損害賠償 - みる会図書館


検索対象: 法律のひろば 2016年3月号
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1. 法律のひろば 2016年3月号

特集震災から 5 年現場から問いかける課題と復興・防災・減災への提言 法律家としての支援ー震災後 5 年の被災地の現状と法的ニーズ 低線量放射性物質の影響については比較的想定しやすい。しかし、ここに もと司法アクセスが不十分な地域である は、人の主観を通じて被害を感じるもの原発事故が加わると一気に問題が複雑にという認識のもと、何らかの積極的対心 であり、その影響について「通説」と言なる。賠償問題や被害者の生活再建などをしなければ、単に、被害者を「泣き、 われるものは見いだし難い。 の面から見ると、原発事故の被害は全く入り」させ「諦め」させるだけのことで そのような中で、自主避難実行者は、収束しておらず、形を変えて拡大してい ある。司法への信頼を維持するために一 強制避難者と違って、「なぜ、いまだにるといえる。この先、原発事故の影響はも、法律家の活動が今後ますます重要と 避難を継続する必要があるのか ? 」と自どこまで続くか想像もできない。「事故なるだろう。 治体や国、福島県内の滞在者などから問後 5 年 , といっても、実は、現在の被害 われ続け、追い込まれ続けている存在と発生が、ほんの初期段階にすぎないので ( 注 ) ( 1 ) 日弁連ホームページ「弁護士過疎・偏在対策」 なっている。その意味では、より苦しい はないかと思わざるを得ない。 立場に置かれている。自主避難者の多く 今後も福島県は二つの「風」と闘、つ必 ( 2 ) 原子力委員会「原子炉立地審査指針及びその適用 に関する判断のめやすについて」 ( 19 6 4 年 5 月 が、小さな子どもを抱えている母子避難要がある。「風評被害」という「風 , と であり、時にその行動を家族からも非難「風化」という「風」である。これらは、 ( 3 ) 詳細については、浪江町ホームページ「集 され、その結果、家族が引き裂かれると どちらも「無関心」から生ずる。 いう不幸な結果も生じている。今、追い 風評被害は、情報がアップデイトされ団申立て・要求活動」参照。 打ちをかけるように、無償提供されてきておらず、「福島Ⅱ危険」と過去の情報 ( 4 ) 東電ホームページ「損害賠償の迅速かっ適切な実 施のための方策 ( 「 3 つの誓い」 ) 」 ( 2 014 年 ) たみなし仮設住宅への補助が打ち切られで単純に考えてしまう種類の「無関心」 る方針のもと、生活に困窮してしまう自である。風化は、自分の地域で起こった ( 5 ) 「原子力損害の賠償に関する法律」条参照。なお、 ことではないので関係ないとい、つ「無関同法の制定過程については、我妻榮ほか「特集原子 主避難者も出てくるだろう。きめ細やか ( 19 61 年 ) 参照 なフォロ 1 が必要である。 心」である。この世界的・歴史的大惨事力損害補償」ジュリ 236 号 を風化させないためにも、法律家による ( 6 ) 東電ホームページ「賠償金のお支払い状況」 被害者救済活動、日常的に相談を受けて ( 7 ) 「いわき市・東日本大震災の証言と記録」 ( いわき 五最後に ワ 1 -0- 1 亠り 0 いる法律家による発信は重要である。先市、 ( わたなべ・としひこ ) 引 地震・津波・原発事故の三重の被害をのとおり、東電 ( 背後の国 ) による賠償 の 受けてから、既に 5 年が経過しようとしの打ち切り、国による事故を収束させた 律 法 ものとみなす政策のもと、司法ニ 1 ズが ている。地震・津波のような自然災害だ けであれば、復旧から復興へのプロセスより一層高まることが予想される。もと 日 ) 年 )

2. 法律のひろば 2016年3月号

特集震災から 5 年現場から問いかける課題と復興・防災・減災への提言 法律家としての支援ー震災後 5 年の被災地の現状と法的ニーズ 法律家としての支援 その司法過疎地において、ひとたび 発事故が発生すれば、多くの法的ニ 1 ー震災後 5 年の被災地の現状と法的ニーズ言 は生ずるものの、被害救済に対応でき だけの弁護士等の法律家が足りないとい 福島県弁護士会弁護士渡辺淑彦う事態となる。初期段階で、加害者が 意に賠償金を支払う段階までなら法律 そうすると、わずかな距離の違いで、 は不要である。しかし、今、 5 年を経て、 一はじめに 賠償金の支払額に大きな格差が生じ、避まさにこの地で見られているように、 原発事故による被害を賠償という観点難者同士や、避難者とその受入れ住民間害者側の一方的判断で、営業損害や就。 から見ると、避難指示区域 ( 帰還困難区に、 見えない心の分断や軋轢が生じるこ不能損害などの継続的な賠償が打ち切 域・居住制限区域、避難指示解除準備区ととなり、「二次被害」ともいえる状況れようとしている。今こそ、法律家が 域 ) の住民や事業者に対しては、東京電を生じさせているのである。 極的に活動し、被害救済のために闘う が来ている。ところが、現地で、その カ株式会社 ( 以下「東電」という。 ) は、 「それなりの賠償」を任意に支払ってき うな活動をする弁護士等の法律家が足 ニ原発事故と司法アクセス たのに対し、それら以外の住民 ( 旧緊急 ない。それは被害者を泣き寝入りさせ 時避難準備区域の住民や自主的避難等対 ことに等しい。どんなに立派な法律が 原発立地地域 = 司法過疎地 象区域の住民、その他の福島県を中心と っても、法律を使う人 ( 法律家 ) がいオ する住民 ) に対しては極めて低額かゼロ 原発の立地地域は、ほほ間違いなく司ければ、それは画餅にすぎない。司法、。 のままの状態が続き、事業者に対して法過疎地域でもある ( 注 1 ) 。原子炉の設疎とは、平等に適用されるはずの法 , は、次々に営業損害に対する賠償の打ち置のための適地条件を定めた「原子炉立が、その地には空洞のように存在しな、 切り策が進められている状況にある。 地審査指針」 ( 注 2 ) には、原発を立地すことを意味するのである。 そもそも政府の避難指示区域区分と、 るための条件として周辺地域が「低人口 ろ 損害賠償の発生の範囲とが一致するはず地帯」であることが規定されている。原 ひ 個別性の高い損害の現れ方と の もないが、東電 ( その背後の政府 ) は、発立地地域が、司法アクセスという意味 律 の解決の難しさ 法 避難指示区域区分ごとに賠償金額に差をでも不十分な「司法過疎地」でもあるこ 設け、その例外をほば認めようとしない。 とは、いわば必然の結論であるかもしれ原発事故の損害の現れ方は様々で四

3. 法律のひろば 2016年3月号

る。原発事故被害は、騒音被害や悪臭被ずであるが、それでも和解案に応じない し、法の支配でもって解決しなければな 害のように、誰にとってもほほ同じよう事案が出てきている。原子力損害の賠償らない事件であるにも関わらす、その溢 な被害をもたらすような被害類型ではな に関する法律 ( 以下「原賠法」という。 ) れるニ 1 ズに対応できていないと感じ 、 0 放射性物質に対する捉え方も人によでは、和解仲介機能しかなく、裁定機能る。このままでは、弁護士等の法律家へ引 って異なる。特に低線量放射性物質の影 かないことから ( 注 5 ) 、東電側があくまの信頼、司法への信頼が失われてしまうの 法 響については、定説もなく、人の主観をで応じなければ、紛争は解決しない。現とまでの危機感を持っている。 通じて危険性が判断される。被害感情も在、集団の申立事案は岐路に立た 人によって大きく異なる。同じ地域であされているといってよい。 4 被害者と弁護士を結びつける っても、各家族のライフスタイルや収 「中間項」の必要性 入、事業者であれば、その事業内容や、 3 社会のあらゆる側面に「紛争の 従前の業績も実に様々であるから、損害 司法過疎地において法律事務所の敷居 火種」 はいまだに高い。弁護士等法律家への「橋 を均一化して捉えることは難しい。本 来、集団 ( 原子力損害賠償紛争解原発事故は、周辺地域社会のあらゆる渡し」が必要である。原子力損害賠償・ 決センタ 1 への集団申立て ) や集団訴訟側面に「紛争の火種」をもたらしたと感廃炉等支援機構の法律相談業務が一定の ではなく、個別の家庭や個別の事業者ごじる。原発事故後の法的ニ 1 ズは、東電成果を上げているのは、橋渡しをしてく とに、別途のや別途の訴訟を展開に対する賠償請求にとどまらない。皮肉れる職員の方々が、仮設住宅回りなどを 二コ、、 ノイー するのが理想であろう。しかし、司法過なことに、賠償金が新たな紛争の火種と 被害者と積極的にコミュニケーシ 疎地では、弁護士の数も限られており、 なり、「二次被害」ともいえる状況が生ョンを取り、法律相談に誘導する地道な 個別的対応には限界がある。さらに、集じている。例えば、賠償金をめぐり、遺努力があるからである。法律相談に導く 団の申立事案では、浪江町の集団産分割事件や成年後見事件等が増加傾向「中間項」となってくれる人や機関が重 ( 注 3 ) に代表されるように、和解にある。既に 6 兆円にも迫る賠償金か、要である。行政機関の相談がいつも予約 案が出ても、東電側がそれに応じないと被害者や被害企業に支払われており ( 注で一杯なのは、無料であることもさるこ 6 ) 、多数の賠償金をめぐる様々な金銭とながら、行政機関の窓口は住民にとっ いう事態も発生している 本来、東電側は、「 5 つのお約東」やトラブルが生じている。そればかりではて気軽な場所であり、行政機関が「中間 「 3 つの誓い」 ( 注 4 ) などとして、原子力ない。復興政策による人と金銭の流れ項ーとなってくれているからである。今 が、新たな紛争や法的ニ 1 ズを生じさせ後、被災自治体と法律家との連携がより 損害賠償紛争解決センタ 1 の仲介委員が 提示する和解案を尊重する義務があるはている。本来、弁護士等の法律家が活躍一層重要となってくる。

4. 法律のひろば 2016年3月号

特集震災から 5 年現場から問いかける課題と復興・防災・減災への提言 法律家としての支援ー法制度の改善への取組 く叫ばれていたにもかかわらず、実際にるべき点が多い。ところが、改正後に発それが災害列島たる日本の現状である。 は、個人情報保護の過剰反応や、法規定生した災害ではうまく活用されていな法律家がこれと無関係であるはずがな の無理解、硬直的な行政運用等もあっ 、。平成年川月の伊豆大島での大規模 い。法制度の改善に向けて取り組む必 て、避難者・被災者の情報を適切に開示な土砂災害では、町による避難勧告の遅性はいささかも減じられていない。 せず、また、未だに個々の避難者の実情れが発生し、改正法で新設された災害情前述のほかにも、法律家の関与によ を行政が把握できていないという状況を報の即時伝達のスキームが機能しなかって改善された法制度はいくつかある。 もたらした。東日本大震災でも高齢者・た。平成年 9 月の鬼怒川決壊による大発事故の損害賠償請求権の消滅時効に いて、損害が生じたときから川年間に 障害者の死亡率が高率となっているの規模浸水被害では、避難所の運営が劣悪 は、個人情報取扱いに関する失政が一因で、大量に発生した在宅被災者に対して長する「東日本大震災における原子力 といっても過言ではない。日弁連では、早期に食事供与を打ち切るなど、改正災電所の事故により生じた原子力損害に 本人同意を絶対視する行政運用を改める害対策基本法で新設された被災者保護、る早期かっ確実な賠償を実現するため べきことを強く求め、平成年川月には在宅被災者対応の規定が機能しなかっ措置及び当該原子力損害に係る賠償請、 「災害時における要援護者の個人情報提た。たとえ制度改善がなされたとして権の消滅時効等の特例に関する法律」 ( ) 供・共有に関するガイドライン」を策定も、それで終わりではない。これを周知成年 ) は、重要な権利保障の制度で った。 し、第一に同意なく要援護者情報を名簿徹底し、現実に活かすためにはフォロー 前述の被災ロ 1 ン減免制度は、災害、 化する方法の提示、第二に提供を行う際が必要で、法律家としてその作業に関わ の要件の明確化、第三に前提となる概念る可能性が強く示唆されている。 助法が適用される今後の災害にも利用ゞ できる「自然災害による被災者の債務 の整理を行い、支援団体、研究者等の協 力を得て、全国にその周知を図った。災 理に関するガイドライン」 ( 平成年 ) 六未解決の法制度課題 害対策基本法の平成年改正は、避難行 に衣替えし、恒久制度化されることに 動要支援者の概念確立、安否確認等の本 5 年目を迎えたが、これで集中復興期った。いずれも弁護士の働き掛けによ ものである。 人同意不要ケ 1 スを明示列挙し、被災者間を終え次の段階に進めるような状況に 台帳など復興期における個人情報の活用なっているとはとても思えない。津波被 一方で、平成年に成立した「東京 ろ のスタイルを提案するなど、画期的な制災地の復興は道半ばであるし、原発事故カ原子力事故により被災した子どもを ひ の 度改善が行われた。 の被害地は未だ将来を見通すことさえでじめとする住民等の生活を守り支える ' 律 このように災害対策基本法の改正は、 きない。一方で、首都直下地震や、南海めの被災者の生活支援等に関する施策法 中央目線の他の法律と異なり、参考にな トラフ連動地震が刻一刻と迫っている。推進に関する法律」は、理念法として

5. 法律のひろば 2016年3月号

商事法判例研究 ため、 >•< を再任しない理由とはならない が取締役に再任されなかったことによっち最終のものに関する定時株主総会の終 というべきであること、〔 3 〕についてて被った損害額は、につき 1440 万結時へと短縮する旨の定款変更決議を行 も、通勤手当を理由なく受給した期間や円 ( 8 万円 x カ月分 ) 、につき 70 ったときは、任期途中にある取締役の任 その総額については明らかではなく、取 8 万円 ( 四万 5000 円 x カ月分 ) で期が当該定款変更の影響を受け、取締役 締役としての適格性を欠くというほどにあると認められる。なお、 >< らは、上記退任の効果が生じるのかどうか、がまず 悪質な行為であったことを認めるには足各損害賠償金に対する遅延損害金の利率第一に問題となる ( 争点 1 ) 。 りないことから、「会社の上記主張にとして商事法定利率年 6 分の割合を主張第二に、当該定款変更が取締役退任の は理由がない。」「以上によれば、 >< らをしているが、上記損害賠償請求権は商行効果を生じさせるとしても、それが定款 取締役として再任しなかったことにつき為によって生じた債権とはいえないか変更を内容とするものであれ株主総会決 正当な理由があるという会社の主張はら、その利率は民法所定の年 5 分の割合議によるものであることから、取締役の いずれも採用できず、その他にこれを認 によるべきである。」 意思に基づかない任期途中の退任に正当 めるに足りる証拠はない。」 理由が認められない以上、株主総会決議 「そこで、らが被った損害について による正当理由なき任期満了前の取締役 検討する」と、「 >< らは、らが取締役 解任の場合における会社の損害賠償責任 三研究 を退任した日の翌日である平成年 1 月 を定めた会社法 339 条 2 項が類推適用 幻日から本件定款変更前の本来の任期の され、退任取締役が会社に対し地位喪失 本件の問題点と本判決の意義 終期である平成年 6 月末日までの間の の補償を請求できるのかどうかが、問題 得べかりし取締役報酬相当額が損害とな本件は、公開会社でない株式会社 ( 以となる ( 争点 2 ) 。争点 2 については、 る旨主張する」が、「平成年 1 月から下「非公開会社」という。 ) が定款の定解任の場合と同様、会社が残存任期に対 平成年 6 月までの 5 年 5 カ月以上ものめをもって取締役の任期を、選任後川年応する取締役報酬額の全部につき賠償責 長期間にわたって、会社の経営状況や以内に終了する事業年度のうち最終のも任を負うのかどうか、すなわち会社の要 らの取締役の職務内容に変化がまったのに関する定時株主総会の終結時まで伸賠償額の範囲も併せ問題となる。 くないとは考えがたく、らが平成年長している場合において、役員間におい このうち、争点 1 については、「会社 6 月までの間に上記の月額報酬を受領して意見対立がある中で、株主総会におい法の施行に伴う商業登記事務の取扱い。 続けることができたと推認することは困て、支配株主でもある代表取締役と対立ついて」と題する通達 ( 注 1 ) があり、本ろ 難であって、その損害額の算定期間は、 関係にあった取締役を解任する旨の決議判決は同通達に従った取扱いとなる旨をの 法 らが退任した日の翌日から 2 年間に限ではなく、取締役の任期を上記川年から判示している。この点はほば異論がない 定することが相当である」から、「 >< ら選任後 1 年以内に終了する事業年度のうものと考えられるが ( 注 2 ) 、その旨を判

6. 法律のひろば 2016年3月号

東日本大震災を教訓とした弁護士の防災・減災活動 表 1 東日本大震災後に弁護士が関与して成立した法制度 1 . 被災ローン減免制度の構築 「ニ重ローン」問題の解決のため、被災債務の買取りや減免制度を新設すべきと主張 していたところ、個人の被災ローン減免制度である「個人債務者の私的整理に関する ガイドライン」並びに、事業者の債務買取り等を含む事業再生制度である「株式会社 東日本大震災事業者再生支援機構法」が成立した。また被災ローン減免制度の周知徹 底について求めていたところ、金融庁から金融機関に対し周知徹底を求める通知等が 発信され、金融機関から被災者に対し葉書等による周知がなされるまでに至った。ま た、将来の災害にも備えるべく 2015 年 12 月には自然災害による被災者の債務整理に関 するガイドライン研究会により「自然災害債務整理ガイドライン」が日弁連ほか関係 各機関で構成される研究会で策定された。 2 . 相続放棄等の熟慮期間の延長 民法規定の「 3 か月以内」では短期間すぎるとして、相続放棄等の熟慮期間の 1 年の 延長を求めていたところ、議員立法で「東日本大震災に伴う相続の承認又は放棄をす べき期間に係る民法の特例に関する法律」が成立し、 2011 年 11 月 30 日まで熟慮期間が 延長されることとなった。被災地では相続放棄や期間延長の申述件数も大幅に増加し た。 2013 年 6 月の「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置 に関する法律」の改正により、将来の巨大災害でも政府の判断で熟慮期間の延長がで きるようになった。 3 . 災害弔慰金の支給対象者の兄弟姉妹への拡大 災害弔慰金の支給対象に兄弟姉妹が含まれていなかったが、同居又は生計を同一にし ていた兄弟姉妹を対象に含める「災害弔慰金の支給等に関する法律の一部を改正する 法律」が成立した。また、被災地域の市町村では、条例を改正して対応したところも ある。義援金の分配についても、兄弟姉妹が支給対象から除外されていたが、県レベ ルで、兄弟姉妹に拡大するなどの対応がとられた。 4 . 災害弔慰金・被災者生活再建支援金・義援金の差押禁止債権化 災害弔慰金は形式的には、債権者による差押えが可能であったことから、差押えの対 象とならないようにすることを求めていたところ、議員立法で差押えを禁止する法案 が成立した。 5 . 罹災都市借地借家臨時処理法の不適用 賃貸借契約に関する相談実態からすれば、同法の適用による優先的借地権等の設定は、 まちづくりを阻害しかねなかった。同法の適用を検討していた法務省や総務省と意見 交換を重ねた結果、最終的には東日本大震災における同法の不適用が決定された。 6 . 原発事故子ども・被災者支援法の成立 原子力発電所事故に起因する様々なニーズを集約することで、「東京電力原子力事故 により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活 支援等に関する施策の推進に関する法律」の成立に寄与した。この支援法に基づく具 体的施策を提案することが法律家の新たな使命となった。 7 . 災害対策基本法 2013 年改正 自治体の被災者の個人情報が支援者に共有されないことで、災害時要援護者や広域避 難者の救助・支援が困難になっている現状を踏まえ、日弁連で関連意見書提出や個人 情報の共有ガイドライン策定を実施。周知のためにシンポジウム「災害時における個 人情報の適切な取扱い」を全国キャラバンで実施。「避難行動要支援者名簿」「安否情 報」「被災者台帳」の制度化等、自治体の個人情報政策に大きな影響を与える大改正 につながった。 8 . 原子力損害に係る損害賠償請求権の消減時効延長 潜在的な該当者は 100 万人規模に達する画期的とも言える特例法である。「東日本大震 災における原子力発電所の事故により生じた原子力損害に係る早期かっ確実な賠償を 実現するための措置及び当該原子力損害に係る賠償請求権の消減時効等の特例に関す る法律」は、不法行為の損害賠償請求権において「 3 年間」とされている消減時効を 「 10 年間」に延長し、また「不法行為の時から 20 年」とされている除斥期間を「損害 が生じた時から 20 年」とした。 9 . 復興用地の土地収用を促進する規制緩和の実現 「東日本大震災復興特別区域法の一部を改正する法律」が、 2014 年 5 月 1 日から施行 された。本法律は、東日本大震災の被災地において、所有者不明、相続未処理、多数 共有の土地等円滑に取得が進まない復興事業の用地が多数存在し、その迅速な確保が 喫緊の課題となっていることに鑑み、土地収用の裁決手続の要件緩和、防災集団移転 事業の要件緩和、などが法制度として認められた。 45 ・法律のひろば 2016.3 特集震災から 5 年現場から問いかける課題と復興・防災・減災への提言 に来 ロた の棄 っ巨 大の の法 害慮重度 ン築 制なやく 度と 築将 続宅 性共き り律 , 相 や軌 歴跡 のに は数 ハ時あ付おる 應こ にる 大筆 . 承 . ロ 学者 しになや災な の改起災 る大 れ共を繰た国 びで 法以な策憶返にあ 学降ら上すす課る 部順 と れ を し て 実 現 識てたニ化 々 ウ 法はて対災 か な 同年ば政記 な い に の備間 ん 。久 的 な 構 虹 料 談 の デ タ イヾ に ょ 、伝災妻改はで 生惨正 い応害用力 る教善 と 土 て る も も 浮 . 、彫 に な リ ル 1 ズ す け公訓 ノ 放 等 い災熟二制 期 ク ) 多る問問オ い恒題題け 2 1 ン ロ 1 1 、相住 な は で 構 の の め 過公 の政 経策 験の し て み じ、 さ れ 慶 塾 科 大 学 院 史活 と表用 1 つ そ 義でも 2 0 1 2 、次 3 開承 展伝 とを 設跡 創軌 のの 学策 法政 興 復 害 る す き を り のる必題日 し、 、てき き 要に本 0 、は

7. 法律のひろば 2016年3月号

っ 4 住宅に 5 年間も生活すれば、たいていの部で貧困的生活に陥らないか十分に見守 四「賠償の谷間」の問題 人は心身の健康を害してしまう。元の生る必要がある 避難指示区域内の住民には、一定程度 活を送ることができず、生活の不活性化 旧緊急時避難準備区域の問題 ろ は様々な病気を誘発する。低線量被ばくの金銭賠償がなされてきたといっても、 ひ ( 川内村等 ) の などよりも、ずっと大きな問題である。 それが元の生活を取り戻したことを意味 律 県民健康調査でも、高血圧ゃうつ状態するのでは決してない。避難者は、それ福島県川内村に代表される「旧緊急時法 の増加が報告されている。これらの背景ぞれ、避難先において、住環境に悩み、避難準備区域」の問題は、「賠償の谷間」 に、長期避難によるストレスや疲労、生就労先で悩み、子どもの教育環境で悩の問題として、法律家として真っ先に取 活の不活性化があることは明らかであろみ、健康問題で悩み、賠償を受けているり組まなければならない問題である。 う。特に高齢者の被害が深刻であって、 日内村は、実に美しく豊かな村であっ ことによる地域住民との軋轢で悩むな 高齢者の孤立化を防ぎ、心身の健康を保ど、心理的・肉体的・経済的負担を余儀た。そんな豊かな生活を原発事故が一変 っことは、極めて重要な課題となってい なくされている。突然、仕事 ( 生業 ) をさせた。平成年 3 月Ⅱ日、村長は全村 る。 失い、地域コミュニティとの関係も寸断避難を指示した。一言で全村避難といっ ても簡単にできることではない。移動さ 独居の高齢者などは、月間万円というされ、人生設計を根本から崩され、今後、 生きる意味を失いかけているような人もせることが危険な病人、介護の必要な高 精神的慰謝料だけを頼りに生活してい る。高齢者の場合、就労不能損害の賠償いる。これらの人に対して、賠償金をい齢者や精神的疾患を抱えた人、世話の必 要な家畜やペットなどがいる。そのよう もなく、わずかな年金収入だけである。 くら上乗せしても意味はない。 避難前は、家族や親戚、近所付き合いな金銭賠償は、加害者である国や東電にな中で、避難手段と避難場所をほば自力 ど、自然発生的な「相互扶助関係」が強とっては、ある意味、楽な賠償方法かもで確保しながら、避難しなければならな かった。着の身着のままで避難した住民 しれない。全てを交換価値に置き換え、 く働いていた地域であった。そのため、 コメや野菜などを相互に物々交換し、出「金は払ったから、あとは各自、それぞは、大混乱の中で、避難場所である体育 費を抑えながら十分豊かな暮らしを送るれの判断で自由に生活再建してくださ館などに段ボールを敷いて寝ているしか い」と言われても、避難先で自立できるない状態であった。避難中に亡くなった ことができていた。それが突然、都市部 一人一人の自住民も多数存在する。 への避難を余儀なくされると、何でも金ような人ばかりではない。 銭で購入しなければならない貨幣経済の立、「人間の復興」のために、強力に寄平成年 4 月日、国は、川内村を 2 生活へと変化する。今後、精神的慰謝料り添うようなサポ 1 ト体制を構築するこ分割し、キロ圏内を警戒区域、その他 を緊急時避難準備区域と形式的に指定し が止められた場合、特に高齢者が、都市とが急務である。

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商事法判例研究 員等を解任された者が会社法 339 条 2 正当理由のない不再任のケースでは再任任期が伸長されていることを、解任され 項に基づき会社に対し賠償を請求するこされれば得られたはずの取締役報酬の額た取締役等が会社に対し請求することの とができる「損害」の範囲については、 が退任取締役の損害であると解するのでできる損害賠償請求額の減額要素として 判例上、同規定の趣旨から、役員等が解あれば、本件においては、本件定款変更考慮することは適切でないとされている 任されなければ在任中及び任期満了時に後の会社定款規定に定める 1 年を算定 ( 注リ。こうした解釈を踏まえると、本 得られた利益の額であると解されており期間とすべきであるのに、本判決が会社件事案のように定款変更による取締役任 ( 注リ、学説にもこの点に異論はない ( 注法に定める原則的な取締役の任期 ( 2 期の短縮を原因とする取締役の中途退任 については、正当理由のない限り、会社 リ。したがって、これを本件事案に当年 ) を要賠償額の算定期間とするのは、 てはめれば、らに対し会社が賠償す何故か本判決は、本件定款変更によるは残存任期をもとに算定される退任取、 べき額は、らが本件定款変更前の間年取締役任期の 1 年への短縮それ自体を不役の得べかりし利益 ( 残存任期中及び の取締役の任期を本件定款変更により短当と考えるため、会社の要賠償額の算期満了時に得られたであろう取締役報 縮させられ会社取締役を退任させられ定根拠を取締役の任期の原則的な期間で等の額 ) を退任取締役に対し賠償する たことにより失った利益となり、本件定ある 2 年に求めたものと見ることもできのとされるべきであったと解される 款変更による >< らの取締役退任の日の翌る。そうだとすれば、 >< らの損害を取締したがって、争点 2 に関しては、本コ 日である平成年 1 月幻日から当初の任役再任により得べかりし利益の喪失と提決は法令の解釈を誤った部分を含むも 期の満了日 ( 平成年 6 月末日 ) までのえる本判決のロジックと整合するが、仮と言わざるを得ず、会社の要賠償額の ~ に本判決がそのような理解に立つのであ囲に関する上記判旨には賛成することゞ 間の取締役報酬額となるはずである。 これに対し、本判決は、本件が株主総れば、本件定款変更による取締役任期のできない。 1 年への短縮そのことに対する法的評価 会決議による正当理由なき解任のケ 1 ス ではなく株主総会決議による定款変更をを示す必要があったであろう。 4 本判決の射程 第二に、前述のように、非公開会社が 通じた任期短縮による取締役退任のケー 本件は、非公開会社が機関設計の変 スであるためか、不再任に係る正当理由定款の定めをもって、取締役の任期を川 の存否を問題とする立場から、正当理由年を上限として伸長する場合は、経営者や公開会社化 ( 株式譲渡制限の廃止 ) がない場合は少なくとも定款による任期同士が当該定款規定を前提とした株主間経ることなく、単に取締役任期のみを一 ろ 伸長がない場合の任期相当分の取締役報契約により相互の地位を保証し合うとと縮したケ 1 スである上に、らとと ひ の もに、契約に違反した場合の賠償額の予間の対立が背景にある事案であること、 酬の喪失をもってらの損害とする。 律 ら、事実上の解任事例として、会社法法 しかし、第一に、取締役不再任に係る定まで取り決めたに等しいと解されてい ること ( 注リから、定款により取締役の 39 条 2 項の類推適用を認めることが 正当理由の有無を問題とする立場から、

9. 法律のひろば 2016年3月号

れており ( 会社法 339 条 1 項 ) 、他方、ある場合を除き、会社に対し、会社法 3 再任しないことを正当化する理由とはい 6 定款変更によって当然に退任させられた 39 条 2 項の類推適用により、再任されえす、 >< らから会社に対して上記国の 取締役の保護は、解任の場合と同様に、 なかったことによって生じた損害の賠償提案がなされたことを認めるに足りる証 損害賠償によって図れば足りるというべを請求することができると解すべきであ拠はないし、仮にこれらの提案がなされ ろ る。 きだからである。 ていたとしても、①の提案は会社にとの これによれば、平成跚年 5 月幻日に取これを本件についてみると、らは、 って違法、不当な内容であったとはいえ法 締役に選任された >< らは、平成年 1 月本件定款変更によって本来の任期よりもず、②の提案が個人的な感情に基づく理 跚日に : : : 本件定款変更がなされたこと前に取締役から退任させられ、取締役と由のないものであったことを認めるに足 により、同日、会社の取締役から当然して再任されることもなかったのであるりる証拠はないから、「いずれにしても に退任したことになるというべきであから、 >* 会社が >< らを再任しなかったこ会社の上記主張は、らを取締役に再 る。」 とについて正当な理由がある場合を除任しなかったことについての正当な理由 き、会社に対し、損害賠償を請求するにはならないというべきである。」また、 ことができることとなる。」 会社は、については、〔 1 〕無断欠 2 >< らの取締役退任・不再任に基づ 「そこで、会社がらを取締役とし勤や遅刻、直帰が頻発していたこと、 く損害賠償請求の可否と損害額 て再任しなかったことについて、正当な〔 2 〕社用車を通勤に使用していたこと、 「会社法 339 条 2 項は、株主総会の理由があるか否かについて検討する」 〔 3 〕自動車通勤にも関わらず、電車通 決議によって解任された取締役は、そのと、 >* 会社は、⑦取締役の全員が親族関勤である旨申告し、通勤手当を受け取っ 解任について正当な理由がある場合を除係にあり、取締役会が形骸化していたたていたこと、〔 4 〕会社名義の き、会社に対し、解任によって生じた損め、その活性化を図り、経営体質を強化 カ 1 ドを会社の業務外のために使用し 害の賠償を請求することができる旨定めして、経営環境の急激な変化に対応するていたこと、〔 5 〕から会社の株式 ているところ、その趣旨は、取締役の任必要があったこと、 >< らが①の所有を買い取るために会社から借り受けた 10 0 0 万円の返済を行っていないこと 期途中に任期を短縮する旨の定款変更がする会社株式を会社等が買い取るべ なされて本来の任期前に取締役から退任きである、会社の経営が安定しているからすれば、取締役として不適格であっ たとも主張するが、上記〔 1 〕、 〔 4 〕を させられ、その後、取締役として再任さ うちに会社を売却した方がよい、とい れることがなかった者についても同様に った意見や、②個人的な感情に基づく理認めるに足りる的確な証拠はないこと、 当てはまるというべきであるから、その由のない人事を提案したことを、 >< らのその余の各事実については当事者間に争 〔 5 〕は取締役 ような取締役は、会社が当該取締役を再取締役不再任の正当理由に当たると主張いがないものの、〔 2 〕、 任しなかったことについて正当な理由がする。しかし、⑦は >< らを取締役としてとしての職務執行とは直接の関係がない

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くにも不安を感じている村民が少なかえる状態におかれている。金銭賠償によ象人口が多いことから波及効果があまり に大きいためであろう。 らずいる。キノコや山菜がなければ、 る生活再建もできないまま放置されてい 例えば、大人に対しては、第 1 回目の 月内村が元通りの生活に戻ることはなる被害が、この日本国内で現在進行形で 、 0 賠償として 8 万円のみであり、この 8 万引 続いているのである 円の内訳や性格についても十分な説明はの ⑦川内村では、村内のインフラ整備を 法 ない。その後のの審理などから、 急いでいるが、未だに商業施設さえも 2 自主的避難等対象区域 この半分に相当する 4 万円のみが、大人 建設できず、インフラ整備は十分とは に対する精神的慰謝料のようである。子 言い難い状態が続いている。 初期混乱期の損害 それにも関わらず、精神的慰謝料の賠 いわき市、福島市、郡山市など福島第どもを守るため、妊婦を守るため、家族 一原発から約キロの地域は、自主的避を守るために何もかも投げ打って選択し 償金だけは、平成年 8 月末日をもっ て、村の大半を占める旧緊急時避難準備難等対象区域などと呼ばれている。しかた避難の慰謝料が「 4 万円」というので 区域内の住民に対して打ち切られてしまし、あの初期の大混乱の中での避難が「自ある。立場上、逃げるに逃げられず、恐 ったのである。もともと、わずかな年金主」であるなどと思っている人はまずい怖と物流が原発事故のために止まった物 以外に収入がなく、村内の密なコミュニない。例えば、いわき市の場合、市民の資不足の中で、じっと滞在せざるを得な ティの中で、物々交換的経済で生計を営約半数が避難を選択し ( 注 7 ) 、裁判所やかったことに対する精神的慰謝料がわず しきなり避難先検察庁さえも閉庁となった。迫りくる放か「 4 万円」というのである。他の損害 んできた高齢者などは、、 の貨幣的経済に巻き込まれ、金銭的に窮射性物質の恐怖の中で、避難が可能な人賠償事案の比較から考えても低額すぎる している人もいる。避難先で避難の疲れの多くは避難を選択したのである。放射ことは明らかであろう。放射能の恐怖の から体調を崩し、専門病院に通う必要が性物質は目に見えず、当時は、だれも放中で逃げたのは全く同じなのに、政府の 出てきた高齢者もおり、病院のある都市射線について十分な知識や情報を持って指示のもとで避難した精神的負担と、恐 部から離れることができず、帰るに帰れ いなかった。風が怖く、雨が怖く、外の怖の中で避難した避難者の精神的負担と ない状態に置かれている。多くの住民が空気を吸うことさえ怖かった。ところの間には全く本質的な違いはないはずで 避難したままであれば、村の良さであつが、東電からは、自主的避難等対象区域あるが、その慰謝料額には大きな違いが た相互の扶助作用が働かず、独居老人をの住民に対し、 2 回に分けてわすかな金あるのである。 銭の支払がなされただけであり、自主避 生むだけである。 自主避難実行者の損害 まさに、川内村などの旧緊急時避難準難地域の住民には、「もう、これ以上支 払うつもりはない」と宣言している。対また、避難実行者の被害も無視できな 備区域内の住民は、「国内難民」ともい