傷死亡保険金の支払額の問題点は、それ金特約のような特約もなければ、キャッ険法の下で残された選択肢は次のような ものとなろ、つ。 が「高額になる」ことよりはむしろ「予プ額の設定も行われていないのであり、 想できない」ことにあるといえる。このまさに人傷の損害瞋補性を全面に押し出 死亡保険金部分は、傷害疾病定額保 とき被保険者一人についての死亡保険金した運用がなされている。だとすれば、 険契約とみる ( 相続人原始取得説 <) 引 を一定金額に保つことができれば、一度人傷の性格付けとしては、死亡補償 ( 後 死亡保険金部分は、傷害疾病損害保 法 の事故においては概して乗車定員以上の遺障害補償 ) とその他の補償の一一面的な険契約でも傷害疾病定額保険契約でも 支払が生じることはないはずである ( 例構造を持つものとして捉えるのが妥当で ない契約とみたうえで、死亡保険金は えば普通自動車であれば 3000 万円 x あろうか 約款の文言に従い相続人が原始取得す 5 名 ) 。これによって死亡保険金につい るとみる ( 相続人原始取得説 ) て、一定のめどを設定した上で保険料の 岡被保険者の法定相続人が死亡保険金 人傷と保険法の契約分類 算定を行うことが容易になる。 の保険金請求権者になることを定めた そのように考えると、人傷死亡保険金 ところで、本件判旨に反対する立場の 約款規定は、被保険者が取得した保険 についての支払上限額の設定は、被保険中には、判決の結論をとると人傷が現行金請求権を相続人が相続により取得す 利益という損害保険の特徴的要因とは関保険法の下で許されるいずれの保険契約ることを言い換えたものであり、死亡 係なく、保険金額を明確化するために行類型からも排斥されてしまうと懸念する保険金部分も傷害疾病損害保険契約で われる慣行と捉えることができる。それ見解がある あるとみる ( 相続構成説 ) 」。 は、結局のところ前述の人身傷害死亡・ 「人身保険契約の死亡保険金に関する そしてこのうちの①については、前述 部分 : 後遺障害定額給付金特約と同根の、ひい : については、保険法が認める 3 した反対説と同様に、「現に広く販売さ ては旧自損事故傷害条項のような定額給類型のいずれかに分類することが難しい れている人傷保険の約款規定が実は約定 付型の傷害保険契約に回帰しようとするという問題が生じている。損害を被って代位の例であるという理解に対しては、 実務慣行であるといえよう ( 注 6 ) 。 いない者に保険金請求権を与えるような強い違和感を覚える保険実務家が少なく もっとも、このように性質付けること保険契約を損害保険契約とみることがでないのではなかろうか」とされ、代位を ができるのはあくまで人傷の死亡保険金きないという点は : : : 旧商法の下でも同主たる根拠としてこれを否定する 部分 ( 場合によっては後遺障害補償を含じであったが、旧商法の下では、そのよ さらに 2 についても、次のような懸念 む。 ) に限られる。その他の給付につい うな契約であっても、傷害保険契約と見を呈し、これを否定する。「 : ・ 3 の解 ては、人身傷害死亡・後遺障害定額給付ることは可能であった。これに対し、保釈によれば、人傷保険の死亡保険金部分
= = 三 = = = = 一 = = = = = = = = = = = 一 = = 三 = = = = = = = = = = = = = = = = = 一の確保等国民健康保険事業の健全機関相互間の機能の分担及ひ業務当該療養の給付等の額の 10 0 0 ◆持続可能な医療保険制度を構築 な運営について中心的な役割を果の連携のための措置として厚生労分の 164 とすること ) 等を行う するための国民健康保険法等の一 たすものとする等の措置を講じて働省令で定める措置を講ずるものこととしている 部を改正する法律 いる 本法は原則として平成年 4 月 とすること ( 紹介状なしの大病院 ( 平成年法律第引号 ) 1 日から施行されるが②の、っち ②では、被用者保険等保険者に受診時の定額負担の導入を想 冖平成年 5 月四日公布 後期高齢者支援金の全面総報酬割 係る後期高齢者支援金の額の算定定 ) 、◎標準報酬月額について、 原則平成年 4 月 1 日施行〕 について、その額の全てを被用者 3 等級区分を追加し、その上限額の段階的導入部分・全国健康保険 【国民健康保険の財政基盤の安定 保険等保険者の標準報酬総額に応を 139 万円とするものとするこ協会に対する国庫補助率の安定化 化等】 については平成年 4 月 1 日か じたものとするとともに ( 現行は と ( 現行の上限額は 121 万円 ) ら、健康保険法に関する部分 ( 国 3 分の 1 総報酬割であるところ、 等の改正を行っている。 本法は、急速な少子高齢化等の平成年度は 2 分の 1 総報酬割、 ④では、都道府県が地域医療構庫補助に関する事項を除く。 ) 環境変化を背景として、持続可能平成年度は 3 分の 2 総報酬割、 想と整合的な目標 ( 医療費の水④のうち高齢者医療確保法に関す る部分については平成年 4 月 1 な社会保障制度の確立を図るため平成四年度は全面総報酬割と段階準・医療の効率的な提供の推進 ) の改革の推進に関する法律に基づ的に実施される。 ) 、高齢者医療へを計画の中に設定すること、保険日から、②のうち後期高齢者支援 く措置として、持続可能な医療保の拠出金負担の重い保険者の負担者が行う保健事業に、予防・健康金の全面総報酬割の段階的導入部 険制度を構築するため、①国民健を軽減する措置を拡充することとづくりに関する被保険者の自助努分以外の部分については、平成四 康保険をはじめとする医療保険制している。 力への支援を追加すること等の改年 4 月 1 日から施行される。 度の財政基盤の安定化、②後期高③では、⑦入院時食事療養費の正を行っている。 齢者支援金の全面総報酬割の導食事療養標準負担額について、平⑤では、患者の申出に基づき厚 入、③負担の公平化、④医療費適均的な家計における食費及び特定生労働大臣が定める高度の医療技 正化の推進、⑤患者申出療養の創介護保険施設等における食事の提術を用いた療養を保険外併用療養 設等に関する規定の整備を行うも供に要する平均的な費用の額を勘費の支給の対象とすることとして いる 案して厚生労働大臣が定める額と 「のである。 このほか、全国健康保険協会に ①では、国民健康保険への財政するものとすること、④特定機能 速支援の拡充を行うとともに、都道病院その他の病院であって厚生労対する国庫補助率の安定化 ( 同協 府県は当該都道府県内の市町村と働省令で定めるものは、患者の病会が管掌する健康保険の事業の執 ともに国民健康保険を行うものと状その他の患者の事情に応じた適行に要する費用のうち、被保険者 ろ ひし、安定的な財政運営、市町村の切な他の保険医療機関を当該患者に係る療養の給付等の額に対する に紹介することその他の保険医療国庫補助率について、当分の間、 「国民健康保険事業の効率的な実施 lllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllll 73 ・法律のひろば 2015.9
保 険判例研究 ができるという趣旨である るという事実は、何といっても被保険者ものと捉えられよう。 しかしながら、この趣旨説明は少々ト ただこれとは別に、実務では、一般に が生存している場合とは異質の状況であ リッキーな感を否めない。特定物を目的 る。特に人傷では、そのことに十分に配任意自動車保険契約に加入する際に人傷 の死亡保険金についていわゆる「支払上とする損害保険契約において一定の保険 慮すべきではないだろうか 限額」 ( 俗にキャップとも呼ぶ。 ) を約す価額があらかじめ想定されており、その ることが圧倒的に多い。保険募集の現場金額 ( 目的物の全損金額 ) が高すぎるた 2 固有権説の積極的根拠 では、個人の任意自動車保険契約加入にめに保険金額にキャップを設けるという それでは、人傷の死亡保険金請求権を際し人傷の死亡保険金について、ふつうように、比較対象となるべき金額がある 3000 万円又は 5000 万円の金額を場合であれば、文字通り「保険料の低廉 法定相続人が固有に取得できるとする積 化とい、つこともできよ、つ。確かに理論 極的根拠は、どこに求めればよいのだろこの上限額とし、無制限とする場合には うか。保険会社によっては、任意自動車むしろ保険会社での稟議を要するとする的にいえば、人傷の被保険者について 保険契約を締結する際に、「人身傷害死のが慣行となっている。本件でも死亡保も、逸失利益等の要素から構成される人 亡・後遺障害定額給付金特約」を付すこ険金は 5000 万円という切りのよい金保険の被保険利益、そしてそれを前提と とができるものがある。この特約規定の額となっているが、この支払上限が約定する「人の保険価額ーが存在しないわけ ではない。しかしながら、そもそも人傷 解説によれば、これは「人身傷害保険のされているためである。 この約定の本来の意味は、人傷の被保の被保険者は、配偶者・親族・子などに 保険金がお支払いの対象となる事故で、 被保険者が亡くなられた場合は保険金額険者死亡における「支払金額の制限」約加え、当該自動車に搭乗中の者まで広げ の全額 : : : を定額給付金としてお支払い定である。募集段階におけるこうした支られている。そうなると、事故の時点で する特約ですーとある。したがって、こ払上限額約定の「励行」は、もつばら、誰が当該車両に搭乗していたかに応じ の特約に基づき死亡保険金額が約定され保険料の低廉化のために行われているとて、様々な被保険利益の組合せ ( 特に搭 ているときは、法的な意味でも死亡保険いわれる。つまり、人傷の被保険者死亡乗者を含む以上、無限ともいうべき組合 金は生命保険契約と同様に定額給付性を保険金算出方法に従った金額が概して高せ ) が予想されるわけであり、「被保険 有することになる。すなわち「被保険者額になるという前提の下で、一定の支払利益ーないし「保険価額」の実像は、極引 が死亡した場合は、その法定相続人」と「限度額」を設けておけばそれを基準にめて不安定となる。それに応じて、具体の される「保険金請求権者 , は、まさに「保保険料を計算することができ、そのため的保険金額がいくらになるのかはもとも法 と想定さえできない。言い換えれば、人 に契約者は保険料の額を安く抑えること 険金受取人」の指定と同様の効果を持っ
及び『被保険者の父母、配偶者または子。時に保険給付請求権者でなければならな また、原告は、本件において、亡 < 死 いことから、被保険者である亡 < が本件亡時の法定相続人は、い ずれも遺留分権 ただし、これらの者が賠償義務者に対し 法律上の損害賠償請求権を有する場合に保険金請求権を取得し、その結果、本件利者ではなく、かっ、亡 < がに対して 限る。』と規定しているところ、本件契保険金請求権が相続財産に帰属する旨主本件遺言書に係る遺贈をしていることか引 約の被保険者は、本件事故によって死亡張する。しかしながら、人身傷害補償保ら、亡 < が法定相続人に本件保険金請求の した亡 < であって、本件事故の賠償義務険は、損害保険契約に属するとしても、権を原始取得させることを望んだと解す 者に対して法律上の損害賠償請求権を有物ないし財産を保険の対象とするいわゆるのは不合理であるとして、上記法定相 する亡 < の父母、配偶者及び子は存在しる物保険ではなく、被保険者の身体を保続人らが本件保険金請求権を取得しない ないものと認められる。そして、被保険険の対象としていることから、いわゆる旨主張する。しかしながら、他方、保険 金請求権が相続財産となれば、被相続人 者が死亡した場合、仮に、被保険者が保人保険としての性質を有する。そして、 である保険契約者の債権者がこれを引当 険金請求権を取得するとすれば、通常、 人保険の典型である生命保険において、 被保険者の死亡時点で、その保険金請求医療特約や入院特約につき、実際の治療財産として執行することが可能となると ころ、一般的な保険契約者としては、そ 権が相続財産となり、法定相続人が相続費用等を超える保険金の受取りが可能と によって取得することになるはず . にもか なる定額保険として構成することが許容のような事態に陥るよりは、相続人に取 かわらず、本件約款においては、上記のされており、利得が生じるような契約形得させることを望むのが通常であると考 えることができ、本件約款も、そのよう とおり『被保険者が死亡した場合は、そ態を許さない利得禁止原則が及ばないこ : に照らせば、同じく人保険であるな保険契約者の合理的な意思を考慮して の法定相続人』との文言が敢えて付加さと : れていることに照らし、本件契約上、被人身傷害補償保険においても、利得が生定められたものと解する余地がある。し 保険者が死亡した場合の保険金請求権者じるような契約も違法ではないと解すべかも、本件では、 : : : 亡 < が保険金請求 は、被保険者すなわち亡 < の法定相続人きである。そうすると、実際に損害を被権者につき『被保険者が死亡した場合 であると解釈するのが自然かっ合理的でった被保険者以外の者に利得を生じさせは、その法定相続人』と付記された本件 ある。 る契約、すなわち、そのような者に保険約款を含む本件契約を締結したのが平成 この点、原告は、本件契約が人身傷害金を取得させる契約が、論理必然的に許年 1 月川日であり、本件遺言書の作成 補償保険であり、人身傷害補償保険が損されないわけではないと解すべきであつ日付が平成年Ⅱ月日であることか 害保険契約の一種であって、損害保険契て、原告の上記主張を採用することはでら、亡 < の意思を重視するとしても、本 件契約締結時点において、本件保険金請 約においては、損害を被る被保険者が同きない。
保 険判例研究 は、 3 類型以外の保険契約である ( あるも「損害」という私法上の普遍的要因は、 種の保険契約でどのように契約内容を構 いはそもそも保険契約ではない ) という保険契約の領域においては、損害瞋補型成するかは、完全に当事者間の約定に委 ことになりそうであるが、これは、少な保険契約という一つの有意の類型を提供ねざるを得ない。そして損害保険契約に くとも保険法制定当時の一般的了解とはする基礎となり得る。しかしそれに対しおける保険給付額の「確定」との対比で、 当事者で約定される一つの「象徴」とし 合致しない解釈である」。この結果、残て、そもそも「定額給付」という表現は、 された岡のみが、保険法の厳格な契約分何らかの法的意義、少なくとも損害瞋補て捉えられたのが保険給付の「金額ーで 類の下で成り立ち得る論理ということに と同じ水準の積極的な法的意義を持つもある。いわゆる定額保険において当事者 なる ( 注 7 ) 。 のではない。「損害瞋補 [ の反対概念を間で約定しておかなければならないの つまりこの見解は、人傷死亡保険金問求めようとすれば、それは損害の「非」は、保険金額のみに限られるものではな 題を、「損害を直接被る者以外の者を保瞋補であり、決して「定額給付」とはな い。例えば生命保険契約においては、被 険金請求権者と定めて損害相当額を保険らなし : 「損害を瞋補しない」というこ保険者や保険金受取人などの要素もま 金として支払うような傷害保険契約は傷とはただちに「支払保険金額が一定であた、当事者間で約定しておかない限り契 害疾病損害保険契約にも傷害疾病定額保る」という特性とはつながらないのであ約自体が頓挫してしまう重要項目なので ある。 険契約にも該当しなくなってしまうのでる だとすれば、結局のところ「非 , 損害 はないか、という観点からの議論」に乗それにもかかわらす、保険法で「定額」 せて決着させようとするのである ( 注性が強調されるのはなぜであろうか。「損填補性ということから導かれるのは、「契 害」概念の導入は、損害保険契約におい約内容確定効の欠如のために、当事者が 私見は判旨に賛成であり、まさに右のて、保険の目的や保険給付の帰属などその内容を明示的に約定しておかなけれ 2 に該当する。だとすると、右の見解か種々の要素を確定することを可能にしばならないーという事実である。そして、 らは人傷は ( 少なくとも死亡保険金の部た。とりわけ、損害概念は被保険利益と「損害保険以外の保険契約」という契約 分において ) 保険法の認める「保険契約」 いうその保険法的評価を経ることによっ にとって、この当事者間における約定こ ではなくなるおそれがある。果たしてそて、「保険給付の額を決定することをもそ、保険契約に命を吹き込む要となるの のような解釈に服するべきなのであろう可能とする」 ( 注 9 ) 。これを逆に見れば、 である。したがって、「定額保険契約」引 損害の瞋補性を欠く場合、たとえ「保険という語句は、決して「額ーだけに限定の ここにおいて、問題を保険法の基礎理契約」であってもこうした「確定効」をして理解してはならない。「定額ーとは法 念にまで遡らせる必要が生じる。そもそ具備することはない。だとすれば、その実は「約定で決めない限り不明」という
る。相続人は相続を放棄している以上、 が必要になる。保険代位は、このようなる。すなわち、「保険契約において、一 この損害賠償請求権を取得することはで構図の上に設けられたものである。裁判方では、被保険者が被る『損害』に対し きない。それにもかかわらず人傷死亡保基準差額説や求償権の消滅時効にかかるて保険金を支払う ( しかも被保険者が被 ずれも保険法の枠内にとどまった損害の額を算定して保険金を支払引 険金請求権を相続人が原始的に取得する論争は、い う ) ことを定めておきながら、他方におの のだとすれば、保険金を支払った保険会るものではなかった。いずれも私法的な 法 いて、被保険者ではない者に保険金を支 社は、受取人の有しない権利に代位する賠償 ( 補償 ) システム全体に視野を広げ 払うという一見矛盾するような定めをす ことができないはずである。したがっ なければ解決の難しい問題である。した て、損害賠償請求権と保険金請求権の分がって、上の反対説の指摘の真意は、人ることが許されるか」について、「人傷 属を許してしまう論理は、誤りであるこ傷における代位システムもまた、既に私保険のように、被保険者の損害を算定し とになる。 法的損害賠償 ( 補償 ) の全体構図に組みて支払保険金額を定めるタイプの保険契 ここで裁判基準差額説をとる判例や求込まれたものであり、これを崩すことが約であるからといって、被保険者以外の 者に保険金を取得させる約定が論理必然 償債権の消滅時効に関する判例に触れらできないという点にある。 しかしながら、権利の分属の問題と重的に許されなくなるわけではないと解す れているのには理由がある。保険代位 は、本来、単に保険法のみならずより広複補償の回避という問題は切り離して考べきである」とされるのである ( 注 4 ) 。 このように、「保険の目的や保険給付 く私法上の損害賠償 ( 補償 ) 体系におい察しなければならない。現行保険法の制 て、絶対的調整策としての機能を有す定過程においても、既にそのことは意識が何か」については「損害」という概念 る。これが私法上の三大代位の一つに数されていた。法制審保険法部会の第回を重視しながらも、保険給付の帰属につ いては必ずしもそれに拘東されないとい えられるのは、そうした重要な役割を担議事録では、「〔利得禁止原則にいう〕利 うからにほかならない。この調整の究極得というのは、損害以上のものは払ってう解釈にまで行き着けば、伝統的な調整 の目的は、「損害」の重複的賠償 ( 補償 ) はいけないという意味で、それがだれに策としての代位絶対論は見直しを迫られ を回避することにある。損害は私法上の帰属するかというところまで要求されるることになろう。換言すれば、損害の填 全てのシステムに共通して、「 1 回」のものかというところがまたもう一個出て補という特性は、一定の内容をもっ保険 という疑問が呈されてい 金請求権の「発生ーまでを取り仕切るが、 み回復できればよい。そして、複数の制くるのか : 度・手段が一つの損害の賠償 ( 補償 ) にる ( 注 3 ) 。この疑問をさらに進めて、保その後の「帰属」については任意契約が 向けられている場合には、最終的負担を険金の「帰属」確定効を、被保険利益と許されるのである ( 注 5 ) 。 いずれにせよ、被保険者が死亡してい いずれに帰すべきかを調整する全体構造はある程度切り離して考える見解もあ
保 険判例研究 亡時受取人ですーという手書きの「遺 言書」を作成している 平成年肥月日午前 9 時幻分頃、埼 玉県川口市の路上において、 < が単独で 契約車両を運転中、の運転する事業用 中型貨物自動車に追突する事故を起こ し、草加市立病院に搬送されたが、同年 肥月幻日午前 5 時訂分頃死亡した。 は遺言者を < として遺言執行者選任 の申立てをし、平成年 9 月日、 >< が 遺言執行者に選任された。は社に対 5 0 0 0 万円 ( 及 車の運行に起因する事故 : : : に該当するして、人身傷害保険金 急激かっ偶然な外来の事故によって身体び遅延利息 ) の支払を求めた。 に傷害を被った場合に、被保険者または その父母、配偶者もしくは子が被る損害 に対して、この人身傷害条項および基本 ニ判旨 条項に従い、保険金請求権者に保険金を 支払いますーと規定されていた。保険金争点 1 ( 遺言執行者である原告に本件 一事実の概要 請求権者は、「被保険者 ( 被保険者が死訴訟の当事者適格があるか ) について 亡 < は、保険会社との間に、平成亡した場合は、その法定相続人 ) ーであは、次のように判示している ( 争点 2 は 年 1 月川日に、保険期間を平成年 2 月った。支払われるべき人身傷害保険金は略 ) 。 「 : : : 本件約款は、本件契約の保険金 日午後 4 時から同年 2 月日午後 4 「損害額の決定」規定によって決められ 時とし、契約車両を < 所有の自家用小型るが、本契約では死亡保険金について上請求権者につき、人身傷害事故によって引 損害を被った次のいずれかに該当する者の 貨物自動車とする任意自家用自動車保険限 5000 万円の支払上限額 ( キャッ 契約を締結した。当該契約の「人身傷害プ ) が約されていた。なお、 < は平成をいうとした上、『被保険者 ( 被保険者法 条項ーでは、「被保険者が : : : 契約自動年Ⅱ月日付けの文書により、「 < 、死が死亡した場合は、その法定相続人 ) 』 第回 保険判例研究会 自動車保険 ( 人身傷害保険 ) 契約に基づき、死亡被 - 保険者の遺言執行者である原告につき本件訴えの当 事者適格を認めることはできないとされた事例 大塚英明 東京地裁平成年 2 月川日判決 ( k-a / 2 5 5 0 5 7 2 7 ) ( 早稲田大学大学院法務研究科教授 )
趣旨である。この種の契約ではあらゆる ( 2 ) 山下典孝「人身傷害補償保険の被保険者死亡にお ける保険金帰属」ローライプラリー新・判例 内容を約定しなければならないのであ N -1881 亠ゥー 0 : 》ー・ 00 ー 0 ・ 解説商法爲 ( る。 LOO 冖 / -8- イ 1 ワ 3 っ 01 亠 ) 頁 そのように考えれば、前述した見解の 挙げる①と 2 は、その内容決定のための ( 3 ) 法制審議会保険法部会第回会議議事録頁以下 約定の範囲ないし程度の点に差があるに を参照 (http く /www.m三.go.jミcon(enく08日 2388 も (f) 。 ( 4 ) 洲崎博史「人傷死亡事案において被保険者の法定 すぎず、①が現行保険法の「枠外」には 相続人が相続放棄した場合の人傷保険金の帰属」損保 み出す契約であるとは思われない。その 川巻 4 号 ( 2013 年 ) 328 頁。なお、この論稿は 点では、給付額の約定と受取人の指定 ( 約 定 ) とはまったく同列で、いずれも契約盛岡地裁判決の評釈。 ( 5 ) もう一つクッションをいれて、「発生」と「帰属」 内容として「当事者間で約定しておかな を被保険者本人とした上で、「最終的帰属」だけを別 ければならないことがら」に属するもの 様に考える立場もあり得よう。その場合、「発生時の となる。それにより、人傷死亡保険金請 帰属」が被保険者であることは動かせないが、被保険 (2) なお、この問題についてさらに詳細に論じたもの 求権を法定相続人が固有に取得するとい として、拙稿「人身傷害死亡保険金の帰趨ー保険法に 、つ「約定」がある場合には、人傷は「傷者は死亡しているので、その後の扱いがどうなるか おける人身傷害条項の立ち位置ー」保険学雑誌 630 は、被保険利益では必ずしも決定付けることができな 害疾病定額保険契約」に属するものとな 号【学会創立周年記念号 ( 2015 年 ) を参照。 いと解するのである。保険契約者竈被保険者 ) は、 り、現行保険法の下でも十分にその存立 将来発生すべき自身の死亡保険金請求権の譲渡・移転 ( おおっか・ひであき ) 基盤を維持することが可能である ( 注 を「予約しておく」という法的構成をとらざるを得な いであろうが、特に相続財産との関係で慎重な配慮が 必要となろ、つ。 ( 注 ) ( 1 ) 盛岡地裁平成幻年 1 月日判決 一 0 -4 : 8 -0- 0 っ 0 00 ) 。拙稿「判批」本誌巻 2 号 ( 20 11 年 ) 頁はこの判決の評釈。なお、山下典孝「人 身傷害補償保険に基づく保険金の充当の問題」自保ジ ャ 1 ナル 18 2 0 号 ( 2 010 年 ) 1 頁以下参照。 ( 6 ) 本文三 3 で詳述するように、「定額給付」である約 定は、必ずしも「保険金受取人の約定」と直結すると は限らない。私見からすればいわゆる「定額保険」に おいては、全ての契約要素を約定することが許され、 場合によっては「定額」給付を「相続」させるという ( 7 ) 洲崎・前掲 ( 注 4 ) 2365237 頁 ( 8 ) 洲崎・前掲 ( 注 4 ) 234 頁 ( 9 ) 山下友信「保険法』 ( 有斐閣、 2005 変則的な約定さえあり得ることになる。そうすると、 実はここで述べたキャップ約定は「保険金額の約定」 5 ではあっても、直ちに受取人についての当事者間意思 を表すことにはならないからである。受取人についてろ は、この「金額約定」に付随するかたちで、本件判決の 法 も指摘するように、約款規定に従うという意思が、す なわち「保険金受取人」を法定相続人に「指定」 ( 約 定 ) する当事者間意思として表明されていると構成す るのが最も適切であろう。 頁 年 ) 2 4 9
保 険判例研究 求権を法定相続人ではなくに帰属させ り、本件保険金請求権は、亡 < の法定相利害対立が極めて鮮明に現れた。本件判 る意思であったかどうかは不明であると続人に帰属し、同人の相続財産を構成し決は、包括受遺者と法定相続人との利害 いわざるを得ない。したがって、原告のないものと認めるのが相当である」。 対立という新たな局面で、盛岡地裁の論 上記主張を採用することはできない。 理を再確認するものである。 さらに、原告は、相続人原始取得説の 盛岡地裁判決の段階からその論理に反 対する見解は、本件についてもまたその 場合、相続人のうち 1 人でも保険金請求三検討 権を行使しない者が現れれば、同請求権 結論を非とする。この反対説は、人傷の を行使したい他の相続人も請求できなく 法的性質を「損害保険契約 - と解し、そ 相続財産帰属説とそれへの反論 なるという結論になり、極めて不合理で の死亡保険金も当然に被保険利益の帰属 先としての相続財産に帰すべきものとい ある旨など主張する。しかしながら、仮私見は判旨に賛成の立場をとる に、相続人承継取得説に立ったとして実は、この判決に先立ち、既に盛岡地う結論を徹底して主張する。この見解が も、被相続人が遺贈をしなかったような裁平成幻年 1 月日判決は、人傷約款で特に着目するのは、人傷に適用される代 場合には、同様の事態が生じ得るという「法定相続人を保険金請求権者 : : : とす位の規定である。すなわち反対説は、「裁 べきであって、その立場が必ずしも合理ると定められている〔の〕は、被保険者判基準差額説を採る判例や人傷保険にお 的であるとはいえない。しかも、既に検が死亡した場合において、保険金請求権ける人傷保険会社の求償債権の消滅時効 討したとおり、亡 < が本件契約を締結しの帰属を明確にするため、被保険者の法に関する下級審裁判例やその見解を支持 た時点で本件遺言書はいまだ作成されて定相続人に保険金を取得させることを定する多数説においては、当該保険契約に いなかったと考えられ、亡 < において上めたものと解するのが相当であり、 適用される約款の請求権代位の条項を改 記のような事態を避けようという意思が保険金請求権は、保険契約の効力発生と正前商法 662 条とは法的性質の異なる あったのか否かは不明であるから、相続同時に法定相続人の固有財産に帰属し、約定代位とは捉えていないのではない 人承継取得説に立った解決が亡 < の意思被保険者の相続財産には属さないーと判か」と指摘する ( 注 2 ) 。 を実現する最適な方法であると断じるこ示している ( 注 1 ) 。しかもこの盛岡地裁例えば前述した盛岡地裁の事案で、被 ともできない。したがって、原告の上記の事案では相続人が相続を放棄したた保険者の死亡が加害車両の追突事故によ引 主張を採用することはできない め、生命保険金請求権の固有権性を論じるものであったとしよう。そうすると、 以上によれば、原告の主位的主張を採る典型的場面と同様の構図となり、被保死亡被保険者が加害者に対して取得した法 用することはできないというべきであ険者の相続財産の債権者と法定相続人の損害賠償請求権は、相続財産に帰属す
月刊法律のひろば 2015 VOL68 No. 9 September ◆特集◆ 児童虐待の現状と回復への取組 ー防止法施行 15 年を迎えて ー児童虐待の現状と虐待防止法制の展開 / 磯谷文明 4 ー親権制限事件の運用状況 / 石井芳明・依田吉人 16 ー児童虐待問題に対する弁護士の取組 / 藤田香織 24 ー虐待を受けた子どもの状況と子どもへの支援 / 藤田恭介 32 一家族の回復に向けた取組 / 川﨑ニ三彦 41 ー虐待防止・早期発見のための取組 ー困難を抱える親への支援 / 中板育美 47 ◆連載◆ 商事法判例研究第 1 回一一東京商事法研究会 準共有株式について権利行使者の指定・通知を欠いてなされた議決権行使と会社法 106 条ただし書の会社の同意 / 中村信男 53 保険判例研究第 33 回一一一保険判例研究会 自動車保険 ( 人身傷害保険 ) 契約に基づき、死亡被保険者の遺言執行者である原告に っき本件訴えの当事者適格を認めることはできないとされた事例 / 大塚英明 63 ザ・税務訴訟 相続税対策と名義預金 / 林仲宣 ひろば時論 / 2 ー取調べの録音・録画の拡充 ■登記所備付地図作成作業の更なる推進 ・ひろば法律速報 / 71 ・訟務情報 / 76 ・次号予告 / 15 74 弊社新刊図書・雑誌のご案内・・・・・ h p : //gyosei. jp 装丁 /Kaz