末現在 本稿では、改正の経緯、概要等につい に関する法律 ( 平成四年法律第号。以で我が国を含むの国・地域及び 2 の国 て解説する。なお、本稿中、意見にわた下「法」という。 ) は、特定事業者 ( 法際機関が参加しており、各国が遵守すべ る部分については、私見である。 は、 2 条 2 項で銀行等の金融機関等のマき国際標準である勧告を策定 ネー・ローンダリングに利用されるおそし、参加国における勧告の遵守状況を監ろ の れのある各種サ 1 ビスを提供する事業者視するため相互審査を行っている 律 一一犯罪収益移転防止法の概要 法 ワ 3 1 9 、 9 、 0 を列挙し、これらを「特定事業者」と定は、まず、平成 ( 薬物の不正取引等の犯罪により得た収義している。 ) に対して、一定の取引を年、マネ 1 ・ロ 1 ンダリング対策のため幻