被災 - みる会図書館


検索対象: 法律のひろば 2016年3月号
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1. 法律のひろば 2016年3月号

特集震災から 5 年現場から問いかける課題と復興・防災・減災への提言 法律家としての支援ー法制度の改善への取組 容の具体的な解説は別稿に譲ることにしる大型法制は、平成年月制定の「東なやかな国民生活の実現を図る国土強 て、本稿では被災者から見てどのような日本大震災復興特別区域法」だ。これは、 化の取組を推進する」ことを期して定め 意味を持っていたのかを、主なものに絞被災地において産業集積等の復興推進のられたものである。しかし、同法に基づ って順に見ていくことにする。 計画を可能とするための規制緩和や、土 いて定められた国土強靱化基本計画を見 震災直後の平成年 4 月Ⅱ日からスタ地利用に関する諸法令上の手続を一部緩ると、大規模な公共工事への投資比重が ートした東日本大震災復興構想会議の結和して復興整備を容易にする特例や、極めて高いことは否めず、国土強靱化の 論を踏まえ、同年 6 月「東日本大震災復様々な復興事業を実施するための復興交名の下にかってのように全国的に公共土 興基本法」が制定された。文字どおり復付金の交付を定めた法律である。言わば木事業が展開されるおそれもあり、東日 興の基本理念を示し、復興の推進役とな復興に係る行政施策の特例の集大成であ本大震災の被災地の目線からは「ピンと るべき復興庁の設立の根拠法にもなつる。その適用や運用の具体的な功罪は本来ない」感が強い。 た。 2 条に列挙された基本理念そのもの稿ではさておくとして、この法律が想定 ほかにも「東日本大震災により甚大な は誤っていないのだが、しかし 1 条の目する世界に被災者が登場しないことは指被害を受けた市街地における建築制限の 的条項の末尾が「 : : : 日本の再生を図る摘しておかなければならない。住民の手特例に関する法律」、「津波防災地域づく ことを目的とする。」と締め括られてい続参加の機会が略され、被災者の生活再りに関する法律」、「福島復興再生特別措 た。これがあだとなって復興予算の流用建に直接的に資する事業は定められてい置法」など多数の特別立法がなされてい 問題が起きることとなる。会計検査院のない彳。 。麦こ、この法律の枢要部分が「大るが、これらが円滑に被災地で適用さ 調査により、復興予算で実施された 32 規模災害からの復興に関する法律」としれ、被災者から歓迎を受けているわけで 6 事業 ( 調査対象 1401 事業 ) で計 1 て恒久法化された。大規模災害におけるはない。その理由の一つとして、被災地 4 兆円が被災地復興とは関係のない事業行政手続の現実的な特例法としては評価から発意されて立法されたのではなく、 であったことが明らかとなった。被災地できることは間違いない。しかし、被災中央の目線で手当てしたものである、と では、予算の適正な執行を理由に、中小者の目線に立ったとき、同法により復興 いう点が共通していると思われる。 事業者の再建を支えるグループ補助金がのイメ 1 ジが沸き立っことはない。 中央目線に偏ってしまった原因は、平 限定され、災害関連死の認定も限定され そして、今後の災害に対峙するために時からの国と地方の構造的問題が第一だ るなどの事象も生じている。被災者の目平成年に「強くしなやかな国民生活のが、そのほか、地方側にも創造的発想あ引 線からみると、この復興予算の流用は極実現を図るための防災・減災等に資するるいは法務政策能力が乏しいところにもの めて大きなモラルハザードであった。 国土強靱化基本法」が制定された。これ求められるだろう。そういう切り口から法 また、東日本大震災の復興の目玉となは東日本大震災の被害を前提に「強くしみると、注目すべき立法が一つ挙げられ

2. 法律のひろば 2016年3月号

特集震災から 5 年現場から問いかける課題と復興・防災・減災への提言 東日本大震災を教訓とした弁護士の防災・減災活動 業に支援制度の知識を伝え支援するこ 東日本大震災を教訓とした ができる。同時に、既存の法律や制度、 対応できないものについては、新制度 弁護士の防災・減災活動 法改正により克服すべきことを政府等 , ー災害復興法学の展開と 提案することができる。弁護士が災害一 に無料法律相談をすることによる情報 災害派遣弁護士の浸透に向けて 理提供機能と立法事実集約機能は、 弁護士・マンション管理士 中央大学大学院公共政策研究科客員教授・慶應義塾大学法科大学院非常勤講師、 岡本正災・減災に直結するものである。本稿、 は、防災・減災を支える仕組みとして、 し立ち上がる、「強靭性 ( レジリエンス ) 」各地の弁護士会で進む、自治体との災生 一弁護士に成し得る防災・減 を構築してきた歴史とも言えるだろう。協定の締結や、専門士業連携 ( ネット 災活動とは 復興の軌跡を伝承することは、「災害復ーク ) の構築事例を紹介する。そして、 弁護士が役割を果たすべき「防災・減興法学」等の公共政策教育によって実現これらの取組を社会全体に広く周知さ 災」の取組とは一体何であろうか。災害を目指すことを模索している。本稿でるべく、「災害派遣弁護士チ 1 ム」 (Q の物理的被害を軽減させることに直接的は、災害復興法学の原点となった、東日 < e—Disaster lægal Assistance Team) に寄与しないとしても、弁護士には大き本大震災後に弁護士が実施した無料法律という呼称を提案してみたい。 な役割があるはずだ。その一つは、防災相談事例のデ 1 タ・べ 1 ス化と復興政策 に関する法制度への関与という分野であへの寄与について紹介する。 ニ防災教育としての災害復興 る。日本の防災法制度や災害後の生活再もう一つは、災害直後からの弁護士に 法学の展開 建制度等の周知であり、これには、制度よる「無料法律相談活動」である。東日 ができた後の法解釈や運用実務を解説す本大震災では、「情報整理提供」と「立 無料法律相談のデータ・べース るにとどまらず、法制度構築や法改正に法事実集約」の機能を果たしたことが特 化による被災の実相の視覚化 至った「軌跡」を伝承することも含まな徴である。災害後にその被害を拡大させ ければならない。巨大災害後に困難を克ないことも防災・減災であることは疑わ弁護士は、 2011 年 3 月Ⅱ日に発生 服するためには、既存の法制度の枠を超ないだろう。ところが、「災害後を生きした東日本大震災直後から、無料法律相ろ の えた新しい仕組みが必要になる。制度改抜き、再建するための防災・減災施策に談活動を開始した。生活の基盤を失い 律 法 変を繰り返してきた災害法制の歴史は、 は何があるのか」ということは周知が不何をすればよいのか、どこへ行けばよ、 災害後にあっても、暮らしや産業を再建足している。弁護士は、被災者や被災企のか、見当もっかない被災者や被災企業

3. 法律のひろば 2016年3月号

は、暮らしを取り戻しつつ、自活し自立り、文化とのつながりなどが含まれる。 みに寄り添わなければ、復興の課題が見 できる力を蓄えることが、何よりも先に「治」は自律的なガバナンスを取り戻すえてこないということである。いずれに ことをいう。自分たちの地域の未来は自しても、被害の実態から復興の方向が導 求められる。「自立なくして創造なし」 ということである。なお、復興の支援に分たちで決める自治の回復がいるというき出されるので、被災の現実をリアルにろ ことである。この育、連、治の三つは、 かかわって、「与える支援ではなく、引 知ること、そのための調査に力を入れる律 法 ことが必要だ。 き出す支援を」とよく言われる。復興で被災地が自立するために欠かせない。 1 ドなインフラ は自立が欠かせず、復興支援ではその自被災者の自立と被災地の自立を区分し被害を見るときに、ハ て説明した。「人間復興」と「地域復興」や住宅だけを見ていては駄目である。生 立を促すことが欠かせないからである。 の両方が必要だからである。災害で傷つ活や生業あるいは生態を見なければなら その回復や自立を果たす上で、「医・ くのも人間であり、災害から立ち上がるない。暮らしの総体を見なければならな 職・住・育・連・治」という六つの機能 、。大切なのは、住宅復興ではなく生活 を取り戻すことが課題となる。「医」とのも人間である。それゆえ、一人ひとり いうのは心身の健康を取り戻すことであの人間が元気にならなければ、復興した復興である。暮らしや生きがいというこ とでは、人間の尊厳や権利といった側面 る。「職」というのは仕事を取り戻すことは言えない。その意味で、一人ひとり にも目を向ける必要がある。それは、喪 に目を向けるという人間復興の視点は特 とである。ここでの仕事は、生活の糧に 失感や絶望感を克服し、夢や希望を獲得 も生 MJ 力し ゞ、こもつなかる仕事をい、つ に大切である してゆくのが、復興だからである。被災 「住」は住宅や住生活を取り戻すことで 者に寄り添い、被災地に密着して、復興 ある。この医、職、住の三つは、被災者 三復興の現実と被災の実態 を考えなければならない。被災者の声を が自立するために欠かせない。 「育」というのは人材育成の機能を取被災の実態に即して、復興の方向を見しつかり聴くことを、復興の基本としな り戻すことをいう。乳幼児の保育や子供極めることは、復興計画を立てる際の基ければならない。 たちの教育、さらには後継者や担い手の本原則である。まず、原型復旧か改良復そのためには、被災者の心の動きや生 育成を含む。震災遺児を社会全体で支え旧か創造復興かは、被害の範囲や内容に活の実情も含めて、被災実態の調査をし ること、復興の担い手を社会として育むよって規定される。被害が小さければ復つかりしなければならない。復興の方向 ことが、ここでは課題となる。「連」と 旧、被害が大きければ復興ということにを定め被災者に希望を与えるためだけで なく、震災関連死や孤独死を防ぐために いうのは暮らしに欠かせないつながりをなる。次に、復興で解決すべき課題は、 取り戻すことをいう。このつながりに被災者の自立を妨げている現場の壁を知も、被災者の実態を可能な限り細やかに ところで、被災者のおかれ は、人と人のつながり、自然とのつながることで、引き出される。被災者の悲し把握したい。

4. 法律のひろば 2016年3月号

特集震災から 5 年現場から問いかける課題と復興・防災・減災への提言 法律家としての支援ー震災後 5 年の被災地の現状と法的ニーズ 内の住民の中では、今のところ少数であのみならず、スリ 1 マイル島原発事故 5 「原発城下町」における裁判の る。 メキシコ湾原油漏れ事故の事故処理など 難しさ を参考に、比較法的にも研究され、新た 「原発城下町」特有の問題として、東 な大量被害の解決のための法制度が構築 6 大量被害の解決手段の欠如 電に「一定の恩恵」を感じていた人が相 されることを期待したい。 当数を占める中で、本格的な訴訟を展開集団による申立てが各地で行わ することに難しさを感じる。もともと原れている。しかし、被害者の救済のため 三金銭では補境できない絶、 発立地地域は、「冬は出稼ぎに行くしか に、このような方法が闘い方として理想 的損害 ない町 , であった。ところが、原発の導的とは思っていない。集団申立ての場 入により当該地域は一変した。今考えれ合、どうしても被害者に共通する損害 ( 精原発事故による強制避難は金銭では、 ば「一炊の夢」であったが、過去鬨年間、 神的損害など ) のみを抽出して申立てをして補瞋できない大切なもの ( 生命・ 出稼ぎに行かなくても、都会と同じだけ 行う必要がある。しかし、前述のとおり、 体・人生設計・環境・地域コミュニテ の給与を出してくれる存在が東電であっ原発事故の被害の現れ方は、各家庭、各など ) を徹底的に破壊し、それは日々、 た。事故前は「東電は神様だ」と話して事業者によって実に様々である。本来な避難者の基本的人権を侵害している。 いる事業者や住民もいた。親戚・知人にらば、各家庭や各事業者それぞれに担当 強制避難中、避難弱者 ( 高齢者など ) は、必ずと言っていいほど、東電の関係弁護士 ( ファミリーロイヤ 1 ) が就き、 は次々に命を落としてきた。被災 3 県 ( 山 者がおり、その関連企業で働く者も多か被害の実情をしつかりと聞き取り、分厚手・宮城・福島 ) の中で、福島県だけゞ った。 い陳述書を作り、個別にや訴訟の関連死数が直接死を上回っているのは、 今回の事故で強制避難することとなっ申立てをするのが理想であろう。しか 強制避難と避難生活の長期化、避難生、 た住民は、大きな被害を被っているが、 し、司法過疎地ではそれは無理なことで による日常生活の不活性化に原因が こちらから「闘いましよ、つ」といっても、 ある。日本には、クラス・アクションのる。原発事故の場合、「震災関連死」オ 「親戚に迷惑がかかるといけないから : ような法制度は存在しない。原発被害のどと呼ぶべきではなく、直截に「原発 ・ : 」と躊躇してしまう相談者もいる。東ような大量被害処理をどのように迅速・故原因死」とでも呼ぶべきであろう。 電の「絶対安全 , との説明に「裏切られ公正・的確に処理するかは、立法措置を避難者の日常生活は阻害され続けてい引 た」との思いはあっても、一定程度の賠含め、今後の大きな課題である。福島原る。ストレス、怒り、諦め、絶望などのの 償が補償された中で、訴訟を提起し本格発事故を契機に、大量の被害をどのよ、つ心労が重なり、心身の健康を害している法 的に闘おうとする住民は、特に避難区域に処理するかについて、今回の事故処理人も数多く存在する。一一間しかない仮凱一引

5. 法律のひろば 2016年3月号

特集震災から 5 年現場から問いかける課題と復興・防災・減災への提言 大震災 5 年一現場が問いかける復興の課題 ている状況は刻々と変化する。復興施策差が拡大していること、人口と産業の流は、 5 割以上が「復興は進んでいない」 の成否によっても変化するし、被災者の失が著しく地域力が減退していること、 と答えている。これらの結果は、復興庁 対応によっても変化する。その変化に応復興特需に依存した体質から脱却する見の「産業がほば震災前に戻った」、「住宅 じて復興の見直しをはかる必要があり、通しがないことなど、影の部分が支配的再建の見通しがついた」という評価と、 変化をとらえるための継続調査や定点観になっている。この影の部分をどう克服被災者の現実との間には大きなギャップ 測を心がけなければならない。 するかが、今の東北の被災地では問われのあることを教えている。 ている。 住宅と住宅地の復旧や復興は、全体 して大きく遅れている。 2016 年 1 復興の光と影 現在で、防災集団移転事業や土地区画 2 生活復興の現状 復興にはプラスの側面とマイナスの側 理事業などによる用地や住宅の整備は、 面があり、その両面を正しく見なければ被災者の生活がどこまで復興し、被災戸数ベースで % しか完了していない。 ならない。後述するような厳しい状況に者の苦しみがどれだけ緩和されたかを見災害公営住宅の建設も、戸数ベースで もかかわらず、被災地の多様なセクタ 1 よう。ここでは、何よりも被災者がどう % と遅れている。その結果、みなし仮凱一 が血のにじむような努力を積み重ねてお感じているかが問題になる。残念なこと 1 万世帯、プレハプ仮設に 2 ・ り、その結果として明日につながる先進に、震災後 3 年から 5 年にかけての被災万世帯と、 6 万世帯がいまだ仮住まいの 的な事例が生まれている。コミュニティ者のおかれている実態や意識を調査した状態にある。ところで、生活再建支援 をベ 1 スにした集団移転の先進的な取「公的な調査」は皆無に等しい。この公の受給状況を見ると、肥万世帯が自力で 組、協業と共同による新しい産業システ的な調査がないということが、被災者の再建を果たしている。自力再建ができる ムの創出、細やかな生活相談を軸とした実態に目を向けようとしない行政の姿勢人、公営住宅に入居する人、仮設住宅に 包括的ケアの実践、や企業などにの反映だとしたら、とても残念なことで取り残される人、被災者の間の復興格差 よる持続的な支援活動の展開など未来にある。 か広がっている。 つながる成果が生まれている。 1 年前にが被災者 5 万人を対象プレハプの仮設住宅は、あくまで緊急 にもかかわらず、被災者の立場に立っとして実施したアンケートでは、 7 割が避難の場所であって、人間が長期に住む て復興の現状を見るとき、復興そのもの「経済的に困窮している」、 5 割が「生きべき住宅ではない。その劣悪な仮設住宅ば が予定よりも大幅に遅れていること、帰ているのがつらいと答えている。また、 に家賃が無料とはいえ、 5 年以上も被災ひ 律 還と再生の目途がっかない地域が少なか昨年の月に共同通信社が被災者 300 者を閉じ込めてはならない。被災者が仮 法 らずあること、階層間や地域間の復興格人を対象として実施したアンケ 1 トで設から抜け出せないのは、移転用地の確 7

6. 法律のひろば 2016年3月号

特集震災から 5 年現場から問いかける課題と復興・防災・減災への提言 災害復興、防災・減災におけるジェンダー 付を原則としている被災者支援におい 委員間名のうち女 援を積極的に行い、 六これからの課題 て、被災補償を含め現金給付が可能とな は 4 名 ( 5 ・ 71 % ) 、役職者 ( 委員長、 る。そのためには世帯主要件を撤廃し被東日本大震災から 5 年経ち最も大切な副委員長 ) 名中女性は 2 名 ( 災者に公平に支給される仕組みとすべきのは、防災・復興に関する法律リテラシ % ) である。原発事故にかかる過重な であり、その点からも個人単位の全国共 1 の向上で、「復興ハンドブック」の作災者負担を軽減するための「やさしい原 通被災者台帳の導入が求められる ( 注成とそれらを学ぶ機会の制度化と考え発事故損害賠償申立書」は女性弁護士が る。日本弁護士連合会 ( 以下「日弁連」作成している ( 注間 ) 。先に紹介した「東 という。 ) 相談業務においても、「震災復京都震災復興検討会議」では、有識者 興関連法令」の相談は最も多い ( 注リ。 名のうち女性は 5 名で 2 名は大学の防災 3 男女共同参画社会と被災者台帳 相談の統計は件数と内容のみ公開されて研究者、 1 名は労働分野の研究者、 1 名 被災者台帳については、 2013 年 6 いるが、ジェンダ 1 の主流化を進めるは民間の防災関係者、 1 名は弁護士であ 月の災害対策基本法改正によって、台帳と、今後の災害に備えて女性・男性、年る。このように法律関係者には様々な形 の作成とそれに係る個人情報を利用でき齢等、属性に即した法支援制度の確立、 で支援が求められている ( 注リ。 る旨明記された。阪神・淡路大震災時に事前復興を実現できる 被災者は男性、女性、子ども、高齢者、 「第 4 次男女共同参画基本計画」には、 障がい者、外国人と多様である。だから 西宮市が構築した「被災者支援システ ム」は汎用システムとして進化 司法分野において検察官、裁判官、弁護こそ、弁護士をはじめとする専門家、自 し、全国に無償で公開・提供されてい 士の女性の活躍、ロールモデルとなる女治体職員においては一層の男女共同参画 る。 2016 年 2 月現在 983 の地方自性法曹による教育の重要性が指摘されての実現が切に望まれる。 治体が災害時に運用可能となるインスト いる。 2015 年の日弁連所属弁護士は 1 ルキ 1 の発行を受けている。このシス男性が 2 万 9 7 9 7 名、女性が 6 618 ( 注 ) テムは当初、個人で情報登録した上で世名 ( ・ 2 % ) である。確実に女性の数 ( 1 ) 辻村みよ子「『人権としての平和』と生存権ー憲法 の先駆性から震災復興を考える」「 GEMC journal グ 帯単位ごとにまとめられていたが、 2 0 は増えているが、 5 人に 4 人は男性であ ロ 1 バル時代の男女共同参画と多文化共生』東北大学 12 年にシステムが見直され、個人単位る ( 注 ) 。日弁連は「日本弁護士連合会 00 7 号 ( 2 012 年 ) での運用が可能となった。これによって男女共同参画推進基本計画」を策定して いて、第 2 次計画では、日弁連の活動や ( 2 ) 林春男「災害弱者のための災害対応システム」都ろ 個々人の状況に応じた長期の支援対応が の 市政策別号 ( 期待できるようになった。 具体的事件の処理を通じて社会における 律 ( 3 ) 大沢真理・堂本暁子・山地久美子編「「災害・復興法 男女共同参画の推進に寄与するとある。 災害復興支援委員会は現地での被災者支 Ⅱシンポジウム 5 災害・復興に 2 と男女共同参画」 6 ・

7. 法律のひろば 2016年3月号

特集震災から 5 年現場から問いかける課題と復興・防災・減災への提言 法律家としての支援ー震災後 5 年の被災地の現状と法的ニーズ 法律家としての支援 その司法過疎地において、ひとたび 発事故が発生すれば、多くの法的ニ 1 ー震災後 5 年の被災地の現状と法的ニーズ言 は生ずるものの、被害救済に対応でき だけの弁護士等の法律家が足りないとい 福島県弁護士会弁護士渡辺淑彦う事態となる。初期段階で、加害者が 意に賠償金を支払う段階までなら法律 そうすると、わずかな距離の違いで、 は不要である。しかし、今、 5 年を経て、 一はじめに 賠償金の支払額に大きな格差が生じ、避まさにこの地で見られているように、 原発事故による被害を賠償という観点難者同士や、避難者とその受入れ住民間害者側の一方的判断で、営業損害や就。 から見ると、避難指示区域 ( 帰還困難区に、 見えない心の分断や軋轢が生じるこ不能損害などの継続的な賠償が打ち切 域・居住制限区域、避難指示解除準備区ととなり、「二次被害」ともいえる状況れようとしている。今こそ、法律家が 域 ) の住民や事業者に対しては、東京電を生じさせているのである。 極的に活動し、被害救済のために闘う が来ている。ところが、現地で、その カ株式会社 ( 以下「東電」という。 ) は、 「それなりの賠償」を任意に支払ってき うな活動をする弁護士等の法律家が足 ニ原発事故と司法アクセス たのに対し、それら以外の住民 ( 旧緊急 ない。それは被害者を泣き寝入りさせ 時避難準備区域の住民や自主的避難等対 ことに等しい。どんなに立派な法律が 原発立地地域 = 司法過疎地 象区域の住民、その他の福島県を中心と っても、法律を使う人 ( 法律家 ) がいオ する住民 ) に対しては極めて低額かゼロ 原発の立地地域は、ほほ間違いなく司ければ、それは画餅にすぎない。司法、。 のままの状態が続き、事業者に対して法過疎地域でもある ( 注 1 ) 。原子炉の設疎とは、平等に適用されるはずの法 , は、次々に営業損害に対する賠償の打ち置のための適地条件を定めた「原子炉立が、その地には空洞のように存在しな、 切り策が進められている状況にある。 地審査指針」 ( 注 2 ) には、原発を立地すことを意味するのである。 そもそも政府の避難指示区域区分と、 るための条件として周辺地域が「低人口 ろ 損害賠償の発生の範囲とが一致するはず地帯」であることが規定されている。原 ひ 個別性の高い損害の現れ方と の もないが、東電 ( その背後の政府 ) は、発立地地域が、司法アクセスという意味 律 の解決の難しさ 法 避難指示区域区分ごとに賠償金額に差をでも不十分な「司法過疎地」でもあるこ 設け、その例外をほば認めようとしない。 とは、いわば必然の結論であるかもしれ原発事故の損害の現れ方は様々で四

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特集震災から 5 年現場から問いかける課題と復興・防災・減災への提言 法律家としての支援ー法制度の改善への取組 く叫ばれていたにもかかわらず、実際にるべき点が多い。ところが、改正後に発それが災害列島たる日本の現状である。 は、個人情報保護の過剰反応や、法規定生した災害ではうまく活用されていな法律家がこれと無関係であるはずがな の無理解、硬直的な行政運用等もあっ 、。平成年川月の伊豆大島での大規模 い。法制度の改善に向けて取り組む必 て、避難者・被災者の情報を適切に開示な土砂災害では、町による避難勧告の遅性はいささかも減じられていない。 せず、また、未だに個々の避難者の実情れが発生し、改正法で新設された災害情前述のほかにも、法律家の関与によ を行政が把握できていないという状況を報の即時伝達のスキームが機能しなかって改善された法制度はいくつかある。 もたらした。東日本大震災でも高齢者・た。平成年 9 月の鬼怒川決壊による大発事故の損害賠償請求権の消滅時効に いて、損害が生じたときから川年間に 障害者の死亡率が高率となっているの規模浸水被害では、避難所の運営が劣悪 は、個人情報取扱いに関する失政が一因で、大量に発生した在宅被災者に対して長する「東日本大震災における原子力 といっても過言ではない。日弁連では、早期に食事供与を打ち切るなど、改正災電所の事故により生じた原子力損害に 本人同意を絶対視する行政運用を改める害対策基本法で新設された被災者保護、る早期かっ確実な賠償を実現するため べきことを強く求め、平成年川月には在宅被災者対応の規定が機能しなかっ措置及び当該原子力損害に係る賠償請、 「災害時における要援護者の個人情報提た。たとえ制度改善がなされたとして権の消滅時効等の特例に関する法律」 ( ) 供・共有に関するガイドライン」を策定も、それで終わりではない。これを周知成年 ) は、重要な権利保障の制度で った。 し、第一に同意なく要援護者情報を名簿徹底し、現実に活かすためにはフォロー 前述の被災ロ 1 ン減免制度は、災害、 化する方法の提示、第二に提供を行う際が必要で、法律家としてその作業に関わ の要件の明確化、第三に前提となる概念る可能性が強く示唆されている。 助法が適用される今後の災害にも利用ゞ できる「自然災害による被災者の債務 の整理を行い、支援団体、研究者等の協 力を得て、全国にその周知を図った。災 理に関するガイドライン」 ( 平成年 ) 六未解決の法制度課題 害対策基本法の平成年改正は、避難行 に衣替えし、恒久制度化されることに 動要支援者の概念確立、安否確認等の本 5 年目を迎えたが、これで集中復興期った。いずれも弁護士の働き掛けによ ものである。 人同意不要ケ 1 スを明示列挙し、被災者間を終え次の段階に進めるような状況に 台帳など復興期における個人情報の活用なっているとはとても思えない。津波被 一方で、平成年に成立した「東京 ろ のスタイルを提案するなど、画期的な制災地の復興は道半ばであるし、原発事故カ原子力事故により被災した子どもを ひ の 度改善が行われた。 の被害地は未だ将来を見通すことさえでじめとする住民等の生活を守り支える ' 律 このように災害対策基本法の改正は、 きない。一方で、首都直下地震や、南海めの被災者の生活支援等に関する施策法 中央目線の他の法律と異なり、参考にな トラフ連動地震が刻一刻と迫っている。推進に関する法律」は、理念法として

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東日本大震災を教訓とした弁護士の防災・減災活動 表 1 東日本大震災後に弁護士が関与して成立した法制度 1 . 被災ローン減免制度の構築 「ニ重ローン」問題の解決のため、被災債務の買取りや減免制度を新設すべきと主張 していたところ、個人の被災ローン減免制度である「個人債務者の私的整理に関する ガイドライン」並びに、事業者の債務買取り等を含む事業再生制度である「株式会社 東日本大震災事業者再生支援機構法」が成立した。また被災ローン減免制度の周知徹 底について求めていたところ、金融庁から金融機関に対し周知徹底を求める通知等が 発信され、金融機関から被災者に対し葉書等による周知がなされるまでに至った。ま た、将来の災害にも備えるべく 2015 年 12 月には自然災害による被災者の債務整理に関 するガイドライン研究会により「自然災害債務整理ガイドライン」が日弁連ほか関係 各機関で構成される研究会で策定された。 2 . 相続放棄等の熟慮期間の延長 民法規定の「 3 か月以内」では短期間すぎるとして、相続放棄等の熟慮期間の 1 年の 延長を求めていたところ、議員立法で「東日本大震災に伴う相続の承認又は放棄をす べき期間に係る民法の特例に関する法律」が成立し、 2011 年 11 月 30 日まで熟慮期間が 延長されることとなった。被災地では相続放棄や期間延長の申述件数も大幅に増加し た。 2013 年 6 月の「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置 に関する法律」の改正により、将来の巨大災害でも政府の判断で熟慮期間の延長がで きるようになった。 3 . 災害弔慰金の支給対象者の兄弟姉妹への拡大 災害弔慰金の支給対象に兄弟姉妹が含まれていなかったが、同居又は生計を同一にし ていた兄弟姉妹を対象に含める「災害弔慰金の支給等に関する法律の一部を改正する 法律」が成立した。また、被災地域の市町村では、条例を改正して対応したところも ある。義援金の分配についても、兄弟姉妹が支給対象から除外されていたが、県レベ ルで、兄弟姉妹に拡大するなどの対応がとられた。 4 . 災害弔慰金・被災者生活再建支援金・義援金の差押禁止債権化 災害弔慰金は形式的には、債権者による差押えが可能であったことから、差押えの対 象とならないようにすることを求めていたところ、議員立法で差押えを禁止する法案 が成立した。 5 . 罹災都市借地借家臨時処理法の不適用 賃貸借契約に関する相談実態からすれば、同法の適用による優先的借地権等の設定は、 まちづくりを阻害しかねなかった。同法の適用を検討していた法務省や総務省と意見 交換を重ねた結果、最終的には東日本大震災における同法の不適用が決定された。 6 . 原発事故子ども・被災者支援法の成立 原子力発電所事故に起因する様々なニーズを集約することで、「東京電力原子力事故 により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活 支援等に関する施策の推進に関する法律」の成立に寄与した。この支援法に基づく具 体的施策を提案することが法律家の新たな使命となった。 7 . 災害対策基本法 2013 年改正 自治体の被災者の個人情報が支援者に共有されないことで、災害時要援護者や広域避 難者の救助・支援が困難になっている現状を踏まえ、日弁連で関連意見書提出や個人 情報の共有ガイドライン策定を実施。周知のためにシンポジウム「災害時における個 人情報の適切な取扱い」を全国キャラバンで実施。「避難行動要支援者名簿」「安否情 報」「被災者台帳」の制度化等、自治体の個人情報政策に大きな影響を与える大改正 につながった。 8 . 原子力損害に係る損害賠償請求権の消減時効延長 潜在的な該当者は 100 万人規模に達する画期的とも言える特例法である。「東日本大震 災における原子力発電所の事故により生じた原子力損害に係る早期かっ確実な賠償を 実現するための措置及び当該原子力損害に係る賠償請求権の消減時効等の特例に関す る法律」は、不法行為の損害賠償請求権において「 3 年間」とされている消減時効を 「 10 年間」に延長し、また「不法行為の時から 20 年」とされている除斥期間を「損害 が生じた時から 20 年」とした。 9 . 復興用地の土地収用を促進する規制緩和の実現 「東日本大震災復興特別区域法の一部を改正する法律」が、 2014 年 5 月 1 日から施行 された。本法律は、東日本大震災の被災地において、所有者不明、相続未処理、多数 共有の土地等円滑に取得が進まない復興事業の用地が多数存在し、その迅速な確保が 喫緊の課題となっていることに鑑み、土地収用の裁決手続の要件緩和、防災集団移転 事業の要件緩和、などが法制度として認められた。 45 ・法律のひろば 2016.3 特集震災から 5 年現場から問いかける課題と復興・防災・減災への提言 に来 ロた の棄 っ巨 大の の法 害慮重度 ン築 制なやく 度と 築将 続宅 性共き り律 , 相 や軌 歴跡 のに は数 ハ時あ付おる 應こ にる 大筆 . 承 . ロ 学者 しになや災な の改起災 る大 れ共を繰た国 びで 法以な策憶返にあ 学降ら上すす課る 部順 と れ を し て 実 現 識てたニ化 々 ウ 法はて対災 か な 同年ば政記 な い に の備間 ん 。久 的 な 構 虹 料 談 の デ タ イヾ に ょ 、伝災妻改はで 生惨正 い応害用力 る教善 と 土 て る も も 浮 . 、彫 に な リ ル 1 ズ す け公訓 ノ 放 等 い災熟二制 期 ク ) 多る問問オ い恒題題け 2 1 ン ロ 1 1 、相住 な は で 構 の の め 過公 の政 経策 験の し て み じ、 さ れ 慶 塾 科 大 学 院 史活 と表用 1 つ そ 義でも 2 0 1 2 、次 3 開承 展伝 とを 設跡 創軌 のの 学策 法政 興 復 害 る す き を り のる必題日 し、 、てき き 要に本 0 、は

10. 法律のひろば 2016年3月号

極めて充実した内容で、制度新設に果た立法事実を示し、新たな救助法制を示すなっており、本来は平成年に改正が行 した弁護士の役割は大きかった。しかべきである。 われるはずだった。しかし東日本大震災 し、具体的施策が実施されないまま骨抜第二は災害関連死に関する制度改善でがあって改正が延期され今日に至ってい ろ きにされ現在に至っている。制度成立後ある。災害関連死は災害弔慰金法に基づる。同法は、住家の被害・再建に着目し、 に法律家の関与の余地がなかったことが く弔慰金支給の適用の問題であるが、東世帯に対して金銭給付のみを行う仕組みの 日本大震災では、これが硬直的・制限的であるが、この間に分かってきたこと 痛恨の極みである。 こうした例も含め、未解決の法制度のに適用されて救済されるべき多くの事例は、被災者の生活基盤は住家だけでな 課題を他に 3 点挙げておきたい。 が却下の憂き目を見ている。阪神・淡路 、仕事、心身の故障、家族・人的交流 など様々な要素で成り立っており、住家 第一は「災害救助法」の改正である。大震災では震災 6 日前に危篤に陥った 災害対策基本法が行政にとって重要な基歳男性が、震災で人工呼吸器が外れて死にのみ着目する適用要件は実態に合わな 本法令であるのと同じように、災害直後亡したケ 1 スで、震災関連死を認めた ( 大いということである。また世帯分離して の被災者にとって最も重要なのが災害救阪高裁平成間年 4 月日判決、最高裁も復興する例も多く、世帯単位ではなく個 助法である。体育館で長期間にわたって維持 ) 。一方、例えば岩手県が公表して人単位で支援するのがニーズにマッチす 雑魚寝をしたり、いつまでもおにぎりと いる関連死基準では、「高齢・衰弱で震る。そして、金銭支給だけでなく、例え 菓子バンしか供与されない姿は、先進国災がなくても同様の経過をたどったと考ば情報提供や寄り添い、見守りなどを行 としてあり得ない図である。また、仮設 えられる場合は因果関係がないと判断すう被災者生活再建支援員のような人的支 住宅 ( みなし仮設住宅を含む。 ) というる」など明らかに狭い基準を立てて対応援も含めた上で、個々の被害実態に合わ 避難生活における重要な要素の基盤法令している。災害関連死の認定は、現在、せて支援方法をオーダ 1 メイドで策定し にもなっているが、災害救助法には具体プラックポックスの中で行われているて実施する「災害ケ 1 スマネ 1 ジメン 的な規定はなく、硬直的な先例主義が被が、いくつか判例の集積も出ているとこト」を盛り込む制度に再編するのが適当 と思われる。言わば介護ケアマネの災害 災者を困惑させている。昭和年制定のろであるから、あらためて基準の定立に 版である。 古い制度が、いつまでも被災者に前近代向けて動き出す必要があろう。 的な避難生活を強いる根拠となっている第三は被災者生活再建支援法の改正で法律家が積極的に被災者の声を代弁 のである。原発避難も含め、今後の国民ある。同法は阪神・淡路大震災の 3 年後し、被災者の権利実現のために制度改善 のノウハウを活用し、力を尽くすことが の避難生活を想像すれば、災害救助法のに被災地の発意で成立した議員立法で、 抜本的な改正は最優先課題である。法律全壊世帯には最大 300 万円が支給され求められている。 ( つくい・すすむ ) 家は、いかに災害救助法に不足があるかる。 4 、 5 年ごとの見直しをすることと