事前に端緒となる情報を入手することにている。その中で、本邦に入る船舶又はづき、法務省入国管理局、入国者収容所炻 より、慎重な審査を実施する外国人を限航空機の長は、あらかじめ、その船舶又又は地方入国管理局の長は、警察庁、都 2 は航空機が到着する出入国港の入国審査道府県警察、海上保安庁、税関、公共職 定することが必要である ( 注 5 ) 。 しかも、入国や上陸の規制の実施の端官に対し、その乗員及び乗客に係る氏名業安定所その他の関係行政機関に対し、 ろ 緒となる情報は、我が国に実際に入国しその他の事項を報告しなければならない 出入国の管理及び難民の認定に関する事 又は上陸しようとする外国人に係るものこと ( 療条 1 項 ) 、また、入国審査官は、務の遂行に関して、必要な協力を求める律 上陸のための審査について定めている入ことができることとされている。 に限られず、仮に我が国に入国しあるい は上陸しようとする場合には入国や上陸管法 7 条 1 項その他の入管法の規定の実また、法務大臣が、前述した入管法 を規制すべき外国人又は少なくとも違反施を確保するため必要があると認めると条 3 号の 2 の公衆等脅迫目的の犯罪行為 調査や慎重な上陸審査を行うべき外国人きは、本邦に入る航空機を運行する運送等に係る認定をしようとするときは、外 に係る情報や、これらの外国人が身分事業者等に、当該航空機が出入国港に到着務大臣、警察庁長官、公安調査庁長官及 項を偽るために使用する可能性のある他する前に、当該航空機に係る予約者、当び海上保安庁長官の意見を聴くものとす 人名義の旅券に関する情報なども必要で該予約者に係る予約の内容、当該予約者るとされており ( 同法条の 2 ) 、実際 にこの認定を行、つに際しては、これらの ある。 の携帯品及び当該予約者が当該航空機に このため、端緒となる情報は、過去の搭乗するための手続に関する一定の事項省庁から必要な情報の提供等がなされる こととされている。 出入国や在留の管理などにおいて得られを報告することを求めることができるこ このほか、紛失・盗難旅券デ ている情報を別とすれば、通常は、退去と ( 条 8 項 ) が定められている ータベースの入国審査における活用が行 入国管理行政における水際テロ対策を 強制手続や上陸の手続において取得する のではなく、関係機関から提供を受ける真に実効あるものとするためには、テロわれており、入国管理局では、このデー リスト等の入国や上陸の規制を行うためタベ 1 スの活用によって、紛失・盗難旅 ことが必要となる の端緒となる情報の事前の取得が必要で券を悪用したテロリストや我が国での不 あり、この点で、これらの報告などの船法行為を企図する者等による不法入国事 六情報の収集 舶又は航空機の長や運送業者の協力が重案の発見に努めている ( 注 6 ) 。また、警 察庁、法務省及び財務省の共同で事前旅 要な役割を果たしている 船舶又は航空機の長及び運送業 客情報ンステムが運用され 者の協力 ている 2 関係行政機関の協力等 入管法は、 6 章において、本邦に入る 船舶又は航空機の長やその船舶又は航空入管法礙条の 8 は、関係行政機関の協の 9 に外国入国管理当局に対する情報の 機を運航する運送業者などの義務を定め力について定めており、同条の規定に基提供に関する規定が置かれているが、こ
退去強制事由のいずれかに該当するときロ は、当該外国人が我が国の領土に上陸し 6 0 ているか否かに関わりなく、退去強制手 2 続の対象とすることができる。 ろ 退去強制手続は、退去強制事由に該当ひ 日本大学危機管理学部教授高 ( 毛茂する外国人を国外に送還する手続であ り、入国警備官は、退去強制事由に該当 として、外国人が「上陸」をする場合にすると思料する外国人があるときは、当 一はじめに は、許可 ( 上陸許可 ) を受けることを要該外国人 ( 容疑者 ) につき違反調査をす ることができ ( 同法条 ) 、容疑者が退 世界各地においてテロの脅威が増し、するものとしている。 そこで、この上陸許可制度により、我去強制事由に該当すると疑うに足りる相 我が国においても、テロ対策の強化が重 要かっ緊急の課題となっている。その中が国においてテロを行おうとする外国人当の理由があるときは、出国命令対象者 に該当すると認めるに足りる相当の理由 で、テロの未然の防止という観点から、 などの上陸を拒否することができる 一方、外国人が「入国」することにつがある場合を除き、主任審査官の発付す 入国管理行政による水際対策の重要性が 増している いては、そのための許可を受けることはる収容令書により収容することができる 本稿では、この入国管理行政における要しないこととされているが、①有効な ( 同法条 1 項、条の 2 第 1 項 ) 。また、 水際テロ対策について、その仕組み・法的旅券を所持しない者 ( 有効な乗員手帳を主任審査官から退去強制令書が発付され た場合には、その退去強制を受ける外国 根拠とその実施のために必要な情報の取所持する乗員を除く。なお、本邦におい 得の問題についてみていくこととする て乗員となる外国人も乗員とみなされ人を送還可能のときまで、入国者収容所 る。 ) 、②入国審査官から上陸許可の証印等に収容することができる ( 同法条 5 若しくは入管法 9 条 4 項の規定による記項 ) 。このように、退去強制手続におい 一一入国管理行政における水際 録 ( 上陸許可の証印に代わる記録 ) 又はては、その対象となる外国人の身柄を拘 テロ対策 上陸の許可を受けないで本邦に上陸する東することができる。 入国管理行政の基本法である出入国管目的を有する者、のいずれかに該当する それ故、テロリスト等の外国人が退去 理及び難民認定法 ( 以下「入管法」とい外国人は、本邦に入ってはならないとさ強制事由に該当する場合には、退去強制 う。 ) は、「入国」と「上陸 , を区別し、 制度により、当該外国人が我が国の領域 れ ( 同法 3 条 ) 、これに違反して本邦に 我が国の領域 ( 我が国の場合は、領海又入った外国人は退去強制事由に該当する内において活動することを防止すること が可能であり、入国後直ちに退去強制手 は領空 ) に立ち入ることを「入国」とし、 ( 同法条 1 号 ) 。 我が国の領土に立ち入ることを「上陸」 また、我が国の領域に入った外国人が続を開始して収容すれば、事実上、当該 水際テロ対策とインテリジェンス 0 0 0
定された危険物を不法に所持する者の上ものであることなどを理由として上陸を点で、退去強制手続を行うことが可能で 陸を認めないこととするものである。 ある。しかも、前述したように、退去強 拒否することによっても行われる。 しわゆ Ⅱ号、肥号、号及び材号は、、 制手続においては、対象となる外国人の る利益公安関係の規定であり、例えば、 身柄の拘東が可能であり、上陸の規制と ろ 四水際テロ対策としての入国 肥号では、公務員であるという理由によ は異なり、我が国のすべての領域内におひ の規制 律 ける活動を防止することが可能である。 り、公務員に暴行を加え又は公務員を殺 法 傷することを勧奨する政党その他の団体 退去強制制度による入国の規制 や公共の施設を不法に損傷し又は破壊す 2 退去強制事由 上陸とは異なり、外国人が我が国に入 ることを勧奨する政党その他の団体など を結成した者、このような政党その他の国することについては、そのための許可退去強制事由は、入管法条の各号に 団体などに加入し又は密接な関係を有すを受けることは要しない。しかし、我が定められているが、水際テロ対策の実施 に関しては、 1 号、 3 号、 3 号の 2 、 3 1 号ては、 国に入国した外国人が退去強制事由に該 る者が対象とされ、さらに、 3 、 号の 3 などが重要である。 このような政党その他の団体などの目的当すれば、退去強制手続が行われる。 このうち、 1 号は、入管法 3 条の規定 を達するため、印刷物、映画その他の文退去強制事由には、その適用を受ける に違反して本邦に入った者が対象とな 書図画を作成し、頒布し、又は展示する外国人が我が国に在留していることを必 ことを企てる者も対象とされている。な要としないもの、すなわち、我が国に在る。テロリストは多くの場合、偽造旅券 留しているか否かにはかかわりなく、退を行使する。そして、偽造旅券は有効な お、「公務員」及び「公共の施設」は、 特に「本邦の」とは規定されていない。 去強制手続の対象となり得る状態になれ旅券ではないことから、テロリスト等が さらに、Ⅱ号は、入管法 5 条 1 項の 1 ば直ちに適用され得るものがある 偽造旅券を行使して我が国に入国したと 号から号までの各号に掲げる者を除く 退去強制事由は入管法条の各号に定きには、この 1 号の退去強制事由が適用 される ( 注 3 ) 。 ほか、法務大臣において日本国の利益又められているが、そのうち、 1 号、 3 号、 は公安を害する行為を行うおそれがある 3 号の 2 、 3 号の 3 、 3 号の 4 、 3 号の 3 号は、他の外国人に不正に上陸や在 と認めるに足りる相当の理由がある者が 5 は、その適用の対象となる外国人が本留に関する許可等を受けさせる目的で、 対象となる。 邦に在留する者であることが要件とはさ文書若しくは図画を偽造若しくは変造 なお、水際テロ対策としての上陸の規れていないものと解される。 し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、 制は、上陸拒否事由の適用によって行わ このように、適用の対象となる外国人又は偽造若しくは変造された文書若しく れるほか、入管法 7 条 1 項 2 号により、 が本邦に在留していることが要件とされは図画若しくは虚偽の文書若しくは図画 上陸の申請を行った外国人の申し立てたていない退去強制事由の場合、それに該を行使し、所持し、若しくは提供した者 本邦において行おうとする活動が虚偽の当する外国人が我が国の領域に入った時及びこれらの行為を唆し又は助けた者が
特集出入国管理・外国人との共生 水際テロ対策とインテリジェンス 対象となる。例えば、我が国に偽造旅券外国人について、退去強制制度の適用に法などについて定めている。退去強制や を使って入国しようとするテロリストより入国の規制を、上陸許可制度の運用上陸の申請に対する処分は、これらの規 に、不正に上陸許可を受けさせる目的により上陸の規制を行うことが可能であ定に基づく必要な調査を行った上で行わ で、その偽造旅券を提供した外国人などるが、実際に入国や上陸の規制を行うたれる。 しかし、違反調査は、入国警備官が、 が対象となる めには、必要な情報を適切な時期に取得 3 号の 2 及び 3 号の 3 は、平成年のすることができることが重要である。 何らかの端緒により、退去強制事由に該 入管法の改正で新設された規定である。 水際テロ対策を実施する上で必要な情当すると思料する外国人について行われ この改正では、テロの未然防止のため、報としては、端緒となる情報と処分を行るものであり、また、上陸手続に関する 前記の規定は入国審査官から入管法 7 条 上陸審査時に特別永住者等を除く外国人うために必要な情報がある。 入国の規制や上陸の規制、具体的には 4 項又は 9 条 5 項の規定による引渡しを に個人識別情報の提供を義務づけるとと もに、テロリストの入国等の規制を適切退去強制令書発付処分や上陸の申請に対受けた後に特別審理官が行うロ頭審理に に行うための退去強制事由の整備等が行する不許可処分を行うためには、その根関するものである ( 注 4 ) 。 われた。 拠となる証拠が必要である。そこで入管法務省の発表によれば、平成年にお このうち、 3 号の 2 は、公衆等脅迫目的法は、上陸手続に関しても、また退去強ける外国人の入国者数は、新規入国者だ の犯罪行為、その予備行為又はその実行制手続に関しても、調査に関する規定をけでも 1779 万人を超えており、本邦 を容易にする行為を行うおそれがあると定めている。例えば、上陸の手続におけに上陸することなく通過する者などを含 認めるに足りる相当の理由がある者としる口頭審理に関して、川条 5 項は、特別めた入国者の総数は、膨大な数になる。 て法務大臣が認定する者が対象となる。審理官が職権に基き又は外国人の請求にしかも、入国しあるいは上陸しようとす る者の大半は、入国や上陸の規制を行う また、 3 号の 3 は、国際約束により本基き、証人の出頭を命じて、宣誓をさせ、 証言を求めことができることを、川条 6 必要が全くない外国人である。もとも 邦への入国を防止すべきものとされてい る者が対象となる。具体的には、国連安項は、特別審理官が、口頭審理に関し必と、我が国に入国するすべての外国人に 全保障理事会決議により加盟国に入国・要がある場合には、公務所又は公私の団ついて違反調査を行うことや我が国に上 通過の防止措置が義務付けられている者体に照会して必要な事項の報告を求める陸しようとするすべての外国人について ことができることを定めている は、この規定の対象となる 口頭審理を行、つとい、つよ、つなことは入管 また、前述したように、条は、入国法の予定するところではないが、実際上 ろ も不可能であるということができる。入 警備官は、退去強制事由に該当すると思 ひ 五水際対策の実施に必要な情 料する外国人があるときは、当該外国人国の規制に関しては、端緒となる情報をの 法 につき違反調査をすることができると入手していることが必要であるのはもち 我が国に入国し又は上陸しようとするし、条以下において具体的な調査の方ろんであるが、上陸の規制に関しても、
人識別情報の取得や外国人入国記録の記の下、政府としても、国際組織犯罪等・察機構の紛失・盗難旅券データベ 1 ス検 載内容等を簡素化するなど、簡易な手続国際テロ対策推進本部において策定され索システムを活用した審査を実施し、紛 で上陸を認める「船舶観光上陸許可」制 た「邦人殺害テロ事件等を受けたテロ対失・盗難旅券を悪用した不法入国事案の 度の運用を開始し、急増するクルーズ船策の強化について」 ( 平成年 5 月 ) 及発見に努めている。 ろ 旅客の対応に当たっている。これに加えび「。ノ 、リにおける連続テロ事案等を受け さらに、平成四年以降、本邦に乗り入の て、我が国の海港に入港後の上陸審査に たテロ対策の強化・加速化等について」れる全ての船舶及び航空機から乗客等の 要する時間の短縮を目的として、あらか ( 平成年肥月 ) に基づく各種対策を進身分事項等の事前提出が義務付けられて じめ外国の出発地に派遣した入国審査官めている。水際対策を担う入国管理局のいたところ、平成 % 年の入管法改正によ がクル 1 ズ船に乗り込み、公海上におい重要性も高まっているところ、以下、現 り、平成年 1 月から航空会社に対して て個人識別情報の提供を受けるなど、ク在の主な取組について紹介する ( 乗客予約記録 ) の報告を求める ルーズ船が我が国の港に到着するまでの 制度を導入し、平成年 1 月からは、 間に上陸審査の事前準備を行う海外臨船 の電子的取得を開始している。これ 2 具体的施策 審査の実施に向けて、船籍国からの同意 により、予約を行った旅客のみならずそ 取得等の必要な準備を進めている。 情報を活用した入国審査の推進 の同行者に関する情報等、より多くの情 平成四年Ⅱ月から、我が国に上陸しょ報を当該旅客の入国前に入手することが うとする外国人には、個人識別情報 ( 指可能となった。 三水際対策の実施 紋、顔写真 ) の提供が義務付けられてい 加えて、今後、水際対策における顔画 る。これにより、上陸申請者と旅券名義像の活用が益々重要になると考えられる 現状 人との同一人性の確認及び入国管理局が ところ、入国管理局においては、上陸審 我が国の治安や国民の安全を守るため保有する情報との照合をより正確かっ迅査時に取得した顔画像と入国管理局が保 には、テロリストや不法滞在を企図する速に行うことが可能となった。個人識別有する要注意人物等に係る顔画像を機械 者等の入国を水際で確実に阻止する必要情報の活用による被退去命令者及び被退的に照合する顔画像照合機能の活用強化 があり、これもまた、出入国管理行政が去強制者数は、平成年末までに約 62 を推進していくこととしている。 担う重要な使命である。昨年来、シリア 00 人であり、少なくともこれらの者の における邦人拘束・殺害事案、ハリやプ入国を阻止しているほか、同制度の導入 インテリジェンス機能の強化 リュッセルにおける連続テロ事案等が発により我が国への入国を諦めた者がいる 効果的な情報の活用は、適正な出入国 生し、我が国を取り巻くテロの情勢は一 ことを考慮すると、相当の効果が生じて管理行政を遂行する上での要といえる 段と厳しさを増している。こうした状況 いる。また、平成幻年から、国際刑事警平成年月に閣議決定された「『世界
特集出入国管理・外国人との共生 出入国管理行政の課題と今後の展望 設や審査要員を確保するなど物的・人的四年の個人識別情報の提供義務化によりとする制度を導入することとなった。現 体制の整備が必要であるが、同時に、限審査時間の短縮効果が薄れたため運用を在、商用目的で繰り返し訪日している外 られた審査場のキャパシティを最大限効停止していた。現在、出発地空港で個人国人を対象として本年中の運用開始に向 果的に使うためには、入国審査プ 1 スに識別情報を事前取得することを含めたプけて所要の準備を行っているところであ 至るまでの人の流れを円滑にすることもレクリアランスの実施について、平成四 り、平成年までには、外国人観「客を 重要である。このため、従来から、通訳年度以降の早期の運用開始を目指し、関対象に含めることを目指している や審査プ 1 スコンシェルジュを配置し、係省庁と連携して具体的な検討を進めて 顔認証技術の導入 誘導案内や入国記録カードの記載案内等いるところである。 さらに、入国管理局においては、日本 を行っているところ、これに加えて、現 人の出帰国手続における顔認証技術を活 の信頼できる渡航者の自動化ゲート利 在、審査プ 1 スの中で取得している指紋 用した自動化ゲ 1 トの導入について検討 用の実現 等の個人識別情報について、取得機器を 円滑な出入国審査において大きな役割を進めている。これは、旅券の—0 チッ 搭載した機動的なカート ( バイオカー ト ) を用いて、審査を待っている列の途を果たすのが自動化ゲートの更なる活用プに記録されている顔画像と空港内で撮 である。日本人及び一定の外国人の出入影した顔画像との照合により同一性の確 中で取得することとした。これにより、 審査プ 1 スにおける手続時間を最大で 3 国手続を自動化することで迅速な手続を認を行うことで自動化ゲートの通過を可 ム月とするものである。事前の登録手続が 割程度短縮できることが期待されてお可能にするとともに、これによって得らヒヒ り、本年中に一部空港において導入したれた入国審査官の余力を対面審査が不可不要となることから、全ての日本人が自 後、他の空港に順次拡大する予定であ欠な業務に重点的に配置することによっ動化ゲ 1 トの利用対象となる。現在、平 る。 て出入国審査全体を円滑かっ迅速に行、つ成年度以降早期の導入に向けて必要な 準備を進めている。 ことが可能となる。 プレクリアランスの再開 平成年の入管法 ( 「出入国管理及び クルース旅客への対応 プレクリアランスとは、航空機で訪日難民認定法ーをいう。以下同じ。 ) 改正 「明日の日本を支える観光ビジョン する旅客をその出発地点の空港で事前に により、現在は自動化ゲ 1 トの利用対象 においては、「 2 0 2 0 年に訪日クル チェックすることで我が国の空港におけとなっていない新規入国の外国人のう る入国審査に要する時間を短縮するものち、出入国管理上のリスクが低く、頻繁ズ旅客を 500 万人に」との目標が掲げろ である。プレクリアランスは、平成年に我が国に入国する外国人を「信頼できられている。入国管理局においては、平の に韓国及び台湾からの新規入国外国人をる渡航者」 ( トラステイド・トラベラ 1 ) 成年 1 月から、法務大臣が指定するク法 対象として開始したものであるが、平成として特定し、自動化ゲ 1 トの利用対象ル 1 ズ船の外国人乗客を対象として、個四
特集出入国管理・外国人との共生 水際テロ対策とインテリジェンス の規定は、外国入国管理当局との間でのの多くは個人情報であるため、関係機関とするものとされていたが、地方自治法の一部を改正 情報の交換を可能とする規定である。 との間で実際に情報の共有を行おうとすする法律 ( 平成年法律第号 ) による入管法の改正 により、特別区を含み、指定都市にあっては区又は総 る場合には、個人情報保護法制による制 合区とするものとされた。 約という問題が生じる。しかも、外国の 3 出入国管理インテリジェンス・ ( 3 ) 実際に、アルカイダの関係者が、平成Ⅱ年から同 関係機関との情報の共有を考えた場合、 センター 年までの間に、偽造旅券を使って繰り返し我が国に 我が国の個人情報保護法制のみならず、 法務省は、水際対策の強化等のため、外国の個人情報保護法制との関係をも考入国していたことが判明している。この事件について は、平成年 3 月日の衆議院法務委員会における杉 出入国管理インテリジェンス・センター慮することが必要となる。 浦法務大臣の答弁 ( 第 16 4 回国会衆議院法務委員会 を設置し、情報の収集・分析や鑑識の業当然のことながら、個人情報の保護は 議録第川号 1 頁 ) を参照。 務を行っている。そして、国内外関係機重要であり、みだりに個人情報がそれを 関との情報共有の枠組みを構築し、情報保有する機関から他の機関に提供される ( 4 ) 口頭審理が行われるのは、入国審査官が個人識別 情報の提供を要しない者に該当しないと認める外国人 ことがあってはならないことはいうまで 収集を推進するとしている が個人識別情報を提供しない場合と、入国審査官が上 もない。しかし、差し迫ったテロの脅威 陸審査の結果上陸のための条件に適合していると認定 に対処するなどのためには、ある程度の 七今後の課題 しなかった場合である。 例外を許容することが必要ではないだろ ( 5 ) 上陸の審査手続の中での本人の申し立てや行動が、 テロを未然に防止するためには、関係うか 機関の連携・協力が必要不可欠であり、 テロ対策の実施は、国際的にも、国内慎重な審査を行い、上陸の規制を行う端緒となること はあるが、それだけを端緒として慎重な審査を行うの 情報に関する連携・協力も必要である。 的にも緊急の重要課題であり、早急に、 前述したように、入国管理行政における個人情報保護法制との関係を検討・整理では、我が国においてテロを行おうとするテロリスト などの入国や上陸を防止する上で不十分である。な 水際テロ対策に関して、関係機関との間し、テロの未然防止のための外国の機関 で情報に関する連携・協力が行われていを含めた関係機関間における情報の共有お、上陸の審査において上陸の申請を行った外国人が 退去強制事由に該当することが判明し、退去強制手続 るが、現状は、必ずしも十分であるとまに関する仕組みを確立することが必要と が行われることもある ではいえないように田 5 われる。 思われる ( 6 ) 法務省入国管理局編「平成年版出入国管理」 テロ組織が国境を越えて活動している 現状においては、外国政府の機関を含め ( 注 ) ( 1 ) 出入国管理法令研究会編「平成年版出入国管理 たより広い範囲の関係機関との間におい ( たかや・しげる ) 実務六法』 ( 日本加除出版、 2 。 15 年 ) 頁。 て、より緊密な連携・協力が行われるこ ( 2 ) 「市町村」は、東京都の特別区の存する区域及び地 とが必要である 頁 17 ・法律のひろば 2016.6
特集出入国管理・外国人との共生 出入国管理行政の課題と今後の展望 一安全な日本』創造戦略、においても、顔画像の収集を推進しており、収集した年連続で増加している【図 2 参照】 今後、外国人入国者の更なる拡大が見 関係機関と連携しつつ様々な情報を収集情報を空港等の水際の最前線に提供する 込まれることから、引き続き不法滞在者 し、高度な分析を行うこと等により、出等、出入国審査における活用を図ってい 対策を進めていく必要があり、入国管理 入国管理行政におけるインテリジェンスる。 局としては、保有する種々の情報を活用 ( 情報収集・分析 ) 機能を強化し、効果 し、関係機関とも連携を密にして、効果 的な不法滞在者・偽装滞在者への対策及 四不法滞在者・偽装滞在者へ 的な摘発を推進するほか、出国命令制度 びテロリスト等のハイリスク者の入国防 の対応 及び「在留特別許可に係るガイドライ 止に努めることとされている。これを受 ンーの更なる周知にも努め、一層の自主 け、入国管理局においては、平成年川 不法滞在者対策 月に出入国管理の情報活用の中核的な組 平成新年から始まった「不法滞在者 5 織として出入国管理インテリジェンス・ センタ 1 を設置し、水際対策に係る情報年半減計画」に基づき、各地方入国管理 官署において、個人識別情報の活用を含 の収集・分析の強化を図っている。 テロリスト等の入国を水際で確実に阻む厳格な上陸・在留審査、不法就労防止 止するためには、国際的なテロリスト等に関する積極的な広報活動、警察と連携 の動きや、それに関連する各種情報を収した摘発の強化等の各種施策を積極的に 集し、上陸審査等の際に、これらの情報実施した結果、同計画開始当時に約万 に基づいた要注意人物リストとの確実な人存在していた不法滞在者は、平成幻年 1 月には約万人まで減少し、ほばその 照合を行うことが必要であるところ、情 報を可能な限り多く、かっ、正確に入手目標を達成した。ただし、ここ数年、不 移 することが極めて重要になる。そのた法残留者は、小口・分散化し、従前より 推 の も摘発が困難となってきたことに加え、 め、現在、出入国管理インテリジェンス・ 数 センターを拠点として、国内の関係機関平成年 1 月現在で約 5 万 9 千人にまで者 及び諸外国との情報連携体制の強化を図減少した不法残留者数が近年の新規入国 っている。また、同センターにおいては、者数の大幅な増加に伴って、平成年 1 不 等の情報を分析し、出入国管理に月時点で約 6 万人となり、年ぶりに増国月月明明明 年年年年年年年年年年年年 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 おけるハイリスク者の類型化を実施する加に転じた。平成年 1 月時点における 2 2 2 2 2 2 2 2 2 成成成成成成成成成成成成 とともに、関係機関からテロ関係者等の不法残留者数も約 6 万 3 千人となり、 2 図平平平平平平平平平平平平 200000 150000 100000 50000 0 31 ・法律のひろば 2016.6
法務省入国管理局企画室長根 ~ 序功 一はじめに 一一観光立国実現に向けた取組 今日の出入国管理行政を取り巻く環境 現状 は刻々と変化している。平成年におけ 移 る外国人入国者数は約 1969 万人、平観光立国実現に向けた政府の取組等に推 成年末時点の在留外国人数は約 223 より、我が国を訪れる外国人は近年急増数 万人となり、いずれも過去最高を記録ししている。平成年の外国人入国者数は国 た。その一方で、近年一貫して減少傾向過去最高の約 1969 万人であり、これ人 にあった不法残留者数が平成年を境に は、過去最高であった前年を約 554 万外 ) 人 年ぶりに増加に転じた。また、平成人 ( % ) も上回る状況にある【図 1 参 0 8 6 図 っィー 年の我が国における難民認定申請件数が照】。 過去最高の 7586 件に上るなど、各種 また、 2020 年の東京オリンピッ最長待ち時間を分以下に短縮する目標 統計上も大きな動きが見られる。加えク・パラリンピック競技大会の開催等をの達成を目指して、出入国審査の更なる て、我が国において少子高齢化が急速に控え、更なる訪日外国人の増加が見込ま円滑化・迅速化を進める必要がある。以 進展する中、外国人労働者の受入れを巡れる中、政府が本年 3 月に取りまとめた下、現在の主な取組について紹介する る議論も高まっている 「明日の日本を支える観光ビジョン」に このような状況の下、本稿においておいては、訪日外国人旅行者数の新たな 2 具体的施策 は、出入国管理行政が現に直面する様々目標として、 2020 年に 4000 万 な課題及びそれらに対する取組について人、 2030 年に 6000 万人を目指す ハイオカートの導入 解説する。なお、本稿中、意見にわたることとされた。こうした中で、入国管理 急増する訪日外国人旅行者に適切に対 部分は筆者個人の見解である。 局としては、空港での入国審査に要する応するためには、出入国審査プースの増 出入国管理行政の課題と 今後の展望 昭和 60 年平成元年 25 27 年 法律のひろば 2016.6 ・ 28
特集 的な出頭申告の促進を図っていくことと より、厳格な対応に努めている。また、 に足りる相当の理由がある場合には、出 している。 「『世界一安全な日本』創造戦略」におい 国猶予期間を指定することなく、直ちに ても、偽装滞在者対策の推進に積極的に退去強制手続に移行することを可能とし 取り組んでいくとされているところ、平ている。さらに、在留資格の取消しに関 ろ 偽装滞在者対策 ひ 成年 3 月、偽装滞在者に関する罰則をする事実の調査について、入国審査官に の 偽装滞在者の存在 整備するとともに、在留資格取消事由の加えて、入国警備官が行うことを可能と している 「偽装滞在者」とは、偽装結婚、偽装拡充等の措置を盛り込んだ入管法の一部 留学、偽装就労など、偽変造文書や虚偽改正法案を第 189 回国会に提出してい 文書を行使するなどして身分や活動目的る ( 注 1 ) 。 被退去強制者の送還促進 を偽り、あたかも在留資格のいずれかに 具体的には、偽りその他不正の手段に 該当するかのごとく偽装して不正に入より上陸許可や在留資格の変更許可等を近時、退去強制令書が発付された被退 国・在留許可を受けて在留する者、ある受けた者について、不法入国や不法上陸去強制者で、本邦における就労等を理由 いは、必ずしも当初から活動目的を偽っと同等の罰則を科すこととしたほか、営に送還を忌避する者 ( 送還忌避者 ) の増 ていたわけではないが、 現に在留資格と 利の目的でその実行を容易にした者に対加が問題となっている。入国管理局で はかけ離れて不法に就労等する者のことする罰則も設け、それに伴う退去強制事は、このような送還忌避者については、 であり、偽装滞在者対策は、不法滞在者由や在留資格取消事由の整備を行った。 自らの意思で帰国するよう説得するとと 対策とともに出入国管理行政上の重要なまた、在留資格取消制度について、従来もに、それでもなお送還を忌避する者に = = 題となっている は、付与された在留資格に応じた活動をは、法の規定に基づき、最終的には護送 3 か月以上継続して行っていない場合に官を付した上、定期就航便で送還するほ 入管法の一部を改正する法律案の提在留資格の取消しが可能であったが、例か、平成年からは、より安全・確実な 出 えば、プローカーの誘いに応じて無断で送還のためチャータ 1 機を利用した集団 在留資格制度を悪用する偽装滞在者の実習先を去る技能実習生のように、 3 か送還を実施している。また、送還を忌避 存在は、我が国の出入国管理行政の根幹月が経過する前の段階で、付与された在する者の中には、帰国後の生活不安を理 に関わるものであることから、入国管理留資格に応じた活動を行っていないのみ由にする者もいるところ、人道的配慮が 局としては、警察等の捜査機関と積極的ならず、他の活動を行い又は行おうとし必要と認められる者に対しては、国際移 に連携し、綿密な調査によってこの種のて在留している場合にあっては、その在住機関 (—oä) 駐日事務所の協力を得 事案の実態の解明に努め、在留資格取消留資格を直ちに取り消すことを可能として、自主的帰国及び社会復帰支援プログ 手続や退去強制手続の措置を執ることに たほか、このような者が逃亡すると疑、つラムを実施している。