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検索対象: 法律のひろば 2017年2月号
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1. 法律のひろば 2017年2月号

特集成年後見制度 成年後見関係事件の概況と家庭裁判所における運用の実情 付与事件 ( 注 9 ) の事件数を合わせると、 後見制度支援信託の活用 ( 図紹 2 家庭裁判所における不正防止対 平成年の 1 年間に後見等監督が実施さ 成年後見人等による不正行為を未然に れた件数は約幻万件となっている ( 図 防止するための方策として、後見制度支 速やかな被害拡大防止措置 後見等監督が実施された件数は、平成後見等監督を実施した結果、不正の兆援信託が導入され、平成年 2 月以降、 年には約 7 万 5000 件であったとこ候が認められた場合には、家庭裁判所が信託銀行等において取扱いが開始されて いる ろ、前述のとおり平成年は約幻万件と成年後見人等の職務執行停止の仮処分を なるなど、ここ数年で大きく増加をして行うことなどにより、成年後見人等の財後見制度支援信託は、本人の財産のう いる。これは、成年後見制度の利用者が産管理権を剥奪し、被害を最小限にとどち、日常的な支払をするのに必要十分な 累積的に増加していることに加え、成年める措置を速やかに講じている。その上金銭を預貯金等として後見人が管理し、 後見人等による不正行為の防止が強く求で、本人の財産状況や被害回復措置の必通常使用しない金銭を信託銀行等に信託 められていることを受け、全国の各家庭要性等の事情を考慮して、弁護士等の専する仕組みである ( 図リ。利用ができ 裁判所においてより適切な後見監督に努門職を新たな成年後見人等に選任するこるのは成年後見と未成年後見においての めていることによるものと考えられる みであるが、信託財産は元本が保証さ とにより、更なる被害の拡大を防ぐとい れ、預金保護制度の対象にもなるもので 最高裁判所に報告される成年後見人等った運用が行われている。 による不正事例の報告件数及び被害額は なお、専門職の成年後見人等による不ある。 後見制度支援信託の利用を検討する際 近年増加をしていたが、平成年は、過正行為も少数ではあるが発生している には、利用の適否や仮に利用するとした 去最高となっていた前年と比較して、報これに対しては、各専門職団体におい 告件数及び被害総額ともに大幅に減少して、専門職による不正を防止するための場合における信託銀行等の選択、信託す た ( 図 ) 。これは、以下に述べる不正対応について検討が行われているものとる財産の額などの検討について、弁護 防止に向けた家庭裁判所の取組が一定の承知しているが、最高裁判所としても、士、司法書士等の専門職後見人が判断 効果を現し始めたことによるものと認識 引き続き、専門職団体と定期的に意見交し、これを利用する場合には、家庭裁判 しているが、なお多くの不正事例が報告換の場を設けるなどして、専門職団体と所の指示を受けて、信託銀行等との間で されているところであり、今後とも適正緊密な連携を図りながら不正防止に取り信託契約を締結するのが一般的な運用と なっている な監督に努めていく必要があると考えら組んでいきたいと考えている。 れる。 後見制度支援信託を利用すると、信託の 財産を払い戻したり、信託契約を解約し法 たりするにはあらかじめ家庭裁判所が発幻

2. 法律のひろば 2017年2月号

特集成年後見制度 司法書士からみた課題 付資料「成年後見制度 ( 補助・保佐・後助制度の利用、あるいは地域福祉権利擁 利用者・関係者への制度紹介・ 見、任意後見 ) 利用促進策の強化が必要護事業 ( 日常生活自立支援事業 ) の利用 情報提供の不足 な場面及び解決すべき課題」では「場面が可能である。また、任意後見制度の利 制度改善提言の冒頭の「成年後見制度 1 」「まず、知っていただくことが重要」用が可能な場合もあり得るし、支援が困 難になるまで放置されることもない。将 における国や市町村等行政の役割ーの項に相当する部分である。 目では、「本人の判断能力が相当程度衰制度改善提言のこの項目中には、「現来的に成年後見制度の利用を視野に入れ えた段階や、財産被害等の状況が進み必在国の行っている施策 ( に ) は、厚生労なければならないとしても、権利の侵害 要に迫られて、ようやく制度利用を決断働省所管の『成年後見制度利用支援事や財産の散逸を未然に防ぐことができ するという傾向がある。そのため、支援業』の一環として『成年後見制度利用促る」「高齢者等の権利擁護の問題も ( 中 の選択肢が狭くなり、対応がより困難に進のための広報・普及活動』があーるが、略 ) 早期発見と早期対応が必要であり、 なっている」「成年後見制度が本人の権「同事業の趣旨は、介護保険サービスや成年後見制度の利用等、早い段階からの 利擁護のための制度であり、本人支援の障害者福祉サ 1 ビス利用促進のために成法的手当てが必要ー等の言及が続いてお 制度であるということがまだ市民に浸透年後見制度を『利用』しようとするものり、結論として「市民に対する制度広報 していない。本人の行為能力を奪う ( 制であり、対象が限定的ー「成年後見制度と普及活動」についての課題として、「成 限する ) 制度だというマイナスイメージの利用を必要とする人は、介護保険サー年後見制度が市民に正しく理解されるた も強く」「制度が正しく理解されるためビスや障害者福祉サービスを利用する人めに、成年後見制度の利用を権利擁護活 ばかりではない。特に、身寄りのない高動として捉えた、国や都道府県、市町村 には、国や都道府県、市町村において、 成年後見制度が本人の権利擁護の制度で齢者や、親なき後の問題をかかえる障害 による積極的な制度広報と普及活動が必 あるという、市民に対する積極的な広報者等、制度利用の必然性の高い人々への要である」との提言をしている 活動が必要である」との言及が続く。こ制度の広報と普及が急がれる。対象を広 れらの点は、昨年 9 月日に第 1 回の委く市民全体と捉え、この事業を展開して 2 市町村における総合相談窓口と 員会が開催された内閣府の成年後見制度 いく取組みが必要ー「医師や、民生委員 専門的支援機関の設置 利用促進委員会 ( 以下「促進委員会」とや介護保険事業に携わる人等、地域社会 さらに、制度改善提言では、「行政等 いう。 ) でも多くの委員から真っ先に、 の中で制度利用を必要とする人々に最も そして繰り返し指摘された事項であり、近い立場にある人たちへの制度広報を徹に相談の持ち込まれる事案の本人は、健ろ 現在でも成年後見制度の利用を阻害して底させ、制度の利用を必要とする人を早康管理や生活安全上の問題、悪質商法にの = = ルよる被害や多額の借入れ、親族からの財法 いる最大の問題点であるといえる。促進期に発見することが必要」「高齢者のを 委員会 ( 第 3 回委員会ほか ) における配知症等が初期の段階で発見されれば、補産侵害や虐待、身寄りがないための施設

3. 法律のひろば 2017年2月号

成年後見制度 のではない。成年後見制度を本来の理念 0 に沿うように根本的に改めたうえで、そ の利用促進を図ろうとするものである ろ 本来の理念とは、ノーマライゼーショ ひ ン、自己決定権の尊重、身上保護の重視律 法 中央大学教授新井誠である。利用促進法は既存の制度を改め ることなく、そのままに放置して利用促 者が理事長を務めている日本成年後見法進のみを目指しているとの批判も一部に 一成年後見制度利用促進法の 学会が 5 年以上にわたって成立を働きかあることは承知しているが、それは利用 成立 けてきたものであり、その成立の報に接促進法の考え方とはまったく相容れるも のではない。 筆者は、約 6 年前に本誌 ( 2010 年、して実に感慨深いものがある 巻 8 号 ) に編集部の求めに応じて「成利用促進法の出発点は、 2010 ( 平本稿においては、以下、成年後見制度 年後見制度施行間年を振り返ってー制度成年間月に横浜で開催された第 1 回運用の実態と「横浜宣言」の意味、利用 の現状と課題」と題する論説を執筆した成年後見法世界会議において世界に向け促進法と民法改正法の内容、今後の課題 ことがある。その後の最大のトピックはて発せられた「横浜宣一一一一口」にある。 20 について述べていくこととしたい。 成年後見制度の利用を促進するための立 00 ( 平成 ) 年 4 月にスタートした我 法であった。したがって、本稿においてが国の成年後見制度は、川年を経過した ニ成年後見制度運用の実態と はそれを中心として成年後見制度の現状 2010 ( 平成年には既に抜本的な 「横浜宣言」 と課題について論ずることとしたい。 見直しを要する事態に立ち至っていた。 ワ 3 0 1 、 6 ( 平成 ) 年 4 月 8 日、第 1 その具体的な解決策を提案したのが「横 成年後見制度運用の実態 90 回通常国会の衆議院本会議におい 浜宣言」であった。「横浜宣言」は、成 て、「成年後見制度の利用の促進に関す年後見法分野における最初の国際的な宣 ここでは「横浜宣言」が発せられた 2 言として、世界的にも高く評価されてい る法律」 ( 以下「利用促進法」という。 ) 010 ( 平成年の時点ではなく、直 および「成年後見の事務の円滑化を図るる。その「横浜宣言」の理念を実現しょ近のデータに依拠する。もっとも、当時 ための民法及び家事事件手続法の一部をうとするのが、利用促進法である。 と直近のデータが示す傾向には基本的に 改正する法律」 ( 以下「民法改正法」と 利用促進法は、既存の成年後見制度のは大きな有意差は認められない。 いう。 ) が成立した。利用促進法は、筆利用をやみくもに促進させようとするも最高裁が公表している概況 ( 注 1 ) の分 成年後見制度の現状と課題

4. 法律のひろば 2017年2月号

されたため、同月 6 日に参議院本会議に 0 おいて可決された後に衆議院で再び審議 され、同月 8 日に可決、成立した。 ろ ひ の 律 法 元衆議院法制局高山善裕ニ概要 以下、利用促進法の内容について説明 年後見制度の利用の促進に関する法律案するが、本稿中、意見にわたる部分は、 一はじめに がまとめられた。 全て筆者の個人的見解であることをあら かじめお断りする。また、条数を示すと 利用促進法は、主として自民党を中心 「成年後見制度の利用の促進に関する 法律」 ( 平成年法律第四号。以下「利 にまとめられた「成年後見の事務の円滑きは、特に断りがない場合、利用促進法 ヒを図るための民法及び家事事件手続法の規定を指す。 用促進法」という。 ) は、平成年 4 月イ 8 日に成立し、同月日に公布された。 の一部を改正する法律」 ( 平成年法律 成年後見制度は、平成肥年に導入され第号。以下「円滑化法 , という。 ) と 目的 て以降、その利用者は増加している ( 注ともに、与野党間等の調整を経て、平成 1 ) 。しかし、今なおその利用をしてい 年 3 月日に衆議院内閣委員長提案と この法律は、認知症、知的障害その他 いう形で国会に提出され、翌日の日にの精神上の障害があることにより財産の ない認知症、知的障害その他の精神上の 管理又は日常生活等に支障がある者を社 障害により判断能力が不十分な者が数多衆議院本会議で可決された。 会全体で支え合うことが、高齢社会にお く存在し、今後も認知症の者の数が増大参議院では、 4 月 5 日に内閣委員会に することが予想され ( 注 2 ) 、成年後見制おいて可決され、その際に附帯決議も決ける喫緊の課題であり、かっ、共生社会 度の利用の促進が重要な課題である。ま議された ( 注 3 ) 。また、利用促進法の施の実現に資すること及び成年後見制度が た、制度の利用が成年後見に偏り、保佐、行が内閣の重要政策に関する総合調整等これらの者を支える重要な手段であるに に関する機能の強化のための国家行政組もかかわらず十分に利用されていないこ 補助及び任意後見の利用が少ないといっ た問題など、成年後見制度の運用上の課織法等の一部を改正する法律 ( 平成年とに鑑み、成年後見制度の利用の促進に ついて、その基本理念を定め、国の責務 題も明らかになっている。このような状法律第号 ) の施行 ( 平成年 4 月 1 日 ) 況を受けて、主として公明党を中心に成後になったことに伴う形式的な修正が施等を明らかにし、及び基本方針その他の 「成年後見制度の利用の促進に 関する法律」の概要

5. 法律のひろば 2017年2月号

や成年後見制度の利用の促進に関する施から、努力義務として規定している ( 策について必要な関係行政機関相互の調条及び条 ) 。 整等の事務をつかさどる ( 条 ) 。内閣 府には、有識者で構成される成年後見制 ( 注 ) 度利用促進 - 委員会も置くこととしている ( 1 ) 成年後見関係事件 ( 成年後見・保佐・補助・任意 13 3 5 人となってい 後見 ) の利用者は、合計で四万 信条 1 項 ) 。 なお、成年後見制度利用促進会議等る ( 最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の は、利用促進法の施行から 2 年以内の政概況ー平成年 1 月 5 肥月ー」Ⅱ頁 ) 令で定める日に廃止するとともに、新た ( 2 ) 厚生労働省の推計によると、知的障害者 ( 歳以 に関係行政機関で組織する成年後見制度上 ) は約万人 ( 平成年現在 ) 、精神障害者 ( 歳 利用促進会議等を設け、庶務は厚生労働以上 ) は約 3 。 1 万人 ( 平成年現在 ) となっている ( 平成年版障害者白書芻頁 ) 。認知症の人の将来推計 省において処理するとしている ( 附則 1 については、「「認知症施策推進総合戦略 5 認知症高齢 条ただし書、附則 3 条及び附則 5 条 ) 。 者等にやさしい地域づくりに向けて ( 新オレンジプラ これらの会議等は既に活動を開始して いる。成年後見制度利用促進委員会の下ン ) 』 ( 概要 ) 」 ( 認知症施策推進関係閣僚会合 ( 平成 年 1 月日開催 ) 資料 1 ) 9 頁。 には、「利用促進策ワーキング・グルー プ「不正防止対策ワ 1 キング・グルー プ」が設置され ( 平成四年 1 月現在 ) 、 成年後見制度利用促進基本計画の案の作 成に当たって盛り込むべき事項等につい て検討が行われている ( 注 6 ) 。 8 地方公共団体の講ずる措置 成年後見制度の利用の促進には、地方 公共団体の取組が必要不可欠であること ( 3 ) 本文は参議院ホームページ (http ://www.sangnn.go.jp/japanese/gianjoho/ketsugi Z190 、 363 ー 040503 も df ) に掲載されている。 ( 4 ) 後見開始、保佐開始及び補助開始のうち認容で終 局した事件において、親族以外の第三者が成年後見人 等 ( 成年後見人、保佐人及び補助人 ) に選任されたも のは、全体の約間 % となっている ( 前掲 ( 注 1 ) 9 頁 ) 。 ( 5 ) 平成年月末日時点において成年後見の利用者 が、約万 2600 人、保佐の利用者は約 2 万 760 0 人、補助の利用者は約 8700 人 ( 前掲 ( 注 1 ) ( 6 ) 成年後見制度利用促進会議等の議事録等について 2 7 は、内閣府ホームページ「成年後見制度利用促進」 (http ://www.cao.go.jp/seinenkouken/index.html) にろ の 掲載されている 律 法 ( たかやま・よしひろ ) 頁 ) 。

6. 法律のひろば 2017年2月号

特集成年後見制度 「成年後見制度の利用の促進に関する法律」の概要 号の規定による検討との整合性に十分にめに必要な制度の整備その他の必要な措 地域住民の需要に応じた利用の促進 留意しつつ、今後検討が加えられ、その置を講ずるとされている ( Ⅱ条 5 号 ) 。 成年後見制度の利用に係る地域住民の 結果に基づき所要の措置が講ぜられるも国民に対する周知等 需要に的確に対応するため、地域におけ のとする。」 ) において、Ⅱ条 3 号による成年後見制度に関し国民の関心と理解る成年後見制度の利用に係る需要の把 検討との整合性に十分留意しつつ、今後を深めるとともに、成年後見制度がその握、地域住民に対する必要な情報の提 の検討が加えられ、その結果に基づき所利用を必要とする者に十分に利用される供、相談の実施及び助言、市町村長によ 要の措置が講ぜられることとされた。 ようにするため、国民に対する周知及びる後見開始、保佐開始又は補助開始の審 2 成年被後見人等の死亡後における成啓発のために必要な措置を講ずるとされ判の請求の積極的な活用その他の必要な 年後見人等の事務の範囲の見直し 措置を講ずるとされている ( Ⅱ条 7 号 ) 。 ている ( Ⅱ条 6 号 ) 。 地域において成年後見人等となる人 成年被後見人等の死亡後における事務なお、障害者の権利に関する条約 ( 以 が適切に処理されるよう、成年後見人等下「障害者権利条約」という。 ) 等と利 材の確保 地域において成年後見人等となる人材 の事務の範囲について検討を加え、必要用促進法の関係 ( 現行の成年後見制度が な見直しを行うこととされている ( Ⅱ条障害者権利条約に反するのではないかとを確保するため、成年後見人等又はその 4 号 ) 。なお、円滑化法において、成年 いう意見がある点 ) について、利用促進候補者に対する研修の機会の確保並びに 被後見人の死亡後の成年後見人の権限に法において基本理念として「成年被後見必要な情報の提供、相談の実施及び助 ついて新たに規定されているが、今回新人等の意思決定の支援が適切に行われる言、成年後見人等に対する報酬の支払の たに設けられる規定では足りない部分が とともに、成年被後見人等の自発的意思助成その他の成年後見人等又はその候補 ないか引き続き検討が加えられる必要性が尊重されるべきこと」 ( 3 条 1 項 ) と者に対する支援の充実を図るために必要 があることから、本規定を置いているも定め、基本方針として「成年後見制度のな措置を講ずるとされている ( Ⅱ条 8 のである。 うち利用が少ない保佐及び補助の制度の号 ) 。 任意後見制度の積極的な活用 利用の促進」行条 1 号 ) 、「任意後見制 岡成年後見等実施機関の活動に対する 成年後見制度を利用し又は利用しよ、つ度の積極的な活用」 ( Ⅱ条 5 号 ) を定め支援 とする者の自発的意思を尊重する観点かており、障害者権利条約の趣旨により沿 い及び①の措置を有効かっ適切に実施引 するため、成年後見人等又はその候補者の ら、任意後見制度が積極的に活用されるった運用を目指していると考えられる よう、その利用状況を検証し、任意後見②地域の需要に対応した成年後見制度の育成及び支援等を行う成年後見等実施法 機関の育成、成年後見制度の利用におい 制度が適切にかっ安心して利用されるた の利用の促進に係る基本方針

7. 法律のひろば 2017年2月号

特集成年後見制度 「成年後見制度の利用の促進に関する法律」の概要 るものとされている ( 3 条 2 項 ) 。 基本となる事項を定めるとともに、成年こと ( Ⅱ身上の保護の重視 ) 後見制度利用促進会議及び成年後見制度などの成年後見制度の理念を踏まえて行現在、新たに成年後見人等となる者の うちの過半数が成年被後見人等の親族以 利用促進委員会を設置すること等によわれるものとするとされている ( 3 条 1 外の者となっている ( 注 4 ) 。しかし、今 り、成年後見制度の利用の促進に関する項 ) 。 後も身寄りのない高齢者の数が増大する 施策を総合的かつ計画的に推進すること成年後見制度は、成年被後見人等の判 と予想される一方で、司法書士等の専門 断能力を後見的立場から補完することに を目的としている ( 1 条 ) 。 よって成年被後見人等の財産を保護する職の成年後見人等の数の大幅増加は期待 ことを大きな目的としているが、成年被できないと思われる。そこで、親族でな 2 基本理念及び基本方針 後見人の生活や療養看護に関する事務もく専門職でもない第三者の中から成年後 見人等となる人材を育成することが必要 基本理念 行うこととされている ( 民法 858 条 ) 。 法律では、三つの基本理念が挙げられ成年後見制度の利用者として想定されるであると考えられることから、基本理念 ている。 のは主に認知症高齢者、知的障害者等での一つとして定められた。 あり、これらの者の身上の保護につい③成年後見制度の利用に関する体制の ①成年後見制度の理念の尊重 整備 成年後見制度の利用の促進は、 て、成年後見人が果たす役割は大きく、 成年後見制度の利用に関する体制の整 成年被後見人等が、成年被後見人等今後一層重要になると見込まれる。この でない者と等しく、基本的人権を享有ため、身上の保護が適切に行われるべき備について、成年後見制度の利用の促進 は、家庭裁判所、関係行政機関 ( 法務省、 する個人としてその尊厳が重んぜらことが規定された。 れ、その尊厳にふさわしい生活を保障②地域の需要に対応した成年後見制度厚生労働省、総務省その他の関係行政機 関をいう。以下同じ。 ) 、地方公共団体、 されるべきこと ( Ⅱノーマライゼーシ の利用の促進 成年後見制度の利用の促進は、成年後民間の団体等の相互の協力及び適切な役 成年被後見人等の意思決定の支援が見制度の利用に係る需要を適切に把握す割分担の下に、成年後見制度を利用し又 適切に行われるとともに、成年被後見ること、市民の中から成年後見人等の候は利用しようとする者の権利利益を適切 人等の自発的意思が尊重されるべきこ補者を育成しその活用を図ることを通じかっ確実に保護するために必要な体制をタ と竈自己決定権の尊重 ) て成年後見人等となる人材を十分に確保整備することを旨として行われるものとの 法 岡成年被後見人等の財産の管理のみなすることなどにより、地域における需要されている ( 3 条 3 項 ) 。 2 らず身上の保護が適切に行われるべき に的確に対応することを旨として行われ

8. 法律のひろば 2017年2月号

成年後見制度の利用に関する体制の て成年後見等実施機関が積極的に活用さく、 れるための仕組みの整備その他の成年後整備という基本理念及び二つの基本方針 見等実施機関の活動に対する支援のための下、成年後見人等に対する監督の強化 などのために必要な措置が検討されるこ に必要な措置を講ずるとされている ( Ⅱ ととなると考えられる。 条 9 号 ) 。 ③成年後見制度の利用に関する体制の 整備に係る基本方針 3 国の責務等 関係機関等における体制の充実強化 成年後見人等の事務の監督並びに成年国は、 3 条に定める基本理念にのっと ( 川条 ) 。 後見人等に対する相談の実施及び助言そり、成年後見制度の利用の促進に関する の他の支援に係る機能を強化するため、施策を総合的に策定し、及び実施する責 6 成年後見制度利用促進基本計画 家庭裁判所、関係行政機関及び地方公共務を有するとされている ( 4 条 ) 。この 団体における必要な人的体制の整備そのほかに、地方公共団体の責務 ( 5 条 ) 等政府は、成年後見制度の利用の促進に 関する施策の総合的かつ計画的な推進を 他の必要な措置を講ずるとされているが定められている。 図るため、成年後見制度の利用の促進に 行条川号 ) 。 関する基本的な計画 ( 以下「成年後見制 ①関係機関等の相互の緊密な連携の確 4 法制上の措置等 度利用促進基本計画」という。 ) を定め 保 家庭裁判所、関係行政機関及び地方公政府は、Ⅱ条に定める基本方針に基づなければならないとしている ( 条 1 共団体並びに成年後見人等、成年後見等く施策を実施するため必要な法制上又は項 ) 。 実施機関及び成年後見関連事業者の相互財政上の措置その他の措置を速やかに講 の緊密な連携を確保するため、成年後見じなければならない。この場合におい 7 成年後見制度利用促進会議等 制度の利用に関する指針の策定その他のて、成年被後見人等の権利の制限に係る 内閣府に、特別の機関として、内閣総 必要な措置を講ずるとされている ( Ⅱ条関係法律の改正その他の基本方針に基づ く施策を実施するため必要な法制上の措理大臣を会長とする成年後見制度利用促 Ⅱ号 ) 。 報道などで取り上げられることもある置については、この法律の施行後 3 年以進会議を置くとしている。この会議は成 成年後見人等による不正事案に対処すべ内を目途として講ずるものとするとして年後見制度利用促進基本計画の案の作成 施策の実施の状況の公表 政府は、毎年 1 回、成年後見制度の利 用の促進に関する施策の実施の状況をイ ンタ 1 ネットの利用その他適切な方法に より公表しなければならないとしている いる ( 9 条 ) 。 法律のひろば 2017.2 ・ 28

9. 法律のひろば 2017年2月号

特集成年後見制度 成年後見制度の現状と課題 法施行後 3 年以内を目途として講じなけ官房長官、特命担当大臣、法務大臣、厚人の権限について、民法 873 条の 2 を ればならない ( 9 条 ) 。また政府は施策生労働大臣、総務大臣等をもって充てら加え、必要があるときには、成年被後見 の実施状況を毎年公表しなければならなれる ( Ⅱ条 ) 。所掌事務は「成年後見制人の相続人の意思に反することが明らか い ( 川条 ) 。 度利用促進基本計画」案の作成、関係行なときを除き、相続人が相続財産を管理 政機関の調整、施策の推進、実施状況のすることができるに至るまで、相続財産 基本計画 に属する特定の財産の保存に必要な行 検証・評価等である ( 条 2 項 ) 。 為、相続財産に属する債務の弁済、死体 政府は、成年後見制度の利用の促進に②成年後見制度利用促進委員会 関する施策の総合的かつ計画的な推進を 内閣府に、有識者で組織される成年後の火葬または埋葬に関する契約その他相 図るため「成年後見制度利用促進基本計見制度利用促進委員会が置かれ ( 条 1 続財産の保存に必要な行為をすることが できるものとした ( 死体の火葬、埋葬に 画」を策定しなければならない ( 条 ) 。 項 ) 、「成年後見制度利用促進基本計画」 市町村は、「成年後見制度利用促進基本案の調査審議、施行に関する重要事項の関する契約については家庭裁判所の許可 計画」を勘案して、成年後見制度利用促調査審議、内閣総理大臣への建議等を行を要する。 ) 。これも、成年後見人のいわ ゆる死後事務に関する権限が明確でなか 進のための基本的な計画を定め、成年後う ( 新条 2 項 ) 。 った点を改めたものである。 見等実施機関の設立の支援等の措置を講 ずるように努め、基本的な事項を調査審 2 民法改正法 議させるための合議制の機関を設置する 四今後の展望 ように努めるものとする ( 条 ) 。都道成年後見人による郵便物等の管理につ いて、民法 8 6 0 条の 2 、 8 6 0 条の 3 利用促進法が成立した今、成年後見法 府県は、市町村が講ずる措置を推進する ため成年後見人等となる人材の育成、必の規定を加え、家庭裁判所が必要があるをいかに改め、その適正な運用を支援し 要な助言を行うように努めるものとすると認めるときは成年被後見人宛の郵便物ていくかか問われている。従来の発想に 等を成年後見人に配達すべき旨を信書のとらわれることなく、障害者権利条約や 送達事業者に対して嘱託することができ「横浜宣言」に立脚した成年後見法の改 体制 るものとし、成年後見人は郵便物等を開革を希求し、さらには後見制度の担い手 封できるものとした。これは、成年後見を支える公的支援システムの構築が不可引 ①成年後見制度利用促進会議 の 内閣府に、特別の機関として、成年後人の郵便物等の開封の権限が明確ではな欠である。 律 これらのことはすべて既に利用促進法法 見制度利用促進会議が置かれ ( 条 1 かった点を改めたものである。 項 ) 、会長は内閣総理大臣、委員は内閣 また成年被後見人の死亡後の成年後見の中に盛り込まれている。これから利用

10. 法律のひろば 2017年2月号

表 特集成年後見制度 「成年後見制度の利用の促進に関する法律」の概要 ( 11 条 ) 成年後見制度の利用の促進に関する法律 基本理念 成年後見制度の理念の尊重 ①ノーマライゼーション ②自己決定権の尊重 ③身上の保護の重視 基本 1 保佐及び補助の制度 の利用を促進する方策 の検討 2 成年被後見人等の権 利制限に係る制度の見 直し 3 成年被後見人等の医 療等に係る意思決定が 困難な者への支援等の 検討 4 成年被後見人等の死 亡後における成年後見 人等の事務の範囲の見 直し 5 任意後見制度の積極 的な活用 6 国民に対する周知等 基本計画 イメージ図 ( 3 条 ) 地域の需要に対応 した成年後見制度 の利用の促進 方針 ( 12 条 ) の活動に対する支援 3 成年後見等実施機関 確保 見人等となる人材の 2 地域において成年後 じた利用の促進 1 地域住民の需要に応 成年後見制 度の利用に 関する体制 の整備 1 関係機関 等における 体制の充実 強化 2 関係機関 等の相互の 緊密な連携 の確保 成年後見制度の利用の促進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、「成年 後見制度利用促進基本計画」を策定 成年後見制度利用促進会議 ( 1 3 条・ 14 条 ) 会長は内閣総理大臣 意見 成年後見制度利用促進委員会 有識者で組織 ( 15 条 ~ 22 条 ) 法律の施行後 2 年以内の政令で定める日にこれらの組織を廃止し、新たに 関係行政機関で組織する会議体を設ける。 国等の責務 ( 4 条 ~ 8 条 ) ・国の責務 ・地方公共団体 の責務 ・関係者の努力 ・国民の努力 毎年 1 回、施策の 講ずる。 内を目途として の施行後 3 年以 ては、この法律 上の措置につい めに必要な法制 策を実施するた 方針に基づく施 正その他の基本 る関係法律の改 の権利制限に係 成年被後見人等 措置 制上・財政上の るため必要な法 く施策を実施す 基本方針に基づ 等 ( 9 条 ) 法制上の措置 相互の連携 ・関係機関等の 表 ( 10 条 ) 実施の状況を公 ※内閣府ホームページのイメージ図 (http : //www.cao.go.jp/seinenkouken/pdf/image_zu.pdf) を基に筆者作成。 29 ・法律のひろば 2017.2