の重要性に鑑みると、このような 期に定めて子の身分関係の法的安後 6 か月程度経たないと懐胎の有ることは困難になったといわざる 立法目的には合理性を認めること定を図る仕組みが設けられた趣旨 無を確定することが困難であり を得ない ができる 加えて、我が国においては、社 に鑑みれば、父性の推定の重複を父子関係を確定するための医療や そうすると、次に、本件規定避けるため前記の 100 日につい 科学技術も未発達であった状況の会状況及び経済状況の変化に伴い 月ニ = ロ が立法目的との関連において蔔 て一律に女性の再婚を制約するこ下において、再婚後に前夫の子が婚姻及び家族の実態が変化し、特 の趣旨にかなう合理性を有すると とは、婚姻及び家族に関する事項生まれる可能性をできるだけ少な に平成期に入った後においては、 評価できるものであるか否かが問 について国会に認められる合理的 くして家庭の不和を避けるという晩婚化が進む一方で、離婚件数及 題となる。 な立法裁量の範囲を超えるもので観点や、再婚後に生まれる子の父び再婚件数が増加するなど、再婚 ア民法 7 7 2 条 2 項は、「婚姻 はなく、前記立法目的との関連に子関係が争われる事態を減らすこ をすることについての制約をでき の成立の日から 200 日を経過しおいて合理性を有するものという とによって、父性の判定を誤り血る限り少なくするという要請が高 た後又は婚姻の解消若しくは取消 ことができるから、本件規定のう統に混乱が生ずることを避けると まっている事情も認めることがで しの日から 300 日以内に生まれち 100 日の再婚禁止期間を設け いう観点から、再婚禁止期間を厳きる。 た子は、婚姻中に懐胎したものと る部分は、憲法条 1 項にも、憲密に父性の推定が重複することを そして、婚姻をするについての 推定する。」と規定して、出産の法条 2 項にも違反するものでは回避するための期間に限定せず、 自由が憲法条 1 項の規定の趣旨 一定の期間の幅を設けようとした 時期から逆算して懐胎の時期を推ない に照らし十分尊重されるべきもの 定し、その結果婚姻中に懐胎した イこれに対し、本件規定のうち ものであったことがうかがわれであることや妻が婚姻前から懐胎 ものと推定される子について、同 100 日を超えて再婚禁止期間を る。このような旧民法起草時におしていた子を産むことは再婚の場 条 1 項が「妻が婚姻中に懐胎した 100 日超過ける諸事情に鑑みると、再婚禁止合に限られないことをも考慮すれ 設ける部分 ( 以下「 ば、再婚の場合に限って、前夫の 子は、夫の子と推定する。」と規部分」という。 ) については、民期間を 6 か月と定めたことが不合 定している。そうすると、女性の法 772 条の定める父性の推定の理であったとは言い難く、このこ子が生まれる可能性をできるだけ 再婚後に生まれる子については、 重複を回避するために必要な期間 とは、再婚禁止期間の規定が旧民少なくして家庭の不和を避けると とい一つことはできない 計算上 100 日の再婚禁止期間を 法から現行の民法に引き継がれた いう観点や、婚姻後に生まれる子 設けることによって、父性の推定 昭和年法律第 222 号による 後においても同様であるが、そのの父子関係が争われる事態を減ら の重複が回避されることになる。 後、医療や科学技術が発達した今すことによって、父性の判定を誤 改正前の民法 ( 以下「旧民法」と 夫婦間の子が嫡出子となること り血統に混乱が生ずることを避け いう。 ) 7 6 7 条 1 項において再日においては、前記のような各観 は婚姻による重要な効果であると 婚禁止期間が 6 か月と定められた点から、再婚禁止期間を厳密に父るという観点から、厳密に父性の ころ、嫡出子について出産の時期ことの根拠について、旧民法起草性の推定が重複することを回避す推定が重複することを回避するた るための期間に限定せず、一定のめの期間を超えて婚姻を禁止する を起点とする明確で画一的な基準時の立案担当者の説明等からする から父性を推定し、父子関係を早と、その当時は、専門家でも懐胎期間の幅を設けることを正当化す期間を設けることを正当化するこ 法律のひろば 2016.3 ・ 78
記立法目的を達成するために再婚取消しの日から 6 か月の再婚禁止 禁止期間を具体的にどの程度の期期間を定めており、これによっ 間とするかは、前記立法目的と女て、再婚をする際の要件に関し男 性の再婚の自由との調整を図りつ性と女性とを区別しているから、 つ、内外における社会的環境の変このような区別をすることが事柄 化等をも踏まえて立法府においての性質に応じた合理的な根拠に基 議論して決定されるべき問題であづくものと認められない場合に り、これを 6 か月とした本件規定は、本件規定は憲法条 1 項に違 か直ちに合理的関連性を欠いた過反することになる。 ◎損害賠償請求上告事告人 ( 国 ) に対し、国家賠償法 1 喇な制約であるということもでき 本件においては、本件規定が再 件 ( 再婚禁止期間違憲条 1 項に基づき損害賠償を求めた 事案である。 ないことから、本件立法不作為婚をする際の要件に関し男女の区 国家賠償請求事件 ) は、国家賠償法 1 条 1 項の適用別をしていることにつき、そのよ ( 最高裁大法廷 うな区別をすることの立法目的に 一第一審及び控訴審の判断 上、違法の評価を受けるものでは 平成年月日判決 ) 合理的な根拠があり、かっ、その 第一審 ( 岡山地裁平成年月ない。 区別の具体的内容が前記の立法目 衵日判決 ) は、本件規定による区 ニ本判決の要旨 的との関連において合理性を有す 本件は、女性について 6 か月の別が憲法条 1 項及び条 2 項に 再婚禁止期間を定める民法 733 違反しないと解する余地も十分に 本判決は、要旨次のように判示るものであるかどうかという観点 から憲法適合性の審査を行うのが 条 1 項の規定 ( 以下「本件規定」あるから、本件立法不作為は、国して、上告人の上告を棄却した。 相当である 本件規定の憲法適合性 という。 ) があるために、前婚の家賠償法上違法ではない旨判示し 憲法条 1 項は、事柄の性質 解消から再婚するまでに 6 か月のて、上告人の請求を棄却した。 ②まず、本件規定の立法目的 経過を待たなければならず、この は、女性の再婚後に生まれた子に 控訴審 ( 広島高裁岡山支部平成に応じた合理的な根拠に基づくも ことにより精神的損害を被ったと 年 4 月日判決 ) は、要旨次ののでない限り、法的な差別的取扱っき父性の推定の重複を回避し、 いを禁止する趣旨のものであるともって父子関係をめぐる紛争の発 する上告人 ( 原告、控訴人。以下ように判示して、上告人の控訴を 解すべきであるところ ( 最高裁昭生を未然に防ぐことにあると解す 「上告人」という。 ) が、本件規定棄却した。 は憲法曰条 1 項及び条 2 項に違 本件規定の趣旨は、父性の推定和年 5 月日大法廷判決・民集るのが相当であり ( 最高裁平成 7 年月 5 日第三小法廷判決・裁判 反すると主張し、本件規定を改廃の重複を回避し、父子関係をめぐ 巻 4 号 676 頁、最高裁昭和 する立法措置を執らなかった立法る紛争の発生を未然に防ぐことに年 4 月 4 日大法廷判決・刑集巻集民事 177 号 243 頁 ( 以下「平 成 7 年判決」という。 ) 参照。 ) 、 3 号 265 頁等 ) 、本件規定は、 不作為 ( 以下「本件立法不作為」あると解され、その立法目的には という。 ) の違法を理由に、被上合理性があると認められる上、前女性についてのみ前婚の解消又は父子関係が早期に明確となること 公攵力主月 一三ロマイ 77 ・法律のひろば 2016.3
東日本大震災を教訓とした弁護士の防災・減災活動 表 1 東日本大震災後に弁護士が関与して成立した法制度 1 . 被災ローン減免制度の構築 「ニ重ローン」問題の解決のため、被災債務の買取りや減免制度を新設すべきと主張 していたところ、個人の被災ローン減免制度である「個人債務者の私的整理に関する ガイドライン」並びに、事業者の債務買取り等を含む事業再生制度である「株式会社 東日本大震災事業者再生支援機構法」が成立した。また被災ローン減免制度の周知徹 底について求めていたところ、金融庁から金融機関に対し周知徹底を求める通知等が 発信され、金融機関から被災者に対し葉書等による周知がなされるまでに至った。ま た、将来の災害にも備えるべく 2015 年 12 月には自然災害による被災者の債務整理に関 するガイドライン研究会により「自然災害債務整理ガイドライン」が日弁連ほか関係 各機関で構成される研究会で策定された。 2 . 相続放棄等の熟慮期間の延長 民法規定の「 3 か月以内」では短期間すぎるとして、相続放棄等の熟慮期間の 1 年の 延長を求めていたところ、議員立法で「東日本大震災に伴う相続の承認又は放棄をす べき期間に係る民法の特例に関する法律」が成立し、 2011 年 11 月 30 日まで熟慮期間が 延長されることとなった。被災地では相続放棄や期間延長の申述件数も大幅に増加し た。 2013 年 6 月の「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置 に関する法律」の改正により、将来の巨大災害でも政府の判断で熟慮期間の延長がで きるようになった。 3 . 災害弔慰金の支給対象者の兄弟姉妹への拡大 災害弔慰金の支給対象に兄弟姉妹が含まれていなかったが、同居又は生計を同一にし ていた兄弟姉妹を対象に含める「災害弔慰金の支給等に関する法律の一部を改正する 法律」が成立した。また、被災地域の市町村では、条例を改正して対応したところも ある。義援金の分配についても、兄弟姉妹が支給対象から除外されていたが、県レベ ルで、兄弟姉妹に拡大するなどの対応がとられた。 4 . 災害弔慰金・被災者生活再建支援金・義援金の差押禁止債権化 災害弔慰金は形式的には、債権者による差押えが可能であったことから、差押えの対 象とならないようにすることを求めていたところ、議員立法で差押えを禁止する法案 が成立した。 5 . 罹災都市借地借家臨時処理法の不適用 賃貸借契約に関する相談実態からすれば、同法の適用による優先的借地権等の設定は、 まちづくりを阻害しかねなかった。同法の適用を検討していた法務省や総務省と意見 交換を重ねた結果、最終的には東日本大震災における同法の不適用が決定された。 6 . 原発事故子ども・被災者支援法の成立 原子力発電所事故に起因する様々なニーズを集約することで、「東京電力原子力事故 により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活 支援等に関する施策の推進に関する法律」の成立に寄与した。この支援法に基づく具 体的施策を提案することが法律家の新たな使命となった。 7 . 災害対策基本法 2013 年改正 自治体の被災者の個人情報が支援者に共有されないことで、災害時要援護者や広域避 難者の救助・支援が困難になっている現状を踏まえ、日弁連で関連意見書提出や個人 情報の共有ガイドライン策定を実施。周知のためにシンポジウム「災害時における個 人情報の適切な取扱い」を全国キャラバンで実施。「避難行動要支援者名簿」「安否情 報」「被災者台帳」の制度化等、自治体の個人情報政策に大きな影響を与える大改正 につながった。 8 . 原子力損害に係る損害賠償請求権の消減時効延長 潜在的な該当者は 100 万人規模に達する画期的とも言える特例法である。「東日本大震 災における原子力発電所の事故により生じた原子力損害に係る早期かっ確実な賠償を 実現するための措置及び当該原子力損害に係る賠償請求権の消減時効等の特例に関す る法律」は、不法行為の損害賠償請求権において「 3 年間」とされている消減時効を 「 10 年間」に延長し、また「不法行為の時から 20 年」とされている除斥期間を「損害 が生じた時から 20 年」とした。 9 . 復興用地の土地収用を促進する規制緩和の実現 「東日本大震災復興特別区域法の一部を改正する法律」が、 2014 年 5 月 1 日から施行 された。本法律は、東日本大震災の被災地において、所有者不明、相続未処理、多数 共有の土地等円滑に取得が進まない復興事業の用地が多数存在し、その迅速な確保が 喫緊の課題となっていることに鑑み、土地収用の裁決手続の要件緩和、防災集団移転 事業の要件緩和、などが法制度として認められた。 45 ・法律のひろば 2016.3 特集震災から 5 年現場から問いかける課題と復興・防災・減災への提言 に来 ロた の棄 っ巨 大の の法 害慮重度 ン築 制なやく 度と 築将 続宅 性共き り律 , 相 や軌 歴跡 のに は数 ハ時あ付おる 應こ にる 大筆 . 承 . ロ 学者 しになや災な の改起災 る大 れ共を繰た国 びで 法以な策憶返にあ 学降ら上すす課る 部順 と れ を し て 実 現 識てたニ化 々 ウ 法はて対災 か な 同年ば政記 な い に の備間 ん 。久 的 な 構 虹 料 談 の デ タ イヾ に ょ 、伝災妻改はで 生惨正 い応害用力 る教善 と 土 て る も も 浮 . 、彫 に な リ ル 1 ズ す け公訓 ノ 放 等 い災熟二制 期 ク ) 多る問問オ い恒題題け 2 1 ン ロ 1 1 、相住 な は で 構 の の め 過公 の政 経策 験の し て み じ、 さ れ 慶 塾 科 大 学 院 史活 と表用 1 つ そ 義でも 2 0 1 2 、次 3 開承 展伝 とを 設跡 創軌 のの 学策 法政 興 復 害 る す き を り のる必題日 し、 、てき き 要に本 0 、は
とは困難であり、他にこれを正当員の立法過程における行動が個々 7 号 1512 頁、最高裁平成年明白であったということは困難で 9 月日大法廷判決・民集巻 7 ある 化し得る根拠を見いだすこともでの国民に対して負う職務上の法的 したがって、本件立法不作為 きないことからすれば、本件規定義務に違反したかどうかの問題で号 2087 頁参照。 ) 。 のうち 100 日超過部分は合理性あり、立法の内容の違憲性の問題 しかしながら、再婚禁止期間を は、憲法上保障され又は保護され を欠いた過剰な制約を課すものと とは区別されるべきものであると廃止し又は短縮しない国会の立法ている権利利益を合理的な理由な なっているというべきである。そころ、前記行動についての評価は不作為が国家賠償法 1 条 1 項の適く制約するものとして憲法の規定 うすると本件規定のうち 100 日原則として国民の政治的判断に委用上違法の評価を受けるかが争わに違反することが明白であるにも 超過部分は、遅くとも上告人が前 ねられるべき事柄であって、仮にれた事案において平成 7 年判決かかわらず国会が正当な理由なく 婚を解消した日から 100 日を経当該立法の内容が憲法の規定に違は、国会が民法 733 条を改廃し長期にわたって改廃等の立法措置 過した時点までには、婚姻及び家反するものであるとしても、そのなかったことにつき直ちにその立を怠っていたものと評価すること 族に関する事項について国会に認ゆえに国会議員の立法行為又は立法不作為が違法となる例外的な場はできず、国家賠償法 1 条 1 項の 合に当たると解する余地のないこ適用上違法の評価を受けるもので められる合理的な立法裁量の範囲法不作為が直ちに国家賠償法 1 条 はないというべきである とは明らかであるとの判断を示し 1 項の適用上違法の評価を受ける を超えるものとして、その立法目 的との関連において合理性を欠くものではない。もっとも、法律のており、これを受けた国会議員と しては、本件規定を改廃するか否 ものになっていたと解される。 規定が憲法上保障され又は保護さ ウ以上の次第で、本件規定のうれている権利利益を合理的な理由かについては、平成 7 年の時点に なく制約するものとして憲法の規おいて、基本的に立法政策に委ね ち 100 日超過部分が憲法四条 2 るのが相当であるとする司法判断 項にいう両性の本質的平等に立脚定に違反するものであることが明 が示されたと受け止めたとしても したものでなくなっていたことも白であるにもかかわらず、国会が 明らかであり、前記当時にお、 正当な理由なく長期にわたってそやむを得ないところ、その後も、 て、同部分は、憲法条 1 項に違の改廃等の立法措置を怠る場合な本件規定のうち 100 日超過部分 どにおいては、国会議員の立法過については違憲の問題が生ずると 反するとともに、憲法条 2 項に 程における行動が前記職務上の法の司法判断がされてこなかった状 も違反するに至っていたというべ きである。 的義務に違反したものとして、例況の下において、我が国における ト勺こ、その立法不作為は、国家医療や科学技術の発達及び社会状 2 本件立法不作為の国家賠償法タ白 , 賠償法 1 条 1 項の規定の適用上違況の変化等に伴い、本件規定のう 上の違法性の有無 ち 100 日超過部分が憲法条 1 国会議員の立法行為又は立法不法の評価を受けることがあるとい 項及び条 2 項に違反するものと 作為が国家賠償法 1 条 1 項の適用うべきである ( 最高裁昭和年ⅱ 上違法となるかどうかは、国会議月幻日第一小法廷判決・民集巻なっていたことが、国会にとって 79 ・法律のひろば 2016.3
つん みないという立場のようである。 は婚姻を認めないという法も合憲かなど 多数意見でもう一つ注目されるのは、 各裁判官の頭の中には一般的な合憲性と突っ込まれている。 かっては合憲であった法が、時代と共に 審査基準が前提にあったのかもしれない 一方、反対意見の側では婚姻を多数意社会状況が変化し、現在では違憲になっ が、本件においては多数意見も反対意見見のようなものであるとみると、 3 人以たという考え方を採っていることであ ろ もそのような合憲性審査基準について依上による婚姻を認めざるを得なくなるとる。ゞミ、 e ま e 判決は Bo ミ判決が当初の 拠するような姿勢が非常に希薄である。 反論している。同性婚よりも一夫多妻なから誤りであったとして変更したが、今 本件のような微妙な問題については、ど いし一妻多夫のほうがまだ歴史上の正当回は B 判決の判例変更につきその のような基準を使うかを決めさえすれば性があるなどとも反論する ( もっとも、 ような言及がない。同性愛を含む性的少 それでほば自動的に結論が出るようにみ反対意見のような婚姻の捉え方でも 3 人数者の権利の保護がいわれるようになっ える形式的な判断になるのを嫌ったので以上による婚姻は否定できないかもしれたのが、最近のことであることを考える あろ、つか ( 注 5 ) 。 ないが。 ) 。 と、同性婚を認めないことが違憲である 婚姻観の差異 本判決を読んで気付くのは、多数意見というのが、当初からそうであったとい 右②のような審査方法からすると、今も反対意見もキリスト教の考えに言及し うことはおよそ不可能であることは、多 度は、多数意見と反対意見の各裁判官のていないことである。ミ ) 判決では数意見も十分意識しているはずである 婚姻観が色濃く反映した判文になってく ーガー首席裁判官が同性愛行為を処罰そこで、社会状況の変遷により合憲から ることが避けられない するのはユダヤ・キリスト教の倫理規範違憲へと変化したという判断になったも そもそも婚姻の本質とは何か。この点であるなどと言っていた。今回は、婚姻のと思われる。このような時代の変化と について、多数意見は親密な者と性的なの本質について、孔子、キケロに始まり、共に合憲であったものが違憲になるとい ことを含む共同体を作ることとみるし、 ジョン・ロックに ~ 行き、カラハリ砂漠か うのは、我が国の身分法に関わる違憲判 反対意見は永続的な関係を持っ父母の下ら、漢、アステカなどと歴史の縦軸と世決でもみられるところである。国籍法に で子を作り育てることとみる。 界のあらゆる地域にわたるという地理的よる国籍取得 ( 注 7 ) 、嫡出でない子の相 最高裁の口頭弁論で州の代理人が婚姻な横軸に言及し、人類にとって婚姻とは続分差別、再婚禁止期間についての一連 の本質について反対意見のようなことを何であるのかという興味深い議論を展開の最高裁大法廷判例を参照されたい。 述べたところ、裁判官 ( ケイガン、ギンしている ( 注 6 ) 。本判決があえてキリス 反対意見は、そのような時代の変化に ズバーグ ) から、それでは、「私たち夫ト教に基づく判断をしているのではない 応じた対応をするのにふさわしい機関 ことを強調する意図であろう。 婦は子を作りません」という宣言をした は、裁判所ではなく、議会であるという 者の婚姻を認めないという法も合憲か、 ④社会状況の変遷と合憲から違憲へののであろう。 変化 子を産めない女性 ( 間歳以上の女性 ) に
英米法研究 ( 3 ) 英国法の注釈書を執筆した世紀英国の高名な法 3 今後への影響 学者・判事。 本判決によって米国では全国で同性婚 ( 4 ) ごミミ夛 U. s. 40 0905 ) ( 5 ) 我が国の最高裁でも、事案によっては、一定の合 が認められるよ、つになった。ヨーロッパ でも同性婚を認める国は相当数存在す憲性審査基準を前提にしつつも、これを明確には判示 る。そのような状況においては、いずれすることなく、一見すると諸事情の総合考慮で結論を 我か国でも、本件と同じよ、つに、同性婚出しているようにみえるものもある。嫡出でない子の を認めない民法の規定の合憲性が争われ相続分差別を違憲とした最大決平成年 9 月 4 日・民 たり、外国で認められた同性同士の婚姻集巻 6 号 1320 頁などを参照。 を我が国で認めるか ( 準拠法が同性婚を ( 6 ) 婚姻の本質が何かということは、民法 750 条の 定める夫婦同氏制の合憲性が争われた最大判平成年 認める国の法であった場合に、これを認 肥月日・裁時 1642 号頁でも言及されている めることが公序に反するか否かという形 同判決の多数意見には、「婚姻の重要な効果として夫 の問題を含む。 ) どうかが問題になった 婦間の子が夫婦の共同親権に服する嫡出子となるとい りすることがないとはいえない。そのよ うことがある」とする個所がある。この点を重視して うな場合に、本判決でされた議論は大い 「婚姻嫡出子を作ること」という見解に立っとすれ に参考になろ、つ。 ば、婚姻に関しては嫡出推定の規定が極めて重要なも ( 注 ) のになるといえる。このような観点から検討すること も有益な近時の判例として、絶対に生殖行為が不可能 な性同一性障害者で性別の取扱いの変更の審判を受け た夫でも婚姻が認められる以上実父と推定されるとす るもの ( 最三小決平成年肥月川日・民集巻 9 号 1 847 頁 ) 、嫡出推定は嫡出否認の訴えでしか覆せな いし、検査でほば 100 % 父子関係が否定され ても親子関係不存在確認は認められないこととなると するもの ( 最一小判平成年 7 月日・民集巻 6 号 547 頁 ) 、また、再婚禁止期間も嫡出推定の重複を 避けるために必要な 100 日の限度では合憲とするも ( 1 ) ト 0 ミ、 ce . 539 U. S. 558 ( 2003 ) この判決の評釈については、尾島明「同性間の性的 行為の処罰とプライヴァシーの権利」藤倉皓一郎・小 杉丈夫編「衆議のかたち」 ( 東京大学出版会、 200 8 年 ) 頁、本誌巻 1 号 ( 2006 年 ) 頁を参照。 133 S. Ct. ( 2 ) United states 2. 0 ) 570 U. S. 2675 ( 2013 ) この判決の評釈については、尾島明「同性婚の相手 方を配偶者と認めない連邦法の規定と合衆国憲法」本 誌膸巻 2 号 ( 2014 年 ) 頁を参照。 ( 7 ) 最大判平成年 6 月 4 日・民集巻号 ( おじま・あきら ) の ( 最大判平成年肥月日・裁時 1642 号 1 頁 ) を参照。 頁 63 ・法律のひろば 2016.3
特集震災から 5 年現場から問いかける課題と復興・防災・減災への提言 法律家としての支援ー法制度の改善への取組 震災でも指摘され、平成肥年には国会にめの給付金に対する差押禁止の法律も手ら被災事業者に対する被災債務を買い 議員提出法案として提出されたこともあ当てされた ( 「災害弔慰金の支給等に関り、そして、同機関が債権者として被く . り、実は既存の立法課題であった。それする法律及び被災者生活再建支援法の一事業者の債務を減免・猶予するとと がきちんと手当てされずに放置されてい 部を改正する法律」、「東日本大震災関連に、新たなファイナンスを実施して再 たところ、東日本大震災を契機に立法措義援金に係る差押禁止等に関する法を支援するという仕組みである。もう一 置されたのである。 律」 ) 。これまで手薄であった私法分野に つは、個人被災者向けの対策である「 同じように既存の課題を解決した立法おける有効な保護措置だったといえる 人債務者の私的整理に関するガイドラ がいくつかある。被災者の当面の資金需特に大きなインパクトが感じられたのン」 ( 通称「被災ロ 1 ン減免制度」 ) 。こ 要に応えるための災害援護資金貸付の制 は二重ローンに係る制度改善である。二れは立法措置ではなく、金融庁が立ち 度があるが、平成年 5 月に制定された重ロ 1 ンとは、災害発生前から抱えてい げた任意の債務整理の仕組みであるが、 「東日本大震災に対処するための特別のた債務が残存したまま、新たな債務を負このシステムを実施・運営するために訊 財政援助及び助成に関する法律ーによ担することをいうが ( 日本の基本的法制けられた個人版私的整理ガイドライン り、従来は借入れに当たって、保証人をはリコースロ 1 ン型であるから、例えば営委員会が主導し、登録専門家 ( 主に 立てるとともに、年 3 % の利息が課さ住宅ロ 1 ンで担保物件である住宅が滅失護士 ) が関与して支援することにより、 れ、かっ、免除事由が極めて限定的だっしても被担保債権はそのまま残存するこ破産手続等の法的手続を経ずに、被災 たところ、今回は、保証人不要で年 1 とになり、二重ローンのごとき事態が発に破産と同等の債務減免の効果をもたら 5 % 、あるいは保証人を立てれば無利生してしまう。 ) 、まずは被災した既存債すというものである。雲仙から年越し 息、免除要件も弾力的なものに改正され務を何らかの方法で減免できないかとい の課題に一つの回答が出されたことにな た。被災者にとっては現実的にとても助う問題意識が、平成 3 年の雲仙普賢岳噴る。 かる制度改善である。これは、阪神・淡火災害を発端に、長く提唱され続けてき 路大震災で災害援護貸付の利用者の滞納た命題であった。 三法律家の果たした役割 が大量に発生し、市町村が多額の不良債東日本大震災では、一一つの措置がなさ 権を管理することになって社会問題化しれた。一つは、事業者向けの対策として弁護士や研究者等の法律家にとっての ろ ていた震災課題を踏まえたものであっ 立法された平成年Ⅱ月公布の「株式会「法制度改善」とは、平時においては、 社東日本大震災事業者再生支援機構法」具体的な事件を通じて浮かび上がった立の 平成年 8 月には、弔慰金や支援金、 である。これは、同法に基づく事業者支法命題について、判例や学説を丁寧に検法 義援金などの被災者の生活再建支援のた援機関を立ち上げ、同機関が金融機関か討して、求められるニーズに応えつつ法
商事法判例研究 員等を解任された者が会社法 339 条 2 正当理由のない不再任のケースでは再任任期が伸長されていることを、解任され 項に基づき会社に対し賠償を請求するこされれば得られたはずの取締役報酬の額た取締役等が会社に対し請求することの とができる「損害」の範囲については、 が退任取締役の損害であると解するのでできる損害賠償請求額の減額要素として 判例上、同規定の趣旨から、役員等が解あれば、本件においては、本件定款変更考慮することは適切でないとされている 任されなければ在任中及び任期満了時に後の会社定款規定に定める 1 年を算定 ( 注リ。こうした解釈を踏まえると、本 得られた利益の額であると解されており期間とすべきであるのに、本判決が会社件事案のように定款変更による取締役任 ( 注リ、学説にもこの点に異論はない ( 注法に定める原則的な取締役の任期 ( 2 期の短縮を原因とする取締役の中途退任 については、正当理由のない限り、会社 リ。したがって、これを本件事案に当年 ) を要賠償額の算定期間とするのは、 てはめれば、らに対し会社が賠償す何故か本判決は、本件定款変更によるは残存任期をもとに算定される退任取、 べき額は、らが本件定款変更前の間年取締役任期の 1 年への短縮それ自体を不役の得べかりし利益 ( 残存任期中及び の取締役の任期を本件定款変更により短当と考えるため、会社の要賠償額の算期満了時に得られたであろう取締役報 縮させられ会社取締役を退任させられ定根拠を取締役の任期の原則的な期間で等の額 ) を退任取締役に対し賠償する たことにより失った利益となり、本件定ある 2 年に求めたものと見ることもできのとされるべきであったと解される 款変更による >< らの取締役退任の日の翌る。そうだとすれば、 >< らの損害を取締したがって、争点 2 に関しては、本コ 日である平成年 1 月幻日から当初の任役再任により得べかりし利益の喪失と提決は法令の解釈を誤った部分を含むも 期の満了日 ( 平成年 6 月末日 ) までのえる本判決のロジックと整合するが、仮と言わざるを得ず、会社の要賠償額の ~ に本判決がそのような理解に立つのであ囲に関する上記判旨には賛成することゞ 間の取締役報酬額となるはずである。 これに対し、本判決は、本件が株主総れば、本件定款変更による取締役任期のできない。 1 年への短縮そのことに対する法的評価 会決議による正当理由なき解任のケ 1 ス ではなく株主総会決議による定款変更をを示す必要があったであろう。 4 本判決の射程 第二に、前述のように、非公開会社が 通じた任期短縮による取締役退任のケー 本件は、非公開会社が機関設計の変 スであるためか、不再任に係る正当理由定款の定めをもって、取締役の任期を川 の存否を問題とする立場から、正当理由年を上限として伸長する場合は、経営者や公開会社化 ( 株式譲渡制限の廃止 ) がない場合は少なくとも定款による任期同士が当該定款規定を前提とした株主間経ることなく、単に取締役任期のみを一 ろ 伸長がない場合の任期相当分の取締役報契約により相互の地位を保証し合うとと縮したケ 1 スである上に、らとと ひ の もに、契約に違反した場合の賠償額の予間の対立が背景にある事案であること、 酬の喪失をもってらの損害とする。 律 ら、事実上の解任事例として、会社法法 しかし、第一に、取締役不再任に係る定まで取り決めたに等しいと解されてい ること ( 注リから、定款により取締役の 39 条 2 項の類推適用を認めることが 正当理由の有無を問題とする立場から、
英米法研究 う自由を国民から奪ってしまった。 ことができない自由は、身体的な拘東の 裁判所は、第Ⅱ修正で明示的に禁止 ことを意味していた。歴史的経緯を前日 していない行為を無効にする根拠を有し に読めば、それより広い範囲の自由を 3 トーマス裁判官 ( スカリア裁 ていない 護していると解することはできない。 1 判官が同調 ) 多数意見は、超立法権を行使してい 仮にデュー・プロセス条項の自由が る。国民を 9 人の選挙されていない法律 我が国創設の際、自由は政府の行為身体的な拘東以上のものを含むとして 家の下に置く統治制度は、民主主義とは からの自由であり、政府に対する利益とも、多数意見のいうようなものまで含め 呼べない は理解されていなかった。多数意見のいることはできない。米国法の伝統におい 第Ⅱ修正を制定した国民が裁判官に委う自由は、憲法立案者が認めていなかっては、その自由は、政府の行為からの個 ねたのは、問題を民主主義の過程から取たものである。そして、多数意見は、人人の自由として理解され、政府に対す り出すのは、理由づけられた判断に基づの尊厳は生来のものであるという独立宣個別の要求をする権利ではない。こ く場合であるということが確かである。 言で獲得された考えを否定し、政府からは、憲法制定当時の考えがジョン・ロッ 多数意見は、「婚姻の本質は 2 人の付与されるものであると示唆している。 クの強い影響を受けていたことからも日 人間がそのつながりによって、表現、親 ②デュー・プロセス条項を実体的権利らかである。 密さ、精神性などの自由を共に見いだすの源とするのは、危険なフィクションで そもそも原告らは何らの自由も奪 ことにある」という。「本気か ? (Re- ある。それは、裁判官に、基本権に関すれていなしナ 、。日は、原告らに何らの制、 ally?) 」。親密さや精神性が「自由」なのる個人的な見解のみに基づいて憲法を論も課していない。 か ? 近くのヒッピ 1 に聞いてみろ。 ずるという多数意見がここでしたのと同政府から承認と恩恵を受けることは、 多数意見は、「われわれ自身の時代にじ害悪をもたらすものである。 憲法立案者が認めていた「自由」の理 緊急のものとして残された、憲法が定義 仮に実体的デュー・プロセスの理論とは何の関係もない。政府の承認がな する自由についてのより深い理解」からが擁護し得るものであるとしても、原告れば意味がほとんどないというとき、 権利が生ずるなどという。「はあ ? らの主張には理由がない。 告らは、婚姻の制度について誤解して、 (Hur?) 」そんなものがどうやって権利 デュ 1 ・プロセス条項は、マグナ・カる。 を生むのか ? ルタに由来するものであって、これをプ 異人種間の婚姻を禁ずる法と同性 多数意見は「何言ってるの ? (What ラックストーンが定式化し、州の憲法がを禁する法とを同じように考えること できない。前者の目的は奴隷制廃止後 s 2 ) 」。合衆国最高裁のいうことは、規導入し、その後合衆国憲法の 5 条と第Ⅱ , に服した法的理論からフォーチュン・修正に盛り込まれたものである。そこで白人至上主義に基づくものであり、後 クッキーの神秘的なアフォリズムに堕ちは、デュー・プロセスによってしか奪、つの目的は子どもがそれを生み出した父 てしまった。 59 ・法律のひろば 2016.3
示した公表裁判例が見当たらないだけらの会社取締役退任の日の翌日から本る事業年度のうち最終のものに関する定 に、争点 1 について判断を示した本判決件定款変更前の >< らの会社取締役とし時株主総会の終結時まで伸長することが は注目に値する。 ての任期満了日までとする余地はないの認められている ( 会社法 332 条 2 項 ) 。 ば これに対し、争点 2 は、これまでほと かという問題や、あるいは、本判決が判問題は、定款の定めにより取締役の任期 ろ ひ んど論じられたことのない問題点であ示するように、本件における >< らの得べを川年に伸長した非公開会社において、 の る。本判決は、その問題の解決策としてかりし利益の内容を、正当理由のない不定款を変更して取締役の任期を短縮する法 会社法 339 条 2 項の類推適用を認めた再任により喪失した取締役報酬額に相当旨の定款変更のための株主総会決議が有 上で、取締役解任決議ではなく取締役のすると解するのであれば、本件定款変更効に成立した場合に、変更前の定款規定 任期を短縮する株主総会決議により取締により会社の取締役の任期は 1 年に短に基づく現任取締役の任期が当該定款変 役が退任する事案である点を考慮して縮されているのであるから、 >A 会社の要更の影響を受け、当該定款変更後の短い か、不再任に正当理由が認められない場賠償額の算定期間もこれに合わせて退任任期に変更されることになるのかどう 合には、再任の否定によって生じた退任日の翌日から 1 年間に限られると解すべか、である。 この点につき、会社法制定・施行前の 取締役の損害を会社が賠償すべきであるきではないのかという問題が残されてい 実務では、定款変更による役員の任期伸 とする判断を示すとともに、その損害額るように思われる。 これらの点を勘案すると、本判決が争長の場合に、その効果は、特別の事情の の算定期間として退任日の翌日から 2 年 間に限定される旨を判示する。争点 2 に点 2 について会社法 339 条 2 項の類推ない限り、当然に在任中の役員にも及ぶ 関する本判決の判示も、裁判例として初適用を認めたことには賛成できるが、と解され、登記実務上もそのような取扱 いが行われていた ( 注 3 ) 。同様の取扱い めての判断であると思われ、定款変更に会社の要賠償額の算定期間を 2 年間と判 は会社法の下でも行われると解されてお よる任期短縮による取締役退任のケース示した部分は、疑問なしとせず、俄かに り ( 注 4 ) 、その点に異論は見られない。 への会社法 339 条 2 項の射程拡張を認賛成することができない。 めた点に大きな意義が認められる。 この取扱いは、任期短縮の定款変更の場 合も同様であると解されており、当該定 しかし、争点 2 に関しては、会社の要 2 定款変更による取締役の任期短縮 款変更の効力発生時点において現に在任 賠償額の算定期間がなぜ退任日から 2 年 と在任中の取締役の任期への影響 している取締役の任期も連動して短縮さ 間に限定されるのか、その法的根拠が本 判決では明らかにされていない。しか 非公開会社にあっては、監査等委員会れ、当該定款変更の効力発生日に変更後 も、本判決が会社法 339 条 2 項の類推設置会社及び指名委員会等設置会社であの任期が満了している取締役はその日に 適用を認めるのであれば、会社の要賠るものを除き、定款の定めをもって、取退任することになると解されている ( 注 償額の算定期間を本件定款変更による締役の任期を、選任後川年以内に終了す 5 ) 。したがって、本判決が、本件定款