高齢者 - みる会図書館


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1. 法律のひろば 2017年2月号

特集 という。 ) が施行されたこともあり、今 成年後見関係事件の概況と家庭 0 後もこの傾向は続いていくものと予想さ 2 れる。他方、このように制度利用が進む 裁判所における運用の実情 0 一方において、成年後見人等による本人 ろ の財産の横領といった問題事例も生じての 最高裁判所事務総局家庭局第一一課長 石井芳明きており、成年後見人等による不正防止 が家庭裁判所に強く求められるととも て規律されていた禁治産制度を利用しやに、自己決定権の尊重や身上保護の重視 一はじめに すいものにする必要があった ( 注 1 ) 。こといった成年後見制度の理念に基づく要 成年後見制度は、認知症、知的障害、 うしたことから、成年後見制度は、従前請も同時に満たしていくことが求められ 精神障害等により判断能力が十分ではなの禁治産制度を見直し、利用を妨げる要るようになっている。 い方 ( 本人 ) について、その権利を守る因として指摘されていた名称や公示の方そこで、本稿では、そのような家庭裁 援助者 ( 成年後見人等 ) を選ぶことで、 法といった点を変更するとともに、ノー 判所を取り巻く状況を踏まえて、ます、 本人を法律的に保護し支援するための制マライゼーションの観点等を取り入れ後見等開始事件の概況について説明する 度である。 て、導入されたものである ( 注 2 ) 。 とともに、後見等監督事件の概況と家庭 成年後見制度は、平成肥年 4 月、介護 このように、成年後見制度は、その制裁判所における不正防止対策を紹介する 保険制度とともに導入されたものであ度の導入の経緯において社会福祉施策のこととしたい。なお、本稿中の意見にわ る。介護保険制度は、高齢者等の自立支変化と密接に関連するものであったとこたる部分は筆者の個人的見解であること 援と選択を尊重するため、高齢者等を保ろ、制度導入後の事件数の動向等も、社をあらかじめお断りしておく。 護するために行政がその権限を行使して会福祉施策、更にはその背景にある社会 必要な措置を実施する方式 ( 措置制度 ) の動向に強く影響されてきている ( 注 一一後見等開始事件の概況 を見直し、高齢者等は福祉事業者と直接 3 ) 。また、後見等開始事件 ( 注 4 ) の申 契約して福祉サービスの提供を受け、行立件数も、後述のとおり、高齢者人口の 後見等開始事件の申立件数等の 政は一定の範囲でその費用を負担する制増加とこれに伴う認知症有病者数の増加 推移 ( 図 1 、 2 、 3 ) 度 ( 金銭給付方式 ) を導入するものであ等の影響を受け、制度開始以降、基本的 り、高齢者等が福祉事業者と適切な契約に増加をしてきているが、平成年 5 月全国の家庭裁判所における後見等開始 を締結するためには、当時、行為能力の には成年後見制度の利用の促進に関する事件の申立件数 ( 図 1 ) は、成年後見制 制限された者を保護するための制度とし法律 ( 以下「成年後見制度利用促進法」度が開始された平成肥年以降、基本的に

2. 法律のひろば 2017年2月号

執行をきめ細かく監督することは到底困€ ている市民後見人にほかならない。市民 家庭裁判所の後見人選任の方針 難である。しかるに、そのような状況の 後見人が地域の資源を活用して展開する このような活動こそ、「地域後見」と称その第一の要因は、家庭裁判所が後見下で、親族後見による横領の原因が家庭 するにふさわしい。そして、このような人を選任する方針として、本人が一定額裁判所の後見人選任・監督上の過失にあタ るとして、国に損害賠償を命する裁判例の 「地域後見」を実現していくことが我が以上の金融資産を有している場合には、 国の成年後見制度にとって必須のものだ親族を後見人に選任することを避けるとが現れるに至った。対策に苦慮した家庭法 いう方向を採ることを決断したとみられ裁判所が採ったのが、本人に一定額以上 というコンセンサスが形成されたこと の金融資産 ( 巷間 100q 万円程度と噂 が、平成肥年からスタートした成年後見ることである。 この傾向は、平成年頃から明らかにされているが、地域差もあるようで、必 制度の今日までの到達点ということがで すしもはっきりしない。 ) がある場合に きる。 なっている。すなわち、新制度がスター トした平成年には % を占めていた親は、その親族を後見人に選任しないとい 族後見人の割合は、その後緩やかな減少う直截的な方法であり、それが平成年 三「市民後見人」の明日 ・ 6 % に達した以降の前記の数字となって現れているの を続け、平成年には 月一三ロ リ己二で述べたように、市民後見人が、それ以降、平成年には % を、平である。 は、その登用数はまだ低い水準にとどま成年には % をそれぞれ割り込み、平前記の親族後見人の減少分をカバーし ( しまのところ弁護士、司法 っているものの、身上監護を中心とする成年には遂に % を割って四・ 9 % まているのよ、、 書士、社会福祉士などの専門職である。 「地域後見」の担い手として、その役割で落ち込んだ。平成年までの減少は、 が認知され、制度内における地位を確か親族自体が高齢化していること、独居のしかしながら、これらの専門職者の数は なものとしつつある。のみならず、この高齢者が増加したことなどによる、いわ簡単に増やすことはできないし、現在、 制度の将来を展望するときは、市民後見ゆる自然減とみられるが、平成年以降既に専門職者の数が不足している過疎地 人はその活動の場を大いに拡大していくの急激な減少をもたらした原因は、近域 ( 加えて、特に後見ニーズの高い地域 ) 可能性を秘めている。このことは、少な時、後見人に選任された親族による本人においては、専門職の団体が家庭裁判所 の選任依頼に対応できない状況にあると くとも現段階において、次の四つの要因の財産の使い込み事件が頻発しており、 その被害総額が毎年数十億円にも達しても聞く。いずれにしても、近未来に想定 から導くことができる。 いることにある。まさに由々しき事態でされる制度利用者の圧倒的な増加に対し あるが、現在の家庭裁判所の人員体制でては、専門職に依存するだけでは到底足 は、毎年増加し続ける親族後見人の職務りない。

3. 法律のひろば 2017年2月号

特集成年後見制度 成年後見関係事件の概況と家庭裁判所における運用の実情 図 9 成年後見人等と本人との関係別割合の推移 っとして定められており ( 同法Ⅱ条 8 周囲に本人を支えることのできる親族がなどが考えられる。 いない高齢者が増えている ( 注 6 ) こと また、市民後見人 ( 注 7 ) の選任件数に号 ) 、市町村による養成等が更に進めら や、後述するように成年後見人等の不正ついては、老人福祉法の改正により、市れると、これに伴って選任数も更に増加 防止が強く求められるようになっている民後見人の育成・活用についての市町村することが見込まれる。 ことから、本人の財産管理が複雑・困難の努力義務が規定された平成年以降、 である事案や法的知見が必要な事案につ 一貫して増加している ( 図川 ) 。成年後 5 まとめ いては、公平中立な第三者であって専門見制度利用促進法においては、地域にお 後見等開始事件の概況は以上のとおり いて成年後見人等となる人材を確保する 的な知見と高い職業倫理を有する専門職 を選任する運用が定着してきていること ための措置を講ずることも基本方針の一であるが、平成年には認知症有病者数 年 成 平 年 成 平 年 成 平 年 4 成 平 2 0 つな 年 ろ ひ 法 ( 単位 : % ) 80.0 68. 5 70.0 60. 6 60.0 50.0 - 親族 ー 3 職種 ーその他 40.0 30.0 29. 9 27.0 20.0 10.0 0 平成 20 年平成 21 年平成 22 年平成 23 年平成 24 年平成 25 年平成 26 年平成 27 年 ※ 1 親族とは、配偶者、親、子、兄弟姉妹を含む四親等内の親族をいう。 ※ 2 3 職種とは、弁護士、司法書士及び社会福祉士をいう。 ※ 3 後見開始、保佐開始及び補助開始事件の終局事件を対象としている。 図 10 市民後見人の選任件数の推移 ( 単位 . 件 ) 250 224 213 200 167 150 118 9 100 0

4. 法律のひろば 2017年2月号

特集成年後見制度 司法書士からみた課題 付資料「成年後見制度 ( 補助・保佐・後助制度の利用、あるいは地域福祉権利擁 利用者・関係者への制度紹介・ 見、任意後見 ) 利用促進策の強化が必要護事業 ( 日常生活自立支援事業 ) の利用 情報提供の不足 な場面及び解決すべき課題」では「場面が可能である。また、任意後見制度の利 制度改善提言の冒頭の「成年後見制度 1 」「まず、知っていただくことが重要」用が可能な場合もあり得るし、支援が困 難になるまで放置されることもない。将 における国や市町村等行政の役割ーの項に相当する部分である。 目では、「本人の判断能力が相当程度衰制度改善提言のこの項目中には、「現来的に成年後見制度の利用を視野に入れ えた段階や、財産被害等の状況が進み必在国の行っている施策 ( に ) は、厚生労なければならないとしても、権利の侵害 要に迫られて、ようやく制度利用を決断働省所管の『成年後見制度利用支援事や財産の散逸を未然に防ぐことができ するという傾向がある。そのため、支援業』の一環として『成年後見制度利用促る」「高齢者等の権利擁護の問題も ( 中 の選択肢が狭くなり、対応がより困難に進のための広報・普及活動』があーるが、略 ) 早期発見と早期対応が必要であり、 なっている」「成年後見制度が本人の権「同事業の趣旨は、介護保険サービスや成年後見制度の利用等、早い段階からの 利擁護のための制度であり、本人支援の障害者福祉サ 1 ビス利用促進のために成法的手当てが必要ー等の言及が続いてお 制度であるということがまだ市民に浸透年後見制度を『利用』しようとするものり、結論として「市民に対する制度広報 していない。本人の行為能力を奪う ( 制であり、対象が限定的ー「成年後見制度と普及活動」についての課題として、「成 限する ) 制度だというマイナスイメージの利用を必要とする人は、介護保険サー年後見制度が市民に正しく理解されるた も強く」「制度が正しく理解されるためビスや障害者福祉サービスを利用する人めに、成年後見制度の利用を権利擁護活 ばかりではない。特に、身寄りのない高動として捉えた、国や都道府県、市町村 には、国や都道府県、市町村において、 成年後見制度が本人の権利擁護の制度で齢者や、親なき後の問題をかかえる障害 による積極的な制度広報と普及活動が必 あるという、市民に対する積極的な広報者等、制度利用の必然性の高い人々への要である」との提言をしている 活動が必要である」との言及が続く。こ制度の広報と普及が急がれる。対象を広 れらの点は、昨年 9 月日に第 1 回の委く市民全体と捉え、この事業を展開して 2 市町村における総合相談窓口と 員会が開催された内閣府の成年後見制度 いく取組みが必要ー「医師や、民生委員 専門的支援機関の設置 利用促進委員会 ( 以下「促進委員会」とや介護保険事業に携わる人等、地域社会 さらに、制度改善提言では、「行政等 いう。 ) でも多くの委員から真っ先に、 の中で制度利用を必要とする人々に最も そして繰り返し指摘された事項であり、近い立場にある人たちへの制度広報を徹に相談の持ち込まれる事案の本人は、健ろ 現在でも成年後見制度の利用を阻害して底させ、制度の利用を必要とする人を早康管理や生活安全上の問題、悪質商法にの = = ルよる被害や多額の借入れ、親族からの財法 いる最大の問題点であるといえる。促進期に発見することが必要」「高齢者のを 委員会 ( 第 3 回委員会ほか ) における配知症等が初期の段階で発見されれば、補産侵害や虐待、身寄りがないための施設

5. 法律のひろば 2017年2月号

特集成年後見制度 成年後見関係事件の概況と家庭裁判所における運用の実情 ( 3 ) その顕著な例としては、障害者自立支援法の施行 く必要があるように田 5 われる。 を受け、障害者施設の入所者の多くが、施設との入所 また、今後、家庭裁判所が、認知症や 障害者の方が「本人らしい生活を実現契約を締結するため、後見等開始の申立てに至ったこ とにより、平成年は大幅に申立件数が増加したこと するために適切な支援者を成年後見人等 が挙げられる。 に選任し、選任した成年後見人等に法の 趣旨に反した後見事務があった場合には ( 4 ) 後見等開始事件とは、ここでは、後見開始、保佐 解任等を行、つことを通じてこれを是正す開始、補助開始及び任意後見監督人選任事件を指す。 るといった、法が家庭裁判所に期待して ( 5 ) 「裁判所ウエプサイト」 (http ://www.courts・go 」 p) の「公表資料」に掲載している「成年後見関係事件の いる役割を果たしていくためには、どの ような取組が求められるのかをなお一層概況」に基づいている。 ( 6 ) 厚生労働省の「平成年度版厚生労働白書ー人口 検討していく必要があると思われる。今 高齢化を乗り越える社会モデルを考えるー」頁によ 後とも、利用者の視点を常に意識をしつ つ、各地域における社会福祉施策の取組れば、高齢者の居住状況として、歳以上の高齢者の いる世帯のうち、平成年では全世帯の約 4 分の 1 が 状況等も踏まえ、関係機関や関係団体等 と継砡祝的に連携を図りながら、成年後見単独世帯となっており、夫婦のみの世帯を併せると半 数を超える状況となっている。 制度の円滑かっ安定的な運用に努めてい ( 7 ) 市民後見人とは、一般的に、弁護士、司法書士、 く所存である。 社会福祉士等の専門職以外で、本人と親族関係や交友 関係がなく、社会貢献のために、地方自治体等が行う 養成研修などにより成年後見制度に関する一定の知識 や技術・態度を身に付けた一般市民の中から、家庭裁 判所が後見人等として選任した者をいう。 ( 8 ) 厚生労働省のホームペ 1 ジに掲載されている同省 が関係府省庁と共同して策定した「新オレンジプラン ( 認知症施策推進総合戦略 ) 」を参照 (http://www. mhlw. go.jp / stf/ seisakunitsuite 、 bunya 、 8000 084. html) ( 9 ) 報酬付与事件数には、成年後見人、保佐人、補助 ( 注 ) ( 1 ) 障害者についても、平成年 4 月に障害者自立支 援法が施行され、精神障害者等に対する福祉サービス について措置方式から自らの選択に基づき事業者と直 接契約する方式に改められた。 ( 2 ) 成年後見制度の導入の経緯等については、小林昭 彦・大門匡編著「新成年後見制度の解説」 ( 金融財政 事情研究会、 2 0 0 0 年 ) 、小林昭彦・大鷹一郎・大 門匡編「一問一答新しい成年後見制度〔新版〕」 ( 商事 法務、 2006 年 ) 等を参照されたい。 人及び未成年後見人に対するもののほか、成年後見監 督人、保佐監督人、補助監督人及び未成年後見監督人 に対する報酬付与事件数も含まれる。 ( いしい・よしあき ) 23 ・法律のひろば 2017.2

6. 法律のひろば 2017年2月号

での身元引受けの問題等、様々な問題を要」等の記述が続いている 市町村に、高齢者や障害者の問題を総合 これらの指摘は、促進委員会のこれま的に受け付ける専門的な相談窓口と問題 抱えていることが多い。成年後見制度の 利用をはじめ、法律問題や行政手続が複での議論の最大の山場であった「社会的解決のための専門的支援機関の設置を図 合的に絡み合っており、どの専門職や機ネットワーク ( 地域連携ネットワーク ) らなければならない」「成年後見人等選 ろ 関に相談に行けばよいのか、相談者自身とその中核機関」あるいは「ワンストッ任後においても、行政は関与を止めるこの に判断させることは難しい」「相談窓口プサービスの拠点としての支援センタとなく、行政サ 1 ビスの提供等、成年後法 が、単なる制度の紹介や関係機関の紹介ー」の必要性・重要性の議論そのもので見人を支援する体制を整えるべき」との にとどまっていては、相談を振られた関あり、この点こそが、今般の促進委員会提言をしている。 係機関も混乱するばかりである」「高齢の前半の議論における最大の論点となっ 者や障害者のかかえる問題について、どている。促進委員会は、現在の成年後見 3 身元引受の問題 のような専門家の関与が必要で、行政の制度の現状を「利用促進策ーと「不正防 どの部署が担当し、またどの関係機関が止対策」の二つの方向から分析し、成年制度改善提言の「成年後見制度におけ 関与すべきなのかを判断し、行政内の各後見制度利用促進基本計画の案に盛り込る国や市町村等行政の役割」の項目中に は、介護保険施設への入所等に際しての 部署や関係機関との連携を図ることがでむべき事項、ひいては成年後見制度の利 きるような権利擁護専門の総合相談窓口用の促進に関して国が総合的かつ計画的身元引受人の問題について、「特別養護 が必要である。そのためには、総合相談に講すべき施策を検討しているが、「利老人ホーム等の施設入所に際し、高齢者 窓口における専門職員の配置と、連携マ用促進策」と「不正防止対策」のいずれ等が身元引受人を立てることができない ニュアル等の具体化が必要」「持ち込ま についても、地域連携ネットワ 1 クをど場合であっても入所することができるよ れた具体的な相談に対し、医療、福祉、のようにして形成し、その中核機関をどうに、また、専門職後見人が選任されて 法律などの専門的な立場から総合的に検のように構想するかが重要である、とのいる場合に、専門職後見人に身元引受を 認識の下、熱い議論が繰り広げられてお求めるような施設側の対応を即刻改めら 討する支援機関が必要」「初期の段階か ら行政を中心とする関係機関とのネット り、促進委員会が取りまとめた最終報告れるように、国や地方公共団体の行政指 ワ 1 クが重要」「行政が中心となって本書でも「広報機能」と並んで「相談機能」導が徹底されるべきである」と記載して いる。すなわち、制度改善提言は、身元 人を支援する人々のケア会議を招集するが権利擁護支援の「地域連携ネットワー 引受の問題を、介護保険制度が公的資金 体制を整えることが必要」「専門職後見ク及び中核機能が担うべき具体的機能」 人であってもそれぞれ得意分野があり、 の中でも特に「優先して整備すべき機をも投入している制度であること、また 国による最低限の生活保障・居住場所の 行政の積極的関与による福祉・医療・法能」と位置付けられている この論点につき、制度改善提言では「各確保の観点から、当事者間の契約自由の 律等の専門職相互間のネットワ 1 クが必

7. 法律のひろば 2017年2月号

特集成年後見制度 「成年後見制度の利用の促進に関する法律」の概要 るものとされている ( 3 条 2 項 ) 。 基本となる事項を定めるとともに、成年こと ( Ⅱ身上の保護の重視 ) 後見制度利用促進会議及び成年後見制度などの成年後見制度の理念を踏まえて行現在、新たに成年後見人等となる者の うちの過半数が成年被後見人等の親族以 利用促進委員会を設置すること等によわれるものとするとされている ( 3 条 1 外の者となっている ( 注 4 ) 。しかし、今 り、成年後見制度の利用の促進に関する項 ) 。 後も身寄りのない高齢者の数が増大する 施策を総合的かつ計画的に推進すること成年後見制度は、成年被後見人等の判 と予想される一方で、司法書士等の専門 断能力を後見的立場から補完することに を目的としている ( 1 条 ) 。 よって成年被後見人等の財産を保護する職の成年後見人等の数の大幅増加は期待 ことを大きな目的としているが、成年被できないと思われる。そこで、親族でな 2 基本理念及び基本方針 後見人の生活や療養看護に関する事務もく専門職でもない第三者の中から成年後 見人等となる人材を育成することが必要 基本理念 行うこととされている ( 民法 858 条 ) 。 法律では、三つの基本理念が挙げられ成年後見制度の利用者として想定されるであると考えられることから、基本理念 ている。 のは主に認知症高齢者、知的障害者等での一つとして定められた。 あり、これらの者の身上の保護につい③成年後見制度の利用に関する体制の ①成年後見制度の理念の尊重 整備 成年後見制度の利用の促進は、 て、成年後見人が果たす役割は大きく、 成年後見制度の利用に関する体制の整 成年被後見人等が、成年被後見人等今後一層重要になると見込まれる。この でない者と等しく、基本的人権を享有ため、身上の保護が適切に行われるべき備について、成年後見制度の利用の促進 は、家庭裁判所、関係行政機関 ( 法務省、 する個人としてその尊厳が重んぜらことが規定された。 れ、その尊厳にふさわしい生活を保障②地域の需要に対応した成年後見制度厚生労働省、総務省その他の関係行政機 関をいう。以下同じ。 ) 、地方公共団体、 されるべきこと ( Ⅱノーマライゼーシ の利用の促進 成年後見制度の利用の促進は、成年後民間の団体等の相互の協力及び適切な役 成年被後見人等の意思決定の支援が見制度の利用に係る需要を適切に把握す割分担の下に、成年後見制度を利用し又 適切に行われるとともに、成年被後見ること、市民の中から成年後見人等の候は利用しようとする者の権利利益を適切 人等の自発的意思が尊重されるべきこ補者を育成しその活用を図ることを通じかっ確実に保護するために必要な体制をタ と竈自己決定権の尊重 ) て成年後見人等となる人材を十分に確保整備することを旨として行われるものとの 法 岡成年被後見人等の財産の管理のみなすることなどにより、地域における需要されている ( 3 条 3 項 ) 。 2 らず身上の保護が適切に行われるべき に的確に対応することを旨として行われ

8. 法律のひろば 2017年2月号

特集成年後見制度 成年後見制度の現状と課題 の考え方にも抵触しないのではないか。 あって、成年後見代替的機能には馴染まと述べている。ここでは主に自動車損害 我が国の成年後見制度においても、本ないのではないか。信託は社会の公器で賠償保障法の改正が企図されているが、 来、任意後見と補助が中核に位置づけらあり、社会のインフラである。社会が高根本的には高次脳機能障害者の「障害」 れたはずである。成年後見法制定の原点齢化すれば、そのインフラである信託制を正しく理解して、必要なものについて に立ち返って、補助類型の利用拡大を図度もそれに応じて変化すべきである。信は成年後見制度の中に取り入れていくこ るべきである。筆者としては、法定後見託銀行には既存の商品をもって対応するとが望まれる。 「横浜宣言」が志向するものは、安心 を補助類型のみの一元的構成にすべきでというような消極的な姿勢ではなく、高 はないかと思料している。 齢社会における信託活用のグランド・デして暮らせる高齢社会のインフラとして 第二に、「横浜宣言」は、本人の能力ザインを描いてもらいたい。筆者としての成年後見制度の整備である。地縁・血 制限を伴わない保護手段として信託の活は、既存の枠組みや担い手にとらわれな縁が希薄化している現代社会においては 用が考えられるが、我が国においてはこ しパラダイムの転換が必要ではないか高齢者・障害者の孤立化、権利侵害がク ローズ・アップされている。成年後見制 と思料している のようなタイプの信託は普及していない ので、裁判所が信託設定に関与する成年それこそ裁判所が信託設定に関与する度はこのような課題解決の一助となりう 後見代替型の信託制度導入について検討成年後見代替型の信託制度であり、それるものである。今こそ成年後見制度の拡 する必要がある、と述べている。信託とを担うのは全く新しいタイプの受託者で充を図る必要があるのではないだろう いう財産管理制度は、本人の財産が受託あっても良いのではなかろうか。なお、 「横浜宣言」は 2 010 ( 平成年 者に移転される点においては本人の権利成年後見代替型信託制度とは現在裁判所 が若干制約されることは否めないが、成が運用している後見制度支援信託を意味川月 4 日第 1 回成年後見法世界会議の開 年後見制度と比較してみると、本人の権するものではなく、自己決定を徹底した幕に際して参加者一同によって採択さ 利がほとんど制約されることのないもの新しいタイプの受託者が担い手となる信れ、世界に向けて発せられた。課題はそ の具体化であった。そのために提案され である。ここに成年後見代替型信託制度託制度が念頭に置かれている の導入を検討する所以がある。アメリカ 第三に、「横浜宣言」は、交通事故被たのが「成年後見制度利用促進法とで やカナダでは既に信託制度が成年後見制害者等の高次脳機能障害者が成年後見制もいった特別法の制定であったが、利用 度の代替的・補完的機能を果たしてい度をほとんど利用していない現状を改善促進法はまさしくそのような特別法が立ば る。我が国信託業のメイン・プレイヤー するために、新たな立法によって高次脳法化されたことを意味しているのであひ は信託銀行であるが、信託銀行が提供し機能障害者が成年後見制度を利用しやする。 ( 平成 ) 「横浜宣言」は、 2016 ている信託商品は基本的には金融商品でくするための方途を講じるべきである、

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2 0 成年後見実務の課題③ 社会福祉士からみた課題 0 x かろ ー利用促進法における成年後見の「社会化」を見据えて 4 , 年ひ 局の 庭成律 公益社団法人あい権利擁護支援ネット 家平法 池田惠利子 総値 1 務数 事の の自己決定・自己責任、自己負担の時代 撕月 一はじめに 半 3 の幕開けに合わせ、成年後見制度は介護 9 裁 ~ 合 出高月 生活保護が国民の所得補償の最後のセ保険と「車の両輪」となるはずであった。 田最 4 7 況は ーフティネットであるなら、成年後見制しかしこの制度を、社会福祉・社会保障の松 Ⅲ概で 6 のま 度は、憲法条の「個人の尊重」としての一環として捉える意識は希薄で基盤整 . 件 - 印件年 立 その人らしい尊厳ある生活を実現してい備は十分されないまま、利用は介護保険申 係成 関平 く最後のセ 1 フティネットである。医に比べ低調である。申立ても、本人の能村長 見 ~ 町町 % 5 後生・値 年数 療・介護等の利用も含め自分の個別な生力的状況によってされるというより、家区 成成の : 平月 活に自分の年金等を使うのは高齢者でも族の都合でされるものが多く、その後見 出注 障がい者でも同じ。ノ 1 マライゼ 1 ショ人による支援も財産管理面の偏重と、そ幻 ンのすすむ欧米の国々でのこの当たり前 の不正について取り上げられることが目 で、首長申立ての著しい増加がみられて な生活実現のために成年後見制度を活用立っていた。 いる ( 図 1 参照 ) 。本稿では、その状況 する実態をみて筆者が、確信したことで 一方、あらためて地域社会の現実を、 ある。 後見の必要性という点でみてみよう。当をよく知る社会福祉士として踏まえた上 2000 年の介護保険導入に基づき、 初は、禁治産法の延長で親族等が関与しで、今後の課題を捉えたものである。 それまで我が国では「措置」として行政つつ主に高額な財産を管理する権限の必 処分であった、例えば常に介護が必要な要性がある場合を想定していた。しかし 高齢者の特別養護老人ホーム等の入所等近年では、身上を適切にケアするため表 福祉サービス利用が、個人の合理的判断裏一体の少額であれ財産管理の必要性が 能力を前提とした「契約」になった。こあるが適切に関わる親族がいない場合等 17.3 % 16.4 % 17.0 % 15.0 % 13.0 % 1 1 .0 % 9.0 % 7.0 % 5.0 % 3.0 % 1 .0 % ー 1 ℃ % 147 5 , 993 13.2 % 5592 1 1 .7 % 5 , 046 10.3 4 , 543 7.1 % 3 , 108 2471 1 876 = 豊 31 % 1 , 033 3.0 % 2.5 % 1 , 564 1 .9 % 437 509 666

10. 法律のひろば 2017年2月号

特集成年後見制度 社会福祉士からみた課題 約、費用の支払い等 のではなく一体的に行う必要があるもの体性から考慮されるべきと捉えることに であり、むしろ財産管理は、本人の状況より、以下のような予測に基づくマネジ③福祉施設等の入退所に関する契約の 締結、費用の支払い等、処遇の監視・ と本人意思・希望、療養看護の必要度等メントが必要となる。 異議申立て等 の身上監護事項に即して適切になされる ・現在の生活のありようと年間収支のバ ランス ④介護依頼行為及び介護・生活維持に べきものである。 関連する契約の締結、費用の支払等 また、民法 858 条は、成年後見人等・今後の生活設計、療養看護の必要性の ⑤社会保障給付の利用 がその職務を遂行するに当たって、「本予測と生涯収支の予測 人の意思尊重義務 . ( 意思尊重義務 ) と・本人の意思尊重と希望する生活を実 現するための積極的な財産活用 「本人の心身の状態及び生活の状態に配 約 契 慮する義務」 ( 身上配慮義務 ) という一一 現在の超高齢社会は、独居や高齢 ーレ 者・障がい者のみ世帯の増加を伴って つの義務を明記している。 配 手 て いる。厚労省が考える地域包括ケアの え 考 民法 858 条 ( 意思尊重義務と身上配慮推進には、本人が適切に介護保険等を 理解して手続きを踏み支払い等ができ 義務 ) よ る 成年後見人は、成年被後見人の生活、 ない場合、だれが判断や支払いを支援 れ と を一 療養看護、及び財産の管理に関する事務するのかを社会的支援として整える必 事 にの益← 食る を行うに当たっては、成年被後見人の意要がある。成年後見制度の身上監護と なあ ' 人善 思を尊重し、かっ、その心身の状態及び は、まさにこの本人の経済状況と意思 要で認・本最 必援 く支グ認を 生活の状況に配慮しなければならない を踏まえてのマネジメントに他ならな な的ノ確兄 はト、の、 いのである ( 図 3 参照 ) 。 とメ状 なお、身上監護の範囲としては以下 この二つの義務も一体的なものであ こ ) ン行 モの ー一るネ履 ( 約為行 ? せマ り、本人の意思と状況を把握するためのが示されている。 契行限 まさた 産権 財の 義務 ( 本人との定期的な面談や関係者か①健康診断等の受診、治療・入院等どべ巧 レ J らの情報収集 ) とその状況に適切に対応 に関する契約【医療契約】、費用の初 行と を払 律人 する義務 ( 本人意思の具現化と状況に応支払等 竧事支 法見 食て ・後 じた対応策の立案・実行 ) と捉えること②本人の住居の確保に関する契約の 3 え認 ができる。この身上監護・財産管理の一 締結、居住環境の整備修繕等の契図例確 See 妥当性を問う。 C heck アセスメント、方針策定、手配 ( 法律行為を適切に行うための準備 ) ・本人の意思・意向を直接確認する。 ・健康・医療・認知面等で可能か検討する。 ・支援体制やサービス利用、環境面の確認、 かかる費用を確認する。 ・本人のお金はどの程度使えるのか ? 53 ・法律のひろば 2017.2 Act Plan 支援の見直し ( 再契約・解約・苦情申立て等 ) ・再契約や解約、苦情申立てを行う。