親権者 - みる会図書館


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1. 法律のひろば 2015年9月号

表 8 認容事案における親権を喪失し、文は停止される親権者の属性 実父 実母 養父 養母 合計 6 20 3 29 ( 10.3 % ) ( 100 % ) ( 20.7 % ) ( 69.0 % ) 40 8 ( 100 % ) ( 67.5 % ) ( 12.5 % ) ( 20.0 % ) つん 親権喪失事件における認容事案件に 2 五終わりに 6 認容事案における審判を受ける おいては、実父 6 人 ・ 7 % ) 、実母 一 0 者となるべき者の属性 0 以上のとおり、親権制限事件の動向や 跚人 ( 的・ 0 % ) 、養父 3 人 ( 川 表 8 は、認容事案における審判を受けであった。また、親権停止事件における処理の実情を紹介してきた。今後も事件引 の動向等を注視していく必要はあるものの る者となるべき者の属性を示したもので認容事案鬨件においては、実父 8 人 ( ある。 0 % ) 、実母人 ( ・ 5 % ) 、養父 5 人の、親権制限制度は概ね順調に運用がさ法 ・ 5 % ) であった。 れていると評価できるように思われる 平成年改正の趣旨が十分に達成される よう、引き続き、家庭裁判所において、 7 審理期間 親権制限事件を含む個別の事件が適正・ 表 9 は、親権制限事件の審理期間を示迅速に解決されていくことが望まれよ したものである。 親権喪失事件においては、終局事案 1 ・ 8 % の 24 件のうち、 2 か月以内に四 ・ 9 % の事件が ( 1 ) 本稿において、親権制限事件とは、原則として、 事件が、 3 か月以内に 親権喪失、親権停止及び管理権喪失の各審判申立事件 終局した。 また、親権停止事件においては、終局を指すが、後記四においては、親権喪失及び親権停止 の各審判申立事件のみを指す。 事案 156 件のうち、 2 か月以内に・ ・ 4 % の ( 2 ) なお、児童福祉法条の 7 の規定により、児童相 0 % の事件が、 3 か月以内に 談所長にも親権喪失・親権停止・管理権喪失の各審判 事件が終局した。 について申立権が認められている。 親権喪失事件と親権停止事件のいずれ においても、概ね半数が 3 か月以内に終 ( 3 ) 飛澤知行編著『一問一答平成年民法等改正 児童虐待防止に向けた親権制度の見直し」 ( 商事法務、 局している状況に大きな変化はないが、 子の権利利益を擁護する観点からは、親平成年。以下「一問一答」という。 ) 頁参照。 権制限事件の適正・迅速な審理が強く求 ( 4 ) 一問一答頁、頁参照。なお、親権喪失の審判 の申立てがされた場合において、親権喪失の原因はな められていることはいうまでもない ( 注 いが、親権停止の原因があると判断したときには、家 0 一 親権喪失 親権停止 0 一 表 9 親権制限事件の審理期間 1 月超 2 月超 3 月超 4 月超 5 月超 6 月超合計 1 月以内 2 月以内 3 月以内 4 月以内 5 月以内 6 月以内 124 22 1 ( 12.1 % ) ( 17.7 % ) ( 16.1 % ) ( 0.8 % ) ( 7.3 % ) ( 12.1 % ) ( 33.9 % ) ( 100 % ) 156 33 35 7 ( 12.8 % ) ( 21.2 % ) ( 22.4 % ) ( 9.6 % ) ( 4.5 % ) ( 9.0 % ) ( 20.5 % ) ( 100 % ) 、 親権喪失 親権停止 ( 注 )

2. 法律のひろば 2015年9月号

特集児童虐待の現状と回復への取組ー防止法施行 15 年を迎えて 児童虐待の現状と虐待防止法制の展開 ( 3 ) 社会保障審議会「児童虐待への対応など要保護児 童および要支援家庭に対する支援のあり方に関する当 面の見直しの方向性について」 ( 平成年Ⅱ月 ) は、 利用者の視点に立った場合、「地域住民に対する保健 及び福祉のサ 1 ピスについては、身近な市町村におい てできる限り提供されることが望ましい」との基本的 な考え方に立ち、「今後の児童相談のあり方としては、 できる限り身近な市町村を主体としつつ、行政権限の 発動等の役割や専門性を踏まえた都道府県 ( 児童相談 所、保健所等 ) との適切な役割分担を考えることが必 要である」とした。 ( 4 ) 昭和年には、巣鴨子ども置き去り事件が報じら れた。この事件は、その後、是枝裕和監督による映画 「誰も知らない』の題材とされたという。 ( 5 ) 「子どもの人権侵害例の調査及び子どもの人権擁護 のための児童相談所の役割についての意見調査」 ( 6 ) 朝日新聞平成年 1 月日付朝刊 ( 7 ) 全国児童養護施設協議会のアンケ 1 ト調査によれ ば、児童が退所する前後に接触を試みる虐待親が散見 され、中には「高校卒業後に施設を出て自立・就職し た退所児童に対し、親権者 ( 実父 ) が再三にわたり金 の無心を行ない、退所児童の職場にまで電話をするこ 号 ( 平成年 ) などを参照されたい。 ( 2 ) 厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課長平成 年 2 月日付「児童福祉法の一部を改正する法律の施 行に関する留意点について」雇児総発第 022500 2 号 ともある。退所児童はせつかく入った職場に居づらい 状況になった」という回答もあった。平成年 6 月 日に開催された法制審議会児童虐待防止関連親権制度 部会における武藤素明氏作成資料。 ( 8 ) 細矢郁「児童福祉法条事件及び親権喪失等事件 の合理的な審理の在り方に関する考察」 ( 家月巻 6 号 1 頁 ) は、「条事件においても、原則として、保 護者に対し、期日通知書とともに申立書の写しを送付 することが相当である」とする。 ( いそがえ・ふみあき ) ー特集■スポーツ振興の未来 ー法的立場からみた課題と紛争解決 * スポーツ庁の役割と我が国における 今後の施策 ・ : 文部科学省スポ 1 ツ・青少年局 スポーツ・青少年企画課 * スポーツ紛争の解決手段と伸裁制度 における代理人の実務 : : : 上柳敏郎 * どうしてスポーツ事故は繰り返され るのかー今のスポ 1 ッ事故対策に欠 けているものは : ・ : 望月浩一郎 * スポ 1 ッ指導と人権ースポ 1 ッ指導 における暴力を中心として ・ : 伊東卓 * スポ 1 ッ団体のガバナンス ・ : 境田正樹 0 ) LO * スポーツに関する国際的な法整備 0 山崎卓也 ろ ひ の 律 ほか連載など 法

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されている状況があるといった点が明示炻 されていないなど、必ずしもその意味内 容が明らかではなかったため、平成年 2 改正により民法 834 条の文言が上記の引 とおり改められ、規定の意味内容が明確の 最高裁判所事務総局家庭局第一一課長 石井芳明 化されたものである ( 注 3 ) 。なお、親権 最高裁判所事務総局家庭局付依田士ロ人喪失の原因がある場合でも、 2 年以内に その原因が消滅する見込みがあるときは 提として、現行の親権制限制度の概要に親権喪失の審判をすることができないた 一はじめに ついて簡単に確認しておきたい。 め ( 同条ただし書 ) 、このような場合に 本稿は、司法統計や最高裁判所事務総 は、親権停止の審判をすることになる ( 注 局家庭局で実施した実情調査の結果を参 親権喪失制度 照しながら、親権制度の見直し等を内容 とする民法等の一部を改正する法律 ( 平親権喪失制度とは、「父又は母による 2 親権停止制度 虐待又は悪意の遺棄があるときその他父 成年法律第礙号。以下、同法に基づく 改正を「平成年改正ーという。 ) が施又は母による親権の行使が著しく困難又親権停止制度とは、「父又は母による 行された平成年 4 月 1 日以降の状況をは不適当であることにより子の利益を著親権の行使が困難又は不適当であること 中心に、平成年末時点における親権制しく害するとき」 ( 民法 834 条本文 ) により子の利益を害するとき」 ( 民法 8 34 条の 2 第 1 項 ) に、子、その親族、 限事件 ( 注 1 ) の運用状況を紹介するものに、子、その親族、未成年後見人、未成 である。 年後見監督人又は検察官の請求により未成年後見人、未成年後見監督人又は検 なお、本稿中、意見にわたる部分は筆 ( 注 2 ) 、家庭裁判所において、その父又察官の請求により、家庭裁判所におい 者らの私見にすぎないことをあらかじめは母の親権を喪失させる審判をすることて、その父又は母の親権を一定期間停止 お断りしておく。 ができる制度である。 させる審判をすることができる制度であ 平成年改正前の民法 834 条は、親る。親権停止の期間については、「親権 権喪失の原因を、「親権を濫用し、又は停止の原因が消滅するまでに要すると見 一一親権制限制度の概要 著しく不行跡であるとき」と規定してい込まれる期間、子の心身の状態及び生活 親権制限事件の運用状況を紹介する前たが、この文言では子の利益が著しく害の状況その他一切の事情を考慮して、 2 親権制限事件の運用状況

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特集児童虐待の現状と回復への取組ー防止法施行 15 年を迎えて 親権制限事件の運用状況 親権喪失事件においては、終局事案 1 申立ての大部分が子の親族によってされ 3 子の性別と年齢 24 件のうち、子の親族による申立てがる傾向があったが ( 注リ、こうした傾向 10 5 件 ( ・ 7 % ) 、児童相談所長に は依然として変わっていない。その一方表 4 は、子の性別と年齢を小したもの よる申立てがⅡ件 ( Ⅱ ・ 3 % ) 、子によで、平成年改正によって請求権が認めである。 られた子本人からの申立て ( 注リも一定親権喪失事件においては、性別でみる る申立てが 5 件 ( 4 ・ 0 % ) あった。 と、終局事案の子 105 人のうち、男子 親権停止事件においては、終局事案 1 割合でされている。 56 件のうち、子の親族による申立てが が人 ( 的 ・ 5 % ) 、女子が人 ( ・ 四件 ( ・ 5 % ) 、児童相談所長による 2 審判を受ける者となるべき者の 申立てが件 ( 幻 ・ 8 % ) 、子による申 率 属性 比 立てか件 ( Ⅱ ・ 1 % ) あった。 女 男 表 3 は、審判を受ける者となるべき者 これまで、親権制限事件については、 計 2 % 3 % 5 % 9 % 8 % 7 % ( 乙 0 ( 親権を喪失し、又は停止される親権者 ) 0 1 ー 0 6 8 5 開 ー 0 の属性を示したものである。 也 CO 1 ー - LO 0 4 ・ 校ロ ) ( 0 ( 0 親権喪失事件においては、終局事案に 計 4 % 6 % 4 % 6 % あ 0 一、 0 、ー 0 1 合 で おける審判を受ける者となるべき者 12 等 0 1 ー 0 4 っ ) 1 0 LO 「 / 4 人のうち、実父が人 ( 1 中 っ 0 ・【っへ 0 の養 実母がハ人 ( ・ 3 % ) 、養父が間人 人者 9 % ) 、養母が 3 人 ( 2 ・ 4 % ) であっ 宀子 0 LO 8 0 8 つ」 4 8 8 0 1 父 ^ 0 ( 0 00 2 ド見る 養 4 ′ィー れ 年 っ ( 0 CN LO 8 れこ 4 1 0 3 1 親権停止事件においては、終局事案に 学 9 停母 4 ・つ 4 8 1 おける審判を受ける者となるべき者 15 上満 人は実 以未 3 7 。。帰 5 6 人のうち、実父が人 ( 3 ・後 齢歳歳 性族 年 実母が人 ( ・ 7 % ) 、養父が間人 ( 川 4 ・・ 8 8 と 成失父 のの 3 % ) 、養母が 2 人 ( 1 ・ 3 % ) であった。 を は 立 従来から実母の割合が比較的高い傾向の AJ 失 , 止 申 子 喪停 にあったが ( 注リ、この傾向は変わって の そ 親親 親親 しオし 表 表 児童相談 所長 合 の 0 一 そ 子 男子 親権喪失女子 合計 男子 親権停止女子 合計 49.5 % 50.5 % 100.0 % 54.3 % 45.7 % 100.0 % 19 ・法律のひろば 2015.9

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特集児童虐待の現状と回復への取組ー防止法施行 15 年を迎えて 親権制限事件の運用状況 年を超えない範囲内で」 ( 同条 2 項 ) 、家ことにより子の利益を害するとき」 ( 民件並びに各取消申立事件の合計数である 庭裁判所が定めることになっている。 法 835 条 ) に、子、その親族、未成年 ( 注 7 ) 。 これらの表や図から明らかなとおり、 平成年改正前には、身上監護権を含後見人、未成年後見監督人又は検察官の めた親権全部を制限する制度としては親請求により、家庭裁判所において、その平成年以降の親権制限事件及びこれら 権喪失制度しかなかったが、親権喪失制父又は母の財産管理権を喪失させる審判の各取消事件の新受総数は、平成年ま をすることができる制度である。 度には、①要件が厳格であることから、 での件数に比べ、大幅に増加している 比較的程度の軽い事案で必要な親権制限平成年改正前の民法 835 条は、管新受総数の内訳をみると、親権喪失の審 をすることができない、②効果が大きい理権喪失の原因を、「親権を行う父又は判申立事件の新受件数は毎年 110 件前 ことから、父母が改善の意欲を失い、親母が、管理が失当であったことによって後であり、平成年改正前と大きく変わ 権喪失後の親子の再統合に支障を来すおその子の財産を危うくしたときーとしてっていない一方で、平成年改正により それがある、③親権者が合理的な理由も いたが、子の利益を害する場合であれ創設された親権停止の審判申立事件の新 なく子に対する必要な治療に同意しなば、子の財産を危うくしなくても管理権授件数は平成年には 120 件、平成 い、いわゆる医療ネグレクトの事案等一喪失の審判をすることができるようにす年には 185 件、平成 % 年には 151 件 定期間親権を制限すれば足りる事案につるため、平成年改正により上記のとおであり、新受総数増加の要因となってい いて過剰な制限になるおそれがあるなど り民法 835 条が改正され、管理権喪失る。また、認容件数の総数も平成年以 の問題があり、これらが親権喪失の審判の原因が拡張されたものである ( 注 6 ) 。 降、親権停止の審判申立事件の新受件数 申立てをちゅうちよさせる原因にもなっ にあわせて増加している。このような事 ているとの指摘があった。こうした指摘 件数の動向からすると、平成年改正に 三親権制限事件の動向 を踏まえ、必要に応じて適切に親権を制 より創設された親権停止制度について 限できるようにするため、平成年改正表 1 は、平成年から平成年までのは、積極的に利用されていることがうか により親権停止制度が創設されたもので親権制限事件及びこれらの各取消申立事がわれる。 ある ( 注 5 ) 。 件の新受総数、既済総数及び終局区分 ) 」 と既済件数を示したものであり、図 1 四親権制限事件の処理の実情 ろ は、そのうち新受総数及び認容件数の推 3 管理権喪失制度 移をグラフで示したものである。内訳を最高裁判所事務総局家庭局においての 管理権喪失制度とは、「父又は母によ示していない平成年までの各数値は、 は、平成年 1 月から肥月までの 1 年間法 る管理権の行使が困難又は不適当である親権喪失及び管理権喪失の各審判申立事に全国の家庭裁判所で終局した親権制限レ

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図 5 親権制限制度と児童福祉法 28 条の申立件数 350 ・親権停止 ロ親権喪失 ■児童福祉法 28 条 数ではなく終局件数。また、平成年 4 ( 再 ) 出頭要求などのステップを踏まな口 月から施行されたため、平成年は 45 ければならないところ、臨検捜索の存在 肥月の数値。最高裁判所調べ ) 。親権停によって、そこに至る過程で解決するこ 止が大きく伸びており、活用され始めた とも少なくないから、臨検捜索の件数が引 と評することもできるが、 1 児童相談所僅かであることだけを取り上げて、無意の 当たり約 0 ・ 23 件しか請求していない味だと一一一一口うことはできないだろう。しか法 計算になる。また、児童福祉法条の申し、それにしても少なすぎるのではない 立件数が平成年に件ほど減少してい だろうか。年間 7 万件を優に超える虐待 るので、その一部が親権停止に流れたと件数に照らし、強制的に立ち入らざるを も考えられる。 得ないケースが 052 件しかないとは信 関連して、家庭裁判所は児童福祉法じ難い 条の承認審判をする際、相当と認めると 防止法の定める接近禁止命令について きは保護者に指導措置をとるべき旨を都 いまだ実施例に接していない。家事 道府県 ( 児童相談所 ) に勧告することが事件手続法 239 条に基づく審判前の保 できるとされている。この利用状況を見全処分 ( つきまとい・ ( いかいの禁止 ) ると、承認審判の概ね 川 5 % においても、平成年 4 月から平成年月まで 勧告がなされているにすぎない ( 最高裁の統計では、申立てが 3 件で、認容は僅 判所調べ ) 。 か 1 件となっている ( 最高裁判所調べ ) 。 8 0 7 件となり、実に新倍になってい 児童福祉法条の承認を得て施設等に措 る。それと比べると十分に機能している 置する場合、連れ戻し等のおそれがある 2 臨検捜索と接近禁止命令 のかどうか疑問が残る。 ときは、児童相談所は保護者に児童の住 次に、平成年改正後の親権喪失及び平成四年改正により導入された臨検捜所又は居所を開示しないこととされてい 親権停止の利用状況 ( 児童相談所長の請索については、平成年度が 2 件、平成るから、保護者が児童の所在を把握でき 求によるものに限る。 ) をみると、平成幻年度が 1 件、平成年度が 2 件、平成ず、そもそも接近等ができない事情があ 年は親権喪失が川件、親権停止が川 年度が 1 件、平成年度が 1 件、平成るのかもしれない。ただ、それを考慮し 件、平成年は親権喪失が 8 件、親権停年度が 0 件であった ( 厚生労働省調ても数字を見る限りはほとんど機能して いないと言ってよいであろう 止が町件となっている ( ただし、新受件べ ) 。臨検捜索に至るには立入調査や 300 250 200 150 H8 H9 HI 0 H 1 1 HI 2 HI 3 HI 4 H 15 HI 6 HI 7 HI 8 HI 9 H20 H21 H22 H23 H24 H25

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特集児童虐待の現状と回復への取組ー防止法施行 15 年を迎えて 親権制限事件の運用状況 ( 9 ) 表 2 から表 9 までの各数値については、最高裁判 ( リ和波・前掲 ( 注リ頁 所事務総局家庭局の実情調査に基づく概数であり、今 (ä) 田中智子「親権喪失宣告等事件の実情に関する考 後の集計整理により異同訂正が生じることがある。ま 察」家月巻 8 号 ( 平成年 ) 頁参照。同論考は、 た、この実情調査は、申立て時の事件の種類に基づい 平成年及び平成幻年の 2 年間で終局した親権喪失宣 て集計する司法統計と異なり、終局時の事件の種類に 告申立事件合計 217 件を分析し、その実情等を明ら 基づいて集計するため、申立ての趣旨の変更等によ かにしたものであり、子の親族の申立てについては、 り、件数が司法統計とは一致しないことがある。なお、 その動機として親族間の紛争に端を発したものが散見 事件数は、子を基準 ( 子 1 人につき 1 件 ) としている されるほか、親権喪失宣告以外の別途の手続での解決 が、 1 人の子につき、審判を受ける者となるべき者 ( 親 が図られたものも少なくないとしている。 権を喪失し、又は停止される親権者 ) が 2 人いる場合 ( ) 一問一答頁参照。 には、 2 件として集計している。 ( 間 ) 磯谷文明「民法等改正と児童相談所側の実務」家 ( 四表 2 から表 9 までの欄中に記載した各項目別割合 月巻 6 号 ( 平成年 ) 103 頁 は、原則として小数点以下第二位を四捨五入してい ( リ同一事件について、複数の認容原因が存在するこ る。 ともあるため、認容原因の合計と認容件数は必ずしも 一致しない ( 当具体的な工夫例については、細矢郁「児童福祉法 条事件及び親権喪失等事件の合理的な審理の在り方 ( Ⅱ ) 和波宏典「親権制限事件の運用状況」本誌巻 号 ( 平成年 ) 頁 ( リ親権制限事件の請求権者については、子の親族及 ( 8 ) 裁判所ウエプサイト (http く /www.cou夛・go.jミ about/siryo/sinkenseigen/index. html) に掲載してい るので、参照されたい。 庭裁判所は、申立てを変更する手続を経ずに親権停止 の審判をすることができると解される。 ( 5 ) 一問一答菊頁参照。 ( 6 ) 一問一答頁参照。 ( 7 ) もっとも、管理権喪失の審判申立事件、親権喪失 及び管理権喪失の審判の各取消申立事件の数は非常に 少ない。 び検察官のほか、平成年改正により、子本人、未成 年後見人及び未成年後見監督人が追加された ( 民法 8 3 4 条本文、 8 3 4 条の 2 第 1 項、 8 3 5 条 ) 。子本 人に請求権が認められたのは、①子が親権制限事件に おいて直接の影響を受ける立場にあること、②民間団 体や弁護士等が相談を受けているような場合など、事 案によっては、子本人が、直接、家庭裁判所への請求 ができた方が、迅速に子の利益を確保することにつな がると考えられることなどが理由とされている ( 一問 一答頁参照。 ) 。 に関する考察」家庭裁判所月報巻 6 号 ( 平成年 ) 頁以下に紹介されているところが参考となる。 ( いしい・よしあき / よだ・よしひと ) 23 ・法律のひろば 2015.9

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特集児童虐待の現状と回復への取組 - 防止法施行 15 年を迎えて 親権制限事件の運用状況 表 6 親権停止の審判における停止期間 1 か月以上 1 年以上 停止期間 1 か月未満 1 年未満 2 年未満 0 2 2 件数 ( 5.0 % ) ( 5.0 % ) を認定することができない場合には、通 いても、大部分の事案では停止期間は 2 原因の全体に占める割合を円グラフで示 したものである 常は親権停止の期間は 2 年間と定められ年間とされている。この点については、 ることになるのではないかとの指摘や今後も動向を注視していく必要があると親権喪失事件における認容事案件に ( 注新 ) 、現実的に考えると、ほとんどの思われる。 ついて、その認容原因をみると、身体的 ケ 1 スにおいては 2 年を下回る期間を定 虐待 7 件、性的虐待 4 件、ネグレクトⅡ 件、心理的虐待 4 件、その他の事由によ める理由を見いだしがたく、特段の事情 5 認容原因 かない限り停止期間を 2 年間とするよう るもの 4 件であった。なお、ネグレクト になるのではないかとの指摘がされてい 表 7 は、親権制限事件の認容原因を示Ⅱ件のうち医療ネグレクトを原因とする たところであり ( 注 ) 、実際の事件におしたものであり ( 注リ、図 2 は、各認容ものはなかった。 親権停止事件における認容事案芻件に ついて、その認容原因をみると、身体的 虐待 4 件、性的虐待 2 件、ネグレクト 件、心理的虐待 5 件、その他の事由によ るもの 9 件であった。なお、ネグレクト 件のうち少なくともⅡ件については、 医療ネグレクトを原因とするものであっ た。親権停止事件についてはネグレクト を原因とするものの割合が高く、医療ネ グレクトの事例も相当割合含まれてい る。前記二 2 で述べたとおり、医療ネグ レクトは親権停止制度の利用か想定され ていた類型であることからすれば、その 趣旨に沿った利用がなされているといえ 0 よ、つ 年 36 ( 90.0 % ) 表 7 親権制限事件の認容原因 身体的虐待性的虐待ネグレクト心理的虐待その他 7 4 4 ( 23.3 % ) ( 13.3 % ) ( 36.7 % ) ( 13.3 % ) ( 13.3 % ) 2 23 4 5 9 ( 9.3 % ) ( 4.7 % ) ( 53.5 % ) ( 11.6 % ) ( 20.9 % ) 親権喪失 親権停止 図 2 認容原因の割合 親権喪失 親権停止 身体的虐待 9.3 % 性的虐待 4.7 % 身体的虐待 23.3 % その他 13.3 % その他 20.9 % む理的虐 理的虐 133 % = 性的虐待 13.3 % ネグレクト 53 、 5 % ネグレクト 36.7 % ※親権喪失のうち、医療ネグレクトはない。 ※親権停止のうち、少なくとも 1 1 件は医療ネグレクトである。 0 21 ・法律のひろば 2015.9

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数 他済 件 1 ー 0 の・既 - っ 0 0 乙 1 へ 0 【 0 4 ・ 0 CD っ 4 0 っム 1 済 その 既 と 分 区 局 の そ 及 数 総 済 数 既 受 新 立 申 取 各 及 件 事 限 年 年年年年年年年年 親 7 ・ . 8 0 ) 0 4 ー - つ」っ 4 1 ーっなつな CN っつ」 成 成成成成成成成成 平平平平平平平平 平 表 事件についての実情を調査し、その結果結果に基づき、親権制限事件の処理の実 を「親権制限事件の動向と事件処理の実情を概観する ( 注 9 ) 。 情 ( 平成年 1 月 5 月 ) 」として公表 している ( 注 8 ) 。以下、この実情調査の 却下 取下げ 認容 94 139 125 103 139 1 10 147 239 ( 1 1 1 ) ( 120 ) 315 ( 1 1 1 ) ( 185 ) ( 14 ) 276 ( うち親権喪失の審判 ) ( 110 ) ( うち親権停止の審判 ) ( 151 ) ( うち管理権喪失の審判 ) ( 10 ) ※司法統計による。平成 26 年は、速報値である。 ※その他の既済とは、移送、当然終了等である。 ※平成 24 年以降は、親権停止事件及びその取消申立事件が含まれる。 137 139 103 130 136 127 ( 103 ) ( 69 ) 300 ( 104 ) ( 182 ) ( 12 ) 304 ( 130 ) ( 34 ) ( 157 ) ( 43 ) ( 12 ) 22 1 5 1 5 20 21 14 32 ( 17 ) ( 14 ) ( 0 ) ( 25 ) ( 63 ) 102 20 フ′ 8 「 / 84 88 1 四 06 ) ( 44 ) 164 ( 72 ) ( 89 ) 160 ( 73 ) ( 82 ) ( うち親権喪失の審判 ) ( うち親権停止の審判 ) ( うち管理権喪失の審判 ) ( うち親権喪失の審判 ) ( うち親権停止の審判 ) ( ラち管権喪失の審判 ) 42 ( 6 ) ( 29 ) 平成 26 年 48 ( 16 ) ( 28 ) ( 0 ) 図 ] 新受総数及び認容件数の推移 ( 新受総数 ) 申立人の属性 表 2 は、申立人の属性を示したもので ある ( 注四。 1 ( 認容件数 ) 1 0 - ー認容件数の内訳ー 90 ー ( 平成 26 年度 ) ー 親権停止 43 件ー 親権喪失 34 件ー 、、その他 8 件ー 70 60 ′′ ー新受総数の内訳ー ー ( 平成 26 年度 ) ー 50 ー ーロ親権停止 1 51 件ー 40 ー 30 ーロ親権喪失 1 1 0 件ー 20 ー■管理権喪失 1 0 件ー ー■その他 5 件ー 法律のひろば 2015.9 ・ 18 350 300 認容件数 250 ロ新受総数 200 150 100 50 0 26 25 24 23 22 20 1 7

10. 法律のひろば 2015年9月号

特集児童虐待の現状と回復への取組ー防止法施行 15 年を迎えて 児童虐待問題に対する弁護士の取組 ある。自宅に戻れる子どもは多くなく、 に乗る、自立のために生活保護受給手続は、原則として 0 歳から歳までの「児 子ども担当弁護士をはじめとするスタッのサポートを行う、アパート設定や自立童」 ( 児童福祉法 4 条 1 項 ) に関する相 フが子どもと相談し、様々な帰住先を探のための各種手続のサポ 1 ト、職場や学談を受け、援助活動を行う専門的行政機 すことになる ( 注 5 ) 。 関である。児童相談所には、子どもの安 校との交渉を行う等、活動の幅は広い。 そのほか、子どもに付き添って新しい家全を確保するために、保護者や子ども自 で使用するための家具を買いに行った身の意に反して一時的に子どもの身柄を 2 子ども担当弁護士の活動 り、病院に付き添うといったサポ 1 トを保護する一時保護 ( 児童福祉法芻条 ) 、 保護者等の居住場所に立ち入ることがで てんほでは、てんほのスタッフの他行うケ 1 スもある。 に、通常 1 人の子どもにつき 2 名の「子なお、子ども担当弁護士に対する費用きる立入調査 ( 児童福祉法四条、児童虐 ども担当弁護士」が子どものサポートに は、少年付添人が子ども担当弁護士にな待防止法 9 条 ) 、裁判所の許可状を得て 付く。子ども担当弁護士は、親権者とのる等のケースを除き、日本弁護士連合会行う臨検・捜索 ( 児童虐待防止法 9 条の 3 ) 等の強制的な権限が与えられてい 交渉や調整等、子どもの代理人として法が全額財源負担して日本司法支援センタ 1 に業務を委託している「子どもに対する。また、児童相談所は、施設入所に親 的問題の解決に当たるだけでなく、てん ほのスタッフや関係機関と協力しながる法律援助事業ーにより支払われること権者が反対の意思を表示した場合に、家 ら、子どもの自立や今後の生活の準備をが多い。しかしながら、子ども虐待事案庭裁判所に親権者の同意に代わる承認を サポートする。 においては、日本司法支援センターから得て施設入所措置をとることもできる 親権者や保護者に対しては、事案によの援助はなく、金銭的な支援の整備が十 ( 児童福祉法条 ) 。この承認審判の申立 って、子どもの気持ちを伝え関係を調整分であるとは言えない。今後、子どもが権や、親権喪失・停止審判の申立権 ( 児 する。ときには、親権者からの親権侵害弁護士費用を負担しなければならないと童虐待防止法Ⅱ条 5 項、児童福祉法芻条 いったことは避けられなければならなの 7 ) も、児童相談所が有する ( 注 6 ) 。 の主張に対し、民法、刑法上の緊急避難 しかし、前述の各種手続は、親権を制 を根拠として子どもの保護を正当化し、 子どもを守ることもある。また、虐待に 限する強力な手段であることが多く、一 時保護等に対する親権者の反発は多いた よる被害について、親権停止の申立てや 五児童相談所の嘱託弁護士と 刑事告訴、慰謝料請求、扶養料請求や養 め、運用に当たっては、要件を充足してタ して いるか、行政法上の適正な手続を踏んでの 親との離縁などの法的手続をとることも 法 ある。 いるか等、細心の注意を要する。また、 児童虐待問題への対応の、中心を担、つ さらに、子どもの将来についての相談機関が児童相談所である。児童相談所家庭裁判所への各種申立ても、要件の充四