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検索対象: 法律のひろば 2016年2月号
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1. 法律のひろば 2016年2月号

理性を問うことで、比較対象となる無期の動向が注目される。 2 均衡処遇の推進 もっとも、派遣労働関係においては、 雇用労働者やフルタイム労働者の処遇も 一方、いわゆる正社員と非正社員との含めて、人事管理全体の見直しを促すも主として派遣先で直接雇用される同種の 労働者との均衡処遇の要否が問題となっ 労働条件面での格差問題を背景に、有期のとなっている。 ろ トタイム 雇用と無期雇用、あるいはパ 1 ているところ、これは、同一使用者の下の での ( 比較対象者の処遇も含めた人事管法 労働者とフルタイム労働者との間での労 五労働者派遣法制の近未来 理全体の見直しを促す ) 処遇の均衡をめ 働条件の均衡化が目指されている。 ぐる問題とは次元を異にしている。私見 まず有期雇用について、無期雇用の労以上要するに、非典型雇用をめぐる近 働者の労働条件と相違する場合に、当該年の立法政策は、①雇用形態間での処遇では、派遣労働関係において派遣先の直 労働条件の相違は、労働者の業務の内容格差の問題については、同一使用者の下用労働者との均衡処遇を法で強制してい くことは、職務べースでの処遇を中核と 及び当該業務に伴う責任の程度 ( 職務のでの「不合理な相違」を縮小すること、 内容 ) 、当該職務の内容及び配置の変更②雇用保障については、有期雇用の利用しない労働条件の決定システムとの抵触 がきわめて大きく、かっ、規制を導入す の範囲その他の事情を考慮して、不合理をただちに制限するのではなく、ただ、 それが反覆継続することによる濫用的なる規範的な正統性も乏しい ( 注。こう と認められるものであってはならない 利用を、いわゆる出口規制で制限するこした均衡処遇義務を準則として定める余 ( 労契法跚条 ) 。 同様に、ヾ ートタイム労働者と「当該とを基底としている。こうした中で、今地があるとしても、諸外国の規制例から 事業所に雇用される通常の労働者」との後、労働者派遣制度にはどのような役割も明らかなように、きわめて広範な例外 を認めざるを得す、当面は、こうした規 労働条件が相違する場合に、当該待遇のが期待されるのであろうか。 制を基軸に労働者派遣法制を再構築する 相違は、当該パ ートタイム労働者及び通 ことが適切とは思われない。 常の労働者の業務の内容及び当該業務に 均衡処遇 伴う責任の程度 ( 職務の内容 ) 、当該職 務の内容及び配置の変更の範囲その他の派遣労働者に対する処遇の均衡をめぐ 2 雇用保障と直用化問題 事情を考慮して、不合理と認められるもっては、派遣法の改正とあわせて、「労 一方、雇用保障をめぐり、前述の有期 1 トタイム労働者の職務に応じた待遇の確保等のため のであってはならない ( パ の施策の推進に関する法律」も成立して雇用に関する諸規制は、派遣元に対して 働法 8 条 ) 。 いる。同法の下、派遣労働者も含め、雇もそのまま適用される。この点、派遣法 これらの規制は、同一使用者の下で雇 用形態が異なることによる処遇格差があ用形態が多様化する中での処遇の均衡をでの期間制限の在り方や常用代替防止目 る場合に、格差を所与としつつもその合めぐる問題の検討が始まりつつあり、そ的が大きく変質した中では、ー伊予銀

2. 法律のひろば 2016年2月号

数存在している。 って、派遣労働者の就業実態や労働市場遣元事業主にとっては派遣先が顧客であ の状況を勘案し、派遣労働者の賃金水準り、派遣先の意向に従わざるを得ないの ①教育訓練への配慮 ( 法鬨条 2 項 ) が、派遣先で同種の業務に従事する労働が通常であり、この点からも実効性は疑 派遣先は、派遣労働者と同種の業務に 者の賃金水準と均衡の図られたものとな 問である。 ろ ひ 従事する直接雇用の労働者に対して実施 るよう努めなければならない。 の 律 している教育訓練については、派遣元事 法 2 均衡待遇の配慮義務等と派遣先 業主からの求めに応じて、派遣労働者に 努力義務は、いわば努力すれば足り の団交応諾義務 対しても実施するよう配慮する義務を負て、その結果や対策を行うかどうかは関 係がない。したがって、行政取締りにお実効性が乏しいとはいえ、均衡待遇に ②福利厚生施設の利用の機会への配慮 いては努力しているとさえいえば取締対関して、法的な配慮義務などが定められ ( 法鬨条 3 項 ) 象にはならない。他方で、配慮義務は、 たことは重要である。派遣労働者を組織 派遣先は、その直接雇用労働者に与え単に努力しただけでは足りず、何らかのする労働組合が、派遣先にこの均等待遇 る給食施設、休憩室及び更衣室について措置や対応が求められており、何らかのの配慮義務に関して団体交渉を申し入れ は、派遣労働者に対しても利用の機会を措置や対応がない場合には、行政取締りた場合、使用者が団交応諾義務を負うか 与えるよう配慮する義務を負う。従前は の対象となると言われている。その意味否かという問題に新たな法的根拠を提供 努力義務であったものが配慮義務に格上 では、配慮義務のほうが努力義務より重することになろう。 、 0 げされた。 派遣先の団交応諾義務については、最 ③賃金決定に必要な措置の配慮 ( 法鬨 前記②の福利厚生施設の利用の機会へ 高裁平成 7 年 2 月日判決 ( 朝日放送事 条 5 項 ) の配慮は重要な事項であるが、例えば、 件 ) の法理で判断されており、下級審及 派遣先は、派遣元事業主の求めに応じ福利厚生施設の定員が少ないために、派び労働委員会もこの判例に従っている て、派遣労働者と同種の業務に従事する 遣先の労働者と同じ扱いができない場合中労委は、ショーワ不当労働行為再審査 労働者及び一般の労働者の賃金水準など は、同じ扱いをすることまでは求められ事件において「派遣先事業主は、派遣労 に関する情報を提供するよう配慮する義ていないとされる。しかし、同じ扱いで働者の所属する組合との関係では原則と 務を負う。これも従前は努力義務であっ なくとも、時間帯をずらすなどの何らかして労組法 7 条の使用者に該当しない たものを配慮義務としたものである の配慮をすべき義務は免れないと思われが、例えば、労働者派遣法の枠組み又は ④派遣料金の額の決定に関する努力義る。 労働者派遣契約で定められた基本的事項 務 ( 派遣先指針第 2 の 9 ② ) なお、前記均衡待遇は、「派遣元事業を逸脱して労働者派遣が行われている場 派遣先は、派遣料金の額の決定に当た 主の求めに応じて」とされているが、派合や、労働者派遣法上、派遣先事業主に

3. 法律のひろば 2016年2月号

金の支給を受け、又は支給を受けること害が瞋補されたと評価すべき時はいっかた使用者あるいは第三者に対して民法上 が確定したときは、制度の予定するとこという点である。最高裁大法廷は、判示の損害賠償を請求できる ( 最判昭和年 ろと異なってその支給が著しく遅滞する事項 1 について、逸失利益等の消極損害 6 月 4 日民集巻 5 号 716 頁 ) 。そう などの特段の事情のない限り、その瞋補の元本であること、判示事項 2 につい すると、労災保険給付がなされた場合に ろ の対象となる損害は不法行為の時に瞋補て、特段の事情のない限り、不法行為の民法上の損害賠償債務が減縮するのかがの 律 されたものと法的に評価して損益相殺的時に瞋補されたと法的に評価することを 問題となるが、この点について、当初は、 法 使用者行為災害と第三者 ( 注 4 ) 行為災害 な調整をすることが公の見地からみて判示した。 相当であるというべきてある ( 最判平成 これら 2 点の判断は、既に平成年判に分けて考えられてきた。第三者行為災 年 9 月日等参照 ) 。」 決で述べられたことであるが、平成年害については、労災保険法条の 4 第 1 「以上説示するところに従い、所論引用判決は後遺障害事案であったため、死亡項に、損害賠償より先に政府が労災保険 の当裁判所第二小法廷平成間年月日事案には射程が及ばないとも考えられ給付をした場合には、政府が受給者の第 判決は、上記判断と抵触する限度におい た。さらに、平成年判決以前の平成新三者に対する損害賠償請求権を取得する て、これを変更すべきである。」 年判決は死亡事案であるが、平成年判 ことを規定するため、これを根拠に、労 決と異なる判断を示していたため、平成災保険給付がなされると被害者の第三者 年判決が示された時点では事案によっ に対する損害賠償請求権は減縮すると解 て異なる判断がなされたと考えられるもされていた。もっとも、この法的根拠に 冖三研究 のの、その判断を異にすることの妥当性ついては、損益相殺と解する見解と、代 に疑問も持たれていた。本大法廷判決は位によるものと解する見解に分かれてい 本判決の意義 平成年判決の変更を明示しており、二た ( 注 5 ) 。一方、使用者行為災害の場合 本判決は一一つの判示事項からなる。判っの最高裁判決による実務の困惑に終止には、政府が労災保険給付を行っても、 示事項の一つ目は、不法行為により死亡符を打つものであるといえる。 政府が受給権者に代位する前提を欠くた した被害者の損害賠償請求権を取得した め、代位によって損害賠償請求権が減縮 するとの説明はできない。そこで、労災 相続人が労災保険法に基づく遺族補償年 2 これまでの議論と判例 金の支給を受けるなどした場合に、この 保険が担保する使用者の災害補償責任に 遺族補償年金との間で損益相殺的な調整 労働者が、業務上の災害により負傷関する労働基準法条を類推適用し、使 を行うべき損害とはどの損害かというした場合、被災した労働者は労災保険法用者は同一の事由については、その価格 点、判示事項の二つ目は、判示事項 1 のに基づく保険給付を受けることができるの限度において民法上の損害賠償責任を 損益相殺的な調整をするに当たって、損 が、これとは別に災害の原因をもたらし免れると解された。 1

4. 法律のひろば 2016年2月号

特集派遣法改正一労働者・企業への影響と今後の展望 判例から見る派遣契約の論点 に把握し、必要があれば、派遣元又は派遣したことについて、派遣会社の使用者責遣労働者の横領行為について派遣会社が 民法 715 条の責任を負、つということに 先会社の産業医等の診察を受けさせるな任 ( 民法 715 条 ) を認めたものとして、 どした上で、自身の体調管理が適切に東京地裁平成 8 年 6 月日判決 ( 判時 1 なる、ということを前提に判断している ように解される。しかしながら派遣労働 601 号 125 頁 ) がある 行われるよう配慮し、指導すべき義務が 判決は派遣会社の責任について、「被者に対する日々の業務の方法、その遂行 あったというべきである。それにもかか しす告甲野 ( 派遣社員 ) の本件現金取扱い業に関する業務指示、労働時間管理などは わらず、派遣元及び派遣先会社は、 : れもに対して通院先の病院や診断名や務が本件契約に基づく業務内容であるこ全て派遣先にあり、仮に業務中、派遣社 処方薬等について何も把握していないのと、同人は、被告会社 ( 派遣元 ) に雇用員が第三者に損害を与えたときは派遣先 であって、従業員であるに対する安全されて原告へ派遣され、同会社から給与が使用者責任を取るのであって、なぜ派 配慮義務を尽くしていなかった」とした。の支払いを受けていたこと、同会社の派遣先自身が損害を受けた場合には派遣元 体調不良の従業員に対して、ここまで遣担当の < が定期的に原告 ( 派遣先 ) をに使用者責任が生じるかは明確ではな い。そもそも、このような横領行為を防 具体的に配慮し指導することを求められ訪れ、被告甲野の仕事ぶりを見て監督し ると、個人情報保護やプライバシー侵害ていたこと、実質的な派遣料 ( 派遣料か止できたのは日常の業務に対する指揮命 ら同人への給与を控除した額で給与の約令権を有している派遣先だけであって、 についての現状の動きからみて、会社に は酷な気がする。メンタルヘルスに関し半額にも及ぶ ) は被告会社による派遣労派遣元がこれを防止することは事実上 て、厚労省は前記指針のほか、「心の健働者の指導監督の対価の意味もあると考理なことである。派遣先の注意義務違反 康問題により休業した労働者の職場復帰えられること、同会社は、原告から被告は、過失相殺ですむものではないと考え 支援の手引き , なども出しており、これ甲野の住民票の提出の要請があったのにられる。それゆえ、本件のような場合に らに記載されている内容は、うつ病の発拒んだこと、本件契約第 7 条で損害補償民法 715 条を適用するのは問題が残る 症に業務が全く関与していない労働者にを規定すること等からすると、同人の本のである。 対しても措置しなければならないもので件領得行為は、本件契約に基づく派遣業判決文にあるように、本件においては あり、これらを根拠に安全配慮義務を課務としての被告会社の職務の執行に付き派遣契約 7 条で損害補償の規定があるの であるから、契約責任として構成すれば されることは、使用者の責任がかなり重なされたものと解される」とした。 すむのではなかったかと思われる。そう いものになっているといえるだろう この判決は、労働者派遣の構造につい いうことからも、特に現金を取り扱わせ て、派遣労働者と派遣会社の関係を、派 ろ 遣労働者が契約上労務を提供する相手はる業務の場合には、派遣元、派遣先の責 ひ 五派遣社員の派遣先における 派遣会社であり、派遣会社と派遣先の派任範囲を、契約書において明確にしてお 法 横領 くことが肝要である。 遣契約に基づいてただ労務指揮権が派遣 派遣社員が派遣先の会社の金員を横領先に委譲されているのだと考えれば、派 ( きょた・ふじお / はやかわ・りようた )

5. 法律のひろば 2016年2月号

ニ常用代替防止の事実上の見 労働者側から見た 直し 労働者派遣法の改正 本来、使用者は、労働者を直接雇用し、 ろ 労働法上の使用者責任を負うのが原則での 東京法律事務所弁護士水口洋介ある。労働法は、中間搾取を禁止 ( 労基法 法 6 条 ) し、労働者供給事業を禁止 ( 職 契約申込みみなし制度」が平成年川月業安定法条 ) している。これは使用者 一改正の経緯 1 日から施行されることとなっていたこと労働者との間に第三者が介入して利益 平成年 9 月Ⅱ日、労働者派遣法の改とがある。つまり、平成年改正法の下を得ることを禁じて、直接雇用の原則を 正案が成立し、同月日に公布されて、 での派遣期間規制では、派遣労働者の担採用するものである。労働者派遣は、こ 同月日から施行された ( 平成年改正当業務が業務に該当しないと認定されの直接雇用の例外を設けるものである。 法 ) 。 れば、期間制限違反となり、派遣先は派そのため、労働者派遣法制定時、「新規 平成年改正法の骨子は、次の 4 点で遣労働者を直接雇用することとなってし学卒者を常用雇用として雇い入れ、企業 ある。①労働者派遣事業の許可制 ( 猶予まう。それを回避するために、平成年内でキャリア形成を図りつつ、昇進、昇 措置あり ) 、②労働者派遣の期間制限の改正法は、従来の業務を廃止して、期格させるという我が国の雇用慣行との調 見直し ( 業務の廃止、有期雇用派遣労間制限を個人単位及び事業所単位でそれ和を図る必要」があるとの考え方が出さ 働者の個人単位及び事業所単位の期間制ぞれ 3 年に単純化したものである。 れ ( 昭和年Ⅱ月日、中央職業安定審 限 ) 、③派遣労働者の雇用安定化措置等労働者側にとっては、平成年改正法議会労働者派遣事業等小委員会報告 ( 派遣終了後の雇用継続努力義務化、キにより、派遣労働者の派遣先への直接雇書 ) 、この考え方に基づき、「派遣先の常 ャリアアップ措置 ) 、④派遣労働者の均用化の道筋がついたはずが、それを大き用労働者が派遣労働者に代替される」こ 衡待遇推進である。 く後退させた法律となった。 とを防止する ( 常用代替防止 ) ことが労 平成年改正法は期間制限の見直しな 以下、労働者側から見て、平成年改働者派遣法の原則の一つとなった。個々 ど大幅な改正を含む内容であるが、 9 月正法の問題点や実務的な対応について論の派遣労働者にとっては期間制限が課さ Ⅱ日に成立し、そのわずか 3 週間足らずじることとする。 れるが、労働者全体にとっては直接雇 後の 9 月日に施行されることとなった 用・常用雇用の受け皿が維持されて、派 背景には、平成年に成立した派遣法改 遣労働者も、常用雇用の道が広がるとい 正 ( 平成年改正法 ) で成立した「労働 う考え方がとられていた。

6. 法律のひろば 2016年2月号

読 り み に関する機関その他の者との緊密な連携法務省と厚生労働省が関係機関の間で共官等の調整で一 " 旦精神科病院に任意入院 ( € を確保し」なければならず ( 更生法簡条有すべきガイドラインを策定し、全国のすることとなった。しかし、退院後は自 の 2 ) 、指導監督として「規制薬物等に保護観察所、矯正施設、自治体、関係法己判断で通院しなくなり、 2 階の自室か 対する依存の改善に資する医療を受ける人等に発出したところである。ただし、 ら外に向けて物を投げたり、夜中に暴れ ろ て大声を出すなどの近隣に対する迷惑行ひ よう、必要な指示その他の措置」や「公薬物依存症に対する地域医療の体制は極 共の衛生福祉に関する機関その他の適当めて脆弱であり、身近で医療や依存から為を繰り返し、器物損壊容疑で逮捕さ な者が行う規制薬物等に対する依存を改の回復支援プログラムを受けられるよ、つれ、執行猶予が取り消された。 善するための専門的な援助であって法務な地域医療等支援体制の整備が喫緊の課 大臣が定める基準に適合するものを受け題となっている。 その他、家族は対象者の社会復帰に大 るよう、必要な指示その他の措置」をと なお、前記の医療等受診に向けた指示きな影響を与えるが、対象者の薬物依存 ることができることとされている ( 更生は、単にその指示に従わなかったことの によって疲弊し家族自身が支援を要する 法条の 3 第 1 項 ) 。そのためには「対みで執行猶予を取り消すことはできず厳場合もあるし、家族に薬物使用について 象者の心身の状況を的確に把握」する必密な意味での受診論令ではないことかの正しい理解がなければかえ 0 て対象者 要があることから、保護観察所の長は「病ら、事例 9 のように精神科受診が必要の使用を助長する場合もある。そこで、 院、公共の衛生福祉に関する機関その他であるにも関わらず本人にその意欲がな薬物使用に関する知識と対象者に対する の者に対し病状、治療状況その他の必要いような場合には、有効な保護観察を実正しい働きかけについて家族が学ぶ機会 な情報の提供を求める」ことともされた施することは困難である。 として、精神保健福祉センタ 1 等のプロ グラムを活用するとともに、保護観察所 ( 更生法条の 4 ) 。これらに基づき、社 会復帰のため医療等が必要な者には病院【事例 9 【依存症と精神疾患のため入院 においても家族会、引受人会といった取 や都道府県及び政令指定都市に置かれて治療を優先すべきケース】 組を充実させていく必要がある。また、 窃盗と毒物及び劇物取締法違反により いる精神保健福祉センタ 1 への受診等へ 適当な居住環境が得られない者に対して の動機付けを高めたり、ダルク (DARC 】 4 号観察となった男性は、保護観察開始 ~ は、薬物依存からの回復のために専門的 Drug Addiction Rehabilitation Center 薬当初から、有機溶剤への依存症と精神疾な支援を行、つスタッフを配置した薬物処 物依存症リハビリ施設 ) 等の回復支援施一患の影響で、ろれつが回らず意味不明な遇重点実施更生保護施設を活用すること 設と連携してミ 1 ティング等への参加を , 言動が多く、保護観察官等の質問にも答となるが、今後その拡充を図っていく必 促すなどの働きかけを強化し、これら病一えることができない状態であった。ラッ要がある。 院等と定期的に協議を行うなどして処遇一カー吸引により警察で保護され、保護観 なお、保護観察付一部執行猶予の場 の充実を図る必要がある。これらの機関 ~ 察官においても厳重に指導したが、精神合、その裁量による取消しは、「保護観 等との連携については、平成年Ⅱ月、 症状が顕著であったことから、保護観察 ~ →察に付された者が遵守すべき事項を遵守

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保護観察の実情と対象者像の検討 単独での出頭には不安があり、親族家族の正しい理解と協力の獲得などの多を実施することが困難である。また、過 が車で送迎してプログラムを実施した 様なアプロ 1 チを統合して実施すること去の保護観察中にプログラムを受講した が、プログラムで必要となる最低限度の が求められる。 が受講態度が不真面目であってその事情 コミュニケ 1 ションができないまま修了 薬物法ではこれらの点が考慮され、更の改善が認められない場合なども、保護 となり、数か月後、同種再犯により執行 ~ 生保護法にも保護観察の実施方法等につ観察によりその改善を図ることが難しい 猶予は取り消された。 いて特則が設けられている。第一に、薬と考えられる。 物法により刑の一部の執行猶予が言い渡 された場合は、原則として専門的処遇プニ事例 8 】覚せい剤後遺症の精神疾患の 三保護観察付一部執行猶予者 ログラムの受講が特別遵守事項で義務づ ためプログラムを実施できないケース】 ( 薬物事犯者 ) に対する処、 歳代から覚せい剤の自己使用を続け けられる ( 更生法条の 2 第 1 項 ) 。刑 の一部の執行猶予では、まずは実刑部分 ) 依存の症状が悪化していた男性は、所属 薬物法によって刑の一部の執行猶予がが執行され、刑務所において薬物依存離。していた暴力団組織からも除名されアル バイト生活をする中で、歳代後半にな 言い渡された場合には必ず保護観察が付脱指導等が行われている場合には、保護 り覚せい剤自己使用で 4 号観察となっ されることや、刑の一部の執行猶予の対観察所は、これらの情報を適切に引き継 象の中心は薬物事犯者になると思われるぐなどして、より効果的なプログラムを た。覚せい剤事犯者処遇プログラムを開 ことから、ここでは薬物事犯者の保護観実施することが求められる。そして、保始したが、当初から幻聴や妄想が顕著に 認められる状態であり、実父とも連携し 察処遇を想定してその内容を概説した護観察が始まると、当初は 5 課程からな 、 0 るコアプログラムを実施し、併せて簡易精神科通院を調整したところ、本人は受 診を頑なに拒否した。プログラムも中断 覚せい剤事犯者の再犯率は極めて高薬物検出検査をおおむね 2 週間に一度の 、薬物依存からの離脱を図るためには頻度で実施するが、刑の一部の執行猶予し、保護観察官や保護司の指導を忌避す 総合的な取組が必要である。すなわち、 の場合は長期間の保護観察処遇を確保し る中、ホームセンターで客を切りつける 保護観察官と保護司の協働態勢による基て断薬を続けさせ、その状態が定着する傷害の再犯事件を起こし、執行猶予が取 り消された。 本的な処遇に加えて、対象者に対する認よう指導を充実させることが求められる 知行動療法に基づくプログラムによる処ことから、簡易薬物検出検査の継続的実 遇と簡易薬物検出検査の実施、日常的な施はもとより、コアプログラムに続いて 第二に、薬物依存がある保護観察対象 生活の見守りの充実、地域の専門機関に 行うプログラムの内容の充実を図ること者全てを対象とするものであるが、医療ろ よる必要な医療や福祉などの継続的な提としている。しかし、事例 8 のように、 受診や専門的援助につなげる指導の強化の - 二供、当事者同士の支え合いの機会や薬物薬物使用に関連して重篤な精神疾患を有である。更生保護法の特則として、「医法 、一依存からの回復に配慮した住居の確保、しその症状が顕著な場合は、プログラム療又は援助を行う病院、公共の衛生福祉

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保護観察の実情と対象者像の検討 り み されることが重要である。また、適切に 一はじめに 対象者の選択がなされるためには、刑の 一部の執行猶予が言い渡された後、刑事 第 183 回国会において成立した刑法施設における改善指導に引き続き社会内 に等の一部を改正する法律 ( 平成年法律で行われる保護観察の効果が期待できる 討え 第号 ) 及び薬物使用等の罪を犯した者かどうかが重要な判断要素となることか に対する刑の一部の執行猶予に関する法ら、保護観察の実情等について、従来に 律 ( 平成年法律第浦号。以下「薬物法」も増して関心が払われる必要があると考 える。 という。 ) に基づく、いわゆる刑の一部 執行猶予制度が、平成年 6 月までに施そこで本稿は、現時点における保護観 像 察の実情等について述べ、刑の一部の執 行される。 者行 これにより、罪名を問わず初入者及び行猶予制度における保護観察の対象者像 象桜 準初入者について刑の一部の執行猶予をを検討する一助としたい。なお、本稿中 言い渡す場合においては、裁量によって意見に係る部分は執筆者の私見である。 対擴 猶予期間中に保護観察に付することがで と一→ ニ保護観察処遇の実情 情猶早き、他方、薬物使用等の罪を犯した累犯 予を言い渡す場合には、猶予期間中は必 執福 ず保護観察に付されることとなる。 保護観察官と保護司の協働態勢 の 9 今 保護観察は、対象者の再犯を防止し、 立ロ 保護観察官と保護司の役割 長 ( 善良な社会の一員として自立して改善更 課 ( 生することを助けるために指導監督及び保護観察は専門家である保護観察官 観〔補導援護を行うものであるが、裁量であ ( 保護観察所に配属。全国定員は約 10 護刑 局 ~ ろうと必要的であろうと保護観察が付さ 00 人 ) とボランティアである保護司 ( 法 護 保 れた刑の一部執行猶予者の再犯防止と改務大臣が委嘱。現在員は約 4 万 8000 保 ろ 省善更生を図るためには、改正刑法及び薬人 ) が、保護観察事件ごとにペアとなり、 務物法が求めるとおり、「再び犯罪をするそれぞれの特性を生かした異なる役割を ことを防ぐために必要であり、かっ、相もって保護観察を実施する。これを保護法 当であると認められる」者が適切に選択観察官と保護司の協働態勢と呼ぶが、最邱

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特集派遣法改正一労働者・企業への影響と今後の展望 労働者側から見た労働者派遣法の改正 働契約申込みみなし制が適用されて、派あるもの ) に派遣労働者を派遣する場は、あくまで努力義務であり、その実効 性は極めて疑問である 遣先は、派遣労働者が直接雇用を申し込合 しかし、平成年改正法により、努力 めばこれを拒むことはできない。過半数 義務とはいえ、派遣元事業主に雇用安定 代表者の選出手続が民主的でない場合に 四雇用安定措置 措置を義務づけたことにより、派遣終了 は、意見聴取手続全体が違法・無効とな る。 平成年改正法では、派遣元事業主に当たって、派遣労働者は、派遣先に雇 派遣先の労働組合は、使用者から事業に、派遣労働者の派遣終了後の雇用を継用安定措置を求めることができ、この努 所単位の延長の申出がある場合には、安続させる措置 ( 雇用安定措置 ) を講じるカ義務を果たさない場合には、行政指導 易に派遣延長に賛成するのではなく常用ことを義務づけた ( 法条 1 項 ) 。このを求めることができることになる。特に 労働者を雇用する方向や派遣労働者の雇雇用安定措置の内容は、①派遣先への直派遣労働者から相談を受けて、これを組 用条件の向上などについて意見を述べ、接雇用の依頼、②新たな派遣先の提供、織する労働組合は、派遣元事業主に団体 団体交渉を行、つべきであろう。 ③派遣元事業主による無期雇用、④その交渉を申し入れ、派遣元事業主は、この 他雇用の安定を図るために必要な措置で努力義務を尽くすことを求められること になる ある。 4 期間制限の例外 雇用安定措置の対象となる派遣労働者 無期雇用派遣労働者 ( 派遣元との労働は、同一の組織単位に継続して 3 年間 五均衡待遇の措置 契約が無期である派遣労働者 ) には以上派遣される見込みがある者、⑧同一の組 の派遣可能期間の制限は適用されない 織単位に継続して 1 年以上 3 年未満派遣 概要 有期雇用派遣労働者でも次のように期される見込みがある者、 0 派遣元事業主 に雇用された期間が通算 1 年以上の者で平成年改正法は、派遣元事業主と派 間制限の例外が定められている。 ・ 8 歳以上の派遣労働者を派遣する場合ある。 0 についての雇用安定措置は、前遣先事業主の派遣労働者の均衡待遇に関 ・終期が明確なプロジェクト業務に派遣記①以外の②から④について、派遣元にして講ずべき措置を強化した。特に、派 遣元事業主が行うべき措置が努力義務な 義務づけられる。 労働者を派遣する場合 ・産前産後休業・育児休業・介護休業等なお、対象となる派遣労働者の雇用期いし配慮義務として明記された点が重要 を取得する労働者の業務に派遣労働者間の見込みは、実態べースではなく、あである。現状では、派遣労働者は、派遣ろ くまで労働者派遣契約と労働契約に定め先の食堂、休憩室や更衣室を利用できなの を派遣する場合 いということが多く、倉庫の片隅で着替法 ・日数限定業務 ( 1 か月の勤務日数が通られた期間によって判断される。 これらの派遣元事業主の雇用安定措置え、弁当を食べるという派遣労働者が多幻 常の労働者の半分以下かっ川日以下で

10. 法律のひろば 2016年2月号

特集派遣法改正一労働者・企業への影響と今後の展望 労働者派遣制度の現状と未来 者派遣という新たな雇用形態を認めるこ遣労働者の中には正社員化を望むものも続に対する期待の合理性を否定するもの とで、既存の長期安定的な雇用慣行に悪少なくないが、派遣として安定的に働くがあった ( 注 3 ) 。 この点、派遣法の常用代替防止目的 ことを希望する労働者の割合も相当数に 影響が生じることも懸念された。 派遣法は、派遣労働者の保護を念頭に上り無視できない ( 注 2 ) 。そして、前述は、同一派遣先での派遣受入期間を制限 置きつつも、とりわけ後者の観点から常のような規制は、必ずしも派遣労働者のするものではあっても、それ以上に、派 用代替の防止を図る規制を展開してき保護と両立するわけではない点にも注意遣元と労働者の間での労働契約関係にお いて、雇用継続への期待を一律に否定す が必要である。 た。すなわち、当初は派遣対象業務を、 いわゆる正社員が担う業務とは大幅に異この点、派遣労働関係においても、派る根拠としては十分でない。また、当時 なる業務 ( 後に間業務、業務へと拡遣元は、労働契約上の使用者として派遣の派遣法の規制構造からすると、常用代 労働者の雇用責任を負うべき主体であ替の防止をめぐっては、いわゆる政令 大 ) に限定することにより、また、 19 99 年に対象業務が原則自由化されてかる。例えば派遣先の都合等により派遣就業務と自由化業務では異なる考え方が採 らは、新たに自由化された業務で派遣期労先が喪失するケースでも、労働契約に用されていたのであるから、こうした点 間を制限することによって、こうした目期間の定めがなければ解雇の合理性 ( 労を無視することにも問題がある。とはい 的に資する規制が維持・強化されてき契法条 ) が、有期雇用であれば中途解え、こうした裁判例の考え方は、派遣法 た。常用代替を防止するという目的から約や雇止めの適法性 ( 労契法条、四条の根底にある常用代替防止目的が、当の 派遣労働者の雇用安定に寄与しないどこ すると、派遣労働者個人の派遣期間では等 ) が問題となる。 なく、ある派遣先の同一業務での ( 派遣しかし、後者について裁判例の中にろか、かえってマイナスに作用する可能 元や派遣労働者の変更も含めた ) 受入期は、派遣法は「派遣労働者の雇用の安定性があることを端的に示すものであっ だけでなく、常用代替防止、すなわち派た。 間に着目をする規制も不合理なものでは 遣先の常用労働者の雇用の安定をも立法こうした中で、労働者派遣をとりまく なかった。 目的とし、派遣期間の制限規定をおくな法的紛争としては、主として、派遣先の どして両目的の調和を図っているとこ事情で労働者派遣契約が解消され派遣労 2 常用代替の防止目的と派遣労働 ろ、同一労働者の同一事業所への派遣を働者が雇用を喪失したケ 1 スで、派遣元 者の保護 長期間継続することによって派遣労働者に対する地位確認請求と並び、派遣先に もっとも、このような規制は、派遣との雇用の安定を図ることは、常用代替防対しても黙示の労働契約の成立を主張すろ の いう働き方そのものを制限することに主止の観点から同法の予定するところではるものが多発してきた。 律 法 眼があり、長期にわたる派遣就労を希望ない」ことを指摘し、派遣労働関係での する労働者のニ 1 ズとは一致しない。派雇止め制限法理の適用に際して、雇用継