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検索対象: 法律のひろば 2015年8月号
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1. 法律のひろば 2015年8月号

【 , 、ラスメント判例ファイル う原告供述は信用できる。原告がその当時被告から不当重大なミスを繰り返したのであり、解雇事由を定めた就 な利益を得ようとしているような状況は見当たらないの業規則条 2 号「従業員の就業状況または職務能力が著 であって、被告の主張は採用できない しく不良で、就業に適さないと認められる場合」及び同 の言動は、業務体制の改善の提案をした原告に対し条 4 号「前号のほか、やむを得ない事由がある場合」に て逆に不利益を課すことをほのめかすものであって、不該当する。 被告は債務整理事件を多数扱う法律事務所であるこ 法行為を構成する。 が、弁護士費用の一部を精算していなかった原告 とから、被告で勤務する事務職員には、弁護士の指示に に対し、他の職員の前で「これこそ横領だよ」と言った従い、特に債務整理に関する事務処理を迅速・正確・適 とする原告供述は、原告が当日交際相手に送ったメ 1 ル 切に行、つことが強く求められるところ、原告は、重大な ミスを短期間に繰り返し犯していたのであり、求められ の記載に裏付けられており、信用できる。原告を犯罪者 呼ばわりしたことは、不法行為に当たる。 ている能力や適格性を満たしていなかった。また、被告 が、原告の接客態度について、「気持ち悪い接客は平成年 4 月下旬頃に、原告を任意整理担当から自己 をしているからこ、ついう気持ち悪いお客さんにつきまと破産・個人再生担当の事務処理へ配転することを考え、 われるんだよ。さんはこういう気持ち悪い男が好きな原告に債権者一覧表の作成を命じたが、原告には債権者 のかーと言ったとする原告供述は、原告が当日交際相手 一覧表を作成する意欲が見られなかったのであり、解雇 を回避する措置を講じた。したがって、本件解雇は相当 に送ったメ 1 ルの記載に裏付けられており、信用でき る。のこの言動は、原告に対する侮辱であって、不法性も合理性も備えたものである CD 行為に当たる。原告のパワハラについてのその余の主張【原告の主張】 は、的確な裏付けを欠くものであって、採用できない。 被告が指摘するミスについては、そもそもミスといえ ないものか、重大視できないミスであり、原告の能力が 著しく不良であったとはいえない 被告の主張する解雇事由は、ミスといえないものか、 ハワハラとの関係性を検討するため、補足として、本 事案の主たる請求である解雇の有効性について、被告及重大とはいえないミスであって、原告は就業規則条 2 び原告の主張と裁判所の判断の抜粋を記載する 号の「従業員の就業状況または職務能力が著しく不良 で、就業に適さないと認められる場合」にも同条 4 号の 「前号のほか、やむを得ない事由がある場合」にも当た らない。したがって、本件解雇は無効である。 △ 原告は、依頼者からの質問を 5 日間放置した、定め られていた過払金の和解基準を守らずに和解した、など 【被告の主張】 所 の 断 57 ・法律のひろば 2015.8

2. 法律のひろば 2015年8月号

ー , 、ラスメント判例ファイルー H A R A S S M N T 金をお客に返していいのかよ。これこそ横領だよ」と他今朝から首が痛くてさ。それでさ、さんの接客聞いて カーツとなっちゃったの。なんでそんなお客に媚びるよ の弁護士や職員もいた中で大声で言った。 平成年間月初旬頃、原告は、過払金返還請求のみ うな接客するの」と言った。 で受任した依頼者から、「自己破産の申立てをしたが、 @ 平成年又は年頃、原告が、に対し、支払の猶 今後もそちらに弁護士費用を支払い続けてもいいか」と予を頼んできた依頼者について相談した際、は、「こ 聞かれ、に経理処理について相談すると、は、「裁のお客さんは、さんの知り合いなのか。彼氏だからそ 判所に当事務所は過払請求だけ受任して、他の債務は放ういうこと言うのか」と聞いてきた。 o は、原告がミスをした際に、「普通の人ならわか 置するような事件処理をしたと誤解を招く危険がある。 そういうことを心配するような質問なら分かるけど、事るんだよ」、「この事務所でそんな思考をするのはさん だけだよ」などと日常的に言っていた。 務処理の質問なんかしてバカなんじゃないの」と言っ は、敢えて他の職員の前で、大声で原告を叱責し ていた。は、平成年又は年頃、原告に対し、「こ 平成年間月日、原告が事務所の応接室で被告代 んなに皆の前で怒られて悔しくない。俺だったら嫌だ 表者とから指導を受けている際、は、「そんなこと、 ね」と言ったことがあった。 俺の小学生の子供だってわかるよ。どんだけ出来が悪い んだよーとバカにしたような口調で言った。 平成年 8 月 9 日、原告が、ネットワークサー は、平成年貶月日、全件について和解前に弁の隣に置かれていたビン・缶用のゴミ箱を移動させる と、は、無断でゴミ箱を移動させたとして、始末書の 護士が確認してほしいと申し入れた原告に対し、「誰か に入れ知恵されてんだろ。お前の彼氏は確か弁護士にな提出を命じた。また、平成年川月川日、原告がメモ書 りたかったって言ってたな。それともお前の親族がうち きの上に物を置いてしまったことについて、は、「何 が非弁だって言ってんだろ。うちの事務所にたかろうと やってんだよ。どういう思考なの。頼むよ」と大声で怒 鳴った。 してるんだろ。そっちがその気なら徹底的にやるぞ」と 言った。 平成年 5 月日、原告が出勤したところ、机の上 3 = 被告の主張 時効の事ム 、大きく乱雑な字で「様へはあ 5 で受任 (@ 5 2 5 0 0 ) じゃないんでしょ ? なぜ減額 原告が、無断で、依頼者に対して「弁護士費用は月々 報酬を計上しないのボランティアはあ 5 理 2 万円で結構です」と説明して、トラブルになったため、 解不能。今後は全件さんにチェックしてもらう様にし (-) が「そんな煮え切らない話し方ではかえって気持ち悪 て下さい . とが記載したメモが置かれていた。 がられるだけだ」という趣旨のことを話したのであり、 指導として行ったことである。 平成年又は幻年頃、は、原告に対し、「俺さー 55 ・法律のひろば 2015.8

3. 法律のひろば 2015年8月号

る。この点を措くとしても、平成年 3 月以示されることによる原告の不利益が本件照会としている。残念ながら、この不利益の範疇に 降の納税者の体調不良を立証しようとするのに応じないことによる不利益を上回ることがは、税理士の収入維持は含まれるはずはない。 ただ本事案の背景には深刻な事情がある であれば、原告の平成年の確定申告書等と明らかである。したがって、税理士が本件照 それ以前の確定申告書等を比較するのでなけ会に応じて本件確定申告書等を送付したこと親族間の争いの中で、 < 社との関わりが深い れば意味がないはずである。ところが、税理 ( 本件開示行為 ) は、守秘義務に違反する違税理士の立場も複雑である。すなわち、①原 告は、 < 社入社前から、おそらく入社後も個 士が原告の確定申告を行っていたのは平成法な行為というべきである。 人事業として建築工事業を営んでいたこと、 年から平成幻年までであり、平成年の確定 申告は担当していない。そうであるとすれ ② < 社の前社長は原告の実母であり、現社長 ・検討 は原告の伯父 ( 原告の母の兄 ) であり、 < 社 ば、税理士の所持する確定申告書等だけでは 原告が平成年に体調不良により収入が減少いわゆる弁護士会照会といわれる制度と税の実質的オーナーであること、③ < 社が提起 したかどうかを認定することはおよそ期待で理士の守秘義務との関係が争点となった事案した別件訴訟は、現社長である兄が、前社長 きないというべきであるから、最長川年間にである。弁護士会照会については、最高裁昭である実妹の在任中における背任行為等を指 わたる確定申告書等の送付を求める照会事項和年 4 月新日判決が、犯罪歴の照会を受け弾したものであること、④ < 社現社長は、他 は、条照会としての必要性、相当性を欠くそれを漫然と回答した自治体に対し損害賠償にも代表者をつとめる企業を有しており、税 不適切なものといわざるを得ない。条照会を認めており、照会を受けた者が回答を行、つ理士は開業以来のこれらの企業の顧問税理士 ことには損害賠償のリスクを負うことを認めを受任していたこと、⑤原告と税理士は、原 の公共的性格という観点からみても、本件照 告が大学生であった頃から面識があったこ 会が別件訴訟における真実の発見及び判断のているといえる と、などが挙げられる。 適正を図るために必要かっ有益であるとは言本事案で、当然のことであるが、裁判所は、 、 0 守秘義務は「税理士業務の根幹に関わる極め実務的な発想からすれば、いわば < 社を通 ⑤確定申告書及び総勘定元帳の内容は、原て重要な義務」と明示している。その上で判じて弁護士と密接な関係にある税理士は弁護 告本人の収入額の詳細のほか、営業活動の秘決は、税理士が弁護士照会により報告を求め士に情報を提供することは容易であったはず 密にわたる事項や家族関係に関する事項等、られたとしても、「正当な理由」がある場合である。しかし、あえて弁護士会照会をとる プライバシーに関する事項を多く含むものでには報告を拒絶することができ、正当な理由ことで、税理士の守秘義務違反を指摘される 訟 性を主張することを意図したかもしれない。 ことに対する納税者の期待は保護すべき法益た場合には守秘義務に違反すると示した。 訴 であり、これらの事項が開示されることによ この「正当な理由」の判断に当たっては、やはり紛争が始まった段階で、本来、原告が引 務 る納税者の不利益は看過しがたいものという報告が得られないことによる不利益と、照会保管等すべき確定申告関係の資料を、税理士の 税 律 は、原告に返却すべきだったといえよう。 に応じて報告することによる不利益とを、 べきである。 法 ( はやし・なかのぶ ) 3 、一。、 = 、 000 「《。」 0 , 《 0 」、《《 00 、 00 ~ 000 」 0 」 = 』 000 」、 000 000 《、 0 、・ 0 一 ( ⑥本件確定申告書等については、これが開個々の事案に応じて具体的に比較衡量すべき

4. 法律のひろば 2015年8月号

特集危険ドラッグの規制と薬物事犯者への処遇・支援 危険ドラッグの規制と施策 ともと医薬品開発のために、多くの類似 の誤解を生ずるおそれもあった。そこで 成分・作用 物質が作られ研究されていた物質群であ 警察庁と厚生労働省が合同で呼称につい て公募し、「危険ドラッグ」で統一する危険ドラッグの作用は含まれる成分にるが、医薬品となった物質はない。何ら こととした。 よるものであり、形態 ( 植物片、粉末状かの理由で医薬品とはならなかったと考 等 ) とは関係がない。危険ドラッグに含えられるが、研究論文や合成方法は公開 まれる成分は多種多様であり、合成カンされており、情報が入手可能となってい 3 販売形態 ナビノイド系、カチノン系、トリプタミる。これらのうち有名な物質群は、研究 危険ドラッグは、アダルトショップなン系、亜硝酸系などに分類され、想定さ者の名前をとったやに番号の ど店舗での販売やインターネット経由でれる作用も様々であるが、いずれも何らついた通称 ( ー 018 や 01 など ) で呼ばれている。これらが医 1 販売など様々な形態かの多幸感が得られると考えられてい の販売、デリバリ で販売される。また、海外から入手するる。これらの多くは人体影響の科学的デ薬品にならなかった理由は不明だが、期 ータが少ないことから、詳細な作用は不待された作用がない、あるいは毒性が許 方法もある。 容できないほど強い、といったことが考 危険ドラッグの流通については、不明明なことが多いが、大まかに分ければ、 な点が多いが、製品が海外から輸入され中枢神経系への抑制作用を持つもの ( ダえられる。これらの物質は中枢神経系へ る場合と、原料が輸入され国内で製造さウナ 1 系 ) 、興奮作用を持つもの ( アツの作用を持っことが明らかなため、毒性 れる場合がある。危険ドラッグを輸入す 1 系 ) 、幻覚作用を持つものがあるとの強さが医薬品にならなかった一因であ る可能性は高く、そのことからも使用は る者は成分が国内で規制対象ではないこされている。 とを把握した上で輸入するため、摘発の抑制作用というのは、主に合成カンナ危険であるといえる。 合成カンナビノイドは、大麻に似せる リスクがないと考え、違法薬物の密輸のビノイド系と呼ばれる物質群が持っとさ ためか「ハープ」に含まれることが多く、 ように隠匿せず、通常の輸入貨物などとれる作用である。カンナビノイドとは、 して輸入することが多い。国内で製品を大麻 (cannabis) に作用が類似しているその中でもー 018 を含むスパイ 製造する場合は、原料となる化学物質をという意味である。日本でこの物質群のス (Spice) というものは特に有名であ り、国連の報告書でも言及されるほどで 流通が多く確認されるようになったのは 輸入し、乾燥植物片と混ぜるなどしてい る。摘発事例では、化学物質を何らかの平成幻年頃で、現在でも最も多く確認さある。シリーズの物質を含むハ 溶媒に溶かし、それを植物片に噴霧したれている。出現当時と比較して、あとにプの登場によって店舗や乱用者が急増し ろ 後乾燥させ、小分けし製品化していた事出現した物質は毒性がより強い傾向があたようである。 例がある。 り、使用後直ちに意識を失うなど危険な 国内でも、指定薬物制度による規制がの 律 始まった直後に販売店舗が激減したが、 法 作用を持つものもあるとみられる。 ちなみに、合成カンナビノイドは、もその後シリーズが上陸した頃から

5. 法律のひろば 2015年8月号

月刊法律のひろば 2015 VOL68 No. 8 August rCz=O==N=zT==EZEN==T==S=== ー危険ドラッグ情勢と取締り等の状況 / 佐藤正尚 12 ー危険ドラッグの規制と施策 / 渕岡学 4 薬物事犯者への処遇・支援 危険ドラッグの規制と ◆特集◆ 72 ・ひろば法律速報 / 74 ・ひろばの書棚「企業統治の法と経済比較制度分析の視点で見るガバナンス』 / 71 ■高度外国人材の受入れ促進に向けた取組 ■効果的な人権啓発活動のための二つの試み ひろば時論 / 2 弁護士法に基づく照会と税理士の守秘義務 / 林仲宣 ザ・税務訴訟 酒気帯び運転免責条項の解釈と飲酒の有無 / 深澤泰弘 59 保険判例研究第 32 回一一保険判例研究会 の請求を却下し、その余の請求を一部認容、一部棄却した事例 / 54 地位確認請求については、被告で勤務する意思を喪失していたとして棄却し、将来分 メントに対して慰謝料等の支払を求めた事案において、解雇は無効であるとしたが、 無効であると主張して、地位確認、解雇後の賃金及び賞与、上司からのパワーハラス 被告 ( 弁護士法人 ) に雇用されていたところ解雇された原告が、被告に対し、解雇が ハラスメント判例ファイル第 1 8 回一ハラスメント判例研究会 ◆連載◆ ー危険ドラッグ禍の残したもの / 小森榮 44 ー薬物事件の現状と課題 ー旭川からの報告 / 横地環 37 ー保護観察所における薬物事犯者処遇の新たな取組 ー更生保護における薬物事犯者施策の概要 / 押切久遠・赤木寛隆 29 ー再犯防止に向けての総合的な取組 / 會田幸男 20 ー川越少年刑務所における特別改善指導 ( 薬物依存離脱指導 ) の実施状況 弊社新刊図書・雑誌のご案内・・・・・ h p : ″ gyosei. jp ・次号予告 / 69 ・訟務情報 / 76 装丁 /Kaz

6. 法律のひろば 2015年8月号

か られたことから、年齢を問わず「一成年当時 ) ないし 797 万世帯えないから、地公災法条 1 項等 地公災法が制定された当時に般に独力で生計を維持することが ( 平成年当時 ) 存在するところ、 が遺族補償年金の受給要件につき おいて不当な差別的取扱いであ困難である」と考えられるとし平成年国勢調査に基づき歳か本件区別を設けていることは、憲 ったか ら歳までの年齢階層につき家事法条 1 項に違反しないというべ て、遺族補償年金の受給要件とし ろ ひ 遺族補償年金の受給要件を定めて年齢要件を設けず、年齢を問わのみしている妻 ( 専業主婦 ) と家きである。 る地公災法条 1 項の趣旨は、前 ず遺族補償年金を受給できるとし事のみしている夫 ( 専業主夫 ) の 4 本件区別は国際規約に違反す律 るか たものである。 人数を比較すると、家事のみして 記のとおりであるところ、妻以外 いる妻の人数は、家事のみしてい 地公災法が制定された昭和貶年 x は、地公災法条 1 項等が遺 の遺族については、一定の年齢 ( 歳以上若しくは歳未満 ) に該当当時の社会情勢からすれば、遺族る夫の人数の 100 倍を大きく超族補償年金の受給要件につき本件 する場合又は一定の障害の状態に補償年金の受給要件につき本件区えているのであり、専業主婦の世区別を設けていることは、市民的 ある場合に、「一般に独力で生計 別を設けることについて、合理性帯数は、専業主夫の世帯数よりは及び政治的権利に関する国際規約 を欠くものであったとはいえな を維持することが困難である」と るかに多いことが認められ、これ ( 自由権規約 ) 条並びに経済 考えられるのに対し、前記各場合 らに照らせば、夫が死亡した場的、社会的及び文化的権利に関す のいずれにも該当しない者につい ②今日において不当な差別的取合、専業主婦世帯において夫が死る国際規約 ( 社会権規約 ) 3 条に 扱いであるか 亡した場合はもちろんのこと、共違反する旨主張するが、前記のと ては、「一般に独力で生計を維持 働き世帯において夫が死亡した場おり、本件区別は、合理性を欠く することが困難である」とは考え 今日においても、①女性 ( 特に、 とはいえず、合理的理由のない不 られないことから、前記各場合の配偶者を有する者 ( 妻 ) ) は、男合においても、妻が独力で生計を しずれかに該当することを要する性に比べて労働力率が相当低いこ維持することかできなくなる可能当な差別的取扱いであるというこ 旨の受給要件を定めたものであと、②女性は、雇用者数に占める性は高いというべきである。これとはできないのであるから、地公 ーセント 非正規雇用の割合かハ る。一方、妻については、一般的 に対し、妻が死亡した場合に、夫災法条 1 項等が遺族補償年金の に就労が困難であることが多く、 が独力で生計を維持することがで受給要件につき本件区別を設けて を超えており、その割合は男性に おける非正規雇用の割合の 3 倍近きなくなる可能性は、前記の妻が いることは、自由権規約条及び 就労している労働者においても、 社会権規約 3 条に違反しないとい 男女間の賃金格差が大きく、女性 いこと、③男女間の賃金格差が大独力で生計を維持することができ うべきである。 きく、女性の賃金額は男性のそれなくなる可能性と比較して著しく は男性と比べて著しく賃金が低い という事情が認められ、社会的実のおおむね 6 割以下にすぎず、女低いというべきである。 これらの事情からすれば、今日 態として、その年齢にかかわら性は、男性と比べて賃金が著しく ず、職員である夫の収入により生低いこと、④専業主婦世帯は、従の社会情勢の下においても、本件 計を維持しており、夫の死亡によ前から減少し続け、平成 9 年以区別は、合理性を欠くとはいえ ず、また、何ら合理的理由のない 妻が独力で生計を維持するこ降、共働き世帯数より下回ってい とが困難となる場合が多いと考えるものの、なお 787 万世帯 ( 平不当な差別的取扱いであるともい

7. 法律のひろば 2015年8月号

特集危険ドラッグの規制と薬物事犯者への処遇・支援 薬物事件の現状と課題 テナンスが不可欠で、例えば英国では 2 ら社会の関心が急激に高まり、地方自治る。 009 年に合成カンナビノイドに対する 体で危険ドラッグ条例を制定する動きが②包括指定 加速し、現在までに都府県で独自の条包括指定とは、中心となる化学構造が包括指定を導入した後、 2012 年と 2 014 年に規制範囲の見直しと拡張が行 共通している物質群を一括して規制対象 例が制定された。 各自治体の状況に応じて様々な規制方に組み入れるものである。指定薬物でわれた。我が国でも、 2015 年 4 月に 式が考案され、採用された結果、我が国は、 2013 年 2 月に、ナフトイルインカチノン群に対する第二次の包括指定が 行われ、規制範囲が見直された。 で行われる危険ドラッグ規制の方式も多ド 1 ル骨格を有する合成カンナビノイド 様化したといえる。その全体像を概観し 772 物質が、同年月には、カチノン③概括指定 ておこう。 を基本骨格とする 504 物質が一括して概括指定は、一定の作用を有する物質 指定された。 を全て対象に組み入れるものである。 禁止型規制の類型 この方式では、指定される物質は構造都道府県条例では、概括指定を取り入 禁止型規制は、危険ドラッグに含有さ式で示され、個々の物質の特定性は明られた例がいくつかある ( 注じ。 例えば鳥取県 ( 注リは、 2014 年に れる物質に関する、一定の行為を禁止すかであり、対象となる物質の個数も数え るものである。禁止される行為としてることができ、実質は個別指定の集合体大幅な改正を行い、大麻等と同等に、興 は、製造、販売など主として流通に関与なので、規制の明確性、必要性・相当性奮、幻覚、陶酔その他これらに類する作 するものに限るものと、所持、使用など などで特に問題となることはないと思わ用を人の精神に及ばし、人の健康に対す る被害が生じるおそれがある物であっ の乱用に関するものを含むものがあるれる。 が、ここでは規制対象物の内容別に検討 一方、対象となる物質が化学構造式でて、人が摂取し、又は吸入するおそれが していくこととする 示されるため、化学的な知識のない者にあるものを「危険薬物」として、その製 は理解が困難という問題点がある。もつ造、販売、所持、使用などを禁止した。 ①個別指定 個々の物質を対象とするもので、薬物とも、この点は、程度の差はあれ、薬物ただし、この規定に違反した者を処罰す る規定はなく、禁止行為をした者に対し 規制では原則的な手法である。覚せい剤規制に共通する問題だともいえよう。 この手法は、新たな類似薬物の出現をては、警告が発せられ、それに従わない 取締法、麻薬及び向精神薬取締法もこの 手法を採っている。 あらかじめ阻止することに優れている場合には、さらに禁止行為の中止、危険 個別指定方式は、有害性等の評価を経が、その防止効果は万全とはいえす、規薬物の回収、廃棄などが命じられ、その ろ た物質を個別的に規制するもので、規制制導入の当時は想定されなかった置き換命令に違反した場合に処罰される ひ の の明確性、必要性・相当性など罪刑法定えパターンが出現し、新たな薬物が出回概括指定は、規制対象が明確でなく、 律 法 主義との関係での問題は少なく、そのたるという例が頻繁に起きている。包括指また、有害性等の規制の必要性・相当性 め薬物規制の原則的な方式となってい 定の有効性を維持するには、不断のメンが事前に検討されていないので、規制が 4

8. 法律のひろば 2015年8月号

特集危険ドラッグの規制と薬物事犯者への処遇・支援 危険ドラッグの規制と施策 包括指定はー 018 を代表とするツグとしての作用の有無を推定すること上げを拒否された場合などに行うことが 想定された。 合成カンナビノイド系で行われ、 700 はできるようになると期待される。 以上の物質が指定された。 8 が、規制後も流通が確認され、化学構 指定薬物の単純所持・使用の禁止 3 これまでの法改正の概要 造の類似した物質も含め、危険ドラッグ 平成年肥月の法改正 ( 施行は平成 % に含まれる事例が多く確認されていたか 前述の通り、平成年に薬事法が改正年 4 月 ) では、指定薬物の単純所持・使 らである。この包括指定後は、指定範囲され、指定薬物制度が導入された。 用の禁止が盛り込まれた。この改正によ り、危険ドラッグ所持の抑止が期待され の物質の流通は確認されておらず、包括その後、危険ドラッグの乱用による問 指定の有効性が示されている。 題に対応するため 3 回の法改正があつるとともに、末端乱用者から流通過程を このほか、カチノン系の物質で 2 回包た。 さかのばる捜査が可能となった。 指定薬物制度は、薬事法に基づいて無 括指定を実施し、これまで 2104 物質 承認医薬品としての取締りを行っていた が包括指定の範囲となっている。 麻薬取締官・員への権限付与等 平成年 5 月の薬事法等の改正 ( 施行ことや流通を規制することで乱用を防止 は間月 ) では、指定薬物にかかる罪につすることが効果的と考えられたため、薬 ③危険ドラッグの分析 危険ドラッグの成分は非常に多いた いて、麻薬取締官・員が司法警察員とし事法で、製造、販売等の流通を規制する め、分析して物質を特定するためには高て取締りを行えるようにする等の改正が制度として始まった。しかしながら、指 度な機器分析をする必要があり、一定の議員立法により行われた。麻薬取締官定薬物指定後も乱用が継続し麻薬に指定 時間がかかる。覚醒剤や一部の麻薬のよは、厚生労働省に所属する、麻薬や覚醒される薬物もあり、指定薬物の毒性その うに、試薬を用いて現場で成分を簡易に剤など薬物犯罪に関する専門の司法警察ものは麻薬と同等のレベルといってもよ 検査することは、現在の技術では不可能職員である。この改正は、麻薬取締官のいため、所持・使用を規制して、末端乱 である。簡易検査は物質の特定の化学構持っ薬物捜査手法を活用し、違法薬物全用者の健康被害を抑える必要があるとし 造に反応する試薬を用いるものだが、危般の取締りとの連携、都道府県をまたぐて規制を導入した。さらに、末端乱用者 険ドラッグの成分は化学構造が類似して広域事案への対応力の向上を図ることをが、危険ドラッグを「取り締まられない いるものが多く、試薬による厳密な区別目的に行われた。また、薬事監視員等が薬物」として乱用している実態もあった旧 ことから、法規制の強化による抑止効果 はできないためである。一方、合成カン指定薬物の疑いがある物品を店舗への立 ナビノイド系といった物質群を推定でき入検査で発見した場合に、収去する権限も狙ったものである。 ろ ひ る技術が開発中であり、実用化に向け研も追加された。収去とは検査のために必 の 律 究が進められている。この技術を用いれ要な最小限の量の物品を提供させるもの 法 ば、物質の特定はできなくても危険ドラであり、調査のために危険ドラッグの買

9. 法律のひろば 2015年8月号

た立法府の合理的な裁量に委ねら 基づいた政策的判断を必要とする た社会状況は時代とともに変遷すニ大阪高裁判決の要旨 ものである。したがって憲法 れており、本件区別が立法府に与るものである上、本件区別の理由 遺族補償年金の法的性質 えられた前記のような裁量権を考は性別という、憲法の定める個人 条の規定の趣旨に応えて具体的に 労災保険法及び国家公務員災害 慮しても、そのような区別をするの尊厳原理と直結する憲法条 1 補償法 ( 以下「国公災法」という。 ) どのような立法措置を講しるかの ことに合理的な根拠が認められな項後段に列挙されている事由によは、昭和如年ないし年に、遺族選択決定は、立法府の広い裁量に い場合には、当該区別は、合理的 るものであって、憲法が両性の本補償等の年金化に係る法改正によ委ねられており、それが著しく合 な理由のない差別として、憲法 質的平等を希求していることは明 り遺族補償年金を創設したが、前 理性を欠き明らかに裁量の逸脱・ 条 1 項に違反するものと解するのらかであるから、本件区別の合理 記改正は、扶養者を失った遺族の濫用とみざるを得ないような場合 が相当である。 性については、憲法に照らして不被扶養利益の喪失を填補し、遺族を除き、裁判所が審査判断するの 3 本件区別は憲法条 1 項に違断に検討され、吟味されなければの生活を保護することを目的とすに適しない事柄である。もっと 反する不合理な差別的取扱いでならない る社会保障制度として遺族補償年も、同条の趣旨に応えて制定され あるか ⑦今日において不合理な差別的金を創設したものと解すべきであた法令において受給権者の範囲、 るところ、地公災法の制定経緯に支給要件等につき何ら合理的理由 地公災法が立法された当時に 取扱いであるか おいて不合理な差別的取扱いで 今日においては、女性の社会進照らせば、地公災法の定める遺族のない不当な差別的取扱いをする あったか 出が進み、男性と比べれば依然不補償年金の性格は、労災保険法及ときは別に憲法条 1 項違反の問 地公災法が立法された昭和年利な状況にあるとはいうものの、 び国公災法の定める遺族補償年金題が生じ得るというべきである 代には、企業は、終身雇用、年功 相応の就業の機会を得ることがでの性格と同様であり、基本的に社 ( 最高裁昭和引年 7 月 7 日大法廷 序列賃金、企業別組合といった日 判決等 ) 。 きるようになった結果、専業主婦会保障制度の性格を有している これらのことからすれば、憲法 2 違憲審査基準 本型雇用慣行により主として男性世帯の数と共働き世帯の数が逆転 憲法条の定めるところの具体条の趣旨を実現するために創設 労働者を正社員として処遇してい し、共働き世帯が一般的な家庭モ された社会保障制度上の法令が受 デルとなっている社会状況にあ的内容は、その時々における文化 た社会状況 ( 女性が男性と同様に 就業することが相当困難であるた り、配偶者の性別において受給権の発達の程度、経済的・社会的条給権者の範囲、支給要件支給金 額等につき区別を設けることは、 め専業主婦世帯が一般的な家庭モの有無を分けるような差別的取扱件、一般的な国民生活の状況等と いは、もはや立法目的との間に合の相関関係において判断決定されそれが著しく合理性を欠き、何ら デルである状況 ) であったとこ 月ニ = ロ 合理的理由のない不当な差別的取 ろ、そのような社会状況の下にお理的関連性を有していないというるべきものであるとともに、蔔 いては、本件区別は、差別的取扱べきであり、本件区別は、憲法規定を現実の立法として具体化す扱いであるといえる場合に、憲法ば ろ 条 1 項に違反するものと解すべ いということはできず、憲法条 条 1 項に違反する不合理な差別的るに当たっては、国の財政事情を ひ の 1 項に違反するということはでき取扱いとして違憲・無効であると無視することができず、また、多きである 律 法 いわざるを得ない。 方面にわたる複雑多様な、しかも 3 本件区別は何ら合理的理由の ない不当な差別的取扱いである しかし、前記立法の基礎となっ 高度の専門技術的な考察とそれに

10. 法律のひろば 2015年8月号

保 険判例研究 ー・ 11 一 8 , ・ ) ・ -111q " 一貝 以上の酒気帯び運転の場合に免責を認めないとは明確 ( 芻 ) 山下・前掲 ( 注 ) 12 5 頁、山野・前掲 ( 注 法セ 686 号 ( 2012 年 ) に述べていない。そうすると、両者の違いは免責が適 ) この点に関して、土岐・前掲 ( 注リ認頁では、 2 ) % 頁以下、山下・前掲 ( 注 4 ) 1 頁以下、福島・ 酒気帯び運転には 3 種類の状態が考えられ、生命保険 用される要件としてどちらのほうがより緩やかである 前掲 ( 注四 1 頁以下参照。 における傷害特約では「法令に定める酒気帯び運転」 と考えているかという点だけの違いともいえるかもし ( リ当該判決に関する研究として、福島・前掲 ( 注 4 ) という文言を用いて政令数値以上の酒気帯び運転を指 れない。すなわち、②説は政令数値未満 ( 又は数値が ハ頁以下参照。 していることに鑑みると、必ずしも一義的で明確でな 不明 ) であっても酒酔い運転に該当すれば免責となる ( リ当該判決に関する研究として、土岐孝宏「判比」 いと批判する。しかし、生命保険の約款と必ずしも同 という点に重きを置く見解である ( 政令数値以上であ 137 頁、市川典継「判 法セ 670 号 ( 2010 年 ) じように解釈しなければならないわけではないし、生 れば酒酔い運転でなくても免責になることを必ずしも 批」共済と保険巻 4 号 ( 2011 年 ) 頁以下、原 命保険と異なり本件約款の文言には「道交法条 1 否定していない。 ) のに対して、③説は酒酔い運転に 弘明「判批」京園号 ( 2012 年 ) ハ頁以下、山下・ 項」における酒気帯び運転と明確に定められている以 ワ 3 介、一貝 は至らずとも政令数値以上であれば免責とすべきであ 前掲 ( 注 4 ) 1 頁以下、竹濵・前掲 ( 注 ) 上、 3 段階に分けられる酒気帯びのどの状態かという るという点に重きを置く見解である ( 酒酔い運転は当 以下、桜沢・前掲 ( 注四頁以下参照。 のではなく、全ての状態を指すと考えるのが素直では 然免責であると解しているはずである。 ) と解される。 頁 ( 福島・前掲 ( 注 4 ) ないだろうか ただし、政令数値以上の酒気帯び運転に比べ、酒酔い ( ) 土岐・前掲 ( 注リ 「ーワ 3 戸 0 1 亠・ー ) ワ 3 一 0 ワ」 4 758 頁よ、このような酒気帯 ) 原・前掲 ( 注 1 ) 7 7 ー 運転のほうが刑罰が重いことを考えると、後者のほう ( リ竹濵・前掲 ( 注 ) び運転免責条項は消費者契約法川条にいう不当条項に が容易には認められないと考えるのが素直であるか ( ) 福島・前掲 ( 注 4 ) 頁 該当する可能性があると指摘する。 ら、制限的な解釈を行うのであればやはり③説のほう ( 四 ) 土岐・前掲 ( 注リ -1 ワ 3 -0 一頁は、 6 ) この点に関し、土岐・前掲 ( 注リ が妥当ではないかと考える。 ( ) 竹濵・前掲 ( 注 7 ) 2 5 0 頁 一般契約者は刑事罰の対象となる政令基準値以上の運 ( 原・前掲 ( 注リ爲頁 ( 邑②説に対しては、特に③説の立場から、これでは 転をいわゆる酒気帯び運転と認識しており、これに該 1 つ「ー一貝 従来型の約款文言とあまり変わらない結果となり、約 ( ) 土岐・前掲 ( 注Ⅱ ) 当しない運転には保険保護があるという期待を抱いて 款作成者の意図とは異なるとの指摘がある。この指摘 ( 山下・前掲 ( 注 4 ) 肥頁 おり、この期待を合理的期待として保護すべきである は誠に妥当である。確かに、②説の立場が政令数値以 ( ) 山下・前掲 ( 注 9 ) Ⅱ頁 と指摘するが、酒気帯び運転には罰則の適用のあるも 5 Ⅱ頁 元 ) 山下・前掲 ( 注 4 ) 上の酒気帯び運転ではあるが酒酔い運転とはいえない のとないものがあるという認識は、むしろ法律に詳し 1 ワ】【 0 一貝 ( 土岐・前掲 ( 注リ 場合に免責としないというのであれば、②説と③説と 0 い者だけが有しており、一般契約者は罰則の適用のな の違いは明らかであるが、〇判決や原判決は政令数値 ) 福島・前掲 ( 注 4 ) 頁 ろ いものであれば保険保護があると区別して考えてはい ( 四 ) 土岐・前掲 ( 注リ 125 頁 以上の場合だけが免責対象となるという原告の主張に ひ の ないのではないだろうか ( 山野・前掲 ( 注 2 ) 引頁 対して、政令数値未満であっても酒酔い運転の場合は 律 ( 芝例えば、アルコールが食品や薬品に含まれていた法 免責となり、実際に酒酔い運転であると認定して免責 ( 訂 ) 福島・前掲 ( 注 4 ) 105 頁 とか、祭事等でほんのわずかにアルコールを口にした 6 としているから、酒酔いとまではいえないが政令数値 ) 山下・前掲 ( 注 4 ) 頁 1 91 2 頁