法律のひろば 平成 27 年 8 月 1 日発行 ( 毎月 1 回 1 日発行 ) 昭和 2 イ年 2 月 4 日第 3 種郵便物認 危険ドラッグの規制と 特薬物事犯者への処遇・支援 危険ドラッグの規制と施策 / 渕岡学 危険ドラッグ情勢と取締り等の状況 / 佐藤正尚 川越少年刑務所における特別改善指導 ( 薬物依存離脱指導 ) の 実施状況ー再犯防止に向けての総合的な取組 / 會田幸男 更生保護における薬物事犯者施策の概要 / 押切久遠・赤木寛隆 保護観察所における薬物事犯者処遇の新たな取組 ー旭川からの報告 / 横地環 薬物事件の現状と課題 ー危険ドラッグ禍の残したもの / 小森榮 H 〇 URITSU N 〇 HIR 〇 BA Aug. 2015 VOL68 / N 〇 .8 ハラスメント判例ファイル第 18 回 被告 ( 弁護士法人 ) に雇用されていたところ解雇された原告が、被告に対し、解雇が 無効であると主張して、地位確認、解雇後の賃金及び賞与、上司からのパワーハラ スメントに対して慰謝料等の支払を求めた事案において、解雇は無効であるとした が、地位確認請求については、被告で勤務する意思を喪失していたとして棄却し、 将来分の請求を却下し、その余の請求を一部認容、一部棄却した事例 を第 : 出は出 1 士 i 書日 きようせい
特集危険ドラッグの規制と薬物事犯者への処遇・支援 危険ドラッグ情勢と取締り等の状況 に係る密輸動向等に関する情報共有のほ などには、医薬品の無許可販売として検その裏付け捜査、参考人聴取等の捜査が か、先般の関税法改正に伴い更なる合同挙している前述した事例のほか、インタ必須である。 捜査の推進が期待される。 1 ネット上での危険ドラッグ販売事実だ けではなく、指定薬物検出例のある危険 七おわりに ドラッグを不特定多数の者に対して販売 2 海外の取締機関等との連携 を誘引する意図の下、ウエプサイト上に危険ドラッグの乱用や、その影響下で 危険ドラッグの原料となる物質の国内表示させた指定薬物に係る広告違反としの事件、事故を防ぐためには、需要の根 への流入を阻止するため、国内の関係機て摘発した事例など、法令の多角的な運絶と供給の遮断の双方の対策を進めるこ 関との連携を強化するとともに、外国の用に配意しつつ、危険ドラッグに対するとが重要である。今後も、危険ドラッグ 取締機関との情報交換を実施し、水際対規制に取り組んできた。今後も引き続き乱用防止のための緊急対策の趣旨を踏ま 策の強化を図っている。平成年川月に法令の多角的な駆使に配意するとともえ、薬務当局や税関等の関係機関との連 は、第回アジア・太平洋薬物取締機関に、販路のより一層の潜在化を見据え、携を一層強化しつつ、危険ドラッグの潜 長会議 ( 注 2 ) に参加し、危険ドラッグ対危険ドラッグ事案の解明に努めなければ在化する流通実態を把握し、危険ドラッ 策の国際的な取組の必要性等について議ならない。 グ事犯の摘発、検挙を推進して、危険ド 論している。 ラッグの供給を根本から絶っとともに、 若年層が危険ドラッグに安易に手を出す 2 違法性の認識の疎明に向けた取 ことがないよう、広報啓発活動にも配意 六危険ドラッグ取締りに係る組 しなければならない。 留意事項 危険ドラッグの流通実態を見ると、法 による規制と規制外の薬物の製造販売が ( 注 ) 法令を駆使した取締り 繰り返されてきたこと、指定薬物の数が ( 1 ) 警察庁では、一般のインターネット利用者等から、 平成年 4 月から、指定薬物の乱用者増加し続けていること、指定の時期もそ違法情報・有害情報に関する通報を受理し、警察への 通報やサイト管理者等への削除依頼を行うインターネ に係る所持、使用罪を入口として捜査をれぞれ別などの理由から、乱用者や販売 ット・ホットラインセンターの運用を平成年 6 月か 徹底することで、販売業者や製造拠点、業者が「違法な薬物ではないと思ってい ら開始している。 密造グル 1 プの解明が可能となったた た」「人体摂取以外の用途で販売してい ( 2 ) 国連麻薬委員会アジア・太平洋地域の地域別会合ろ め、更なる上位者への捜査を徹底する必た」「脱法ドラッグは合法だと思った」 であり、地域内諸国・地域の薬物取締機関の代表が参の 要がある。そこで、危険ドラッグを医薬などと故意を否認する例がある。いわゆ 法 加するもの。 品と捉え、当該医薬品に係る販売業者る違法性の認識に関しては、被疑者の取 が、薬局開設の許可等を得ていない場合調べはもとより、入念な事実の収集及び ( さとう・まさなお )
月刊法律のひろば 2015 VOL68 No. 8 August rCz=O==N=zT==EZEN==T==S=== ー危険ドラッグ情勢と取締り等の状況 / 佐藤正尚 12 ー危険ドラッグの規制と施策 / 渕岡学 4 薬物事犯者への処遇・支援 危険ドラッグの規制と ◆特集◆ 72 ・ひろば法律速報 / 74 ・ひろばの書棚「企業統治の法と経済比較制度分析の視点で見るガバナンス』 / 71 ■高度外国人材の受入れ促進に向けた取組 ■効果的な人権啓発活動のための二つの試み ひろば時論 / 2 弁護士法に基づく照会と税理士の守秘義務 / 林仲宣 ザ・税務訴訟 酒気帯び運転免責条項の解釈と飲酒の有無 / 深澤泰弘 59 保険判例研究第 32 回一一保険判例研究会 の請求を却下し、その余の請求を一部認容、一部棄却した事例 / 54 地位確認請求については、被告で勤務する意思を喪失していたとして棄却し、将来分 メントに対して慰謝料等の支払を求めた事案において、解雇は無効であるとしたが、 無効であると主張して、地位確認、解雇後の賃金及び賞与、上司からのパワーハラス 被告 ( 弁護士法人 ) に雇用されていたところ解雇された原告が、被告に対し、解雇が ハラスメント判例ファイル第 1 8 回一ハラスメント判例研究会 ◆連載◆ ー危険ドラッグ禍の残したもの / 小森榮 44 ー薬物事件の現状と課題 ー旭川からの報告 / 横地環 37 ー保護観察所における薬物事犯者処遇の新たな取組 ー更生保護における薬物事犯者施策の概要 / 押切久遠・赤木寛隆 29 ー再犯防止に向けての総合的な取組 / 會田幸男 20 ー川越少年刑務所における特別改善指導 ( 薬物依存離脱指導 ) の実施状況 弊社新刊図書・雑誌のご案内・・・・・ h p : ″ gyosei. jp ・次号予告 / 69 ・訟務情報 / 76 装丁 /Kaz
特集危険ドラッグの規制と薬物事犯者への処遇・支援 更生保護における薬物事犯者施策の概要 いう意識を強く持ち、社会資源のコーデ 等として迎える取組をこれまで以上に積 施設内処遇と社会内処遇との連 ィネーターとして、積極的に薬物事犯者 極的に行うほか、リ 廾の一部の執行猶予制 携を一層強化すること と社会資源をつなぐ努力をする必要があ 度の施行により、従来覚せい剤事犯者に 刑事施設り、そのためのスキルを高めるべく、保 のみ義務付けられてきたプログラムが規刑の一部の執行猶予制度は、」 制薬物全般 ( 注リの事犯者に拡大されるが担う施設内処遇と保護観察所が担う社護観察官を対象とした他機関への派遣研 こと、自己使用事案のみではなく単純所会内処遇が緊密に連携することを前提と修等を充実させたいと考えている また、保護観察官の意識・スキルの向 している ( 注じ。両者の連携については、 持事案にまで拡大されることを踏まえ、 平成年度中に先行的にプログラムの実一定の処遇情報を引き継ぐことや実務担上に加え、その人的体制の整備も重要な 当者による協議会を全国各地で定期的に課題であると考える。 施対象を拡大する予定である。 開催することなどにより強化を図ってき たところであるが、現在、引き継がれる 3 保護司による日常的な指導・助 六おわりに 処遇情報の充実をはじめとする、より緊 言の態勢を強化すること 密な連携の仕組みについて法務省矯正局従来、薬物依存者の回復支援について は、薬物依存当事者やその家族による自 薬物事犯者に対する日常的な指導・助と共に検討しているところである。 助的な支援や一握りの医療等関係者の孤 言や、その家族への助言等を担う保護司 軍奮闘に大きく負ってきた面がある。し が、その役割を適切に果たすことができ 5 保護観察官による社会資源のコ かしながら、薬物依存が一面では犯罪行 るよう、薬物依存に関する基本的知識や ーディネート機能を高めること 為であり、また一面では治療を要する疾 家族支援における留意事項などについて まとめた視聴覚教材を平成年 3 月に作薬物依存からの回復をサポ 1 トする社病であることを踏まえれば、個々の薬物 成し、保護司に対する研修等において積会資源が十分に充実できた場合であって事犯者の回復支援について、刑事司法機 極的に活用することとした。また、薬物も、保護観察官が薬物事犯者をそれらの関や医療・保健・福祉機関がそれぞれの 事犯者に対する処遇経験が少ない保護司社会資源につなぐ努力をしなければ、あ果たすべき役割をしつかりと認識し、実 を経験豊かな保護司がサポ 1 トするなるいはそのスキルがなければ、地域支援行することは非常に重要であり、このこ ど、複数の保護司が一緒に、あるいは役の実を上げることはできない。個々の保とは個々の薬物事犯者のためだけではな 割分担しつつ薬物事犯者に対する処遇を護観察官が、真の再犯 ( 再使用 ) 防止のく、社会の安全と発展にとって不可欠なろ の 行える態勢の充実強化を図ろうとしてい ためには、保護観察期間終了後も回復にものであると考える。 律 る。 刑の一部の執行猶予制度の施行まで残法 向けた取組を継続させること、そのため の支援体制を整えることが重要であるとすところあとわずかであるが、関係省庁
特集危険ドラッグの規制と薬物事犯者への処遇・支援 薬物事件の現状と課題 が多い場合には相応の時間を要する点が のであることが前提となっているのである。 り、物資の特定を待たずに製品を規制すこれまで科捜研が取り扱う薬物といえ課題となっております。」 ( 注と答弁し ているように、本格的な体制整備にはま る方策として貫徹できるか、疑問があば、覚せい剤や大麻が大多数を占めてい る。規制が禁止型規制に比べて緩やかでたところへ、危険ドラッグ事案が浮上しだ時間がかかるようだ。 あることで、その問題を回避できるとは たことで、多種多様な薬物の分析鑑定が 限らな 要求されるようになり、鑑定業務の負担 2 相次いだ不起訴 また、販売店・購入者が負う義務の内は急増した。検出対象となる物質は、指 危険ドラッグに対する取締り強化とと 容は巧妙であるが、実際に販売店・購入定薬物だけでも本稿執筆時点で 2306 者を監視・指導できるのか、義務の履行種にのばり、さらに麻薬の含有についてもに、業者や乱用者の検挙が盛んに報じ られたが、その反面、逮捕された被疑者 も調べなければならない。 が確保されるのか疑問がある。結局は、 が不起訴になるという例も相次いだ。 加えて、鑑定業務を複雑にしている、 規制側のマンパワーの問題に帰結するこ とになるのだろう。 正確な数字は発表されていないが、国 さらに別な事情もある。通常、販売され そして何よりも、監視型規制は、脱法ている危険ドラッグ製品には数種類の成会委員会での警察庁幹部の答弁で示され ドラッグの流通を許容する点に根本的な分が含有されており、最近では、ごく微たのは、 2013 年中の指定薬物に係る 問題がある。当然、乱用は許さないとい量で強い作用をもたらす幻覚性成分の検薬事法違反事犯での起訴率が、・ う前提のもとではあるが、制度として流出例も増えているので、鑑定業務の負担であったという数字である ( 注邑。同じ 年の覚せい剤取締法違反事犯の起訴率は 通を許すことにより、どのよ、つな影響がはさらに増えてしま、つことになる ・ 6 % 、麻薬及び向精神薬取締法違反 2014 年春、法改正によって指定薬 あるかについては議論の分かれるところ ・ 7 % ( 注、これらと比較す であろう。 物の単純所持などが罰則付きで禁止さ事犯は町 れ、危険ドラッグ関連事案の検挙が増えると、異例ともいうべき低さである。 問題になっているのは、違法薬物の認 始めたものの、鑑定の遅れから、警察の 四危険ドラッグ関連事件と残 処理が大幅に滞留していることが報道さ識であるという。被疑者が当該物品につ された課題 いて違法薬物であることの認識を否定す れた ( 注四 ) 。その後、機材や人員の強化 によって鑑定業務の対応力は向上したとることが多く、故意を十分に裏付けるこ 薬物鑑定の困難さ いうが、同年Ⅱ月の国会委員会で、政府とが難しいケースが続出しているのであ ろ 危険ドラッグ関連事件の増加は、捜査参考人として出席した警察庁幹部は、「危る ( 注。 ひ 陣や検察官にとって、新たな負担をもた険ドラッグの取り締まりに当たりまし特に、末端の使用者による単純所持事の らしたが、 て、物質の特定のための鑑定に一定の時件では、実際、押収された危険ドラッグ法 その筆頭として、見慣れない 多種の薬物が押収されたことが挙げられ間がかかりますことから、特に押収件数製品から指定薬物が検出されたとして
いう制度の重要な目的を確実に達成する 精神保健福祉センタ 1 等の保健・行政機 五今後の展望 関は機関にすぎない ( 注新 ) 。この状況ためには、保護観察所が地域の社会資源 薬物事犯者に対する保護観察処遇及び では、薬物事犯者が専門機関で支援を受と最大限に連携してこれに対処していく ことが必要であり、そのための方策を確関係機関・団体と連携した地域支援に関 けたいと願っても、通院又は通所が可能 ろ なエリアで支援の受けられる専門機関を立することが現下の最も大きな課題であし、法務省保護局においては、関係省庁の る。 及び薬物依存に関する外部専門家と協議 見つけることは困難である。 を重ね、今後も様々な施策を講じる予定 さらに、薬物事犯者に関して保護観察 であり、その主なものについて以下に概 所と関係機関がどのような情報を共有 保護観察所における危険ドラッ 説したい。 し、どのように連携をするのか、保護観 グへの対応 察期間が終了する際の引継ぎをどうする しくつかの重大事件を契 のかといったことに関する指針がないこ平成年は、、 法務省と厚生労働省が連名で地 とも、表 2 のような状況となっている大機として、従前「脱法ハ 1 プ」「合法ド 域支援のガイドラインを策定する ラッグ」等と呼ばれてきた薬物への法的 きな理由の一つと考えられる。指針がな こと い中での連携は、個々の担当者の熱意に規制の在り方、更にはその依存者への対 前述したように、薬物事犯者に対する よる単発の取組に終わることが多く、担応の在り方が大きな社会問題としてクロ 1 ズアップされた年であった。 地域支援の底上げを図るためには、連携 当者の交代により連携が途絶えるなど、 安定した連携に発展しないことが多いか保護観察においては、従来から、個別の指針となるものが必要である。そのた らである。 事案に応じて対応をしてきたところだめ、法務省と厚生労働省は、地域支援の 平成年度に刑の一部の執行猶予制度が、平成年 6 月 1 日には、特別遵守事ガイドラインを共同で策定することとし ( 注リ、平成年度中の早期の発出を目 が施行されると、薬物依存のある保護観項の標準的な設定項目の中に、危険ドラ 察対象者が数千人規模で増加し、その保ッグの乱用者や密売人との交際禁止に関指して協議を進めている。 護観察期間も長期化することが見込まれする項目、及び危険ドラッグの所持・使 る。これらの者を保護観察所による指導用の禁止に関する項目を追加し、危険ド 専門的処遇プログラムの充実を だけで立ち直らせることは、人的体制のラッグの使用のおそれがある保護観察対 図ること 面でも、また、薬物依存からの回復支援象者に対してこれらの特別遵守事項を適 は保護観察期間終了後も継続される必要切に設定して、その乱用防止に向けた指専門的処遇プログラムを実施するに当 たり、地域の関係機関やダルク等の民間 があるという観点からも、不可能であ導監督を強化することとした。 パーバイサー 支援団体のスタッフをス 1 る。薬物依存者の再犯防止・改善更生と
ら、被告人が、事故は薬物の影響による も、被疑者が「指定薬物が入っていると 3 危険ド一フッグと交通事案 ものではないと主張した事例もある ( 注 は思わなかった」「販売員に大丈夫と言 2012 年春、危険ドラッグ使用者が われて買った」などという主張が集中す 自動車を暴走させ、人身事故を起こす例その後、被疑者の血液を採取するよ、つ るのは当然だろう。 ろ 危険ドラッグは、そもそも麻薬や覚せが続き、この種事案に対して危険運転致になり、成分検出の問題は解決したと聞ひ い剤と異なり、法規制を受けない「合法」傷罪が初めて適用された。危険ドラッグくが、被告人の血液中に薬物の存在を確律 による危険運転事案は、類型としてはま認したという判決は限られており ( 注 薬物として販売されるものである。販売 % ) 、全国で、また全ての事件で事故後 だ新しく、しかも危険ドラッグに関して 店は、規制に対応して商品を切り替え、 常に規制成分を含まない製品を取り扱っは、科学的なデータの入手が非常に困難の血液採取が行われているのかが気にな る。 ていることを積極的にアピ 1 ルし、購入な中で、捜査活動も、裁判での認定も、 客もそれを期待している。そして、流通いまだ手探りの状態にあるように思われ薬物の影響による危険運転事件で、事 故当時、被告人の体内に薬物が存在した 品から、指定薬物などの規制薬物が検出る。 される割合は、決して高いものではな現時点で、解決されていない主な課題ことが明確に証明されないまま、間接証 について、網羅的にまとめておくことと拠のみで被告人の薬物使用が認定される く、東京都の調査によると、おおむね 1 のは、いかにも片手落ちであろう。 割程度と報告されている。厚生労働省する。 も、全国で買い上げた流通品を分析し、 薬物の作用 薬物使用の証明 指定薬物等の規制物質の含有が確認され こうした事件では、薬物の作用を明ら 薬物の影響による交通事件では、運転 た製品名などを公表しているが、 201 2 年調査によると、 313 製品中、指定者が使用した薬物を特定し、その作用がかにするため、一般に、科捜研や研究機 運転に及ばす影響を明らかにすることは関の研究者などに対して聞きとりが行わ 薬物が検出されたものは製品 ( Ⅱ・ % ) 、また 1 製品が麻薬を含有していた。事件捜査の基本であるが、危険ドラッグれ、報告書が提出される。しかし、科学 こうした事情を考慮すれば、購入客関連事件においては、未規制薬物が関係的知見がほとんどない新種の薬物につい が、販売店で入手した危険ドラッグにつしていることが多いため、使用した薬物ては、専門家であっても説明できること は限られ、構造等が類似する既存の規制 いて、「違法な成分が含まれていない」を明らかにすることにも困難が生じた。 特に、危険運転致傷が適用された初期薬物の薬理効果から推測するにとどまる と期待するのは、当然であるといえる。 任意提出された危険ドラッグを鑑定しの事件では、被疑者の尿を採取して検査のが実情となっている。 例えば、 2012 年に京都で発生した て、指定薬物が検出されたら一律に被疑したものの、薬物成分を検出できなかっ 事件として捜査を開始するという体制のたケースもあったという ( 注。また、事件では ( 注、当時は未規制物質だっ た 2 01 を含む危険ドラッグ 見直しも、必要ではないかと思われる。尿中に薬物が検出されなかったことか
国人を、新幹線鉄道における列車運行の 員 いる 例えば、同年中における末端乱用者の 安全を妨げる行為の処罰に関する特例法挙以 % 鹸歳 違反で逮捕したもの。 ( 平成年 4 月愛 検挙事例では、次のようなものがある。 齢 知県警察 ) 年 グ 【指定薬物所持に係る例】 ッ 〇危険ドラッグを使用して病院に搬送 次に、危険ドラッグに係る乱用者 ( 危ラ された少年の所持品等により、指定薬物険ドラッグ事犯検挙人員のうち、危険ド 危 0 4 ラッグを販売する等により検挙された供 を含有する植物片を発見したことから、 同人を薬事法違反 ( 指定薬物の所持 ) で逮給者側の検挙を除いたものをいう。 ) と 図 捕したもの。 ( 平成年 9 月福島県警察 ) して検挙された 631 人について別の観 か 5 0 0 人 ( 7 ・ 2 % ) 、薬物犯罪再犯者 点から詳細に見てみる。 【その他法令に係る例】 カ 1 っ 01 まず、当該年齢層別に見てみると、 0 人 ( ・ 8 % ) であった ( 図 4 ) 。 〇危険ドラッグを使用後、幻聴等の影 これらの点から、危険ドラッグが覚醒 人 ( ・ 4 % ) と一番多く 響により、新幹線の敷地内に侵入した外歳代が 236 次いで歳代 2 0 4 人 ( 3 4 剤に比べると比較的若年層の初犯者に乱 0 0 0 0 0 8 0 8 0 0 9 8 7 6 5 4 用されている実態がうかがわれる。 ・ 2 % ) の順であり、 歳代が 121 人 ( また、乱用者が危険ドラッグをどこか 跚歳未満の未成年者は人 ( 4 ・ 1 % ) ら入手しているのかについて調べたとこ であった ( 図 3 ) 。 ・ 4 ろ、主として、危険ドラッグを販売する なお、当該乱用者の平均年齢は 歳となっており、覚醒剤乱用者及び大麻街頭店舗 ( 以下「店舗」という。 ) が 3 6 6 人 ・ 0 % ) 、インタ 1 ネットが 乱用者と比較すると、覚醒剤乱用者の平 12 4 人 ( 1 ・ 7 % ) 、知人及び密売人 均年齢れ・ 7 歳より低く、大麻乱用者の 2 ・ 5 % ) となった ( 図 5 ) 。 平均年齢訂・ 9 歳より高い結果となってが四人 ( 1 いる これは、覚醒剤などの規制薬物とは異 次に、薬物経験別の構成比率を見るなり、店舗に出向けば比較的容易に危険 と、薬物犯罪初犯者 ( 危険ドラッグ乱用ドラッグが入手できることを意味してお 者のうち、当該検挙以前に覚醒剤・麻薬り、危険ドラッグ対策として、これら店 及び向精神薬取締法・大麻・あへん・医舗の排除、一掃に向けた取組が重要とい 薬品医療機器等法・シンナ 1 等有機溶剤える。 事犯の検挙歴を有しないものをいう。 ) 図 2 危険ドラッグ検挙状況 ( 人員 ) 840 160 つ 8 第 ~ 49 号 H26 ■その他法令違反 ロ交通関係法令違反 ■麻向法違反 ■指定薬物に係る医薬品医療機器法違反 ※交通関係法令違反及びその他法令違反には、規制 薬物及び指定薬物が検出されなかった事件を含む。 176 9 ( 医薬品医療機器法 ) 6 1 ( 麻向法 ) 6 ( 医薬品医療機器法 ) H22 H23 26 40 H25 H24 40 歳 ~ 49 歳 1 92 % 物ツ 30 歳 ~ 39 歳 ー 32 、 3 % 、こを 20 歳 ~ 29 歳 37.4 % 法律のひろば 2015.8 ・ 14
保 険判例研究 はなく、本件血液の血中アルコ 1 ル濃度して事故時の状況 ( 被保険者の言動や運③本件事故が、その事故態様から直ち に車を運転していた亡が酒気帯び のみから、亡 < が本件事故当時飲酒して転など ) などといったより直接的な証拠 いたと断定するのも相当でないーと判示から飲酒の事実を判断していたものと思 運転していたことにより生じたことの している。しかし、①亡 < は本件宴会にわれる。 裏付けとなるものとい、つことはできな いこと。 最後まで参加しており、同会では肥人で これに対して、本判決は、酒気帯び運 約 5 万円の飲食をし、中国人研修生は本転免責条項の解釈について①説の立場を この中で、①に関しては原判決でも同 件事故前後の記憶がないなど相当程度のとりながらも、本件事故当時に亡 < がア様の判断が下されていた。本件における 酒類が提供されていること、②亡は、 ルコ 1 ルを保有していたとはいえないと血液の採取場所や保管状況等から考える と、保険者には酷であるがこのような判 特段必要もなかったのに、 < 車に乗車定して、本件免責条項の適用を否定した。 そのような判断に至った理由は以下のと断がなされても仕方がないであろう。採 員を超える人数の中国人研修生を乗せ、 上司や同僚らに挨拶もなく居酒屋を立ちおりである 取した場所や保管状況に問題がない状況 において血中アルコール濃度が通常より 去っていること、③路面が湿潤していた①死後に採取された血液からエタノー も高かったのであれば、アルコ 1 ルが死 とはいえ、現場は比較的明るく見通しの ルが検出されたが <- プロバノ 1 ルが よい直線道路であるにもかかわらず、 < 検出されなかった場合にあっても、当後に産生された可能性がない、又は極め 車は、他の車両の影響を受けることなく 該エタノ 1 ルが死後産生されたものでて低いということになり、それは生前由 来のものであると判断するということに 単独で突然横滑りし、対向車線に進入し ある可能性があるため、当該エタノ 1 ていることなどを総合考慮して、亡 < は ルが生前に摂取されたものであると即 なるのであろう。これに対して、② ) は 本件事故当時、飲酒していたと考えるの 断することはできず、本件の状況で採原判決とは全く逆の結論に至っている。 が自然かっ合理的であると判断した。 取され保管されていた本件血液中のエ これは本判決が、原判決は間接的な証拠 しかし、このような認定の仕方にはい タノールがその全部又は一部が死後にのみで判断しており、飲酒の事実におけ ささか疑問を感じる。というのも、原判産生されたものである可能性を否定する認定の仕方につき不十分で適切ではな ることはできないこと。 いとの判断を示したことの表れであり、 決が「本件事故当時、飲酒していた」と いうことを前記の①から③といったかな②原判決が飲酒を裏付ける事実である従来の事例と比べても保険者に対して特 り間接的な証拠のみで認めているように と判断したような事実 ( 本件宴会に最段厳しい判断であったとはいえないであ ろ 思えるからである。従来の事例では、事後まで参加していたこと等の事実 ) ろう ( 注。 ひ の 故以前に飲酒の事実があったか否かにつ は、直ちに本件宴会での亡 < の飲酒を 律 法 いて、本人の自白、飲酒場所の特定、そ裏付ける事実であるということはでき ないこと。 の場所での飲酒していたことの証言、そ
中で薬物依存離脱指導等 ( 注 8 ) を受け、入所率が約 % であるのに対し、満期釈事施設内に引き続き、社会内において適 薬物使用を止める意欲の喚起や止める方放者については、これが約 2 倍の約四 % 切な指導・支援を行うことが重要である旧 法の習得等が図られるため、入所した時である。しかし、 5 年以内という長期的ことはもちろんだが、その指導・支援 点と出所した時点とでは薬物依存の状態なスパンで見ると、仮釈放により出所しは、長期的・継続的に実施されなけれ ろ は異なる。しかし、多くの薬物依存症治た覚せい剤事犯者についても、その約れば、単に再使用 ( 再犯 ) を少し先延ばし したにすぎないものとなってしまう可能法 療の専門家が述べるように、薬物依存か % が再入所しているという状況にある。 らの回復に完治はなく、回復に向けた取これらのデータは、薬物事犯者は他の性がある。 組の継続こそが必要なものである。つま者よりも再犯率が高いこと、また、仮釈 り、施設内で適切な指導を受けたとして放による出所の直後、すなわち保護観察 三薬物事犯者に対する社会内 も、薬物依存者が出所の時点において薬中は再犯が少ないものの、保護観察が終 処遇に関する近年の政府方針 物依存者でなくなるわけではなく、施設了した後には相当数の者が再犯に及んで 等 いることを示唆している。すなわち、刑 内に引き続き、社会内でも適切な指導・ 薬物事犯者に対する社会内処遇に関す 支援をいかに継続できるかが、薬物の再 る近年の政府方針や有識者の提言等は、 使用 ( 再犯 ) を防ぐ上で極めて重要なの 表 1 のとおりである である。 このうち、再犯防止に向けた総合対策 では現状、薬物事犯者の予後はどのよ ( 平成年 7 月犯罪対策閣僚会議決定 ) うになっているのか。覚せい剤事犯によ は、その後の更生保護における薬物事犯 り受刑した者について見ると、平成幻年率 所 者施策の方向性を端的に示したものなの に出所した者約 6500 人のうち、約 5 入 再 で、ここで抜粋する ( 注 9 ) 。 % の者が 5 年以内に再び刑務所に入所し ている。一方、同年に出所した覚せい剤 の 内 薬物依存の問題を抱える者に対して 事犯以外の者約 2 万 4000 人のうち、 以 年 は、個々の再犯リスクを適切に把握した 5 年以内に刑務所に再入所しているのは 上で、そのリスクに応じた専門的指導プ 約 % であって、覚せい剤事犯者は、そむ を ログラムや薬物依存症の治療のための医 うでない者と比較して約 % 再入所率が 年 当 療と、帰住先・就労先の確保のための支 高い。また、覚せい剤事犯者の中でも、 援とを一体として実施するとともに、保 仮釈放により出所した者については、出 護観察所、医療・保健・福祉機関、民間 所直後 ( 出所した年又はその翌年 ) の再図 50 % 40 % 30 % 20 % 37 % ◆覚せい剤事犯者の再入率 ◆覚せい剤事犯者以外の再入率 10% 0 % 出所年 2 年 3 年 4 年 5 年 ( 平成 26 年版犯罪白書を基に作成 )