国家公安委員会 - みる会図書館


検索対象: 法律のひろば 2015年4月号
84件見つかりました。

1. 法律のひろば 2015年4月号

特集テロ資金・マネーローンダリングをめぐる法整備 国際テロリスト財産凍結法の概要 理決議に関し、外為法で規制されていなを講ずることが必要となる。安保理決議制裁委員会がアル・カーイダ関係者をそ れぞれ指定しているが ( 注 9 ) 、これらの い部分に対応する「国際連合安全保障理は、このような理念の下、各国に対し、 事会決議第千一一百六十七号等を踏まえ我国際テロリストの財産 ( 注 8 ) の凍結等の者が、制裁委員会が作成・公表する名簿 に記載されたときは、国家公安委員会 が国が実施する国際テロリストの財産の措置をとることを求めており、本法は、 は、遅滞なくその氏名等を官報により公 凍結等に関する特別措置法」 ( 平成年外為法による措置と相まって、そのよう な一連の安保理決議を履行するためのも告するものとしている。ただし、附則 3 法律第 124 号。以下「本法」という。 ) のであることを目的で明記している ( 1 条により、本法の施行時点で現に名簿に が制定された。 本稿は、本法の概要について解説を試条 ) 。また、防止し、抑止すべき国際的記載されている者については、施行後遅 みるものであるが、文中意見にわたる部なテロリズムの行為は、我が国において滞なく公告するものとしている。また、 発生するものに限られず、世界的に発生名簿に変更・抹消があった場合にも同様 分は筆者の個人的見解である。 するものを対象としていることから、本に公告するものとしている ( 3 条 2 項・ 法は、「もって我が国を含む国際社会の 3 項 ) 。 ニ解説 平和及び安全に対する脅威の除去に資す本条により公告された国際テロリスト が負う義務は、制裁委員会が国際テロリ ることを目的」としている。 目的 ストを名簿に記載することにより生じる ものであり、国家公安委員会による公告 国際テロ組織の活動には多額の資金を 2 公告及び指定 により生じるものとは一一一口、んないことか 要すると指摘されてきたところ ( 注 5 ) 、 ら、本条による公告は、行政事件訴訟法 公告 国際的なテロリズムの行為を防止し、抑 号及 3 条の「処分」に該当せず、抗告訴訟の 3 条では、安保理決議第 1267 止 ( 注 6 ) するためには、国際テロリスト ( 注 7 ) に対し、テロリズムの手段となりびその後継決議によりその財産を凍結す対象とはならないものと解される。ただ ン関係者し、制裁委員会の名簿に記載された者 得る資金その他の財産を与えず、利用さべきこととされているタリバ 1 は、制裁委員会に対して名簿からの削除 せないことが重要である。また、国際的及びアル・カ 1 イダ関係者の公告につい なテロリズムの行為やこれを敢行する国て定めている。現在、安保理決議第 19 を申し立てることができるほか ( 注四、 ) 年 6 月採択 ) 行政事件訴訟法による当事者訴訟によ 際テロ組織のネットワ 1 クは国境を越え 88 号 ( 平成 ( ノン制裁委員り、自らが公告により規制を受けるべきろ て存在しているため、一国のみが国際テに基づき設置されたタリヾー の ン関係者を、安保理決議第者であるかどうかという点を争うことが ロリストの資金の流れを断っための対策会がタリバ 1 律 法 1 ワ 3 / 号・第 1989 号 ( 同月採択 ) できる。 を講じてもその効果が十分に発揮され ず、あらゆる国が協調してこうした対策決議に基づき設置されたアル・カーイダ ワ 3 0 1 -1

2. 法律のひろば 2015年4月号

特集テロ資金・マネーローンダリングをめぐる法整備 国際テロリスト財産凍結法の概要 自身が預貯金の払戻しを受けることがでされるため、まずは、公安委員会が違反及ぶこととなるため、本法の規制は適用 きないため、自らの支援者と結託して、者に対し必要な情報の提供や指導・助言されず、外為法上の許可を受けなければ 支援者がその預貯金債権を差し押さえ、 を行うものとしている ( 幻条 ) 。情報のならないこととなる。 金行から預貯金の払戻しを受けようとす提供等を受けたにもかかわらず更に違反 る場合に、公安委員会がその払戻しを止した場合で、反復して違反するおそれが 仮領置 める命令をすることができることとしてある場合には、公安委員会は、二度と違許可制により、公告国際テロリストの いる ( 間条 ) 。この公安委員会による命反をしてはならない旨の命令をすること預貯金口座の凍結を行い、公告国際テロ 令は、裁判所による差押命令の効力には ができる ( 条 1 項 ) 。他方、相手方が リストに対する一定の財産提供行為を制 何らの影響を及ばすものではなく、差押公告国際テロリストであることを知りな限したとしても、公告国際テロリストが 命令の効果が生じた後の支払を差し止めがら違反をしたような悪質な者に対して多額の現金等を所持していればこれをテ ようとするものである。本来このような は、「特に必要がある」として、情報のロ行為のために使用するおそれがあるこ 公告国際テロリストと結託した支援者が提供等をすることなく、最初から命令をとから、公安委員会が、公告国際テロリ 脱法行為に関与するようなケースでは、 することができる ( 同条 2 項 ) 。命令にストが所持する金銭等の提出を命じ、こ その支援者を指定し、財産凍結等の措置違反して条の規定に違反する行為をしれを仮領置することができることとして いる ( 条 1 項 ) 。仮領置とは、警察機 をとることにより対処すべきものと考えた場合には、処罰の対象となる ( 条 3 関が、治安や危害防止上の必要から、物 られることから、公安委員会による命令 号 ) 。 は 3 月を超えない期間効力を有する一時 以上に述べた公告国際テロリストの行の占有を一時的に警察機関の方に移す任 的な措置としている。 為やその相手方の行為の制限について意的事実行為の呼称として用いられてお は、属地主義の観点から、原則、日本国り、所有権はあくまでも公告国際テロリ 公告国際テロリストを相手方とする内で行われる行為に適用されることとなストの下にある点で、没収等とは性質が 行為の制限 るが ( 注じ、本法により制限される行為異なる ( 注。 「所持している」とは、ある人が物を 本法では、公告国際テロリストの行為について、外為法により規制がなされる とともに、その相手方となる者の行為に場合には、外為法の規制が優先される ( 事実上支配していると認められる状態に ついても制限している ( 条 ) 。公告国条 2 項 ) 。具体的には、例えば、日本にあるときをいい、現実に、その物を手に 際テロリストを相手方とする行為の制限居住する公告国際テロリストが日本の銀持ち、身体につけておく必要はなく、屋ろ に違反した場合には、相手方が公告国際行口座から外国に送金しようとする行為内に保管したり、別の者をして保管しての テロリストであることを知らずにこうしは本法 9 条 4 号に該当することとなるい る場合であっても、その物が事実上そ法 た行為を行ってしまうことも十分に想定が、同時に外為法条 1 項の支払規制もの者の支配下にあれば足りる。また、物

3. 法律のひろば 2015年4月号

不動産の売却代金や賃貸料の受領、満は許可するといった運用が考えられる。 ( 肥条 ) 、具体的には、許可を受けて取得第 期になった有価証券の償還金の受領等のまた、④の「テロ行為のために使用されする金銭を凍結された預金口座に入金す 行為は 9 条 3 号に該当する。これらの行るおそれがない」に該当するものの例とることや許可を受けて取得した金銭を使 為は 4 号の「金銭債務の履行を受けるこしては、行政機関や公的団体に対する寄用した際のレシートを提出することを条 と」にも該当するが、 4 号では重複する附金、被扶養者が大学に入学した場合に件とすること等が想定される。公安委員の 部分を除いている。預金口座から現金を支払う入学金等が考えられるが、これら会は、許可をしたときは許可証を交付し法 引き出す行為のほか、自分の預金口座かの認定に当たっては、個別の支払を証すなければならない ( 条 ) 。預金口座か ら他人の預金口座に送金する行為も 4 号る書類を徴すること等により行う必要がらの現金の引き出しについて許可を受け た公告国際テロリストは、銀行に対し、 あるものと考えられる に該当する 許可の申請は、公安委員会に対し、行 こうした認定を適切に行うためには、 公安委員会から交付された許可証を提示 為の内容、行為の相手方の氏名、財産の公告国際テロリストの生活状況や財産のすることとなる ( 条 ) 。 使用目的等を記載した申請書を提出する保有状況等の把握が必要不可欠となる本法では、公告国際テロリストによる ことにより行われる ( 川条 1 項 ) 。公安が、申請時に証拠書類を提出させること脱法行為を防止するための規定も設けて いる。 9 条 5 号では、特定の金銭債権を 委員会は、①公告国際テロリストやそののほか ( 川条 2 項 ) 、必要に応じ、市町 親族の生活費の支払に充てられる、②税村に対し家族構成や社会保障給付の状況譲渡することを制限しているが、これ 金や社会保険料の支払に充てられる、③が分かる資料の提出を求めたり、金融機は、公告国際テロリスト自身が預貯金の 本法による公権力の行使に係る訴訟の費関等に対し口座その他の財産の保有状況払戻しを受けることができないため、預 用に充てられる、④テロ行為のために使等が分かる資料の提出を求めたり ( 四貯金債権を自らの支援者に譲渡し、その 用されるおそれがない、のいずれかに該条 ) 、公告国際テロリスト本人に対し資支援者に払戻しを受けさせるような行為 を防ぐためのものである。公安委員会 当すると認めるときは、許可をしなけれ料の提出等を求めたり、公告国際テロリ は、正当な債務の履行のために債権譲渡 この認ストの住居等に立入検査をすること ( 跚 ばならない ( Ⅱ条 1 項 ) ( 注リ。 が行われていたり、債権譲渡が脱法目的 定は、公告国際テロリストが生活費名目条 1 項 ) 等が想定される。 なお、立入検査等の権限は、犯罪捜査で行われているものではないと認めると で多額の現金を取得すること等も想定さ のために認められたものと解してはならきには許可をしなければならない ( Ⅱ条 れることから、厳格に行う必要がある 例えば、①の生活費の認定に当たってない ( 同条 3 項 ) 。また、指定に関する 2 項 ) 。 同様の趣旨で、裁判所による強制執行 は、個々の公告国際テロリストの生活状資料の収集のために立入検査等をするこ の手続を悪用した脱法行為の防止も図っ 況や財産の保有状況等に応じて、例えとは認められていない ば、預金口座から毎月一定額の引き出し許可には条件を付すことができるがている。すなわち、公告国際テロリスト

4. 法律のひろば 2015年4月号

特集テロ資金・マネーローンダリングをめぐる法整備 犯罪収益移転防止法改正の概要 か判断する必要があり、そのために取引などについて指摘を受けている。また、務付けることは特定事業者、顧客の双方 の内容を精査することとなっている。す規則 4 条は、マネ 1 ・ローンダリングのに過度な負担となるため、既存顧客につ なわち、我が国においては、法令上明文リスクのない取引を定め、これに該当すいて情報を取得することの義務付けの程 の規定はないものの、特定事業者は継続る場合に取引時確認を行わないこととし度については慎重に検討する必要がある 的な顧客管理が求められている。しかているが、からは規則 4 条の各とされた。 し、からは明文によるものでは取引についてリスクの評価を行うべきこ ないものの、継続的顧客管理が求められと及び完全な除外は例外的な場合に限ら 五改正法の概要 ていることでは不十分であり、法令によれることについて指摘を受けている。こ 主な改正項目ごとの解説は、以下のと り明文で事業者に対し義務付けられる必のため、報告書では、の指摘に 要があるとの指摘を受けている。このた対応するため、国によるリスク評価をしおりである。なお、改正法の概略は図の つかりと行った上で、リスクの高い取引とおりである め、報告書では、継続的顧客管理を法令 で位置付ける必要があるが、その際に に ( 厳格な顧客管理を、リスクの低い取 は、求められる継続的顧客管理の内容が ーには簡素な顧客管理措置を行うことが 犯罪収益移転危険度調査書の作 業種や取引態様により異なることに留意必要であるとされた。 成等に係る国家公安委員会の責務 し、すべての取引に一律の規定を置くの ( 改正後の法 3 条 3 項及び 4 項 ) ではなく、リスクベース・アプローチの 既存顧客 改正の概要 考え方を踏まえた措置が講じられること 既存顧客とは、従来の制度の下で取引 犯罪による収益の移転に係る事例や疑 が適当とされた。 時確認が行われている顧客のことである が、からは、既存顧客に対するわしい取引に関する情報等を集約、整理 ②リスクの高い取引リスクの低い取顧客管理措置としての情報の追加取得に及び分析する立場にある国家公安委員会 が、その保有する情報や専門的知見を生 ついて指摘を受けている。報告書では、 引の取扱い かし、事業者が行う取引の種別ごとに、 法 4 条 2 項は、一定の顧客、取引をリ顧客に関する情報は、とりわけ継続的な スクの高いものとして定めるとともに、 顧客管理において、特定事業者がマネ犯罪収益移転危険度を記載した後述する ・ローンダリングの疑いの有無を判断犯罪収益移転危険度調査書を作成し、公 資産、収入の確認を含めた厳格な取引時 ろ 確認を行うことを求めているところであするに当たっての基礎となることを踏ま表するものとされた。 ひ るか、 < からはリスクの高い取引 えると、既存顧客について顧客情報を取また、調査及び分析が実態に即したよの ーこ得することは望ましいが、反面、全てのり適切なものになるよう、国家公安委員法 の範囲が狭いこと、リスクの高い取弓。 ついての厳格な措置が十分ではないこと既存顧客について一律に情報の取得を義会は、調査及び分析を行うため必要があ

5. 法律のひろば 2015年4月号

不名誉なことでもある な取引を通じて、犯罪組織又はテロ集団こととしている。なお、国際テロリスト 8 実際に、外国銀行がリスク管理を強化 によるマネロン・テロ資金供与が横行すによる国際的な財産の移動については、 し、コルレス契約の見直しを行った事例ることになりかねない。 すでに外為法で規制されている。改正テ もあり、外国銀行のマネロン・テロ資金 こうした一一つの大きな問題が生じ得るロ資金処罰法は法務省所管であり、すで 対策に係る関心は非常に高まっている ため、早急に法整備を進め、こうした事に規制されていた「テロ行為に対する資律 法 これを最も端的に表すこととなった契機態を防止する必要があるとの認識が、 2 金支援」に加え、「アジト提供等の物質 が、最近の米国による制裁金の支払命令 014 年のマネロン・テロ資金対策関連的支援」や「テロ協力者による間接的な である。マネロン・テロ資金に関するも 3 法の制定・改正に至った背景である。資金提供・収集」等を犯罪化するもので のとしては、制裁対象国に対する不正送 ある 金等があり、パリバに至っては 1 昨年の臨時国会は、Ⅱ月日に内閣総 四マネロン・テロ資金対策関 兆円にのばる制裁金を科されている。邦 理大臣が衆議院の解散を表明し、同月幻 連 3 法 銀を含む銀行セクターが多額の制裁金を 日に解散となったが、こうした中でマネ 科されていることに鑑みれば、各国銀行 2014 年秋の臨時国会において、「犯 ロン・テロ資金対策関連 3 法は、極めて は、取引相手国によっては、実行した取罪収益移転防止法改正法」 ( 以下「改正高いプライオリティをもって審議が進め 引が不正取引とみなされ、制裁金の支払犯収法」という。 ) 、「国際テロリストのられた。改正テロ資金処罰法は、 201 等によって自行の経営に影響が及ぶ可能財産凍結法」 ( 以下「テロリスト財産凍 3 年の通常国会に提出・継続審議されて 性があるため、マネロン・テロ資金供与結法」という。 ) 、「テロ資金提供処罰法 いたものであるが、今般の臨時国会解散 に関する厳格な管理を行う必要があると改正法」 ( 以下「改正テロ資金処罰法」表明前のⅡ月Ⅱ日に可決・成立した。ま の認識を高めている という。 ) のマネロン・テロ資金対策関た、改正犯収法及びテロリスト財産凍結 また、法の未整備に伴い生じ得る事象連 3 法が成立した。 法も、 2014 年Ⅱ月四日、参議院本会 の二つ目として、国際的な連携が必要な改正犯収法は国家公安委員会・警察庁議に付され、可決・成立した。これら 3 マネロン・テロ資金対策において、制度所管であり、顧客管理の強化に係る措置法の成立は、マネロン・テロ資金対策が が勧告を満たしていないことにを講じることとしている。テロリスト財いかに重要であると認識されているかを より、我が国が抜け穴として認識され、産凍結法も国家公安委員会・警察庁の所反映した結果であると思われる。 実際にマネロン・テロ資金供与に利用さ管であり、国際テロリストとして国連安 れる可能性があることを挙げることがで保理決議で指定された者について、国内 きる。すなわち、我が国を経由した様々 における規制対象財産の移動を禁止する

6. 法律のひろば 2015年4月号

特集テロ資金・マネーローンダリングをめぐる法整備 マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策関連法の制定・改正の背景 ④さらに 2 0 0 3 年に << か鬨の 伴う犯罪収益のマネロンについても対象 2 国際基準 (LL<I-LL 勧告 ) の策 とするよう改訂された。 勧告を改訂し、従前は金融機関等に課さ 定と我が国の対応 我が国においては、前記の勧告改訂等れていた本人確認あるいは疑わしい取引 先述のように、 1989 年にを踏まえ、 2000 年に「組織的な犯罪の報告等に係る義務を、不動産業者・貴 の創設が合意されて以降、次のとおりの処罰及び犯罪収益の規制等に関する法金属商・宝石商等の多額の資金を取り扱 、つ「非金融業者」や士業等の「職業専門 勧告が公表・追加・改訂され、我律 ( 組織的犯罪処罰法 ) 」を施行し、前 が国もこれに対応する形で法整備を進め提犯罪を薬物犯罪に限らず重大犯罪に拡家」にも適用することとした。また、 2 てきた。 004 年には、テロ資金対策に、国境を 大した。 1990 年に薬物犯罪を前提犯罪と その後、 2001 年 9 月Ⅱ日の米国越える資金の物理的移転を防止するため するマネロンの対策強化のために、金融同時多発テロを受け、は「 8 のの措置に関する項目が追加され、「 9 の 機関による顧客の本人確認や疑わしい取特別勧告」 ( テロ資金に関する特別勧告」となった ( 表 1 ) 。 引の当局宛て報告等に関する「の勧特別勧告 ) を追加的に採択し、テロ資金我が国においては、 2007 年に、「組 告」がによって策定された。 供与の犯罪化や、テロリストに関わる資織的犯罪処罰法」と「本人確認法」を母 体とした「犯罪による収益の移転防止に 前記の勧告策定や、それに先立っ 19 産の凍結措置等が設けられた。 88 年の「麻薬及び向精神薬の不正取引 我が国においては、 2002 年に、「テ関する法律 ( 犯罪収益移転防止法 ) 」 ( 以 の防止に関する国際連合条約 ( 麻薬新条ロリズムに対する資金供与の防止に関す下「犯収法」という。 ) を制定し、本人 約 ) 」に対応し、我が国ではまず「国際る国際条約 ( テロ資金供与防止条約 ) 」確認や疑わしい取引の届出等を非金融機 的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を締結し、その国内担保法として、「公関にも適用することとなった。また、犯 を助長する行為等の防止を図るための麻衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の収法の一部施行を機に、資金情報機関 薬及び向精神薬取締法の特例等に関する提供等の処罰に関する法律 ( テロ資金提 (FinanciaI lntelligence Unit 〈 FIU 〉 ) が 法律 ( 麻薬特例法 ) 」という形で法整備供処罰法 ) , を制定したが、これは前記金融庁から国家公安委員会・警察庁に移 がなされた。同法では、勧告にの「特別勧告」と歩調を合わせたもので管され、マネロン対策に係る情報収集の 沿って、薬物犯罪を前提犯罪とするマネある。また、同条約を実施し、併せて勧機能は、国家公安委員会・警察庁が担、つ ロン罪を創設するとともに、薬物犯罪に告における本人確認等の措置を法制化すこととなった。 絡む収益の没収等の措置が定められた。 るために、「金融機関等による顧客等の ②こうした中、 1996 年に本人確認等に関する法律 ( 本人確認法 ) 」 勧告が、薬物犯罪のみならず重大犯罪にを制定した。 5 ・法律のひろば 2015.4

7. 法律のひろば 2015年4月号

特集テロ資金・マネーローンダリングをめぐる法整備 国際テロリスト財産凍結法の概要 られる。 ることとしている ( 注 ) 。 号 ) 上の不利益処分に該当するため、 ハは、米国、英国等の一定の要件を満同法による意見陳述のための手続を経な たす外国が、安保理決議第 1373 号をければならないが、同法条 1 項の区分 公告国際テロリストに対する行為の 制限 踏まえ、国際テロリストとして、その財によれば弁明の機会の付与をすることと 産を凍結する等の措置をとっている者がなるところ、本法では、より対象者の権公告国際テロリスト ( 3 条・ 4 条によ 該当する。諸外国が既に財産凍結等の措利利益に配慮し、聴聞を行わなければな り公告・指定された国際テロリスト ) 置を講じている場合には、我が国が抜けらないこととしている ( 4 条 4 項 ) 。他は、①規制対象財産 ( 金銭、有価証券、 穴とならないよう速やかに諸外国による方、こうした事前手続を経ている間に、貴金属等、土地、建物、自動車等の財産 ) 措置に歩調を合わせる必要があるものと口座にあった多額の金銭が引き出され、 の贈与を受ける、②規制対象財産の貸付 考えられる ( 注リ。 財産凍結等の措置をとることが困難にな けを受ける、③規制対象財産の売却等の ハの要件があるため、イ又はロの要件ることも想定されるため、事前手続を経対価の支払を受ける、④預貯金等の金銭 により指定することがあるとすれば、例ずに日間有効な仮指定を行った上で、債務の履行を受ける、等の行為をしよう えば、日本で国際テロが発生した場合等事後的に意見聴取の手続を行い、仮指定とするときは、都道府県公安委員会 ( 以 で、国際社会に先駆けて日本がテロの実が不当でなければ通常の指定に切り替え下「公安委員会」という。 ) の許可を受 けなければならない ( 9 条 ) 。これらの 行者等について指定を行うようなときがる規定を設けている ( 8 条 ) 。 考えられる ( 注。 行為に該当するかどうかは、取引の名義 指定は 3 年を超えない範囲内で期間を や態様の如何を問わず、実質的に公告国 3 公告国際テロリストの財産の凍 定めて行うものとしているが、その期間 際テロリストがこれらの行為を行ってい 結等の措置 の満了時に引き続き要件に該当している るかどうかで判断される。例えば、公告 12 6 7 号等や第 13 7 ときは、延長するものとしており、延長安保理決議第 国際テロリストが他人名義の口座を用い の回数に制限はない ( 6 条 ) 。一方、指 3 号では、国際テロリストの財産を遅滞て金銭の贈与を受けようとする場合や、 定の有効期間内であっても、対象者が死なく凍結するとともに、国際テロリスト給与の支払という名目で実質的に金銭の 亡していたり、要件に該当しなくなったの利益のために財産を利用可能にするこ贈与を受けようとする場合には許可を受 と認められるときは、指定を取り消さなとを禁止することを求めているところ、 けなければならないこととなる。許可を ければならない ( 7 条 ) 。指定をすると本法では、許可制により一定の行為を制受けずにこれらの行為を行った場合や偽引 きは公告をすることととし、公告によっ限するとともに、国際テロリストが所持りその他不正の手段により許可を受けたの て指定の効力が生ずる ( 5 条 ) 。 する財産を仮領置することにより、安保場合には処罰の対象となる ( 四条 1 号 ( 注法 指定は、行政手続法 ( 平成 5 年法律第理決議が求める財産凍結等の措置を講ず・ 2 号 ) 。

8. 法律のひろば 2015年4月号

指定 められた要件に対応するものである ( 注し、他者にも呼びかけていること、テロ 4 条 1 項では、安保理決議第 1373 リ。イに規定する「公衆等脅迫目的の行為を行うに足りる物的・資金的能力を 4 号を踏まえ、我が国が国際テロリストを犯罪行為」は、公衆等脅迫目的の犯罪行有していること、物資・資金の調達や訓 指定する要件を規定している。指定は、為のための資金等の提供等の処罰に関す練などテロ行為を行うための準備を現に ろ 我が国のみで完結する取組ではなく、国る法律 ( 平成Ⅱ年法律第号 ) で定義さ行っていること等の事情を考慮し、これの 際的なテロリズムの行為を防止し、抑止れたもので ( 注リ、公衆、国又は地方公らの事情を「十分な理由」の下に認定し法 するための国際社会の取組に我が国とし共団体等を脅迫する目的をもって行われ得るかどうかについては、例えば、継続 て寄与するためのものであり、柱書にそる、人を殺害する行為、航行中の航空機的にテロ行為を行っているような物的証 の旨を明記している。指定は、同項 1 号を墜落させる行為、爆発物を爆発させる拠があること、直近の周辺者から確定的 及び 2 号の要件を共に満たさなければな などの方法により公共物を破壊する行為な供述が得られていること、外国等から らない。 等が列挙されている。ここで、公衆等脅提供された信憑性の高い情報があること 1 号は、外為法により対外取引を規制迫目的の犯罪行為を行った等の要件は、等の点を考慮し、これらを総合的に勘案 されている者であることを要件として い刑事事件で有罪とされた行為であることして判断することとなるものと考えられ る ( 注リ。安保理決議第 13 7 3 号は、 を要するものではなく、国家公安委員会る。 国際テロリストが行う取引が対外取引でが認定するものである。「行い」は既遂 ロは、「イ又はこのロに該当する者が あるか国内取引であるかにかかわらず、 に相当する行為を、「行おうとし」は未出資、融資、取引その他の関係を通じて 一定の要件を満たす国際テロリストの財遂に相当する行為を、「助けた」は幇助その活動に支配的な影響力を有する者 : ・ 産を凍結する等の措置をとるべきこととに相当する行為を、それぞれ意味する : 」とあり、典型的には、イに該当する しているところ、本法により国内取引のイに規定する「将来更に公衆等脅迫目的国際テロリストが 100 パーセント出資 規制をすべき国際テロリストの範囲が外の犯罪行為を行い、又は助ける明らかなする会社等が該当することが想定され 為法により対外取引の規制をすべき国際おそれがあると認めるに足りる十分な理る。「その他の関係」とは、親族関係、 テロリストの範囲を超えることは想定さ由があるもの」の認定には、将来公衆等政治的・宗教的イデオロギ 1 による主従 れないため、両法で規制される対象者の脅迫目的の犯罪行為が発生する客観的な関係等、金銭関係以外に支配的な影響力 範囲の整合を図ったものである。 蓋然性が顕著に存在することについて、 の基礎となり得るものが該当する。した 次に、 2 号はイ、ロ、ハの三つの要件高度の心証が要求されるものと解されがって、例えば、イに該当する国際テロ から成り、これらのいずれかの要件を満る。具体的には、「将来更に : : : 明らか リストの親族やその支配関係にある者の たす者であることを要件としている。イなおそれがある」かどうかについては、 ほか、それらの者が実質経営する会社等 及びロは、安保理決議第 1373 号に定例えば、テロ行為を行うことを現に主張もこうした要件に該当し得るものと考え

9. 法律のひろば 2015年4月号

仮に、当該顧客がテロ資金の提供者であ 例、義務を履行するための責任の所在が囲 特定事業者の体制整備等の努力 る場合において、当該外国所在為替取引 不明確となっている事例があるなど、特 義務の拡充 ( 改正後の法ⅱ条 ) 業者が行う措置が我が国におけるものに 定事業者における取引時確認等を適切に 比べて緩やかな措置にとどまるときは、 改正の概要 行うための体制に改善を要するものが少 ろ ひ コルレス契約に基づく為替取引を利用し特定事業者が取引時確認、取引記録等なくない の て我が国にテロ資金が流入するおそれがの保存、疑わしい取引の届出等の措置を また、川条は、平成年の法改正によ法 ある。 的確に行うために講ずるように努めなけって新設されたものであるが、その後の こうした危険を避けるためには、金融ればならない措置として、「取引時確認のフォローアップにおいて、同 機関に対し、外国所在為替取引業者との等の措置の実施に関する規程の作成」、条は、使用人に対する教育訓練のみが明 業務関係確立の段階において、その外国「取引時確認等の措置の的確な実施のた確に要求されているが、その他の要求が 所在為替取引業者が自己の顧客に対してめに必要な監査その他の業務を統括管理曖昧であり、コンプライアンス・オフィ 本人確認等の措置を十分に行うなど、実する者の選任」及び「その他犯罪収益移サーの設置等が明確に義務付けられてい 効的な対策を行っているかについて確認転危険度調査書の内容を勘案して講ずべないなどと指摘されており、より具体的 するよう義務付ける必要があると考えらきものとして主務省令で定める措置」のに体制整備の内容を法令で明記する必要 れた 3 項目を追加することとされた。 があると考えられた。 なお、これまでも、我が国の金融機関 では金融庁の監督指針等に基づいてコル 改正の趣旨 六今後の課題 レス契約締結時の確認等の措置を行って 現行法川条では、特定事業者は、取引 いるところではあるが、からは時確認、取引記録等の保存、疑わしい取 政省令の整備 勧告で義務とされているものについて法引の届出等の措置を的確に行うため、使 令で明記することが求められているた用人に対する教育訓練の実施その他の必改正法は、犯罪収益移転危険度調査書 め、改正法により、こうした措置が特定要な体制の整備に努めなければならない の作成等に係る国家公安委員会の責務に 事業者に義務付けられていることが明確こととされているが、取引時確認等の義係る部分は公布の日から施行されてお にされることとなった。 務に違反したことにより是正命令のあつり、それ以外の部分は、公布の日から起 た最近の事案を見ると、取引時確認等を算して 2 年を超えない範囲内において政 的確に履行するための内部規程が整備さ令で定める日から施行されることとなる れていない事例や代表者等の事業におけ が、の指摘事項に対応するため る中心人物が法令を理解していない事には、改正法に規定された事項に加え、

10. 法律のひろば 2015年4月号

されたものであるところ、その意 定申請につき医療分科会の意見を 聴き、その意見に従って却下処分見が関係資料に照らし明らかに誤 を行った場合においては、その意 りであるなど、答申された意見を 三本件各却下処分についての国見が関係資料に照らして明らかに尊重すべきではない特段の事情が 家賠償責任 誤りであるなど、答申された意見存在したと認めるに足りる証拠は 国家賠償法 1 条 1 項は、国又は を尊重すべきではない特段の事情ないから、厚生労働大臣か前記各 公共団体の公権力の行使に当たるが存在し、厚生労働大臣がこれを処分を行ったことが国家賠償法上 公務員が個別の国民に対して負う知りながら漫然とその意見に従い 違法であるということはできな 職務上の法的義務に違背して当該 却下処分をしたと認め得るような 国民に損害を加えたときに、国又場合に限り、職務上通常尽くすべ よって、厚生労働大臣が本件各 は公共団体がこれを賠償する責任 き注意義務を尽くすことなく漫然却下処分を行ったことが国家賠償 を負うことを規定するものである と当該却下処分をしたものとし法上違法であるとは認められない から、原爆症認定の申請に対するて、国家賠償法上違法の評価を受 ( なお、本件各処分が、行政手続 却下処分が放射線起因性又は要医けると解するのが相当である。 法 5 条 1 項 ( 審査基準の設定 ) 又 本件各却下処分のうち、原告 4 は同法 8 条 ( 理由の提示 ) に違反 療性の要件の充足に関する判断を 誤ったため違法であるとしても、 名の各申請を却下する処分 ( 原告するということもできない。 ) 。 そのことから直ちに国家賠償法 1 1 名については申請疾病両白内障 条 1 項にいう違法があったとの評 に係る部分に限る。 ) は、前記の 価を受けるものではなく、原爆症とおり、放射線起因性又は要医療 認定に関する権限を有する厚生労性の要件の充足に関する判断を誤 ったものであるとは認められない 働大臣が職務上通常尽くすべき注 意義務を尽くすことなく漫然と当から、厚生労働大臣が前記各処分 該却下処分をしたと認め得るよう をしたことが国家賠償法上違法の な事情がある場合に限り、国家賠 評価を受けるとい一つことはできな 償法上違法の評価を受けるものと 他方、その余の処分は、前 解するのが相当である ( 最高裁平の判断を誤った違法なものである 成 5 年 3 月ⅱ日第一小法廷判決・ というほかないか、これらの処分 民集巻 4 号 2863 頁参照 ) 。 は、いずれも、医療分科会の意見 そして、厚生労働大臣が原爆症認 を聴いた上で、その意見に従って を求める請求はいずれも理由がな 79 ・法律のひろば 2015.4