損害賠償 - みる会図書館


検索対象: 法律のひろば 2016年3月号
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1. 法律のひろば 2016年3月号

特集震災から 5 年現場から問いかける課題と復興・防災・減災への提言 東日本大震災を教訓とした弁護士の防災・減災活動 業に支援制度の知識を伝え支援するこ 東日本大震災を教訓とした ができる。同時に、既存の法律や制度、 対応できないものについては、新制度 弁護士の防災・減災活動 法改正により克服すべきことを政府等 , ー災害復興法学の展開と 提案することができる。弁護士が災害一 に無料法律相談をすることによる情報 災害派遣弁護士の浸透に向けて 理提供機能と立法事実集約機能は、 弁護士・マンション管理士 中央大学大学院公共政策研究科客員教授・慶應義塾大学法科大学院非常勤講師、 岡本正災・減災に直結するものである。本稿、 は、防災・減災を支える仕組みとして、 し立ち上がる、「強靭性 ( レジリエンス ) 」各地の弁護士会で進む、自治体との災生 一弁護士に成し得る防災・減 を構築してきた歴史とも言えるだろう。協定の締結や、専門士業連携 ( ネット 災活動とは 復興の軌跡を伝承することは、「災害復ーク ) の構築事例を紹介する。そして、 弁護士が役割を果たすべき「防災・減興法学」等の公共政策教育によって実現これらの取組を社会全体に広く周知さ 災」の取組とは一体何であろうか。災害を目指すことを模索している。本稿でるべく、「災害派遣弁護士チ 1 ム」 (Q の物理的被害を軽減させることに直接的は、災害復興法学の原点となった、東日 < e—Disaster lægal Assistance Team) に寄与しないとしても、弁護士には大き本大震災後に弁護士が実施した無料法律という呼称を提案してみたい。 な役割があるはずだ。その一つは、防災相談事例のデ 1 タ・べ 1 ス化と復興政策 に関する法制度への関与という分野であへの寄与について紹介する。 ニ防災教育としての災害復興 る。日本の防災法制度や災害後の生活再もう一つは、災害直後からの弁護士に 法学の展開 建制度等の周知であり、これには、制度よる「無料法律相談活動」である。東日 ができた後の法解釈や運用実務を解説す本大震災では、「情報整理提供」と「立 無料法律相談のデータ・べース るにとどまらず、法制度構築や法改正に法事実集約」の機能を果たしたことが特 化による被災の実相の視覚化 至った「軌跡」を伝承することも含まな徴である。災害後にその被害を拡大させ ければならない。巨大災害後に困難を克ないことも防災・減災であることは疑わ弁護士は、 2011 年 3 月Ⅱ日に発生 服するためには、既存の法制度の枠を超ないだろう。ところが、「災害後を生きした東日本大震災直後から、無料法律相ろ の えた新しい仕組みが必要になる。制度改抜き、再建するための防災・減災施策に談活動を開始した。生活の基盤を失い 律 法 変を繰り返してきた災害法制の歴史は、 は何があるのか」ということは周知が不何をすればよいのか、どこへ行けばよ、 災害後にあっても、暮らしや産業を再建足している。弁護士は、被災者や被災企のか、見当もっかない被災者や被災企業

2. 法律のひろば 2016年3月号

極めて充実した内容で、制度新設に果た立法事実を示し、新たな救助法制を示すなっており、本来は平成年に改正が行 した弁護士の役割は大きかった。しかべきである。 われるはずだった。しかし東日本大震災 し、具体的施策が実施されないまま骨抜第二は災害関連死に関する制度改善でがあって改正が延期され今日に至ってい ろ きにされ現在に至っている。制度成立後ある。災害関連死は災害弔慰金法に基づる。同法は、住家の被害・再建に着目し、 に法律家の関与の余地がなかったことが く弔慰金支給の適用の問題であるが、東世帯に対して金銭給付のみを行う仕組みの 日本大震災では、これが硬直的・制限的であるが、この間に分かってきたこと 痛恨の極みである。 こうした例も含め、未解決の法制度のに適用されて救済されるべき多くの事例は、被災者の生活基盤は住家だけでな 課題を他に 3 点挙げておきたい。 が却下の憂き目を見ている。阪神・淡路 、仕事、心身の故障、家族・人的交流 など様々な要素で成り立っており、住家 第一は「災害救助法」の改正である。大震災では震災 6 日前に危篤に陥った 災害対策基本法が行政にとって重要な基歳男性が、震災で人工呼吸器が外れて死にのみ着目する適用要件は実態に合わな 本法令であるのと同じように、災害直後亡したケ 1 スで、震災関連死を認めた ( 大いということである。また世帯分離して の被災者にとって最も重要なのが災害救阪高裁平成間年 4 月日判決、最高裁も復興する例も多く、世帯単位ではなく個 助法である。体育館で長期間にわたって維持 ) 。一方、例えば岩手県が公表して人単位で支援するのがニーズにマッチす 雑魚寝をしたり、いつまでもおにぎりと いる関連死基準では、「高齢・衰弱で震る。そして、金銭支給だけでなく、例え 菓子バンしか供与されない姿は、先進国災がなくても同様の経過をたどったと考ば情報提供や寄り添い、見守りなどを行 としてあり得ない図である。また、仮設 えられる場合は因果関係がないと判断すう被災者生活再建支援員のような人的支 住宅 ( みなし仮設住宅を含む。 ) というる」など明らかに狭い基準を立てて対応援も含めた上で、個々の被害実態に合わ 避難生活における重要な要素の基盤法令している。災害関連死の認定は、現在、せて支援方法をオーダ 1 メイドで策定し にもなっているが、災害救助法には具体プラックポックスの中で行われているて実施する「災害ケ 1 スマネ 1 ジメン 的な規定はなく、硬直的な先例主義が被が、いくつか判例の集積も出ているとこト」を盛り込む制度に再編するのが適当 と思われる。言わば介護ケアマネの災害 災者を困惑させている。昭和年制定のろであるから、あらためて基準の定立に 版である。 古い制度が、いつまでも被災者に前近代向けて動き出す必要があろう。 的な避難生活を強いる根拠となっている第三は被災者生活再建支援法の改正で法律家が積極的に被災者の声を代弁 のである。原発避難も含め、今後の国民ある。同法は阪神・淡路大震災の 3 年後し、被災者の権利実現のために制度改善 のノウハウを活用し、力を尽くすことが の避難生活を想像すれば、災害救助法のに被災地の発意で成立した議員立法で、 抜本的な改正は最優先課題である。法律全壊世帯には最大 300 万円が支給され求められている。 ( つくい・すすむ ) 家は、いかに災害救助法に不足があるかる。 4 、 5 年ごとの見直しをすることと

3. 法律のひろば 2016年3月号

特集震災から 5 年現場から問いかける課題と復興・防災・減災への提言 災害時要配慮者への支援と課題 のが「公助の限界」であった。 いないのは、単に避難所に避難できたらに合わせた柔軟な対応が求められると一 そうすると、共助や自助によるある程それで支援が終わりではないことを強調ろであり、災害時要配慮者への配慮Ⅱ特 度の補完が余儀なくされるわけで、地域したいがためである。 別基準の活用といっても過言ではない。 をはじめとした、専門家・支援団体・ポ むしろ、特別基準の活用がなされない一 ランティアによる支援が期待される領域 災害救助法の活用 とによる、脆弱性を帯びた災害時要配 である。ただし、共助や自助を強調しす災害救助法が発動される支援領域にお者の「災害関連死」の発生を防がなけ ぎることによって、国や自治体が本来行 いては、災害時要配慮者への配慮が強くばならない。そのためには、平常時か うべき支援が後退することがないよう求められる。代表的な救助メ = = 1 としの災害救助法に対する知識の共有か不 に、適切な役割分担がなされなければなて、避難所・仮設住宅の供与、食品・飲欠となる。 らない。公助と共助・自助間の「役割の料水の提供、生活必需品の給与・貸与が 「東日本大震災における震災関連死こ 押し付け合い」が起こらないようにしなあり、災害救助法は、災害直後における関する報告 ( 平成年 8 月幻日 ) 」に ければならない。避難支援の場面におい被災者の生存を確保するための法律であると、災害関連死のうちの約 3 割が避 ては地域による共助が注目されるところるといえる。また、法制度上、災害時要所等における生活の肉体・精神的疲労こ であるが、市町村による「問題の丸投げ」配慮者を対象とした福祉避難所・福祉仮よるものであった。このような事態を になっては駄目で、地域による共助を支設住宅が設けられることになっている けて「避難所における良好な生活環境の 援するという意味での公助も重要であ救助の程度、方法及び内容について確保に向けた指針 ( 平成年 8 月 ) 」 る。公助ー共助ー自助をバランスよく配 は、内閣総理大臣が定める「災害救助法策定されている。そこでは、要配慮者こ 置していくという意味での「支援ガバナによる救助の程度、方法及び期間並びに対する支援について言及がなされている ンス」の展開が求められる。ただし公助実費弁償の基準 ( 平成年川月 1 日内閣 地区防災計画 ー共助ー自助間の役割分担については、府告示第 228 号 ) 」があり、「一般基準 , 明確なコンセンサスが存在しているわけと呼ばれている。この一般基準によって 2013 年の災対法改正によって「地 ではない。 は救助の適切な実施が困難な場合には、 区防災計画」の規定が設けられた。災、 支援の方法であるが、①災害前の対都道府県知事は、内閣総理大臣に協議法条 3 項によると、地区防災計画と 応、②災害発生時・直後の対応、③避難し、その同意を得た上で、救助の程度、 は、市町村の一定地区内にいる居住者及引 後の対応といったフェ 1 ズごとに吟味し方法及び期間を定めることができるよ、つび事業者 ( 地区居住者等 ) が共同して行の ていく必要がある ( 注 2 ) 。本稿の題目が になっている。これを「特別基準」という う防災訓練、防災活動に必要な物資及び法 「支援」であって「避難支援」となって災害時には、災害時要配慮者のニーズ資材の備蓄、災害時における地区居住者

4. 法律のひろば 2016年3月号

は、暮らしを取り戻しつつ、自活し自立り、文化とのつながりなどが含まれる。 みに寄り添わなければ、復興の課題が見 できる力を蓄えることが、何よりも先に「治」は自律的なガバナンスを取り戻すえてこないということである。いずれに ことをいう。自分たちの地域の未来は自しても、被害の実態から復興の方向が導 求められる。「自立なくして創造なし」 ということである。なお、復興の支援に分たちで決める自治の回復がいるというき出されるので、被災の現実をリアルにろ ことである。この育、連、治の三つは、 かかわって、「与える支援ではなく、引 知ること、そのための調査に力を入れる律 法 ことが必要だ。 き出す支援を」とよく言われる。復興で被災地が自立するために欠かせない。 1 ドなインフラ は自立が欠かせず、復興支援ではその自被災者の自立と被災地の自立を区分し被害を見るときに、ハ て説明した。「人間復興」と「地域復興」や住宅だけを見ていては駄目である。生 立を促すことが欠かせないからである。 の両方が必要だからである。災害で傷つ活や生業あるいは生態を見なければなら その回復や自立を果たす上で、「医・ くのも人間であり、災害から立ち上がるない。暮らしの総体を見なければならな 職・住・育・連・治」という六つの機能 、。大切なのは、住宅復興ではなく生活 を取り戻すことが課題となる。「医」とのも人間である。それゆえ、一人ひとり いうのは心身の健康を取り戻すことであの人間が元気にならなければ、復興した復興である。暮らしや生きがいというこ とでは、人間の尊厳や権利といった側面 る。「職」というのは仕事を取り戻すことは言えない。その意味で、一人ひとり にも目を向ける必要がある。それは、喪 に目を向けるという人間復興の視点は特 とである。ここでの仕事は、生活の糧に 失感や絶望感を克服し、夢や希望を獲得 も生 MJ 力し ゞ、こもつなかる仕事をい、つ に大切である してゆくのが、復興だからである。被災 「住」は住宅や住生活を取り戻すことで 者に寄り添い、被災地に密着して、復興 ある。この医、職、住の三つは、被災者 三復興の現実と被災の実態 を考えなければならない。被災者の声を が自立するために欠かせない。 「育」というのは人材育成の機能を取被災の実態に即して、復興の方向を見しつかり聴くことを、復興の基本としな り戻すことをいう。乳幼児の保育や子供極めることは、復興計画を立てる際の基ければならない。 たちの教育、さらには後継者や担い手の本原則である。まず、原型復旧か改良復そのためには、被災者の心の動きや生 育成を含む。震災遺児を社会全体で支え旧か創造復興かは、被害の範囲や内容に活の実情も含めて、被災実態の調査をし ること、復興の担い手を社会として育むよって規定される。被害が小さければ復つかりしなければならない。復興の方向 ことが、ここでは課題となる。「連」と 旧、被害が大きければ復興ということにを定め被災者に希望を与えるためだけで なく、震災関連死や孤独死を防ぐために いうのは暮らしに欠かせないつながりをなる。次に、復興で解決すべき課題は、 取り戻すことをいう。このつながりに被災者の自立を妨げている現場の壁を知も、被災者の実態を可能な限り細やかに ところで、被災者のおかれ は、人と人のつながり、自然とのつながることで、引き出される。被災者の悲し把握したい。

5. 法律のひろば 2016年3月号

まい、その結果として今日の混乱を招い 4 大震災 5 年 てしまった。その結果責任が厳しく問わ れており、その反省からスタートしなけ ー現場が問いかける復興の課題 ろ ればと思、つからである ひ の 律 法 ひょうこ震災記念田世紀研究機構副理事長去亠﨑益輝 災害と復興 や復興の本来の在り方を問い直して、目災害の特質の第一は、それが冷酷で残 提一はじめに 標を再定義すること、第二に被災者の思 忍なものだということである。生命、生 へ いや被災地の実態に寄り添って、実態を活、生業、生態を奪ってしまう。自立や 東日本大震 5 年を迎えようとしてい 減る。今もなお苦悶している膨大な被災再確認することが欠かせない。その上自治も奪ってしまう。人権や希望も奪っ 災者が眼前にいる。この現実は、私たちにで、復興の戦略や課題を明らかにするこてしまう。ありとあらゆるものを奪って とが求められる。 しまうのが災害なのである。災害の特質 何を語りかけているのだろうか。何より 盟ハ も、現在の被災者の苦しみを和らげるた そこでここでは、その「目標の再定義、 の第二は、社会の歪みを明らかにするも めに、緩和と回復と復興の努力をしなけ実態の再確認、課題の再整理」についてのだということである。安全を軽視した 課ればならない。と同時に、明日にでも起の持論を述べさせていただいて、今日と 社会、自然を破壊した開発、格差を助長 きるかもしれない災害に備えて、震災の明日の二つの課題に応えようと思う。 する政治の問題点などが、被害と引き換 えに浮かびあがってくる。社会的矛盾に 功教訓を未来に生かす努力をしなければな 気づかせるのが災害なのである。 らない。「当面の課題」と「未来の課題」 一一災害の特質と復興の課題 の二つが、震災 5 年目を迎える私たちに となると、復興においては、災害の第 一の特質にかかわって、生活や生業など 場突き付けられている。 何を今さらと思われるかもしれない この二つの課題に正しく答える上でが、災害対応の真の原点に立ち戻るためを取り戻し、喪失感や絶望感を克服する 「災害とは何か、復興とは何か」に こと、第二の特質にかかわって、災害が 年は、冷静な目で現在の被災と復興の状況に、 を分析し、「何が欠けているのか」、「何ついて論じておきたい。東日本大震災の提起した社会矛盾に向き合って、その改 が間違いだったのか」を問わなければな復興計画立案の過程において、復興の特善に取り組むことが、基本的課題とな 火らない。実証的で自省的な検証がいると質や要件を曖味に認識したがゆえに、復る。私は、前者を立て直し、後者を世直 いうことだ。この検証では、第一に回復興の目標やビジョンを誤って設定してししと呼んでいる。立て直しは回復、世直 辰

6. 法律のひろば 2016年3月号

歳以上の高齢者であった。これをきっかけに、 20 にも、必要な支援を継続して行うことが が、法制度上やっと整備がなされたばか 05 年「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」が 可能になる。さらに、震災等の異常事態 りであるので、途中経過的な言及にとど ( 0 策定された。ガイドラインは 2006 年に改定され、 発生時には、金融機関から被災者への預まってしまったことは致し方がないとこ 2013 年まで通用していた。このような支援を必要引 金の払戻し等を「番号」を活用してスム ろである。今後は、災害時要配慮者支援 ひ とする人々は、以前は「災害弱者」と呼ばれ、 の ースに行、つことも可能とする の法政策論をいかにして構築していくか 律 5 年の阪神・淡路大震災をきっかけにその存在がクロ法 が課題となる。 ーズアップされた。「災害弱者」と「災害時要援護者」 これらの見解であるが、まだ、想像の との相違については、立木茂雄「災害時要援護者支援 ( 参考文献 ) 域を出ていない部分が多く、実現するに の課題と対策ー市民、地域、行政に求められることー」 当たってクリアしなければならない政策・津久井進ほか「「災害救助法」徹底活用」 ( クリエイツ かもがわ、 2012 年 ) 都市問題研究巻 6 号 ( 2007 年 ) 訂頁以下参照。 法務上の課題も多い。「単に使うことが ・生田長人「防災法」 ( 信山社、 2013 年 ) ( 2 ) 山崎栄一「自然災害と被災者支援』 ( 日本評論社、 できるだけにすぎない」のか「それなり 112 頁以下参照。 に使い勝手がよいーのかの吟味も不十分・西澤雅道ほか『地区防災計画制度入門内閣府「地区 である。現行の法システム上は実現不可防災計画ガイドライン」の解説と & < 」 (zee 出 ( 3 ) 他方、災害時になると「今、まさにどこにいるの か」が重要となり、や災害伝言ダイヤルによる 能なものさえ存在する ( 注 4 ) 。また、災版、 2014 年 ) ・日置巴美Ⅱ板倉陽一郎「平成年改正個人情報保護 情報提供やなどの追跡システムによる所在把握 害時要配慮者が、自身の個人番号を当然 がポイントとなる。そうすると、避難行動要支援者名 のよ、つに暗記しているとい、つ文化か醸成法のしくみ』 ( 商事法務、 2015 年 ) ・山崎栄一「災害時要援護者とは用語法の複雑性と支 簿の情報というのは、あくまでも居所の情報にすぎ されていることが前提となろ、つ ず、その情報が役に立つ状況が限定されているという 援のあり方」復興川号 ( 2014 年 ) 358 頁 現状においては、情報処理技術はもと 認識も必要である。 ・山崎栄一「第 8 章災害対策基本法の見直し」関西大 より、法的・現実的に可能な活用方法を ( 4 ) 岡本正ほか「自治体の個人情報保護と共有の実務」 学社会安全学部編「防災・減災のための社会安全学』 希求していく過程の途上にあるといって ( ぎよ、っせい、 2 013 年 ) 103 頁以下参照。 もよいマイナンハ 1 制度の全体的な動 ( ミネルヴァ書房、 2014 年 ) 1415157 頁 向をにらみつつ、これから課題そのもの ( やまさき・えいいち ) を精緻化していくことになる。 三むすび 災害時要配慮者に対する支援である ( 注 ) ( 1 ) 災害時要援護者の避難支援が政策課題として取り 上げられるきっかけになったのは、 2004 年に起き た新潟県三条水害をはじめとする風水害であった。こ の年の風水害における死者・行方不明者のうち 6 割が ワ 3 0 1 っ

7. 法律のひろば 2016年3月号

による無料法律相談活動が組織的に、か けではない。そこで、支援意思と能力のらの避難者への支援を目的として 201 っ迅速に行われるほど、右側及び左側のある専門士業団体を構成して、基礎自治 1 年に立ち上げた「広島県災害復興支援 双方の矢印が有機的一体のサイクルとし体や支援機関と協定を結ぶことも効果的士業連絡会」を通じて、 2014 年の広 て機能することになる。それは、被災者である。 島土砂災害の発災直後から、ボランティ ろ の生活再建を迅速にし、災害からの立ち表 3 は、各都道府県の弁護士会のうアセンタ 1 と連携して相談活動にとどまの 直り、すなわち強靭性 ( レジリエンス ) ち、自治体と災害協定締結しているか、 らない幅広い支援活動を実施した。広島法 を構築する活動でもある。ひいては、国士業団体と災害時連携 ( ネットワーク ) 弁護士会の無料法律相談活動は、 1 年余 りで 250 件となり、その相談分析結果 をはじめとする政策担当者の意思決定やを構築している弁護士会を一覧にしたも 政策立案を補完・強化することにも繋がのである ( 注 8 ) 。災害協定や士業連携は、 も公表された ( 注リ。図 3 は、広島土砂 る。 大災害を契機に成立することが多く、表災害の被災者に対して、弁護士が実施し 3 では、東日本大震災後に災害協定締結た無料法律相談の内容である ( 分析手法 は図 1 と同じ ) 。「肥災害関連法令」の相 や士業連携構築に至った例が多い。 2 災害協定と士業連携 1995 年の阪神・淡路大震災後の被談は、住居が損壊した場合の支援策であ 弁護士が無料法律相談活動を始めるに災者支援を目的として同年に設立されたる「被災者生活再建支援金」 ( 住居全壊 「阪神淡路まちづくり支援機構」は、東の場合の基礎支援金は原則 100 万円 ) は、行政機関との連携が不可欠である。 基礎自治体や県の助力がなければ、避難日本大震災においても各地で被災者相談や、それらの支援を受ける前提となる「罹 所に立ち入ることもできないし、また無活動や、まちづくりの合意形成支援活動災 ( りさい ) 証明書 , の発行に関する情 などを展開している ( 注 9 ) 。阪神・淡路報提供等を内容としている。法令解釈を 料法律相談活動の周知もままならない。 何よりも、公の機関との連携が、被災者大震災の教訓を首都直下地震・南海トラ述べる典型的な「法律相談」というより く、 2004 年に設立は、被災者の家庭の状況や、被災の程度 に対して信頼感と安心感を与えることにフ地震に伝承すべ もなる。そこで、災害直後から弁護士がされた「災害復興まちづくり支援機構」 に応じて、支援メニューを整理して情報 無料法律相談活動を開始できるよう、行は、 2013 年台風号による伊豆大島提供する役割を果たしている類型であ 政機関と事前の合意をしておくことが不土砂災害において、東京都との事前の災る。当該類型が多いことは、東日本大震 可欠である。具体的には、災害時の無料害協定に基づいて、被災地で複数士業に災の津波被災地におけるリーガル・ニー 法律相談活動に関する協定を事前に締結よるワンストップ相談会を実施し、住民ズと共通している。過去の災害支援の教 しておき、防災訓練などを一緒に行うこのみならず自治体担当者への相談も数多訓が広島土砂災害の被災者支援に役立っ とが必要になると考えられる。また、災く行った ( 注四。広島弁護士会は、東日たことは一一一一口うまでもない。 害時に役割を発揮できる士業は弁護士だ本大震災・福島第一原子力発電所事故か

8. 法律のひろば 2016年3月号

特集震災から 5 年現場から問いかける課題と復興・防災・減災への提言 東日本大震災を教訓とした弁護士の防災・減災活動 会に浸透させることが効果的であると考タ 1 トラインとして、災害派遣弁護士チ える。 1 ムの活躍が、災害後のスタンダードと して受け入れられる社会を目指したい。 四おわりにー法的強靭性のあ ( 主要参考文献 ) る社会へ ・岡本正「災害復興法学』 ( 慶應義塾大学出版会、 20 14 年 ) 弁護士は、災害に備える制度づくり・ 社会的基盤の整備を通じて、防災・減災 ( 注 ) への貢献が可能である。これは社会が法 ( 1 ) 日本弁護士連合会ウエプサイト「東日本大震災無 的強靭性 ( リーガル・レジリエンス ) を 料法律相談情報分析結果」 ( 第 1 次分析 5 第 5 次分 持っことにほかならない。そのための人析 ) 」 ( 年 2 012 年 ) 。筆者によるデータ・ べ 1 ス化の提言によりプロジェクトを開始し、筆者は 材育成の手段として、東日本大震災後の 新たな法制度構築や法改正の軌跡を伝承責任者として 2 。 11 年 4 月から肥月まで日本弁護士 することは不可欠である。災害復興法学連合会災害対策本部嘱託室長に就任。 ( 2 ) 岡本正「災害復興法学』 ( 慶應義塾大学出版会、 2 もその取組の一つとして寄与することを 014 年 ) において復興政策の軌跡を詳述している。 目指すものである。加えて、国民ひとり ( 3 ) 外務省ウエプサイト「持続可能な開発のための 2 ひとりが、視覚化された被災地のリーガ 0 3 0 アジェンダ」 ( 仮訳 ) から引用している。 ル・ニーズから、「被災する」ことのイ ( 4 ) 内閣官房国土強靭化推進室は強靭性 ( レジリエン メージを、自らの日常生活の延長で考え ス ) に関して、「強靱な国土、経済社会システムとは、 ることができれば、日常生活が破壊され私たちの国土や経済、暮らしが、災害や事故などによ り致命的な被害を負わない強さと、速やかに回復する ることが「災害」だということに気付く。 しなやかさをもっこと」であり、強靭の反対語は「脆 そうすれば、日常生活を取り戻すための 弱」であると説明している ( 内閣官房国土強靭化室ウ 「生活防災」ともいうべき法制度の知識 エプサイト「国土強靭化とは ? 5 強くて、しなやかな と情報伝達の重要性を理解することがで ニッポンへ 5 」 ( 2014 年 6 月版 ) より ) きるだろう。そして、これらの前提の上 ワ 3 -0 1 上 0 ( 5 ) 2015 年月 3 日、ネパール大震災 ( にあってこそ「災害派遣弁護士チーム」 年 4 月日発生 ) に関する復興支援セミナーが、カト (Q*-Ä<+) が立ち回ることが可能にな マンズで開催され、筆者は「災害復興法学のすすめ」 と題する基調講演を担当し、災害後の法改正や弁護士 る。自治体との災害協定や士業連携をス による法律相談による生活再建支援の実績を報告し た。資料を含む詳細はウエプサイトを参照 http ・ go.jp/nepal/office/information/even 7151127 ー 01. htr 三 ( 6 ) 岡本・前掲 ( 注 2 ) の「第 2 部第川章 2 」に詳述 している。 ( 7 ) 「東日本大震災通知・事務連絡集」。筆者が代表者 となり、 Hack for Jap 目と弁護士の融資メンバ 1 らで 務省、国土交通省ほかの省庁について、東日本大震災 後約半年間で発出された通知・事務連絡等をまとめ た。 http ://www.sinsailaw.info/ ( 8 ) 2015 年肥月現在の日本弁護士連合会災害復興 支援委員会委員ら有志の調査結果による。現時点で、 必ずしも全都道府県の実例が把握されているわけでは ない。また、協定締結や士業連携構築に向けて協議中 の弁護士会は除いている。 ( 9 ) 阪神・淡路まちづくり支援機構付属研究会「士業・ 専門家の災害復興支援 1 ・の経験、 3 ・Ⅱの取り 組み、南海等への備え ( クリエイツ震災復興・原発震 災提言シリーズご ( クリエイツかもがわ、 2014 年 ) 等参照。 ( 四岡本・前掲 ( 注 2 ) の「第 2 部第川章 4 」に詳述 している ( Ⅱ ) 広島弁護士会ウエプサイト「平成年 ( 2014 3 年 ) 8 月広島市豪雨災害無料法律相談情報分析結果 ( 第 ( 0 1 次分析 ) 」 ( 2015 年 ) 。なお報告書作成の主担当 は今田健太郎弁護士。作成協力として小山治 ( 徳島大 ろ ひ 学 ) 、岡本正 ( 筆者 ) 。 の 律 ( 肥 ) 日本ウエプサイト http ://www.dmat.jp/ 法 ( おかもと・ただし )

9. 法律のひろば 2016年3月号

特集震災から 5 年現場から問いかける課題と復興・防災・減災への提言 法律家としての支援ー法制度の改善への取組 容の具体的な解説は別稿に譲ることにしる大型法制は、平成年月制定の「東なやかな国民生活の実現を図る国土強 て、本稿では被災者から見てどのような日本大震災復興特別区域法」だ。これは、 化の取組を推進する」ことを期して定め 意味を持っていたのかを、主なものに絞被災地において産業集積等の復興推進のられたものである。しかし、同法に基づ って順に見ていくことにする。 計画を可能とするための規制緩和や、土 いて定められた国土強靱化基本計画を見 震災直後の平成年 4 月Ⅱ日からスタ地利用に関する諸法令上の手続を一部緩ると、大規模な公共工事への投資比重が ートした東日本大震災復興構想会議の結和して復興整備を容易にする特例や、極めて高いことは否めず、国土強靱化の 論を踏まえ、同年 6 月「東日本大震災復様々な復興事業を実施するための復興交名の下にかってのように全国的に公共土 興基本法」が制定された。文字どおり復付金の交付を定めた法律である。言わば木事業が展開されるおそれもあり、東日 興の基本理念を示し、復興の推進役とな復興に係る行政施策の特例の集大成であ本大震災の被災地の目線からは「ピンと るべき復興庁の設立の根拠法にもなつる。その適用や運用の具体的な功罪は本来ない」感が強い。 た。 2 条に列挙された基本理念そのもの稿ではさておくとして、この法律が想定 ほかにも「東日本大震災により甚大な は誤っていないのだが、しかし 1 条の目する世界に被災者が登場しないことは指被害を受けた市街地における建築制限の 的条項の末尾が「 : : : 日本の再生を図る摘しておかなければならない。住民の手特例に関する法律」、「津波防災地域づく ことを目的とする。」と締め括られてい続参加の機会が略され、被災者の生活再りに関する法律」、「福島復興再生特別措 た。これがあだとなって復興予算の流用建に直接的に資する事業は定められてい置法」など多数の特別立法がなされてい 問題が起きることとなる。会計検査院のない彳。 。麦こ、この法律の枢要部分が「大るが、これらが円滑に被災地で適用さ 調査により、復興予算で実施された 32 規模災害からの復興に関する法律」としれ、被災者から歓迎を受けているわけで 6 事業 ( 調査対象 1401 事業 ) で計 1 て恒久法化された。大規模災害におけるはない。その理由の一つとして、被災地 4 兆円が被災地復興とは関係のない事業行政手続の現実的な特例法としては評価から発意されて立法されたのではなく、 であったことが明らかとなった。被災地できることは間違いない。しかし、被災中央の目線で手当てしたものである、と では、予算の適正な執行を理由に、中小者の目線に立ったとき、同法により復興 いう点が共通していると思われる。 事業者の再建を支えるグループ補助金がのイメ 1 ジが沸き立っことはない。 中央目線に偏ってしまった原因は、平 限定され、災害関連死の認定も限定され そして、今後の災害に対峙するために時からの国と地方の構造的問題が第一だ るなどの事象も生じている。被災者の目平成年に「強くしなやかな国民生活のが、そのほか、地方側にも創造的発想あ引 線からみると、この復興予算の流用は極実現を図るための防災・減災等に資するるいは法務政策能力が乏しいところにもの めて大きなモラルハザードであった。 国土強靱化基本法」が制定された。これ求められるだろう。そういう切り口から法 また、東日本大震災の復興の目玉となは東日本大震災の被害を前提に「強くしみると、注目すべき立法が一つ挙げられ

10. 法律のひろば 2016年3月号

体系との整合性を勘案しながら行う地道ス評価されるべきことである。一方、既ら、まったく新たな立法命題であった。 な作業をイメ 1 ジするのが一般だろう。存の法体系との整合性の検討が十分でなしかも、ひとます特例法という形を取っ たが、実際に被災地で有効に機能したこ 東日本大震災の初期段階に際しては、こかったことも否めない。ただし、検討が のイメ 1 ジと同様の側面と、異なる側面難しい理由は、そもそも災害法制自体のとが確認され、法体系の中に組み込むこタ があった。 法体系が確立されていないところにあとが相当であると判断された結果、平成の 東日本大震災と福島第一原子力発電所る。災害が起きるとその都度、特別措置年 6 月には「特定非常災害の被害者の法 事故という圧倒的な現実に即して大量の法を講じることが多く、場当たり的な立権利利益の保全等を図るための特別措置 立法命題が噴出した。弁護士たちは、こ法を行って済ませ、より一層法体系の整に関する法律」に熟慮期間の延長の規定 が新設され、恒久法となった。 れらを法律相談という機会を通して丁寧序が乱れることになる繰り返しである。 こうしてみると、大災害に直面した法 に収集し、整理・検討して具体的な立法法体系の整序は、平時において行うほか ない。したがって、法律家もそうした問律家には、第一に被災者が訴えるリーガ 事実としてまとめあげる作業をまず行っ ルニーズを収集する役割、第二に埋もれ た。現場で被災者に寄り添いながら相談題意識を常に持たなければならない。 その中にあって、平成年 6 月に成立ているリーガルニーズを発掘する役割、 を行った地元弁護士会の会員や支援に出 向いた弁護士らの甚大な努力と、その結した「東日本大震災に伴う相続の承認又第三にこれらを立法事実として命題化す 」こる役割、第四にその命題を立法プロセス 果の収集・分類・検討を行った地元弁護は放棄をすべき期間に係る民法の特例。 士会・日弁連の弁護士らのチ 1 ムワ 1 ク関する法律」は特筆すべき立法措置であに載せる役割、第五に経験知としてスト による成果だ。こうして得られた立法命る。この法律は、多数の死者、行方不明ックする役割、第六に新規立法を被災地 題に対応する教訓のストックを、過去の者が出た東日本大震災の被災地で、親族に還元して活用する役割、第七にこれを 災害で支援に当たった法律家たちが保有の突然の死に茫然としたまま時を過ごし法体系に整序して恒久化するよう働き掛 していた。そして、一刻も早く被災地のている被災者の群像を直視した弁護士ける役割があるということになろう。 が、このままだと民法 915 条 1 項本文 ニーズに応える必要かあったことから、 被災地ニ 1 ズと過去の教訓をマッチングに定める熟慮期間 ( 相続の開始を知った 四中央主導の立法措置と地方 して、一連の立法に結びつけた。この過ときから 3 か月 ) が経過してしまうおそ の法務政策能力 程は、平時の立法プロセスと順序は同じれがあると気付いて、先んじてリーガル である。しかし、第一にスピ 1 ドにおい ニ 1 ズを発掘して提言を行い、急遽立法初期段階には被災者目線の立法が相次 いだが、その後の中期段階には大がかり て、第二に法体系との整合性の保持にお措置が講じられたものである。過去にこ な立法措置が講じられた。それら立法内 いて、平時と違っていた。迅速さはプラうした先例的な課題は存しなかったか