特集消費者団体訴訟制度のこれから 消費者団体訴訟制度の企業活動への影響と対策 絡を受け、必要に応じてリコールできる法に基づく損害賠償の請求については対 1 日以降に締結した契約等については返 金対応をし、それより前の契約等につい ようにしておくこと ( 消費者の被害を回象外となっている ( 注 7 ) 。 ては返金対応をしないという方針は取り 復し、金銭請求権を消滅させることにな づらい ( 注四。そのため、消費者への返 る。また、あえて訴訟が提起されれば濫 四結びに代えて 金は、集合訴訟が適用される範囲よりも 訴となることになる。 ) が有益である。 今後、事業者は、差止請求制度と集合広く、平成年川月 1 日より前に締結し 訴訟制度の両方を見据えた対応が求めらた契約等についても検討が必要となる場 金融 金融関係企業についても、約款を使用れることになるが、実務への影響は小さ合が想定される このように、集合訴訟制度は、それ自 するなど多数の消費者を契約の相手方とくない。例えば、適格消費者団体であっ する場合は、集合訴訟を提起され得るこて、特定適格消費者団体にもなっている体は裁判手続の特例という位置づけでは 消費者団体から ( 注 8 ) 、事業者が定めるあるものの、差止請求制度と相まって、 とに注意する必要がある。 また、金融関係企業が集合訴訟で受け解約違約金条項が消費者契約法 9 条の裁判外においても、それなりの影響を与 得る請求としては、不実告知 ( 消費者契「平均的な損害」を超えるとして、そのえることが想定される。集合訴訟制度が 約法 4 条 1 項 1 号 ) や断定的判断の提供使用の差止めを求められた場合、事業者開始して暫くは、特定適格消費者団体の ( 同項 2 号 ) に代表されるような詐欺的としては、当該条項の使用を差止めるべ数も限られ、また、訴訟提起に伴う特定 な勧誘行為による損害賠償請求などが考きか否かに加え、当該条項に基づいて過適格消費者団体の負担などから、実際に えられる。もっとも、このような請求に去に消費者から支払を受けた解約違約金集合訴訟まで発展する件数自体はさほど ついては、事業者と消費者との契約締結のうち「平均的な損害」を超える部分の多くはないと予想されるものの、事業者 としては、こうした集合訴訟を背景にし 時の状況など個別の事情を考慮しなけれ返金をすべきか否かも検討することにな ばならず、共通性や支配性の要件を満たる。こうした場合における消費者への返た事実上の影響も見過ごせない。 すかど、つかが問題となる。 金対応は、集合訴訟制度の開始前から検以上のような影響も踏まえると、事業 事業者としては、特定適格消費者団体討すべき論点ではあったものの、平成者においては、今後、消費者契約法をは からの問い合わせや請求の内容を吟味し年間月 1 日以降に締結した契約等に関しじめとする消費者法に違反しない約款等 て検討する必要がある ては特定適格消費者団体が集合訴訟を提の策定がこれまで以上に重要となるし、 なお、不法行為に基づく損害賠償請求起して請求できるようになり、請求金額約款や勧誘マニュアルなどに関連するトろ ラブルが起きた場合の初動対応の重要性の ( 特例法 3 条 1 項 5 号 ) については、民の増加も予想されることから ( 注 9 ) 、よ 法 もより一層高まることになる。 法上のものに限られ、金融商品取引法、り慎重な検討が求められることになる。 さらに、近年は、などを介して 金融商品販売法および保険業法など特別この点、事業者としては、平成年川月
当該契約を締結する必要性があると誤解ある。」と言われ、ウイルスを駆除するては不利益が生じるおそれ ( 蓋然性 ) を し、本来は必要のない契約を締結してしソフトを購入した事例や、真実に反して想定している ) 。「損害又は危険」には、 まったという消費者被害が生じていた。 「このままだと 2 、 3 年後には必ず肌が消費者が既に保有している利益を失うこ このような被害は、救済する必要があるボロポロになる。」と言われ、化粧品をと ( いわゆる積極的損害 ) のみならず、 ろ 一方で、「消費者契約の目的となるもの」購入した事例等が考えられる。 消費者が利益を得られないこと ( いわゆひ 律 ( 前記被害事例では「新しいタイヤ」が 「重要な利益」とは、法益としての重る消極的損害 ) も含まれる。 法 該当する。 ) に関しない事由についての要性 ( 価値 ) が、一般的・平均的な消費例えば、売却が困難な山林の所有者 不実告知であり、改正前の法の下では「重者を基準として、例示として挙げられてが、測量会社から真実に反して「山林の 要事項」には該当せず取り消すことがでいる「生命、身体、財産」と同程度に認近くに道路ができている。家も建ち始め きないと考えられる。 められるものである。具体的には、名誉・ている。」と告げられた結果、当該山林 そこで、改正法では、不実告知に限りプライバシーの利益等が考えられるとこを売却することができると考え、勧めら 「重要事項」の概念を拡張することとしろであり、生活上の利益についても、電れるまま測量契約と広告掲載契約を締結 ( 法 4 条 5 項柱書きの括弧書により、不話を使用して通話をする等の日常生活にしたという事例では、一般的に山林を売 利益事実の不告知については、同項 3 号おいて欠かせないものであれば、「重要却するためには測量や広告が必要である の適用が排除されている ) 、「重要事項」な利益」に該当すると考えられる。例え ことから、当該山林の売却による利益を の列挙事由として、新たに「当該消費者ば、真実に反して「今使っている黒電話得られないという「損害又は危険」を回 契約の目的となるものが当該消費者の生は使えなくなる。」と言われ、新しい電避するために、測量及び広告掲載が通常 命、身体、財産その他の重要な利益につ話機を購入する旨の契約を締結した事例必要であると判断される。したがって、 いての損害又は危険を回避するために通では、消費者は新しい電話機を購入する「消費者契約の目的となるものが・ : 通常 常必要であると判断される事情」を定め意思表示を取り消すことができると考え必要であると判断される事情」の不実告 られる。 る ( 3 号 ) 等の改正を行っている ( 注 3 ) 。 知に該当するので、消費者は測量契約及 法 4 条 5 項 3 号が定める事情の不実告 また、「生命、身体、財産その他の重び広告掲載契約を締結する意思表示を取 知により意思表示の取消しが認められる要な利益についての『損害又は危険』」り消すことができると考えられる。 事例としては、前述の新しいタイヤを購とは、生命、身体、財産その他の重要な 入させた事例のほか、真実に反して「パ利益が侵害されることによって消費者に ソコンがウイルスに感染しており、情報生じる不利益を意味する ( 「損害」とし がインタ 1 ネット上に流出するおそれがては現に生じる不利益を、「危険とし
事体のの , 大 し、企業の側もより消費者問題を意識す和 係括 理等度等拡が る傾向が強くなったといえる。なお、こ 2 き管艮 制イ象反 入る す等権金強対違 れまでの差止請求件数は、裁判外のもの 購 , す つな る示行徴のの法 一一差止請求制度が事 問等関 を含めると 3 0 0 件を超えている ( 図ば 係俵執蘇行求同 ろ 訪務に 執青 業者に与える影響と ひ ( 義示 割正へ正 てた の 正付表 , 対策 正被改事改正差つれ 事案の類型別に見ると、消費者契約法律 一改交の設 改産月知月改伴さ 年面品創 年に ~ 一カ 年財 6 県 平成年の消費者契約法の 9 条 1 項および同法川条の事案だけで 2 政四書食の 年府年 8 よ 2 こ定追 行成や ( 度 成置道 改正により、一定の消費者団 00 件を超えており、同法 9 条 1 項の「平 平制定制 法規制な 体 ( 適格消費者団体 ) による均的な損害」や、同法川条該当性が多く 引の法的 措化法弘者琺 取為示元 安事政一 k 務示取費釿求差止請求制度が新たに導入さ争われていることが分かる 商行表一 者者行表義 , 表 , 商消。情 れた ( 平成四年 6 月開始 ) 。 消費者契約法 9 条 1 項については、冠 定誘品っ 費費の品の与品設定格鋿止 特勧食か 消肖へ景制付景創特適 ( 差その後、差止請求の対象が拡婚葬祭互助会事業を営む事業者と消費者 ・し案・ 充され、現在では、 4 つの法との間の互助契約や積立契約を中途解約 係消売 、冫契の に取販 ( 量求 律 ( 消費者契約法、不当景品した場合に、払戻金から所定の手数料を 入約誘 加過註明 購契勧 追、止 類及び不当表示防止法、特定差し引く条項を無効とした事案 ( 大阪高 一三ロ 象て差 商取引に関する法律、食品表判平成年 1 月日判時 2187 号 訪過電 , 等の伴が 示法 ) に基づく様々な行為が頁 ) や、大学受験予備校を営む事業者と 正等正正入定求に為 正丿改入改改導制請正行 差止請求の対象とされてい在学契約を締結した消費者 ( 在学生 ) が 改」年導年年の法止改る し例差年な る。また、適格消費者団体の中途解約した場合に一定期間の授業料を 定民成フ成成消特の囲とた 数も、増加しており、平成返還しないという条項を無効とした事案 平オ平平取続体成象れ 法グ法 , 法約手団平対さ 年Ⅱ月川日現在で団体にな がある ( 大分地判平成 % 年 4 月Ⅱ日判時 新引ン約等引契判者法の加 な取リ契入取量裁費約し追 っている。差止請求制度の導 2234 号四頁 ) 。 主商一者導商過者消契消に の定ク費の定の費格者取象 入によって、個々の消費者だ 他方、挙式や披露宴を実施している事 後特る消し特へ消適費約対 けではなく、消費者団体が事業者と消費者との間で締結した挙式披露 設 庁の 効る 業者との間で消費者問題を争宴実施契約を中途解約した場合のキャン 者ル 実す うことができるようになったセル料条項を有効とした事案 ( 大阪高判 レ ル強み ため、これまで表面化しづら平成年 1 月四日 DI ー Law 登載 ) や、携 体更 一を組 ル性仕 実変 かった消費者問題が表面化帯電話の 2 年縛り契約 ( 2 年間の契約期 = = 恥したい。
特集消費者団体訴訟制度のこれから 消費者団体訴訟制度の導入と課題 多数の者のために受訴することができる下。簡易確定手続と異議後の訴訟があ訴訟においても訴訟手続の枠組みを維持 しつつ、総論審理・各論審理に分離する 制度としては、日本の選定当事者だけでる。 ) に分けられる。消費者団体訴訟は、 なく、国際的には多くの国で様々な制度これらの二段階の各手続において、対象等し、必要な範囲で訴訟手続が簡易化さ が設けられている。例えば、米国のクラ債権を通常の訴訟手続によって権利行使れた事例があることは見逃せない。 スアクションが著名な制度として紹介さする場合と比較し、それぞれの特例が定消費者団体訴訟制度を利用することが できる対象債権は、同制度の根幹に関わ れることが多いが、連邦、各州ごとに内められている。一口で言えば、本来は、 容が異なるところがあり、様々な弊害が個々の消費者の権利について訴訟で審る事項であるが、消費者裁判特例法 2 条 5 号、 3 条 1 項、 2 項によると、事業者 指摘されているし、米国以外の諸国にお理、判断されなければならないところ、 消費者契約に関して相当多数の消費者にが消費者に対して負う金銭の支払義務で いては他の内容の制度が設けられてい る。前記内容の消費者団体訴訟制度は、 生じた財産的被害について事業者がこれあって、消費者契約に関する次に掲げる 各国の制度も参照しつつ、消費者契約にらの消費者に対し、これらの消費者に共請求 ( これらに附帯する利息、損害賠償、 関して相当多数の消費者に生じた財産的通する事実上及び法律上の原因に基づき違約金又は費用の請求を含む。 ) である。 被害に限定し、特定適格消費者団体が原金銭の支払義務を負う場合 ( 個々の消費①契約上の債務の履行の請求 告となって集団的な訴訟を提起すること者の事情によりその金銭の支払請求に理②不当利得に係る請求 ができ、原告型、オプト・アウト型、二由がない場合を除く。消費者裁判特例法③契約上の債務の不履行による損害 賠償の請求 段階型の集団訴訟制度として制度設計さ 2 条 4 号 ) に係る、一定の範囲の金銭の れている。なお、選定当事者制度は、原支払請求 ( 同法 3 条 1 項各号 ) について④瑕疵担保責任に基づく損害賠償の 請求 告・被告型、オプト・イン型、一段階型は、第一段階の訴訟によって簡易化する の集団訴訟制度であるが、使い方と工夫とともに、第二段階の簡易確定手続によ⑤不法行為に基づく損害賠償の請求 ( 民法の規定によるものに限る。 ) によっては相当の利便性を発揮することって簡易化するものである。消費者団体 ただし、前記③、④、⑤に係る請 訴訟制度の下での簡易化の範囲、内容 ができる。 求については、次の各損害は対象債 消費者団体訴訟制度において予定されは、その運用の仕方によるところがある 権に含まれないと定められている が、本来の訴訟手続の基本的な枠組みを ている裁判は、前記の二段階型であり、 第一段階における共通義務確認の訴え逸脱するものではない。具体的にどの程⑥契約上の債務の不履行、物品、権 ろ 利その他の消費者契約の目的となるひ ( 消費者裁判特例法 2 条 4 号、 3 条以下 ) 度簡易化されるかは、個々の事案の内 と、第二段階における対象債権の確定手容、運用の仕方等の事情によって異なる もの ( 役務を除く。 ) の瑕疵又は不 法行為により、消費者契約の目的と 7 続 ( 同法 2 条 7 号ないし 9 号、条以が、過去の多数原告に係る損害賠償請求
特集消費者団体訴訟制度のこれから 消費者団体訴訟制度の企業活動への影響と対策 図 1 差止請求の件数と割合 ( 注 1 ) 根拠法令 特商法、 1 3 不当条項規制 8 条 1 項 1 号、 14 8 条 1 項 2 号、 7 8 条 1 項 3 号、 8 条 1 項 4 号、 5 8 条 1 項 5 号、 3 不当勧誘規制 4 条 3 項 2 号、 1 4 条 3 項 1 号、 0 景品表示法、 24 一たよ 間中に中途解約した場合に一定額の違約 三集合訴訟制度が事業者に与 て 金を払う等 ) を有効とした事案 ( 大阪高 っ える影響と対策 わ 判平成年肥月 7 日判時 2176 号芻 変 は 5 平成年肥月に消費者の財産的被害の 頁、平成年 3 月四日判時 2219 号 向 頁、平成年 7 月Ⅱ日 DI ー Law 登載 ) が集団的な回復のための民事の裁判手続の 条後 ある。 特例に関する法律 ( 以下「特例法ーとい 9 の そ う。 ) が成立し、平成年 6 月に消費者 また、消費者契約法川条についても、 る 賃借人がマンションを退去した場合に支の財産的被害の集団的な回復のための民 で払う定額補修分担金条項を無効とした事事の裁判手続の特例に関する規則 ( 以下 純案 ( 大阪高判平成年 3 月日判例集未「最高裁規則、という。 ) が制定され、平 れ 登載 ) があるのに対し、有料老人ホーム成年間月 1 日から集合訴訟制度が始ま 示 を中途解約した場合の入居一時金を返還った。これにより、特定適格消費者団体 、月 が、同日以降に締結された契約等に関し しない合意について、消費者の権利を制 号 3 限し、義務を加重するものでないとしてて、多数の消費者の金銭請求をまとめて 条成 有効とした事案 ( 福岡高判平成年 7 月裁判で請求することが可能となった。差 4 平 日金判 1477 号菊頁 ) があり判断は止請求制度の導入により事業者は消費者 集 問題に対する意識が強くなってはいる 分かれている。 求 適格消費者団体による差止請求がなさが、集合訴訟制度の導入により、今後は 止 れたとしても請求が否定される場合があさらなる対応や、法的な分析・検討が重 差 度 るものの、適格消費者団体がそのような要になってくるものと思われる 訟 以下、集合訴訟の場面ごとに、想定さ ケースで差止請求をするのは、消費者が 訴 体 皀れる事業者の対応を検討するとともに、 当該条項について不満を抱いている可ム月 2 団 0 事業分野ごとのリスクポイントについて 者性が青同いからとい、んよ、つ 消る事業者としては、差止請求を回避する述べる。 庁ら ために、契約内容を法に則ったものにすなお、集合訴訟制度の手続は図 2 のとろ 者え 費考 るだけでなく、その内容を分かりやすいおり 2 段階に分かれているが、共通義務の 表現で記載しておくことは、トラブル防確認に関する手続を「一段階目の手続」、法 典 出 個別の消費者の債権確定手続を「二段階 止の観点から有益といえよう。 一三ロ
当該答申に基づき、消費者庁においてそこで、改正法では、明確な要件をもっ費者にとっての通常の分量等について 法制化作業を行った。改正法案についてて消費者に意思表示の取消しを認める規は、 ①消費者契約の目的となるものの内 は、平成年 3 月 4 日に閣議決定され同定を設けることとした。 容及び②取引条件、並びに、③事業者が 5 日に国会に提出された。衆議院では、消具体的には、消費者は、事業者が消費その締結について勧誘をする際の消費者 ろ 費者問題に関する特別委員会における審者契約の締結について勧誘をするに際の生活の状況及び④これについての当該ひ 議を経て、同年 5 月間日に全会一致で可し、当該消費者契約の目的となるものの消費者の認識を総合的に考慮に入れた上 決された。そして、参議院では、地方・分量等 ( 分量、回数又は期間 ) が当該消で、一般的・平均的な消費者を基準とし 消費者問題に関する特別委員会における費者にとっての通常の分量等を著しく超て、社会通念をもとに規範的に判断され 審議を経て、同月日に全会一致で可決えるものであること ( 以下、このことをる。また、当該消費者契約の目的となる された。その後、平成年 6 月 3 日に公「過量」であるといい、このような消費ものの分量等が、当該消費者にとっての 布された ( 平成年法律第礙号 ) 。 者契約を「過量な内容の消費者契約」と通常の分量等を「著しく超える」か否か いう。 ) を知っていた場合において、そについても、先ほどの① 5 ④の要素を考 の勧誘により当該消費者契約の申込み又慮した上で、一般的・平均的な消費者を 三改正内容の概要 はその承諾の意思表示をしたときは、こ基準として、社会通念をもとに規範的に れを取り消すことができることとしてい 判断される。例えば、一人暮らしで滅多 過量な内容の消費者契約に係る る ( 法 4 条 4 項前段 ) 。また、消費者がに外出しない消費者に対して、何十着の 意思表示の取消権 ( 法 4 条 4 項 ) 既に同種契約 ( 当該消費者契約の目的と着物を販売する事例では、一人暮らしで 高齢化の進展の影響も受け、事業者なるものと同種のものを目的とする消費滅多に出かけない消費者にとっては、せ が、合理的な判断をすることができない者契約 ) ( 注 1 ) を締結していた場合には、 いぜい数着の着物を所持していれば生活 事情がある消費者に対し、その事情につ当該同種契約の目的となるものの分量等をする上で足りるはずであり、何十着と け込んで、不要な物品を大量に購入させと、新たに消費者が締結した消費者契約 いう分量は当該消費者にとっての通常の る等の消費者被害が発生している。このの目的となるものの分量等とを合算した分量等を著しく超えるものと考えられ ような被害の救済について、従来は、公分量等が、当該消費者にとっての通常のる。そして、事業者が、そのことを知り 序良俗 ( 民法 S 条 ) 等の一般的な規定に分量等を著しく超えるものであることが ながら勧誘をして販売したのであれば、 委ねられていたところ、これらの規定は要件となる ( 同項後段 ) 。 取消しが認められると考えられる。 要件が抽象的であり、消費者にとって適そして、過量な内容の消費者契約に当他方で、例えば、アイドルとの握手券 用関係が必ずしも明らかではなかった。 たるか否かを判断するに際し、「当該消 が付いた OQ を大量に購入したという事
特集消費者団体訴訟制度のこれから 消費者契約法改正の概要 例では、仮に事業者による勧誘がなされ状況のほか、たまたま友人や親戚が家にでは過量なものであったとしても、事業 た事例であったとしても、そのを発遊びに来るとか、お世話になった近所の者がそれを知りながら勧誘をしたわけで 売したアイドルのファンである消費者が知人にお礼の品を配る目的がある等の一はないから、取消しは認められないと考 えられる。 購入するような場合には、握手券が付い時的な生活の状況も含まれる。 ているという商品の内容や、そのアイド④消費者の認識は、例えば、普段は一 ルのファンであるという消費者の生活の人暮らしで他人が家に来ることはない消 2 不実告知における「重要事項」 状況を考慮すれば、過量な内容の消費者費者が、翌日友人が川人自宅に遊びに来 ( 法 4 条 5 項 ) 契約には当たらないと判断されることもる予定があるという認識の下で、それに 多いと考えられる。 見合った分量の食材を購入したが、実際法は、「重要事項」について不実告知 なお、前記① 5 ④の要素については次に友人が遊びに来るのは 1 か月後であっ ( 法 4 条 1 項 1 号 ) 又は不利益事実の不 のように考えられる。 たという場合、当該消費者には、友人が告知 ( 同条 2 項 ) があった場合には、消 ①消費者契約の目的となるものの内容川人自宅に遊びに来るという一時的な生費者は意思表示を取り消すことができる として、例えば、生鮮食品のようにすぐ活の状況が翌日のものであるという認識旨を定めている。この「重要事項ーの列 に消費しないと無価値になってしま、つも があったのであるから、これを考慮に入挙事由として、改正前の法は、「物品、 の、布団のように一人の消費者が通常必れた上で、当該消費者にとっての通常の権利、役務その他の当該消費者契約の目 的となるもの [ の「質、用途その他の内 要とする量が限られているものである場分量等が判断される 合等には、当該消費者にとっての通常の 当該消費者契約が過量な内容の消費者容」 ( 改正前の法 4 条 4 項 1 号 ) 及び「対 分量等が少なくなるため、結果的に過量契約に該当した場合であっても、事業者価その他の取引条件 , ( 同項 2 号 ) を定 性が認められやすい。 がその勧誘をするに際して、当該消費者めていた。 ところが、真実に反して「溝が大きく ②取引条件として、例えば、通常は、 契約が過量な内容の消費者契約に該当す すり減ってこのまま走ると危ない、タイ 一つ 100 円の物品と比較すれば一つ川 ることを「知っていた」 ( 注 2 ) ことが、 万円の物品の方が、当該消費者にとって本項の規定が適用されるための要件となャ交換が必要である。」と告げて新しい タイヤを購入させたという被害事例のよ の通常の分量等は少なくなり、過量性はる。したがって、例えば、スー 認められやすい。 ケットに来た一人暮らしの消費者が、大うに、事業者が消費者に対して、その消タ ③消費者の生活の状況には、当該消費量の商品を自らレジに持参し、店員とは費者が消費者契約を締結する必要性を基の 者の世帯構成人数、職業、交友関係、趣特に話をすることなくそれらを買って行礎付ける事実について不実を告げた結法 味・嗜好、消費性向等の日常的な生活のった場合には、仮に当該消費者との関係果、当該消費者が当該事実の誤認によりお
特集消費者団体訴訟制度のこれから 消費者契約法改正の概要 た適切な措置を講じる必要性があった。 消費者契約法改正の概要 平成年 8 月に内閣総理大臣から消費 者委員会に対し、法の規律の在り方につ いて検討を行うように諮問がなされたこ とを受け、消費者契約法専門調査会 ( 以 消費者庁消費者制度課下、「専門調査会」という。 ) が同年川月 に設置された。また、同月には消費者庁 一部を改正する法律」 ( 平成年法律第が「消費者契約法の運用状況に関する検 一はじめに 礙号。以下、「改正法」といい、特段の討会報告書 , を公表している。 消費者契約法 ( 平成年法律第礙号。指摘をしない限り改正後の消費者契約法その後、法施行後の社会経済情勢の変 化、裁判例等の傾向、民法等との関係と 以下、「法ーという。 ) は、消費者と事業も単に「法」という。 ) の内容及び改正 いった視点を踏まえ、同年Ⅱ月から平成 者との間の「情報の質及び量並びに交渉の経緯等について解説する。 年 8 月まで専門調査会において審議を 力の格差」を前提とし、消費者の利益擁 護を図ることを目的として制定された法 行い、検討の状況について一旦整理し、 ニ改正の背景及び経緯 今後の検討の方向性を示すために、「中 律である。そして、法は、消費者と事業 間取りまとめ」を公表した。公表後、平 者との間で締結される契約 ( 消費者契近年の社会経済情勢の変化等により、 約 ) に関して、民法の特則となる民事ル情報通信技術の発達やインタ 1 ネット取成年 9 月に消費者委員会において中間 1 ル及び内閣総理大臣の認定を受けた適引の普及による情報収集の容易化や、生取りまとめに関する集中的な意見受付を 格消費者団体が当該民事ルールに反する活支援サービスの提供といった消費者の実施し、同年川月から再開した専門調査 会の審議の中で関係団体からのヒアリン 勧誘行為の差止めを行うことができるこ利便に資するような側面もあるものの、 となどを定めている。当該民事ルールに 高齢者の消費者被害は増加し、一人暮らグを実施した。これらの結果を踏まえ、 関する規定については、今回の改正におしの高齢者に対して過量な商品等を店舗さらに、同年月日開催の第回専門 いて、近年の高齢化の進展を始めとしたで購入させる等、改正前の法では十分な調査会まで審議が重ねられた。そして、 社会経済状況の変化に適切に対応するこ被害救済を図ることが難しい消費者被害取りまとめられた専門調査会の報告書の引 と等を目的として、平成年 4 月 1 日のも生じていた。また、平成年に法が施内容を踏まえ、平成年 1 月 7 日に諮問の 法施行以来、初めての本格的な見直しが 行されてから、裁判例や消費生活相談事に対する答申が消費者委員会よりなされ法 行われた。本稿では、「消費者契約法の例が蓄積しており、その傾向等を踏まえたところである。 2 0
特集消費者団体訴訟制度のこれから 消費者団体訴訟制度の企業活動への影響と対策 〇消費者に対する金銭支払 ( 例え〇課徴金の支払 ( 景品表示法の不当 表 1 民事ルー丿レと行政ルールの枠組みの違い 民事ルール 消費者保護消費者と事業者との間の権利義務を規律する 行政ルール 消費者保護のためのルールに違反する事業者が の仕組み ルールの本 来的な実行 ルールの実 効性を強化 具体例 例えば、契約の取消権やクーリング・オフといいれば、行政処分等によって取り締まる った形で消費者に一定の権利を付与したり、消 費者に不利な契約条項を無効とするといった形 で消費者が過大な義務を負わされないようにし たりする。 ( 安全関係 ) PL 法等 ( 取引関係 ) 消費者契約法 権など ) 等 個々の消費者による権利行使 ( 裁判外での主張や裁判 ) 〇少額訴訟や ADR 制度 十 する仕組み〇消費者団体訴訟制度 ( 安全関係 ) PSE 法 消費生活用製品安全法等 ( 取引関係 ) 特定商取引法 ( クーリング・オフや中途解約景品表示法 ・適格消費者団体による差止請求 ・特定適格消費者団体による集合訴訟 特定商取引法 ( 書面交付義務や再勧誘の禁止 など ) 等 行政による執行 ( 行政指導や行政処分 ) 〇新たな行政処分の創設 ( 例えば、景品表示法 における課徴金制度、特定商取引法における 業務禁止命令制度の創設 ) 〇処分権限の拡張 ( 景品表示法の措置命令権限 等を都道府県知事にも付与 ) 〇新たな調査権限の付与 十 〇消費者団体訴訟制度 ・適格消費者団体による差止請求 ( 注 ) 表 2 民事ルールや行政ルールの他に、刑罰ルールによる規制もある ( 不正競争防止法など ) 。 消費者法に違反した場合に事業者が受ける影響 金銭的な負担 民事ルール ば、受領代金の返金や損害賠償等 の支払など ) 〇上記に伴う付随的な費用 ( 例え ば、消費者への通知費用など、多 数の消費者に対応するための費用 など ) 行政ルール 表示をした場合 ) 〇行政処分に応じるために必要とな る費用 ( 例えば、景品表示法の措 置命令を受け、新聞に社告を出す 場合における費用など ) 〇その他対応費用 ( 例えば、製品回収費用やパッケージの変更費用など ) レピュテーションへの影響 ( それ事業活動への影響が大きいものは、行政処分等を受けたことが報道等さ に伴う売上減等の影響 ) 39 ・法律のひろば 2016.12 レピュテーションに影響する ( 例えれたり、消費者庁のウェブサイト等 ば、他の商品等へ波及する場合や、で公表されたりすることによって、 悪質な場合、請求を受けた金額が高レピュテーションに影響する 額な場合など。差止請求訴訟や集合 訴訟は、報道等されやすい。 )
特集消費者団体訴訟制度のこれから 消費者契約法改正の概要 図消費者契約法の一部を改正する法律 ( 平成 28 年法律第 6 ] 号 ) 消費者と事業者との間の情報・交渉力の格差に鑑み、契約の取消しと契約条項の無効等を規定 2 . 契約条項の無効 1 . 契約の取消し く現行規定 > く現行規定 > 消費者の利益を不当に害する条項は、無効 事業者の以下の行為により契約を締結した場合、消費 ①事業者の損害賠償責任を免除する条項 者は取消しが可能 ①不実告知 ( 重要事項 [ = 契約の目的物に関する事項 ] が対象 ) ②消費者の支払う損害賠償額の予定条項 ③消費者の利益を一方的に害する条項 ( 「一般条項」 ) ②断定的判断の提供 ③不利益事実の不告知 【 10 条】①民法、商法等の任意規定の適用による場 ④不退去 / 退去妨害 合と比べ消費者の権利を制限する条項であって、 ②信義則に反して消費者の利益を害するものは無効 く課題 > く改正内容 > く課題 > 高齢者の判断能力の 業者の債務 消費者の解除権を一切、 低下等につけ込んで、 不履行等の場合 認めない条項の存在 大量に商品を購入さ でも、消費者の ( →欠陥製品であっても せる被害事案 解除権を放棄 残金を支払い続ける ) させる条項 ( 例 : 「いかなる場合で ( 無効とする条項 契約の目的物に関し も解除できません」 ) ない事項についての 不実告知による被害 法 10 条の①は明文の規 事案 ( 例 : 床下にシロア 定だけではなく、一般 例示を追加 リがおり、家が倒壊 ) 的な法理等も含むとす る最高裁の判決 取消権の行使期間を ( ※ ) 消費者の不作為をもって意思 経過した被害事案 表示をしたものとみなす条項 〇このほか、「民法の規定による」という文言を削除 〇このほか、取消しの効果についても規定 0 施行期日は、公布日から起算して 1 年を経過した日 ( 平成 0 このほか、消費者団体訴訟制度 ( 差止請求 ) に関する規定が 29 年 6 月 3 日 ) 置かれている く改正内容 > 過量な内容の 契約の取消し 新たな取消事由 重要事項の 範囲の拡大 使期間の伸長 ( 短期を 6 か月→ 年伸 0 任意規定には、法律の明文の規定のみな らず一般的な法理等も含まれると解され ているが ( 賃貸借契約の更新料条項の有 効性に関する最判平成年 7 月新日民集 頁 ) 、この点は改正前 6 巻 5 号 2 2 6 9 の法川条の文言上必ずしも明らかではな かった。そこで、最高裁判例の趣旨を明 らかにするとともに、紛争を予防する等 の観点から、第一要件に該当する条項の 例として、「消費者の不作為をもって当 該消費者が新たな消費者契約の申込み又 はその承諾の意思表示をしたものとみな す条項」を挙げることとした。この条項 に該当するものとしては、例えば、①通 信販売で掃除機 1 台を購入したところ、 当該掃除機が届けられた際に健康食品の サンプルが同封されており、当該掃除機 の購入契約には、継続購入が不要である 旨の電話を消費者がしない限り、今後、 当該健康食品を 1 か月に 1 回の頻度で継 続的に購入する契約を締結したものとみ CV なす旨の条項が含まれていた場合におけ ( 0 0 2 る当該条項や、②一定の期間が定められ 、ま ている雑誌の定期購読契約において、当引 該期間が終了しても連絡がない限り、当の 該契約は更新されるという条項が考えら法 れる。もっとも、この条項は、あくまで