るいは、反対尋問で聞かれたら対応する視しますし、陳述書にどこまで入れるか 氏 子 ことにして、陳述書の段階では積極的に入れないかというのは一番悩むところで 測出さなくてもいいのではないかと思ってす。 落としてみたり、いろいろですが。この加藤そのような作成の仕方は、具体的 ろ よ、つに尋問をイメ 1 ジしながら、本当にな視点としてよく分かります。日下部さの 固いところで、尋問で絶対に崩れない陳んは法人の事件が多いと思いますが、陳 述書というのを作成していくというイメ述書については、どのようにしておられ 1 ジで作ります。依頼者と一緒になってますか 共同作業で作っていくわけです。もちろ日下部今、加藤さんがおっしゃいまし ん、文章は私が作ります。このようにしたとおり、私は依頼者のほとんどがいわ てできあがった陳述書は、本人が大体こゆる企業ですので、打ち合わせをする人 うですと当初書いてきたものから見ると も企業の法務部の人と、その事件におい 随分違うなと。むしろ、最初本人はこ、って関わり合いのある事業部の人というの 一言っていたけど、かなりオ 1 ーで言い が典型的です。法務部の人もそうです たんですよ」とか「あのとき、こうだっ し、事業部の人もそうですが、失礼を顧 たんですーという生々しいエピソ 1 ドが過ぎだったなとか、ここまでは言えない 出てくることがあります。そうすると、 ということも多いのです。経験則上、そみずに申し上げますと、非常によくでき これは陳述書に盛り込みたいけれども、 うやって尋問にさらしながら作っていつる、知的な能力の高い人が多いというの このリアル感というのは、生の事実としたほうが、結果としては崩れない陳述書が特徴かと思っています。 て尋問にとっておきたいなと思い、あえ になるのではないかと思っているところ陳述書の作成につきましては、今、作 成方法と内容を念頭に置いているのです て入れないこともあります。逆に、不利です。 なエピソ 1 ドが出てくることもありま加藤尋問でどのように使うかというこが、渋村さんがおっしやったお話の内容 す。この場合、どうしようかと非常に迷とを意識して、専門的な内容を記載するは、私の実務の処理の仕方とほとんど同 います。今、初めて出てきた不利な事実ようなもの以外は弁護士が作成する。こじです。先ほど、いろいろ多様なものと 申し上げましたのに、この座談会の出席 であり、むしろ陳述書に盛り込んでしまれが原則的なやり方ということですね。 渋村そうですね。ですから、陳述書と者がやっていることは、たまたまだと思 った上で、きちんと説明・手当しておい たほうがいいのかなと思ってみたり、あ尋問とのすみ分けというのは、かなり重いますけれども、ほとんど同じでした。 0 ン
査などを経て、ようやく採用となる。途中、いろいろな 問題が発生して手続きが滞ったりしながらも、紆余曲折 2 ロジクトチ 1 ム作り を経て、ようやく 7 月に入って、実施するセミナーのぎ りぎり数日前に、カンボジア・ラオス・ベトナムにそれ 国連は、国連改革の一環として新しい行財政管理シス テム ( 3 ) を導入した。も、 2 ぞれナショナル・コンサルタントを雇うことができた。 015 年ころからを導入し始めたものの、出また、このナショナル・コンサルタント雇用と同時並行 張やワークショップの企画・実施、人の雇用など何をすで、プロジェクト活動における教材作成やトレ 1 ニング るにあたっても事務的な混乱が生じていた。そこで、私実施などの専門的部分を担当するインターナショナル・ コンサルタントも雇用した。今回採用したインタ 1 ナシ は、 2015 年肥月に着任したものの、事務的な混乱を ョナル・コンサルタントの一人は、インド人女性のギタ 見越してある程度の時間の余裕を見て、 7 月にカンポジ ア・ラオス・ベトナムの 3 か国でトレーニングを実施すで、インドに拠点を置いて作業をしながら、セミナーな どの際にタイやプロジェクト対象国を訪れる。ところ ることとし、それまでにプロジェクト内のチーム作りを じっくりと進めることとした。これまでにもお話ししたで、では、「インターン」を受け入れている のであるが ( 4 ) 、私も 6 月からインターンを受け入れ、 よ、つに、プロジェクト「チャイルドフッド・フェ 1 ズ 1 」 終了から「フェーズ 2 」開始までの期間経過により関係私の仕事をサポートしてもらうようになった。国際機関 者が離散してしまっていたため、一からチーム作りを始では職務経験が一つの重要な要素であるから、 0 以外の国際機関でも、将来国際機関での就職を考える める必要があったのだ。 学生には、さまざまな職務経験の場が提供されている まず、カンポジア・ラオス・ベトナムに、カウンター 5 ) 。今回 z O 0 に来てみて思ったのだが、日本の 1 トと私の間に入って情報をやりとりする人間が必要 ( だった。そこで、書類を現地の言語に翻訳したり、現地拠出と比して日本人職員の数はまだまだ少ない。ぜひ、 日本の学生にも積極的にインターンに応募してもらって の法制度を前提としたアドバイスをすることもできる、 " ナショナル・コンサルタント〃を各国に雇うことにし国際経験を積み、将来、国際機関で働くことも視野に入 た。 ( 求める業務や成果、稼働日数、求める資質れて欲しいと思っている。 こ、つして、よ、つや ~ 、、バンコクにはアシスタントのノ などの基準 ) を作成して公募し、候補者が送ってきた履 歴書や提案書を精査して、筆記試験、ロ述試験、人物審イとインターン、 >ZOQ(-) のカンポジア・ラオス・べ 法律のひろば 2016.11 ・ 36
特集民事尋問における現状と課題 四陳述書の利用と民事尋問 も何稿も修正しながら作ったうえに、お加藤永石さんが言われるように事実に渋村そういう感じで作っていくわけで そらくその人は前の晩、それを一生懸命ついて、弁護士が他の証拠との整合性をはなく、本人の記憶が曖昧でしたら、曖 暗記するわけですから、混乱するのでは考え、証明されやすいように「いや、こ味なことを曖味でないように書くことは ないかという危眞感を持ちましたが、どうでしよう」というようにして陳述書をしません。むしろ、本人が確信をもって 、つで 1 ) よ、つ、か 作成すると、確かに混乱もするし問題も確定的に覚えているかのように最初、書 渋村私が本日、申し上げていることはありそうです。しかし、そうでなく事実いてきたことでも、いろいろな角度で聞 いていくと実はそうでもない。「だった すべてごく一般の方を前提として申し上をどう表現するかというところを深掘り げています。 していくのであれば、それは格別の問題ら、そこまで言えないでしよう」、「断片 はないのではないでしようか だけ覚えているけれど、後は分からない 永石一般の方ですか 渋村何稿も何稿もというのは、本人の永石私が心配しますのは、事実に関しわけですね」ということであれば、逆に 話を私が本人の話のとおりにまとめて作て、陳述書で古いことを思い出して言っそこは陳述書でもう落としてしまう。こ り上げていく共同作業という意味で、弁ているわけですから、本人自身も大してことここは覚えていますというぐらいの 護士が作った文章が正しいということで確信があるわけではありません。ただ、陳述書にしてしまって、後は尋問でやり はなく、あくまでも依頼者が直接体験し弁護士としていろいろ打ち合わせをしてます。何度聞いても、本人が間違いなく いる、っちに、こ、つい、つことではないかとそ、つだと言えることしか陳述書に書かな た事実をどう書いていくかという作業と いう意味です。 質問し、そ、ついえばそ、つだとい、つよ、つな いとい、つよ、つに「駻問とす . み分けるとい、つ 加藤その人にふさわしい言葉で、そのことでどんどん決まっていくとなりますことが一つです。 出来事をどう表現するかですね。 と、当事者は実際の証人席に立っときに永石それであれば理解いたしました。 とう表現すれば、依頼者や緊張して、混乱したという事案がありま渋村私は、尋問に際しては、「何を聞 証人が体験しているとおりの言葉になるした。そのときは私どもの尋問は失敗しかれても、あなたの記憶どおりに言えば いいのだから、何も緊張しなくていい のかということを詰めていく作業ですかました。ですから、あまりきっちり作っ ら、ご指摘とはむしろ逆で、そこまでしてしまうと当事者はそれを暗記して、そよ」と、いつも言います。そういう陳述 ておけば、安心して尋問ができるのかなのとおりに話そうとして、相手方の反対書にしてしまうということです。 ろ ひ の と思っています。何度聞いても本人から尋問で崩れてしまう。そういった経験が 律 法 素直に出てくるお話がこのとおりだからありますものですから、一言申し上げま《裁判官からの視点》 した。 加藤このように陳述書は作られて、利 1 とい、つイメージで作っています。
特集民事尋問における現状と課題 四陳述書の利用と民事尋問 ているからです。陳述書を作成し終わっ 手裁判官の中にあるとすると、それは甚ように見ておられますか たときには、おおよそ尋問のイメージが だ問題であると思います。 できており、尋問準備もまあまあできた 結局、コミュニケ 1 ション能力の問題《弁護士からの視点》 かなというようなイメ 1 ジを持っており ですから、裁判官があることを言ったと渋村現在、体感上は全件、尋問前には ます。 き、何を言ったのかを法廷外あるいは弁陳述書を求められます。 論準備室の外で訴訟代理人が議論をする加藤これは渋村さんが作成されるので本人が書いたものが、必ずしも事実そ のとおりか、本当に本人の生の記憶のと ようになってしまうのはおかしな話ですか 渋村本人に書いてもらうという弁護士おりかというと、実はそうでもないとい す。その場で、「裁判官、それはどうい もいると思います。私は、技術的な争点う印象を持っています。陳述書を作成す う意味でしようか」と聞いてもらえば、 そこでまたコミュニケーションが進んでについての証人または専門家証人のようることは、もう尋問に入るということで いくわけですから。その辺りの基本的なな方の場合は、まずは本人に書いていたすから、主として反対尋問的な観点で、 ところについて、現状がどうなのかがやだいて、それをベースにヒアリングして反対尋問にさらしていきながら、また客 いきます。聞いても私は書けないという観的に出ているものなどと突合しなが や気掛かりです。 のもありますが、思考回路が違うからでら、いろいろな角度でヒアリングしてい す。技術者の思考過程とわれわれ法律家き、どのような角度から聞かれてもこれ は間違いがないとい、つ固いところを陳述 の思考とは、全く違いますので、そのほ 四陳述書の利用と民事尋問 うが正しい陳述書になるだろうというこ書に落とし込んでいくというイメ 1 ジで 加藤近時の民事尋問におけるもう一つとで行っておりますが、それ以外の一般私は作っております。逆に一一一〔うと、本人 が一生懸命言うのだけれども、それは反 のポイントとして、陳述書の利用の一般の方は、ヒアリングからほば尋問に近い 化です。もっとも、利用のされ方、作成内容まで、反対尋問にさらすような形で対尋問で崩れるのではないかと私が思う いろいろな角度から聞いていき、私がまところは怖くて陳述書には入れないよう のされ方は、日下部さんによると、まだ にしています。 とめていくという手法をとっておりま まだ標準的なものがあるようでないとい す。本人に書かせるということはしてお逆に陳述書作成の過程で、本来であれ引 、つことです。 ばもっと前に聞いておくべきだったと反の りません。 標準的なものがないのに実情はどうか と聞くというのも何か矛盾した問いかけ陳述書作成は、今の実務ではイコ 1 ル省することも多いのです。意外と重要な法 エピソードが、「実はこんなことがあっ のように思いますが、渋村さんは、どの尋問準備といっても過言ではないと思っ
特集民事尋問における現状と課題 四陳述書の利用と民事尋問 私も陳述書の作成については、陳述者作成方法と内容以外の点で、 1 点、付ります。先ほど申しました固い点に絞っ からお話はお伺いしますけれども、基本言いたしますと、陳述書の作成・提出のて、間違いがないという部分に絞って陳 的には、というかほとんど全件と言って時期の問題があるかと思います。尋問が述書の中に書くというスタンスは、陳述 しいと思いますが、弁護士のほうで文書行われることが決まった人について、尋書を早期の段階で出すときにはとりわけ 作成をしています。どうしても文章を一 問期日までに陳述書を出すという例が多強く要求されることだろうと思っていま いとよく聞くところではありますが、私す から書くこともできないような技術的な 内容が中心の場合は例外ですが、弁護士が行っている事件の場合には、むしろ争加藤それと尋問との関係は、大体スム ーズにいくことになりますか のほうで作成をするということを常とし点整理の過程の中で、比較的早い段階で ています。記載内容につきましても、陳陳述書を提出するということが少なから日下部そうですね。私が陳述書を作 述書の中に書くのは反対尋問で崩されるずあります。その趣旨ですが、早期の段成、提出するときには、これも渋村さん がおっしやったこととまた同じになって ことがない固い部分を中心として、生々階で我々が代理している当事者の視点か しい事実については、実際の尋問のとらの一連の事実経過を裁判所にまとめてしまいますが、主尋問の準備という意味 き、主尋問のときにとっておこうという示すことで、その事案の一連の事実経合いを最初から考えておりますので、そ 発想で、陳述書の中では、そこまでは書過、よくスト 1 リ 1 という言葉が使われこで提出した陳述書を使って主尋問の準 備をするときに、あらためて難儀すると かないということか多いです。 ると思いますか、その事案のストーリ 1 い、つことはありません。 不利な内容について書くかどうかにつを、こちらの当事者に有利なように早期 いては、悩ましいところです。あらかじに裁判所にご理解いただきたいという意 《陳述書とは違うことを答える場合》 め書いた上で、相応の手当をしておくと向があるからです。 いうケースもありますし、陳述書の中に そういった作業はもちろん準備書面で加藤陳述書とは違うことを本人が尋問 で言いだして、それをどのように証拠評 は書かないで、主尋問において手当をすもできなくはないところですが、スト 1 る、あるいは反対尋問で訊かれた場合の 丿 1 をご提示するということであれば、価するかということが問題となったケ 1 対応を準備しておく、というケースもあ陳述書はそのツ 1 ルとして有効な部分がスを経験したことがあります。そういう ことはあ - り・ます , か。 ります。後者は反対尋問の準備を進めさあると考えています。ただ、早期にそう ろ せたくないという戦術的な理由によりまいった陳述書を出しますと、あとになっ渋村相手方の陳述書の内容と主尋問がの すが、そのようにするか否かはケ 1 ス・ て書かれている内容に間違いが発覚するかなり違うということは、何回か経験し法 たことがあります。それは、恐らく、こ バイ・ケ 1 スです。 ことがあり、その場合むしろ逆効果にな
日下部 1 点、補足をさせていただきま う言っては何ですが、弁護士の陳述書作《陳述書作成のプラクティス》 成にかけた時間だと思うのです。その弁加藤陳述書は経験では、何回位やるのすと、今、渋村さんがおっしやったこと に私も全面的に賛成です。とりわけ、依 護士が陳述書をとても簡単に捉えてしまがおすすめですか ったからだと思います。 1 回、 2 回聞い 渋村私は最低でも 3 、 4 回はやりま頼者といいますか、陳述者の中には、弁 ろ 護士がドラフトを作ってきたときに、その て、聞いたとおりに作るぐらいでは、陳す。 述書はできません。それだと、私の経験岡部そうすると、 3 、 4 回、聞く又はれに対して文句を言ったり、修正を求め たりすることに心理的な抵抗が強いとい 上、不正確な陳述書になってしまうと思やりとりするのですか うのです。具体的に言いますと、私がヒ渋村まず 1 回時間をかけて聞いてドラう人もいると思います。そういう人が遠 アリングの結果、第 1 稿のドラフトを完フトを作ります。そこからがスタ 1 トと慮してしまい、その場で訂正をしないで い、つことです・。 尋問に臨むと、反対尋問、場合によって 成させたとします。勝負はここからで、 それを依頼者に「これでいいですか。読加藤 3 稿にしたり、 4 稿にしたりするは主尋問で、陳述書と違う話が出てきて んでください。」「いいですね。署名してところで完成稿にするということですしまうという悲惨な状況になってくると ころです。そのような状況を避けるため ください。」ということでは絶対駄目でね。 す。これでは主尋問でもう崩れます。依渋村そうです。作成したドラフトをフには、陳述者との間でのコミュニケーシ 頼者に第 1 稿を見せたときに、「おおむアックスやメ 1 ルで見てもらって確認すョン、とりわけ、陳述者が遠慮をしない ね合ってます , って言われたときは、 4 るのでは駄目だと思っています。面談でで話ができる信頼関係を作るということ 割くらい違っています。「先生、完璧でドラフトを前にしながら、最初から一言が非常に重要だろうと思っています。 そういう意味で、渋村さんはとても上 す。本当にこのとおりです」と言われた一句、「でも、ここはあなた、こう言う けれども、こ、つい、つ質問が来たらど、つな手になさっているのだろ、つと思い、私も ときで、大体 8 割ぐらいです。 2 割は、 詳しく確認していくと違っています。での ? 」「それなら、このようには言えなもっと精進しなければいけないなと思っ いよね」「じゃあこういう表現なら合った次第です。 すから、いったんドラフトを作ってか ら、何回も反対尋問にさらしたり、推敲てる ? 」というようなやりとりをしなが永石今のお二人の話ですと、企業法務 の担当者であるとか、ある程度、裁判の していった過程で完成させないと、主尋ら、実体に合うように変えていきます。 3 、 4 回、そういうやりとりをし経験がある人のときにそれはそれでいい 問で陳述書が崩れてしまうことになると大体、 て、「間違いない」となり、 2 人で作っと思いますが、例えば、個人事件などの いうのが私の体感です。 たとい、つ感じになるイメージです。 場合、初めて裁判を経験する人は、何稿
類ではないでしようか 点整理中のどこかの段階で出してもらう囲 日下部多くはないかなという印象を持必要があるのではないかとも思いました っています。 永石しかし、私の事務所の若い弁護士陳述書の捉え方は、裁判官によって差 ろ があるところとは思いますが、私は、主の は皆、 3 稿、 4 稿を作っています。 加藤そうですか。少なからずやられて張が詳しく具体化されたものとして、争 いるとい、つことですか 点整理的な視点で陳述書を見ることもあ ります。 永石そうですね。私も今、一緒かなと 思ってお聞きしていました。 例えば、「口頭で合意した。」というだ 渋村事務所の若い弁護士には、「 1 回けで、主張としては足りるところもあり や 2 回聞いただけでは陳述書は作れないますが、陳述書で具体的なスト 1 リ 1 を よ。」とは言っています。私も先輩弁護書いてもらうと、はっきり合意文言を交 士からそのように教わりました。多くはわしたと書いてあるとき、合意文言の交 用されるということですが、それを聞し ないかもしれませんが、少なくもないの換に触れる記載がないとき、やり取りは て、岡部さんは、どういう感想を持たれではないかと思います。 あるが曖味なときなど、さまざまです。 ますか 陳述書で具体的なストーリー を提示する 岡部今のお二人のお話には驚きまし《意見交換》 と先ほどおっしやっておられましたが、 た。私は、 3 稿、 4 稿と準備するほど丁岡部人の話を聞くということが、い力やはりそういう具体的なスト 1 リーの提 寧に陳述書を作成しておられるとは、実に難しいことなのかがよく分かるお話示がないと当事者の主張は理解しきれな はあまり思っておりませんでした。 で、大変興味深く伺いました。ただ、陳いと思うときがあります。 加藤裁判書きの起案でもそんなにはし述書を作成する際、 3 回、 4 回と聴取を永石しかし、今のお二人の話は尋問前 ないのにと ( 笑 ) 。 重ねて、初めて代理人が当事者の話を正提の陳述書の話ですから、争点整理の場 岡部そのように作成される方が一般的確に理解するというのであれば、そこを合の段階で、もしも裁判所から出せと言 われたら、また違う書き方だと思いま なのでしようか。逆に質問して恐縮です踏まえてから争点整理もしておきたい、 そうすると、尋問の準備として陳述書をす。 加藤それはかなり丁寧に行っている部出してもらうということではなくて、争日下部私は尋問のことも念頭に置きな 3 ( 岡部純子氏 )
特集民事尋問における現状と課題 証人尋問・当事者本人尋問の現状 要になっています。 できますが、単独で尋問を行っている先これらの点については、本日の座談会 こういった作業について、 1 人の弁護生は極めて大変だろうと感じているとこで、この後にも議論がなされると思って おりますので、皆さん方のご意見をお伺 士が全てに対応するのは極めて困難な状ろです。 いしたいと思っております。 況になっています。 1 人で事務所経営さ このような状況を少しでも緩和してい れている先生が集中証拠調べに臨むのをくためには、尋問が効率的に行われるよ ときどき相手方として見ることがありまうに、尋問前の準備段階が非常に重要だ《意見交換》 すが、マンパワ 1 の点で、かなりのストと思っています。尋問期日までに行われ加藤本日の中心テーマは、民事尋問と レスがかかっているのではないかと感じる争点整理が十分に行われて、どのポイ争点整理、民事尋問と陳述書の利用です が、それぞれの問題状況が浮き彫りにさ ています。私自身はチームで臨むことがントに力を入れて人証を調べるべきかと れたように思います。永石さん、コメン い、つことかきちんと共通認識になってい 通常ですので、その負担をチームのメン 1 の中である程度分散することもでき ないと、的を得た準備は難しいためでトをお願いします。 永石私の事務所は弁護士が 5 人おりま ますし、尋問の現場においても役割分担す。 をすることでお互いを補完しあうことも それと同時に、先ほど渋村さんからもすが、尋問は、私と誰かが必ず組むよう にしております。若手の弁護士 2 人が組 言及がありましたとおり、今は陳述書の 氏 利用が一般的になっていますが、その陳む場合は私も加わり 3 人で行います。従 る 述書を踏まえて、どのように主尋問あるいまして、私が実際に最初から最後まで む いは反対尋問の準備をしていくのかがと尋問するというよりも、 2 人の弁護士が りわけ重要だと思っています。しかし、見落とした点であるとか、ここはちょっ と裁判官の表情から、あまりきちんと理 陳述書の使い方について、現状、これと 確立されたものはないように思います。解してもらっていないなという点があり 作成されている陳述書の内容、それかましたら、私が尋問をする。それが今の 私の弁護士尋問におけるスタイルです。 ら、提出される時期、これらもかなりバ リエ 1 ションがあって、それが争点整理先ほどの話に少し戻りますが、岡部さば ろ に対して与える影響も多様なものになつんが、近頃、人証を大事にする、尋問をひ ているのではないかというのが、私の見大事にするということをおっしやってい ました。これは、迅速化法が制定されて、 9 方です。 こ
特集民事尋問における現状と課題 民事尋問の展望 4 の『発問は短く明確に』は、発問の仕第 8 、『反対尋問に高望みは禁物ー反所の教官を経験した立場で思うことは、 方について、主尋問、反対尋問を通じて 対尋問は主尋問を固めず、信用性を弁護士の就職難になり、人数も増え、い わゆる「即独ーというスタイルが一定数 減殺することで十分。』 の原則として作ったものですから、これ を復活させて、現在ある新しい第 4 の原第 9 、『集中証拠調べ後には証拠弁論定着をしています。あるいは、 1 年ぐら いで事務所を出てしまって、後は自分で 的準備書面を作成せよ』 則である『陳述書と尋問との関連を意識 行、つとい、つスタイルも定着しています せよ』、これを第 3 の『主尋問は構成を 第峺『尋問技術に倫理あり』 し、法テラスなどで、若手がいきなり所 練ること』のコロラリ 1 のサプ原則とし 長として 1 人でやっていることもたくさ たらどうかと思い付きました。いかがで んあります。昔の我々のように、特に何 1 レよ、つ、か 六民事尋問の展望 かを教えてもらうわけではないけれど 永石よろしいですね。 加藤現状についての意見交換をしてまも、先輩の背中を見て学ぶような機会が 《まとめ》 いりました。では、これからどういう方本当に減ったのではないかと思います そこのところは、すごく考えなければ 加藤そうすると、尋問技術川の原則向にいくのがよいかという展望も語り合 いけないところだと思っています。自分 いたいと思います。とりわけ、若い後進 は、次のよ、つになります。 第 1 、『尋問成功のカギは立証準備にの弁護士が従前と比較にならないほど増の経験で考えてみますと、尋問技術につ いてどこでどう学んだかと思い返して えてきています。一方で、司法修習期間 ありー争点整理で尋問の的を絞れ』 も、特に教わったとかいうことではな が 1 年になり、一人前になる前のトレー 第 2 、『尋問予定者には面接すべし』 先輩弁護士から学んだ、相手方弁護 第 3 、『主尋問は構成を練ることー陳ニングの期間が限定的になってきていまく、 述書と尋問との関連を意識せよ』 す。こうしたことを与件とし意見交換を士から学んだ、あるいは事務所外の弁護 してみたいと思います。 士と一緒に事件をやらせていただく機会 第 4 、『発問は短く明確に』 があって、そこで事務所とは全然違う尋 第 5 、『尋問の聴き手である裁判官を渋村さんは事務所の中で先輩として、 問スタイルを学んだ、そういうことが多 意識せよ』 若手の弁護士を指導しておられる立場だ かったと思います。今ではそういう機会引 第 6 、『尋問調書に残す訊き方の工夫と思いますが、いかがでしようか がなかなかないということを若手弁護士の をせよ』 から聞いております。民事弁護の尋問と法 第 7 、『民訴規則を駆使して適切な異《意見交換》 いう分野について学ぶ機会というものが 2 議を出せ』 渋村事務所というよりは、むしろ研修
加藤他に、何かありますか ですが、陳述書の内容が食い違ってお調書に残す訊き方の工夫をせよ』、第 7 永石先ほどの問題に少し戻りますが、 り、どちらが認定されるかによって結論 に『民訴規則を駆使して適時に適切な異 陳述書だけでは事実認定はしないというが決まる可能性があるという場合は、恐議を出すこと』、第 8 に『反対尋問は信 のが裁判所の立場でしようか。 らく尋問を行、つのではないでしよ、つか 用性を減殺すれば成功』、第 9 に初版時 ろ 岡部勝敗の決め手になるような事実を は『目的のない反対尋問は禁物』、これの 陳述書で認定してはいけないのではとい を第 3 版では『集中証拠調べ後には証拠法 う考えでおります。 弁論的準備書面を作成せよ』に変えまし 五民事尋問のスキル再考 永石私は、他に何も証拠がないとき、 た。第川に『尋問技術に倫理あり』。こ 陳述書だけで判決が出た事案もあったと《尋問技術間の原則》 れが、尋問技術間の原則です。 かお聞きしたことがありますが、岡部さ加藤現在のいろいろな状況について具本日のお話に出たような状況を前提と んの認識では、それはあり得ないという体的に触れていただいたわけですが、そして、これらを見直すとしたら、どうい ことでしよ、つか のことを前提にして、尋問のスキルをどうことになるでしようか 岡部原則としては非常に抵抗がありまのように整理しておくのがよいか。この す。 問題に入ります。これについては、『民《争点整理で尋問の的を絞れ》 加藤弁論の全趣旨により、陳述書作成事尋問技術』では川の原則としてまとめ日下部先ほどまでの座談会で、争点整 名義人の人証調べをしなくても、陳述書ています。今回の第 4 版では、どのよう理の話がだいぶ出たと思います。争点整 の当該部分を信用できるという評価が可な川の原則がふさわしいのかを考えたい 理を踏まえて、効果的な尋問を準備する 能な場合には、そういう判決が出ること と思います・。 ということについては、異論ないところ は全くないとはいえないのですが、基本具体的に言いますと、第 1 に『尋問成かなと思っております。その意味では、 的には、証人尋問を申請していれば、そ功のカギは立証準備にあり』、第 2 に『尋 川の原則の 1 番目、『尋問成功のカギは れを採用せずに真剣に争っているところ 問予定者には面接すべし』、第 3 に『主立証準備にあり』ということ自体は、も を陳述書 1 本で決めてしまうということ尋問は構成を練ること』、第 4 に、初版ちろん正しいことだと思いますが、もう はしないよ、つにしていると思います。 時の『発問は短く明確に』を、第 3 版で少しポイントを特定した表現ということ 岡部陳述書を読み比べて、おおむね一は『陳述書と尋問との関連を意識せよ』 で言えば、『争点整理で尋問の的を絞 致している事実は、陳述書に基づき、共に変えました。第 5 に『尋問の聴き手でれ』。例えば、こういった表現で立証準 通のスト 1 リ 1 として認定すると思うのある裁判官を意識せよ』、第 6 に『尋問備のポイントを争点整理の中に示してい