特集危険ドラッグの規制と薬物事犯者への処遇・支援 更生保護における薬物事犯者施策の概要 約 310 0 人となっている ( 注 4 ) 。保護 / 観察付執行猶予者と仮釈放者では、前記 の保護観察期間のほか、薬物依存に係る 問題の根深さや、刑務所出所者であるか 否かという点で大きな違いがある。以下 においては、薬物依存の問題がより根深 法務省保護局観察課処遇企画官押切久一迅 いと考えられる刑務所出所者の状況をベ 同課係長赤木寛隆 ースに、薬物事犯者の概況を述べること としたい ( 注 5 ) 。 について述べることとしたい。ただし、 一はじめに 刑務所を出所する者は、平成幻年で約 本稿中意見にわたる部分は私見であるこ 3 万人であり、そのうち約 2 割 ( 約 65 刑法等の一部を改正する法律 ( 平成とを申し添える。 00 人 ) が覚せい剤事犯者である。覚せ 年法律第的号 ) 及び薬物使用等の罪を犯 い剤事犯の出所者が全て薬物依存者であ した者に対する刑の一部の執行猶予に関 一一薬物事犯者の概況 るとは限らないが、その多くは薬物使用 する法律 ( 平成年法律第浦号 ) が、平 を多数回にわたって繰り返しており、か 成年 6 月に公布された。両法律は、従保護観察の実施対象は、少年を除き、 来、実刑か全部執行猶予かの一一者択一で保護観察付執行猶予者と仮釈放者に一一分っ複数回検挙されている者であって、程 あった自由刑に新たな選択肢 ( 刑の一部される。新たに保護観察となる覚せい剤度の差こそあれ、薬物に依存している状 の執行猶予 ) を創設するものであり、特事犯者について見ると、保護観察付執行態 ( 注 6 ) にあると考えられる。つまり、 に後者の法律は、薬物事犯者の再犯防止猶予者は年間約 4005500 人程度、覚せい剤事犯の者に限っても、年間約 6 を推進するための特別法として新たに制仮釈放者は年間 4000 人程度である 500 人の薬物依存者が刑務所を出所し 定されたものである ( 注 1 ) 。 ( 注 3 ) 。また、保護観察付執行猶予者のていることとなり、それに加えて、覚せ 法務省保護局においては、両法律の施保護観察期間はおおむね 355 年であい剤以外の薬物犯罪で受刑した者や、薬 行 ( 注 2 ) を見据え、特に薬物事犯者へのり、仮釈放者の保護観察期間 ( Ⅱ仮釈放物犯罪以外の罪名により受刑した薬物依 指導・支援の充実強化に努めている。本期間 ) はおおむね 1 年未満であって、そ存者 ( 注 7 ) などが一定数存在することを 稿においては、薬物事犯者の概況に触れれぞれの保護観察期間が大きく異なるた鑑みると、刑務所を出所する薬物依存者ろ の た後、その処遇に関する近年の政府方針め、一時点で見たときの覚せい剤事犯者は更に多いと考えられる。 律 もちろん、刑務所に入所した時点で薬法 等について紹介し、さらに、保護観察所は、保護観察付執行猶予者が約 1500 人、合わせて物依存の状態だったとしても、刑務所の四 における処遇の現状と課題、今後の展望人、仮釈放者が約 1600 更生保護における 薬物事犯者施策の概要
中で薬物依存離脱指導等 ( 注 8 ) を受け、入所率が約 % であるのに対し、満期釈事施設内に引き続き、社会内において適 薬物使用を止める意欲の喚起や止める方放者については、これが約 2 倍の約四 % 切な指導・支援を行うことが重要である旧 法の習得等が図られるため、入所した時である。しかし、 5 年以内という長期的ことはもちろんだが、その指導・支援 点と出所した時点とでは薬物依存の状態なスパンで見ると、仮釈放により出所しは、長期的・継続的に実施されなけれ ろ は異なる。しかし、多くの薬物依存症治た覚せい剤事犯者についても、その約れば、単に再使用 ( 再犯 ) を少し先延ばし したにすぎないものとなってしまう可能法 療の専門家が述べるように、薬物依存か % が再入所しているという状況にある。 らの回復に完治はなく、回復に向けた取これらのデータは、薬物事犯者は他の性がある。 組の継続こそが必要なものである。つま者よりも再犯率が高いこと、また、仮釈 り、施設内で適切な指導を受けたとして放による出所の直後、すなわち保護観察 三薬物事犯者に対する社会内 も、薬物依存者が出所の時点において薬中は再犯が少ないものの、保護観察が終 処遇に関する近年の政府方針 物依存者でなくなるわけではなく、施設了した後には相当数の者が再犯に及んで 等 いることを示唆している。すなわち、刑 内に引き続き、社会内でも適切な指導・ 薬物事犯者に対する社会内処遇に関す 支援をいかに継続できるかが、薬物の再 る近年の政府方針や有識者の提言等は、 使用 ( 再犯 ) を防ぐ上で極めて重要なの 表 1 のとおりである である。 このうち、再犯防止に向けた総合対策 では現状、薬物事犯者の予後はどのよ ( 平成年 7 月犯罪対策閣僚会議決定 ) うになっているのか。覚せい剤事犯によ は、その後の更生保護における薬物事犯 り受刑した者について見ると、平成幻年率 所 者施策の方向性を端的に示したものなの に出所した者約 6500 人のうち、約 5 入 再 で、ここで抜粋する ( 注 9 ) 。 % の者が 5 年以内に再び刑務所に入所し ている。一方、同年に出所した覚せい剤 の 内 薬物依存の問題を抱える者に対して 事犯以外の者約 2 万 4000 人のうち、 以 年 は、個々の再犯リスクを適切に把握した 5 年以内に刑務所に再入所しているのは 上で、そのリスクに応じた専門的指導プ 約 % であって、覚せい剤事犯者は、そむ を ログラムや薬物依存症の治療のための医 うでない者と比較して約 % 再入所率が 年 当 療と、帰住先・就労先の確保のための支 高い。また、覚せい剤事犯者の中でも、 援とを一体として実施するとともに、保 仮釈放により出所した者については、出 護観察所、医療・保健・福祉機関、民間 所直後 ( 出所した年又はその翌年 ) の再図 50 % 40 % 30 % 20 % 37 % ◆覚せい剤事犯者の再入率 ◆覚せい剤事犯者以外の再入率 10% 0 % 出所年 2 年 3 年 4 年 5 年 ( 平成 26 年版犯罪白書を基に作成 )
特集危険ドラッグの規制と薬物事犯者への処遇・支援 保護観察所における薬物事犯者処遇の新たな取組 参考になれば幸いである。また、あわせ 保護観察所における て、筆者が以前に勤務した札幌保護観察 む所で行われている薬物事犯者の家族に対 する支援の取組についても触れたい。 薬物事犯者処遇の新たな取組 ~ なお、本稿中、意見にわたる部分は私 ー旭川からの報告 旭川保護観察所所長横地環見である。 だけでは完結しない。そこで、保護観察 ニ道北リカバリーセミナー 一はじめに 終了後に薬物事犯者本人が地域資源を用 P01 B ears いて回復を維持できるように、保護観察 北海道には札幌、函館、旭川、釧路の 4 か所に保護観察所があり、人口密度は期間をいわば過渡期とみなし、刑事司法 セミナーの誕生 における処遇の受け手から、地域の社会 低いが広大な地域をそれぞれ管轄してい る。旭川保護観察所は、旭川市周辺とそ資源を能動的に活用する利用者へと変わ道北地区にも薬物依存症者が通所でき れ以北の全域を受け持つが、道北と呼ばれるように方向づけ、支援していくことる社会資源が必要だという認識は、保護 観察関係者のみならず、薬物依存症者と れるこの地域の面積は東京都の川倍を超が求められている。 このように、保護観察における薬物事関わってきた地域の医療・保健・福祉関 える。一方で、人口は練馬区と同じくら いである。晴れた夏の日、どこまでも青犯者処遇で地域移行を目指す必要性は明係者の間でも少しずつ高まってきていた。 ' の一部の執行猶予平成年、過去に違法薬物乱用による い空に広々とした緑の大地が続く光景らかであり、また、刑 は、人で溢れる都会から見ると夢のよ、つ制度の導入を控え、薬物事犯者処遇の態精神科入院歴を持っ医療観察対象者が、 な別世界だが、犯罪や非行はここでも起勢整備については全国的に喫緊の課題と指定入院医療機関から旭川保護観察所管 なっているが、当地でその実現を考えた内に退院する見込みとなり、退院後の通 こっている。違法薬物、そしてアルコー 院生活について事前調整を行った。この ル ( 寒くて酒が進む ? ) や危険ドラッグとき、いきなり大きな壁にぶつかった。 がらみの犯罪も例外ではない。 薬物依存症者が地域で生活しながら利用対象者が通所で利用できそうな薬物依存 刑の一部の執行猶予制度の導入が間近できるような社会資源が、広い道北地区症回復支援のための地域資源がないと判 明したことが、それなら地元の関係者の に一つも見当たらなかったのだ。 となり、薬物事犯者に対する保護観察処 遇の充実は全国共通の課題である。依存本稿では、この壁を乗り越えるために手でこれを作ろうという機運につなが の 症からの回復には、慢性疾患への対応と旭川保護観察所がどのように工夫し、薬り、また、 SMARPP ( 注 ) の実施につい 律 同様、生涯にわたる自己管理が必要であ物事犯者処遇に取り組んでいるかを紹介て豊富な経験を持っ指定入院医療機関か法 り、定められた期間で終了する保護観察したい。同じような事情を抱える地域のらの支援を得るきっかけになった。
であって、保護観察期間が 6 か月以上で②簡易薬物検出検査 猶予制度の施行を見据え、平成年度中 保護観察対象者の断薬意志の維持向に、プログラムの実施対象を一部拡大す あるなど一定の条件を満たす仮釈放者及 び保護観察付執行猶予者に対し、専門的上を目的とするもので、教育課程と一ることを検討している。 処遇プログラムを実施している。同プロ体のものとして、教育課程の前か後 ろ 、市販の検査キットを使用して保護 グラムは、仮釈放者については地方更生 保護観察対象者の自発的意志に基づの 律 く簡易薬物検出検査 保護委員会により、保護観察付執行猶予観察官が検査を実施している。後述の 法 保護観察所においては、専門的処遇プ 者については裁判所の意見を聴いた上で保護観察対象者の自発的意志に基づく 保護観察所の長により、特別遵守事項と簡易薬物検出検査とは異なり、専門的ログラムの対象とならない又はプログラ 処遇プログラムの一環として、検査をムを終了した覚せい剤事犯者に対し、保 して受講が義務付けられる。 同プログラムの内容は、以下の教育課受けることが義務付けられている点が護観察対象者の自発的意志に基づく簡易 特徴である。 薬物検出検査を実施している。 程と簡易薬物検出検査に分けられる。 この検査も、断薬意志の維持向上を目 専門的処遇プログラムは、年間約 13 ①教育課程 ワークプックを用いて、薬物を再使 00 人に対し実施されているが、刑の一的としたものであって、犯罪捜査を目的 用しないための具体的な方法を学ぶも部の執行猶予制度が施行されれば、現行としたものではない。専門的処遇プログ ので、「薬物依存について知ろう」 ( 第の覚せい剤事犯者に限らず、薬物事犯者ラムの一環として実施する場合との大き な違いは、あくまで保護観察対象者の自 1 課程 ) 、「引き金と欲求ー ( 第 2 課程 ) 、 全般に対しプログラムを実施することと 幵の一部の執行猶予者は、発的意志に基づくものであり、検査を受 「引き金と錨」 ( 第 3 課程 ) 、「『再発』なり、また、リ けることはもちろん、検査を中断するこ って何」 ( 第 4 課程 ) 及び「強くなる現行の仮釈放者に比べて保護観察期間が より賢くなろう」 ( 第 5 課程 ) の全 5 大幅に長期化するため、プログラムの実とについても本人の任意という点であ 施負担が現行よりも格段に増加することる。この検査を受ける者の数は年間 30 一一 = から構成されている 00 人を超えるが、ほば全ての者が陰性 保護観察対象者は、保護観察官等のが見込まれる。 そのため、現在は個別にプログラムを ( 覚せい剤を使用していない。 ) の検査結 指導・助言のもと、個別に、あるいグ ル 1 プで教育課程を受講し、全 5 課程実施することが主であるが、グループで果を継続している ( 保護局の集計によ が修了するまでは 2 週間に一度のペー の実施を積極的に導入することや、実施る。 ) 。 専門的処遇プログラムとして義務付け スで取り組み、その後は、月に一度の期間の長期化に合わせたワークプック、 ペ 1 スで復習等に取り組むこととして規制薬物全般に幅広く対応できる検査キた検査を行った場合もそうであるが、保 いる ( 復習部分については、仮釈放者ット等の必要な資材を整備することが現護観察官は、陰性の検査結果を確認した 下の課題である。なお、刑の一部の執行上で、保護観察対象者の断薬の努力を称 に対してのみ実施している。 ) 。
特集危険ドラッグの規制と薬物事犯者への処遇・支援 保護観察所における薬物事犯者処遇の新たな取組 神保健福祉士 ) が 4 回、相談支援事業所ったとは言い切れない。数回連続参加後、 職員が 2 回、病院職員 ( 心理士 ) が 1 回仮釈放期間満了とともに転居すると決ま であった。 った時点で、転居先にものような場 一方のメンバーは、アルコールや薬物があったら紹介してほしいとスタッフに の依存症当事者で、自由参加である。ス相談した者もいた。幸い、転居先が大都 タッフの紹介を得た者に限定し、飛び込市だったので、その地域にある社会資源 みでの参加や当事者の家族の参加は認めについて情報を提供することができた。 ていない。また、を紹介する配布用 四名中、更生保護施設入所者以外は 4 チラシに連絡先として載せているのは旭名だが、うち 1 名は医療機関の紹介でメ ② ーとなった覚せい剤依存症者であ 川保護観察所の電話番号で、一般相談は 子 様 受け付けていない旨書いてあるが、まれる。欠席は 1 度のみであった。残り 3 名 の に家族から相談の電話がかかってくるこは保護観察付執行猶予者で、在宅で保護 とがある。この相談については、保健所観察を受けている。このうち 1 名は有機 溶剤の乱用者で初回から皆勤だったが、 影竑第第真等を紹介する形で対応している。 ヾーは代か健康上の理由で入院したため離脱した。 これまでに参加したメンノ ら間代にわたる延べ名、実人員は四名残る 2 名はアルコール依存症者で、その ( うち女性 1 名 ) である。会場からうち 1 名は 2 回目から皆勤している。 メンバ 1 の圧倒的多数が男性であるこ 徒歩圏内にある男性の更生保護施設で生 活している保護観察対象者が四名中名とから、女性メンバーには必す付き添い を占める。名中Ⅱ名が覚せい剤事犯者スタッフ ( メンバ 1 と既に関わりのある女 であり、残り 1 名がアルコール依存症者性ワ 1 カ 1 や看護師 ) が隣に座って参加す である。アルコール依存症の 1 名はメンることにした。このやり方が定着したよ うで、女性メンバーの参加は続いている 1 中唯一の「皆勤賞」だったが、残り Ⅱ名のうち 5 回以上参加したのは 2 名の みで、 1 回きりの参加に終わった者も 7 ③ 0- の内容 名いた。ただし、仮釈放期間に合わせて更チェックイン、今日のテーマ、チェッろ の 生保護施設を出入りする者も多く、施設クアウトの 3 段階を 1 時間で行う。 律 法 退所と同時に遠くへ転居することも珍し①チェックイン メンバーが会場に入り、歓迎されて着 くないので、回数だけで低調な結果であ 写真 1 PB の様子①
特集危険ドラッグの規制と薬物事犯者への処遇・支援 保護観察所における薬物事犯者処遇の新たな取組 は生活環境の調整で家族に関わってい メンバーも場合によって数名が参加し見据えた回復支援の地域移行が重要であ る。 ) である。希望すれば何回でも参加 た。講師はリハビリ施設の施設長 ( ダルることを前に述べた。依存症者の家族に してよいことにしているため、繰り返しク、マック、サマリヤ館 ) 、先輩家族ととっても事情は同じで、保護観察中の家 参加する家族・保護司がおり、そのためしてのナラノンメンバ 1 、北海道地方更族支援は保護観察終了後につながる内容 第 1 回と第 2 回では外部協力者 ( 地元医生保護委員会の保護観察官が回り持ちでであることが望まれる。 療機関の精神科医、依存症からの回復当務め、毎回札幌保護観察所の保護観察官大規模学習会で知識を得れば、その後 事者、ナラノンメンバ 1 である家族 ) の ( 主に薬物施策担当者 ) が複数名参加しは自力で地域社会資源につながっていけ 顔ぶれを変えている。外部協力者に対している。 る家族がいる一方、小規模座談会という て参加者が直接質疑応答する時間も設け参加者は毎回変わり、少人数であるこ形で更に密度の濃い支援を受けてはじめ られている。参加者に対するアンケ 1 トとから当日の顔ぶれによって雰囲気も違て一歩を踏み出せる家族もいる。今後 は、家族を一様に扱うのではなく、その の結果はおおむね「参考になった」等のうが、お茶やお菓子をいただきながら、 好意見であった。 リラックスしてお互いの距離が近い感じ多様性にある程度対応できるような支援 会場後方に、薬物依存症者対象のリ で話ができるのは小規模座談会ならでは方策を発展させていくことが望ましいと 考えられる ビリ施設、自助グループ及び北海道立精の利点と思われた。 また、札幌保護観察所においては北海 予約不要の飛び込み参加形式なので、 神保健福祉センターのパンフレットが置 かれていて、関心を持った参加者に手に誰が来るのか予測できないが、家族が到道立精神保健福祉センタ 1 との間で依存 取ってもらえるよう工夫されている。 着した段階で、その薬物事犯者の保護観症者の家族支援について連携を強化しつ 察又は生活環境の調整を担当する保護観つあるとの情報を得た。社会資源をめぐ 薬物依存症家族教室 ( 小規模座談会 ) 察官 ( 以下「主任官」という。 ) に声をる事情は各地で異なるが、家族支援の地 会場を札幌保護観察所とし、平成年かけ、可能であれば主任官の参加も得て域移行を支えるためにも地元で利用でき る資源が重要であることは共通してい 6 月の第 1 回から翌年 1 月の第 6 回ま いこうとの工夫がなされつつある。 で、午後 1 時から囲分間、年度当初に日 この家族教室への参加をきっかけに、 る。「家族版の誕生」が待たれる地 程とその日に参加する外部講師を決めて後日、家族の自助グル 1 プにつながる者域も、あるかもしれない。 案内チラシを作成し、主に引受人学習会が出たと聞く。 ( 注 ) Serigaya Methamphetamine ReIapse Prevention に参加した引受人に対してチラシを発送 ろ Program ( せりがや覚せい剤依存症再発防止プログラ する方法で参加者を募った。匿名参加で ひ 3 家族支援の今後 ム ) 【せりがや病院で開発された、覚せい剤依存症再の 予約不要としており、第 1 回は家族参加 法 者はゼロだったが、 第 2 回以降は最低 1 依存症者にとって、回復は一生続く道発防止を目的とする、認知行動療法に基づく通所治 療プログラム。 名、最高 9 名の家族が参加し、ナラノン程であり、だからこそ保護観察終了後を ( よこち・たまき )
特集危険ドラッグの規制と薬物事犯者への処遇・支援 更生保護における薬物事犯者施策の概要 え、今後も陰性の検査結果を出し続けるその連携の内容としては引受人会・家族 察・あ 会 ( 注リへの協力が最も多く、薬物事犯 よう促すだけでなく、場合によっては、 観関携 保護観察対象者の家族等に対してもこの者本人に対する直接的な支援が行われて 護機連 保係の いる例はごく一部にすぎないことが分か 結果を連絡する。これにより、家族等が 関と ち と体 , 保護観察対象者の薬物使用について無用る。さらに、薬物事犯者本人に対する支 所団り の疑いを抱くことがなくなり、疑心暗鬼援が行われている場合であっても、その は保物 又た薬 による家族間の不和を避けることにもっ支援について精神保健福祉センタ 1 や医 院しの 数 人叺叺 所中数 8 療機関と保護観察所との間で処遇上の連 ながる。 入 者 ) 察者 象 刑の一部の執行猶予制度の施行に伴携が図られているケースは少ないことが 通 ( 観犯 ④通護事 、専門的処遇プログラム実施対象者が分かる。 況の族 一方、保護観察所とダルク等の民間支 覚せい剤事犯者のみから薬物事犯者全般 保 状所家 携察・カ 庁庁庁す に拡大することを見据え、平成年度中援団体との連携は相当程度進んでおり、 連観会協 当 の護人の 該 には、保護観察対象者の自発的意志によ薬物事犯者 400 人がダルク等に入所又 呆受へ ④ る簡易薬物検出検査の実施対象も薬物事は通所していて、そのうちの 7 割につい 引会 数 のム 犯者全般とすることを検討している。まては保護観察所との連携が図られてい 所む 関所ラ 察含 た、専門的処遇プログラムの場合と同る。その大きな理由の一つは、平成年 庁庁庁観を 観ロカ 睹様、幅広い規制薬物に対応できる検査キ度以降保護観察所がダルク等に宿泊場所 と護プ協 る事 所呆遇の の供与や薬物依存回復訓練 ( 注リを委託 ットの整備が今後の課題となる。 あ物 察処へ が薬 することのできる制度が導入されたこと 体の 護のの 団外 中へ援 であると思われるが、表 2 のような状況 以 る察者支 2 保護観察所と地域の関係機関・ 庁庁庁関 か観犯な となっているもう一つの大きな理由は、 3 機 係せ か護事的 団体との連携施策 関覚 薬物依存者に対する専門的な治療や支援 呆物接 る 選薬直 すは 平成年度における保護観察所と地域を積極的に実施する医療機関等が極めて 当に 者 該者 の関係機関・団体との連携状況をまとめ少ないことであると考えられる。厚生労 体 は犯 事 団 福等 働省がホームペ 1 ジに掲載している資料ろ たものが表 2 である。 物 健一関援 ~ 物 保タ機支 ( 注リによれば、平成年 3 月現在、薬の この表を見ると、多くの保護観察所に 神ン療 精セ医民 おいて、精神保健福祉センターや医療機物依存症に対する専門的な認知行動療法法 表 を行う病院 ( 注リは全国で機関 ( 注、 関と何らかの連携を行っているものの、 19 人 66 人 286 人 ( H26 年度保護局調査 )
との連携をこれまで以上に緊密にしつ つ、課題の解決に向けて全力で取り組ん でまいりたい。 ( 注 ) ( 1 ) 両法律の内容については、本誌平成年Ⅱ月号に ( 2 ) 公布の日から起算して 3 年を超えない範囲内にお いて政令で定める日 ( 3 ) 保護統計年報 ( 平成年 ) による。 ( 4 ) 平成年版犯罪白書による。以下において、特に 記載がない限り、用いる統計数値は同白書による。 ( 5 ) いわゆる薬物事犯者のうち、現状において圧倒的 多数を占めるのは覚せい剤事犯者であることから、薬 物事犯者の概況を述べるに当たっては、主として覚せ い剤事犯者に係る統計を用いる。 ( 6 ) 本稿においては、医学的な診断基準を満たす者に 限定せず、薬物の乱用を繰り返している者と同様の意 味で用いる。 ( 7 ) 例えば薬物を購入する資金欲しさに窃盗に及んだ 者や、薬物使用の状態で傷害や道路交通法違反に及ん だ者など ( 8 ) 本誌「川越少年刑務所における特別改善指導 ( 薬 物依存離脱指導 ) の実施状況」 ( 頁 ) 参照。 ( 9 ) 同対策においては、再犯防止対策の数値目標が掲 げられ、刑務所や少年院を出所又は出院した後の 2 年 以内再入率を平成芻年までに 2 割以上減少させる ( 刑 務所出所者については間 % 以下、少年院出院者につい ては 8 ・ 8 % 以下の再入率とする。 ) こととされた。 詳しい これに関し、平成幻年に刑務所を出所した者の 2 年以 物依存症者に対する専門的な認知行動療法の実施体制 6 内再入率を見ると、覚せい剤事犯者は幻・ 4 % と目標 の整備を図っている。 8 値を大きく上回っており、これを引き下げられるか否 ( ) 薬物地域支援研究会提言においてもその必要性に かが目標達成を左右するカギになると思われる。 ついて言及されているが、犯罪対策閣僚会議の下に設ば ろ けられた「福祉・医療的支援タスクフォ 1 ス」が平成ひ ( 四同提言の概要及び全文については、法務省ホーム 年 2 月に取りまとめた「刑務所出所者等に対する福律 ページに掲載している (http ://www.moj.g0jミh0g01 祉・医療的支援の充実・強化等について」において /soumu 、 h0g002 ー 00052. htl 三 ) 。 ( Ⅱ ) 薬物依存の基礎知識に関する解説を行ったり、薬 も、法務省と厚生労働省が連名でガイドラインを定め 物依存のある家族との接し方について相談に応じた て関係機関に周知することが今後の方針として明記さ り、同じ立場にある家族同士が悩みを共有したりする れた (http ://www.moj.go.jp/hisho/seisakuhyouka/ ことを目的として、全国の保護観察所において年に数 h 一 Sh004 ー 0805. h ョ】 I) 。 回開催されている。 ( リ大麻、有機溶剤、麻薬、覚せい剤、あへん及びけ ( リ薬物依存当事者が行うグループミ 1 ティング等に しがらを指す。 おいて、自らの体験を述べたり他者の体験を聴いたり ( 四 ) 薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執 すること等を通じて、自分の問題性への理解を深め、 行猶予に関する法律案の提案理由説明に係る国会議事 生活習慣を改善する方法等を習得する取組 録からの抜粋「 : : : また、薬物使用等の罪を犯す者に ( ) 「などの「薬物依存症に対する認知行 は、一般に、薬物への親和性が高く、薬物事犯の常習 性を有する者が多いと考えられるところ、これらの者 動療法プログラム』の国内実施状況」 http://www. の再犯を防ぐためには、刑事施設内において処遇を行 mhlw. go. 、 stf/ seisakunitsuite / bunya / 000870789. html うだけでなく、これに引き続き、薬物の誘惑のあり得 ( リ薬物依存症を治療する ( 薬物に対する渇望を低減 る社会内においても十分な期間その処遇の効果を維持 強化する処遇を実施することがとりわけ有用であると させる ) 薬剤は未だ実用段階にないことから、薬物依 考えられます。そこで、 ( 中略 ) その猶予の期間中必 存症に対する治療の主な方法としては、認知行動療法 によるものが想定されている。 要的に保護観察に付することとし、施設内処遇と社会 ( 西医療観察法病棟においてのみ実施している医療機 内処遇との連携によって再犯防止及び改善更生を促そ 関を除く。 うとするものであります。」 ( 間 ) なお、厚生労働省においては、平成年度におい ( おしきり・ひさとお / て「依存症者に対する治療・回復プログラムの普及促 あかぎ・ひろたか ) 進事業」を実施し、神保健福祉センターにおける薬
特集危険ドラッグの規制と薬物事犯者への処遇・支援 更生保護における薬物事犯者施策の概要 ている 支援団体等との連携によって、刑務所等 略 等 策 収容中から出所等後まで一貫した支援が 年 強 行える態勢を強化する。 の ー」カ 面 四保護観察所における処遇の 特に、覚せい剤事犯者にとって再使用 当 現状と課題 る の危険性が最も高いとされる刑務所等か 針合防 チ合の す 方総用 関グ申援 らの出所等後間もない時期については、 薬物事犯者に対する処遇は、一一般的な 府たし」 ンス支 年ロ・略 政け 密度の高い指導及び支援を実施した上、 保護観察に共通するものと薬物事犯者に 療 の向薬支 ワフ 引き続き医療機関、薬物依存症に係る自 特化したものとに分けることができる 最 / 創の 策ク 助団体等と緊密に連携しつつ薬物依存に が、さらに、薬物事犯者に特化したもの す助第者女ス止 止タ畠 日〉灯 対する継続的・長期的な指導・支援の充 は、直接的なものと間接的なものとに分 尸防援ネ に再定 る 遇 す 実を図る。 決言朏犯支 けることができる。ここでは、薬物事犯 処定議安提再的寸 内決会 また、その家族等に対し、薬物依存者 者に特化した直接的な処遇として専門的 会議進究州議医 ' 等 への対応等に関する理解を深めさせ、適 処遇プログラムや保護観察対象者の自発 会推研会・ 者 る僚策『援の僚祉万 切な対応力を付与するとともに、当該家 的意志に基づく簡易薬物検出検査を、間 【ー支閣佃一戸 対 策用定域策 / 族等を疲弊、孤立させないための取組を 接的な処遇として保護観察所と地域の関 対乱決地依対会所て 犯罪物議物 = 罪事 実施する。 係機関・団体との様々な連携施策を、そ 犯薬閣薬「犯幹硎 6 事 物 さらに、対象者の薬物依存に係る治 れぞれ紹介し、そこから見えてくる今後 7 ′ 8 1 療、回復段階を見据えつつ、その就労能 4- LO ) ( 0 の課題について述べることとしたい。ま っつなっ」ワ」 表 力や適性を評価し、その時々に応じた就 た、保護観察所における危険ドラッグへ 労支援等を実施する。 の対応についても触れたい。 物地域支援研究会 ) を定期的に開催し、 特に、保護観察所と地域の医療・保連携強化方策に関する検討を行ってき 専門的処遇プログラム及び保護 健・福祉機関、民間支援団体等との連携た。その検討結果が、平成年 9 月に取 観察対象者の自発的意志に基づく 強化は、その後の政府方針等においても りまとめられた薬物地域支援研究会提言 簡易薬物検出検査の実施 ろ 一貫して強調されている。この点に関「薬物依存のある刑務所出所者等の支援 ひ の 専門的処遇プログラム し、法務省保護局においては、平成年に関する当面の対策ーである ( 注四。現 律 度から、精神科医、学識経験者、民間支在、法務省保護局では、同提言の実現に保護観察所においては、平成跚年度か法 援団体役員等を構成員とする研究会 ( 薬向けた取組を関係省庁と連携しつつ進めら、覚せい剤の自己使用の罪を犯した者引
つん 等も参入し、依存症への理解を深めるとの参加意欲は高い。 2 札幌保護観察所の家族支援 平成 5 年度、筆者が勤務していた ともに、関係者同士が互いの仕事につい て理解し合い、ネットワ 1 クを強化するさいたま保護観察所では、矯正施設入所平成年度から法務省保護局は地域支 中の薬物事犯者の家族で、本人が出所し援ガイドライン案と呼ばれる枠組みを導 場としても役立っている ろ 将来的には、「道北地方物質使用障害たら引き取って面倒を見る「引受人」と入し、家族支援の充実強化は全国的な実ひ なる意向を持つ人たちを対象に、「引受施課題となり、前述のような家族の集ま律 者地域支援連絡協議会」 ( 仮称 ) という ような形を作って、運営の主体を担人家族の会」を 4 回実施した。この集まりは全ての保護観察所で定期的に開催さ りは家族に対する知識伝達の場として設れるようになった。 ってもらうことも検討していきたい。 けられ、薬物依存症とは何か、家族はど本稿で紹介するのは、平成年度に行 う接したらいいか、近くの相談先はどこわれた札幌保護観察所の家族支援で、社 三保護観察所が行う薬物事犯 かについて、埼玉県内の専門家や支援者会資源を活用して家族向けに知識を伝達 者の家族支援 から家族が直接話を聞ける機会を保護観する大規模な学習会に加え、小規模な座 察所において提供した。 談会形式の家族支援を取り入れて一一段構 家族支援の意義など 保護観察所が仲介する形で、家族を地えになっているのが特色である。なお、 薬物依存症者は、金銭面、人間関係、域の社会資源に結びつけ、家族がそれを札幌保護観察所が実施する家族支援は、 その他一切の面倒を放置したまま「酔利用できるようにするという発想は、同学習会 ( 当時の名称は「覚せい剤事犯者 い」に逃げ込むことが多く、その結果、様の集まりを先に実施していた札幌保護の引受人との座談会」 ) が平成元年度か ら ( 休眠期間もはさんで ) 、小規模座談 周囲にいる人、たいていは家族が尻拭い観察所の実践から学んだものだったが、 せざるを得ない。したがって、本人は困埼玉県では家族の参加率が ( 札幌よりず会が平成年度から続いている らないが、その分家族は困っていて、何っと ) 高く、当日欠席者がほとんどいな かったばかりか、この会をきっかけに、 覚せい剤事犯者の引受人学習会 ( 兼 とか状況を変えたいと思っていることが 多い。また、特に違法薬物の場合は、家後ほどダルクや精神医療センターに赴保護司特別研修 ) 族が本人の問題を「家の恥」と感じて外き、必要な支援につながった家族や薬物第 1 回を 7 月、第 2 回を 1 月に実施 に出せず、どうしていいのか分からない事犯者本人が複数名出たことで効果が確し、時間は半日 ( 部分参加可 ) 、参加者 認できた。埼玉県の場合、支援に関わるはそれぞれ名・名という大規模な会 まま孤立し苦しんでいる このような事情から、薬物依存症者が医療・保健・福祉機関、当事者・家族の合であった。参加者の内訳は半数が家族 保護観察所と関わりを持った場合、保護支援団体、行政の間で既に地域ネットワ ( 薬物事犯者本人は矯正施設に入所して いるか、在宅で保護観察を受けてい 1 クができていて、関係者の連携が取れ 観察所が家族を対象とした勉強会や集ま る。 ) 、残りの半数が保護司 ( 保護観察又 りを企画し、家族に声をかけると、家族ていたことも幸いしたと思われる