陳述書 - みる会図書館


検索対象: 法律のひろば 2016年11月号
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1. 法律のひろば 2016年11月号

特集民事尋問における現状と課題 四陳述書の利用と民事尋問 用されていない陳述書に自分側の不利な事実を反対尋問にさらされない陳述書だす。もし、そこで主張が変わるほどのこ 部分があれば、準備書面で当該部分につけに基づいて事実認定することは、普通とが出てくるとすれば、弁護士として、 はしないですね。 それ以前にきちんとヒアリングをしてお いては事実認定に供すべきでないという 旨を明示的に主張しておくべきでしょ岡部まずしないのではないかと思いまかなくてはならなかったという問題であ う。そうすれば、裁判所としても、意識す。陳述書に不利な記載があるときといると思います。ただ、それまでも何度も ヒアリングをしているのですが、いざ尋 したうえで事実認定に臨むように思いまうことでしたが、先ほど、渋村さんが、 す。この点は、岡部さんいかがでしよう尋問の準備をされているときに、「なん 問まで見据えて準備していくと、そこで 初めて非常にリアルなエピソ 1 ドが出て だ、そ、つだったの」というようなやりと りをされることがあるとおっしやっておくるということはあります。これは依頼 岡部基本的には、勝敗を決めるような 事実を陳述書で認定するということは非られましたが、それが相手方に不利な事者が、特に一般の方の場合、「これはあ 常に抵抗をおばえる裁判官が多いのでは情で、相手方に主張レベルで反論の機会まり関係ないと思ってました。だから、 ないかと思います・。 今まで言ってなかったのですが」という を与えた方がよいと思われたり、あるい ような話が弁護士にとって、とても重要 加藤それは、同感です。中核的な争点は自分の方の主張を動かす必要が生じた りすることはないのでしよ、つか なことであったりする、そうい、つ場合も 氏 含んでおります。 渋村主張自体を動かすということは、 真 永石渋村さんのお話に対する私の理解 あまりないです。 争点がそれで変わるような、あるいは は、やはり証人尋問を前提とする陳述書 要証事実がそれで変わるような変遷が出であり、しかも、それは争点に影響する てくるということはあまりないです。むようなものではなく、反対尋問にさらさ しろ、争点について、例えば供述の信用れて弾劾される。それを恐れて事実だけ 性が問題になっていたり、書面の持つ意は少し詰めておくというような感じで受 味合いが問題になっているという事案のけ止めました。ただ、今、岡部さんがお ときに、そこの判断において、かなり重っしやったように、証人尋問用の陳述書引 要と思われる間接事実が出てくるというを作っているとき、尋問することによっの ようなイメ 1 ジです。ですから、それでて主張が変わるということはまずないよ法 主張が変わるとい、つことはないと思いま、つに思います。 、 0

2. 法律のひろば 2016年11月号

るいは、反対尋問で聞かれたら対応する視しますし、陳述書にどこまで入れるか 氏 子 ことにして、陳述書の段階では積極的に入れないかというのは一番悩むところで 測出さなくてもいいのではないかと思ってす。 落としてみたり、いろいろですが。この加藤そのような作成の仕方は、具体的 ろ よ、つに尋問をイメ 1 ジしながら、本当にな視点としてよく分かります。日下部さの 固いところで、尋問で絶対に崩れない陳んは法人の事件が多いと思いますが、陳 述書というのを作成していくというイメ述書については、どのようにしておられ 1 ジで作ります。依頼者と一緒になってますか 共同作業で作っていくわけです。もちろ日下部今、加藤さんがおっしゃいまし ん、文章は私が作ります。このようにしたとおり、私は依頼者のほとんどがいわ てできあがった陳述書は、本人が大体こゆる企業ですので、打ち合わせをする人 うですと当初書いてきたものから見ると も企業の法務部の人と、その事件におい 随分違うなと。むしろ、最初本人はこ、って関わり合いのある事業部の人というの 一言っていたけど、かなりオ 1 ーで言い が典型的です。法務部の人もそうです たんですよ」とか「あのとき、こうだっ し、事業部の人もそうですが、失礼を顧 たんですーという生々しいエピソ 1 ドが過ぎだったなとか、ここまでは言えない 出てくることがあります。そうすると、 ということも多いのです。経験則上、そみずに申し上げますと、非常によくでき これは陳述書に盛り込みたいけれども、 うやって尋問にさらしながら作っていつる、知的な能力の高い人が多いというの このリアル感というのは、生の事実としたほうが、結果としては崩れない陳述書が特徴かと思っています。 て尋問にとっておきたいなと思い、あえ になるのではないかと思っているところ陳述書の作成につきましては、今、作 成方法と内容を念頭に置いているのです て入れないこともあります。逆に、不利です。 なエピソ 1 ドが出てくることもありま加藤尋問でどのように使うかというこが、渋村さんがおっしやったお話の内容 す。この場合、どうしようかと非常に迷とを意識して、専門的な内容を記載するは、私の実務の処理の仕方とほとんど同 います。今、初めて出てきた不利な事実ようなもの以外は弁護士が作成する。こじです。先ほど、いろいろ多様なものと 申し上げましたのに、この座談会の出席 であり、むしろ陳述書に盛り込んでしまれが原則的なやり方ということですね。 渋村そうですね。ですから、陳述書と者がやっていることは、たまたまだと思 った上で、きちんと説明・手当しておい たほうがいいのかなと思ってみたり、あ尋問とのすみ分けというのは、かなり重いますけれども、ほとんど同じでした。 0 ン

3. 法律のひろば 2016年11月号

争点整理で双方がそのような陳述書を出る方が、どうしてそのように思われるの いかと思います。それが代理人の目から すのであれば、やはりその後の期日で相かということを聞きますと、一番大きな見ると、陳述書だけから安直に事実認定 手方の陳述書に対する反論の陳述書を出理由は、十分に内容がテストされているをしているのだというように受け取ら 5 したくなってしまいます。依頼者からもわけではない陳述書が事実認定で安易にれ、不満を高じらせているということが引 ひ の 「書いてください」と言われますので、使われると弁護士が考えていることなのあるのではないかと思っています。 加藤手続法的な観点から言うと、反対 何回も陳述書を出すというような、今一ではないかと思います。人証の対象とな つな感じになりかねないのかなという実っていない人が陳述者になっている陳述尋問にさらしていれば、それが深く扱わ 感が正直ございます。 書の内容が事実認定でそのまま使われれているかどうかにかかわりなく事実認 加藤陳述書が準備書面化してしまってた、あるいは陳述者が人証の対象になっ定に供されることはやむを得ないように ており、陳述書の内容が反対尋問に一応思います。それを回避するためには、き いるのですね。 渋村そうですね。何かそれは少し違、つさらされたが、とりわけ深く追及されてちんと反対尋問で崩すか、あるいは疑念 いないポイントについて、安易に事実認を生じさせるところまでやっておくこと のかなとい、つ気もします。ちょっと難し いかもしれません。 定に使われたというように代理人が感じが必要です。それをしないでおいて、反 日下部 1 点、付言しますと、陳述書のる場合には、代理人側の不満が高じてき対尋問をしたが上手くいかなかったら、 作成、提出、内容、時期について、弁護て、陳述書がいけないという評価がされ陳述書を使うのはおかしいというのはど うかと思いますが、そこはいかがでしょ 士の中にもさまざまな意見があり、極端るのかと思います。 なものとしては、陳述書の利用が今は不それは、具体的には、判決書の中で証うか 適切に一般化し過ぎているので、安易に拠が摘示されるときに、陳述書が甲第何日下部そうですね。反対尋問にさらさ 使うべきではないとの意見もあります。号証という形で引用され、「あの陳述書れた陳述書であれば、そうだろうと思い 例えば、人証の対象になっている者につが事実認定にそのまま使われたのか」とます。ただ、場合によっては人証調べの いてしか陳述書を出すべきではないとい驚きをもって受け取られるというような対象となっていない人の陳述書が判決書 における事実認定で引用されるというこ うような意見もありますし、出すとき状況です。実際は、裁判所のほうでは、 ともありますので、そういうケースです も、早期の争点整理の過程で出すべきで他の事情も加味した上で事実認定してい はないという意見をおっしやる人もいまるのかも知れないのに、証拠の摘示のとと、とりわけ不満が高じやすいのかなと す。 ころでは、陳述書だけが挙げられている思います。 というようなケースも多くあるのではな 加藤相手方弁護士としては、人証に採 陳述書に対して抵抗感を強く持ってい

4. 法律のひろば 2016年11月号

特集民事尋問における現状と課題 四陳述書の利用と民事尋問 私も陳述書の作成については、陳述者作成方法と内容以外の点で、 1 点、付ります。先ほど申しました固い点に絞っ からお話はお伺いしますけれども、基本言いたしますと、陳述書の作成・提出のて、間違いがないという部分に絞って陳 的には、というかほとんど全件と言って時期の問題があるかと思います。尋問が述書の中に書くというスタンスは、陳述 しいと思いますが、弁護士のほうで文書行われることが決まった人について、尋書を早期の段階で出すときにはとりわけ 作成をしています。どうしても文章を一 問期日までに陳述書を出すという例が多強く要求されることだろうと思っていま いとよく聞くところではありますが、私す から書くこともできないような技術的な 内容が中心の場合は例外ですが、弁護士が行っている事件の場合には、むしろ争加藤それと尋問との関係は、大体スム ーズにいくことになりますか のほうで作成をするということを常とし点整理の過程の中で、比較的早い段階で ています。記載内容につきましても、陳陳述書を提出するということが少なから日下部そうですね。私が陳述書を作 述書の中に書くのは反対尋問で崩されるずあります。その趣旨ですが、早期の段成、提出するときには、これも渋村さん がおっしやったこととまた同じになって ことがない固い部分を中心として、生々階で我々が代理している当事者の視点か しい事実については、実際の尋問のとらの一連の事実経過を裁判所にまとめてしまいますが、主尋問の準備という意味 き、主尋問のときにとっておこうという示すことで、その事案の一連の事実経合いを最初から考えておりますので、そ 発想で、陳述書の中では、そこまでは書過、よくスト 1 リ 1 という言葉が使われこで提出した陳述書を使って主尋問の準 備をするときに、あらためて難儀すると かないということか多いです。 ると思いますか、その事案のストーリ 1 い、つことはありません。 不利な内容について書くかどうかにつを、こちらの当事者に有利なように早期 いては、悩ましいところです。あらかじに裁判所にご理解いただきたいという意 《陳述書とは違うことを答える場合》 め書いた上で、相応の手当をしておくと向があるからです。 いうケースもありますし、陳述書の中に そういった作業はもちろん準備書面で加藤陳述書とは違うことを本人が尋問 で言いだして、それをどのように証拠評 は書かないで、主尋問において手当をすもできなくはないところですが、スト 1 る、あるいは反対尋問で訊かれた場合の 丿 1 をご提示するということであれば、価するかということが問題となったケ 1 対応を準備しておく、というケースもあ陳述書はそのツ 1 ルとして有効な部分がスを経験したことがあります。そういう ことはあ - り・ます , か。 ります。後者は反対尋問の準備を進めさあると考えています。ただ、早期にそう ろ せたくないという戦術的な理由によりまいった陳述書を出しますと、あとになっ渋村相手方の陳述書の内容と主尋問がの すが、そのようにするか否かはケ 1 ス・ て書かれている内容に間違いが発覚するかなり違うということは、何回か経験し法 たことがあります。それは、恐らく、こ バイ・ケ 1 スです。 ことがあり、その場合むしろ逆効果にな

5. 法律のひろば 2016年11月号

特集民事尋問における現状と課題 四陳述書の利用と民事尋問 がら書くと申し上げましたが、争点整理理でも陳述書は出してくださいという運もらうことが多いですか の過程で提出するということが少なから用を始めたもので、そうすれば中身のあ岡部今のお話のとおり、主張がなかな ずあります。 る書面の応酬になるということが裁判所か確定しない場合などに、早めに陳述書 永石お二人は、そこは違うのですね。 サイドの真の動機なのです。そういうこの提出をお願いすることもあります。具 日下部その点は、もしかすると違うのとを一言うと、弁護士さんに嫌がられます体的な事実が十分主張されているとき かもしれません。尋問のためだけに出すから、そういう前史はあまり語られませは、争点整理を終えて、人証の計画を立 ものではなくて、尋問のことも念頭に置んが、それが実際です。そして、いまやてる際に提出していただいています。 きながら用意はしているけれども、争点準備書面で争点整理が迅速円滑にできる渋村さきほど、永石さんがおっしやら 整理を自分のほうに有利に進行してもらようになってきたのであれば、私は何回れたとおりで、争点整理のための陳述書 うことを戦略的には意図して、早期に提も陳述書を出すのはいかがなものかと思ですと、恐らく日下部さんと私はそこが 出することもあるというのが正しい表現います。ですから、争点整理段階で、尋違うと思います。私は企業の関係もやっ です。 問対象となる争点を意識して提出するこておりますけれども、本日は、むしろ一 加藤陳述書を出す時期が早期であると とでもよいし、あるいは尋問の前に本人般の方の通常の民事事件を主として、お すると、尋問の前にはまた別の陳述書をの言葉で適切に表現すると争点事実はこ話をさせていただいています。陳述書を 出したら次は尋問だから、相手の先生か 出すということになるのですか うなりますという形で出すのもよろしい 日下部尋問のときにあらためて出すと と思いますが、何回も出すのは本来はおら反対尋問されるのだからという、ある いうことは、普通はありません。それでかしなことです。 種の危機感といいますか、共通意識の中 済むようなものを最初から出しているこ また、かってあったのは、一方が陳述で、依頼者と腹を割ってといいますか、 とが通常です。 書を出すと、相手方がそうではないとい 「不利なことも言うなら今、言っちゃい 加藤争点整理目的の陳述書は、どうい う陳述書を何回も提出しエンドレスになましようよ」ということでやるからこ る。それを避けるために、 1 、 2 の 3 でそ、先ほど申し上げたような流れで行え う動機でそれが勧められたかというと、 もともとは弁護士があまり準備を前倒し出してください、それに対して反論があるわけです。もしも、もう少し前の段階 でしてくれないので、本来であれば準備れば、もう一回出すことは許容しますとの争点整理で、ということになります引 いう 2 巡方式で行ったこともありましと、私の感覚では、もう少し簡潔な陳述の 書面での応酬で足りるのですが、それが 上手くいかなくなっている。こういう時た 書しか出せません。恐らく尋問前にもう法 期が長く続いたことから、準備書面は 2 現在は、陳述書はどの時期に提出して一回出すということになるでしようし、

6. 法律のひろば 2016年11月号

特集民事尋問における現状と課題 四陳述書の利用と民事尋問 ているからです。陳述書を作成し終わっ 手裁判官の中にあるとすると、それは甚ように見ておられますか たときには、おおよそ尋問のイメージが だ問題であると思います。 できており、尋問準備もまあまあできた 結局、コミュニケ 1 ション能力の問題《弁護士からの視点》 かなというようなイメ 1 ジを持っており ですから、裁判官があることを言ったと渋村現在、体感上は全件、尋問前には ます。 き、何を言ったのかを法廷外あるいは弁陳述書を求められます。 論準備室の外で訴訟代理人が議論をする加藤これは渋村さんが作成されるので本人が書いたものが、必ずしも事実そ のとおりか、本当に本人の生の記憶のと ようになってしまうのはおかしな話ですか 渋村本人に書いてもらうという弁護士おりかというと、実はそうでもないとい す。その場で、「裁判官、それはどうい もいると思います。私は、技術的な争点う印象を持っています。陳述書を作成す う意味でしようか」と聞いてもらえば、 そこでまたコミュニケーションが進んでについての証人または専門家証人のようることは、もう尋問に入るということで いくわけですから。その辺りの基本的なな方の場合は、まずは本人に書いていたすから、主として反対尋問的な観点で、 ところについて、現状がどうなのかがやだいて、それをベースにヒアリングして反対尋問にさらしていきながら、また客 いきます。聞いても私は書けないという観的に出ているものなどと突合しなが や気掛かりです。 のもありますが、思考回路が違うからでら、いろいろな角度でヒアリングしてい す。技術者の思考過程とわれわれ法律家き、どのような角度から聞かれてもこれ は間違いがないとい、つ固いところを陳述 の思考とは、全く違いますので、そのほ 四陳述書の利用と民事尋問 うが正しい陳述書になるだろうというこ書に落とし込んでいくというイメ 1 ジで 加藤近時の民事尋問におけるもう一つとで行っておりますが、それ以外の一般私は作っております。逆に一一一〔うと、本人 が一生懸命言うのだけれども、それは反 のポイントとして、陳述書の利用の一般の方は、ヒアリングからほば尋問に近い 化です。もっとも、利用のされ方、作成内容まで、反対尋問にさらすような形で対尋問で崩れるのではないかと私が思う いろいろな角度から聞いていき、私がまところは怖くて陳述書には入れないよう のされ方は、日下部さんによると、まだ にしています。 とめていくという手法をとっておりま まだ標準的なものがあるようでないとい す。本人に書かせるということはしてお逆に陳述書作成の過程で、本来であれ引 、つことです。 ばもっと前に聞いておくべきだったと反の りません。 標準的なものがないのに実情はどうか と聞くというのも何か矛盾した問いかけ陳述書作成は、今の実務ではイコ 1 ル省することも多いのです。意外と重要な法 エピソードが、「実はこんなことがあっ のように思いますが、渋村さんは、どの尋問準備といっても過言ではないと思っ

7. 法律のひろば 2016年11月号

類ではないでしようか 点整理中のどこかの段階で出してもらう囲 日下部多くはないかなという印象を持必要があるのではないかとも思いました っています。 永石しかし、私の事務所の若い弁護士陳述書の捉え方は、裁判官によって差 ろ があるところとは思いますが、私は、主の は皆、 3 稿、 4 稿を作っています。 加藤そうですか。少なからずやられて張が詳しく具体化されたものとして、争 いるとい、つことですか 点整理的な視点で陳述書を見ることもあ ります。 永石そうですね。私も今、一緒かなと 思ってお聞きしていました。 例えば、「口頭で合意した。」というだ 渋村事務所の若い弁護士には、「 1 回けで、主張としては足りるところもあり や 2 回聞いただけでは陳述書は作れないますが、陳述書で具体的なスト 1 リ 1 を よ。」とは言っています。私も先輩弁護書いてもらうと、はっきり合意文言を交 士からそのように教わりました。多くはわしたと書いてあるとき、合意文言の交 用されるということですが、それを聞し ないかもしれませんが、少なくもないの換に触れる記載がないとき、やり取りは て、岡部さんは、どういう感想を持たれではないかと思います。 あるが曖味なときなど、さまざまです。 ますか 陳述書で具体的なストーリー を提示する 岡部今のお二人のお話には驚きまし《意見交換》 と先ほどおっしやっておられましたが、 た。私は、 3 稿、 4 稿と準備するほど丁岡部人の話を聞くということが、い力やはりそういう具体的なスト 1 リーの提 寧に陳述書を作成しておられるとは、実に難しいことなのかがよく分かるお話示がないと当事者の主張は理解しきれな はあまり思っておりませんでした。 で、大変興味深く伺いました。ただ、陳いと思うときがあります。 加藤裁判書きの起案でもそんなにはし述書を作成する際、 3 回、 4 回と聴取を永石しかし、今のお二人の話は尋問前 ないのにと ( 笑 ) 。 重ねて、初めて代理人が当事者の話を正提の陳述書の話ですから、争点整理の場 岡部そのように作成される方が一般的確に理解するというのであれば、そこを合の段階で、もしも裁判所から出せと言 われたら、また違う書き方だと思いま なのでしようか。逆に質問して恐縮です踏まえてから争点整理もしておきたい、 そうすると、尋問の準備として陳述書をす。 加藤それはかなり丁寧に行っている部出してもらうということではなくて、争日下部私は尋問のことも念頭に置きな 3 ( 岡部純子氏 )

8. 法律のひろば 2016年11月号

加藤他に、何かありますか ですが、陳述書の内容が食い違ってお調書に残す訊き方の工夫をせよ』、第 7 永石先ほどの問題に少し戻りますが、 り、どちらが認定されるかによって結論 に『民訴規則を駆使して適時に適切な異 陳述書だけでは事実認定はしないというが決まる可能性があるという場合は、恐議を出すこと』、第 8 に『反対尋問は信 のが裁判所の立場でしようか。 らく尋問を行、つのではないでしよ、つか 用性を減殺すれば成功』、第 9 に初版時 ろ 岡部勝敗の決め手になるような事実を は『目的のない反対尋問は禁物』、これの 陳述書で認定してはいけないのではとい を第 3 版では『集中証拠調べ後には証拠法 う考えでおります。 弁論的準備書面を作成せよ』に変えまし 五民事尋問のスキル再考 永石私は、他に何も証拠がないとき、 た。第川に『尋問技術に倫理あり』。こ 陳述書だけで判決が出た事案もあったと《尋問技術間の原則》 れが、尋問技術間の原則です。 かお聞きしたことがありますが、岡部さ加藤現在のいろいろな状況について具本日のお話に出たような状況を前提と んの認識では、それはあり得ないという体的に触れていただいたわけですが、そして、これらを見直すとしたら、どうい ことでしよ、つか のことを前提にして、尋問のスキルをどうことになるでしようか 岡部原則としては非常に抵抗がありまのように整理しておくのがよいか。この す。 問題に入ります。これについては、『民《争点整理で尋問の的を絞れ》 加藤弁論の全趣旨により、陳述書作成事尋問技術』では川の原則としてまとめ日下部先ほどまでの座談会で、争点整 名義人の人証調べをしなくても、陳述書ています。今回の第 4 版では、どのよう理の話がだいぶ出たと思います。争点整 の当該部分を信用できるという評価が可な川の原則がふさわしいのかを考えたい 理を踏まえて、効果的な尋問を準備する 能な場合には、そういう判決が出ること と思います・。 ということについては、異論ないところ は全くないとはいえないのですが、基本具体的に言いますと、第 1 に『尋問成かなと思っております。その意味では、 的には、証人尋問を申請していれば、そ功のカギは立証準備にあり』、第 2 に『尋 川の原則の 1 番目、『尋問成功のカギは れを採用せずに真剣に争っているところ 問予定者には面接すべし』、第 3 に『主立証準備にあり』ということ自体は、も を陳述書 1 本で決めてしまうということ尋問は構成を練ること』、第 4 に、初版ちろん正しいことだと思いますが、もう はしないよ、つにしていると思います。 時の『発問は短く明確に』を、第 3 版で少しポイントを特定した表現ということ 岡部陳述書を読み比べて、おおむね一は『陳述書と尋問との関連を意識せよ』 で言えば、『争点整理で尋問の的を絞 致している事実は、陳述書に基づき、共に変えました。第 5 に『尋問の聴き手でれ』。例えば、こういった表現で立証準 通のスト 1 リ 1 として認定すると思うのある裁判官を意識せよ』、第 6 に『尋問備のポイントを争点整理の中に示してい

9. 法律のひろば 2016年11月号

日下部 1 点、補足をさせていただきま う言っては何ですが、弁護士の陳述書作《陳述書作成のプラクティス》 成にかけた時間だと思うのです。その弁加藤陳述書は経験では、何回位やるのすと、今、渋村さんがおっしやったこと に私も全面的に賛成です。とりわけ、依 護士が陳述書をとても簡単に捉えてしまがおすすめですか ったからだと思います。 1 回、 2 回聞い 渋村私は最低でも 3 、 4 回はやりま頼者といいますか、陳述者の中には、弁 ろ 護士がドラフトを作ってきたときに、その て、聞いたとおりに作るぐらいでは、陳す。 述書はできません。それだと、私の経験岡部そうすると、 3 、 4 回、聞く又はれに対して文句を言ったり、修正を求め たりすることに心理的な抵抗が強いとい 上、不正確な陳述書になってしまうと思やりとりするのですか うのです。具体的に言いますと、私がヒ渋村まず 1 回時間をかけて聞いてドラう人もいると思います。そういう人が遠 アリングの結果、第 1 稿のドラフトを完フトを作ります。そこからがスタ 1 トと慮してしまい、その場で訂正をしないで い、つことです・。 尋問に臨むと、反対尋問、場合によって 成させたとします。勝負はここからで、 それを依頼者に「これでいいですか。読加藤 3 稿にしたり、 4 稿にしたりするは主尋問で、陳述書と違う話が出てきて んでください。」「いいですね。署名してところで完成稿にするということですしまうという悲惨な状況になってくると ころです。そのような状況を避けるため ください。」ということでは絶対駄目でね。 す。これでは主尋問でもう崩れます。依渋村そうです。作成したドラフトをフには、陳述者との間でのコミュニケーシ 頼者に第 1 稿を見せたときに、「おおむアックスやメ 1 ルで見てもらって確認すョン、とりわけ、陳述者が遠慮をしない ね合ってます , って言われたときは、 4 るのでは駄目だと思っています。面談でで話ができる信頼関係を作るということ 割くらい違っています。「先生、完璧でドラフトを前にしながら、最初から一言が非常に重要だろうと思っています。 そういう意味で、渋村さんはとても上 す。本当にこのとおりです」と言われた一句、「でも、ここはあなた、こう言う けれども、こ、つい、つ質問が来たらど、つな手になさっているのだろ、つと思い、私も ときで、大体 8 割ぐらいです。 2 割は、 詳しく確認していくと違っています。での ? 」「それなら、このようには言えなもっと精進しなければいけないなと思っ いよね」「じゃあこういう表現なら合った次第です。 すから、いったんドラフトを作ってか ら、何回も反対尋問にさらしたり、推敲てる ? 」というようなやりとりをしなが永石今のお二人の話ですと、企業法務 の担当者であるとか、ある程度、裁判の していった過程で完成させないと、主尋ら、実体に合うように変えていきます。 3 、 4 回、そういうやりとりをし経験がある人のときにそれはそれでいい 問で陳述書が崩れてしまうことになると大体、 て、「間違いない」となり、 2 人で作っと思いますが、例えば、個人事件などの いうのが私の体感です。 たとい、つ感じになるイメージです。 場合、初めて裁判を経験する人は、何稿

10. 法律のひろば 2016年11月号

陳述書と随分ニュアンスが違うなとか、 おいて、複数の人証の尋問が行われるこ 氏 あるいは、そ、つい、つことかあったのかと とが通常です。その日に尋問される人証 ん か、なるほどそ、つだったのかと思、つこと が 1 人という場合であれば、かなり長時 べ が、陳述書に出てこない部分がおのずと間にわたることが想定されます。当然のろ 出てくる部分があって、実は非常に重要ことながら、集中して行う尋問ですの律 法 であったりする場合も体験しておりまで、その前の準備が非常に大変です。同 す。 じ人証について 2 回目、 3 回目の機会は 主尋問は 5 分、川分みたいなことを言ありませんし、先行する尋問の調書がで われる裁判官もおります。そうすると、 きてから次の尋問の準備をするわけにも 重要な部分を生の言葉でという、一番核いきませんので、尋問期日に先立って、 心の部分を反対尋問で全部やらなければ提出されている主張書面、それから書証 いけないということになりかねないその類い、こういうものについては全般的 8 こは少し弊害が出ているのではないかなに復習しなければなりません。その上 すよね。もちろん、陳述書が提出されてと。陳述書イコール主尋問というのは少で、争点整理の結果、ここが証拠調べの いるので、主尋問は陳述書をなぞるようし違うのではないかなというのが私の正対象になっているというポイントに効果 なものにしては意味がないわけで、本当直な感想です。後で出てくると思います的な尋問を組み立てる作業を、通常は複 に大事なところだけをきっちり証人な が、それは弁護士のほうにも問題があ数の人証について行う必要があります。 り、本人の口から生の言葉で語ってもらり、もっと陳述書と尋問のすみ分け、バ 実際に尋問が実施される際において うことが主尋問の意味だと思うのです。 ランスの置き方ですとか、いろいろなこも、前に訊かれた人証の話を踏まえて、 ともすれば、裁判官にもよりますが、 とを考えて、もう少し主尋問を意味のあその日の次の人証に対する尋問を見直 「陳述書が出ているのだから、主尋問はるものにしていくというのが一つの課題す、あるいは、主尋問で話された内容を どうせこのとおりですから、ほとんど要ではないかと個人的には思っておりま踏まえて、直ちにその後に反対尋問をし らないですよ」みたいなことをおっしやす。 なれば、ナよ、。 し。オしこ、ついう状况ですの る方もいらっしゃいますが、それはちょ 日下部私は、最近、代理人として尋問 で、尋問が行われている最中にどういっ っと違うと思っています。大事なことをに臨む際に感じていることを述べます。た陳述、証言がなされたのかということ 本人の口から生で語られますと、意外と集中証拠調べが定着して、 1 回の期日にをきちんと把握しておくことが非常に重