( 12 ) 方いる熟語は、見出しの熟語の漢字の字形は常用漢字の字にして、熟語の説明中に多いのですが、親字の説明中にもあります。気を その下に旧表記をあげました。「相」の場合の「相伝」「相応」の下っけてください。 の の「相傳」「 1 相應」、「決起」 ( 三二五ペ 1 ジ ) の下の「 1 蹶起」引用文の中で、見出しの熟語と同じ部分は、二字の場合は「ー 書 」で示してあります。 本のようなものです。この逆に、「相剋」の下の「レ相克」は、「剋」ー」、三字以上の場合は「 が常用漢字外であるため、今日では「相克」と書くということを 九熟語の調べ方 表しています。 語義が二つ以上ある場合は O 〇〇・ : と数字で分け、さらに細か 熟語の第一字の親字のところで引き出す。同一親字の中で く分ける必要があるものは、④〇〇 : ・で区別しましたが、そのお は、第二字の総画数を調べて、該当部分を捜す。同一画数の のおのの順序は、だいたい使用度の高いものを前に置きました。 ものは、慣用字音の五十音順に並べてあるから、そのつもり で捜す。 意味によって読みが違うものは、読みがなに、説明の中の O 〇 ・ : を冠して、呼応させました。この場合、一方の読みがなに O 〇 2 目的の熟語が、熟語の見出しの中を 1 の方法で捜して見つ などがないものは、その読みは、 O 〇・ : の全部について、通じて からないときは、見出しの下に出ている「」「 1 」「し」の下 あてはまることを意味します。 の同義語や違った字形の中にないか調べる。 説明の文章中、同一表現をくり返すことによって行がふえるも 3 以上のところにない熟語は、親字の説明の中の用例中を捜 のについては、 ^ や > を使って、簡単にしました。たとえば「相 し、あったら、その項目の訓義と、他の字の訓義とで解く 対」の説明の中の「互いに ^ あい対する ^ 関係がある > こと」と 4 それにもないときは、各漢字を別々に親字として引き、組 み合わせて意味をとる。 あるのは「互いにあい対すること」と「互いに関係があること」 とをまとめて簡単にしたものです。 5 常用漢字で、親字を下に使った熟語にどんなものがあるか 句読点については、文章がきれるときに句点の「。」、文章の ということは、熟語の見出しのあとの△字の下に並べてある からわかる。 途中は読点の「、」とみなさんは学校でお習いでしよう。そのと おりで正しいのです。しかし、辞書の説明文は、同じような意味 十最後に をいくとおりも並べることが多いのです。それから終止形で結ふ かなを略すことが往々あります。そこで、一つのつながった説明 この辞典の原稿は、既刊の「明解漢和辞典」と「三省堂漢和中 の途中で、正しく句読点を使うと、どこまでで一つのまとまった辞典」とをわたくしの助手の志岐ちづに命じて比較して、たがい 説明になるのか、はっきりしないことがあります。そのため、まの有無詳略部分に赤線を引いておいてもらったものと、わたくし とまったところのあとを「。」で示すことにしました。この例はの年来作っておいたカードとをもとに、わたくしがひとりでまと
「杯」 ( 四二九ページ第二段 ) の説明の最初に「 1 盃」とありまとあり、その先に「⑩ラク」とあり、さらに先に「⑩ゴ ( ガ ) ウ」 すのは、今は「盃」の字を「杯」としるすという意味です。この逆とあります。これは字音によって字義字訓が違う場合の表示法で の「盃」 ( 四〇ペ 1 ジ第二段 ) には「し杯」と明示しておきました。す。この場合⑩の上が「ガク」と読む場合の訓義、⑩の上が「ラ ク」と読む場合の訓義で、⑩の下が「ゴ ( ガ ) ウ」と読む場合の訓 五親字の音 義であることを示します。 親字の下にしるされている、説明の部分についてお話しいたしその三は「行」 ( 二九二ページ第二段 ) の親字の下の「⑩⑩ア ましよう。わかりやすいように、「親字の引き方ーのところで例ン」です。これはあまり多くない唐音 ( 宋代の音の転 ) です。 その四は「芸」 ( 二七一ページ第二段 ) の場合です。白ぬきで、 にあげました「相」の字について説明してみます。 0 と 3 とにまず分けてあります。これは「藝」の新字体が昔から みなさん、この辞典の四三〇ページの第三段を見てください。 親字の下に出ている筆写体 ( 教科書体 ) はわかりますね。そのあった「芸」と同じ形になったもので、 0 の音義と 0 の音義とは もともと全く別であったことを示します。近ごろ労働組合などで 下の「もと目 4 」も。 その下に朝とあって、「ショ ( ャ ) ウ・ソ ( サ ) ウ」とありますね。は「闘」の字の画数が多いので、全く別の字で簡単な「斗」の字 「相」という漢字の字音です。太いかな文字 ( ゴシックに似た、正を誤って代用しています。そこで、そういう誤用の例までもこの しくはアンチック ) でしるされているのは常用漢字表にあり、辞典では収載していますから、「斗」 ( 三九四。へ 1 ジ上段 ) には、 06 に分けて説明しました。同音 現代表記法で、その字音の使用が認められているものです。 ( ) 同じ「トウ」という発音でも、 の中は、戦前のかなづかい ( 旧かな・歴史的かなづかい ) では「シですが、「斗」は普通「ト」と発音しますので、「トウ」という字 ャウ・サウ」と書いていたことを示しています。この字音のとこ音の上に慣用音の「ト」をあげました。 ろの片かなが、普通の細い字 ( 明朝体 ) で記入されていれば、音木や草や虫や鳥の名などには、漢字の造字法に習って、わが国 訓欄にない字音です。ところで、字音の記載法の別の例をあげてで作られた漢字のような字があります。これは昔から国字とよば れていました。「働」以外のこれらの文字には音がないわけです。 みましよう。 その一は「是」 ( 四〇二ページ第二段 ) の場合です。まず⑩のそこで、たとえば四三一ページの下段の左方を見てください。字 記号があり、その下に「ゼ」とあり、次にの下に「シ」とあり音が出ていないで、最初に「国字」とあります。 方ます。この⑩は慣用音を示し、つまり、正しい字音は「シ」です「桂」 ( 四三二ペ 1 ジ第二段 ) とか、「橘」 ( 四三九ペ 1 ジ第三段 ) が、わが国で習慣的に「ゼ」と発音され、その「ゼ」が太文字でとかには、字音の上に「人」という一字があります。これは常用 のすから、常用漢字表で認められていることを表示します。 漢字表にない漢字ですが、音訓表ができたあとで、識者に当局が 本その二は「楽」 ( 四二六ページ上段 ) で、がなくて、「①ガク」っつこまれて、人名には加えて使ってよいという字で、人名漢字
なさんが卒業されて広い実社会に出ても必要があるまいと思われ ていることを表します。 るようなむずかしい熟語はもちろん除きましたが、一方では、み 七筆順の見方 なさんが国語辞典を利用されるような、読みやすい熟語で、しか もう一度「相」 ( 四三〇ペ 1 ジ第三段 ) を見てください。親字も各字の意味を知っていれば、それを合わせて考えると容易に意 の説明のあとに、行を改めて、家一とありますね。この筆順とい味がわかりそうな熟語は、親字の説明中に、用例としてあげ、熟 うものについても、「現代表記と本辞典」の「三」の中で説明して語の中からは省きました。しかし、現代表記法では漢字の使用を ありますが、整った、きれいな文字が書ける、運筆の順序です。認めていないあて字を多く入れ、その初めに ( あて字 ) という表 本辞典では、利用者の要望によって、学習漢字九九六字について記法を使いました。 だけ示しました。一行に収録するため、わかりやすい順序は一つ漢文の中で使われる漢語と、わが国で造られて、漢文の中では にまとめましたが、④とあるのは四年生のときにはじめて学ぶ漢使われない準漢語との別は、親字の用法よりはるかにむずかしい 字であることを示します。この①ー⑥は、学年配当 ( 何年生が習ものです。だいたい、本辞典にはわが国で使われる熟語を主とし うか ) の数字です。これは、この学年で指導したほうがよいといて収録しているので、漢文を読むことがない、本辞典の利用者に 川う、専門の教育家が指示した結果で、昭和五十五年四月一日からはこの区別は必要ではないと信じてやめました。まれに〔日〕と 実施されている「小学校学習指導要領」で、この学年に配当されいう例が出ていますが、それは、「わが国では : : = 」と書き加え ると一行ふえるような場合の省略のためです。 ています。 熟語の上下に【】があるものは、現代表記法でそのまま漢字 八熟語の構成 だけで書けるもの、書かないことになっているものは、 ( 】の 熟語とは、一一字以上を結びつけて、新しい意味を表したもの中に入れました。また上下二字のおのおのについて、漢字で書け をいいます。ただし、この中には、結びつけられた各字の意味をるかどうかを区別することは、三字以上の熟語もありますのでや めました。二種以上の読みがその下に出ているものは、この区別 合わせると意味がわかるものがあります。 熟語はすべて第一字の親字のところにまとめました。これは新は最初の読み方に従いました。 しい方法ではありません。その配列は第二字の総画数の少ないも同じ漢字を第一字として、第二字が違う熟語で、意味が全く同 防のから多いものへと並べ、同一画数内の順は、慣用の字音の五十じものは、ページ数を少なくしたいため、別に出さないで、Ⅱを 冠して一括しました。たとえば、「相」 ( 四三〇ページ ) の熟語の 使音順によりました。 書前にも説明しましたが、あまりたくさんの中から目的のものを「相愛」の下に「Ⅱ相思」とあげたようなものです。 本捜し出すことはむずかしいものです。そこで、この辞典では、み第一字以外に新字体以外の字形や常用漢字外の漢字が使われて
方よう。分類はものごとを整理するときにします。この場合、一家もよばれています。 の系図のように初めは大きく分け、だんだん細かく分けるやり方本辞典では、親字はすべて活字体を出しています。しかし、み のと、デパ 1 トの売り場のように初めからかなり細かく分ける方法なさんは、小学校で教科書体を見慣れておいでですから、学習漢 本とあります。わたくしの辞典の漢字の分け方はデパート式に近い字九九六字に限ってこれを親字の下にあげ、見慣れていない、常 でしよう。これに対して、初めから細かく分けすぎるという批評用漢字外の各字については略しました。親字の上下の囲みが【】 をされた方があります。その例に、中華民国で行われる四角号のように黒く出ている漢字が常用漢字、 ( 】のように白ぬきで出 碼オをおあげになりますが、これは少しみなさんには専門的ている漢字が常用漢字外の漢字です。 すぎましようが、漢字の運筆法を十大別して、運筆法によってす常用漢字外の漢字につきましては、世間で広く使われている字 べての漢字を 0 から 9 までの四けたに数字化するのです。この方形をあげ、常用漢字とも正字・俗字・略字・本字・古字・誤字な 法は、創案者が当時の最大出版業者のオールマネイジャーでしたどを別に親字としてあげて↓で説明がしてある字とその場所とが から、かなり広く使われましたけれど、偏旁冠脚を知らない西洋わかるようにしてあります。俗字とは正しい字ではないが、俗に 人にはこの上なく便利であるとはいえ、われわれには、偏旁冠脚世間で使われている字、略字とは画数が少ない、古今の俗用字、 ) による分け方のほうが引きやすいのです。わたくしどもには、マ本字はもともとの字形という意味で、古字に近く、古字とは、古 むね ンションの住人を捜すよりも、いく棟かの長屋の住人のほうが楽代に使われていたと伝えられる字形です。 に訪ねあてることができます。 ただ、正字というものについては少し説明がいります。本来は 戦前から学界で正しい字形と認められている字形で、本辞典でも 四字形の説明 その意味に使います。ところが、当用漢字が制定されましてから ( 三省堂注昭和五十六年十月、常用漢字表が告示されると同時に、当は、当用漢字字体表に出ている字形を正字だと思い込んでいる人 用漢字字体表・当用漢字音訓表は廃止された ) が出ましたが、これは誤りです。印刷所にしても、当用漢字の文 漢字の字形にはいろいろあります。まず、当用漢字字体表 ( こ章ばかり組んでいるところでは、新字体を正字といっているとこ れは字体表というよりも字形表と称すべきです ) にある字で、当ろがかなりありますが、当用漢字以外の漢字の活字がたくさんあ 用漢字として使う字形が戦前使われていた活字の字形と一致しなる印刷所では、はっきりと、新字・旧字以外に、この辞典に「正 い字形が新字体とよばれていますが、これに対して戦前の活字の字」とあげているような字形を正字と正しく区別しています。 字形を旧字体といいます。ところで、字体表に出ている字形はす「肱」 ( 五四七ページ第二段 ) の説明に「俗用略字」とあります。 べて活字体で、書くときは少し違って書いてよいことになっておこれは、労働組合員などがかってに使っている字形であることを り、その字形が小学校の教科書に使われ、したがって教科書体と示します。
◎ 19 Sanseid0 CO. , Ltd. Made and printed ⅲ Japan at the Sanseido Press, Tokyo 本書に使った略記号 親字の項 ↑の上参照せよ 【】常用漢字 ( 文 ) 文語 ( ) 常用漢字外の漢字 「」用例 0 ・別字が同一の字体を 〔〕同一部首内の画数 とった場合の区別 人人名用漢字 熟語の項 〇説明の区切り 【】現代表記 音 ( 】現代表記外 ①⑩音 ( 意味によって異〔日〕わが国では・ : の略 なるばあい ) △親字が下にくる熟語 @ 慣用音 筆順の項 ① ~ ⑥学年配当 ⑩唐音 ( 宋日 ) 〔日〕国訓 専門用語 ( ) 歴史かなづかい 〔仏〕仏教用語〔哲〕哲学用語 〔〕転化した許容の音訓〔教〕教育用語〔法〕法律用語 〔経〕経済用語〔数〕数学用語 親字・熟語の項 〔理〕理科学用語〔化〕化学用語 同義語 〔医〕医学用語〔動〕動物学用語 類義語 〔植〕植物学用語〔文〕文法用語 x 対語 〔図〕図書学用語〔鉄〕鉄道用語 の下現代表記 〔運〕運動用語〔俗〕現代北京語 ↓の下参照せよ
方の字は四画に数えるのですが、活字の「比」の字の偏は明らかにうの半分の音と同じですから、みなさんが音を知っていなくても、 娵五画で、わたくしの「長」の字も、八画ですのに九画にも見えまいちおう見当がっきます。 のす。「之」は、部の三画ですが、二画に数える人が多いでしよう。⑧同一部首同一画数内の親字の配列は慣用の字音の五十音順 による。 本そこで、いっそのこと、曲がったら別に一画に数えても引き出せ るようにくふうしました。もっとも、これはわたくしの創意では 三親字の引き方 なく、書道の大家藤原楚水 ( 喜一 ) 先生が三省堂の顧問であった では、みなさんとごいっしょに、調べたい漢字を、この辞書で ときに示された、ご意見に従ったのです。 ⑥画数がはっきりしないものは、どう数えても引き出せるよはどのようにして引き出すか、考えてみましよう。つまり、親字 の見つけ方調べ方の練習です。 うに重出する。 まず、漢字を左右か、上下かに分けられるかどうか、考えて ⑦筆法で、曲がったら一画に数えても引き出せるように重出 する。ただし、はねる場合 ( 事の縦棒など ) ・湾曲の場合 ( 心みます。分けられたら、左半分 ( 偏 ) か、上半分 ( 冠 ) かが部 の第二画 ) ・運筆の初め ( 旧字の又の末画 ) などは、一画とし首にあるかどうか捜してみます。 例一相 左右に分けると木と目とになります。そこで「木」 て加えない が四画ですから、部首索引 ( 表紙の裏 ) の四画の中で「木」を このように本文に親字を並べると、従来の辞書にあるような引 捜します。ありました。そして、「木 ( 左 ) 部」が四二七ペー きにくい「総画索引」はいりませんが、利用者のご要望を入れ、 ジから始まっていることを知り、それから、「目」が五画で 筆法別の新式の総画索引を加えて、筆順の第一画の筆の運び方か すから、次にわくの外ーーー「柱」とよびますーーーで、【木 ( 左 ) 】 ら検索できるようにしました。また、「音訓索引」は、音か訓 ( 漢 の 5 を見つけます。 5 の下の片かなが字音ですから「相続」 字にあてられたわが国での一定の読みの単語 ) のどれかを知って ということばの「相」の慣用音「ソウ」を見つけ、四三〇ペ いるときに、その音または訓から引くものですから、整理した上 1 ジ第三段に捜しあてました。本文の【相】字の上の「 5 」と で巻末に載せておきました。 いう数字が木部の五画であることを示します ( なお、画数の 同一部首の同一の画数内の漢字の配列の順序については、いろ 変わりめはわかりやすいように太字の数字にしてあります ) 。 いろ考え続けていますが、まだこれなら文句がないというものが しん そのすぐ下の、小学校の教科書でみなさんが見慣れた字体が 見つかりません。筆順法も考えてみましたが、とにかく、昔の清 筆写体です。その下の「もと目 4 」というのは、普通の漢和 国の字書の順を、無意味に受け継ぐよりはまだましだと、戦前の 辞典では目部四画にあることを示します。なぜ古くからの辞 辞書で改良されました、音の五十音順にしました。漢字の音とい 書で目部に入れてあったかというと、「みる」っまり、木に うものは、多くは、估コ・柏ハク・鯉リのように、部首にならないほ
方引がついていても、戦前の利用者と比べて、その利用度ははるから、共通部分を取り出して、共通部分ごとにまとめてあります。 に低いものです。総画索引があっても、同一画数の漢字が多い画この共通部分を部首というのです。 のについては、なかなか捜し出せますまい。熟語についても、音訓 ニ親字の配列の改良 本索引同様、第二字めの五十音順に並べては、今日の利用者には不 便です。 漢字というものの多くは、左右か上下かに二分できます。左右 みなさん ! に二分したとき、左半分を偏 ( ヘン、扁とも書く ) といい、右半 物を買うときのことを考えてみましよう。物があまりたくさん分を旁 ( つくり ) とよび、上下に二分したとき、上半分を冠 ( か あると、目移りがして、なかなかこれはというものが見つかりまんむり ) といい、下半分を脚 ( あし ) とよびます。中には、左右 すまい。だれかが前もって選んでおいたものの中から選び出すとにも、上下にも分けられないものがあります。部首の多くは、偏 か、若い人むきの品物を専門に扱っているお店に行ってみると、 または冠として使われるものです。ところが、中には旁や脚に使 われている部分の部首にはいっている漢字があります。また、分 選びやすいでしよう。 辞書だって同じことです。字数が多いとか、国語辞典で引けるけようと思えば分けられるのに、全体を部首にしたものがありま ような熟語まで漢和辞典にはいっているとかいうことは、みなさす。これは、この字のほかに、この字の全体を偏旁冠脚にした字 んにとっては選び出しにくい原因となります。 があるからです。また偏旁冠脚の中から取り上げるのに、偏冠を この辞書の内容は、みなさんむきの品物の専門店の品物のよう取り出さずに、旁脚を取り出して、その部首に従属させたものが に限定しました。といっても、今はいらないというものを全部省あります。それはなぜかというと、意味の上で、偏や冠よりも重 略すると、まもなく不十分となってしまいます。そのことは、も点が旁脚にある漢字であるからというためです。これでは、みな さんが捜している意味がわからない漢字が捜し出せるはずがあり ちろん考えに入れて、いくらか余分に内容を選択しました。 品物ーーいや、漢字漢語をどのように並べたか、みなさんがたません。 そのうえ、明治・大正の漢和辞典では、昔からのきまりどおり やすく捜し出せるように並べた、その並べ方を説明してみます。 まず、漢和辞典の内容構成について説明してみましよう。 に、イが人部、リ芻が刀部、 +- が心部、キ笋が手部、冫名 今日の漢和辞典というものは、漢字の一字ずつについて、古来が水部、豸笑ノが大部、旁にあるドが邑部、偏にある 5 トが阜 しくら部首 わが国で使っている読み方と漢字のもとからの意味とをしるし、部にはいっていました。これらのイ その説明のあとには、その漢字ーーー親字といいますーーーが頭につ表を捜してもありません。ただ、人・刀・心などの下に小さく付 いている二字以上のことばーーー熟語といいますーーを並べて、そ記されていたにすぎませんでした。しかも一方では、匚と匸、土 の発音と意味とをしるしたものです。親字は、多くの漢字の中かと士、日と日、月と月 ( 肉部にはいっていました ) が二つに分け
( 1 の 方表に入れられた漢字であることを意味します。この人名漢字と常字を「ミ」というかなの代わりに置き替え、「る」を添えることを 用漢字を人名に使う場合はどういう読みでも、役所が出生届けの示します。この添えるかなを送りがなとよびます。 なお、この場合でも、「アイ」は常用漢字表にあるから太字で、 のとき受け付けなければいけないことにきめられています。ですか 本ら、あなたがたの名まえの中には、学校の先生もちょいと読めな「こる」は常用漢字表にないから、細いなみ字で表示しました。表 、むずかしい読み方がありましよう。常用漢字で読みの制限をでは、普通、音を片かな、訓を平がなで書くことになっています しており、その原則から考えるとおかしいではありませんか。本が、漢字に置き替えられる部分を明記するため、便法として本辞 辞典には付録に、人名に用いてよい漢字の読み方を一覧表にして、典では、このように、訓を片かなで表しました。字の横に線を引 弟さん、妹さんの名まえをつけるときの参考にしました。ご両親くという方法もありますけれど、印刷技術上はっきりしないこと にこの部分を見せてあげなさい。きっと喜ばれますよ。 もありますので、この表記法を採りました。みなさん、まちがえ ないでください。 六親字の訓 ( ヒ ) はもちろん旧かなです。その下に、④〇と分けてあるの われわれが普通使う訓とは、昔からわが国で漢字にあてて来た、は、「アイ」と読むときの違った意味を示します。〇の項には、 漢字の一字一字について一定している日本語の単語です。本来〔日〕と入れてあります。のの場合も同じです。これは、漢文では は、漢字本来の意味 ( 義 ) と一致すべきでありますが、一致しなそういう意味では使われず、わが国でのみ使うものであることを い用法もあります。 示します。しかし、漢文に用例がないと断言しえない場合もあり 親字の下の説明のうち、字音の下に、 0@@と列記してあるのますので、こ . の区別はだいたいと思ってください。 が訓義で、意味が違うごとに分類してあります。その順序はだい 「@大臣」には片かながありませんね。これは、相を大臣の意 たい使用度の多いものからあげてあります。訓義が一つだけの場味に使う場合には訓がないからです。「大臣」のわが古いやまと 合にも、それが訓義であることを示すために O を加えました。 @ ことばは「おとど」でしようが、「相」一字を「おとど」と読んだ 以下が欠けているのではありません。 例は普通にはありません。「ー成る」「武ー」は「相」字を使った また、みなさんがわかりやすいように、まず「相」字 ( 四三〇用例です。「ー」のところに「相」字がはいります。 。へ 1 ジ第三段 ) について、具体的に説明しましよう。 別の」が、「相」以外のところにありますから、その説明も、 まず「 O アイ ( ヒ ) 」です。片かなの部分が訓の中で漢字に置きたしましよう。 かえられることをさします。つまり「アイ」と読ませるために「雨」 ( 六一三ページ第三段 ) の訓に「アメ〔アマ・サメ〕」とあ 「相」字を使うときは、「アイ」の代わりに「相」と置き替えればります。これは、常用漢字表で「ウ」という音と「アメ」という よいということです。「@ こる」という場合には、「相」という漢訓のほかに、「雨水・雨具・小雨め」というような転用を認め
5 【立・立】 料シンートウ 5 【牙】 0 ガー 8 ガ 親字の【】は常用漢字、一な常用漢字外、親字の下の漢字は教科書体 【親属】親屬。みうち。みより。親族。親【競歩】かかとを地面につけて速く歩くこ【邪見】昇 O まちがった見方〇よこしまな心歌モトより因他人の言行に関する敬語 L 類との競争、陸上競技の一 0 いじがわるい。人をむごく取り扱う。邪慳「ー嘱」②正しい音楽@ 辞書の下につける 【親愛】彩親しみ、かわいく思う 「競走『邪侒】心がねじけて人にへつらう。侒邪文字名「広ー、爾ノー」 【親署】天子や貴人みずから名をしるす【競奔】ウ先を争って走る 一親睦一親しみ合い仲よくする 【雅文】〇優雅な文章、主として平安時 【競馬】職業選手によって行われる馬の邪枉】辞不正でねじけている。邪曲 【親閲】天子みずからご検閲になる 【竸艇】結ウ職業選手によって行われるモ一邪侈一正しくなく、ぜいたくをする。邪曲代のかな文と、それにならって作った文〇他 「をきそうことと奢侈鴛と 「ためにならない宗教人の文章の敬語〇正しい文章 【親権】づ親權。〔法〕父母が未成年者をーターボートレ 1 ス 保護監督し、その財産を管理する権利義【競演】秀ウ役者が劇場などで演技の優劣【邪宗】裟ウ人の心をまどわす不正な宗教。【雅兄】響友人に対する敬称 親翰一努天子のお手紙。親書 「竸走【邪念】〇まちがった考え。不正な思い〇【雅号】鶚づ雅號。本名以外の風流な別 L 務〔竸漕 ) ウボートレース 名、文人・学者・画家などが用いる 【親藩】釤王室または将軍と同族の諸侯【競輪】職業選手の間で行われる自転車みだらな情念〇不純な考え △奔競、進竸 【邪法】〇民衆にとって悪い法律。よくな【雅会】 4 雅會。詩文・書画・音楽などを 【親臨】天子がその場にお出ましになる い法律。悪法〇世人を害する宗教。邪宗主とする風雅な集まり。雅集 △双親、六親、至親、肉親、両親、老親、里龍】竜〔 5 〕の旧字里龍竜〔 5 〕の正字 【邪計】正しくないはかりごと。悪だくみ【雅名】 4 羽ウ上品なよび名。優雅なよび名 近親、君親、里親、和親、真親、懇親、具競】↓ もと貝〇籟は正字①コウ (D た【邪悪】づ邪惡 O 心がねじけて悪い 0 まち【雅言ン O 正しいことば。正言〇常にいう 三等親、骨肉親 早まう 0 Ⅱ貢Ⅱ。愚か⑩カンが 0 ていてよくない人。悪者。姦悪。姦邪ことば。平素口にしている言〇みやびやかな 龍〔 5 〕の旧字 Ⅱ【端 9 川の名、章・貢二水が合流したもの江西一邪淫】 O 道にはずれてみだらなこと。心がことば。上品なことば。雅語。 X 俗語 具龍篭〔 5 〕の正字毅丁殳Ⅱ ( ) ねじけて法律倫理を乱す〇男女間の不正 ( 雅典テ Athena の音訳、ギリシアの地名 龍』竜〔 5 〕の旧字省の一県名因江西省の異名 竭】↓ 9 【邪教】辞ウ有害な宗教 L な情事【雅味】訝上品なおもむき。風流な味わい 懸慈丁心 里龍〔 5 〕の正字具毅丁殳Ⅱ ( ) 【邪推】名ひがんでわるく推量する。悪ずいり【雅客】加クⅡ雅人を風流な人 具親当親丁Ⅱ ロ ( もと 4 画 ) 一邪智レ邪知。悪い才知。悪ちえ L よう【雅俗】〇上品と下品と。みやびやかと俗 つばいのと 0 風雅な人と卑俗な人と 【邪道】昇 O 道にはずれたこと。人としてして はならない道、よくない道〇不健全なやりか【雅致】上品なおもむき。風流な心もち。雅 〔日〕セり。競売〔日〕セる④竸売にかける。一牙牙丁一 4 ( ) 元 「上品で勢いがある @きそう@〔日〕キオう ( ホふ ) ④勇みたっ@り 1 ( 牙 ) 牙 ( 別 ) の本字 【邪辞】ルャづ邪辭。道にはずれたことば L た趣 【雅健ノ上品でしつかりしている。詩文が きむはり合う強い もと邑 5 〇邪 ( もと邑 4 ) は旧字【邪説】まちがった説。わるい説 具邪】 【雅集】風流な集まり。↓雅会 ①ジャ O ョコシマ。不正。正直でな一邪慝曻道にはずれてわるい。邪悪 ④ い。真実でない。ねじけた。いつわり「ー心、ー ( 邪慳】昇レ邪険。道にはずれて、いじが悪い。【雅道】 O 正しい道〇風雅なこと L 不人情。無慈悲【雅遊】衂ウ O 風流なあそび。詩文・書画・音 一競市】レ競り市。せり売りの市場「を争う臣、ー路」 0 あやしげ 3 病気「風ー」 @悪一邪僻軽不正 楽などの上品なあそび。清遊 0 常につきあう 【競争】ウづ競爭 O 走りつこ 0 互いに優劣人。小人⑩ャ力、助字④Ⅱ耶。疑問の辞一邪穢秀けがれ 【競技】〇運動などのわざを争う 0 ゲーム @決定の辞⑩ョ因ななめ①あまり⑩ジョ@ 【邪魔】 O 〔仏〕仏道にもとり、妨げをすること。ふだんのつきあい ュルャか 「る世の中悪魔 0 さまたげ。さわり。故障 【雅量】 O 胸中がゆったりとしてこせつかな 【競走】ウかけくらべ。かけっこ。走りつこ いこと。寛大な度量 0 大酒のみ、後漢の劉 ョウバイイ竸賣 O 多くの買い手の間【邪世】邪説が行われる世。不正がはびこ△凶邪、正邪、忠邪、破邪 もと隹 5 〇雅 ( もと隹 4 ) は旧字表の二子が、伯雅・仲雅・季雅と名づけ で高い値をつけ合い売買する〇〔法〕差し【邪気】齧づ邪氣 O 病気をひきおこす悪い 8 【雅】 押さえた物件を公式の売買方法により入外気〇ねじけた心。悪気〇不正な気。よこ ガ (D ミャビャか。俗でない。風流。られた大杯を飲みほした故事による 札で処分する「ーー処分に付する」 しまな気もののけ@かぜ。風邪 風雅。上品「ー正、ー宴、ー語」 0 正しい【雅意】秘〇平素の志〇上品な〉風流な > 趣 【競泳】ウ水泳競技の総称、またその一種【邪曲】辞クまちがっていてねじけている。不正 3 常 @事詩経の六刎義の一、王侯貴族の〇他人の気持ちをいう敬語
めました。もっとも、まとめている途中で、数人の助手に内容や 中型版の発行にあたって 表現について意見を求めました。 校正ももちろん助手たちに手伝ってももらいましたが、なにぶ このたび中型版を発行するにあたって、さらに引きやすい辞書とす ん、数年にわたってまとめましたものですから、不十分・不統一 るため、二色刷りとしました。 のところがかなり多く出ました。それらについては、校正中、三 赤色とした主な部分は次のとおりです。 省堂の松村武久君が、献身的に貴重な意見を出してくれました。 ①親字は、「小学校学習指導要領」 ( 昭和五十五年四月から実施 ) に示 されている九九六字の学習漢字。 この点では、おそらく協力者にも匹敵しましよう。感謝します。 これは、義務教育の期間に読み書きともにできるように指導 わたくし名の漢和辞典では、今まで、わたくしの基本的な資料 すべきもの、とされているものです。 によらないで、他の方にはじめから書いていただいたというもの ②右の学習漢字について、常用漢字表に示されている音および訓。 はありません。「三省堂漢和中辞典」でも、わたくしの「新撰漢和 ③右の学習漢字について、配当されている学年の数字 ( ① ~ ⑥ ) 。 辭典」と「明解漢和辞典」とを骨子としてまとめてもらった原稿 ④この学習漢字を検索するために掲げた重出見出し。 にわたくしが手を加えたもので、「携帯漢和中辞典」になおしまし⑤ 筆題圍圀などの標示。 ⑥親字を下に使った熟語の例の標示 ( △ ) 。 ) たときは、わたくしが自分で手を下しました。 大ぜいの手で作ると統一がとれませんが、ひとりでまとめまし⑦画数を示す数字のうち、初出の太字。 なお、本文のほか総画索引・音訓索引などについても、右に準じて ても、長い年月の間には、途中でほかの仕事もしますので、統一 赤色としました。 を失う部分もできたり、思い違いや、書き誤りが出たりするもの 昭和五十九年十一月 です。 利用者のみなさま、お気づきの点はご遠慮なくお教えください ますよう、お願いいたします。訂正して、その後の利用者に少し でもご迷惑にならないよう心がけたいと思いますから。 昭和四十六年桃の節句 長澤規矩也 本書の使い方 三省堂