資本 - みる会図書館


検索対象: 週刊金曜日 2017年9月29日号
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1. 週刊金曜日 2017年9月29日号

号 の 野経済学の特徴はマルクスの 『資本亠を、資本主義経済の原理とはありえないからである。それはは 『資本論』を、労働者 ( 被搾 論として確皿し、これを理論的基準いわば資本主義社会の「理念」とし として、資本主義の世界史的発展をてされるものといってよい〉 ( 同 聖 0 の立場に立って資本主義を批 判・否定するイデオロギ 1 の書とし 解明する段階論、段階論をふまえ、書、注記 ) 。 日 てとらえるのではなく、資本主義の 存たす個々の資本主義の世界的位置と個別〈現実的には具体化されな ( 商品曜 現実の主体である資本の性格、存立 ナ、、え説的特徴を解明する現状分析ーー三段として売買されることにはならな刊 い ) 〉〈それ自身に利子を生むものと 階の理論的解明の方法を提示した。 条件、発展要因とその限界を解明す 字野は、哲学、文学の幅広い教養しての資本〉を、〈純粋の資本主義社 る論理としてとらえ、純化したとこ ろにある。 ま影すをふまえ、自らの経済学の概念、特会において・・ : : 論理的には展開せら さにカ 神 資本は流通運動 ( 流通形態 ) であ 蔵義。 ま的弟徴をことばで説明する上にこれらをれざるをえない〉とは一体ど、ついう り、自己存立の根拠をそれ自体の内 の さ界高活用したので、話す内容は非常にわことか。答えは、蹼歴史社会の「理 かりやすく、説得力があった。しか念」だからである。 弘主し = 。。 学に持たないこと、その社会的存立は、 し、文章は極めて難解であった。難字野に対し、資本主義肯定論であ ョっ宇 済労働者・万者による労働・生産過 るようにいう読解があるが、これを 野本定論と 解な文章の一例。 程 ( 社会存立・発展の実体 ) にある 経 こと、この社会存立・発展の実体を、 質〈資本主義の発における、その正す一文を一小しておこう。 野 宇資肯を 資本はその流通運動の中に包摂する そ本純化傾向の内には、すでに純粋の資〈体系的に完結した認識の対象をな 本主義社会における全機構が展開さす資本主義社会は、いわば完全に認 宀十 E ことが、社会的存立条件であること、 れる。 : : : 金融資本の時代としての識しえられるものである。この完全 そしてこの包摂には、労働者の労働 こ対応して、一般的にでは 転化を一小して後も、別に新なる形態なる認識。 し 0 力を商品として買い入れることが根にされた。「労働力商品化の無理」 本条件であることが、論理的に明確ーこれが資本主義の根本矛盾であるを展開するわけではない。金融資本あるが社会主義社会の可能性が与え ことが、鮮明にされた。 の時代を特徴づける、株式資本の産られる。しかもこの可能性は、単な この「労働力商品化の無理」は、業への普及も、純粋の資本主義社会る可能性として留まるものではな の を 理論的には可能性といってよい 資本の蓄積運動において、恐慌としにおいて、すでに論理的には展開せ 藤 が、実践的には歴史的必然性として て示されること、しかし資本としてられざるをえない、しかし現実的に 、わよ理念としあらわれる。 : ・ ( 資本主義社会の ) は、この恐慌による制約 ( 労働力商は具体化されない、し ( 奈 本 品化の無理 ) を解消し、流通形態とての、資本の商品化の具体的実現に法則の十的認識は、一方ではこの 神 日 しての自立を求めるー・ーーこれが「そほかならない。〉 ( 『経済学方法論』 ) 。目的活動の社会的統一を可能ならし 8 つ」 れ自身に利子を生む資本」 ( 資本の理〈純粋の資本主義社会においては、めるとともに、他方では理論的に可 月 念 ) であるが、これは資杢豕の「観資本は一般に利潤をうるものとして能性を与えられる社会主義を実践的 年 ( 0 念」としてしか成立しえないこと、資本なのであって、「それ自身に利子には歴史的に必然的なるものとする 9 同 い共その現実具体化は、擬制資本としてを生むものとしての資本」は、現実のである。〉 ( 同書 ) 氏 共しか成立しえないことーーーここに資的には商品として売買されることに 弘提本の発展の限度が一小されること、をはならない。利潤のえられる資本を、 。野宅 宇自明らかにした。 利子をうる資本として売買されるこ鎌倉孝夫・経済学博士 一ご

2. 週刊金曜日 2017年9月29日号

・ま井 ふえん ね。資杢豕からすれば。 で敷衍した内容を僕なりの言葉で切 鎌倉市場関係の中で生きるとい 説明すると、物質代謝が鍵ですね。 人間は、、 、つことか当たり前になっている しや人間以外の生物も四 学増めの麪著 学大「を〉彳ど そうなのですけれども、必ずもの比 決定的なのは、資本が支配してい 冶華起仂餓 / 主月台ロ蜂〔 [ 日 を出し入れして生きている。典型 るということ自体の認識が消えて 都任」ニ椡 はいせつ ま京専質一 0 ロ ( しまっていることです。それをど 例が食事や排泄。私たちは四六時曜 し生家部働レ偏 う取り戻せるかが課題です。僕は、 さ 7 史学版て只碑数 中、いろいろなもの ( 空気や食物、 7 想文新し想墓多 生産の本当の担い手が主人公だと 思人補ざ思の書知性を支える読書も入ります ) を いう意識を労働者が持つかどう 出し入れして生きている。その物 か、自覚できるかど、つかが決定的 質代謝の大半を商品の生産、流通、 に問われていると思、つ。 消費を通じて行なう社会が資本主 義社会であると思、つのです。 資本とは流通運動 鎌倉興味深い表現ですね。しか し重要なのは、資本とはなにか、 白井そこで『資本に戻りま すと、関連する新刊が入門書から です。資本の規定は、『資本第 研究書までいまも出ています。そ 1 巻 2 篇 4 章「貨幣の資本への転 「働き方改革」は の一方で、マルクスが分析した資 化」で示されているように、ク個 本主義は四世紀英国の現実であっ として自立的運動 ( 流通運動 ) を 9 世記英国の工場法と て、現代資本主義とは大きくずれ 1 行なっということです。ものを買 って、ものを売ってもうける。こ る部分があるという指摘がある。 まったく同じ れが資本の本質です。 つまり『資本論』をいま読んでも大 して意味はないとい、つ批判です。 白井そうですね。そして、この 鎌倉否定的な人は『資本論』をいます。貨幣で商品を買う社会が 鎌倉建設現場の話を先ほどしま「大半ーというのが実にややこし したが、 きちんと読んでいるのでしよ、つか。資本主義社会ならば、古代から資 工場などの生産拠点は海 、。古代にも商品はあったけれど 白井僕は、マルクスの分析は基本主義社会があったということに 外に移って産業が空洞化していまも「大半」とはほど遠い。おそら なってしまう。 本的に正しいと思わざるを得ない すからね。でも、英国や日本がか くは、産業美叩が非常に大きかっ ですね。マルクスの分析の核心部他方、資本主義の典型的なイメ ってよりも資本主義的な国ではなた。商品の生産量が図抜けて上昇 分は、資本主義社会を適切に定義 1 ジはマルクスが滞在した当時の くなったのかといったら、そんなし、同時に資本が商品生産を組織 した点だと思うのです。 ロンドンです。産業革命が起こっ ことはありません。資本のいわばするようになる。 鎌倉そうですね。 てバンバン工場が動いて、モクモ 極限的発展形態である擬制資本が最初から商品として売るという 白井では資本主義社会とはなにクと石炭を焚いて煙を吐いてい ことを目的にものがつくられるこ 支配的になっている。 か。市場経済を資本主義イコールる。工場で盛んに商品をつくって 白井では、はたして資本主義のとになってきますし、さらにその とみてしまうと、資本主義の歴史いる。でもいまは、英国でも日本で 定義はなにか。マルクスが発見し、商品を生産する主体である人の労 的な特殊性が分からなくなると思もモノはそれほど造っていません。 字野弘蔵〈注 1 〉がより明確な形働力も商品にされてしまった。 白井

3. 週刊金曜日 2017年9月29日号

【特集】 マルクス『資本論 第 1 巻発刊 150 年 『資本論』の成り立ち マルクスは、初期の『経済学・哲 学草稿』から『資本論』にいたる 過程で考えを大きく変更・深化さ せている。それは『資本論』でも 同様で、『資本論』第 1 巻初版」物 と、同フランス語版ではかなり大 胆な修正がマルクス自身の手に よって行なわれた ( 27 ページ参 法政大学大原社会問題研究 照 ) 。『資本論』研究を難しくして所が所有する 3 冊の『資本論 初版本。一番右がマルクスの いる一因として、このように成立 署名入り。当時は購入者が製 過程が複雑なことがあげられ本を仕上げるため表紙が異な ( 編集部 ) っている。 ( 提供 / 法政大学 ) る。 鎌倉労働力の商品化とは、自分す。生殖技術の進展によって、遺 の労働力を自分で使えないで他人伝子操作で理想の子どもを設計す に使われるということです。本来、るサービスも将来一般化するかも あってはならない蹼な関係です。しれません。 白井商品にしてはならないモノ商品でなかったものが商品化の がどんどん商品にされています。論理に覆い尽くされる流れが進行 たとえば水です。水はあまりにもしている。いまの社会は、爛熟の 死活的に重要なので商品化しては極みにある資本主義社会だという いけないとの良識があったわけでのが私の現状認識です。万物の商 すが、新自由主義改革のなかで、品化にこそ問題の鍵があるとい、つ 地方自治体が担っている上水道事視座を開いた点で、マルクス『資 業が民営化されようとしています。本は、比較を絶する重要性を 環太平洋連携協定で持っている。これが、私の一番の 話題になった、モンサント〈注 2 〉基本的な見解です。 が開発しているタ 1 ミネーター種鎌倉指摘された市場化、要する こうしん 子の問題も商品化の昂進の一環でに交換原理ですよね。これが拡大 check 1 初期マルクス 『経済学・哲学草稿』 ( 1844 年 ) 『ドイツ・イデオロギー』 ( 1845 年 ) 『貨労働と資本』 ( 1848 年 ) 『共産党宣言』 ( 1848 年 ) 2 『資本論』へ ( ◎印はマルクスによる完成稿 ) 『経済学批判要綱』 ( 7 冊ノート ) ( 1857 ~ 58 年 ) ◎『経済学批判』 ( 1859 年 ) 『 23 冊ノート』 ( うち 6 ~ 15 冊「剰余価値学説史」 ) ( 1861 ~ 63 年 ) 『資本論第 3 巻ノート』 ( 1863 ~ 65 年 ) 『資本論第 2 巻ノート』 ( 第 I 稿 ) ( 1864 ~ 65 年 ) 『資本論第 2 巻ノート』 ( 第Ⅲ、Ⅳ稿 ) ( 1865 ~ 67 年 ) ◎『資本論第 1 巻初版』 ( 1867 年 9 月 ) 『資本論第 2 巻ノート』 ( 第Ⅱ稿 ) ( 1868 ~ 70 年 ) ◎『資本論第 1 巻再版』 ( 1872 ~ 73 年 ) ◎『資本論第 1 巻フランス語版』 ( 1872 ~ 75 年 ) 『資本論第 2 巻ノート』 ( 第 V ~ Ⅷ稿 ) ( 1877 ~ 78 年、 81 年 ) 3 工ンゲルスの編集により刊行 『資本論第 1 巻第 3 版』 ( 1883 年 11 月 ) 『資本論第 2 巻』 ( 1885 年 5 月 ) 『資本論第 3 巻』 ( 1894 年 10 月 ) ( 第 4 巻は『剰余価値学説史』 ) している。その市場化を誰が推進ちゃになってしまう。だから『資 しているかが問題です。単純に市本の決定的な意義は、資本と 場経済というと、・それまでは共同は何かということを明確にしたこ 体のなかでしていた自分の生となのです。 産物を、市場で交換すると考えて白井そうですね。 しまいます。そうではなくて、市鎌倉そして、資本が支配する社 場を推進するのは基本的には資本会は、歴史的にみると当たり前で です。商品経済をとことん徹底さはありません。それは歴史的な特 せよ、つと、人間関係を全部解体し殊な社会であって、全世界を包摂、 てしまって、「もの」と「もの」と支配することはできない。すべて切 しう交換関係にしてしまうとい、つの人間関係を資本が支配し尽くす のが新自由主義です。 ことはあり得ないのです。 けれども、白井さんご指摘のと 資本主義の行き止まり おり、絶対に交換原理に解体でき 日 曜 ないものがある。それを解体させ白井ただ、ソビエト崩壊 ( 19 金 ようとするから、社会がめちゃく 91 年肥月 ) のあと、「社会主義は 年表作成・監修 / 鎌倉孝夫 26

4. 週刊金曜日 2017年9月29日号

てはならない社会になってしまっ。刳 白井そうした論理による資本主 義批判はプル 1 ドン〈注 5 〉の資 ( 一ものを 0 くる労働者が 本王義批判と大差がないですよね。 食い資本主義の下でもやはり 鎌倉ほとんど同じです。しかし、 本来の主体なのです マルクスは、幻章 7 節を展開する曜 前の 7 篇「資本の蓄積過程」章刊 崩壊した。資本主義は永遠に続く」ですね。 がひどくなる。それで我慢ならなの記述を、フランス語版でかなり まんえん という理解が蔓延しています。 鎌倉ところが大半の人々は、ソ くなって、そのような社会が転覆大胆に修正しています。 鎌倉ソ連崩壊の影響はずっと尾連社会主義は社会主義の典型とま されるといいますが、現実にはそど、ついうことか。労働力を商品 を引いていますね。 では言わないけれど、自分たちの うなっていないわけです。 化した資本は、労働力を買った以 夫 白井なぜソ連が崩壊した程度の目標だと思っていました。自分の あの記述は、いわば美叩家マル上、買って労働者を使って労働さ ことで、マルクスの資本主義分析考えがない、借りものの思想だっ クスが顔をのぞかせているところせた以上、それは買ったものの権 の正当性が疑われないといけない たからショックを受けたわけです。 で、字野弘蔵は科学としての『資利だ、買ったものの所有になると。 のでしようか でも『資本亠をしつかり研究 本亠から取り除かなければならそうすると、労働力商品化を通し 鎌倉それはすごい指摘ですすれば、資本主義経済自身がどこ ないと考えました。 て、合法的に生産物を資本が所有 ( 笑 ) 。でも関係なくはないんです。までも発展するかというと、行き 鎌倉重要な問題点ですね。『資本しているとなります。 字野弘蔵は、当時あった社会主止まりがあるという結論になりま / 第 1 巻 7 篇幻章 7 節の記述〈注白井そうすると資本主義社会の 4 〉です。労働所有論がべ 1 スでどこに根本矛盾があって、矛盾が 義政権が崩壊することはあり得るす。その、行き止まり自体も『資公な とは 0 きり言 0 ているんです。社本が解明している問題なんです。商品経済の出発点は、自らのどういう形で現れてくるのでしょ 会主義は理論がそのまま政策化ですね。これはすごいことです。 労働でつくった生産物を自分が所うか。僕は、社会の再生産が不可 きますからね。その理論が間違っ白井行き止まりについて、うか 有する。それを交換に出す。発展能になっていくことだと思いま ていたら崩壊するんですよ。 がいたいと思います。『資本亠で していくと、労働者全体が共同しす。これだけ少子化が進むと、労 白井なるほど。スタ 1 リン〈注 3 〉有名な〈収奪者が収奪される〉と てつくった生産物を資本が私的に働力の再生産が現実的にできなく 談 が間違っているから、間違ったこいう議論は、いわゆる独占が進む 領有する。これが資本主義の決定なってきています。 対 とになるだろうと ( 笑 ) 。さすがと小資本が大資本に、打倒・吸収 的な矛盾だというとらえかたです。鎌倉本当にその通りです。だか 字野弘蔵、としか言いよ、つがない されていき、少数者への富の集中 そうすると資本主義は本当はあつら現代の資本主義は、少子化によ って生産基盤を失っていくという より、他に委ねてしまうわけです。 たとえば植民地だった国々に委ね、 ソ連が崩壊した程度のことで 収奪してしまう。では本国の資本 なぜマルクスの分析の の支配する領域は何かといえば、 金融商品や株式になってしまう。 正当性が疑われるのかー白井 白井そして所有だけで利子が付 ーー鎌倉

5. 週刊金曜日 2017年9月29日号

【特集】マルクス『資本論』第 1 巻発刊 150 年 めも book select せ手絶論 資 イデオロギーと社会科学を明確に区別した字 ひ頃版理 探な本を査 法政大学出版局 野弘蔵 ( 1897 ~ 1977 年、 31 ページ参照 ) の仕事 五 ( 1970 年、 1973 年 ) しこもて は重要だ。『経済原論』は三段階論の「原理 絶版 ( 改装版あり ) てと古いや 論」にあたる基本書。『資本論研究』は、『資本 ほが本ね関 しし。市ド連 論』を要約し問題点を議論する。『資本論五十 いは場書 年』では弟子たちと縦横無尽に議論している。 警ばつ籍 略あ刊ての い多 ご新 とは 由装理難 回 解解 でと つ るわ る の て で る が 『資本論』 ( カール・マルクス著 ) 岩波文庫 ( 全 9 冊 ) 工ンゲルス = 編 向坂逸郎 = 訳 9 冊セットは品切れ。 全冊買うと 9560 円十税 : 資本論 宇野弘蔵の編著から学ふ 新書版 ( 全 13 冊 ) 日本共産党付属社会科学研究所 = 監修 資本論翻訳委員会 = 訳 新日本出版社 1 万 5145 円十税 旧 BN978-4-406-01771-8 国民文庫 ( 全 9 冊 ) 岩波文庫版は定番。向坂訳の下訳をした岡崎 岡崎次郎 = 訳 次郎が新たに訳した国民文庫版のほうがこな 大月書店 れているという評価もある。向坂訳、岡崎訳の 1 万 0900 円十税 底本がソ連 / 東独版であるのに対し、新日本 旧 BN978-4-272-80250-0 出版社版はエンゲルス版が底本で、脱ソ連とい う意味合いがある。 OA$ に A なレ 資本論 々クス ~ 第一 25 衄 2 主、 『資本論研究 ( 全 5 巻 ) 』 筑摩書房 ( 1967 年 ~ 68 年 ) 絶版 軽済原 『経済原論』 岩波文庫 800 円十税 旧 BN978-4-00-341512-2 宇野弘蔵編 資本論研究 40 第の ー・貨第・資本 第第物を 4 0 ー・ 2 『資本論五十年 ( 上 ) ( 下 ) 』 現代の視点から読み直す 『はじめてのマルクス』 は 資 「資本論」を超える資本論 め 危機・理論・主体』 鎌倉孝夫、佐藤優 = 著 て の 金曜日 鎌倉孝夫 = 編著 ル ク 1300 円十税 資 社会評論社 ス 2700 円十税 旧 BN978-4-906605-92-7 BN978-4-784-51813-5 字野弘蔵に師事した鎌倉孝夫と、高校時代に 鎌倉から学んだ佐藤優は、『資本論』と字野経 編 済学の重要性を発信し続けている。現代の社 集 会分析に『資本論』はきわめて役に立つ。 選 鎌倉孝夫と佐藤優か 読み解ぐ、資本論」 カネか命か 朝る 『いま生きる「資本論」』 佐藤優 = 著 新潮文庫 550 円十税 旧 BN978-4-10-133178-2 週刊金曜日 2017.9.29 ( 1154 号 ) 32

6. 週刊金曜日 2017年9月29日号

りなかなかそれじゃ追いっかない を自覚する必要がありますね。 ~ を資本を んじゃないかとも思、つのです。 鎌倉その通りです。いま、衆議 大前提にした もつひとつ、戦争の問題があり院の解散総選挙が取りざたされて ます。いまの全世界的な資本主義いますが、資本を大前提にした政 政策をどれだけ の行き詰まりの打開策は、人道を策をどれだけとったって駄目とい 集『第 【イとったって駄目 まったく無視すれば、わりに簡単うことです。「景気上昇ーを野党も ス発 1 山 とい , っことー鎌倉 なんですよね。核戦争でもやると。含めて期待する状況じゃ駄目なの それで大破壊すると。そうすればです。 経済成長を取り戻せるという「悪資本や国家に期待したり依存し 魔の誘惑」があります。 たりするのではなく、「自分の生 それ自身の 鎌倉核戦争では破壊の程度が計活・生存は自分のカ、働く者の共 ロジックを持っており、り知れないほど大きすぎて再生も同・協力したカで実現する」とい できないと僕は思うね。人類生存う認識を確立し、できるところか 何のモラルも の条件そのものが解体してしまら実践していくーー、それがいま政 白井 オし う。その道はとってはいけない。 治を変え、資本が支配する体制を 白井もちろん戦争をしてはいけ変えていく基礎だ、と思います。 く株式は、結局、どこかから剰余反撃ができていないことはないん ないのですが、資本はそれ自身の 〈注 1 〉字野弘蔵 189751977 年。 価値を持ってきているわけです。ですよ。たとえば、僕は三里塚の ロジックを持っており、資本自身 日本を代表するマルクス経済学者。 土地取り上げ反対運動に若干関わ には何のモラルもないことを理解〈注 2 〉モンサント米国の化人社。ター 労働者が本来の主体 ミネ 1 タ 1 ( 自殺 ) 種子とは、タ 1 ミネー 夫 っています。農地は、成田空港に しておく必要があります。 タ 1 遺伝子が組み込まれた種子のこと。普 鎌倉先ほども話しましたが、労囲まれているけれども、有機農法 鎌倉その理解は重要です。 通の種子と同様に成長して実を付けるが、 働者がやはり資本主義の下でも本で立派な農産物をつくっている。 白井本当に資本や企業はしぶとその実から取れた種子は発芽した時点で枯 れてしまう。 来の主体なんです。労働者が労働それで消費者・生活者との連携を い。福島第一原発の近くに連れて〈注 3 〉ヨシフ・スタ 1 リン 1879 、 1953 年。 1920 年代末から年代初 してものをつくる、富をつくる、しつかり続けています。 いってもらったことがあるのです めにかけてソ連共産党の指導者としてソ連 価値を形成することがなければ、 要するに本当の生産の主人公は が、三菱や日立、東芝などの大き 型社会主義の基礎を作った。その際、急速 資本主義そのものが成り立たな働く農民だ。農業をやっているそ なロコがそこら中に張り出してあな工業化と農業集団化を強行するにあたっ て一覚独裁のもと国民各層を抑圧した。 、。その労働者をもっギリギリまれ自身。それと連携する生活者。 る。これらの企業は、原発をつく 〈注 4 〉第 1 巻 7 篇幻章 7 節の記述〈生産 で追い詰めて収奪しています。 るときに儲け、運転で儲け、そし手段の集中と労働の社会化とは、それらの それが資本の攻撃に対して徹底的 資本主義的外被とは調和しえなくなる一点 白井ですよね。いま話題の な戦いをやっているのです。これ て事故処理でまた儲ける。 に到達する。外被は爆破される。資本主義 ( 人工知能 ) だって、結局は は崩しては駄目です。 僕らの生活は結局、原発事故の的私有の最期を告げる鐘が鳴る。収奪者が 収奪される。〉 の活用で大量失業をつくりだし白井資本主義に抵抗するため白現場から自分の部屋まで、いろい 〈注 5 〉ピエ 1 ル・ジョセフ・プルードン て、賃金水準を大幅に下げられるに、できるだけ商品化とは別の論 ろな商品に囲まれている。まずは、 18095 年。フランスのアナキズムの 思想家。 談 という動機から開発されている。理で生活する。それはそれで筋が 僕らの生活が、どれだけどっぷり 金 対 刊 鎌倉でも、難しい問題ですが、通っているんですけれども、やは 資本に依存しているかとい、つこと対談写真撮影 / 伊田浩之 ( 編集部 ) 週 1

7. 週刊金曜日 2017年9月29日号

匹 = 第 1 巻発刊 150 年 【特集】 1818 ~ 83 年。共産主義思想家・運 動家。ドイツのライン州トリーアで、 ユダヤ人の家庭に生まれた。 41 年 にイエーナ大学で哲学の博士号を 取得、 42 年秋から翌年 3 月まで『ラ 済問題を研究する必要を感じる。 44 年にパリでエンゲルスと親しくな り、 46 年にプリュッセルで「共産主 義 ( 国際 ) 通信委員会」を設立、そ の中心となる。 47 年に「共産主義 者同盟」に改組、その綱領として 『共産党宣言』 ( 48 年 ) を執筆した。 49 年にロンドンに移り、死去までロン ドンにとどまった。 57 年から翌年に かけて草稿『経済学批判要綱』を まとめ、 63 年ごろには「資本論』の 構想を固める。『資本論』第 1 巻刊 行は 67 年 9 月。健康を害しながらも 晩年にかけて『資本論』体系の完 成に努めたが、肝臓がんで亡くな った。 ( 提供 /AP ・ AFLO) Karl Marx ドイツ・ハンブルクのマイスナー書店か ら 1867 年に刊行された「資本論』第 1 カール・マ丿レクス 巻初版。マルクスが友人のクーゲルマ ンに献呈した際の署名が入っている。 わたしたちはどのような時代を生きているのか。 ( 所蔵 / 法政大学大原社会問題研 究所 ) なせ働いても働いても暮らしが楽にならないのか。 これでは結婚も子育ても無理ではないか。過労死が減らないのはなせか。 高齢になって職を失ったら生きていられるのか。 それなのに資本家は毎日遊んでいるようにみえて、どうしてカネが増えるのか。 こうした疑問に答えるには、ものごとの根本に立ち戻って考えることが必要だ。 カール・マルクスの『資本論』はその難問に答えてくれる。 『資本論』は古くなるどころか、その重要性はいよいよ輝きを増している。 『資本論』は、第 1 巻の発刊から 2017 年 9 月で 150 年を迎える。 週刊金曜日 2017.9.29 ( 1154 号 ) 23

8. 週刊金曜日 2017年9月29日号

資本の奴隷から 抜け出す 【特集】 マルクス『資本論 第 1 巻発刊 150 年 対資本主義の「正しさ」は、ソ連の崩壊によ 0 て証明されたのか 福祉の充実なと労働者対策も考えたか、 いまや、むき出しの資本主義が荒れ狂っている。 白井『資本論』を最初に読んだ 大学生のころ ( 1990 年代末 ) 、 奴隷状態なのに、 番ピンとこないのが「労働日」 ( 第 1 巻 3 篇 8 章 ) でした。成人 自分の意思のように 男子の 1 日絽時間を超える労働 ーー鎌倉 や、ときには時間におよぶ児童 勘違いしている 労働の実例を読んでも、「昔の工場 はきついな」と思う程度でしたが、 労働者がいま読んで一番ピンとく るのが労働日の章だと思います。 鎌倉新国立竸技場の建設工事に「 あたっていた代の建設会社員が しっそう 3 月 2 日に失踪し、 4 月に長野県 で遺体で発見されましたね。失踪 前の 1 カ月間は 211 時間の時間 外労働をこなしていたそうです。 白井ピンとこなかったのは僕の 想像力の欠如も原因です。長時間 労働させる工場は当時の日本から は消えたかもしれないが、実際は 過酷労働の現場を海外へク輸出 かまくらたかお 1 934 年生まれ、経済学博 士。埼玉大学名誉教授、東日 本国際大学名誉教授。向坂 逸郎、宇野弘蔵に師事。宇野 経済学を継承、発展させてい る。『資本主義の経済理論 法則と発展の原理論』 ( 有斐 閣 ) など著書多数。 資本主義の 経済理論 携物と発の理論 宿夫 した。それがいま、目に見える形 4 で国内に戻ってきたわけです。 労働日の章の白眉は、労働が過 酷になりすぎたあまり、人道的な 工場法を資本家自身がつくらざる を得なくなったことです。これつ て安倍晋一一一首相がいま言っている 「働き方改革」とまったく同じな んですよね ( 苦笑 ) 。 鎌倉生活自体できないとか、子 どもを育てられないとか、さすが に安倍首相でも認めざるを得ない 労働者の現実があるわけです。 白井「社畜」という恐ろしい言 葉がすでに市民権を得ています。 安倍政権の支持率が若年層で高い のは、これに関係しているのです。 ど、つい、つことかとい、つと新立卞の就 職率はいま悪くないのです。そ、つ すると「アベノミクス、いいじゃ ないか」となる。社畜になるのが 最高の幸せみたいな感覚。客観的 に見れば絶望的に↑な労働環境 でしかないんですけれども・ : 鎌倉本当にそうです。実質は奴 隷状態なのですが、自分の意思で 働いているように勘違いさせられ ています。自分で自分を奴隷化し切 ているという感じですね。 白井他人のために、搾取される四 ために労働している部分も、まる で自分のために労働しているかの よ、つに錯覚させることができるの曜 が、資本主義の大いなる利点です さ′、しゅ

9. 週刊金曜日 2017年9月29日号

「モリカケ」隠し解散 ! 挙へ 「大義なき解散」に後付けで「教育無償化」 吉田啓志⑩ 佐川国税庁長官を罷免せよ 醍醐聰・ 小池新党 " 結成で都議選の再現なるか ! ? 横田一朝 「反安倍政治」勢力で共闘を 山口二郎・ 「壊憲」阻止への正念場 菱山南帆子・ 民進党の前原誠司代表への手紙 未来のための公共の 「安倍改憲案」がダメな理由 首相による「率先改憲」は憲法 99 条違反の疑い植野妙実子の マルクス『資本論』第 1 巻発刊 150 年・ ー鎌倉孝夫 x 白井聡の 資本の奴隷から抜け出す 鎌倉孝夫の ◆宇野弘蔵は資本主義を肯定していない 資本主義の先にある社会の展望とその可能性 佐藤優 風速計 編集部 / 選・ ◆本箱もっと深く理解するために 「革命」という言葉に惑わされす 田中優子・ 映画『バーフェクト・レポリューション』に主演 聞き手・相田冬二 リリーフランキーさんと考える「障がい者の性」 黒島美奈子の 政治時評 石田勇治・東京大学教授に聞く 浜矩子 経済私考 聞き手・星徹 ナチスの手口と安倍政治の危険性 新・政経外科⑩ 佐高信・ 無責任架空対談 3 住民を危機にさらすリニア中央新幹線 松崎菊也① 金曜俳句⑩ 櫂未知子朝 東京トム約杯分の残土処分地はどこに ? 樫田秀樹⑩ 俺と写真⑩ 本多勝ー 水源地を貫く中央アルプストンネル 井澤宏明の 石坂啓 初めて老いった ! ? ⑩ 南スータン PKO 派遣差止訴訟が問うもの 佐藤博文 「平和的生存権」は自衛隊の軍事任務を許さない メディアー撃 ( 最終回 ) 浅野健一 / 岩本太郎 / 髙嶋伸欣 - 米イージス艦への給油はなにが問題か 半田滋の それでもそれでもそれでも⑩齋藤陽道 作掌篇既 : 第力の国 ; 第 7 話 ] 亜鉛の森の子ともたち山口泉① 金曜アンテナ チェ・ケバラ没後年カミーロ・ゲバラ氏来日インタヒュー伊藤千尋・ ジェンダー情報 きんようびのはらつばで ( 情報欄 ) 読者会から 【本】『ジャパン・トリップ』倉本さおり・ 金曜日から 『暴政 20 世紀の歴史に学ぶ 20 のレッスン』高原到 / 『他人の始まり因果の終わり』武田砂鉄・ 【映画】『夜間もやってる保育園』早乙女愛 / 【音楽】近藤康太郎朝 投書 【舞台】藤原央登 / 【本箱】弓削田理絵 ( 編集部 ) 選 共産党は共闘の具体案を ! ・・ 待ったなし ! 三つのチキンレース・・ メディアも国民も思慮深く 日本の恐ろしいほとの思い違い・・ 《連 ) 水に流せない水の話⑩世界を救う日本の水処理技術 吉村和就・ 真のアロマとは ? ・ 【労働】フレックスタイムの改正で得する人、損する人 稲毛山佳・ 煢金曜日 = 。 , 7929 第 1154 号 、 SYÜKÄN KIN'YöBI 4 9 ・ 4 凶・ 0 ′ 0 ′ 0 / 0 きんようぶんか ・・・村岡到 ・・・丹羽淳 ・・・田呂丸一光 ・・・小又和夫 ・・中嶋由美子 くらしの泉

10. 週刊金曜日 2017年9月29日号

貼られていた。 , - 哲学部の科学的共このような社会主義から資本主刳 式イデオロギ 1 の範囲内で講義を 産主義学科が政治に関する研究を義への美叩で社会が激変したにも する。また、研究論文や学術書を していた ) だけで、その他の学生かかわらず、普通のロシア人が生 5 カ年計画に従って書く。 1 年に 活できたのは、社会主義美叩の結比 は第 1 巻しか読んでいなかった。 論文を 1 本書けば十分だ。そのと ソ連では『資本は歴史書と崟疋着した、労働時間の短縮、国 きのテ 1 マは「ペレスロイカの進 して読まれ、史的唯物論 ( 唯物史家を信用せず、家族や友人など顔曜 展における共産党の前衛的役割に ついて」という当たり障りのない ' 第一、 観 ) によって資本主義の崩壊と社が見える範囲での人間関係をたい皿 会主義美叩の必然性を論じる書とせつにするという習慣があったか テ 1 マで、ゴルバチョフとレ 1 ニ して読まれた。マルクスが最も強らだ。この習慣は当面崩れない ンの引用を散りばめたつまらない 今年はマルクスが『資本第 調していた労働力商品化につい 論文を書く。しかし、友人と別荘はソ連人とまったく接触しないと 1 巻を公刊してから 150 年にあ て、ソ連人は関心を示さなかった。 に集まったときは、林日となってロシア語が上達しないので、「トラ たる記念の年だ。われわれは『資 ある意味、ソ連では労働力商品化 いるディシデント ( 異論派 ) や西プルを起こしたら日本に帰すが、 本亠から学ぶのは、人間を疎外 が克服されていた。その代わり、 側の書籍をもとに本音の議論をすそうでなければ大目に見る」とい 国家の暴力を背景に強制労働が社する労働力商品化なしに資本主義 る。タイプライタ 1 とカ 1 ボン紙う運用だった。それだからモスク 会全体で行なわれていたのであが存立しないという事実だ。状況 も用いたコピーで反体制文書を作ワ国立大学で研修した 9 カ月間を る る。 によっては資本の利益のために人 私は最大限に活用し、人脈を拡大 成し、製本して流布することも 間を殺し、戦争を起こす。こうい 部までならば黙認されていた。 し、それが外交官になってから役 あ資本論』から学ぶ 、つシステムを全面的に転換するこ に立った ( 拙著『自壊する帝〔新 労働力商品化を克服 潮文庫〕を参照願いたい ) 。 年肥月にソ連が崩壊し、翌とが美叩ならば、確かに美叩は必 年 1 月からはショック療法 A 」い、つ要だ。ただし現時点で、「これがい ソ連で、マルクス『資本は、 ソ連時代にモスクワで勤務して 新自由主義的な価格目由化政策がい」というような美叩像が私には いた外交官は、一般のロシア人や人文・社会科学を専攻する大学生 と 導入され、その年のインフレ率は見えない。 知識人との接触を避ける傾向が強の必読文献だった。しかし、『資本 2500 % を超えた。その後、民むしろロシア美叩の遺産から学 かった。秘密警察は、外交官が民論』全 3 巻を読む学生は、経済学 情を調査することを嫌い、トラブ部資本主義経済学科 ( 資本主義経 」営化政策の名の下で、国有財産のぶ、〈きことがある。国家を信用せ ぶんどり合戦が生じて、マフィアず、労働時間の短縮と具体的人間 ルに巻き込まれることがあるから済の構造と、その必然的崩壊を研 が経済面で暗躍するようになり、関係の強化を通じて社会を強化す だった。当時の日本大使館幹部は、究する学科。これに対して社会主 それと結びついた寡占資本が台頭ることだ。そうするうちに神のカ 「ソ連人と接触するときは館員 2 義経済学科では、 5 カ年計画に役ヾ 人以上で会え。ソ連人を自宅に招立てるため近代経済学の新古典派 した。プーチン政権下、国家が経によって美叩が起きる。それまで くことも、ソ連人宅を訪問するこ総合を学んでいた ) か哲学部科学 済に直接介入するようになり、寡は「急ぎつつ待っ , という姿勢を 占資本家が政治に関与することは私はとるつもりだ。 とも禁止する」という厳しい方針的共産主義学科 ( 政治学はプルジ 難しくなった。現下のロシア経済 をとっていたが、研修生に関してョア学問であるというレッテルを ら は、国家統制と新自由主義が奇妙 に入り交じったエリートによる支 配である。 むしろロンア革命の遺産か さとうまさる・作家、元外務省主任分析 官。新刊に『沖縄と差型 ( 金曜日 ) 。