し、自立心の強い市民は、成年後見制度横領等の不正事案が発生している。これ会が、その「一般的意見ーで法定代理制如 によりさまざまな権利が奪われるととらは制度の理念以前の問題であり、家庭裁度から意思決定支援制度へのパラダイム 2 え、また他者の介入に抵抗感を示すこと判所の監督体制強化とともに新たなしく的転換が必要だと指摘したこともこれに ろ から、判断能力減退が相当程度進んでもみの整備などが課題となった。その不祥拍車をかけることになった ( 注リ。 ひ の このような動向は我が国にも波及し、 事防止策のひとつが後見制度支援信託で 自分で財産管理等を継続する者が多い。 律 法 現実に、運用が保護に傾いており、本人あり、流動資産を金銭信託にし、指示書成年後見においても意思決定支援の重要 の意思や意向の尊重が不十分であるとのがなければ使用できないとするもので、性が提唱されるようになった ( 注リ。成 指摘もなされている ( 注 8 ) 。弁護士後見予防の見地からは効果的である。ただ年後見制度利用促進法も、基本理念とし 人が選任される事案には、財産侵害等のし、後見人に対する適切な助言がないとて、意思決定支援が適切に行われ、自発 財産を固定化することにつながるおそれ的意思が尊重されるべきことを求めてい 被害からの保護を求めて申立がされてい る ( 同法 3 条 ) 。本人の意思を尊重する る例が相当数あり、その場合まずは保護がある ( 注四。また、弁護士・司法書士・ を優先せざるを得ないが、しかし、侵害社会福祉士等の専門職後見人に関してには、表明された意思の確認だけでな 本人の意思や意向をくみ取る必要が 行為排除等の課題が解決した後でも、保は、その所属団体において対策が検討さく、 ある。そのためには本人の意思決定を支 護優先の姿勢が変わらないという傾向がれている ( 注リ。 ある。 援することが必要だというのは、自然な もっとも、現行制度施行当初に比べれ 帰結である。 三意思決定支援の登場 しかし、ことに弁護士の間では、これ ば、本人の意思に留意し、その身上監護 加えて、成年後見制度には、保護からは福祉的分野の手法だと考える傾向が強 のために財産を積極的に使用することが 承認されるようになっている。弁護士後支援への転換という新たな課題が突きつく、その点に関する認識は全く不十分で けられている。 あった。そのため、日本弁護士連合会は、 見人においても、本人の意思を尊重した 身上監護を充実させるため、定期的に本欧米では、ノーマライゼイションの浸平成年間月の人権擁護大会において、 人の見守りや面会を行うことが意識され透や障害者権利条約条が障害者の行為「総合的な意思決定支援に関する制度整 るよ、つになった ( 注 9 ) 。 能力も含めた法的能力の平等を求めてい備を求める宣言」を採択して意識改革を 他方、事件数増大に対する家庭裁判所ると解釈されていることなどから、法的求めた。 の監督体制整備が追いっかず、親族後見支援も意思決定支援であるべきだとの大ただし、本人の身上保護や権利擁護が 人はもとより専門職後見人においてすらきな流れが生じている。国連障害者委員成年後見制度のもう一方の重要な柱であ
らば、基本的に本人の立場に立った本人は当該行為の利害得失を判断できないわ務がきわめて重要であることに異論はな の利益ととらえることになるが、本人のけであるから、表明された意向を絶対視いであろう。ところが、成年後見人には、 意思に適うことが全て本人の利益であるすることもできないという点に特殊性が侵襲的医療の同意権がないとされている ろ ため ( 注、本人にその同意能力がなく、 ともいえないため、客観的な見方も重要ある。障害ゆえに誤った意向を示してい ひ である。 る場合や自らの生活の基盤を害すること家族もいないときは、医療を提供できなの 法 いという事態が生ずる になる場合には、これを考慮することは 民法 858 条は、本人の意思の尊重と できないとい、つことになる 成年後見人には、まずは、医療関係者 身上への配慮を並列的に規定しており、 これ そうは言うものの、その判断が容易で等と協力して意思決定支援をし、本人の 文言上は優先関係を示していない。 ないこともしばしばある。弁護士後見人意思決定や意向の表明を促すことが求め について、立法の経緯では、民法 8 5 8 条の意思の尊重は本人の福祉を旨とするは、その専門性を考慮して選任されるこられる。これが奏効すれば問題はない。 ものであり、その意思が客観的な福祉にとから、本人保護の必要性の高い案件が意思決定支援をしても本人が決定でき 反するときは後者が優先するとの趣旨で多い。そのような事案で、その判断を単ないとき、本人の意思を推定して、医療 あるとされていた。他方、保佐、補助に独で行わなければならないとなると、保を行うことができるであろうか。これが おいては、「まずもって尊重されるべき護重視の傾向が強くなる。本人の意思や認められるときは、成年後見人は本人の は被保佐人の意思である」として、本人意向と保護との関係について適切な判断意思を推定するに必要な情報を医療機関 をするには、本人の周囲の関係者との日に提供し、本人の意思に関する意見を述 の意思の優越が認められている ( 注邑。 全て人は、自己の生活や財産について常的情報交換が不可欠であるが、あわせべる役割を担うことになる。この点につ いては、承諾が違法性阻却の要素である その意思で決定する自由を有する。判断て、判断基準に関する何らかの指針を創 こと及び本人意思重視の観点から推定的 能力に障害が生じたとしても、それだけることが必要であろう ( 注。 承諾を認めてよいと考えられる ( 注。 でこれが制約されるいわれはなく、その なお、終末期医療における治療の中止、 意思や意向にしたがうのは当然のことで 六医療における成年後見人の 不開始においては、推定的承諾にしたが ある。判断能力の程度が千差万別である 権限 、つことか認められている ( 注。 ことを考慮すれば、後見類型の場合であ っても、また、それが仮に最善の利益に 最後に指摘したいのは、成年被後見人しかし、その意思の推定もできない場 反するとしても、原則として同様と解すに対する医療の提供である。身上監護の合がある。このような場合の対処が、今、 べきである。ただし、後見類型にある者ための成年後見を標榜するとき、この職大きな課題となっている ( 注。
特集成年後見制度 弁護士からみた課題 ることを忘れてはならない。判断能力に起因するものか、信条や生活歴によるも容に応じた整理を進めることが必要であ る。 障害がある者の権利や利益を守るため、 のかを見極めることが困難な例も多い。 また、意思決定支援による意思のくみ 法定代理権は不可欠であり、取消権も未特に弁護士が担当する案件は、重度の認 だ一定程度必要である ( 注リ。利用促進知症高齢者の事案が多いという傾向があ取りに関する手法については、障害ごと 法も基本理念のひとつに身上保護を挙るうえ、後見開始により初めて本人と関の特性を踏まえ、法律行為の性質や複雑 げ、平成年 9 月のベルリン成年後見法わる場合が多いため、本人の状況把握や性、緊急性等を前提とした指針を検討す ることが求められる。 世界会議でも、支援に並べて保護に関す信頼関係の構築には困難が伴う。 る基本原則が宣言されている ( 注西。 もっとも、成年後見人が、その事務の 全てについて細かく本人を支援して意思 五本人の意思と保護との調整 や意向の確認を行わなければならないと 四意思決定支援を実務に浸透 いうわけではない。事務によっては、包本人の意思が最善の利益と反すると させるための課題 括的に委託する本人の意向が認められるき、成年後見人等はどのように対処すべ 意思決定支援が重要であることに異論場合がある。賃貸アパートの管理などできかということは、実務上の大きな課題 はないとはいうものの、その内容も手法はそのようなことが多い。また施設利用である。 成年後見人は、善管注意義務を負い ( 民 も未だ確立しているとは言いがたい ( 注料やその他の経費等の弁済行為なども、 8 5 2 条による 6 4 4 条の準用 ) 、した 新 ) 。知的障害者の介護や生活支援では既になされた行為の結果当然に必要とな 一定の蓄積が示されているが ( 注、当る行為であるから、その都度本人の意向がって本人の最善の利益をはかる義務が 然のこととして本人の障害の内容や程度を確認する必要はない。これに対し、入ある。身上配慮義務は、本人の身上の保 あるいは場面によって異なることになる居施設の選定や不動産その他重要な財産護に関する善管注意義務の具体化である ( 注リ。例えば、重度の認知症の本人のの売却処分となると、行為ごとに意思決 ( 注四。 最善の利益については、合理的な通常 場合、説明をしても記憶に残らず、確認定支援と意思や意向の確認が必要にな の都度意向が変わるということもある る。ただし、その法律行為の基本的な部人からみた最善の利益 ( 客観的最善の利 また親族間紛争がある場合には、関係親分について確認がなされれば足り、内容益 ) と本人の生活歴等から判断される本引 族それぞれが自己に有利な事実を抜き出全てをこと細かく理解させるまでの必要人の最善の利益 ( 主観的最善の利益 ) との して本人の意思だと主張することもあはないであろう。意思決定支援を成年後の 2 通りの提え方がある ( 注。本人の法 る。さらに本人の不合理な意向が障害に見実務に浸透させるには、これら事務内生活や財産の問題であることを考えるな
管 古田 後見人等・ー 断をすることが成年後定と保護のバランスで悩む場面が多々あ ワ」 見人に求められる。もる。今後、市民後見人や親族等について 7 0 CV ちろんここでも、社会も、このような場合も含めて社会的支援 応 資源等を総動員してあとしてのサポ 1 ト・助言をできる体制を引 対 期 らためて本人意思を尊整え、後見人等をも支える地域ネットワの ク わへ 法 ークがますます重要になる ( 図 2 参照 ) 。 重した生活ができない ワ の被で ャ また、本人の意思・本人の声をおろそ かを検討することが前 で者援境 シ 業消の提な飜提だが、最終的には本かにすることなく、本人にと 0 て分かり ソ 護徹出報全 にくい事項に関しては適切に説明するエ 人を中心においてでき 軅虐俵情安 思なー・ ク 権害意切心 得る限りの説明と納得夫が求められ、本人への意思決定支援と 侵の適安 ワ 権人・ . ト 人本 を得ることに注力するしてのツール開発やメソッド確立も必要 ッ 関 ことが必要となる。先となり待たれる ネ 役 的体進 に挙げた事例におい 会団推 メ」 ( 訳 社職度 て、本人の意思を尊重 身上監護の重要性を確認し位置づけ 門制 ネ ル専見コ するだけでは食事摂取を明確に ナ アの 年 ソ ケで護 ができず体重減少で生成年後見人等の職務は、与えられた権 的務价 督 続業療 継援医 限に応じて本人に関わり意思決定や契 命に重大な影響を及ほ 見 約・財産管理等の事務を行うことによ お す可能性が出ている、 見 というような根拠 ( 工り、本人らしい生活の維持を支援すると を庭 ビデンス ) を明確にともに、本人の生命、身体、自由、財産 人家 し、本人や周囲に対し等の権利を守ることにある 本 この意味で成年後見人等は、判断能力 ても説明できなけれ 図 ば、本人意思に反しての不十分である本人のマンツーマンの支 の価値観、意思・意向を尊重することはの本人保護はできないと、考えるべきで援者であり権利擁護者であるといえ、そ のために成年後見人等は、財産管理と身 もちろんだが、 支援者等と情報共有し意あろう。 このように成年後見人等は日常生活の上監護と二つの事務を行う。しかしこれ 見を聞いたうえで「最善の利益ーとして、 まず本人の生命を守るために総合的に判さまざまなシーンで、常に本人の自己決はよほどの大金でない限り切り離せるも 的に本人と同義ではあ。 るが、 ~ 日常的に一緒にい ミーる訳ではないので、適切 ~ に本人の意思を ー把握できるとは限らない : 本人の意思に。 大きく影響する。 、パーソナルな関係で も日常的に法律行 為 ( 贈与等 ) は発 しやすい 後見人等の立ち位置や ~ = 役割が、すべての関係 機関に、正確に理解さー 三れているとは言い難し 家主・工務店 金融機関 契約等の法律行為に 基づいた関係 CM 等介護 SV 事業者 0 0 親類 法律行為が関係しない パーソナルな関係 近隣住民 人 友 医療機関 0 0
特集成年後見制度 弁護士からみた課題 0 一一成年後見制度運用の実情か ら浮上する課題 最高裁事務総局家庭局の統計による と、 2015 年 1 年間の申立件数合計は 弁護士赤沼康弘 3 万 4782 件、同年肥月末現在の利用 13 3 5 人となった ( 注 5 ) 。 者数は四万 力の不完全な無産者が、みずからの生活禁治産時代最後の年、平成Ⅱ年の禁治 一現行成年後見制度がめざし 資料を獲得するために法律行為をなすに産・準禁治産申立件数が 3364 件であ ているもの 当たっては、ほとんど実益のないものでったことと対比すると格段の相違がある ( 注 6 ) 。 現行制度は、自己決定権の尊重、及びある」とされていたからである ( 注 3 ) 。 しかし、それでも欧米諸外国と比較す ノ 1 マライゼ 1 ション等の現代的な理念 しかし、財産を有しない者であって も、介護サービスを利用し、医療を受けると未だ十分に利用されているとは言え と本人保護の理念との調和を図りつつ、 精神上の障害により判断能力が不十分なるには契約を締結する必要があり、判断ず、また、利用件数全体の約四・ 8 % が 者の判断能力を補い、その権利や利益を能力の減退した者がこれらの行為を行、つ後見に集中しているところに見られるよ うに利用実態には大きな偏りがある ( 注 擁護することを目的としている ( 注 1 ) 。 には、他者の援助が必要になる。成年後 7 ) 。法定後見制度を判断能力に応じて それを示すのが、成年後見人の職務にお見制度は、従来の「財産を保護する制度ー ける本人意思の尊重及び身上配慮の義務から、判断能力を喪失し又は減退した者弾力的なものとするものとして創られた である ( 民 858 条 ) 。かっての禁治産・全てに対して、意思を尊重しつつ権利や補助や自己決定権を最も尊重する制度で 準禁治産制度の下では、本人は保護の客利益を擁護する制度に変わったというべある任意後見の利用数はきわめて少な 、 0 体であり、その意思や意向を考慮するこきであろう ( 注 4 ) 。 とは予定されていなかった ( 注 2 ) 。 これは、重要な法律行為や虐待からの その目的と理念は、実現されているの 制度の目的を、判断能力を補い権利やであろうか 保護などの必要に迫られて初めて利用す引 るに至っているとい、つことを一小していの 利益を擁護するものとしたところにも大 きな意味がある。禁治産制度において る。ここには、保護のための成年見制度法 という面が色濃く現れている。これに対 は、財産の管理制度であるから「精神能 成年後見実務の課題① 弁護士からみた課題
特集 ( リ石渡・前掲 ( 注リ、大塚晃「意思決定支援の考え 方」実践成年後見・頁、名川勝「意思決定支援 と成年後見制度並びにガイドライン ( 案 ) 」同書頁。 ( リ名川・前掲 ( 注 >) は、福祉的支援領域と司法的 支援領域とを分けて支援のモデルを検討している。 頁、 118 頁。 ( 幻 ) 小林ほか・前掲 ( 注 1 ) 263 ( 上山・前掲 ( 注 4 ) 囲頁以下、志村武「アメリカ 合衆国の成年後見法における成年後見人の意思決定基 準としての代行判断法理と最善の利益基準との関係」 ( 「民事法学の歴史と未来」 ( 成文堂、 2014 年 ) 5 31 頁以下 ) 、拙著「成年後見人の財産に関する権限 と行為基準」 ( 松原正明・道垣内弘人編『家事事件の 理論と実務第 3 巻」 ( 勁草書房、 2016 年 ) 143 頁以下等参照。 頁。 ( 四 ) 小林ほか・前掲 ( 注 ) へストインタレスト ( ) イギリス意思決定能力法は、・ の評価において、本人の心情や意向等の主観的要素を 本人の利益として重視しているという ( 菅・前掲 ( 注 139 頁 ) 。ドイツでも、本人の福祉と意思は対 立項として対置されるのではなく、可能な限り統合さ れるべきであるとして被世話人の福祉の主観化が論じ られている ( ミヒャエル・ケースター「ドイツ世話法 の基本的な諸問題」 107 頁 ) 。ただし、国家の配慮 義務と自己決定の尊重の緊張関係を完全に解くことは できないともいわれる ( 同書 ) 。 ( 小林ほか・前掲 ( 注 ) 1 ワ 30b8 一貝 ( 団藤重光編「注釈刑法②の 1 』 ( 有斐閣 ) 117 頁 上山・前掲 ( 注 4 ) 12 7 頁 ( 東海大学安楽死事件 ( 横浜地判平成 7 年 3 月日 判時 15 3 0 号頁、判タ 8 7 7 号 14 8 頁 ) 、川崎 協同病院事件 ( 横浜地判平成年 3 月日判タ 118 5 号 114 号 ) も推定的意思を考慮することを求め る。 厚労省は、 2007 年 5 月「終末期医療の決定プロ セスに関するガイドライン」 ( 2 015 年 3 月「人生 の最終段階における医療の決定に関するガイドライ ン」に名称変更 ) を公表し、終末期の医療の開始・不 開始、医療内容の変更、医療行為の中止について、患 者の意思が確認できないときは、患者の推定的意思に したがうことを認める。 ( % ) 日弁連は、平成年貶月、医療同意能力がない者 の医療同意代行に関する法律大綱を発表した。なお、 後見人に同意する権限を求めるべきとする学説もあ る。学説については、上山泰「成年後見人と医療の同 意権」 ( 赤沼編著「成年後見制度をめぐる諸問題」新 日本法規、 2012 年、 188 頁 ) 。利用促進法はⅡ 条 3 号でこの課題を挙げている。 ( あかぬま・やすひろ ) 法律のひろば 2017.2 ・ 44
特集成年後見制度 社会福祉士からみた課題 約、費用の支払い等 のではなく一体的に行う必要があるもの体性から考慮されるべきと捉えることに であり、むしろ財産管理は、本人の状況より、以下のような予測に基づくマネジ③福祉施設等の入退所に関する契約の 締結、費用の支払い等、処遇の監視・ と本人意思・希望、療養看護の必要度等メントが必要となる。 異議申立て等 の身上監護事項に即して適切になされる ・現在の生活のありようと年間収支のバ ランス ④介護依頼行為及び介護・生活維持に べきものである。 関連する契約の締結、費用の支払等 また、民法 858 条は、成年後見人等・今後の生活設計、療養看護の必要性の ⑤社会保障給付の利用 がその職務を遂行するに当たって、「本予測と生涯収支の予測 人の意思尊重義務 . ( 意思尊重義務 ) と・本人の意思尊重と希望する生活を実 現するための積極的な財産活用 「本人の心身の状態及び生活の状態に配 約 契 慮する義務」 ( 身上配慮義務 ) という一一 現在の超高齢社会は、独居や高齢 ーレ 者・障がい者のみ世帯の増加を伴って つの義務を明記している。 配 手 て いる。厚労省が考える地域包括ケアの え 考 民法 858 条 ( 意思尊重義務と身上配慮推進には、本人が適切に介護保険等を 理解して手続きを踏み支払い等ができ 義務 ) よ る 成年後見人は、成年被後見人の生活、 ない場合、だれが判断や支払いを支援 れ と を一 療養看護、及び財産の管理に関する事務するのかを社会的支援として整える必 事 にの益← 食る を行うに当たっては、成年被後見人の意要がある。成年後見制度の身上監護と なあ ' 人善 思を尊重し、かっ、その心身の状態及び は、まさにこの本人の経済状況と意思 要で認・本最 必援 く支グ認を 生活の状況に配慮しなければならない を踏まえてのマネジメントに他ならな な的ノ確兄 はト、の、 いのである ( 図 3 参照 ) 。 とメ状 なお、身上監護の範囲としては以下 この二つの義務も一体的なものであ こ ) ン行 モの ー一るネ履 ( 約為行 ? せマ り、本人の意思と状況を把握するためのが示されている。 契行限 まさた 産権 財の 義務 ( 本人との定期的な面談や関係者か①健康診断等の受診、治療・入院等どべ巧 レ J らの情報収集 ) とその状況に適切に対応 に関する契約【医療契約】、費用の初 行と を払 律人 する義務 ( 本人意思の具現化と状況に応支払等 竧事支 法見 食て ・後 じた対応策の立案・実行 ) と捉えること②本人の住居の確保に関する契約の 3 え認 ができる。この身上監護・財産管理の一 締結、居住環境の整備修繕等の契図例確 See 妥当性を問う。 C heck アセスメント、方針策定、手配 ( 法律行為を適切に行うための準備 ) ・本人の意思・意向を直接確認する。 ・健康・医療・認知面等で可能か検討する。 ・支援体制やサービス利用、環境面の確認、 かかる費用を確認する。 ・本人のお金はどの程度使えるのか ? 53 ・法律のひろば 2017.2 Act Plan 支援の見直し ( 再契約・解約・苦情申立て等 ) ・再契約や解約、苦情申立てを行う。
特集 2 が新設され、個々の相続財産の保存行ができる」状態に至ったものと考えら 為、弁済期が到来した債務の弁済、火葬れ、その場合には、成年後見人は民法 8 又は埋葬に関する契約の締結等といった 7 3 条の 2 に規定する死後事務を行う権 死後事務 ( 民法 873 条の 2 ) ろ 一定の範囲の死後事務について、成年後限を有しないこととなろう。 ひ 死後事務に関する規定の新設 ( 民法見人の権限に含まれることが明らかにさウ「成年被後見人の相続人の意思に反の 法 れた。 873 条の 2 ) することが明らかなとき」でないこと 成年後見制度は成年被後見人の判断能 「成年被後見人の相続人の意思に反す 力の補完を趣旨とする制度であることか 成年後見人が死後事務を行うためのることが明らかなとき」とは、成年後見 ら、成年被後見人の死亡により成年後見要件 ( 民法 873 条の 2 柱書 ) 人が民法 873 条の 2 各号に規定する事 は当然に終了し、成年後見人は原則としア「必要があるとき 務を行うことについて、成年被後見人の て法定代理権等の権限を喪失する ( 民法 「必要があるときとは、例えば、入相続人が明確に反対の意思を表示してい 1 1 一 1 1 条項、 653 条 1 号参照 ) 。し院費等の支払を請求されているが、成年る場合をいう。相続人が複数存在する場 かし、実務上、成年後見人は、成年被後被後見人の相続人の連絡先が不明である合、そのうちの一人でも反対の意思を表 見人の死亡後も一定の事務 ( いわゆる死等の事情により、成年後見人が支払をし示している場合には、成年後見人はその 後事務 ( 注リ ) を行うことが期待され、 ないと、相当期間債務の支払がされない意思に反して死後事務を行うことはでき 社会通念上これを拒むことが困難な場合 こととなる場合等が想定される。 ないと解される。 があるとされる。成年後見終了後の事務イ「相続人が相続財産を管理すること これに対し、⑦相続人が存在しない に関する規定としては、従前から応急処ができるに至るまで」 か、又は相続人の存否が不明である場合 分 ( 民法 874 条で準用する 654 条 ) 「相続人が相続財産を管理することがや、④相続人は存在するものの、所在不 等の規定があるものの、「急迫の事情ができるに至るまで」とは、基本的には、 明又は連絡をとることができない場合に あるときー等の限定が付されている上、相続人に相続財産を実際に引き渡す時点 ついては、「成年被後見人の相続人の意 これにより成年後見人が行うことができまでを指す。もっとも、成年後見人が相思に反することが明らかなとき」には該 る事務の範囲も必ずしも明確でないた続財産を相続人にいつでも引き渡せる状当しないと考えられる め、実務上、成年後見人が対応に難渋す態にあり、かっ相続人もいつでも引継ぎ る場合があるとの指摘がされていた。 を受けることができる状態にある場合に そこで、本改正により民法 873 条のは、「相続人が相続財産を管理すること 、 0
特集成年後見制度 市民後見人に今後期待される役割 べてが、「全面後見はもちろん、限定的 意思表示をすることができない人がいるがかなりの長文なので、ここで全文を引 のだから ( 例えば植物状態にある人 ) 、 用するのは避ける。 ) 。しかし、国連でこな後見も条約条に違反する。意思決定 最終的な手段として本人の行為能力を制の条約に関する国際モニタリング ( 締約支援制度への転換を求める」というもの 限し、後見人による代理権を認めるべき国がこの条約の内容に沿った立法・行政である。 であると強く主張したようである。しか措置等を採っているかについて監視する し、この論争は、決着しなかった。 我が国の報告に対する委員会の勧告 仕組み ) を担当する機関である「障害者 の権利に関する委員会」は、肥条の解釈はどうなるのか 条約条の規定の解釈 として条約起草者と同じ見解に立っ姿勢我が国は、条約の定める報告義務 ( 加 前記の論争が決着しないままに、条約を鮮明にしている。すなわち、同委員会盟後 2 年以内に最初の報告をしなければ 案が作成され、採択された。出来上がつが 2014 年 4 月Ⅱ日に採択した「肥条ならない。 ) に従って、 2016 年 2 月 に報告をした。前記委員会による報告審 た関係条文が肥条である。この条で に関する一般的意見第 1 号」によれば、 は、 1 項で、「締約国は、障害者が全て成年後見に関しては、①代理決定の全面査は大変立て込んでいるようで、まだ委 の場所において法律の前に人として認め的廃止 ( 後見人による代理権行使は、た員会の勧告がされるには至っていない。 とえ一部に限定されるものであっても許しかし、既に各国が受けた勧告の内容に られる権利を有することを確認する」と し、 2 項で、「締約国は、障害者が生活されない。 ) 、②意思決定支援への全面的照らしてみると、本人の権利を制約する のあらゆる側面において他の者との平等転換、③代理決定 + 意思決定支援の混合程度が強い後見類型はもちろん、保佐・ を基礎として法的能力を享有することを体制も不可 ( 意思決定支援を尽くした上補助類型でも同意権 ( 取消権 ) 及び代理 認める」として、障害者にとっての権利で、最終手段として代理決定を認めると権を伴うものは条約違反を指摘される公 の平等を強調している。しかし、障害者 いうのも不可 ) 、④これらの改正は即時算が高いと推測されている。委員会の勧 に対する支援制度についての具体的な理にされるべきもの ( 障害者が意思決定支告には拘東カはないから、これに従う義 念を定める 4 項の規定は、「障害者の行援を受けて自らの判断で行動する権利は務はない。しかし、国連から条約違反を 為能力の制限は絶対にダメ」、「後見人に自然的権利・市民的権利だから。 ) とす指摘される状態は、政治的には大変に厳 しい。このことは、かっての嫡出でない よる代理権の行使は絶対に許さない」とる解釈を明確に示しているのである は書いていない。むしろ、最小限の行為現にこれまで多くの加盟国が、この条子についての相続分差別 ( 平成年法律タ 能力の制限及び代理権の行使を認めてい約に基づいてそれぞれにおける条約の実第号による改正前の民法 900 条 4 号の ただし書 ) について、国連の委員会から法 るようにも読める ( どちらとも取れる玉施状況を報告し、その結果について前記 虫色の表現をしている。なお、 4 項自体委員会から勧告を受けているが、そのす条約違反を指摘され続けた経緯にかんが
力が不十分である人たちを支える重要な等実施機関の育成、その活用のための整あらゆる人権及び基本的自由の完全かっ 手段であるにもかかわらず、その利用度備その他に対する支援のために必要な措平等な享有を促進し、保護し、及び確保 すること並びに障害者の固有の尊厳を促 はきわめてお寒い状況にあるといわなけ置を講ずること ( 同条 9 号 ) などである。 ここでいう「成年後見等実施機関 , と進すること」にあるとされる ( 同条約 1 引 ればならない。利用促進法は、この状況 ひ の にかんがみ、成年後見制度の促進につい は、現在前記のような後見活動に従事し条 ) 。 律 この条約の下で、成年後見制度をどの法 て基本理念を定め、国の責務等を明らかている一部の社会福祉協議会、一般社団 にし、基本方針その他の基本事項を定め法人、 Zæo 法人等と同様の活動を担、つように位置づけるかについては、条約の るものであって、国が初めてこの制度の団体を意味する ( 同法 2 条 3 項 ) 。これ起草段階から激しい議論が繰り広げられ 利用拡大に積極的に取り組む姿勢を法律らの基本方針のいずれも、先に述べた「地たと聞く。条約の起草者は、精神上の障 害を負う者の保護のためという名目で、 の形式で示したものとして、注目されて域後見」の実現を企図したものであるこ いる とが明らかであり、これらの方針が実施障害者が本来有している権利を制限し、 この法律では、新制度発足後の年にされることによって市民後見人の活用の後見人を付することは、かえって障害者 わたる運用経験を踏まえて、その利用促場面が一層広がってくるものと思われの自己決定権を制約することに繋がり、 結果として、障害者差別や社会的排除の 進の基本方針をいくつか掲げている。そる。 問題を引き起こしているという認識を示 の中には、国及び地方公共団体が次のよ した。その上で、成年後見制度は本人の うな措置を講することが掲げられてい 4 障害者権利条約の影響 意思決定支援の制度に純化すべきである る。①地域における成年後見制度の利用 と主張した。この起草者の見解は、現行 条約成立前における議論 に係る需要の把握、地域住民に対する必 第四の要因は、障害者権利条約の我がの世界各国の成年後見制度について、最 要な情報の提供、相談の実施及び助言、 市町村長申立ての積極的な活用などの措国にとっての発効である。この条約は、終の意思決定者は後見人という他人であ 置を講ずること ( 同法Ⅱ条 7 号 ) 、②地正式訳では「障害者の権利に関する条り他人の判断が本人に優先するシステム 域において後見人となる人材を確保する約」と称され、 2006 年に国連総会でだから、本人の自己決定権を侵害すると いうものであった。 ため、後見人又はその候補者に対する研採択されたものである。我が国は国内法 これに対して、世界の諸国 ( 特に大陸 修の機会の確保並びに必要な情報の提整備に時間が掛かるとして、最近まで批 供、相談の実施及び助言などの措置を講准を留保していたが、 2 年前の平成年法系の国々 ) は、意思決定支援を優先さ ずること ( 同条 8 号 ) 、③前記①及び② 1 月に批准し、翌 2 月から発効した。こせるべきであるとする原則には賛成する の措置を適切に実施するため、成年後見の条約の目的は、「全ての障害者によるが、意思決定を支援しても、どうしても