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検索対象: 法律のひろば 2015年4月号
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1. 法律のひろば 2015年4月号

特集テロ資金・マネーローンダリングをめぐる法整備 マネー・ローンダリング対策と弁護士倫理 の依頼を受けた事例で、これらのペ 1 弁護士は、委任契約上の善管注意義務に対する教育訓練の実施その他の必要な ーカンパニーが闇金融の犯罪収益の移転の一環として、事件に関する記録を作体制の整備に努めなければならない ( 本 に用いられていた ( 注リ。報告書ではこれ成・保存している。本規程に基づく記録規程 9 条 ) 。犯収法によって弁護士以外 求この職業専門家に課された努力義務に準じ らの事例を分析し、共通する要素を Red の作成及び保存は、弁護士が事件記金。 Flag lndicator ( 注意信号 ) として抽出関して行っている実務と整合する。弁護たものである。 している。これは弁護士がマネー・ロ 1 そもそも弁護士は、事務職員その他自 士が取引等の準備 ( 契約交渉や契約書の らの職務に関与させた者が、その者の業 ンダリングに巻き込まれる危険を事前に作成など ) を行うが、実行に関与しない 察知する上で有益な情報である ( 注リ。 場合がある。このような場合、弁護士は、務に関し違法若しくは不当な行為に及ぶ ことのないように指導及び監督をしなけ なお、本規程によって依頼の目的を検自己が関与した範囲で記録を保存すれば 討する義務があるからといって、犯罪収よいと考えられる。 ればならない ( 職務基本規程四条 ) 。本 益移転について弁護士が結果回避義務を弁護士は、依頼者から業務上委託を受規程 9 条は、マネー・ローンダリング対 負うわけではない。しかし、犯罪収益移けたために保管・所持する物で依頼者の策の特性に鑑み、弁護士の指導・監督責 転を容易に予測し得たにもかかわらず、秘密に関するものについて、押収拒絶権任を具体化したものと位置付けることが できる 漫然とこれを看過した場合には、検討義を有する ( 刑事訴訟法 105 条 ) 。また、 務違反と評価される可能性がある。 弁護士は、事件記録を保管又は廃棄する に際しては、秘密及びプライバシーに関 六依頼者の説得 する情報が漏れないように注意しなけれ 四記録保存 ばならない ( 職務基本規定条 ) 。本規 犯罪収益の移転に関わる依頼又 弁護士は、依頼者の本人特定事項を確程 5 条によって弁護士が本人確認記録や は預託の受任禁止 認したときは確認記録を、資産管理行為取引記録を保存することによって、依頼 則記三 2 で述べたように、弁護士は、 等又は取引等の準備若しくは実行をした者の秘密の範囲を限定するものと解され ときは取引記録を作成し、当該資産管理てはならない 依頼の目的を慎重に検討しなければなら 行為等又は当該取引等の終了後 5 年間保 ない。検討の結果、依頼の目的が犯罪収 存しなければならない ( 本規程 5 条 ) 。 益の移転に関わると認めるときは、弁護タ 五体制整備 犯収法によって弁護士以外の職業専門家 士は依頼を受けてはならない ( 本規程 6 の に課せられた記録保存義務に準じたもの弁護士は、本人特定事項の確認、記録条 2 項 ) 。法律事務以外で金員等の預託法 である 保存等の措置を的確に行うため、使用人を受ける場合も同様である ( 本規程 8 条

2. 法律のひろば 2015年4月号

特集テロ資金・マネーローンダリングをめぐる法整備 マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策関連法の制定・改正の背景 国内法整備が必要かを含め、順次、 2 法令整備の必要性 三我が国の状況 勧告への対応を進めてきた。例え ば、犯収法については、 2011 年に法第三次相互審査において法制上の課題 1 年の対日相互審査 改正を行った。しかし、は、勧として指摘された主要な項目は、「顧客 我が国の場合は、 2008 年に告に定める義務を金融機関に対する監督管理の強化、「テロリストの資産凍結」、 の第三次勧告に基づく相互審査 ( 以下指針等ではなく、強制力のある法令に明「テロ行為への物質的支援の犯罪化」等 に大別することができる。仮にこれらの 「第三次相互審査ーという。 ) の結果に係記することを求め、依然として義務の一 部が我が国の法令で明記されていないこ課題について法整備がなされない場合に る報告書が公表された ( 注 5 ) 。我が国は、 となどが指摘された。このため、警察庁生じ得る事象として、先に述べたよう 勧告の内容や評価について精査するとと に、我が国がマネロン・テロ資金対策の もに、関係省庁で連携をとり、いかなるでは、 2013 年 6 月から有識者懇談会 ハイリスク国として国名公表リストに掲 を開催して検討を行い、 2 014 年 7 月に報告書を取載されるリスクを指摘できる。最近の c-) し オ 欠れ ア 一フ 有 りまとめた ( 注 6 ) 。 等でも、勧告の実施に係るコ を 思慮 シ ス ア 意考 このよ、つに、我が国としミットメントが繰り返し確認されている シ 欠ト 的が ン 国 的ス ク ダ ク て、勧告の遵守に中、グレイ・リストに掲載された場合、 略 ト政ス ス スのリ ン リ ス 加盟国には取引相手国がハイリ 向けて努力を重ねてきた イ リへる イ イ がレ ク が、結果的に、 2014 年スク国であることを念頭に置いた対処が ン ク取起一るグ ラ る ク マ は、り イ 6 月には、我が国求められるため、我が国金融機関が海外 いか , ンて一 に表ブる陥トャしダト ダスラナニ国に対し、第三次相互審査のの金融機関と締結しているコルレス契約 あ欠スミ バカ当 ン丿ゴ ン ガ 、フ該報告書において指摘されたが解除されずとも、個々の海外送金につ 対 し ウ・アナア な連クドコな ア いて追加資料の提出を求められるなど審 , ア衂不備事項の改善が進んでい 供合 レ 金会国 象て、ラク的て也グ 地ガ地ギ乃ないとして懸念を示すとと査が厳格化し、結果的に送金が遅延する 資 LL 4 せらブエ治国せ東 政る見国 鮮見か ( 中中域一一テもに、必要な法案の成立を等の深刻な事態が生じる可能性も考えら 適朝をと域アてれを象 地太一 月ヒ けさ展対 の冐展こ地リ カカ ン 2 含めたマネロン対策の不備れる。また、 (-) 主要国であり、ば 工向励進丿一 ロ年置、進る・ 措ンない国ジ に奨な タフ刈ジハ州への迅速な対処を促す声明の設立メンバ 1 である我が国がひ 善が分ニ マ田抗ラ著てき アアアん欧 対イ顕しべア改組十 ( モ ( イ からハイリスク国に指定され、グレ律 を公表するに至った ( 注 7 ) 。 如る 取 イ・リストに名を連ねることは、極めて 7 表

3. 法律のひろば 2015年4月号

特集テロ資金・マネーローンダリングをめぐる法整備 マネー・ローンダリング対策と弁護士倫理 Force 、以下「」という。 ) の勧 告に基づいており、これも国際的に合意 された規制の枠組みに沿っている。した がって、弁護士倫理とマネー・ローンダ リング対策との関係は、日本だけでな アンダーソン・毛利・友常法律事務所弁護士片山達 、海外でも同様に問題になる。本稿で は、海外の事例との対比で我が国の現行 歴史をもつ。これに対して、犯収法や本制度を位置付けることとしたい。 一はじめに 規程に基づくマネー・ローンダリング対の勧告によれば、弁護士を含 弁護士によるマネー・ロ 1 ンダリング策は、 2 0 0 7 年に導入された新しい制む職業専門家によるマネー・ローンダリ 対策は、司法書士等の職業専門家の例に度である。本規程は職務基本規程の特別 準じて、日本弁護士連合会の会則で定め規程と位置付けられるが、マネー・ロ 1 るところによる ( 犯罪による収益の移転ンダリング対策は弁護士倫理と緊張関係 防止に関する法律 ( 平成四年 3 月訂日法に立つのか、それとも整合的に理解する 律第号、以下「犯収法」という。 ) ことができるのか。本稿ではこれらのル 条 ) 。日本弁護士連合会は、依頼者の本ールの関係を検討する。職務基本規程及 人特定事項の確認及び記録保存等に関すび本規程は、弁護士、弁護士法人、外国 る規程 ( 平成年肥月 7 日会規第号、法事務弁護士に適用されるが、本稿では 以下「本規程」という。 ) を制定し、弁特に断りのない限り、弁護士を対象とし 護士によるマネー・ローンダリング対策て検討を進める。 を実施している ( 注 1 ) 。 弁護士の社会における役割は国や地域 日本弁護士連合会の弁護士職務基本規によって差があるものの、弁護士の倫理 程 ( 平成年Ⅱ月川日会規第号、以下や行動規範は世界に共通する要素があ 「職務基本規程」という。 ) は、弁護士のる。我が国の職務基本規程は国際的ルー 職務に関する倫理と行動規範を定めるルに沿っている ( 注 3 ) 。犯収法によるマ ( 注 2 ) 。弁護士倫理や行動規範は、弁護ネ 1 ・ロ 1 ンダリング対策の枠組みは、 士という職業の発展とともに形成された金融活動作業部会 (Financial Action Task マネー・ローンダリング対策と 弁護士倫理 表 FATF 勧告・犯収法・本規程における制度の対比 FATF 勧告 犯収法 本規程 ( 弁護士を含む職業 ( 弁護士以外職業専 ( 弁護士 ) 専門家 ) 門家 ) 疑わしい取引の通報 義務 顧客デューディリジ本人特定事項の確認本人特定事項の確認 ェンス義務 依頼目的の検討義務 己録保存義務 己録保存義務 体制整備義務 体制整備義務 依頼者の説得義務 己録保存義務 体制整備義務 ニ = ロ ニ = ロ 一三ロ 39 ・法律のひろば 2015.4

4. 法律のひろば 2015年4月号

仮に、当該顧客がテロ資金の提供者であ 例、義務を履行するための責任の所在が囲 特定事業者の体制整備等の努力 る場合において、当該外国所在為替取引 不明確となっている事例があるなど、特 義務の拡充 ( 改正後の法ⅱ条 ) 業者が行う措置が我が国におけるものに 定事業者における取引時確認等を適切に 比べて緩やかな措置にとどまるときは、 改正の概要 行うための体制に改善を要するものが少 ろ ひ コルレス契約に基づく為替取引を利用し特定事業者が取引時確認、取引記録等なくない の て我が国にテロ資金が流入するおそれがの保存、疑わしい取引の届出等の措置を また、川条は、平成年の法改正によ法 ある。 的確に行うために講ずるように努めなけって新設されたものであるが、その後の こうした危険を避けるためには、金融ればならない措置として、「取引時確認のフォローアップにおいて、同 機関に対し、外国所在為替取引業者との等の措置の実施に関する規程の作成」、条は、使用人に対する教育訓練のみが明 業務関係確立の段階において、その外国「取引時確認等の措置の的確な実施のた確に要求されているが、その他の要求が 所在為替取引業者が自己の顧客に対してめに必要な監査その他の業務を統括管理曖昧であり、コンプライアンス・オフィ 本人確認等の措置を十分に行うなど、実する者の選任」及び「その他犯罪収益移サーの設置等が明確に義務付けられてい 効的な対策を行っているかについて確認転危険度調査書の内容を勘案して講ずべないなどと指摘されており、より具体的 するよう義務付ける必要があると考えらきものとして主務省令で定める措置」のに体制整備の内容を法令で明記する必要 れた 3 項目を追加することとされた。 があると考えられた。 なお、これまでも、我が国の金融機関 では金融庁の監督指針等に基づいてコル 改正の趣旨 六今後の課題 レス契約締結時の確認等の措置を行って 現行法川条では、特定事業者は、取引 いるところではあるが、からは時確認、取引記録等の保存、疑わしい取 政省令の整備 勧告で義務とされているものについて法引の届出等の措置を的確に行うため、使 令で明記することが求められているた用人に対する教育訓練の実施その他の必改正法は、犯罪収益移転危険度調査書 め、改正法により、こうした措置が特定要な体制の整備に努めなければならない の作成等に係る国家公安委員会の責務に 事業者に義務付けられていることが明確こととされているが、取引時確認等の義係る部分は公布の日から施行されてお にされることとなった。 務に違反したことにより是正命令のあつり、それ以外の部分は、公布の日から起 た最近の事案を見ると、取引時確認等を算して 2 年を超えない範囲内において政 的確に履行するための内部規程が整備さ令で定める日から施行されることとなる れていない事例や代表者等の事業におけ が、の指摘事項に対応するため る中心人物が法令を理解していない事には、改正法に規定された事項に加え、

5. 法律のひろば 2015年4月号

された。 摘を受けている。報告書では、があるとしており、我が国の法令に の指摘に対応する制度を整備すること に関する規定が置かれていないこと 4 取引担当者への権限の委任の確認 は、法人顧客や株主等及び特定事業者に について指摘している。このため、報告 規則Ⅱ条では、法人顧客を代理しようとって非常に大きな負担となる一方、法書では、の指摘に対応するた引 としている者が代理権などの権限を与え人の透明性の確保が世界的な課題であるめ、に関する規定を整備するこの られていることの確認方法について、社 とし、の指摘に沿った制度とすとが必要であるが、特定事業者において法 員証等により当該者が法人顧客の従業員ることが妥当であるとされた。なお、法顧客がであるかどうかの判断が であることをもって権限の確認とするこ人の実質的支配者を明らかにするような難しいことも踏まえ、対象となる とを認めている。しかし、から仕組みを作るとともに、その仕組みを特の範囲が明らかになるよう配意するこ は、社員証等を所持していることは単に定事業者が利用可能にすることが求めらとも必要であるとされた。 その会社等に属していることを証明するれていることも踏まえ、法人顧客等の負 ものに過ぎず、代理権などの権限を与え担軽減の観点も含めた新たな制度につい 3 継続的な顧客管理 られていることの確認方法としては不適ても関係省庁における検討を求めたいと 当であるとの指摘を受けている。このたされた。 継続的な取引における顧客管理 め、報告書では、取引担当者への権限の 継続的顧客管理とは、口座に基づく取 委任の確認方法として、社員証等により の取扱い 引などの継続的な取引関係において、顧 確認する方法を除外することが必要とさ 勧告において、 (Po- 客の属性等に照らし、その行う取引が通 れた。 litically Exposed Persons) とは、外国の常想定される態様と整合的であるかどう 国家元首、政府高官、裁判官、軍当局者かを精査することなどにより、顧客が行 ③法人の実質的支配者 等をいうが、 < e 勧告では、特定事う取引にマネー・ローンダリングの疑い 法人顧客の実質的支配者について、規業者に対し、顧客がであるかど があるかどうかを判断することである。 則川条 2 項では、株式会社等の資本多数うかを判断し、該当する場合は資産、収法 8 条は、特定事業者に対し、特定業務 決原則をとる法人については議決権の 4 入の確認を含む厳格な顧客管理措置を講に係る取引についてマネー・ローンダリ 分の 1 超を有する者、それ以外の法人にずることを求めている。 ングの疑いがある場合には疑わしい取引 ()* は、 A-4 とマネ 1 ・ロー ついては代表する者をいうこととされて の届出を義務付けており、この義務を履 いる。しかし、からは、顧客が ンダリングの関係について、が行するために事業者は、顧客に関する情 法人である場合には実質的支配者こっ 。いその立場の故にマネ 1 ・ローンダリング報その他の事情を勘案して取引にマネ て常に自然人まで遡る必要があるとの指等の犯罪に巻き込まれる潜在的なおそれ ・ローンダリングの疑いがあるかど、つ

6. 法律のひろば 2015年4月号

ング対策は、疑わしい取引の通報義務、 犯収法の立法過程において、疑わしい 課さないこととして、守秘義務との抵触和 顧客デューディリジェンス義務、記録保取引の報告を弁護士に義務付けることを回避した。 存義務、体制整備義務が含まれる。犯収が、守秘義務と整合するかが問題となっ ろ 法は、弁護士以外の職業専門家に対した。勧告は、加盟国がマネー・ ひ 2 海外の状況 の て、顧客のデューディリジェンス義務のロ 1 ンダリング対策を実施するに当た 律 法 うち本人特定事項の確認、記録保存義り、守秘義務へ配慮することを許容して この論点は、海外でも論争を呼んだ。 務、体制整備義務の実施を求める。疑わ いる ( 第三次勧告の解釈ノート ) 。守欧州、カナダでは憲法適合性が争われ しい取引の通報は義務付けていない。本秘義務の対象となる事項を通報義務の対た 規程には、犯収法において他の職業専門象外としても、何が守秘義務の対象とな欧州では、弁護士に通報義務を課する 家に義務付けられない依頼目的の検討義るか明らかとはいえないので、依頼者が指令又はその国内実施法が、欧州人 務や、の勧告で求められていな弁護士に相談することを躊躇するのでは権条約 6 条 ( 公正な裁判を受ける権利 ) い依頼者の説得義務が含まれている。以ないか、と懸念された。弁護士は、法律又は 8 条 ( 私生活、家庭生活、住居及び 下、順次検討する。 専門家として依頼者の基本的人権と正当通信の尊重を受ける権利 ) に適合するか な法的利益を擁護することを職務の本質が問題となった。欧州司法裁判所は、 としている。この弁護士の職責を全うす指令が訴訟手続に関連する弁護士活動 一一疑わしい取引の通報 るためには、依頼者の全面的な信頼の下について通報義務を免除していることか に、秘密事項を含め全ての事実の開示をら、欧州人権条約 6 条に抵触しないと判 犯収法及び本規程 受けた上で、依頼者にとって最善の方策断した ( 注 5 ) 。欧州人権裁判所は、 勧告は、弁護士を含む職業専を立案し遂行しなければならない。弁護指令を実施するフランス国内法及びフラ 門家に対して、金融機関と同様に、顧客士の守秘義務は、依頼者が、有利不利をンス弁護士会決定につき、通報義務の対 の疑わしい取引を通報することを義務付問 わすあらゆる事実を安心して弁護士に象が限定されること、弁護士会長を通報 けている。弁護士は、その職務上知り得打ち明けられることを保障する制度であ先としているので捜査機関に直接通報す た秘密を保持する義務を負っている ( 弁り、弁護士の職務の適正な遂行のためにる必要がないことなどを理由として、欧 護士法条、職務基本規程条 ) 。弁護不可欠である。日本弁護士連合会は、こ 州人権条約 8 条に違反しないと判断した 士の守秘義務は、刑法の秘密漏洩罪 ( 刑のような見地から疑わしい取引の報告義 ( 注 6 ) 。これらの判決を受け、諸国 法 134 条 1 項 ) という刑罰によって担務の導入に反対した ( 注 4 ) 。犯収法は、 は、英国を例外として、限定的に通報義 保されている。 職業専門家に疑わしい取引の通報義務を務を運用している ( 注 7 ) 。

7. 法律のひろば 2015年4月号

表 1 FATF による「 40 の勧告」と「 9 の特別勧告」の概要 ( 第三次勧告 く 2004 ~ 2014 年 > ) 勧告 勧告の概要 勧告 勧告の概要 26 資金情報機関 (FIU) 40 の勧告 マネー・ローンダリング、テロ 1 マネー・ローンダリング罪 27 資金供与の捜査 マネー・ローンダリング罪 28 関係当局の権限 2 ー認識及び法人への刑罰 29 監督当局 3 没収・凍結措置 4 勧告に整合的な守秘義務 30 資源・資質・訓練 5 金融機関における顧客管理 31 国内関係当局間の協力 外国における重要な公的地位を 32 統計 6 有する者との取引 (PEPs) 33 法人の実質的所有者 7 コルレス銀行の業務 8 新技術の悪用及び非対面取引 34 法的取極めの実質的所有者 9 顧客管理措置の第三者依存 35 。条約 10 本人確認・取引記録の保存義務 36 法律上の相互援助 11 通常でない取引への注意義務 37 取罰性 DNFBP ( 指定非金融業者・職業 外国からの要請による資産凍結 38 専門家 ) における顧客管理 等 金融機関における疑わしい取引 39 犯人引渡し の届出 国際協力 ( 外国当局との情報交 14 届出者の保護義務 9 の特別勧告 15 内部管理規定の整備義務 DNFBP による疑わしい取引の I 国連諸文書の批准 届出 17 義務の不履行に対する制裁措置Ⅱテロ資金供与の犯罪化 シェルバンク ( 実態のない銀 Ⅲテロリストの資産の凍結・没収 行 ) の禁止 テロに関する疑わしい取引の届 19 他の報告様式 出 他の職業専門家及び安全な取引 V テロ対策に関する国際協力 20 技術 21 高リスク国への特段の注意 Ⅵ代替的送金システム 22 海外支店・現法への勧告の適用Ⅶ電信送金のルール 23 金融機関に対する監督義務Ⅷ、非営利団体 (NPO) 国境における申告及び開示 ( キ 24 DNFBP に対する監督義務 Ⅸ ャッシュ・クーリエ ) ガイドライン及びフィードバッ 25 ク ( 出所 ) 警察庁 JAF ℃年次報告書 ( 平成 25 年 ) 、 "FATF CompiIation" (FATF 、 2010 年 10 月 ) を基に筆者作成 図り、フォローアップ審査を受ける仕組ト」 ( いわゆるプラック・リスト、グレ 3 相互審査 みとなっている イ・リスト等 ) に掲載される ( 表 2 ) 。 は、国ごとに相互審査を行っ その際、相互審査の結果が著しく不十勧告は、条約とは異なり、法的 ており、その結果は「相互審査報告書 , 分であった場合や、相互審査後の改善状拘束力を有するものではないが、こうし (Mutual Evaluation Report) として公表況が捗々しくない、あるいは取組への政た "Name 年 Shame" と呼ばれる仕組み されている。相互審査の枠組みは、治的意思が欠如していると判断された場を通じて、勧告の履行が確保さ が勧告に照らして「不備」合には、マネロン・テロ資金対策に関すれている ( 注 4 ) 。 と評価した項目について、各国が改善をるハイリスク国として、「国名公表リス 40 法律のひろば 2015.4 ・ 6

8. 法律のひろば 2015年4月号

特集テロ資金・マネーローンダリングをめぐる法整備 テロ資金の提供等の刑事規制 金抑制措置の必要性は、国際社会では、 既に当然の前提とされている ( 注 9 ) 。 そうした国際的な要請は、まず、国連 の、テロリズムに対する資金供与の防止 に関する国際条約 ( 年採択、 0 0 2 年発効 ) ( 注四として示された。 法政大学教授今井猛嘉 日本も、同条約の締約国である ( 200 の直接的な協力者に資金及びその他の利 2 年締結 ) 。そこで日本は、同条約の国 一はじめにー問題解決に向け 益を提供する者の行為 ( より間接的な協内担保法として、公衆等脅迫目的の犯罪 た国内外での取組の経緯 カ ) をも処罰する必要がある ( 注 6 ) 。第行為のための資金の提供等の処罰に関す に、マネー・ロンダリング対策 ( 注 7 ) る法律 ( 2002 年 ) ( 注Ⅱ ) 、金融機関の テロ資金 ( 注 1 ) を提供する行為を処罰一一 することは、テロの未然防止の観点かとしては、テロ資金提供行為の予防も、顧客等の本人確認に関する法律 ( 200 ら、極めて重要である。テロ行為を企図その重要課題であることを確認した上 2 年 ) を制定し、外国為替及び外国貿易 している者 ( 注 2 ) に対して、これを援助で、国際的に要請されている水準に沿っ法の一部を改正した ( 2002 年 国連と並んで、各国のにつき、 する目的等で資金を提供する者 ( 注 3 ) た対策を、法令に基づき、厳格に行い得 は、 ( 自己又は第三者による ) 犯罪からるように整備する必要がある。 <*-a と国際水準に合致した整備を要請している 得られた資金や、これに由来する資産しては、テロ資金として提供されるべきのが、金融活動作業部会 ( 注 リである。 < は、マネ 1 ・ロン を、その獲得経緯を秘して、金融機関に資産に係る疑わしい取引 ( 注 8 ) を見いだ おいて管理していることも多い。こうしし、これを監視して停止させることが必ダリングに対する国際的な対応につき、 た資産は、その「汚れた」獲得経緯 ( 出要である。そして第三に、マネ 1 ・ロン関係国の意向を集約しつつ政策提言を行 所 ) を、金融取引を通じて洗浄することダリングの対象と疑われる資産が発覚すってきたが、 2001 年の 9 ・Ⅱ同時多 により ( 注 4 ) 、テロ資金として提供されれば、これを凍結し、テロ資金としての発テロの発生を受けて、テロ資金の収 やすくなる。そこで、テロの予防効果を利用可能性を剥奪することが必要であ集、提供行為の予防措置、資金となるべ 高めるためには、第一に、テロ資金提供る。この三つの措置が有機的に連動しき実体 (substance) に係るロンダリン引 行為 ( 注 5 ) として、テロ企図者に対して、 て、はじめて、テロ防止の実効性も上がグ ( 注リ防止措置についても、積極的なの 意見表明を行っている。具体的には、法 直接、テロに利用し得る資金を提供するるのである。 者の行為だけを想定するのではなく、こ こうした、有機的に連動すべきテロ資は、 ( 2003 年に再改訂された ) テロ資金の提供等の刑事規制 ー関連する国内法の改正と国際的視点

9. 法律のひろば 2015年4月号

特集テロ資金・マネーローンダリングをめぐる法整備 マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策関連法の制定・改正の背景 ④さらに 2 0 0 3 年に << か鬨の 伴う犯罪収益のマネロンについても対象 2 国際基準 (LL<I-LL 勧告 ) の策 とするよう改訂された。 勧告を改訂し、従前は金融機関等に課さ 定と我が国の対応 我が国においては、前記の勧告改訂等れていた本人確認あるいは疑わしい取引 先述のように、 1989 年にを踏まえ、 2000 年に「組織的な犯罪の報告等に係る義務を、不動産業者・貴 の創設が合意されて以降、次のとおりの処罰及び犯罪収益の規制等に関する法金属商・宝石商等の多額の資金を取り扱 、つ「非金融業者」や士業等の「職業専門 勧告が公表・追加・改訂され、我律 ( 組織的犯罪処罰法 ) 」を施行し、前 が国もこれに対応する形で法整備を進め提犯罪を薬物犯罪に限らず重大犯罪に拡家」にも適用することとした。また、 2 てきた。 004 年には、テロ資金対策に、国境を 大した。 1990 年に薬物犯罪を前提犯罪と その後、 2001 年 9 月Ⅱ日の米国越える資金の物理的移転を防止するため するマネロンの対策強化のために、金融同時多発テロを受け、は「 8 のの措置に関する項目が追加され、「 9 の 機関による顧客の本人確認や疑わしい取特別勧告」 ( テロ資金に関する特別勧告」となった ( 表 1 ) 。 引の当局宛て報告等に関する「の勧特別勧告 ) を追加的に採択し、テロ資金我が国においては、 2007 年に、「組 告」がによって策定された。 供与の犯罪化や、テロリストに関わる資織的犯罪処罰法」と「本人確認法」を母 体とした「犯罪による収益の移転防止に 前記の勧告策定や、それに先立っ 19 産の凍結措置等が設けられた。 88 年の「麻薬及び向精神薬の不正取引 我が国においては、 2002 年に、「テ関する法律 ( 犯罪収益移転防止法 ) 」 ( 以 の防止に関する国際連合条約 ( 麻薬新条ロリズムに対する資金供与の防止に関す下「犯収法」という。 ) を制定し、本人 約 ) 」に対応し、我が国ではまず「国際る国際条約 ( テロ資金供与防止条約 ) 」確認や疑わしい取引の届出等を非金融機 的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を締結し、その国内担保法として、「公関にも適用することとなった。また、犯 を助長する行為等の防止を図るための麻衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の収法の一部施行を機に、資金情報機関 薬及び向精神薬取締法の特例等に関する提供等の処罰に関する法律 ( テロ資金提 (FinanciaI lntelligence Unit 〈 FIU 〉 ) が 法律 ( 麻薬特例法 ) 」という形で法整備供処罰法 ) , を制定したが、これは前記金融庁から国家公安委員会・警察庁に移 がなされた。同法では、勧告にの「特別勧告」と歩調を合わせたもので管され、マネロン対策に係る情報収集の 沿って、薬物犯罪を前提犯罪とするマネある。また、同条約を実施し、併せて勧機能は、国家公安委員会・警察庁が担、つ ロン罪を創設するとともに、薬物犯罪に告における本人確認等の措置を法制化すこととなった。 絡む収益の没収等の措置が定められた。 るために、「金融機関等による顧客等の ②こうした中、 1996 年に本人確認等に関する法律 ( 本人確認法 ) 」 勧告が、薬物犯罪のみならず重大犯罪にを制定した。 5 ・法律のひろば 2015.4

10. 法律のひろば 2015年4月号

特集テロ資金・マネーローンダリングをめぐる法整備 マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策関連法の制定・改正の背景 れ得る予防措置の分野で顧客管理措置 定された対策の実施に係る法案は、過 五日本に関する LL<I--LL 声明 やその他の義務が不十分である」 去三度にわたり廃案になるなど、これ ( 2014 年 6 月日公表 ) => 改正犯収法と同法に係る政省令によ までに様々な議論があり、慎重な検討 先に触れた 2014 年 6 月の って対応する。 が行われている 声明では、最も重要な不備事項として、③「テロリスト資産の凍結メカニズム このように、 4 点の指摘事項のうち 3 次の 4 点を挙げている。 が不完全である」 点は、今般のマネロン・テロ資金対策関 ①「テロ資金供与の犯罪化が不完全で => 従来の外為法に加え、テロリスト財連 3 法の成立と今後の関連政省令の施行 ある」 産凍結法によって対応する により対処できることになる。 => 改正テロ資金処罰法によって対応す④「パレルモ条約の締結と完全な実施は、 2 月、 6 月、川月の年 3 回、全体会 る。 かできていない 合を開いており、我が国は、現在、第三 ②「金融及び非金融セクターに適用さ => パレルモ条約とは、組織的犯罪対策次相互審査の結果に対するフォロ 1 アッ を規定した条約 ( 国際的な組織犯罪のプ・プロセスの途上にある。こうした 中、マネロン・テロ資金対策関連 3 法が 防止に関する国際連合条約 ) であり、 我が国では 2003 年に当該条約の締成立し、我が国のマネロン・テロ資金対 結について国会で承認された。しかし策は、 2008 年の対日相互審査以降の ながら、当該条約に規定された対策を過去 6 年で、最も大きく前進した。今後、 国内で実施するための担保法が未成立開催される全体会合において、 となっているため、今なお条約締結に マネロン・テロ資金対策関連 3 法の成立 は至っていない。世界で 180 か国強や政省令の内容をもって、勧告の大部分 が締結している条約であるため、これを遵守できている旨をに説明す までの国会等における議論を適切に踏るとともに、パレルモ条約国内担保法の まえつつ、国内担保法の成立を図って成立に向けて努力し、一日も早く、第三 いく必要がある。また、当該条約の締次相互審査から卒業できるよう、道筋を 結は、の観点だけではなく、 けていきたい。 人身取引規制や腐敗防止等の国際的要 請といった観点からも必要なものとさ れている。しかし、パレルモ条約に規 vFATF 全体会合の様子 ( 於 OECD) ( 提供 ) FATF 事務局 9 ・法律のひろば 2015.4