特集消費者団体訴訟制度のこれから 適格消費者団体への期待と課題 ることが原則となっている の内容と結果を、自団体のウエプサイト は、公益性が高いものと一一一一口える。 一方、消費者被害が広範に早期に集ま で公表している。これは、差止請求の効 るのは、地方公共団体の消費生活相談の 果が、事業者が締結する今後の契約にし 四適格消費者団体への支援の 窓口である。この窓口に寄せられた苦 か及ばず、過去の事案については、被害 必要性 情・相談は、国民生活センターの管理す 者が実質的に差止請求の結果を活用し る全国消費生活情報ネットウークシステ て、みずから無効や取消を主張しなけれ 総論 ム ( — O-z ) に入力されている ば被害回復がはかれないためである。適 格消費者団体が差止請求を行う以前の被高い公益性を有する差止請求制度であが、その件数は 2015 年度には約万 害者も、差止請求の結果を活用できるよるが、この制度が効果的にかっ持続して 6 千件に上っている うに公表している ( 消費者契約法条 ) 。運営されるかどうかは、適格消費者団体全国の地方公共団体に寄せられる苦情 の活動にかかっている。適格消費者団体相談から、差止請求の端緒情報が得られ の活動が効率的にすすめられ、持続性をれば、大きな被害となりそうな事案を優 5 差止請求制度の高い公益性 有し発展していくためには、消費者行政先して差止請求の対象とするなど、消費 このように、適格消費者団体の行う差との連携、そして消費者行政による適格者被害防止の観点から効果的な取組がで きると考えられる。 止請求関係業務は、消費者契約法等の法消費者団体への支援が不可欠である 現状は、地方公共団体の消費生活相談 令に反する事業者の不当な行為を是正す 員の方々が、相談者の苦情・相談を聴い るものであり、将来に向けて消費者被害 2 情報面での連携、支援 て、差止請求の要否を検討したほうが良 の拡大防止をはかるものである。そし いと思われたケ 1 スについては、相談者 て、差止請求の結果を公表することで、 差止請求の検討の端緒となる消費者 に適格消費者団体を紹介する取組が、少 過去の被害者がみずから被害回復をはか被害情報 ることを支援する意味ももつ。また、適差止請求活動の出発点は、消費者からしずつ広がってきている。当機構への情 格消費者団体による差止請求の取組によの被害情報の提供である。消費者被害の報提供も、消費生活センターからの紹介 ワ」 0 CD り、事業者の悪質な行為が早期に消費市内容を聞き、その原因となっている事業が増えてきている さらに、今年 6 月にまとめられた「消 場から排除されることで消費市場の健全者の不当な行為について調査し、差止請 ( 法令を遵守し誠実に事業活動を行っ求の要否を検討することになる。このよ費者団体訴訟制度の実効的な運用に資すろ うに差止請求の検討の端緒となる消費者る支援の在り方に関する検討会」報告書の ている事業者と消費者の需要が結びつ 0 法 では、以下のように提言されている く ) もはかられることになる。このよう被害情報 ( 以下「端緒情報」という。 ) 「現在、国民生活センタ 1 において、引 に適格消費者団体の行う差止請求の取組は、適格消費者団体みずからが、入手す 0 0 0
化される方向にある。消費者庁設置以降 の主な新法制定・法改正を、 (•-) 民事 ルールか、行政ル 1 レ ノか、 ( ⅱ ) 実体ル , カル 1 ルの実効性を強化する仕組ば ろ みかによって整理すると、表 3 のとおりひ 律 弁護士松田知丈である。 法 消費者団体訴訟制度 ( 差止請求制度お 弁護士増田慧 よび集合訴訟制度 ) は、いずれも、ルー えられるし、行政ルールも金銭的な負担ルの実効性を強化する仕組みに位置づけ 一消費者法が企業活動に与え に影響する場合がある。 られる ( 差止請求制度は、景品表示法や る影響 また、民事ル 1 ルと行政ル 1 ルは相互食品表示法などの行政ルール違反も対象 に影響する場合がある。例えば、事業者としており、その意味で、民間の消費者 民事ルールと行政ルールの枠組 が行政処分を受けたことを知った消費者団体が行政ル 1 ルの執行を担うことにな みの違いと重なり が、そのことを理由に事業者に代金返金る制度である。 ) 。すなわち、実体ル 1 ル 消費者契約法や景品表示法など、消費を請求するといった影響や、消費者が消を定めるものではなく、事業者が守るべ 者を保護するための法律は様々ある。事費生活センタ 1 等に民事上の相談をした きル 1 ルが変わるわけではない。しか 業者がこうした消費者法に違反した場ことが事業者への行政処分の契機となるし、実体ルールに違反していた場合の影 合、金銭的な負担やレピュテーションへといった影響などが考えられる。 響が大きくなるため、事業者の実務対応 の影響を受けることになる。 事業者が消費者法に違反した場合の影もそれに見合ったものにする必要があ 事業者が消費者法に違反したことによ響を事前に検討する場合は、こうした民る。個々の消費者や行政が取り上げてい る直接的な影響は、違反した法律が民事事ルールと行政ル 1 ルの違いと重なり合 ない事案についても、一定の消費者団体 ル 1 ルか、行政ルールかという枠組みの いを踏まえて、検討をすることになる。 がイニシアテイプをとって訴訟に発展さ 違いによって異なる ( 表 1 、表 2 ) 。民 せることは、事業者にとって小さな影響 事ル 1 ルは金銭的な負担と、行政ルール ではない。 2 消費者法の強化と消費者団体訴 はレピュテーションへの影響と、それぞ 以上のような全体的な位置づけを踏ま 訟制度が事業者に与える影響 れ結びつくことが多い。 えながら、一一以下では、差止請求制度お もっとも、表 2 のとおり、民事ル 1 ル 消費者法は、近年、新法制定や法改正よび集合訴訟制度について、それぞれの もレピュテ 1 ションに影響する場合も考が相次いでおり、消費者保護の視点が強制度が事業者に与える影響を具体的に確 消費者団体訴訟制度の 企業活動〈の影響と対策乙
特集消費者団体訴訟制度のこれから 消費者裁判手続特例法の概要 否及び内容を適切かっ迅速に判断するこ決内容が団体ごとに異なったり矛盾した失利益、人身損害や慰謝料を除外してい とが困難であると認めるときは、共通義りしないよう合一に確定させる必要があること ( 3 条 2 項 ) 、更に、共通義務確 認の訴えにおいて確認を求める事項が対 務確認の訴えの全部又は一部を却下するるためである。 ことができることとしている ( 3 条 4 次に、対象消費者の範囲に属する届出象消費者の有する債権の存否の判断をす るに当たって十分なもの ( 前述の支配性 項。支配性 ) 。これに当たる場合として消費者にも及ぶとするのは、本制度が、 は、個々の消費者の損害や損失、因果関対象消費者が二段階目の手続である対象の要件を充足するもの ) とすることなど によって、被告事業者が共通義務確認訴 係の有無等を判断するのに個々の消費者債権の確定手続において、共通義務確認 ごとに相当程度の審理を要する場合が考の訴えの結果を活用することができる制訟において十分な攻撃防御を尽くすこと えられる。例えば、ある商品の不具合が度を創設することによって、消費者被害ができるようにしている。 の実効的な回復及び紛争の一回的解決を被告適格 瑕疵に当たることを確認したとしても、 前述のとおり、本制度において被告と 個々の顧客の購入した商品に当該不具合図ろうとするものという制度の本質から なるのは消費者契約の相手方である事業 があるかどうかの認定判断が困難な場合導かれ、本制度における最大の特徴とい などが考えられる。 い得るものである。これは、被告事業者者であるが ( 3 条 3 項 1 号 ) 、不法行為 に基づく損害賠償請求については、被害 共通義務確認訴訟の確定判決の効力が、共通義務確認の訴えの審理におい 共通義務確認訴訟の確定判決の効力て、二段階目の手続で行使されることが回復の実効性を確保する観点から、消費 は、民事訴訟法において確定判決の効力想定される債権の内容及びその総額 ( 係者契約の相手方である事業者のほかに、 が及ぶとされる者のほか、当事者以外の争利益 ) についておおよその見通しを把その債務の履行をする事業者、消費者契 特定適格消費者団体及び対象消費者の範握することができ、十分な攻撃防御を尽約について勧誘をし、当該勧誘をさせ、 囲に属する届出消費者にも及ぶこととさくすことができるような制度設計とする若しくは当該勧誘を助長する事業者も被 告とすることとしている ( 同項 2 号 ) 。「勧 ことにより許容されると考えられる。 れている ( 9 条 ) 。 ます、当事者以外の特定適格消費者団 具体的には、共通義務確認の訴えを提誘を助長する」とは、消費者契約を締結 体にも及ぶとするのは、共通義務確認の起するに際し、対象債権及び対象消費者するについての勧誘を容易ならしめる行 いい、例えば、問題とされる勧誘の 訴えは、制度の実効性確保の観点から、 の範囲を特定していること ( 訴状記載事為を 各特定適格消費者団体がそれぞれ単独で項、 5 条 ) 、対象となる請求を消費者契ために必要な物品を提供し、当該勧誘のタ 訴えを提起することができることとしつ約に関するものに限定していること ( 3 手法を教示するなどの行為は「助長」にの つ、請求の内容及び相手方が同一である条 1 項 ) 、損害賠償請求の場合の損害の当たるが、一般的に事業者に必要な資金法 共通義務確認訴訟の訴えについては、判範囲についても、いわゆる拡大損害や逸の貸付などは「助長ーに当たらないと考
法律のひろば 日消費者団体訴訟制度 平成 28 年 12 月 1 日発行 ( 毎月 1 回 1 日発行 ) 昭和 2 イ年 2 月イ日第 3 種郵便物ま のこれから 消費者団体訴訟制度の導入と課題 / 升田純 消費者裁判手続特例法の概要 / 消費者庁消費者制度課 消費者契約法改正の概要 / 消費者庁消費者制度課 適格消費者団体への期待と課題 / 磯辺浩一 消費者団体訴訟制度の企業活動への影響と対策 / 松田知丈・増田慧 HOURITSU NO HIROBA Dec. 2016 VOL69 / No. 12 平成 28 年版犯罪白書のあらまし / 冨田寛 読み切り 徳市立。聿 161003567 一般 きようせい
4 消費者契約法改正法の附帯決議や、そのロ 消費者裁判手続特例法の概要 後の消費者庁及び消費者委員会設置法の 附則等において、消費者被害の回復のた 5 めの制度的な検討をすることが求められば ひ ていた。 消費者庁消費者制度課また、諸外国においても、近年、集団 的に多数の消費者の被害回復を図るため 消費者の財産的被害の集団的な回復のを提起して被害回復を図ることが困難での訴訟制度について検討及び実施されて ための民事の裁判手続の特例に関する法あり、こうした特性を踏まえた消費者被きている。古くは、 1960 年代にアメ 律 ( 平成年法律第号。以下「本法」害の回復のための新たな制度を創設する リカにおいていわゆるオプト・アウト型 又は「消費者裁判手続特例法」という。 ) 必要性が従前より指摘されてきたところのクラス・アクション制度が創設されて は、平成年月 4 日に成立、同月Ⅱ日である。 したカ 19 9 0 年代から 2 0 0 0 年代 に公布され、平成年川月 1 日から施行具体的には、司法制度改革の中で、裁にかけて、プラジル、カナダ ( オンタリ された。 判所へのアクセスの拡充、特に少額多数オ州 ) 、フランス、イギリス、ドイツ、 本稿は、本法の制定の経緯及び関係す被害への対応策の一つとして、いわゆるスウェ 1 デン、ギリシャ、デンマ 1 ク、 る最高裁判所規則等も含めた制度の概要団体訴権の導入について検討することがノルウェ 1 等の各国において様々な訴訟 について述べるものである。 謳われ、内閣府等の関係省庁において検制度が創設された。 2007 年には、 o なお、本稿で引用する条文は、特に断討すべきこととされた ( 注 1 ) 。これを受において、多数の消費者のための らない限り、本法のものである。また、 け、内閣府において消費者団体訴訟制度紛争解決及び救済の仕組をはじめ、消費 本稿中意見にわたる部分はすべて筆者らの導入に向けた検討が行われ、平成年者被害の救済を図るための多様な手続に の個人的な意見にとどまるものである。 6 月の消費者契約法の改正により、適格ついて国内枠組を創設すべき等の理事会 消費者団体による差止請求制度が導入さ勧告が出されている。また、フランスで れた。ただし、差止請求は事業者の現在は、 1990 年代に創設された訴訟制度 一制定の経緯等 又は将来の不当な行為に対する停止又は ( 「共同代理訴権」などといわれることが 消費者被害においては、同種被害が発予防を求めるものであり、過去の不当なある。 ) が十分に機能しなかったことか 生しながら、消費者と事業者との構造的行為により生じた消費者被害の回復にまら新たな訴訟制度の創設が検討され、本 格差等により、個々の消費者が自ら訴えで手当が及ぶものではない。そのため、法が成立したのと同じ 2013 年 ( 平成
えられる。 ないこととしている たり継続して適正に行っていると認めら炻 つ」 具体例 れること ( 条 4 項 1 号 ) や、本制度に 6 対象事案 個人情報流出事案については、当該個おける被害回復関係業務を適正に遂行す ⑦要件 人情報の流出に伴って生じた精神的苦痛るための体制及び業務規程が適切に整備ば 本制度の対象事案については、前述の に関する慰謝料請求が想定されるところされていること ( 同項 2 号 ) のほか、被ひ とおり、一段階目の手続における確定判であるが、このような損害賠償請求は、 害回復関係業務に関して支払を受ける報法 決の効力が二段階目の手続に加入した対本制度の対象とはならないこととなる。酬又は費用がある場合には、その額又は 象消費者に及ぶこととすること ( 9 条 ) 有価証券報告書の虚偽記載事案につい算定方法、支払方法その他必要な事項を や、二段階目の手続において簡易かっ迅ては、通常、証券発行者と証券取得者と定めており、これが消費者の利益の擁護 速に相当多数の消費者の請求を一括しての間に消費者契約関係が認められないもの見地から不当なものでないこと ( 同項 処理することとする観点を踏まえ、事業のと考えられ、そうであれば本制度の対 6 号 ) 等が掲げられている。 者が消費者に対して負う金銭の支払義務象とはならないこととなる。 これらの特定認定の要件の具体的な内 であって、消費者契約に関する一定の請 製品事故・食中毒事案については、当容は、「特定適格消費者団体の認定、監 求 ( ①債務の履行の請求、②不当利得に該事故等により生命・身体に生じた損害督等に関するガイドライン」 ( 以下「ガ 係る請求、③契約上の債務の不履行によ など、いわゆる拡大損害に関する損害賠イドライン」という。 ) において明らか る損害賠償の請求、④瑕疵担保責任に基償請求は、本制度の対象とはならないこ にしている。例えば、差止請求関係業務 づく損害賠償の請求及び⑤不法行為に基ととなる。 を継続して適正に行っていると認められ づく民法の規定による損害賠償の請求 ) る「相当期間」を原則として 2 年以上と ( 注 2 ) に係るものとしている ( 3 条 1 手続追行主体 し、「適正に」行っているとは、法令に 項 ) 。 本制度の手続追行主体となるのは、適のっとり、合理的な根拠に基づき消費者 前記③ 5 ⑤の損害賠償の請求における格消費者団体 ( 消費者契約法 2 条 4 項 ) の利益の擁護のために真摯に活動してい 損害については、、 しわゆる拡大損害 ( 3 の中から、所定の要件の全てに適合してることをいし 、前記の「相当期間」にお 条 2 項 1 号・ 3 号 ) や逸失利益 ( 同項 2 いるとして内閣総理大臣の認定 ( 特定認ける差止請求関係業務に関する活動内容 号・ 4 号 ) 、人の生命又は身体を害され定 ) を受けた特定適格消費者団体 ( 2 条や事業年度ごとに提出される財務諸表等 たことによる損害 ( 同項 5 号 ) 、精神上 川号 ) としている ( 注 3 ) 。特定認定の要の内容等を総合的に考慮することとして の苦痛を受けたことによる損害 ( 慰謝件としては、消費者契約法条 1 項に規いるほか、被害回復関係業務を適正に遂 料。同項 6 号 ) は、本制度の対象となら定する差止請求関係業務を相当期間にわ行するための体制が適切に整備されてい 0
消費生活コンサルタント、消費生活専門 請求の趣旨とその理由等 ) を審議議決 三適格消費者団体の行う差止 2 相談員のいずれかの資格を有し、 1 年以 し、差止請求の対象となる行為を行って 請求関係業務 上消費者相談の業務に従事した経験のあ いる事業者に対し、書面で申入れを行っ る者等 ) から意見の聴取をする機会を設差止請求制度に従って適格消費者団体ていく。 ろ ひ けなければならない旨が法定されてい が行う差止請求関係業務は、次のような の 律 る。実際に、消費者から提供された消費流れとなる。 3 差止請求訴訟にいたるプロセス法 者被害情報を分析し、被害の要因となっ ている事業者の不当な行為を特定して差 差止請求制度では、訴訟提起の前に書 消費者被害情報の収集 止請求の対象とし、その差止請求の趣 面での差止請求を行うことを適格消費者 旨・理由を申入れ書面として起案すると差止請求の対象となる事業者の不当な団体に義務づけている ( 消費者契約法れ いうプロセスにおいて、法律専門家及び行為を把握するために、消費者から被害条 ) 。この事前の差止請求 ( 以下「れ条 消費生活の専門家の主体的関与がなけれ情報の提供を受けている。その方法は、 請求」という。 ) を行った後 1 週間を経 ばこれらの業務は実施できない。そし電話や各団体のウエプサイトへの書き込過しなければ、差止請求訴訟を提起する て、これらの専門家の活動はそのほとんみ等による。消費者から提供を受けた情ことができない。さらに、多くの団体は、 どが無償で行われている。差止請求制度報のうち、差止請求の必要があると考え任意の取組として、れ条請求にいたる前 は、専門家の無償の協力により成り立づられる事案については、次の事案検討のに書面で裁判外の差止請求を当該事業者 ている制度と言える。 プロセスに移行していく。 に対し申し入れている。多くの事案は、 適格消費者団体は他の Zæo 法人と同 これらの訴訟前の差止請求の段階で、事 様、会費・寄附金、自主事業、委託事業、 業者の不当な行為の是正が約東され解決 差止請求の要否及び請求内容等 0 をしている 外部助成といった収入の柱をバランスよ の検討 く拡充していくことが課題となっている が、主要な業務である差止請求関係業務事案の検討のために、法律の専門家と 4 差止請求の結果の公表 では収入を得ることはできない。また、 消費生活の専門家が関与する専門委員会 事務局体制、組織体制についても差止請 が団体内に設置されており、専門委員会裁判外の申し入れの段階で不当な行為 求関係業務の実施にその多くをあててい で差止請求の対象となる行為の特定、請 が是正された場合でも、差止請求訴訟で ることから、財政基盤を総合的に強化し求の趣旨及び理由を検討する。そして、 和解又は判決によって不当な行為が行わ ていく手立てがなかなか打てない状況に理事会において、専門委員会から提案されなくなった場合でも、原則として適格 ある。 れる差止請求の内容 ( 対象となる行為、消費者団体は、事業者名も含め差止請求
月刊法律のひろば 2016 VOL69 No. 1 2 December ◆特集◆ 消費者団体訴訟制度のこれから ー消費者団体訴訟制度の導入と課題 / 升田純 4 ー消費者裁判手続特例法の概要 / 消費者庁消費者制度課 12 ー消費者契約法改正の概要 / 消費者庁消費者制度課 21 ー適格消費者団体への期待と課題 / 磯辺浩一 29 ー消費者団体訴訟制度の企業活動への影響と対策 / 松田知丈・増田慧 38 ◆読み切り◆ 平成 28 年版犯罪白書のあらまし / 冨田寛 49 ◆連載◆ 保険判例研究第 37 回一一保険判例研究会 ドアが閉まるまでは、「運行」として、タクシーから降車直後の転倒は「運行に起因 する事故」として人身傷害保険の適用が認められた事例 / 藤野健仁 59 ひろば時論 / 2 ■検察の現場で感じる刑事司法の変化 ■人口減少、イノベーションと刑事政策 ・ひろば法律速報 / 70 ・訟務情報 / 74 ・次号予告 / 69 ・年間主要目次 / 77 ◇◇◇命 弊社新刊図書・雑誌のご案内・・・・・ h 社 p : //gyosei. jp 装丁 /Kaz
証拠調べの方法が書証に限られることうに、約款を使用した契約を締結していするかという問題が議論されてきたが、 に、冫意が必要である ( 特例法菊条 1 項 ) 。 る場合が多い消費者との間で約款を使瑕疵ある製品を客観的に特定できるよう ⑤異議の申立て 5 異議後の訴訟 用している場合、特定適格消費者団体かな場合、その瑕疵の内容によっては、多 簡易確定決定に仮執行宣言が付されてら不当利得による請求を受けるリスクが数性や共通性、支配性といった要件を満ば いる場合 ( 仮執行宣言付届出債権支払命あることには注意する必要がある。すなたすとして、当該瑕疵に由来する損害賠ひ 令 ) は、適法な異議の申立てがあってもわち、約款の有効性が問題となる場合、償請求を受ける可能性がある。集合訴訟律 効力を失わないから ( 特例法鬨条 5 項 ) 、 請求内容は不当利得による請求となるとでは、拡大損害や人身損害は対象外とさ 異議の申立てをする ( 同条 1 項、 2 項 ) ころ ( 特例法 3 条 1 項 2 号 ) 、約款を使れているものの ( 特例法 3 条 2 項 ) 、集 とともに、執行停止の申立てについての用している消費者は多数にのばり、共通合訴訟で当該製品の代金について損害賠 検討も忘れないようにする必要がある。性や支配性といった集団訴訟の訴訟要件償を求め、通常訴訟で人の生命・身体に 異議後の訴訟においては、訴えの変更を満たす可能性が高いからである。した生じた損害など集合訴訟の対象外となっ が制限されたり、反訴が禁止されたりしがって、約款の有効性を問題とする問いている損害賠償を求めることは否定され ていることや ( 特例法条 ) 、拡大損害合わせや請求を受けた場合、事業者としていない。拡大損害や人身損害が発生し などの集合訴訟での請求が認められないてはその有効性を慎重に検討する必要がている事案についても、集合訴訟で訴え 請求を追加することができないといったある。 られる可能性があることに注意が必要で 点を除き、基本的に、通常訴訟と同じで ある。 ある。 メーカー また、メーカーが小売店を通じて消費 メ 1 カ 1 についても、ウエプを通じて者に販売する場合、メーカーは消費者と 消費者と直接契約を締結する場合は、約直接契約を締結しないため、特定適格消 2 事業分野ごとのリスクポイント 款を使用することもあると思われること費者団体から直接集合訴訟の相手方とさ 事業者が集合訴訟を提起された場合のから、サ 1 ビス業と同様に集合訴訟を提れるのは小売店である。もっとも、小売 対応は前記 1 のとおりであるが、各事業起されるおそれについて普段から注視す店が敗訴した場合や和解をした場合、メ 分野ごとに検討する。 る必要がある ーカーは、当該小売店から求償請求を受 メ 1 カ 1 と消費者との消費者問題としける可能性がある。そこで、メ 1 カ 1 と サービス業 て、製品の瑕疵に由来する損害賠償責任しては、小売店と連携し、小売店が特定 サービス業においては、これまでの消の問題も想定される。一部の製品に共通適格消費者団体から事前交渉を受けた場 費者トラブルで問題となった語学学校やする瑕疵に基づいて損害が発生した場合合には、小売店から事実関係や対象債権 結婚式場のキャンセル料に代表されるよ には、瑕疵がある製品をどのように特定の範囲、対象消費者等について迅速に連
者の範囲」が特定されているかどうかが体が知りながら、又は容易に知り得たに な和解方法は現実的には受け入れにくい 問題となり、特定されていない場合に もかかわらず、特段の根拠なくあえて訴との意見もある ( 注。 は、多数性、共通性および支配性の要件えを提起する場合である。 を満たしていない可能性が高い。そこ この点、不当な目的でみだりに訴えの ③ニ段階目の手続 で、まずは、「対象消費者の範囲」が客提起等を行うことを禁止する規定 ( 特例①簡易確定手続開始の申立てから簡易ひ 律 観的に特定されているかを検討すること法条 2 項 ) は、訴訟手続に関する規定確定手続開始決定まで 法 になる ではないことから、事業者としては、禁 一段階目の手続が、特定適格消費者団 実体法に関する主張 止事項に違反する濫訴の提起や訴訟活動体の勝訴や共通義務を認める旨の和解の 一段階目の手続でも、共通義務に関すが行われた場合には、監督官庁である消成立によって終了した場合、特定適格消 る範囲では、事実認定および法適用がな費者庁に対して、是正措置を求めること費者団体の申立てにより、一一段階目の手 されるため、事業者は、一段階目の手続などが考えられる。 続が開始される。 において事実の有無や実体法の解釈を争③一段階目の手続における和解 事業者としては、一段階目の手続の終 うことになる。例えば、消費者との契約 一段階目の手続においても和解は可能了後、二段階目の手続の開始までに、 1 条項が消費者契約法川条に抵触しないこである ( 特例法川条 ) 。一段階目の手続人当たりの支払金額や支払総額の算定を とや、同法 9 条の「平均的な損害」につ における和解は、個々の消費者との間の検討するとともに、簡易確定手続開始の いて主張立証する 金銭支払義務についての和解ではなく、 申立てを避けるため、自主的な被害回復 濫訴に関する主張 共通義務という集合訴訟制度に特有の義の実施も検討することになろう。 特例法では、特定適格消費者団体が不務 ( 訴訟上の概念 ) の存否についての和②消費者を募る手続 当な目的でみだりに訴えの提起等を行、つ解となる。そのため、訴訟上の和解とし簡易確定手続開始決定がされた場合、 ことが禁止されている ( 特例法門条 2 て可能な事項は、通常の訴訟よりも限ら裁判所は、公告をする ( 特例法条 ) 。 項、ガイドライン ( 注 4 ) ) 。具体的には、 れ、柔軟性に欠ける点があることは否定また、簡易確定手続申立団体 ( 特定適格 ①消費者の利益の擁護を図る目的がないできない。和解をするかどうか、どのよ消費者団体 ) は、知れている対象消費者 場合 ( 例えば、自己又は特定の事業者をうな和解をするかについて慎重に検討すに対して個別に通知するとともに、公告 利するために、共通義務確認の訴えを提る必要がある する ( 特例法条、条 ) 。 起する場合 ) 、②当該共通義務確認の訴また、集合訴訟の手続内ではなく、集さらに、事業者も、簡易確定手続申立 えが、却下若しくは棄却されることが明合訴訟外で和解をして、集合訴訟を取り団体 ( 特定適格消費者団体 ) からの求め らかなとき、又はこれが容易に見込まれ下げるという方法の和解も考えられるがあるときは、公表 ( 特例法条 ) およ るときであり、かっ、特定適格消費者団 ( ただし、消費者団体からは、このようび対象消費者に関する情報の開示 ( 特例