繊工程、原料処理工程、加工工程 るところ、本件工場における石綿 等から、大量の石綿粉じんが発生粉じんの飛散量は、建屋内のみな し、これが、建屋内のみならず、 らず、建屋外であっても相当大量 開放された扉・窓等を通じて建屋であったものと考えられ、保税倉 訟務情報 外にも飛散していたこと、 < が石庫や石綿管出荷先における石綿粉 綿原料を積み込んでいた保税倉庫じんの飛散も考慮すれば、 < の石 にも相当量の石綿粉じんが飛散し綿曝露レベルは、 1 日数時間程度 ていたこと、 < 曝露期間当時に本の作業であっても、数年間従事す 16 条ただし書に基づき、被告国件工場で勤務していた作業員や近ることにより、ヘルシンキ・クラ ◎損害賠償請求事件 に対して国家賠償法 ( 以下「国賠隣住民らの中に、石綿肺を含む石イテリアが定める曝露レベルを超 ( アスベスト損害賠 法」という。 ) 1 条 1 項に基づき、 綿関連疾患を発症する者が多数現えることも考えられること、本件 償請求事件 ) 損害賠償金の支払を求め、また、 れており、周辺住民の中には、乾工場内で取り扱われていた石綿に ( 神戸地裁 水道管の製造・加工の仕事に従事燥肺当たり 5770 万本の石は、特に発がんリスクが高いとさ 平成年 3 月日判決 ) してきたが、石綿粉じんに曝露綿繊維が検出された者もあったこれる青石綿も相当量含まれていた 控訴 し、その結果、肺がん転移脳腫瘍となど、これらの事実に鑑みれものと推測できること、 < に胸膜 に罹患して死亡したとして、のば、 < が、 < 曝露期間中、本件作プラークが認められ、主治医の中 本件は、相被告株式会社 >- ( 以 にも、石綿曝露と肺がん発症との 下「相被告」という。 ) の下請遺族である原告 x が、被告国に業に従事したことにより、一定程 度の石綿粉じんに曝露していたも因果関係を肯定する見解があるこ ( 孫請け ) である運送会社の従対し、国賠法 1 条 1 項に基づき、 業員であった < が、昭和年から 損害賠償金の支払を求めた事案でのと認められる。ヘルシンキ・ク と、 < に喫煙歴がなく、他に肺が 昭和貶年までの間 ( 以下「 < 曝露ある。 ライテリア ( 平成 9 年に石綿肺がん発症リスクを高める特段の原因 期間」という。 ) 、相被告の工場 神戸地方裁判所は、要旨以下のん等に関する専門家が参加して開も見いだせないことに鑑みると、 とおり判示し、原告らの請求をい ( 以下「本件工場」という。 ) 内に かれた国際会議において合意され < の肺がん発症の原因は、本件作 おいて石綿原料の搬入及び石綿製ずれも棄却した。 た、石綿関連疾患の診断と評価に業中に石綿粉じんに曝露したこと 品の搬出作業等を行った際、石綿 にあった可能性が高いというべき 関する最新の基準 ) は、肺がんの 一 < について 発症リスクが 2 倍になる石綿曝露である。 粉じんに曝露し、その結果、肺が ろ んに罹患して死亡したとして、 < 2 相被告の安全配慮義務違反 < の肺がん罹患と業務との因レベルを本・年 / とし、当該 ひ の ないし過失の有無及び被告国の 果関係の有無 曝露レベルが達成される職業性曝 の遺族である原告、原告 >< 及 律 法 過失の有無 び原告 >< が、相被告に対して < は、 < 曝露期間当時、本件工露の例として、石綿製品産業等に 民法 415 条、 709 条ないし 7 場では、石綿原料の搬入過程、解おける 1 年間の曝露等を挙げてい 過失ないし安全配慮義務違反歹
薬効についての記載は、実質的にはサア景表法の優良誤認表示は、その要件 争点③ ( 本件チラシの配布は優良誤 において、ある商品表示と比較すべき対認表示 ( 景表法加条 1 号 ) となるか ) ン・クロレラ社の本件商品の内容を表示 したものである。 象として「実際のもの」だけでなく、「他①の主張 ア本件チラシでは、一見、「クロレラ」 の事業者に係るもの」を挙げているかアサン・クロレラ社は本件商品を販売 ろ 「ウコギ」という一般的な原材料の表示ら、「表示」において対象商品が他社のする目的で本件チラシを作成したのであの がされているだけであるが、この原材料商品等と識別できる程度に特定されている以上、その記載内容が事実であること の名称は被告商品である「サン・クロレる必要がある。本件チラシは、サン・クを直ちに証明できて然るべきであるか ラ < 」「サン・ウコギ」の商品名と類似ロレラ社の本件商品の商品名を表示するら、原告において、積極的な立証をしな している ものではなく、単にクロレラ等の効用をくても、サン・クロレラ社が本件チラシ イ本件チラシでは、サン・クロレラ社紹介するものにすぎないから、他社の商の内容を証明するに足りる証拠を提示で きない場合には、優良誤認表示をしたも の独自技術とされている細胞壁破砕技術品等と識別できる程度の特定はされてい のと事実上推定されるべき。 を用いた細胞壁破砕クロレラを紹介してない。 いる ィまた、本件チラシの内容自体につい イ「表示」が一般消費者にどのような ウサン・クロレラ社は、クロレラを用認識を与えるかの判断に際しては、本件ても、承認を受けた医薬品でなければ表 いた商品を販売する会社として知名度のチラシから看取できる情報のみを基礎に示することが許されないものであるとこ 高い会社であるから、本件チラシを見たすべきである。「クロレラ」という原材ろ、本件チラシによる表示は、本件商品 一般消費者は、本件チラシをサン・クロ料名を商品名に付けることは一般的であがそのような承認を受けていない商品で レラ社の本件商品のチラシであると認識るし、「細胞壁破砕クロレラ」を謳ったあるにもかかわらず、これを受けている かのように誤認させるものであるから、 する。 商品は、サン・クロレラ社商品以外にも 工本件チラシに従ってクロレラ研究会複数存在しているから、これらの表示を優良誤認表示に該当する。 に資料請求すると、サン・クロレラ社のもって、一般消費者が、サン・クロレラウさらに、本件チラシは、特定保健用 本件商品のカタログや申込書等が送付さ社の商品のチラシであると認識するとは食品にかかる特別用途表示の許可を得る ことなく、本件チラシにおいて特定の保 れ、それに基づきサン・クロレラ社の本考え難い ウクロレラ研究会に資料請求しても、険目的が期待できる旨の表示をしている 件商品の購入を申し込める。 クロレラ研究会が、資料請求者の承諾をのであるから、優良誤認表示に該当す ②サン・クロレラ社の主張 以下のような点から、本件チラシは、 得ることなく、サン・クロレラ社商ロ叩のる。 ②サン・クロレラ社の主張 同社の本件商品を表示したものとはいえカタログを送付することはない。 ア優良誤認表示の立証責任は原告にあ
る。 結論 があるから、優良誤認表示にあたると認 めるのが相当である」と判示した。 本判決は、以上のとおり判示して、サ ところが、本件チラシには、本件商ロ叩 そして、本件チラシ中の、慢性病の症ン・クロレラ社が本件チラシを配布するの商品名そのものは記載されていない 状が改善したとの体験談を記載した部分ことにより、本件商品の内容について優また、本件チラシの配布主体も名義上は ろ は医薬品的な効能効果があると表示する良誤認表示を行ったものとし、原告本件商品の供給者であるサン・クロレラの ものとした上で、本件チラシの記載内容 OZ の請求をいずれも認容した。 社ではないことから、本件チラシは、一法 は、医薬品としての承認を受けていない 見すると、商品の供給者とは全く無関係 本件商品につき、医薬品的な効能効果が の団体が、本件商品の主原料であるクロ 三本判決の意義・評価 あると表示するものであり、一般の消費 レラ等の効能等を一般大衆に啓蒙してい 者に対し、本件商品が「あたかも国によ本判決は、適格消費者団体に付与されるにすぎないようにも考えられる。 この点に関して、本判決は、本件チラ り厳格に審査され承認を受けて製造販売た景表法上の差止請求権に関する初めて されている医薬品であるとの誤認」を引の裁判例という意味で歴史的な意義を有シは本件商品の供給者であるサン・クロ き起こすおそれがあるから、このようなするものではあるが、そのような歴史的レラ社自身が配布したものであることを 表示は、商品の宣伝広告として社会一般な意義にとどまらず景表法に関する裁判前提として認定した上で、「本件チラシ に許容される誇張の限度を大きく越える例としてもいくつかの興味深い論点を提に関心を抱いた顧客が必然的に本件商品 の購入を勧誘されるという仕組みを自ら ものとして、結論として優良誤認表示に供しているように思われる。 該当すると判示した。 構築していた」という表示外の事情を考 慮して、本件チラシが本件商品の「表示」 また、優良誤認表示に該当するという 商品名を明示しない広告の「表 に該当するとの結論を導き出している。 には原告による効果効能が存在しないと 示」該当性 の科学的立証が必要であるとのサン・ク 本判決の判断枠組みの評価 ロレラ社の主張に対しては、本件商品が 本判決の判断枠組み このような表示外の事情も考慮して本 医薬品としての承認を受けていない以景表法 2 条 4 項は、同法の規制対象と 上、医薬品的な効能効果の有無にかかわなる「表示」につき、「顧客を誘引する件チラシを「表示」に該当するとした本 らず、一般消費者をして国による厳格な ための手段として、事業者が自己の供給判決の判断の枠組みをどのように評価す 審査を経ているがごとき誤認を発生させする商品又は役務の内容又は取引条件そべきであろうか もちろん、景表法による広告表示規制 るおそれがあり、商品選択に不当な影響の他これらの取引に関する事項について を与えるとして、商品の効果効能の有無行う広告その他の表示であって、内閣総の目的は、一般消費者による自主的かっ を問題とする必要はない旨判示した。 理大臣が指定するものをいう」と定義す合理的な選択を阻害するおそれのある行
特集法と判例からみる消費者問題のいま 景品表示法に基づく差止訴訟判決 研究会は、その活動のために独自に人 ような「クロレラ研究会」の名称を用い 3 当事者の主張 費というものを支出しておらず、団体 た本件チラシの配布につき、本件チラシ はサン・クロレラ社による本件商品の広各争点に対する当事者の主張の概要はしての会計管理や税務申告を行っていオ 、 0 告にほかならず、本件チラシに掲載され以下のとおりである。 たクロレラやウコギの薬効に関する記載 ウクロレラ研究会に資料請求すると、 は景表法上の優良誤認表示もしくは消費 争点① ( 本件チラシの配布主体 ) クロレラ研究会作成名義の資料が送付さ れてくるだけでなく、サン・クロレラ社 者契約法上の不実告知に該当するものと①の主張 して、景表法川条ないし消費者契約法 以下のような点から、本件チラシの配のカタログや注文書が送られてくる仕組 条に基づき本件チラシの配布の差止及び布主体として記載されているクロレラ研みとなっている。 優良誤認表示であることの周知措置を求究会はサン・クロレラ社の会社組織の一②サン・クロレラ社の主張 本件チラシは、クロレラ研究会が配 めて京都地裁に提訴した ( 以下「本件」部にすぎず、本件チラシの配布主体は、 したものであり、サン・クロレラ社が A い、つ。 ) 。 実質的にサン・クロレラ社である。 アクロレラ研究会の京都本部はサン・布したものではない。なぜなら、クロ クロレラ社本店所在地にあるほか、クロ ラ研究会は、サン・クロレラ社とは独 ~ 、 本件の争点 レラ研究会の会長はサン・クロレラ社取した組織であり、個人情報も独立して 本件において争点となったのは、①本締役の一人であり、かっ、サン・クロレ理していること、消費者がクロレラ研 会に資料請求しても、クロレラ研究会ゞ 件チラシの配布主体はサン・クロレラ社 ラ社の従業員は全てクロレラ研究会の会 資料請求者の承諾を得ることなく個人 か、それともクロレラ研究会という独立員となっている。 した組織か、②本件チラシは本件商品のイクロレラ研究会からサン・クロレラ報をサン・クロレラ社に提供すること 内容を表示するものであるといえるか、 社に事務所使用料の支払はなされておらないし、サン・クロレラ社のカタログ ③本件チラシの配布は優良誤認表示 ( 景ず、本件チラシに表示されたクロレラ研送付することもないからである。 表法間条 1 号 ) 又は不実告知 ( 消費者契究会の電話番号の回線契約者もサン・ク 争点② ( 本件チラシはサン・クロ ロレラ社であって、電話料金も全てサ 約法 4 条 1 項 1 号 ) に該当するか、とい ラ社の商品の内容を表示するものと、 う点である。本稿では、このうち景表法ン・クロレラ社が負担している。さら ろ えるか ) にかかる争点のみを取り上げることとしに、サン・クロレラ社は、本件チラシの ひ の 作成配布費用だけでなく、クロレラ研究① EOOZ の主張 律 法 以下のような一連の流れからすると、 会によるクロレラ等の広報活動に要する 費用を全て負担しているほか、クロレラ本件チラシにおけるクロレラやウコギ
特集法と判例からみる消費者問題のいま 景品表示法に基づく差止訴訟判決 り、原告において、クロレラやウコギの 争点② ( 本件チラシはサン・クロレう仕組みがある場合には」規制対象とな 効能効果が存在しないことを科学的に立 ラ社の商品の内容を表示するものとい ると判示した。 証するのでなければ、本件チラシが優良 えるか ) 誤表示に該当するとは認められない。 本判決は、①営利法人による新聞折込 争点③ ( 本件チラシの配布は優良誤 イ原告は前記立証を行っておらず、まチラシの配布は、通常、その商品の販売 認表示 ( 景表法間条 1 号 ) となるか ) た、サン・クロレラ社が本件商品の製造促進を目的とするものであると考えられ本判決は、医薬品としての承認を受し 販売につき薬事法条 1 項の承認を得てること、②本件チラシには、クロレラ研ていない商品であるにもかかわらず医、 いないとしても、それだけでは優良誤認究会が推奨するものを服用したことによ 品的な効能を表示することにつき、「 表示には該当しない り慢性的疾患が改善したとの記載があが国では、薬事法が制定された昭和 り、同研究会が推奨する商品の購入を強以降、医薬品は厳格に規制され、国に く誘導するものであること、③同研究会る厳格な審査を経て承認を得なければリ 本判決の判旨 が購入を推奨するのは、本件商品だけで造販売することができず、承認を受け あるから、本件チラシに興味を持って同 いない医薬品は医薬品的な効能効果を 争点① ( 本件チラシの配布主体 ) 本判決は、 EOOZ が主張したサン・ 研究会と接触した顧客は、本件商品の購示することが刑罰をもって禁止されて クロレラ社とクロレラ研究会との間の関入を勧誘されることからすると、本件チたのであるから、①医薬品的な効能効 係に関する事実関係を認定した上で、ク ラシは本件商品に関する「表示」と認めを表示する商品があれば、当該商品が ) 該効能効果を有することについて国の ロレラ研究会は、サン・クロレラ社からられると判示した。 独立して存立しているものとは考え難い また、本件チラシには本件商品の商品格な審査を経た医薬品であり、②通常 名の記載がないとのサン・クロレラ社の事業者であれば、商品を受けた医薬品 と判示した。むしろ、クロレラ研究会は、 サン・クロレラ社の商品の宣伝広告を行主張に対しては、商品を購入させるためない商品について医薬品的な効能効果 う同社の組織の一部門にすぎないと認定の不当な誘導を社会から排除し、一般消表示して販売しないであろうという社ム し、結論として、本件チラシの配布主体費者の適正な商品又は役務の選択を確保通念が形成されている」ところ、「医、 は、サン・クロレラ社であると判示しするという景表法の目的からすると、商品として承認がされていない商品につ、 品名の記載がないとの一事をもって規制て、医薬品的な効能効果が表示されて、 ろ る場合、当該表示は、一般消費者に対し、 対象から外すことは妥当ではなく、商品 ひ 名を表示しない広告であっても「多数の当該商品があたかも国により厳格に審の 法 消費者が当該広告で行われた不当な説明され承認を受けて製造販売されている に誘導されて特定の商品購入に至るとい薬品であるとの誤認を引き起こすおそ
特集法と判例からみる消費者問題のいま 景品表示法に基づく差止訴訟判決 為を制限及び禁止して一般消費者の利益であると通常は認識するであろう。 示外の事情として考慮したことが適切、 を保護するということにあるから ( 景表こういった表現物につき、表示外の事どうかということになろう。 法 1 条 ) 、表現物自体の内容から見て一情を一切考慮せず、特定の商品の商品名 この点については、議論が分かれ得 般消費者が特定の商品に関する「表示」が明示されていないからといって景表法ところであろうが、商品の供給者自身ゞ と到底認識しないようなものについての広告表示規制の対象外とするのは、景「本件チラシに関心を抱いた顧客が必殀 は、景表法によって規制される必要もな表法の「表示」の定義において「商品名」的に本件商品の購入を勧誘されるとい、 い。例えば、ある表現物において特定のを明示することを要求していないこと仕組み」を構築していたとされる本件 , 商品の商品名が明示されていない場合、 や、一般消費者による自主的かっ合理的おいては、表示外の事情として考慮す 通常は一般消費者がこのような表現物にな選択を阻害するおそれのある行為を制というのがごく自然な判断ではないか。 つき特定の商品に関する「表示」とは認限及び禁止して一般消費者の利益を保護その点で、筆者らは本判決の結論につ、 識しないであろうから、このような表現するという景表法の目的からしても適当ては基本的に正当と考えるものである。 物において、いかに事実と異なる表現がとは思われない もっとも、この本判決の判断枠組みを、、 あったとしても、少なくとも景表法上の そうすると、本件商品の商品名そのも こまで拡張できるか、例えば本件とは 問題は生じないものと考えられる。 のは記載されていない本件チラシの「表なってチラシの配布主体と商品の供給 しかしながら、ある表現物において特示」該当性の判断において、本判決が表が全く無関係であったような場合にも 定の商品の商品名が明示されていなくと示外の事情も合わせて考慮して検討した判決の判断枠組みの適用が可能かどう、 については、今後さらに議論が深めら も、表示外の事情と合わせて考慮すれば 判断の枠組み自体は、景表法の目的から るべきであろう。 一般消費者が当該表現物につき特定の商しても決して許されないものではなく、 品に関する「表示」と容易に認識し得るむしろ適切なものと評価されてよいであ ケースというものは十分にあり得る。例ろう。 2 医薬品的効果を標榜する表示 えば、八百屋の店頭でキュウリのカゴの 優良誤認表示該当性 本判決の射程 横に「本日半額」という札が置いてあれ 本判決の判断枠組みとその評価 ば、「本日半額」という札には特定の商そうすると、本判決で問題とされるべ 品名は一切記載されていないものの、一きなのは、本件チラシの「表示」該当性本判決は、ある商品が医薬品として ろ 般消費者は、キュウリのカゴの横に置かの判断において、「サン・クロレラ社が国の承認を受けていないにもかかわら ひ の れていたという表示外の事情を合わせて本件チラシに関心を抱いた顧客が必然的医薬品的な効能効果があると表示した 律 法 考慮して、その札はその店頭にあるキュ に本件商品の購入を勧誘されるという仕合、「あたかも国により厳格に審査さ ウリという特定の商品に関する「表示」組みを自ら構築していた」という点を表承認を受けて製造販売されている医薬ロ邱
特集法と判例からみる消費者問題のいま 「ねずみ講」に係る法的論点 旨や性質等に関する破産法上の論点、詐害行為取消 する不当利得返還請求は不法原因給付に 債権者代位権との関係や下位会員が上位会員に対し 該当しないと判一小してもよいよ、つに思わ ( 1 ) 多段階的で系統化された組織構造をもった取引を 不法行為に基づく損害賠償請求をする場合の違法性 れるが、本件最判は、無限連鎖講の破産勧誘し、その取引に参加して新たな参加者を獲得すれ ば、多額の経済的利益の配当が受けられるとして活動 評価や過失相殺、損益相殺など多岐にわたる論点も 事案における管財人からの請求を一律に する組織をこのように呼ぶことにする。 る。しかし、これらの論点については紙幅の都合も 不法原因給付には該当しないとせず、前 り、本稿では踏み込まない 述のとおり、信義則により抗弁主張を制 ( 2 ) 通信販売業のオ 1 ナ 1 となって下位のオ 1 ナ 1 を 獲得すれば高額の「コミッション」が得られるとして ( 6 ) 経済革命倶楽部ßæo) 、オレンジ共済、八葉 限するという構成をとっている。 いた 1 社 ( 以下【社 ) の事案 ル 1 プやエル・アンド・ジー ( »-ä & ) などがあるが、 本件最判がこのような構成をとったの いずれもマルチ商法の手法を活用したものである。一 に関する京都地判平成四年 9 月四日 ( 平成絽年 ( わ ) は、注 5 で指摘したような多岐にわたる 第 1233 号【判例集未登載 ) と、健康食品を購入し れらの事件は「マルチ商法型出資勧誘トラブル」と呼 論点における論理の齟齬や評価矛盾など れている (http ://www.kokusen.g0jミPdfZnー2008080 が生じるのを回避し、結論の妥当性を確て会員になり、新たな会員を獲得して自分でも商品を ー2. pdf) 。 保するため事案ごとの事情を踏まえて柔「リピ 1 ト」購入すると「積立年金型ポーナス」が支 払われるとする共済組織を装ったライフ・アップ社の ( 7 ) これは自転車操業的な詐欺組織 ( ポンジ 1 スキ 軟に判断すべきであるとの考慮が働いて 事案に関する東京地判平成年 3 月四日 ( 判例集未登 ム ) でもあるが、概念上は「ポンジースキ 1 ム」と「 いると考えられる。 限連鎖講」は異なる ( 齋藤雅弘「ねすみ講、投資・ 載 ) である。 殖詐欺、マルチ商法ー破綻必定型スキ 1 ムの消費者 ( 3 ) 判例集の掲載判決としては、人工宝石の販売に藉 五おわりに ロした「・ ()n プログラム」と称する組織の主宰者ら 害 ( 上 ) ( 下 ) 」現代消費者 2 号 129 頁、同 3 号 12 頁 ( 2009 年 ) 参照。 ) 。 現在、内閣府消費者委員会の特定商取を無連法違反とした最判昭和年肥月肥日 ( 刑集巻 8 号 5 4 7 頁 ) とその控訴審 ( 判時 110 5 号 15 4 ( 8 ) 改正経緯と内容は増山壽一「無限連鎖講の防止 , 引法専門調査会において、特商法の改正 関する法律の一部改正」号貶頁参照。 頁 ) 及び一審 ( 判タ 4 8 0 号 171 頁 ) 、同様の人工 か議論されているが、本稿で述べたよう 宝石の取引に係る松山地判昭和年 6 月日 ( 判タ 4 ( 9 ) ベルギーダイヤモンド社の幹部が不起訴処分と なピラミッド型の連鎖販売 ( 取引 ) 業の ったのが代表例である ( 法セ 378 号 5 頁「事件と法」 80 号 174 頁 ) 、大阪地判昭和年 2 月 ( 判タ 5 違法性を踏まえると、特商法においても 「不安を残した不起訴処分・ベルギーダイヤモンド 26 号 254 頁 ) 、大阪高判昭和年川月日 ( 判タ 無連法で賄い切れない形態の連鎖販売 件」〔 19 8 6 年〕参照。 ) 。 号頁 ) くらいである。 ( 取引 ) 業、例えば多段階構造が入れ替 わる形態のものなどの禁止も含めた規制 ( 4 ) クインアッシュ社 ( 以下【社 ) に関する最判平 ( 四判決の分析については多数の文献がある。さし 8 一 1100 ワ】【 0 一頁 成年川月日民集巻号 たり松本恒雄「紹介型マルチ商法の違法性について」 の整備が検討されることを期待する。 中川淳先生還暦記念「民事責任の現代的課題」 ( 1 ( 5 ) 本件最判には破産管財人の法的地位、否認権の趣 ( 注 ) 45 ・法律のひろば 2015.6
であるとの誤認」を引き起こすおそれが等の選択」を確保するという景表法の観ることも考えれば、むしろ適切といえる第 あるから、実際に当該商品が表示された点からは、本件商品に標榜されたとおり面もあるのではないかと考えられる。控 効能を有するかを問うまでもなく、優良の効能・効果がある以上、何ら問題がな訴審以降の判断が待たれよう。 誤認表示に該当するものとした。 いという考え方も十分に成り立ち得ると ろ しかしながら、改正薬事法 ( 以下「薬思われるのである。 優良誤認表示であることの主張立証の 律 機法」という。 ) において「承認を得た本判決は、おそらくこの点を考慮した 責任 法 医薬品」以外の医薬品が効能・効果を標のであろうが、薬事法 ( 当時 ) が昭和肪 本判決は、実際に本件商品に表示され 榜することを禁止しているのは医薬品の年に制定されてから、医薬品に関する一た効能を有するかどうかを問題としなか 「品質、有効性及び安全性の確保並びに定の社会通念が形成されているものと判ったため、景表法の差止請求において優 これらの使用による保健衛生上の危害の示した。すなわち、薬事法の制定によっ良誤認表示であることの主張立証責任が 発生及び拡大の防止のため」 ( 薬機法 1 て、いわば「医薬品的な効能・効果を標原告と被告のどちらにあるかについて 条 ) であって、「一般消費者による自主榜しているのであれば、そのような効は、判断を下さなかった。 的かっ合理的な商品等の選択」を確保す ・効果につき国から承認を得ているこ 景表法上の差止請求権は適格消費者団 るためではない。そうすると、医薬品と と」に対する一定の社会の信頼が形成さ体に対して民事上の実体権として付与さ しての承認を受けていないにもかかわられているというのである。そうすると、 れたものと考えられるところであり ( 注 ず、医薬品的な効能効果があると表示し「承認された医薬品」ではないのに医薬 5 ) 、民事訴訟における一般的な主張立 た場合には、実際に当該商品が表示され品的な効能・効果があると表示すること証責任の分配の考え方に従えば、当該表 た効能を有するかを問うまでもなく優良は、 かかる社会の信頼に反するものであ示が不当表示であるとして差止めを求め 誤認表示に該当するとした本判決の考え って「一般消費者による自主的かっ合理る適格消費者団体において主張立証責任 方には、景表法の観点からは、やや飛躍的な商品等の選択」を阻害するものと考を負うべきものと考えるのが自然ではあ る。 があるとの考え方もあり得よう。 え得ることになる。 例えば、仮に、本件商品が本件チラシ このように見ていくと、実際に当該商しかしながら、不当表示の中でも優良 において標榜された効能・効果を有する品が表示された効能を有するかを問うま誤認表示については、契約条件の問題で ことが科学的に証明されたものとする。 でもなく優良誤認表示に該当するとしたある有利誤認表示とは異なり、表示内容 薬機法の観点からは、本件商品が国によ本判決の考え方は、景表法の観点からもの合理性に関する裏付け資料は事業者の る厳格な審査を受けていない以上、なお一つの論理として十分にあり得るものでみが有していることが多く、一定の強制 問題があるといい得るであろうが、「一あって、「承認された医薬品」に対する的な調査権限のある行政が行う措置命令 般消費者による自主的かっ合理的な商品社会の信頼が安全性も含めてのものであにおいてすら不実証広告規制 ( 景表法 4
一一本判決の概要 CD 景品表示法に基づく差止訴訟判決 【 0 ( 注 4 ) 適格消費者団体により景品表示法川条に基づく差止を 事案の概要 ろ 請求がなされ、新聞折込チラシの配布の差止め等が 被告サン・クロレラ販売株式会社 ( 以 律 認められた事例 ( 京都地判平成年 1 月幻日 ) 法 下「サン・クロレラ社」という。 ) は、 中本総合法律事務所弁護士大高友一不特定多数の消費者に対し、クロレラ (O ・・ (æ) やウコギ ( イソフラキシ 御池総合法律事務所弁護士志部淳之介 ジン ) を含有する商品 ( 以下「本件商品」 示を現に行い又は行うおそれがあるときという。 ) を販売している会社であると 一はじめに は、当該事業者に対し、当該行為の停止ころ、「日本クロレラ療法研究会」 ( 以下 多数の消費者に急速に拡大する被害を若しくは予防又は当該行為が優良誤認表「クロレラ研究会」という。 ) の名称を用 もたらす不当表示については、従前から示又は有利誤認表示である旨の周知そのいて、クロレラやウコギの薬効を宣伝す 不当景品類及び不当表示防止法 ( 以下「景他の措置を採ることを裁判所に請求できるともに、クロレラ研究会の推奨するク ロレラ等を摂取するよう勧める新聞折込 表法ーという。 ) によって禁じられ、違ることとされた ( 景表法川条 ) 。 反行為については行政機関による措置平成年 1 月幻日、京都を中心に活動広告を定期的に配布していた ( 以下「本 ( 措置命令等 ) がなされていた。それにする適格消費者団体である京都消費者契件チラシ」という。 ) 。その本件チラシの 内容は、大要、クロレラやウコギを摂取 もかかわらず、事業者による不当表示は約ネットワ 1 ク ( 以下「」とい 減少することはなく、規制強化の必要性う。 ) によって我が国で初めて提起されすることで、腰部脊柱管狭窄症や肺気 た景表法川条に基づく不当表示の差止請腫、自律神経失調症・高血圧等の症状が が議論されていた。 こうした議論を受け、平成幻年 4 月 1 求訴訟につき、京都地方裁判所において改善したという体験談が多数掲載されて の請求を全面的に認容する判決いるというものであるが、本件チラシを 日より、行政機関による措置に加えて、 不特定かっ多数の消費者の利益を代表す ( 以下「本判決」という。 ) が言い渡され見た消費者がクロレラ研究会に資料請求 る「適格消費者団体」 ( 消費者契約法 2 た ( 注 1 ) 。本稿は、本判決の概要を紹介や問い合わせ等を行うと、サン・クロレ ラ社の本件商品のカタログが送付された 条 4 項 ) に景表法に基づく不当表示の差するとともに、本判決の意義・評価につ り、本件商品の購入を推奨されたりする き検討を加えるものである ( 注 2 ) 。 止請求の権限が付与された。すなわち、 という仕組みとなっていた。 事業者が、不特定かっ多数の一般消費者 0 0 Z は、平成 % 年 1 月日、この に対して、優良誤認表示及び有利誤認表 ( 注 3 )
者から、契約当時、当該高齢者に十分説ら、平成年時点において女性に意思能無能力があるかどうかは、問題となる 明をして理解してもらい、自らの意思で力がないと認めるには、これを認めるに個々の法律行為ごとにその難易、重大性 契約をした、と主張される。これに対し足りる合理的な立証が必要である。」と なども考慮して、行為の結果を正しく認 ては、医師の診断書で、契約当時に判断して、医師の診断にもかかわらず、・ 5 年識できていたかどうかということを中心タ 力がないことが立証できればよいが、契前からの意思無能力を認めず、 1 年前に に判断されるべきものである。」「社会通の 約当時の医師の診断書がない場合が多同じ商品を 3 着購入したことを理由に、 念上、自己の利益を守るための弁護士へ法 、 0 その時期から意思無能力を認めたにとどの訴訟委任契約の意味を理解すること 東京地裁平成年 4 月日判決 ( 消費まった。 は、自己がそれ相当の経済的な負担を伴 者法ニュ 1 ス号 311 頁 ) は、まさに、 このように、意思無能力の立証は容易う本件各連帯保証契約及び本件根抵当権 このような場合の立証の難しさを示してではないが、かかりつけ医の診断書、障設定契約の意味を理解することよりも容 いる 害者手帳、療養手帳、日常生活について易であると解され、原告には、本件記録 事案は、平成年 1 月 3 日から平成 の家族や親族、知人、民生委員、駐在所上 ( 鑑定の結果 ) 、訴訟委任契約の締結 年 7 月 1 日までの間に、プティックにおの警察官、福祉事務所職員、ケアマネ 1 に当たり訴訟能力を有していたと認めら いて、多数回にわたり、婦人服等 280 ジャ 1 等々の証言を求めることになる。 れるが、このことをもって、本件各連帯 点 ( 総額約 1100 万円 ) を購入した女 保証契約及び本件根抵当権設定契約の締 性 ( 平成年 1 月当時歳、独身、一人 意思能力の有無は事案ごとの判断結についても、その効果意思を有してい 暮らし。以下「女性」という。 ) が、平意思能力とは、自己の行為の結果を判 たとすることはできない。」として、被 成年 8 月当時、アルッハイマー型認知断できる精神能力である。したがって、 害を回復するために弁護士と委任契約を 症、その発症は 5 年前と推定されるとい その有無は、問題とされる法律行為の種締結するのに必要な程度の意思能力と、 う診断を受けたものであるが、裁判所類、特に行為の複雑性や重大性の程度に原因となった契約締結をする意思能力と は、「平成年 8 月時点において、女性よって異なるから、個別事案ごとに判断は、自すから差があるとしている。 が意思能力を喪失していたといえる。しされなければならない。 また、後述する適合原則違反に関する かし、このことから、 ( 5 年前である ) 東京地裁平成年 9 月四日判決 ( 判タ平成年最高裁判決が「具体的な商品特 平成年時点において女性の意思能力が 1203 号 173 頁 ) は、「意思能力と性を踏まえて、これとの相関関係におい なかったとい、つことにはならない。アル は、自分の行為の結果を正しく認識し、 て」取引の適合性を判断すると判示して ッハイマ 1 型認知症は時間の経過と共に これに基づいて正しく意思決定をする精いることも、同様であろう。 知的機能障害が進行するものであるか神能力を有すると解すべきであり、意思 したがって、意思能力の有無について