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検索対象: 法律のひろば 2015年4月号
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1. 法律のひろば 2015年4月号

特集テロ資金・マネーローンダリングをめぐる法整備 犯罪収益移転防止法改正の概要 か判断する必要があり、そのために取引などについて指摘を受けている。また、務付けることは特定事業者、顧客の双方 の内容を精査することとなっている。す規則 4 条は、マネ 1 ・ローンダリングのに過度な負担となるため、既存顧客につ なわち、我が国においては、法令上明文リスクのない取引を定め、これに該当すいて情報を取得することの義務付けの程 の規定はないものの、特定事業者は継続る場合に取引時確認を行わないこととし度については慎重に検討する必要がある 的な顧客管理が求められている。しかているが、からは規則 4 条の各とされた。 し、からは明文によるものでは取引についてリスクの評価を行うべきこ ないものの、継続的顧客管理が求められと及び完全な除外は例外的な場合に限ら 五改正法の概要 ていることでは不十分であり、法令によれることについて指摘を受けている。こ 主な改正項目ごとの解説は、以下のと り明文で事業者に対し義務付けられる必のため、報告書では、の指摘に 要があるとの指摘を受けている。このた対応するため、国によるリスク評価をしおりである。なお、改正法の概略は図の つかりと行った上で、リスクの高い取引とおりである め、報告書では、継続的顧客管理を法令 で位置付ける必要があるが、その際に に ( 厳格な顧客管理を、リスクの低い取 は、求められる継続的顧客管理の内容が ーには簡素な顧客管理措置を行うことが 犯罪収益移転危険度調査書の作 業種や取引態様により異なることに留意必要であるとされた。 成等に係る国家公安委員会の責務 し、すべての取引に一律の規定を置くの ( 改正後の法 3 条 3 項及び 4 項 ) ではなく、リスクベース・アプローチの 既存顧客 改正の概要 考え方を踏まえた措置が講じられること 既存顧客とは、従来の制度の下で取引 犯罪による収益の移転に係る事例や疑 が適当とされた。 時確認が行われている顧客のことである が、からは、既存顧客に対するわしい取引に関する情報等を集約、整理 ②リスクの高い取引リスクの低い取顧客管理措置としての情報の追加取得に及び分析する立場にある国家公安委員会 が、その保有する情報や専門的知見を生 ついて指摘を受けている。報告書では、 引の取扱い かし、事業者が行う取引の種別ごとに、 法 4 条 2 項は、一定の顧客、取引をリ顧客に関する情報は、とりわけ継続的な スクの高いものとして定めるとともに、 顧客管理において、特定事業者がマネ犯罪収益移転危険度を記載した後述する ・ローンダリングの疑いの有無を判断犯罪収益移転危険度調査書を作成し、公 資産、収入の確認を含めた厳格な取引時 ろ 確認を行うことを求めているところであするに当たっての基礎となることを踏ま表するものとされた。 ひ るか、 < からはリスクの高い取引 えると、既存顧客について顧客情報を取また、調査及び分析が実態に即したよの ーこ得することは望ましいが、反面、全てのり適切なものになるよう、国家公安委員法 の範囲が狭いこと、リスクの高い取弓。 ついての厳格な措置が十分ではないこと既存顧客について一律に情報の取得を義会は、調査及び分析を行うため必要があ

2. 法律のひろば 2015年4月号

された。 摘を受けている。報告書では、があるとしており、我が国の法令に の指摘に対応する制度を整備すること に関する規定が置かれていないこと 4 取引担当者への権限の委任の確認 は、法人顧客や株主等及び特定事業者に について指摘している。このため、報告 規則Ⅱ条では、法人顧客を代理しようとって非常に大きな負担となる一方、法書では、の指摘に対応するた引 としている者が代理権などの権限を与え人の透明性の確保が世界的な課題であるめ、に関する規定を整備するこの られていることの確認方法について、社 とし、の指摘に沿った制度とすとが必要であるが、特定事業者において法 員証等により当該者が法人顧客の従業員ることが妥当であるとされた。なお、法顧客がであるかどうかの判断が であることをもって権限の確認とするこ人の実質的支配者を明らかにするような難しいことも踏まえ、対象となる とを認めている。しかし、から仕組みを作るとともに、その仕組みを特の範囲が明らかになるよう配意するこ は、社員証等を所持していることは単に定事業者が利用可能にすることが求めらとも必要であるとされた。 その会社等に属していることを証明するれていることも踏まえ、法人顧客等の負 ものに過ぎず、代理権などの権限を与え担軽減の観点も含めた新たな制度につい 3 継続的な顧客管理 られていることの確認方法としては不適ても関係省庁における検討を求めたいと 当であるとの指摘を受けている。このたされた。 継続的な取引における顧客管理 め、報告書では、取引担当者への権限の 継続的顧客管理とは、口座に基づく取 委任の確認方法として、社員証等により の取扱い 引などの継続的な取引関係において、顧 確認する方法を除外することが必要とさ 勧告において、 (Po- 客の属性等に照らし、その行う取引が通 れた。 litically Exposed Persons) とは、外国の常想定される態様と整合的であるかどう 国家元首、政府高官、裁判官、軍当局者かを精査することなどにより、顧客が行 ③法人の実質的支配者 等をいうが、 < e 勧告では、特定事う取引にマネー・ローンダリングの疑い 法人顧客の実質的支配者について、規業者に対し、顧客がであるかど があるかどうかを判断することである。 則川条 2 項では、株式会社等の資本多数うかを判断し、該当する場合は資産、収法 8 条は、特定事業者に対し、特定業務 決原則をとる法人については議決権の 4 入の確認を含む厳格な顧客管理措置を講に係る取引についてマネー・ローンダリ 分の 1 超を有する者、それ以外の法人にずることを求めている。 ングの疑いがある場合には疑わしい取引 ()* は、 A-4 とマネ 1 ・ロー ついては代表する者をいうこととされて の届出を義務付けており、この義務を履 いる。しかし、からは、顧客が ンダリングの関係について、が行するために事業者は、顧客に関する情 法人である場合には実質的支配者こっ 。いその立場の故にマネ 1 ・ローンダリング報その他の事情を勘案して取引にマネ て常に自然人まで遡る必要があるとの指等の犯罪に巻き込まれる潜在的なおそれ ・ローンダリングの疑いがあるかど、つ

3. 法律のひろば 2015年4月号

特集テロ資金・マネーローンダリングをめぐる法整備 テロ資金の提供等の刑事規制 有効にするために、事業者内部での体制入、接触方法の詳細は、におい 四犯罪収益移転防止法の改正 の確立を求めている。これは、法人によ . ては、コア ( 注を構成する情報 として、明示的に要請されているわけで 犯罪収益移転防止法の改正により、マる犯罪の防止を図る観点から、国際的に ネー・ロンダリングか否かが疑わしい取要請されている、法人等事業者自身によはない ( 注色。しかしテロの脅威が高ま 引の届出 ( 注は、リスク・べ 1 ス・アる内部監査 (internal control) に対応すれば、 2013 年にバーゼル委員会が示 プロ 1 チ ( 注を徹底させた上で、金融る規定ともいえ、妥当な改正であったとした ( より厳しい ) 基準 ( 注色の履行が、 < e からも求められる可能性があ 思われる。 業者等の特定事業者による業務の性質に 応じて、主務省令の規定を踏まえてなさ が徹底されることにより、る。顧客の職業、収入に関する情報無し れることとなった ( 改正後の同法 8 条 ) 。 の危険が類型的に低いと判断された取引では、にとって有効な、 < は、 2 012 年以降、 < と ( 注週との関係では、簡易化された 0 顧客のプロファイリングを、信頼できる 態様で行うことは、想定しづらいからで してのを、より具体的に示すよう Q ( 注の採用も可能となろう ( 注れ ) 。 になり ( 注肪 ) 、日本政府 ( 金融庁、警察これも、が認めている対応であある。そこで、今後は、 Basel 基準に相 庁等 ) も、そこで示された事例群を踏まるが、留意すべき点もある ( 後述五参当する確認義務が一般化する事態をも予 想した上での準備が必要であろう ( 注 え、この流れに対応しようとしてきた。 色。犯罪収益移転防止法の改正により、 この方向性 ( 注が、本改正 ( 改正後の その実施がより強く要請されるに至った 同法 8 条 1 項・ 2 項 ) により、より明確 五本改正後の、法令運用上の になったとい、つことである を着実に実践し、を探索する 課題 能力ないし経験知を高めていくことが、 また、同法 9 条は、コルレス契約締結 時に、日本の特定事業者 ( 日本の金融機本改正により、対日審査を経て望ましい所以である。 第二に、 < によりテロ資金の隠 関等 ) に対して、その相手方金融機関 ( 外から指摘された問題点の多くは解消さ 国所在為替取引業者 ) が、日本の特定事れたが、関係法令を運用していく際に匿、移動、供与等のおそれを十分に把握 業者に求められるものと同水準のは、以下の点に留意する必要があろう。するには、テロ資金対策が義務づけられ に向けた体制を構築・運用しているかの 第一に、の要請は、にる金融機関 ( 及びその顧客 ) の範囲を、 ろ 1 セル経済実態に沿って拡大していくことも、 確認義務を課した。これも、 < とし係る国際的要求としては、バ ひ の てが要請してきた事項である (Basel) 委員会のそれ ( 注よりも、一検討課題となり得る。 律 ( 注芝。さらに、同法Ⅱ条は、特定事業段、緩やかなものであることを認識する従来から、の実効化のために法 しわゆる地下銀行を通じて利用され 者による顧客の身元確認 ( 注を一層、 必要があろう。例えば、顧客の職業、収は、、

4. 法律のひろば 2015年4月号

特集テロ資金・マネーローンダリングをめぐる法整備 犯罪収益移転防止法改正の概要 ング対策等を講ずる観点から行われた。この年の改 or.j news/conference/2014 、 09 、 1823580. h (l) から 四でも記載したとおり、顔写真のない本 入手可能である。 正について、の指摘事項に対応したものであ 人確認書類の取扱いや法人の実質的支配 ることをに対し、繰り返し説明したものの、 者の確認等について政令や規則の改正に〇平野全国銀行協会会長 ( 三菱東京銀行頭取 ) の 国際的なマネー・ローンダリング対策の強化が求めら 定例記者会見 ( 平成年 9 月毬日 ) より対応すべきものもある。その改正の れる中、厳しいフォローアップが行われ、結果として、 「仮にハイリスク国入りをすれば、大きく二つの影響 検討に当たっては、マネー・ロ 1 ンダリ が出てくる。まず第一は、銀行自身の活動が制約され 勧告で求められている顧客管理等の事項が法 ング対策等の実効性を確保しつつ、事業 る。例えば、コルレス銀行からコルレス契約の解除を 令に明記されていないなどの指摘を受けている 者や顧客に過度の負担とならないよう、 求められる。実際、マネロンに伴う各国当局の対応は ( 5 ) マネー・ローンダリング対策等に関する懇談会報 関係者の意見を聴取しつつ進める必要が 非常に厳しく、コルレス業務を縮小する国際金融機関 ある 告書については、警察庁ホームペ 1 ジ (http://www. は最近多い。そういう対象に日本の金融機関がなる可 npa ・ go ・、 sosikihanzai 、 jafic 、 kondankai / data 、 能性がある。加えて、海外の機関投資家からの取引が houkokusyoh2607. pdf) から入手可能である。 2 国際社会に対する説明 圧縮される。さらに、海外の監督当局から日本の銀行 ( 6 ) 平成年 6 月のサミットにおいて合意された 「法人及び法的取極めの悪用防止に向けた行動計 本改正の経緯に鑑みれば、改正法の内の海外事業に対する監視の目がこれまで以上に厳しく 画原則」においても、「ナショナル・リスク・アセス なることが考えられる。第二は、より懸念しているが 容等、我が国の取組について、 メント」として、国がマネー・ローンダリングのリス 端的に言えば海外送金が遅れるということである。仮 をはじめとする国際社会に対し、十分に / ィリスク国へ クを評価する仕組みの構築が求められている。これを に、日本がハイリスク国入りすれば、、 説明を行っていく必要がある 受けて、警察庁を中心とした関係省庁により、同年 の送金についてはデューデリジェンスをしつかりやら 月には「犯罪による収益の移転の危険性の程度に関 なければならないというのが、まさにマネロンの本質 である。それを各国の金融機関が始めた場合には、日 する評価書」が作成されている。ただし、改正法によ り作成されることとされている「犯罪収益移転危険度 本のお客さまは、ドル建てであろうが、ユーロ建てで 調査書」は、この「犯罪による収益の移転の危険性の あろうが、送金がおそらく遅れる。つまり、現在であ 程度に関する評価書」とは異なるものであり、今後、 れば翌日着くものがおそらく翌日には着かなくなる。 4 「犯罪による収益の移転の危険性の程度に関する評価 まさにご指摘のような、顧客利便性が大きく損なわれ 5 書」を踏まえつつ、作成されることとなる。 るような事態もあり得ると思っている。」 ( 4 ) 平成年の改正は、年の対日相互審査 ( 7 ) 法 4 条は、法 2 条 2 項肥号に掲げる「弁護士 ( 外ろ の 国法事務弁護士を含む ) 又は弁護士法人」を「弁護士 における指摘事項を踏まえるとともに、国内のマネ 律 法 等」と定義している。 ・ローンダリング事犯の実態を考慮しつつ、我が国 としてバランスのとれた実効あるマネー・ローンダリ ( おざき・りようた ) 四 ( 1 ) 改正法の条文は、警察庁ホームペ 1 ジ (http:// www.npa.g0.jp/sY0kanhourei/kaisei/houritsu/261127 2/honbunriyuu.pdf) から入手可能である。 ( 2 ) < e 新勧告については、財務省のホームペー ジ ( http 】 7 /www. mof. go.jp /international— policy 、 conven ま n/ ミ早 40 ー 240216. h ョ 1) から入手可能で ある ( 3 ) 例えば全国銀行協会会長の記者会見では次のよう なコメントがなされている。なお、全文については全 国銀行協会のホームページ (http ://www.zenginkyo. 0

5. 法律のひろば 2015年4月号

起 ると認めるときは、関係行政機関の長等 ら行 」を素 応定理 から、資料の提出等の必要な協力を求め か施 別ク簡 に規管 日ら 種スを クで客 ることができることとされた。 のリ置 ス令顧 のか 引る措 布日 取れ理 る務て 公る 庁 れ主じ 、め 年用客 改正の趣旨 さを応 督 き定 毎悪顧 用法に に表 監悪ク 国家公安委員会が、犯罪による収益の は めグ公 にのス を令 て たン・ 約 グ断リ 移転に係る手口等の犯罪による収益の移 分政 るリ成 ン判の っ 部て 約行 せダ作 リのと 出 転の状況を調査及び分析した上で、取引 さンを ダ引ご 届 ン取引 の の種別ごとの犯罪による収益の移転の危概係お化 映一取認レ等 陬確ル務 険性の程度等の調査及び分析の結果を己 言正書内月◆取 、がなコ業 ・わは施令一 改査囲 6 一疑等実省ネてク格替 載した犯罪収益移転危険度調査書を、毎部布調法 ネ、行を務マしス厳偽 マて銀置主に価 の と評※ 年、作成し、公表することを定めるものの日険な断 法危え 結 である。犯罪収益移転危険度調査書の内 止月転超 締 容については、疑わしい取引の届出に関防 1 移を 契 転益年取等 客 する判断の際に勘案しなければならない とされ ( 改正法による改正後の法 8 条 2 収成罪て 取 コ 巳算疑 項 ) 、また、特定事業者が講ずべき措置 0 を主務省令で定める際にも勘案すること図 ( 改正法による改正後の法Ⅱ条 4 号 ) と されている。 置を行うべきである。」とされるなど、 なることを確保するため、リスク・べー このように犯罪による収益の移転の危リスクベース・アプローチの考え方は既ス・アプローチ (XCQ<) を導入すべき 険性の程度等に応じて、顧客管理を行おに導入されていたが、新勧告でである。」などと明記されるに至ってい うとする背景には、勧告で導入は、「各国は、自国における資金洗浄及る ( 注 6 ) 。 されているリスクベース・アプローチのびテロ資金供与のリスクを特定、評価及 考え方がある。平成年に策定された、 び把握すべきであり」、また、「各国は、 いわゆる新勧告以前の当該評価に基づき、資金洗浄及びテロ資 旧勧告においても「リスクの高い分野に金供与を防止し又は軽減するための措置 ついては、金融機関が厳格な顧客管理措が、特定されたリスクに整合的なものと コルレス契約の締結の際に、相手方がマネー・ローンダリング対策 を適切に行っているか否かを確認 事業者が行う体制整備等の努力義務の拡充 〇顧客管理措置の実施に〇顧客管理措置の青任者 〇使用人に対する 教育訓練の実施等 関する内部規程の策定の 等 現行 法律のひろば 2015.4 ・ 26

6. 法律のひろば 2015年4月号

ュ 1 ディリジェンスとは、本人特定事項 、。したがって、弁護士は知らないうちわち、本規程は、リスク・べ 1 ス・アプ の確認にとどまらす、顧客を実質的に支に依頼者の違法又は不正に関与させられローチの考え方によりマネー・ローンダ 配する者、事業者と行おうとする取引のる可能性がある。本規程に基づく依頼の リングのリスクを判断することを求めて 目的を確認し、また事業者と顧客との取目的の検討は、弁護士の業務がマネー・ いると考えられる。 ろ ひ の マネ 1 ・ロ 1 ンダリングのリスクは、 引関係を継続的に監視することを含む広ローンダリングに利用されるリスクに鑑 い概念である。犯収法は、職業専門家とみ、知らないうちにマネー・ロ 1 ンダリ事業者の業務内容によって大きく異な それ以外の者とで顧客デューディリジェ ングに巻き込まれることを防ぐべく、従 り、業務の性質が異なる他業種のリスク ンスの範囲を区別し、職業専門家には取前の行動規範を一歩進めたものと位置づ 管理が弁護士に役に立っとは限らない 引の目的や実質的支配者の確認を義務付けられる。 は、このような観点から、事業 けていない 犯収法は、職業専門家以外の事業者が者別にリスク・べ 1 ス・アプローチのガ これに対して、弁護士は、法律事務の取引の目的や実質的支配者を確認する方イダンスを策定し、公表している。弁護 依頼を受けようとするときは、依頼者の法を詳細に規定する。これに対して、本士向けのガイダンスは 2008 年川月 属性、依頼者との業務上の関係、依頼内規程は「慎重な検討」を求めるだけで、 日に公表された ( 注 9 ) 。弁護士が依頼の 容等に照らし、その依頼の目的が犯罪収その方法につき何ら定めていない。法律目的を検討する際に参考となる ( 注四。 益の移転に関わるものであるか否かにつ事務は金融機関の業務と比べて非定型的 は、事業者や取引の種類ごと いて慎重に検討しなければならない ( 本であるし、依頼者との信頼関係に基づい にマネー・ローンダリングの事例を収集 規程 6 条 1 項 ) 。法律事務に関連するこて行われることから、弁護士によるデュ し、分析している。弁護士がマネ 1 ・ロ となく、金員、有価証券その他の資産を 1 ディリジェンスは定型的な処理になじ ーンダリングのリスクにどの程度脆弱か 預かる場合も同様に、預託の目的が犯罪まない。イ 也方、「慎重な検討」のやり方を調査し、その結果を 2013 年 6 月「マ 収益の移転に関わるものであるか否かには各弁護士の完全な裁量に委ねられてい ネー・ローンダリング及びテロ資金供与 ついて慎重に検討しなければならないるというわけではない。本規程は「依頼に対する法律専門家の脆弱性について」 ( 本規程 8 条 1 項 ) 。 者の属性、依頼者との業務上の関係、依と題する報告書にて公表した ( 注リ。世 弁護士が依頼者の違法若しくは不正な頼内容」と着眼点を例示している。界か国において過去 5 年間に法律家が 行為に加担してはならないのは当然のこ e は、顧客デューディリジェンスにつ関与した 12 3 の事例が報告されてい とであるが ( 職務基本規程Ⅱ条 ) 、依頼き、リスク・べース・アプローチを要求る。日本から行政書士が関与した事例が 者が違法若しくは不正な行為をしていなしているところ、前記の着眼点はリスク 1 件報告されている。行政書士が、非対 いか積極的に審査する義務は存在しなを判断する際の要素となっている。すな面のインタ 1 ネットで多数の会社の設立

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特集テロ資金・マネーローンダリングをめぐる法整備 犯罪収益移転防止法改正の概要 名義人とする口座に短期間に多額の入出は反復して行うことを内容とする契約を 2 疑わしい取引の届出に関する判 金が頻繁に行われているといった、明ら締結するに際しては、当該外国の金融機 断の方法 ( 改正後の法 8 条 2 項 ) かに不自然である取引を疑わしい取引と関 ( 以下「外国所在為替取引業者」とい 改正の概要 して認識することができず、疑わしい取う。 ) が取引時確認等に相当する措置を 特定事業者は、特定業務に係る取引に 引の届出が適切に行われなかった事案も的確に行うために必要な体制を整備して いること等を確認しなければならないこ ついて、当該取引に係る取引時確認の結散見されている。このため、疑いの有 果、当該取引の態様その他の事情及び犯の判断の適正を確保するため、特定事業ととされた。 罪収益移転危険度調査書の内容を勘案者が主務省令で定める項目に従って取引 改正の趣旨 に疑わしい点があるかどうかを確認する し、かっ、主務省令で定める方法により、 疑わしい取引であるかどうかを判断しな方法その他の主務省令で定める方法を規国内の為替取引では、各金融機関が有 ければならないこととされた。 定し、特定事業者が、当該方法によってする日本銀行の口座を通じて決済が行わ れるが、国境を越える為替取引では、外 判断することとするものである 国所在為替取引業者との間で為替取引を 改正の趣旨 また、 e 勧告のリスクベ 1 ス・ 現行法では、法 2 条 2 項犯号に掲げるアプロ 1 チの考え方を踏まえ、特定事業継続的に又は反復して行うことを内容と 弁護士等 ( 注 7 ) 及び同項号から号ま者は、疑わしい取引の届出の判断に当たする契約 ( 以下「コルレス契約ーという。 ) でに掲げる司法書士等のいわゆる士業者っては、犯罪収益移転危険度調査書の内を締結し、外国に開設した決済用口座を 利用して決済が行われる を除く特定事業者は、取引時確認の結果容を勘案して行わなければならないこと コルレス契約によって、我が国の金融 その他の事情を勘案して、収受した財産を明記している。 機関は、契約の相手方である外国所在為 が犯罪による収益である疑い又は顧客が 替取引業者の顧客のために、国境を越え 犯罪による収益の仮装・隠匿等に当たる 3 外国所在為替取引業者との契約 る為替取引を処理することになるが、当 行為を行っている疑いの有無を判断し、 締結の際の確認義務 ( 改正後の法 該顧客について取引時確認等の措置を行 その疑いがあると認められる場合には、 9 条 ) 、つのは相手方の外国所在為替取引業者で 行政庁に疑わしい取引の届出を行うこと ある。そして、当該外国所在為替取引業 改正の概要 が義務付けられている ( 法 8 条 1 項 ) が、 疑いがあるかどうかを判断するに際し、 特定事業者 ( 為替取引を行い得る、法者は、外国の法令による規制の下にあるろ どのような方法をとるのかについては事 2 条 2 項 1 号から号まで及び号に掲ため、当該顧客との取引に関して法によの 業者の裁量に委ねられている。 げる特定事業者に限る。 ) は、外国の金る措置 ( 取引時確認等 ) と同程度の措置法 しかしながら、特定事業者が、学生を融機関との間で、為替取引を継続的に又がとられているとは限らない。例えば、

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特集テロ資金・マネーローンダリングをめぐる法整備 マネー・ローンダリング対策と弁護士倫理 化したところに意義があると考えられ カナダでは、 2000 年、事業者の通確認しなければならない ( 本規程 2 条 2 る。 報義務を含むマネ 1 ・ロ 1 ンダリング法項 ) 。 が成立した。これに対して弁護士会が違 これらの本人特定事項確認義務は、犯平成 7 年Ⅱ月 9 日東京地裁判決 ( 判タ 921 号 272 頁 ) は、虚偽の土地売買 憲訴訟を提起したところ、各州の裁判所収法によって弁護士以外の職業専門家に 名下の詐欺事件である。売主の替え玉を において、カナダ人権憲章に抵触するこ課せられた義務に準じて定められてい とを理由として、弁護士に対して同法をる。本規程 2 条 1 項及び 8 条 3 項が対象用意して買主から買付証拠金や手付金名 適用することを停止する旨の仮処分決定とする資産管理行為は、財産権の移転を下で金員を詐取した者が買主に対して不 が下された。この結果、カナダ政府は弁伴うので、マネ 1 ・ローンダリングに利法行為責任を負うのは当然として、替え 護士に通報義務を課すことを撤回した用されるおそれがある。本規程 2 条 2 項玉が売主本人であると信じて、替え玉で ( 注 8 ) 。米国やオ 1 ストラリアも、弁護が対象とする取引類型は、勧告ある売主の代理人となって売買契約を締 士の職業上の秘密に配慮し、通報義務をに即して定義されている。勧告結し、手付金等を受領した弁護士も損害 課していない がこれらの取引をマネ 1 ・ローンダリン賠償責任を負った。裁判所は、売主と買 グ規制の対象としたのは、財産権の移転主との間に売買が実在するのかを直接売 を伴い、マネー・ロ 1 ンダリングに利用主に確認するとか、売主を名乗るものが 三顧客デューディリジェンス されるおそれがあると判断されたためと本人であることを充分に確認すべき注意 義務があるとした。第三者から弁護士に 考えられる。 本人特定事項の確認 弁護士が法律事務を遂行すると、法律対する弁護過誤を理由とする損害賠償が 弁護士は、依頼者の金融機関の口座を上の権利義務が発生し、変更され、又は認容された珍しい事例である。マネー・ 管理し、又は依頼者から若しくは依頼者消滅するが、その効果が誰に帰属するのローンダリング対策に限らず、依頼者の のために金員、有価証券その他の資産をか特定されていなければならない。その本人性を確認することが法律上の義務と 預かり、若しくはその管理を行うとき観点から、依頼者の本人特定事項を確認なる場合がある は、依頼者の本人特定事項を確認しなけすることは、弁護士の職務上当然に行わ ればならない ( 本規程 2 条 1 項、 8 条 3 れるべきことであり、本来、その事件の 依頼の目的の検討 ろ 項 ) 。不動産の売買、会社の設立、信託種類に限定があるものではない。本規程 ひ は、弁護士を含む職業専門家の の設定、会社の買収又は売却など一定のは、マネー・ロ 1 ンダリングに利用され 類型の取引について、その準備又は実行るおそれのある依頼について、本人特定に対して、顧客デューディリジェンスを法 をするときも、依頼者の本人特定事項を事項の確認方法を、犯収法に準じて厳格義務付けることを勧告している。顧客デ

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ング対策は、疑わしい取引の通報義務、 犯収法の立法過程において、疑わしい 課さないこととして、守秘義務との抵触和 顧客デューディリジェンス義務、記録保取引の報告を弁護士に義務付けることを回避した。 存義務、体制整備義務が含まれる。犯収が、守秘義務と整合するかが問題となっ ろ 法は、弁護士以外の職業専門家に対した。勧告は、加盟国がマネー・ ひ 2 海外の状況 の て、顧客のデューディリジェンス義務のロ 1 ンダリング対策を実施するに当た 律 法 うち本人特定事項の確認、記録保存義り、守秘義務へ配慮することを許容して この論点は、海外でも論争を呼んだ。 務、体制整備義務の実施を求める。疑わ いる ( 第三次勧告の解釈ノート ) 。守欧州、カナダでは憲法適合性が争われ しい取引の通報は義務付けていない。本秘義務の対象となる事項を通報義務の対た 規程には、犯収法において他の職業専門象外としても、何が守秘義務の対象とな欧州では、弁護士に通報義務を課する 家に義務付けられない依頼目的の検討義るか明らかとはいえないので、依頼者が指令又はその国内実施法が、欧州人 務や、の勧告で求められていな弁護士に相談することを躊躇するのでは権条約 6 条 ( 公正な裁判を受ける権利 ) い依頼者の説得義務が含まれている。以ないか、と懸念された。弁護士は、法律又は 8 条 ( 私生活、家庭生活、住居及び 下、順次検討する。 専門家として依頼者の基本的人権と正当通信の尊重を受ける権利 ) に適合するか な法的利益を擁護することを職務の本質が問題となった。欧州司法裁判所は、 としている。この弁護士の職責を全うす指令が訴訟手続に関連する弁護士活動 一一疑わしい取引の通報 るためには、依頼者の全面的な信頼の下について通報義務を免除していることか に、秘密事項を含め全ての事実の開示をら、欧州人権条約 6 条に抵触しないと判 犯収法及び本規程 受けた上で、依頼者にとって最善の方策断した ( 注 5 ) 。欧州人権裁判所は、 勧告は、弁護士を含む職業専を立案し遂行しなければならない。弁護指令を実施するフランス国内法及びフラ 門家に対して、金融機関と同様に、顧客士の守秘義務は、依頼者が、有利不利をンス弁護士会決定につき、通報義務の対 の疑わしい取引を通報することを義務付問 わすあらゆる事実を安心して弁護士に象が限定されること、弁護士会長を通報 けている。弁護士は、その職務上知り得打ち明けられることを保障する制度であ先としているので捜査機関に直接通報す た秘密を保持する義務を負っている ( 弁り、弁護士の職務の適正な遂行のためにる必要がないことなどを理由として、欧 護士法条、職務基本規程条 ) 。弁護不可欠である。日本弁護士連合会は、こ 州人権条約 8 条に違反しないと判断した 士の守秘義務は、刑法の秘密漏洩罪 ( 刑のような見地から疑わしい取引の報告義 ( 注 6 ) 。これらの判決を受け、諸国 法 134 条 1 項 ) という刑罰によって担務の導入に反対した ( 注 4 ) 。犯収法は、 は、英国を例外として、限定的に通報義 保されている。 職業専門家に疑わしい取引の通報義務を務を運用している ( 注 7 ) 。

10. 法律のひろば 2015年4月号

つん るアングラ・マネー等の実体解明が必要よって生じるの危険性は、簡易化さした、国際的に共有されている理解は、 であることが強調されてきた。この点、 れたの適用範囲を限定する ( その資金以外の「その他の利益」をテロ資金 すなわち、金融機関による ( 潜在的 ) 顧閾値を適切に管理する ) ことで、対応すの提供等の客体として明示した現行法の 客の包摂 ( 注貯 ) の必要性は、でるべきであろう。 下では、旧法下におけるよりも、容易に引 も確認されている ( 注。 (<>= を含第二の点は、整備された法制度の実効採用可能になった ( 注。この点を確認の む ) テロ資金供与を防圧する制度が、よ的運用にとって必要な事項である。このした上で、例えば、顧客が携帯電話を使法 りよく整備された現在、望まれるのは、 理解に基づけば、法制度の対象となる「資って金融取引をする場合の身元確認のシ その効果的な実施であり、そのために 金」の解釈も、 ( 旧法の前提であり、現ステム ( そのプライバシーを保護しつ は、 ( 特定事業者の主たる該当者である ) 行法もこれに依拠しているところの ) テ つ、 < / O に必要な O を確 金融業者の取引相手を、現実に即して理ロ資金供与防止条約及び勧告の実に行うための、システム ) の確立が、 解する必要があろう。 趣旨を踏まえ、適切になされる必要があ要請されることになろう。これは、 もっとも、を推し進めると、別のる (lnformation Technology) 法の課題でも 問題点が生じてくる。すなわち、新たに これとの関係で、第三に、今後も登場ある。 第四に、キャッシュク 1 リエ対策も、 顧客となり得る者は、 <<*--Äが発動されし得る新たな mobile money に留意する るべき閾値 ( 注以下の現金による取引必要がある ( 注邑。旧法の前提となった法令の運用上、重要な課題である。 をする者も多いであろう。そこで、そ、つテロ資金供与防止条約 1 条 1 では、「資 からは、 2008 年に実施し した取引は、 ( 一取引単位で処理される金」とは、あらゆる種類の財産及びこれた対日相互審査の結果として、現金等支 金額が閾値以下であるため ) によらの財産に関する権原又は権利を証明す払手段の携帯輸出入 ( いわゆるキャッシ るとと判断され、基準にるあらゆる形式の法律上の書類又は文書ュクーリエ ) に関する特別勧告の実施状 よれば、簡易化されたの適用が可 ( 電子的な又はデジタル式のものを含況につき、その実効性を更に引き上げる 能となる。その結果、当該顧客が身元をむ。 ) として定義されている。ことが指摘されてきた ( 注。これに対 偽っていた場合 ( 注、これを発見するも、同様の観点から、テロ資金の提供等しては、関税法 105 条の適切な運用に ことが困難になる。は、 ( テロ企図を一層、効果的に防止及び処罰するためよって対応がなされてきたところであ 者をはじめとする ) 潜在的なテロリスに、プリペイド・カード上の財産的利 り、評価できる。しかし、キャッシュク ト、その他のマネー・ロンダラ 1 を発見益、インター・ネット上で決済のために ーリエの態様は、近時も多様化ないし発 し、これらを規制当局の監督下に置くた 利用されるデータ等も、提供等の客体と展しつつある ( 注 ) 。テロ資金として利 めにも要請されるのであるから、にすべきことを提言している ( 注。こう用可能な現金を持った者の出入国管理に