特集震災から 5 年現場から問いかける課題と復興・防災・減災への提言 法律家としての支援ー震災後 5 年の被災地の現状と法的ニーズ 法律家としての支援 その司法過疎地において、ひとたび 発事故が発生すれば、多くの法的ニ 1 ー震災後 5 年の被災地の現状と法的ニーズ言 は生ずるものの、被害救済に対応でき だけの弁護士等の法律家が足りないとい 福島県弁護士会弁護士渡辺淑彦う事態となる。初期段階で、加害者が 意に賠償金を支払う段階までなら法律 そうすると、わずかな距離の違いで、 は不要である。しかし、今、 5 年を経て、 一はじめに 賠償金の支払額に大きな格差が生じ、避まさにこの地で見られているように、 原発事故による被害を賠償という観点難者同士や、避難者とその受入れ住民間害者側の一方的判断で、営業損害や就。 から見ると、避難指示区域 ( 帰還困難区に、 見えない心の分断や軋轢が生じるこ不能損害などの継続的な賠償が打ち切 域・居住制限区域、避難指示解除準備区ととなり、「二次被害」ともいえる状況れようとしている。今こそ、法律家が 域 ) の住民や事業者に対しては、東京電を生じさせているのである。 極的に活動し、被害救済のために闘う が来ている。ところが、現地で、その カ株式会社 ( 以下「東電」という。 ) は、 「それなりの賠償」を任意に支払ってき うな活動をする弁護士等の法律家が足 ニ原発事故と司法アクセス たのに対し、それら以外の住民 ( 旧緊急 ない。それは被害者を泣き寝入りさせ 時避難準備区域の住民や自主的避難等対 ことに等しい。どんなに立派な法律が 原発立地地域 = 司法過疎地 象区域の住民、その他の福島県を中心と っても、法律を使う人 ( 法律家 ) がいオ する住民 ) に対しては極めて低額かゼロ 原発の立地地域は、ほほ間違いなく司ければ、それは画餅にすぎない。司法、。 のままの状態が続き、事業者に対して法過疎地域でもある ( 注 1 ) 。原子炉の設疎とは、平等に適用されるはずの法 , は、次々に営業損害に対する賠償の打ち置のための適地条件を定めた「原子炉立が、その地には空洞のように存在しな、 切り策が進められている状況にある。 地審査指針」 ( 注 2 ) には、原発を立地すことを意味するのである。 そもそも政府の避難指示区域区分と、 るための条件として周辺地域が「低人口 ろ 損害賠償の発生の範囲とが一致するはず地帯」であることが規定されている。原 ひ 個別性の高い損害の現れ方と の もないが、東電 ( その背後の政府 ) は、発立地地域が、司法アクセスという意味 律 の解決の難しさ 法 避難指示区域区分ごとに賠償金額に差をでも不十分な「司法過疎地」でもあるこ 設け、その例外をほば認めようとしない。 とは、いわば必然の結論であるかもしれ原発事故の損害の現れ方は様々で四
る。原発事故被害は、騒音被害や悪臭被ずであるが、それでも和解案に応じない し、法の支配でもって解決しなければな 害のように、誰にとってもほほ同じよう事案が出てきている。原子力損害の賠償らない事件であるにも関わらす、その溢 な被害をもたらすような被害類型ではな に関する法律 ( 以下「原賠法」という。 ) れるニ 1 ズに対応できていないと感じ 、 0 放射性物質に対する捉え方も人によでは、和解仲介機能しかなく、裁定機能る。このままでは、弁護士等の法律家へ引 って異なる。特に低線量放射性物質の影 かないことから ( 注 5 ) 、東電側があくまの信頼、司法への信頼が失われてしまうの 法 響については、定説もなく、人の主観をで応じなければ、紛争は解決しない。現とまでの危機感を持っている。 通じて危険性が判断される。被害感情も在、集団の申立事案は岐路に立た 人によって大きく異なる。同じ地域であされているといってよい。 4 被害者と弁護士を結びつける っても、各家族のライフスタイルや収 「中間項」の必要性 入、事業者であれば、その事業内容や、 3 社会のあらゆる側面に「紛争の 従前の業績も実に様々であるから、損害 司法過疎地において法律事務所の敷居 火種」 はいまだに高い。弁護士等法律家への「橋 を均一化して捉えることは難しい。本 来、集団 ( 原子力損害賠償紛争解原発事故は、周辺地域社会のあらゆる渡し」が必要である。原子力損害賠償・ 決センタ 1 への集団申立て ) や集団訴訟側面に「紛争の火種」をもたらしたと感廃炉等支援機構の法律相談業務が一定の ではなく、個別の家庭や個別の事業者ごじる。原発事故後の法的ニ 1 ズは、東電成果を上げているのは、橋渡しをしてく とに、別途のや別途の訴訟を展開に対する賠償請求にとどまらない。皮肉れる職員の方々が、仮設住宅回りなどを 二コ、、 ノイー するのが理想であろう。しかし、司法過なことに、賠償金が新たな紛争の火種と 被害者と積極的にコミュニケーシ 疎地では、弁護士の数も限られており、 なり、「二次被害」ともいえる状況が生ョンを取り、法律相談に誘導する地道な 個別的対応には限界がある。さらに、集じている。例えば、賠償金をめぐり、遺努力があるからである。法律相談に導く 団の申立事案では、浪江町の集団産分割事件や成年後見事件等が増加傾向「中間項」となってくれる人や機関が重 ( 注 3 ) に代表されるように、和解にある。既に 6 兆円にも迫る賠償金か、要である。行政機関の相談がいつも予約 案が出ても、東電側がそれに応じないと被害者や被害企業に支払われており ( 注で一杯なのは、無料であることもさるこ 6 ) 、多数の賠償金をめぐる様々な金銭とながら、行政機関の窓口は住民にとっ いう事態も発生している 本来、東電側は、「 5 つのお約東」やトラブルが生じている。そればかりではて気軽な場所であり、行政機関が「中間 「 3 つの誓い」 ( 注 4 ) などとして、原子力ない。復興政策による人と金銭の流れ項ーとなってくれているからである。今 が、新たな紛争や法的ニ 1 ズを生じさせ後、被災自治体と法律家との連携がより 損害賠償紛争解決センタ 1 の仲介委員が 提示する和解案を尊重する義務があるはている。本来、弁護士等の法律家が活躍一層重要となってくる。
法律のひろば 平成 28 年 3 月 1 日発行 ( 毎月 1 回 1 日発行 ) 昭和 24 年 2 月イ日第 3 種郵便物盟 特集 復現災 興場か らら 問 5 減年 くくく へけ のる 提課 日百 H 〇 URITSU N 〇 HIR 〇 BA Mar. 2016 VOL69 / NO. 3 大震災 5 年一現場が問いかける復興の課題 / 室﨑益輝 災害時要配慮者への支援と課題 / 山崎栄一 災害復興、防災・減災におけるジェンダー ー東日本大震災の 5 年から考える / 山地久美子 法律家としての支援 ー震災後 5 年の被災地の現状と法的ニーズ / 渡辺淑彦 法制度の改善への取組 / 津久井進 東日本大震災を教訓とした弁護士の防災・減災活動 ー災害復興法学の展開と災害派遣弁護士の浸透に向けて / 岡本正 コラム . 被災者の今一一心の回復への道程を考える / 中林加南子 同性婚を認めない州法の規定と合衆国憲法 / 尾島明 英米法研究第 71 回岡原記念英米法研究会 きようせい
特集震災から 5 年現場から問いかける課題と復興・防災・減災への提言 東日本大震災を教訓とした弁護士の防災・減災活動 表 3 弁護士会と自治体・他士業・他機関との協定締結状況 ( 2015 年 12 月時点暫定版 ) 第ニ 弁護士会 1 2 3 4 7 8 9 10 1 1 12 13 14 15 16 18 19 21 22 26 27 28 29 32 37 39 45 50 51 東 横 群 大 京 滋 広 岡 仙 札 徳 高 東京 第一東京 示 知 島 幌 ム 山 島 重 賀 都 阪 馬 浜 宮崎県 佐賀県 鳥取県 山口県 岐阜県 和歌山 兵庫県 新潟県 長野県 山梨県 静岡県 栃木県 茨城県 自治体との協定 山梨県と「大規模災害時における法律・税務相談業務に関する ・藤枝市と「災害時の相談業務等に関する協定」締結 ・磐田市と「災害時法律相談業務協定」締結 る協定」締結 ・静岡市・浜松市・沼津市と「災害時の被災者法律相談に関す ・静岡県と協定締結 群馬県と「災害時における法律相談業務に関する協定書」締結 栃木県と「災害時における法律相談業務に関する協定」締結 茨城県と「災害時における法律相談業務に関する協定」締結 年 12 月 27 日 ) 締結 ・横浜市と「災害時における法律相談に関する協定」 ( 平成 24 業務の応援に関する協定書」を締結 ・右記協議会と神奈川県との間で「大規模災害時における相談 月 8 日 ) 時における特別法律相談に関する協定」を締結 ( 平成 24 年 11 ・台東区と台東区災害ネットワーク専門職会議との間で「災害 の支援に関する協定」を締結 ・右記機構の 19 の構成団体と東京都との間で「復興まちづくり 協定」締結 岐阜県と「災害時における法律相談業務に関する協定」締結 三重県と「災害時における法律相談業務に関する協定」締結 相談業務の支援に関する協定」締結 右記協議会と和歌山県との間で「大規模災害等発生時における 協定書」締結 滋賀県と「大規模災害発生時における法律相談の実施に関する 関西広域連合と阪神淡路まちづくり支援機構との間で協定締結 佐賀県と相談業務支援協定締結 談業務の支援に関する協定」締結 鳥取県と県内士業団体との間で「大規模災害発生時における相 談会業務の応援に関する協定」締結 右記ネットワークと山口県との間で「大規模災害時における相 宮崎県と右記協議会との間で「大規模災害時における相談業務 宮城県、仙台市と不定期に会合開催 に関する協定」締結 郡町村会との間で災害支援協定を締結 ・海陽町、美波町、牟岐町の各町とこの 3 町で構成される海部 相談業務の支援に関する協定」締結 ・右記協議会と徳島県の間で「大規模災害時等発生時における 援に関する協定書」締結 右記載連絡会と札幌市との間で「災害時における相談業務の応 他士業・他機関連携 ・災害復興まちづくり支援機構 ( 東京都と協定締結 ) ・台東区災害ネットワーク専門職会議 ( 台東区と協定締結 ) 結 ) 神奈川県大規模災害対策士業連絡協議会 ( 神奈川県と協定締 高知市で専門士業ネットワーク設立 者支援活動等の協力に関する協定」締結 ・徳島県社会福祉協議会との間で「大規模災害時における被災 ・徳島県士業ネットワーク推進協議会 札幌地域災害復興支援士業連絡会 宮城県災害復興支援士業連絡会 宮崎県専門士業団体連絡協議会 業診断協会 ) 絡協議会、県不動産鑑定士会、県土地家屋調査士会、県中小企 県行政書士会、県司法書士会、九州北部税理士会佐賀県地区連 県専門士業団体連絡協議会 ( 県弁護士会、県社会保険労務士会 自由業団体連絡協議会 山口法律関連士業ネットワーク 広島県災害復興支援士業連絡会 和歌山県専門士業団体連絡協議会 阪神・淡路まちづくり支援機構 ( 関西広域連合と協定締結 ) 京都自由業団体懇話会で定期的に協議 阪神・淡路まちづくり支援機構 ( 関西広域連合と協定締結 ) 談支援は、自殺対策のネットワークを利用して連携 ) 新潟県災害復興支援士業連絡会 ( ただし、東日本大震災時の相 県災害支援活動士業連絡会 ( 弁護士・司法書士・税理士 ) 静岡県災害対策士業連絡会 ( 静岡県と協定締結 ) 49 ・法律のひろば 2016.3
月刊法律のひろば 2016 VOL69 No. 3 March ◆特集◆ 震災から 5 年 現場から問いかける課題と復興・防災・減災への提言 ー大震災 5 年 ー現場が問いかける復興の課題 / 室﨑益輝 4 ー災害時要配慮者への支援と課題 / 山崎栄一 13 ー災害復興、防災・減災におけるジェンダー ー東日本大震災の 5 年から考える / 山地久美子 21 ー法律家としての支援 ー震災後 5 年の被災地の現状と法的ニーズ / 渡辺淑彦 29 ー法制度の改善への取組 / 津久井進 36 ー東日本大震災を教訓とした弁護士の防災・減災活動 ー災害復興法学の展開と災害派遣弁護士の浸透に向けて コラム : 被災者の今一心の回復への道程を考える / 中林加南子 52 ◆連載◆ 英米法研究第 71 回一一 - 岡原記念英米法研究会 同性婚を認めない州法の規定と合衆国憲法 / 尾島明 54 商事法判例研究第 3 回一一東京商事法研究会 / 岡本正 43 取締役の任期を短縮する定款変更による取締役の退任と会社法 339 条 2 項の類推適用 ・ひろば法律速報 / 73 ■平成 27 年度人権擁護功労賞 ■出入国管理インテリジェンス・センターの開設 ひろば時論 / 中村信男 64 弊社新刊図書・雑誌のご案内・・・・・ h p : ″ gyosei. jp ・次号予告 / 28 ・訟務情報 / 77 装丁 /Kaz
ル・ニ 1 ズは、「 5 不動産賃貸借 ( 借家 ) 」 ( 主に賃貸借契約当事者間の賃料・退 去・修繕をめぐる紛争 ) 、「 9 住宅・車・ 船等のロ 1 ン、リ ース」 ( 主に被災によ り支払困難となった所謂二重ローン問 題 ) 、「震災関連法令」 ( 主に生活再建 のための行政給付情報や認定 ) 、「間遺 言・相続」 ( 主に死者・行方不明者のご 家族からの相談 ) が多くなっている。あ らゆるリーガル・ニーズが一度に噴出し 0 ていることが分かる ス済険令金資族続害題人係事等他外ぞ 等一返保法税融親相被 国関刑故の以れ 市資 連 3 な 事そ災そ 訃者働外社 爿流借借係 新離遺費労 9 会 2 所震は 知知の貸貸関・ 5 6 2 分 1 一 / 2 生活再建と復興への対応実績を 減減等賃賃隣防 気 株産産相予 県権権 動動缶 知るー復興政策への弁護士の寄与 預不不責排 城有有 所所 4 5 物害 回 作妨 不船 無料法律相談のデ 1 タ・べ 1 ス化は、 単に被災者の声を記録するだけではな く、地域ごとや時間経過によるリーガ にとって、生活再建や事業再生に少しで内容 ( 震災から約 1 年間のデ 1 タの累ル・ニ 1 ズの違いも浮き彫りにした。ま も役立つ情報の提供は不可欠であった。 計。なお、 1 件の相談を最大三つの類型た、被災者の困難をエピソードだけでは 弁護士は、無料法律相談活動を通じて、 に分類しており、合計は 100 % を超えなく、確固たる件数や数字として視覚化 情報整理提供を実施した。日弁連は、弁る。 ) である。気仙沼市は、当時人口約した。これらは、復興に資する様々な法 護士による無料法律相談の結果を一元的 7 万 3500 人のうち「 1 ・ 9 % 」の方々制度提言の根拠資料となり、災害復興や に集約し、発災後 1 年余りの間に 4 万 3 が死亡又は行方不明となった。災害によ防災・減災に関する多くの法制度が誕生 するに至る。表 1 は、弁護士の関与した ・ 0 % 」に及ぶ。 96 件の相談事例をデ 1 タ・べ 1 ス化しる建物全半壊率が「 た ( 注 1 ) 。 発災時の持ち家率は県下の「市」の中で法改正等のうち主なものをまとめたもの 例えば、図 1 は、被災当時の住所地が は「 ・ 4 % 」と高い。このような被災である ( 注 2 ) 。 宮城県気仙沼であった被災者の法律相談状況を反映してか、気仙沼市のリ 1 ガ東日本大震災直後に応急的に対応する 40.0 20.0 10.8 13.5
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り条例によって災害前から協議会の設置地では、分科会のような形で若手部会や登録制度が全国的に展開できれば、まち鮖 が可能であったが、 東日本大震災の被災女性部会を導入している協議会が複数あづくりの専門家のみならず、弁護士等、 地では条例等の制度として確立していなる。さらに、会合は夜間開催が多くなる多様な人材の情報共有が可能となる。 かった地域が多い。協議会の参加者は地ため、女性向けに昼間に別途開催するこ ろ ひ 権者、不在地主、居住者、居住希望者、ともある。復興まちづくりは土地利用等 の 律 世帯単位から個人単位制度へ 近隣者など組織によって多様であるが、 の事業が主の場合、法律面、技術的な内 法 災害後に新たに結成する場合、 ( 住民票容で複雑になるため、事前の情報提供や 2 013 年の災害対策基本法改正では のある ) 居所、応急仮設住宅、みなし仮意見の取り上げ方、開催方法に工夫が必罹災証明が被災地市町村の事務として明 設住宅や県外避難先での「住民探し」を要だ 記された。社会保障等各種制度の個人単 した上で名簿を作らなければならない。 今後は、災害後のまちづくり協議会の位の必要性は指摘されて久しいが、被災 中には被災自治体が世帯主宛てに協議会設置と自治体の長への提案を条例化し、者支援も世帯単位となっている。被災者 の結成案内を郵送したり、仮設住宅へ配 制度として拡充することで、多様な市民生活再建支援法は支援金が単身世帯と複 付したりしている場合もある。 参画の実現を図るべきである。その際に数世帯で異なるが、いずれの場合も世帯 ここでは住民参加における世帯単位に は、女性や若い世代、時には外国人の参主に対して支給される℃原発事故にかか よる弊害が現れる。まちづくりに関する加が可能となるように、自治体職員、まる賠償金は個人単位で計算された上で、 案内や情報は多くの場合男性の世帯主にちづくり専門家やコンサルタント、弁護世帯分が一括で世帯主に支払われる。 届き、一つの住民票に二つ以上の核家族士に女性が入るなど、支援者側からのエ支援金、義援金、賠償金が世帯主から が入る複合世帯や、若い世代、女性に情夫が求められる。その手段の一つとして家族内で配分されない、あるいは別居し 報が届かないことがある ( 注 9 ) 。「復興考えられるのは、支援者の登録制度であているにもかかわらず世帯主に支給され まちづくり . 『住民合意形成組織』調査。る。 たケ 1 スがメディアに取り上げられてい ( 2015 年 ) では、組織運営上の課題東日本大震災後、国土交通省は 201 る ( 注リ。世帯主は全国平均でみると爲 として、の調査対象団体のうち、団 1 年に「復興まちづくり人材バンク」を 1 % が男性である ( 注リ。世帯内での分 ・ 4 % ) が女性の参加、団体設置し、同年 5 月引日までに 7 4 3 名が 配は想定されていないため、誰もが受給 ・ 5 % ) が若者の参加の少なさを課登録し、女性は名 ( 5 ・ 2 % ) である。 できるように、基礎支援金部分について 題として挙げている ( 注四。ここからも阪神・淡路大震災の復興経験をもっ兵庫は個人単位での支給の在り方の検討に基 若者、女性の参加が少ない状況が推察で県は独自に「ひょうごまちづくり専門家づいた制度設計の見直しが必要である。 きる ハンク」を設立し、これまで名が登録被災者への支援制度を手当化できれ これらの問題を解決するために、被災し女性は 8 名 ( Ⅱ % ) いる。このようなば、給付額の柔軟性を付与でき、現物給
東日本大震災を教訓とした弁護士の防災・減災活動 表 1 東日本大震災後に弁護士が関与して成立した法制度 1 . 被災ローン減免制度の構築 「ニ重ローン」問題の解決のため、被災債務の買取りや減免制度を新設すべきと主張 していたところ、個人の被災ローン減免制度である「個人債務者の私的整理に関する ガイドライン」並びに、事業者の債務買取り等を含む事業再生制度である「株式会社 東日本大震災事業者再生支援機構法」が成立した。また被災ローン減免制度の周知徹 底について求めていたところ、金融庁から金融機関に対し周知徹底を求める通知等が 発信され、金融機関から被災者に対し葉書等による周知がなされるまでに至った。ま た、将来の災害にも備えるべく 2015 年 12 月には自然災害による被災者の債務整理に関 するガイドライン研究会により「自然災害債務整理ガイドライン」が日弁連ほか関係 各機関で構成される研究会で策定された。 2 . 相続放棄等の熟慮期間の延長 民法規定の「 3 か月以内」では短期間すぎるとして、相続放棄等の熟慮期間の 1 年の 延長を求めていたところ、議員立法で「東日本大震災に伴う相続の承認又は放棄をす べき期間に係る民法の特例に関する法律」が成立し、 2011 年 11 月 30 日まで熟慮期間が 延長されることとなった。被災地では相続放棄や期間延長の申述件数も大幅に増加し た。 2013 年 6 月の「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置 に関する法律」の改正により、将来の巨大災害でも政府の判断で熟慮期間の延長がで きるようになった。 3 . 災害弔慰金の支給対象者の兄弟姉妹への拡大 災害弔慰金の支給対象に兄弟姉妹が含まれていなかったが、同居又は生計を同一にし ていた兄弟姉妹を対象に含める「災害弔慰金の支給等に関する法律の一部を改正する 法律」が成立した。また、被災地域の市町村では、条例を改正して対応したところも ある。義援金の分配についても、兄弟姉妹が支給対象から除外されていたが、県レベ ルで、兄弟姉妹に拡大するなどの対応がとられた。 4 . 災害弔慰金・被災者生活再建支援金・義援金の差押禁止債権化 災害弔慰金は形式的には、債権者による差押えが可能であったことから、差押えの対 象とならないようにすることを求めていたところ、議員立法で差押えを禁止する法案 が成立した。 5 . 罹災都市借地借家臨時処理法の不適用 賃貸借契約に関する相談実態からすれば、同法の適用による優先的借地権等の設定は、 まちづくりを阻害しかねなかった。同法の適用を検討していた法務省や総務省と意見 交換を重ねた結果、最終的には東日本大震災における同法の不適用が決定された。 6 . 原発事故子ども・被災者支援法の成立 原子力発電所事故に起因する様々なニーズを集約することで、「東京電力原子力事故 により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活 支援等に関する施策の推進に関する法律」の成立に寄与した。この支援法に基づく具 体的施策を提案することが法律家の新たな使命となった。 7 . 災害対策基本法 2013 年改正 自治体の被災者の個人情報が支援者に共有されないことで、災害時要援護者や広域避 難者の救助・支援が困難になっている現状を踏まえ、日弁連で関連意見書提出や個人 情報の共有ガイドライン策定を実施。周知のためにシンポジウム「災害時における個 人情報の適切な取扱い」を全国キャラバンで実施。「避難行動要支援者名簿」「安否情 報」「被災者台帳」の制度化等、自治体の個人情報政策に大きな影響を与える大改正 につながった。 8 . 原子力損害に係る損害賠償請求権の消減時効延長 潜在的な該当者は 100 万人規模に達する画期的とも言える特例法である。「東日本大震 災における原子力発電所の事故により生じた原子力損害に係る早期かっ確実な賠償を 実現するための措置及び当該原子力損害に係る賠償請求権の消減時効等の特例に関す る法律」は、不法行為の損害賠償請求権において「 3 年間」とされている消減時効を 「 10 年間」に延長し、また「不法行為の時から 20 年」とされている除斥期間を「損害 が生じた時から 20 年」とした。 9 . 復興用地の土地収用を促進する規制緩和の実現 「東日本大震災復興特別区域法の一部を改正する法律」が、 2014 年 5 月 1 日から施行 された。本法律は、東日本大震災の被災地において、所有者不明、相続未処理、多数 共有の土地等円滑に取得が進まない復興事業の用地が多数存在し、その迅速な確保が 喫緊の課題となっていることに鑑み、土地収用の裁決手続の要件緩和、防災集団移転 事業の要件緩和、などが法制度として認められた。 45 ・法律のひろば 2016.3 特集震災から 5 年現場から問いかける課題と復興・防災・減災への提言 に来 ロた の棄 っ巨 大の の法 害慮重度 ン築 制なやく 度と 築将 続宅 性共き り律 , 相 や軌 歴跡 のに は数 ハ時あ付おる 應こ にる 大筆 . 承 . ロ 学者 しになや災な の改起災 る大 れ共を繰た国 びで 法以な策憶返にあ 学降ら上すす課る 部順 と れ を し て 実 現 識てたニ化 々 ウ 法はて対災 か な 同年ば政記 な い に の備間 ん 。久 的 な 構 虹 料 談 の デ タ イヾ に ょ 、伝災妻改はで 生惨正 い応害用力 る教善 と 土 て る も も 浮 . 、彫 に な リ ル 1 ズ す け公訓 ノ 放 等 い災熟二制 期 ク ) 多る問問オ い恒題題け 2 1 ン ロ 1 1 、相住 な は で 構 の の め 過公 の政 経策 験の し て み じ、 さ れ 慶 塾 科 大 学 院 史活 と表用 1 つ そ 義でも 2 0 1 2 、次 3 開承 展伝 とを 設跡 創軌 のの 学策 法政 興 復 害 る す き を り のる必題日 し、 、てき き 要に本 0 、は
特集震災から 5 年現場から問いかける課題と復興・防災・減災への提言 法律家としての支援ー震災後 5 年の被災地の現状と法的ニーズ 低線量放射性物質の影響については比較的想定しやすい。しかし、ここに もと司法アクセスが不十分な地域である は、人の主観を通じて被害を感じるもの原発事故が加わると一気に問題が複雑にという認識のもと、何らかの積極的対心 であり、その影響について「通説」と言なる。賠償問題や被害者の生活再建などをしなければ、単に、被害者を「泣き、 われるものは見いだし難い。 の面から見ると、原発事故の被害は全く入り」させ「諦め」させるだけのことで そのような中で、自主避難実行者は、収束しておらず、形を変えて拡大してい ある。司法への信頼を維持するために一 強制避難者と違って、「なぜ、いまだにるといえる。この先、原発事故の影響はも、法律家の活動が今後ますます重要と 避難を継続する必要があるのか ? 」と自どこまで続くか想像もできない。「事故なるだろう。 治体や国、福島県内の滞在者などから問後 5 年 , といっても、実は、現在の被害 われ続け、追い込まれ続けている存在と発生が、ほんの初期段階にすぎないので ( 注 ) ( 1 ) 日弁連ホームページ「弁護士過疎・偏在対策」 なっている。その意味では、より苦しい はないかと思わざるを得ない。 立場に置かれている。自主避難者の多く 今後も福島県は二つの「風」と闘、つ必 ( 2 ) 原子力委員会「原子炉立地審査指針及びその適用 に関する判断のめやすについて」 ( 19 6 4 年 5 月 が、小さな子どもを抱えている母子避難要がある。「風評被害」という「風 , と であり、時にその行動を家族からも非難「風化」という「風」である。これらは、 ( 3 ) 詳細については、浪江町ホームページ「集 され、その結果、家族が引き裂かれると どちらも「無関心」から生ずる。 いう不幸な結果も生じている。今、追い 風評被害は、情報がアップデイトされ団申立て・要求活動」参照。 打ちをかけるように、無償提供されてきておらず、「福島Ⅱ危険」と過去の情報 ( 4 ) 東電ホームページ「損害賠償の迅速かっ適切な実 施のための方策 ( 「 3 つの誓い」 ) 」 ( 2 014 年 ) たみなし仮設住宅への補助が打ち切られで単純に考えてしまう種類の「無関心」 る方針のもと、生活に困窮してしまう自である。風化は、自分の地域で起こった ( 5 ) 「原子力損害の賠償に関する法律」条参照。なお、 ことではないので関係ないとい、つ「無関同法の制定過程については、我妻榮ほか「特集原子 主避難者も出てくるだろう。きめ細やか ( 19 61 年 ) 参照 なフォロ 1 が必要である。 心」である。この世界的・歴史的大惨事力損害補償」ジュリ 236 号 を風化させないためにも、法律家による ( 6 ) 東電ホームページ「賠償金のお支払い状況」 被害者救済活動、日常的に相談を受けて ( 7 ) 「いわき市・東日本大震災の証言と記録」 ( いわき 五最後に ワ 1 -0- 1 亠り 0 いる法律家による発信は重要である。先市、 ( わたなべ・としひこ ) 引 地震・津波・原発事故の三重の被害をのとおり、東電 ( 背後の国 ) による賠償 の 受けてから、既に 5 年が経過しようとしの打ち切り、国による事故を収束させた 律 法 ものとみなす政策のもと、司法ニ 1 ズが ている。地震・津波のような自然災害だ けであれば、復旧から復興へのプロセスより一層高まることが予想される。もと 日 ) 年 )