②期日を先に移す。延期する。例「日をー : べてるこのばり【上り・登り・昇り】〔名〕①地方から都へ行くこきれないのでこさいます。 かとはするものを」〈源氏・蜻蛉〉訳 ( 葬送の ) 期日を延期しと。上京。例「この瀬にも漏れさせ給ひて、御 ( ±) ー・も候 ぶて ( 私Ⅱ薫に知らせてから ) でもなすべきことはするものなのはす」〈平家・ = ・有王〉訳 ( 俊寛ん僧都うは ) このたび要園①「のみ」の語源は「 : ・の身」で、そこから、一つ に ( なぜ、前もって知らせてくれなかったのか ) 。 ( の赦免 ) にも漏れなさって、ご上京もこざいません。 の物事に限るという限定・強調の意味が生まれたとい われる。 ②京都において、内裏の方向 (= 北 ) に向かって行くこ ①気持ちをゆったりとさせる。のびのびとさせる。例「春の ⑦「のみ」の限定・強調は、「のみ」の付いた語句を受け 野に心ーー・べむと思ふどち来 ( こ ) し今日の日は暮れすもあと。例「大宮ーに、北山の辺 ( 9 雲林院翁 ) へぞお る述語まで含めて働くことがある。「竹取物語」の例 らぬか」〈万葉・一 0 ・一公 = 〉訳春の野に気を晴らそうと、仲はしける」〈平家・ = ・小教訓〉訳大宮大路を北の方角に でいえば、「お心だけを乱して」ではなく、「お心を乱して 間同士来た今日一日は、暮れずにあってほしい。「ぬ進んで、北山の辺の雲林院へ ( 逃げて ) いらっしやった。 : シテホシイ、ノ意。 ばかりいて」という意味である。 る〕 2 ・ ) ↓あ 【上る・登る・昇る】〔自ラ四〕 ~ ら がる ① の・ぶか【篦深】〔形動ナリ〕 ( 「篦 ( 。 ) 」は、矢の竹の部分 ) のば・る 川の上流へ進む。さかのほる。例 め・ ) ( 上代語 ) 頭をたれて請い 矢が深く突き刺さったさま。例「山田の次郎が放っ矢に、「船 ? ー・ること、いと難 ($) し」〈土佐・二月七日〉訳の・む【祈む】〔他マ四〕奩・みむ 畠山、馬 ( 純 ) の額をーー・に射させて」〈平家・九・宇治川先船が上流へさかのほるのが、 ( 川の水が少ないので ) ひどくむ願う。祈る。例「我妹子 ( ) にまたも逢 ( あ ) はむとちはや ぶる神の社 ( ) をーー・まぬ日はなし」〈万葉・一一・ = 六六 = 〉 陣〉訳山田の次郎が放った矢に、畠山 ( 重忠 ) は、 ( 自分ずかしい。 の乗った ) 馬の額を深々と射られて。 高い所へ移る。上にあがる。例「男、縁 9 にーー・りて訳あの娘にもう一度逢いたいと神の社に祈らない日はな のヘ上代の打消しの助動詞「なふ」の連体形↓なふ ( 助居ぬ」〈大和・一 QIII 〉訳男は、縁の上にあがって座った。 ①地方から都へ行く。上京する。例「十三になる年、のーもーせ当【野も狭】【連語〕野も狭いほどに。野原一面。 のーベ【野辺】〔名〕野のあたり。野原。例「君のみやー・に ・らむとて九月 ( ) 三日門出 ($ ど ) して」〈更級・かど例「秋くればーーに虫の織り乱る声の綾 ) をば誰か着るら 小松を引きに行く我もかたみに摘まむ若菜を」〈後撰・春で〉訳 ( 私が ) 十三歳になる年、上京するというわけで九月む」〈後撰・秋上〉訳秋が来たので野原いつばいに虫があや 上〉訳あなただけが野辺に小松を引きに出かけるのですか。三日に門出 (= 出発ノ前ニ他所ニィッタン移ルコト ) をしなして鳴いているが、その鳴き声で織った綾の着物をいった 私も一緒に籠 3 に若菜を摘もっと思いますのに。 て。 い誰が着ているのだろう。 せ・せ・す・する・ ) ( 「のほ のば・す【上す・登す】、〔他サ下二〕 ~ すれ 日【野面】〔名〕 ( 日の意の誤解から ) 野外。のづら。野原 0 ( 宮中や貴人の所へ ) 行く。参上する。例「一品 ( ) る」の他動詞形。近世以降、四段にも活用する ) ①高いの宮ゃー・らせ給ひけるに」〈大鏡・三条院〉訳一品の宮一面。例「縒 ( よ ) られつるーーの草のかけろひて涼しく曇る 所へあがらせる。登らせる。例「高き木にーー・せて梢 ( ) が ( 三条天皇の ) 御前に参上なさった時に。 タ立の空」〈新古今・夏・ = 奎〉訳 ( 夏の強い陽射しにし を切らせしに」〈徒然草・一 0 九〉訳高い木に登らせて梢を切 3 地位が高くなる。昇進する。例「大方 ( ) 上 (±) なきおれて ) 縒られたようになった野原一面の草が ( 雲のため ) か らせたが。 位にーー・り、世をまつりこち給ふべきこと」〈源氏・澪標〉けって涼しく曇るタ立の空よ。 川の上流へ行かせる。さかのほらせる。例「真木のつまで訳大体 ( 光源氏が ) 無上の帝位にまでのほり、天下を統のーもり【野守】〔名〕禁猟の野の見張りをする人。野の番 を百 ( じ足らず筏か ) に作りーー・すらむ」〈万葉・一・五 0 長治なさるであろうこと。 人。例「あかねさす紫野行き標野 ( ) 行きーーは見すや 歌〉訳立派な木 (= ココハ檜 ) の材木を筏に作って、 〔副助〕矚続主語や連用修飾語などに付く。 君が袖 3 振る」〈万葉・一・ = 0 〉訳紫草の生えている野原 ーのみ IJ かのほらせているのだろう。「百足らす」ハ「筏」ニカカ 【限定】一つの物事に限るという意味で、限定したを行き、一般が立ち入りできない野を行って、野守が見る ル枕「 0 り強調したりする意を表す。・ : だけ。・ : ばかり。例「何事ではありませんか、あなたが袖を振っているのを。 ① ( 都または貴人の所へ ) 呼び寄せる。上京させる。参上さも辺土は賤 ) しく、かたくななれども、天王寺 ( わ ) の舞のーやき【野焼き】〔名〕春の初めに、若草がよく生えるよっ せる。例「西国 ( ) より急ぎ人をーー・せて」 ^ 平家人・山楽 ( ) のみ、都に恥ぢず」〈徒然草・ = = 0 〉訳何事につけに、野山の枯れ草を焼くこと。野火。コー・などするころ 辺地は下品で、見苦しいものだけれと、 ( 大阪の ) 天王寺のの、花はあやしう遅きころなれば」〈蜻蛉・下・天延一一年〉 門御幸〉訳西国から急いで人を上京させて。 日 〔他サ四〕 ・ ) 下心をもって口先でいい気分にさせ舞楽だけは、都にひけをとらない。例「御心 ( ) をのみ惑訳野焼きなどする頃で、 ( 例年と違い ) 花の咲くのが遅い る。おだてる。例「「男と見込んで頼む』とーー・せば、こいつの ) はして去りなむことの、悲しく耐へがたく侍るなり」〈竹頃だったので。 のなー・されて」〈近松・丹波与作待夜の小室節・中〉訳取・かぐや姫の昇天〉訳 ( 竹取の翁夫婦の ) お心を乱しの , ら【野ら】〔名〕 ( 「ら」は接尾語 ) 野。野原。例「里は 「男と見込んで頼む」とおだてると、こいつがおだてられて。 てばかりいて ( 月の世界に ) 帰ってしまうことが、悲しく耐え荒れて人はふりにし宿なれや庭も籬 ( ) も秋 ? ーなる」 ② ②
大君の命かしこみ愛っしけ・ 集大君黯の命畏 3 しみ大舟の・ 葉王は・ 凡ならば : ・ 大橋の・ 索大船羂に真楫しじぬき大君の・ 句大船に真楫しじぬきこの吾子を : ・ 俳大船の思ひ頼める・ 大船の艫にも舳、にも・ ロ大船を・ おほほしく 大宮の・ おばろかの・ おもしろき・ 母父も・ 思はぬを・ 思ひ遣やる・ 思ふ人・ 面忘れ : 妖の・ 斯かからむと : 燕子花黯っ衣に摺すりつけ : かきつはた佐紀沼の菅を : かくばかり面影のみに かくばかり恋ひつつあらずは 斯かくばかり恋ひむとかねて : 香しき・ 恐 3 しきや・ かしこみと かしふ江に : 春日野嬲に・ 春日野の・ 春日山 3 % : 霞立っ : ・ 霞ゐる・ 風に散る・ 風のきとの・ : : まこ風吹かぬ 風をいたみ・ ・ : ます ( 坐 ) : なびく 風をだに・ かっ か 貌鳥の・ ・ : やく ( 焼 ) かみつ あそ やま かみつ いな けの かみつ けの かみつ しまどーー : え①上っ瀬に : : およづれ神代より・ : かかり神風の・ 、かむ せ不・り 、かむ かも からこ かゞ いつく 刈かり菰いの・ かり きの きの め目 り日 ①① , ①①①の① , の②巴①①② 0 ①ち①く①日者①り①④げ① ・ : な ( 名 ) ②君がため・ : しかすがに君が行く海辺 2 みの宿に : いたぶる■君が行く道の長手がを・ : ともし 0 君なくは ・ : わたつみ①君に恋ひ・ : てこな君により・ ・ : とふ連語君待っと・ ・ : はたもの②君を待っ・ ・ : うつ①草枕旅去いにし君が・ : か代名草枕旅にし居をれば : : ねもころ日草枕旅の翁鰭と・ ・ : しぬ①草枕旅の丸寝の : ・ = な終助 ( 上代璢 ) ①草枕旅行く夫・なが・ : : かほとり雲隠る・ : あぜ悔しかも : : よ格助 0 苦しくも暮れ行く日かも・ : がヘ苦しくも降り来る雨か : : まぎらはし①紅饂の花にしあらば・ : まく ( 枕 ) ②紅饂の八入呷の衣 : ・ : ありがよふ紅は : なにしか今日もかも明日香の川の : : うったへに ① 今日もかも沖っ玉藻いまは : . いはほムマ日よりは : : ひもろきここにして家やもいづち : よぶこどりここにして筑紫いくやいづく : かむなび心なき : : しらにむには燃もえて思へど : : からころも むには亡心るる日ひなく : : からころも 心には忘れぬものを・ 日 : っゅ日要園心をし・ : かりこ、も・木亠局だノ、は : おそし言清く・ : まどほし②こと放さけ・は : : あをくも言繁凝き に助動 ( 上代語 ) 今年行く・ : こそ係助①⑨言霊の・ : へだっ 言出しは 九三四 : かむ : あが : こまっ : すでに ・ : すだれ : あまをとめ : かりこもの : おもほす ・ : ろ問投助 ( 上代東国方言 ) : いは ( 家 ) ・冫、、もカノ、る : ことごと日 ( 尽 ) : あかなくに 日① : くれなゐ : しほ : つるばみ : ゅふさらず : いでたっ やも■② 、① まつる受① ・ : か係助・②⑨ ・ : かた ( 方 ) ・ : もゆ ( 燃 ) ・ : ひ ( 日 ) : さまねし : こと一 : ことしげし : かた ( 肩 ) : ことだま ・ : をやまだ ゞ刀 3 ①②①げぬ①
自発 受身 吏ル又 主要助動詞一覧表 種類語未然形連用形終止形連体形己然形命令形 の型 四段・ナ変 る る れ れ るるるれれよ下ニ型・ラ変の未 右以外の 未然形 四段・ナ変 ー自発 栗 ( こ食 ( は ) めばまして偲 ( 巴はゆ ゅゆるゆれ 0 下ニ型・ラ変の未 ( 万葉 ) 2 受身 汝 ( な ) は我に欺かえっ ( 古事記 ) 3 可能 ( デキル ) 妹 ( じを思ひ眠 ( この寝・つえぬに ( 万 右以外の 「らゆ」は可能の用例だけ葉 ) が存在する。 未然形 汝が巻かせて持たせたる旗、揚げさ 四段・ナ変ー使役 ( セル・サセル ) すするすれせよ下ニ型・ラ変の未 せよ ( 平家 ) 2 尊敬 ( ナサル ) 山人の我に得しめし山づどぞこれ ( 「しむ」は上代から用い、平 ( 万葉 ) 安ては主に漢文脈に用い 御覧じて、いみじう驚かせ給ふ ( 枕 右以外の 「す」「さす」は平安以夐 . イの和草子 ) 未然形 文に用いる 天地四方を射させらる ( 平家 ) ) ・尊敬の場合は、他の尊敬語山﨑にて出家せしめ給ひてけり ( 大 どど↓ 0 に用・ 単独ては用 す ( 上代語 ) き ( せ ) ゅ ( 上代語 ) ( 上代語 ) す しむしめしめしむしむるしむれ さすさせさせさすさするさすれさせよ下ニ型 らるられられらるらるるらるれられよ下ニ型 らえ 0 せ え 0 せ え す 0 す 0 しか 0 特殊型 0 せ しめよ せ四段型 ( しめ ) 0 下ニ型 下ニ型未然形 四段・サ変 の未然形 連用形 カ変・ サ変に は特殊 接続主な意味・用法 ー自発 ( 自然ト・ : レル ) 2 受身 ( レル・ラレル ) 3 可能 ( デキル ) 4 尊敬 ( ナサル ) ・自発・可能の場合、命令形 尊敬・親愛 ( ナサル ) 経験的過去 ( タ一 ・未然形「せ」はせば・ : まし」 の形にのみ用い、サ変説も ある。 この岡に茱摘ます児 ( ・ - ) ( 万葉 ) 鬼のやうなるもの出で来て、殺さむ どしき ( 竹取 ) 世の中に絶えて桜のなかりせば ( 古今 ) 人知れずうち泣かれぬ ( 史級 ) 知らぬ国に吹き寄せられて ( 竹取 ) 抜かんどするに、大方抜かれず ( 徒然 ) いづれの船にか柬らるべき ( 大鏡 ) 九一四
衣のになほ及 ( し ) かめやも」〈万葉・一〈・四一 0 九〉訳美しいを、そこはかとなく書きつくれば」〈徒然草・序〉訳すること ち 要点上代の刀剣はすべて諸刃 (= 両刃 ) であり、大紅色はあせるものである。ドングリで染めた地味な色のなれもなく退屈なのにまかせて、一日中、硯に向かって、心に浮 た かんでくるつまらない事を、とりとめもなく書きつけてみ ? )0 刀の意の「たち」と同義であったので、「つるきの太刀」親しんだ衣 ( つまり妻 ) には、やはり及ぶはすはない。 ②一人寂しく物思いに沈むこと。また、しんみりと寂しい気 「つるき太刀」ともいう。後に片刃の刀剣ができて、こ⑥ ( 平安時代に ) 四位以上の人の袍の色。また、喪服の る 持ち。例「山里のーー、ましていかにと思しやるは、いとほし れを「かたな」といい、初め小刀に作ったので、平安時色。「にびいろ」とも。 っ けれど」〈源氏・薄雲〉訳 ( 嵯峨お ) 山里の ( 明石の上の ) 代の辞書「倭名類聚抄はい」では、ト / 刀を「かたつるーぶくろ【弦袋】〔名〕予 な」といって、「たち」の対義語としている。さらに、片備の弓弦騁を巻いておく道 寂しさは、ましてどんなにか ( 寂しかうつ ) と ( 光源氏が ) 思い くやりなさるにつけても、気の毒ではあるが。娘ヲ手離シタ 刃の大刀もでき、これも「かたな」というので、「たち」と具。皮や藤づるで輪の形に作 ぶ明石ノ上ノ気持チヲ思イヤル光源氏。 同義語になる。「つるき」を身に着けることを「佩はく」と り、太刀などにつける。「弦 る 日〔副〕 ( 近世の用法 ) しみじみ。つくづく。例「顔をーー眺 いい、刀剣の尊敬語は、身にお着けになるものの意で巻 ( ) 」とも。 っ むれば」〈近松・冥途の飛脚・下〉訳 ( 孫右衛門が ) 顔をつ 「みはかし」という。「つるぎ」は腰につり下げて着用し鶴屋南北 C な ) 〔人名〕初 くづく眺めるので。 た。このため、「つりはき」が転じて「つるき」になったとす代から五代目までいるが、「大 る説もある。 南北』と称された四代目が有名。江戸後期の歌舞伎台 本の作家。一七五五年 ( 宝暦五 ) 5 一八二九年 ( 文政要点下二段動詞「連る」の連用形を重ねた語で、も つるぎーたち【剣太刀】目〔名〕 ( 同じ意味の語を重ねて強十一 I)O 舞台技巧に優れ、奇抜な着想で知られるが、生とは、ある状態が長々と続くことの意。「古今集」の 調した形。「つるぎのたち」とも ) 諸刃の大刀。例「丈夫世話物わと言われる町人社会を描いた現実的、写実的歌の「つれづれのながめにまさる涙川」 ( 訳長々と続く ( ) の男さびすとー、腰に取り佩 ( は ) き」〈万葉・五・合四長な作品を創始する。代表作に「東海道四谷怪談』「於染長雨のために川の水が増えるように、所在ない物思い で涙が流れる ) の「つれづれ」は、長く続く意と日①の 歌〉訳立派な男子が男らしく振る舞うというわけで、諸刃久松色読販翳翳う』がある。 意とを言い掛けている。基本的には、することもない、 の大刀を腰に着け。 つれ【連れ】〔名〕 ( 動詞「連る」の連用形の名詞化 ) ①一 日【枕詞〕「身」「名」「とぐ」などにかかる。例「常世 ( 址こ ) へ緒に行く者。同行する者。道づれ。例「いつも持って上ひまな時間が、多くは孤独な状態で、長く続き、何か に住むべきものをーー汝 ( な ) が心から鈍翁 ) やこの君」〈万の ) る時分は、ー・もあまた【」ざったが」〈狂言・餅酒〉訳物足りない、または寂しい気持ちがすることをいう。中 葉・九・一茜一〉訳不老不死の世界に住んでいられたのに、例年 ( 鏡餅みを ) 持って上京する時には、道づれも多くお世以降、漢字表記を音読した「とぜん」も用いられ る。 自分自身の心のせいで何と愚かなことよ、このお方は。囲いでだったが。 浦島伝説ヲ詠ンダ長歌ノ反歌。 ② ( 普通は「ツレ」と表記 ) 能・狂言で、主人公のシテや相参考『枕草子』の「つれづれなるもの」の段では、「所 手役のワキに連れ添う役柄。前者をシテヅレ ( 単にツレと避 ( さ ) りたる物忌の ) み。馬下りぬ双六 ( ) 。除目 つるーはぎ【鶴脛】〔名〕①鶴のすね。例「汐越 ( ) ゃー・ (E も ) に司 (2 か ) 得ぬ人の家。雨うち降りたるは、まいて 濡 ( ぬ ) れて海涼し」〈奥の細道・象潟〉訳ここ汐越では、も ) 、後者をワキヅレという。 下り立っている鶴の長い脚が、寄せる波に濡れていて、いか ① ( 「そのーー」「このーー」などの形で ) 程度。たぐい。例「そ いみじうー・なり」 ( 訳よそへ避難して物忌みをするこ と。駒の進まない双六のゲーム。除目 (= 地方官ノ にも涼しそうな海の景色である。「汐越」ハ地名。季語のーーな事を言うて」〈狂言・千切木〉訳そのような ( つまら ハ「涼し」デ夏。 任命式 ) で官職が得られなかった人の家。雨が降って ーない ) ととを言って。 いる日は、まして大変退屈である ) とある。 ② ( 鶴のすねのように ) 脚を長く露出すること。また、そのす一つ . れ「づれ【徒然】〔名・形動ナリ〕①することがなく単調 ね。衣が短かったり、すそをたくし上げたりした姿。 な状態が続いて、退屈なこと。所在ないこと。例 r- ー・わぶ さつるばみ【橡】〔名〕 ( 上代には「つるはみ」 ) ①ドングリの古る人は、いかなる心ならむ。まきるる方なく、ただ一人あるの徒然草 ( 2 ) 〔書名〕鎌倉末期の随筆。吉田兼好著。成 ぐ名。例「恐ろしげなるもの、ーーのかさ」〈枕草子・恐ろしげみこそよけれ」〈徒然草・芸〉訳することもなく ( 話し相手も立は一三三〇年 ( 元徳一 l) 頃か。序段のほか一一百四十三 れなるもの〉訳恐ろしい感じがするものは、ドングリのかさ。 なく ) 所在ないことを寂しく思う人は、いったいどんな考えを段から成り、出家隠遁した作者が、心に去来することを ②染色の名。ドングリのかさを煮にた汁で染めた色。濃いね持っているのだろう。他の事に心を奪われるようなこともな思いつくままに述べたものとされるが、内容は、自然観照・ 。例卩ー・なるままに、芸術論・人生論・処世訓などから、故実の考証・伝え聞い っすみ色。また、その色の衣服。⑧ ( 上代に ) 身分の低い人のく、た 0 た一人でいるのが一番い 衣服の色。例「紅 ( ) は移ろふものぞ , ーの馴 ( な ) れにし日暮らし、硯 ( ) に向かひて、心にうつりゆくよしなし事た説話に至るまで、すこぶる多方面に及んでおり、仏教・儒 五四七 2
マテノ間、座禅スルコト。 ー・」〈謡曲・安宅〉訳なんだと、勧進帳を読めというのとよーのーあかり【豊の明かり】〔名〕 ( 「とよ」は接頭語。 考は、上代には下一一段にも活用した。ただし、用例か。囲「勧進帳」ハ、寺院ニ寄付ヲ勧メル趣意書。 「あかり」は赤らむ意 ) ①酒を飲んで、顔が赤くなること。例 もは連用形だけである。 「平らけく安らけく聞こし召して、 に明かりまさむ」〈祝 とやかくやーと〔副〕あれやこれやと。何やかやと。例「ーー とも・に【共に】〔連語〕 ( 名詞「とも」 + 格助詞「に」 ) ・ : と思 @ しあっかひ聞こえさせ給へるさま、あはれにかたじけな詞・大嘗祭〉訳一」ゆっくりくつろいで ( お食事にお酒を ) 召 いっしょに。例「卯 ( う ) の花のーーし鳴けばほととぎすいやめし」〈源氏・葵〉訳あれやこれやと心配してお世話申し上けし上がって、赤い顔におなりになっているであろう。 づらしも名告り鳴くなへ」〈万葉・一〈・四究一〉訳卯の花なさる様子は、感動的でありがたくもったいない。囲葵 ②宴会。特に、宮中で行われるものをいう。饗宴う。例 が咲くのといっしょに鳴きはじめるので、ホトトギスはなおさらノ上ノ死後、精進デ光源氏ハヤセタ。 「この後、ーーし給はむとする時、氏々 ( ) の女 ( ) どもみ すばらしい。自分の名を名告るように鳴くだけでなく。 と・やま【外山】〔名〕人里に近い山。連山の麓」も近くにあな朝参 ( ど ) りしき」〈古事記・下・仁徳〉訳この後、饗 考上代には、例のように、「・ : の共に」という形がある山。例「高砂 ( ) の尾の上 ( () の桜咲きにけりー・・のか宴をなさろうとする時に、諸氏族の女性達がみんな宮中に る。 すみ立たすもあらなむ」〈後拾遺・春上〉訳あの遠く高い山参内した。 ともーのーみやっこ〔名〕【伴の造】上代、専門の職業の峰の桜が咲いたことだ。花が見えなくなるので、近い山の ( 「豊の明かりの節会 ( ) 」の略 ) 新嘗祭の翌日、 で朝廷に仕える「品部 ( ) 」を統率する長。また、その家霞よ、つか立たないでほしいものだ。注『百人一首』所天皇がその年新しくとれた穀物を召し上がり、群臣にも賜 柄。中臣部とを率いて祭祀いいに当たった中臣氏、物部収、大江匡房ノ作。 わる公式の宴。 ( 季・冬 ) 例「宮人はーーに急ぐ今日 ) ・大伴部をそれぞれ率いて軍事を司った物部氏・大伴とよ【豊】〔接頭〕豊かなことや美しいことをほめたたえる意を日影も知らで暮らしつるかな」〈源氏・幻〉訳大宮人達は 氏などがその代表。 表す。「ーー葦原 ( ) 」「ーー旗雲 ( ) 」など。 豊の明かりの節会に急いで行く今日を、私は日の光も見す 日【伴の御奴】主殿寮咾の下役人。庭掃除や節会とーよ〔連語〕 ( 格助詞「と」 + 間投助詞「よ」。多く文末にに ( 閉じこもって ) 一日を過【」してしまったことだよ。 の灯火などを担当した。 用いる ) ① ( 「と」の下に「言ふ」「思ふ」などが省略された気考③は「五節会 ( ) 」の一つで、陰暦十一月の中の ともーのーを【伴の緒】れ〔名〕上代、専門の職業に従事し持ちで ) 念を押す意を表す。 : ・と思うよ。 : ・ということだぞ。辰の日に豊楽殿くで行われ、「五節の舞」が演じられ た部族。また、その首長。普通は、朝廷に仕えたものをい例「まことは、うっし心かー・。たはぶれにくしや」〈源氏・紅る。 う。例「靫 ( 3 ) 掛くるーー広き大伴 ( 謐 ) に国栄えむと月は葉賀〉訳実際のところ、正気の沙汰ですか。 ( うつかり ) 冗とよーはたぐも【豊旗雲】〔名〕 ( 「とよ」は接頭語。「旗」 照るらし」〈万葉・七・一 0 〈六〉訳靫を背負って朝廷に仕える談もできない。 は、たなびいているさま ) 美しく大きくたなびいている雲。例 部族の多い大伴の地に国が栄えるしるしとして月は照って②強い感動を表す。 : ・だよ。 : ・だなあ。例「明日 ( う ) の「わたつみのーーに入り日さし今夜 ( ) の月夜 ( ) さるけか いるらしい。第二句マデハ、地名「大伴」ヲ導ク序詞。 いくさには、一定 ( 発ぢ ) 討たれなん」覚ゆるーー」〈平家・りこそ」〈万葉・一・一五〉訳大海原の上に美しくなびいて 大伴氏ハ軍事ヲ司ル氏族。 いる雲にタ日がさしているのを見た。今夜は月もさわやかに 卆小宰相身投〉訳明日の合戦では、 ( 私は ) 必ず討たれ とーや〔連語〕 ( 格助詞「と」 + 係助詞「や」 ) ①「・ : と」の部るだろうと思われるのだよ。 照ってほしいものだ。 分について疑う意を表す。 : ・と・ : か。 : ・というのか。例「さとよーあしはら【豊葦原】〔名〕 ( 「とよ」は接頭語 ) とよみ【響み】〔名〕 ( 動詞「とよむ」の連用形の名詞化。後 すがにあはれー、思ひけむ、行きて寝にけり」〈伊勢・一四〉訳 ( 葦が豊かに生い茂った野原の意で ) 日本国の美称。例世には「どよみ」とも ) 鳴り響くこと。騒ぎ。例「ーーになり そうはいうものの (= 詠ンダ歌マデモガ田舎ッポイトハイウモノ「神代 ( ) より三種翁く ) の宝伝はりて - ーのしるしとぞなて、まかり出 (') でにけり」〈徒然草・一昊〉訳 ( つまらない ノ ) やはり ( その田舎の女を ) いとしいと思ったのだろうか、る」〈玉葉・神祇〉訳神代から三種の神器 (= 八咫鏡答えだったので ) どっと ( 大笑いに ) なって、 ( 恥をかいた医師 ( 男は ) 行って共寝をしたのだった。 ) ・八坂瓊曲王ノ・天叢雲剣 ) ク ) が伝わって日は ) 退出してしまった。 ② ( 説話・物語などの終わりの部分に用いて ) 伝聞、あるい本の国の象徴となっている ( ことだ ) 。 とよ・む【響む】〔自マ四〕舛 : ・〉 ( 「どよむ」とも ) あた は不確かな断定を表す。・ : ということだ。・ : とさ。例「昔要点上代には、日本国の美称として「豊葦原の中つ国」りに鳴り響くほどの大きな音を立てる。大声を立てて騒ぐ。 はかかる力ある相撲人 ( ひ ) もありけりとなむ、語り伝へた「豊葦原の瑞穂 (* づ ) の国」もよく用いられる。 例「おびたたしう鳴 ? ー・むこと、かの地獄の業風 ( ) な るー、」〈今昔・ = 三・ = = 〉訳昔はこんな力の強い相撲取ど・よう【土用】〔名〕陰暦で、立春・立夏・立秋・立冬のりとも、これには過ぎじとぞ見えし」〈平家・三・辻風〉訳 む りがいたと、語り伝えているということだ。 前、それぞれ十八日間をいう。一般には、立秋前十八日 ( 辻風が ) ひどく大きな音を立て ( てい ) ることは、あの地獄で と 3 ( 近世の用法 ) 相手に問い返したり、確かめたりする意を間の夏の土用をいい、暑さ負けを防ぐため、鰻を・あんころ吹くという大暴風でも、これ以上ではないと思われた。 め・め・む・むる 表す。 : ・というのか。例「なにと、勧進帳 ( ) を読め餅などを食べる風習がある。 ( 季・夏 ) むれ・めよ 日〔他マ下一一〕 ~ ・ ) 鳴り響かす。例「春過きて 五七七 3
けらし 皮製の鞠 : を皮製 っと ) 通り過ぎられた ( ことがあった ) であろうあたりであるけれ後朝廷に申告し、勘解由使の審査を受けた。 すの沓をはいた足の甲 けら〔過去の助動詞「けり」の古い未然形〕上代に「けらす みで蹴り上げて、落とさ ② ( 疑問語とともに用いられて ) 過去の事実について、時・や」「けらく」などの形で用いられたが、平安時代以降はほと ないように受け渡しす 場所、または原因・理由・方法などを推量する意を表す。んど用いられなくなった。 る。大化改新のころ ・ : たのだろう。 : ・だったのだろう。例「かう長かるまじきにてけらーく【連語〕 ( 助動詞「けり」の古い未然形「けら」十準 中大兄皇子斃じカ は、など、さしも心に染 ( し ) みて、あはれと覚 ( え給ひけ体助詞「く」 ) : ・したこと。 : ・したことには。例「世間 ( ) 催したという記録があ 。けむ」〈源氏・タ顔〉訳このように長く続くはすのない ( 私との苦しきものにありけらく恋の堪 ( た ) へずて死ぬべく思 ( も ) り、以後貴族や上級 タ顔との ) 因縁であってみれば、なぜ、それほどまでに ( 私の ) へば」〈万葉・四・七一一一◇訳 ( 恋というものは ) 世の中で ( とりわ 武士の間で行われ、 心に深くしみて、 ( タ顔が ) かわいいと思われたのだろう。け ) 苦しいものであったのだなあ、恋に堪えきれすに死にそうな 近世まで続いた。 急死シタタ顔ヲ思ウ光源氏ノ言葉。「覚え給ひ」ノ「給ひ」ことを思うと。例「其 ( そ ) が言ひけらく、 : 』と言ひて けみ・す【閲す】 、タ顔ニ対スル尊敬ヲ表ス。 詠める歌」〈土佐・一月二十九日〉訳その女が言ったこと 〔他サ変〕 ~ す・ 3 ( 連体形で体言を修飾して ) 過去の事柄についての伝には、「・ : にと言って詠んだ歌。 せよ〉検閲する。調べる。よく見る。例「疑ひなき千歳 ( ) 聞・婉曲きの意を表す。 : ・だったそうだ。 : ・たとかいう。考上代特有の言い方で、平安時代以降は、「土佐日 の記念 ( た ) 、今眼前に古人の心をーー・す」〈奥の細道・例「葛飾 ( 翳 ) の真間の井を見れば立ちならし水汲 ( く ) まし記』の例のような用例がわずかにあるだけである。 〔助動特活〕 ( 過去の助動詞「けり」の形容詞 壺の碑〉訳 ( この壺の碑こそは ) まきれもなく千年前のけむ手児奈 ( ) し思ほゅ」〈万葉・卆一合〈〉訳葛飾のナ、りし 様子をさながらに伝えている遺跡であって、今目の前に古真間 (= 千葉県市川市ニアル ) にある井戸を見ると、ここを 形 ) 接続活用語の連用形に付く。 人の心を見る思いがする。 平らにするほどいつも行き来して、水を汲んでいたという手未然形連用形終止形連体形已然形命令形 けーみやう【仮名】〔名〕通称。俗称。↓じつみやう児奈 (= 伝説上ノ美シイ少女 ) のことが思われることだ。 けらし 〇〇けらし けらし〇 ( けらしき ) 例「千本の卒塔婆 ( 豊 ) を作り、・ ・実名、一一首の参考未然形の「けま」は、上代に準体助詞「く」に連なる 歌をぞ書いたりける」〈平家・ = ・卒都婆流〉訳 ( 康頼入「けまく」の形で現れるだけである。 【過去推定】①過去の事柄について根拠に基づいて推定 道は ) 千本の卒塔婆を作って、・ する意を表す。 : ・たらしい : ・ ( それに ) 通称と実名、けめ〔過去推量の助動詞「けむ」の已然形〕けむ ・ : たようだ。例「タ去れば小 ( そして ) 一一首の歌を書いたのである。 けやけ・し〔形ク〕①際立って異様である。不快なほど変わ倉の山に鳴く鹿瓮 ) は今宵 (? よ ) は鳴かす寝 ( い ) ねにけら ナ、む〔助動四型〕一接続用言および助動詞 ( 「けり」「め「ている。例「その折にこそ、無心 ( ) なるにや、もしは、しも」〈万葉・〈・一一〉訳夕方になると ( いつもは ) 小倉の り」「なり ( 推定・伝聞 ) 」「【」とし」などを除く ) の連めざましかるべききははーー・う、などもおばえけれ」〈源氏・胡山で鳴いている鹿は今夜は鳴かない、もう寝てしまったらし 用形に付く。 蝶〉訳 ( 恋文に対して、女が返事をよこさない ) その当座いな。」 例「時ならで今朝 G) 咲く花は夏の雨に萎 @ れに 未然形連用形終止形連体形已然形命令形 は、 ( その女は ) 分からす屋だろうかとも、あるいは、つまらぬけらし匂 (#) ふほどなく」〈源氏・賢木〉訳時期はずれに 身分の女は異常なのだ、などとも感じたものだ。 今朝咲いたユリの花は、夏の雨に打たれてもうしおれてしま ( けま ) 〇けむけむけめ〇 際立っている。例「末代には、ーー・き寿の ) もちて侍ったらしい、美しく咲きほこる間もなく。 ② 【過去推量】①過去の事柄を推量する意を表す。 : ・ただる翁 ( ) なりかし」〈大鏡・道長・下〉訳末の代である今 ( 近世の用法 ) 「けり」とほとんど同意に用いられ、婉曲 ろう。 : ・だったうつ。例「古 ( いに ) へにありけむ人も我が【」の世では、特別に長い寿命を保っている老人ですよ。 いよまたは余情の気持ちを添える。 : ・だなあ。 : ・たことよ。 とか妹 ( い ) に恋ひつつ寝 ( い ) ねかてすけむ」〈万葉・四・四九七〉 3 ( 不快になるほと ) 際立ってはっきりしている。例「人の例「まことに愛すべき山の姿なりけらし」〈芭蕉・鹿島紀 訳昔の時代に生きた ( であろう ) 人も、私のように妻を慕い言ふほどの事、ーー・く否 (å) びがたくて」〈徒然草・一四一〉行〉訳 ( 筑波を山は ) 本当に愛すべき山の姿だなあ。 ながら、寝ることもできないでいたことだろうか。「寝 ( い ) 訳 ( 都の人は、人情があるため ) 人が頼んだようなことを、き ねかてずけむ」ノ「かて」ハ、可能ヲ表ス補助動詞「かっ」ノ未つばりと拒否しにくくて。 要点推量の助動詞「らし」の場合と同じく、推量の 然形。「ず」ハ、打消シノ助動詞「す」ノ連用形。上代デげ・ゅ【解由】〔名〕 ( 「解由状兊や ) 」の略 ) 国司が交替する根拠になる事柄が示されていることが多いが ( 『万葉 ハ、コノョウニ「す」ニ付ク場合ガアッタ。例「来 ( き ) し方も時、事務を完全に引き継いだことを証明して、新任者から集」の例参照 ) 、平安時代以降は根拠が示されない 過ぎ給ひけむわたりなれど」〈源氏・タ顔〉訳過去にも ( き前任者に引き渡す文書。前任者は、これによって、帰京ことも多くなる。また、はっきりした過去の事実に「けら 二九五 ②
「や」 ) 願望の意を表す。・ : があったらなあ。 : ・であったらな や草が芽を出す。生じる。例「。ー・づるも枯るるも同じ野染めるのを例とした。後世の水引幕に当たる。 ぎ辺の草いづれか秋にあはで果つべき」〈平家・一・祇王〉訳も・がさ【疱瘡】〔名〕天然痘。急性伝染病の一つで、あ。例「父母も花にもがもや草枕旅は行くとも捧 0 ご え芽を出すのも枯れるのも同じ野原に生える草である、どちら発疹を生じて高熱を発し、治った後もあばたが残る。例て行かむ」〈万葉・ = 0 ・四 = = 五〉訳お父さんもお母さんも花で が秋にあわないですむだうつか ( 私達は二人とも必す飽きられ卩ー、世界にも盛りにて」〈蜻蛉・下・天延二年〉訳天あったらなあ、 ( そうしたら ) 旅に出かけて行っても、 ( お一一人 を ) 手にささけ持って行こう。 るだろう ) 。「枯る」ニ「離 ( か ) る」ヲ、「秋」ニ「飽き」ヲ掛然痘が、広く世の中に大流行して。 ケル。仏御前平清盛ノ寵愛ウヲ奪ワレタ祇王簷ノもがな〔終助〕 ( 平安時代以降の語。終助詞「もが」に終助もがも・よ【連語〕 ( 上代語。終助詞「もがも」 + 終助詞 詞「な」が付いて一語化したもの ) 腰続体言、形容詞や「よ」 ) 願望の意を表す。 : ・があったらなあ。 : ・であったらな 今様歌。 もえ・ぎ【萌葱・萌黄】〔名〕 ( 「もよぎ」とも ) ①葱の若芽の断定の助動詞「なり」・打消しの助動詞「す」の連用形、助あ。例「妹 ( い ) が寝 ( ぬ ) る床のあたりに岩ぐくる水にも がもよ入りて寝まくも」〈万葉・一四・三五五四〉訳愛するあの ような色。薄い緑色。例「宮の御前は、ーーの御几帳 ( 詞などに付く。 う ) にはた隠れておはします」〈栄花・つほみ花〉訳中宮様【願望】存在・状態について、こうあったらなあと願望する娘こが寝る寝床のあたりで、岩の間をくぐり流れる水であっ 意を表す。・ : があったらなあ。・ : であったらなあ。例「世のたらなあ、 ( 水のように ) 床に入って一緒に寝たいなあ。 は、薄緑色の几帳に半分ほど隠れていらっしやる。 ②襲黯の色目の一つ。表裏ともに薄緑色とも、表が薄中にさらぬ別れのなくもがな千代 ( じもと祈る人の子のたもーがり【殯】〔名〕 ( 「もあが ( 喪上 ) り」の変化した形という ) め」〈伊勢人四〉訳この世の中に避けきれぬ ( 死の ) 別れなど上代、貴人の死後、葬儀の準備が整うまで、遺体を仮に 青、裏が縹色翳だ薄イ藍色品 ) ともいう。 もえぎーにほひ【萌葱匂ひ】〔名〕 ( 「萌葱匂ひ縅というものがなければいいのになあ。 ( 母上の命が ) 千年もある安置しておくこと。「あらき」とも。その場所を「もがりのみや」 (t ど ) 」の略 ) 鎧の縅いどの一種。萌葱色が下 ( または上 ) ようにと強く願っている人の子 ( である私 ) のために。在 ( または、「あらきのみや」 ) という。 原業平ノ作。例「男も女も、いかでとく京へもがなと思もーぎ【裳着】〔名〕平安時代、貴族の女性が成人したしる にいくほどだんだん薄くなるつにしたもの。 もえぎ・をどし【萌葱縅】〔名〕鎧の縅の一種。萌ふ心あれば」〈土佐・一月十一日〉訳男も女も、なんとかしに、初めて裳を着る儀式。十一一、三歳頃に行うのが普 通で、同時に髪も結い上げた。例「御ーーのこと、世に響 して早く京へ帰り着きたいなあと思う心があるので。 葱色の組糸で札いをつづった鎧。 もが〔終助〕 ( 上代語 ) 矚統体言、形容詞や断定の助動もがも〔終助〕 ( 上代語。終助詞「もが」に終助詞「も」が付きて急き給へるを」〈源氏・早蕨〉訳 ( タ霧の六の君の ) 裳 いて一語化したもの ) 矚統体言、形容詞や断定の助動着のことは、世間の評判となってお急ぎになっているので。 詞「なり」の連用形、副詞、助詞などに付く。 要点「はかまぎ」と混同しないこと。↓はかまぎ鬧 【願望】存在・状態について、こうあったらなあと願望する詞「なり」の連用形、副詞、助詞などに付く。 意を表す。 : ・があったらなあ。 : ・であったらなあ。例「都辺【願望】存在・状態について、こうあったらなあと願望するもく・だい【目代】〔名〕 ( 「めしろ」とも ) 代官。特に、平 ( ) に行かむ船もが刈り菰 ( しの乱れて思ふこと告げやら意を表す。 : ・があったらなあ。 : ・であったらなあ。例「君が安・鎌倉時代、国司が私的に任命して、地方の任国での む」〈万葉・一五・ = 六四 0 〉訳都の方に行くような船があったら行く道の長手 ( 3 が ) を繰り畳 ( ね焼き滅ほさむ天 ) の火政務に当たらせた代官。江戸時代には目付騁を指すこと なあ、 ( もしあったら ) 心を乱して恋しく思っていることを ( あもがも」〈万葉・一五・一宅 = 四〉訳 ( 私と別れて ) あなたが去っもある。 の人に ) 知らせるのに。例「あしひきの山はなくもが月見れて行く長い道のりをたぐり寄せてたたんで焼いて滅ほしてしまもーくづ【藻屑】を〔名〕海中にある海藻のくす。例「会ふ ば同じき里を心隔てつ」〈万葉・一〈・四皂◇訳あの山がなかうような天の火でもあったらなあ。遠方へ去ル恋人ヲ思までの形見とてこそとどめけめ涙に浮かぶーーなりけり」〈古 今・恋四・七四五〉訳あなたはこの裳もを次に逢あうまでの形見 ったらなあ、月を見ていると同じ里だと思えるのに、 ( あの山ウ歌。 と思って残していったのでしようが、私としては、これを見る 参考平安時代以降は「もがな」が用いられた。 が間にあるばっかりに ) 一一人の心を隔ててしまっている。 もがも , な【連語〕 ( 上代語。終助詞「もがも」 + 終助詞と涙が出て、いわば涙の海に浮かぶもくずでしたよ。密 考係助詞「も」に係助詞「か」の付いた「もか」の変「な」 ) 願望の意を表す。 : ・があったらなあ。 : ・であったらな会ノ最中ニ、女ガ親ニ呼バレ、裳ヲ残シティッタノヲ、後ニ あ。例「み空行く雲にもがもな今日 @ 行きて妹 ( じに返ス時ニ男ノ詠ンダ歌。 化したものという。上代では多く「もがも」の形で用いら 言問と ) ひ明日 0 帰り来む」〈万葉・一四・三五一 0 〉訳 ( 私もくれう【木工寮】〔名〕令制で、宮内省いに属し、 れたが、平安時代以降は「もがな」の形、またそれから は ) あの大空を流れ動いて行く雲であったらなあ、 ( そうした宮殿の造営・修理などを司齷った役所。「こだくみのつか 「も」の落ちた「がな」の形でも用いられる。 ろ ら ) 今日行って恋する人に言葉をかけ、明日帰って来よさ」とも。 もくーろく【目録】〔名〕①文書の題目などを書き並べたも もも , かう【帽額】ウ。〔名〕御簾や御帳煢の上に、横に長くう。 引きわたす布。業か (= 瓜ヲ輪切リニシタョウナ形 ) の紋をもがもーや【連語〕 ( 上代語。終助詞「もがも」 + 終助詞の。例「古歌 ( ) 奉りし時の。ーのその長歌 ( ) 」〈古 八〇一
み カ 出世景清・四〉訳お前のようなわがままで愚かな浅知恵を。 かまーど【竈】〔名〕鍋釜をかけ、煮たきする設備。土やことまではできない。 石で作る。「へつつい」「くど」とも。 ②あらかじめ用意する。準備する。例「まことに御馬の草②強情。やせ我慢。意地っ張り。例「おれが言ったことが 、かまびす・し【喧し・囂し】〔形ク〕やかましい。騒がしなんどをもーー・ヘさせよ」〈平家・〈・瀬尾最期〉訳本当にできねえによって、言ひわけなしのーーだな」〈洒落本・傾城 ・カ 買二筋道・夏の床〉訳おれが言ったことができないので、 。例「ーー・くすだきし虫も声やみて今は嵐 ( ) の音ぞ激馬の草なとも用意させろ。 しき」〈曽丹集〉訳やかましく集まって鳴いていた虫の声も 3 策略をめぐらす。計画を立てる。工夫する。例「いかに ( お前は ) 弁解しようがなくて強情をはるんだな。 ・ヘて、ただ心やすく迎へ取りて、明け暮れの慰めに見①耐え忍ぶこと。忍耐。辛抱。 ゃんで、今は嵐の音が激しく聞こえる。 【上】〔名〕①高い所。上上方。 日〔形シク〕日に同じ。例「浪 ) の音、常は , ー・しく潮む」〈源氏・若紫〉訳とのように策略をめぐらして、 ( 若紫、 カみ 川の源に近い方。源。上流。川上。 風激しき所なり」〈平家・五・都帰〉訳 ( 福原の都は ) 波のを ) ただあっさり迎え取り、朝夕の慰めとして見よう。 音が、いつも騒がしくて潮風の激しい所である。 3 京都。また、その近辺。京坂。上方。例「その後は 0 ある態度をとる。身がまえる。身仕度する。例「主と 考「曽丹集』の例は特別で、平安時代には漢文訓読おほしき人は、いとゆかしけれど、見ゅべくもーー・ヘす」〈源 ーーへものばらぬか」〈西鶴・好色一代男・五・七〉訳その後 文に用いられた。和文では「かしがまし」が用いられた。鎌倉氏・玉鬘〉訳主人と思われる人 (= 玉鬘辞カ ) を、見たくては京都へものばらないのか。 、かみぎ 0 時代頃からシク活用となるが、江戸時代にはまたク活用のたまらないのだが、やすやすと見られそうには振る舞わない。 0 京都で皇居のある方向。北。上京よう 例が認められる。 〉 3 古い時代。上代。昔。以前。 かまへーいだ・す【構へ出だす】〔他サ四〕 ~ れ 6 月の上旬。また、月の前半。 かまひーて【構ひて】鵞〔副〕 ( 「かまへて」の変化した形 ) 思考をめぐらして作り出す。こしらえ出す。例「ある人の、 「かまへて」に同じ。例「この渡りは大事の渡りにて候ふ。世に虚言 ( ) をーー・して人をはかる事あらむに」〈徒然① ( 歌の上の句、書物の上巻など ) 物の初めの部分。例 ーー静かに召され候へ」〈謡曲・隅田川〉この ( 隅田川草・一九四〉訳ある人が、世間に嘘をこしらえ出して人をだ「かきつばたといふ五文字 ( ) を句のーーにすゑて、旅の心 の ) 渡しは大変危険な渡しです。心して静かに乗っていて下ますことがあるような場合に。 を詠め」〈伊勢・九〉訳カキッパタの五つの文字を ( 順に ) 各 考「源氏物語」や「堤中納言物語」には類義語として句の最初に置いて、旅中の思いを ( 和歌に ) 詠みない。 0 上位者・高位者の敬称。特に、天皇・将軍、また、朝 【構ふ】鈩【〔自ハ四〕 ~ 2 ・ ) ①関係す「かまへいづ」〔他ダ下一一〕がある。 かま・ふ る。かかわる。例「そりやめんめの働きちやさかかまへーて【構へて】〔副〕①心がけて。心して。気をつ廷・幕府等の為政者・政府などの敬称。例「ーーの奢 ( ひ、ぜめのーー・ふたこっちゃないはいなう」〈浮世床・ = ・上〉けて。例「人はただ、歌をーーよむべし」〈宇治拾遺・三・◇り費やす所をやめ、民を撫 ( な ) で農を勧 0 めば、下 @ に 利あらむ事疑ひあるべからす」〈徒然草・一四 = 〉訳為政者が 訳それは各自の働きであるから、おれがかかわった事ではない訳人はただ、和歌を心がけて詠むべきだ。 よ。注「ぜめ」ハ人形浄瑠璃芻ウ社会デ、自分ノコトヲイ ②必す。きっと。例「ー・参り給へ」〈宇治拾遺・五・一〉訳ぜいたくや浪費をやめ、民衆を大切にし農業を振興すれば、 ウ隠語。 必すいらっしゃい。 下々 ( の民衆 ) に利益があるであろうことには疑問があるはす ②手やロを出す。面倒をみる。気にかける。例「大勢の子 3 ( 打消し・禁止の表現を伴って ) 決して。絶対に。例もない。 持ちを権に借 ( か ) って、内の事は一葉 ( ) も , ー・はね「かやうのものをば、・ー調 (X) すまじきものなり」〈宇治拾①年長 ( 者 ) 。年上 ( の人 ) 。例「七つよりーーのはみな殿 え」〈浮世風呂・ = ・上〉訳 ( 嫁は ) 大勢の子持ちであること遺・三・ = 0 〉訳このようなもの (= 狐 ) を、決してからかうも上 ( じ ) せさせ給ふ」〈源氏・若菜・下〉訳七歳より年上 を笠 2 に着て、家庭内のことは全然かえりみない。 のではない。匯狐ヲカラカッテ射タタメニ、ソノ狐ニ家へ火の者はみな昇殿をおさせになる。囲公卿號ノ子ハ、昇殿シ ふへ、・ ) ある土地に居住することを禁する。ヲッケラレタ男ノ話。 テ、殿上人ニナルタメノ見習イヲスルノガ習ワシ。 〔他ハ四〕一は〕ひ〕ふ 追放する。例「既に市川の苗字 ( ) を削られ芝居もかまめ【鵐】〔名〕 ( 上代語 ) 水鳥の名。カモメ。例「国原⑩上位者のいる所・席。上座。例「殿上人の座は西を ・はるべき程の事なり」〈風来六部集・下・飛だ噂の評〉 ( ) は煙翁ぶ ) 立ち立っ海原 ( ) はーー立ち立つ」〈万 ーーなり」〈紫式部・三日の御産養〉殿上人の座席は 訳 ( 団十郎は ) あやうく市川の苗字を削られて歌舞伎社葉・一・ = 長歌〉訳広々とした平野には ( かまどの ) 煙があち西を上座とする。 こちから立ち上っている。広々とした水面にはカモメがあちこ①近世以降、広く、他人の妻の称。おかみ。 会から追放されっとするほどの事態になった。 〔他ハ下二〕 ~ ( 靂 る・ ) ①建造物 ~ 午構築する。組みちに飛び立っている。 かみ【長官】〔名〕 ( 「上」の意から ) 律令制で四等官の最上 立てる。建てる。例「居屋 0 ばかりをーー・ヘて、はかばかがーまん【我慢】〔名〕 ( もとは「我っ ) に執着する」意の仏教位の称。各官庁の長官。 しく屋を作るに及ばす」〈方丈記・わが過去〉自分の居語 ) ①己を頼んで高慢になること。わがまま。自分勝手。 住する ( 狭い ) 建物だけを建てて、きちんと屋敷全体を造る例「和御前のご ) がやうなるーー愚痴の猿智恵を」〈近松・要点官庁によって当てる漢字が異なる。神祇官ぎ 日 目 ②
七五八 れた。 ( 中宮定子に ) お返事を書いて差し上げようとするのだが。先払いの声が高く聞こえるので、「関白様 (= 藤原道隆、 づまゐ・づ【参出】〔自ダ下一一〕 ~ づる・ ) ( 上代語。 ② ( 何かの行為を ) してさし上ける。【」奉仕する。例「御髪中宮定子ノ父 ) がこ参内になるようです」と一言って。 ゐ「まゐいづ」の約 ) 「出 ? の謙譲語。貴人の所に出かける。上 ( ) げ参りて、蔵人 ( ) ども、御まかなひの髪上げて ② ( 物を ) お上げあそばされる。 ( 行為を ) して上げなさる。 参上する。うかがう。例「桜花咲きなむ時に山たづの迎へ ・するほどは」〈枕草子・淑景舎〉訳調髪係の女官が例「これを聞こしめして、御堂 ( ) より、御装束一領 ( ・でむ君が来まさば」〈万葉・六・九七一長歌〉訳桜の花が参上して、女蔵人社 ( ⅱ雑事ニ従事スル女官 ) 達、お給り ) してーー・ふ」〈栄花・衣の珠〉訳これ (= 藤原公任出 咲く時にはお迎えに出ましよう。あなたが帰っていらっしやる仕役の髪を結い上げてさしあける間は。 家ノコト ) をお聞きあそばして、道長様の許いから、 ( 僧とし のだったら。「山たづの」ハ「迎へ」ノ枕詞。 日〔補動サ下一一〕 ( 動詞の連用形に付いて ) 謙譲の意を添ての ) 【」衣装一そろえを整えてお差し上げあそばされる。 参考平安時代ではウ音便化して「まうづ」となる。 える。お : ・申し上げる。 : ・させていただく。例「なほ、かくし身分ハ、道長ガ公任ョリ上。 まゐーのほ・る【参上る】 ' イ〔自ラ四〕 ~ 2 ) ( 上代も推し量り・ー・する人はなくやあらむ」〈枕草子・関白殿、 ( 動詞 ( まれに補助動詞 ) 「参らす」の連用形 + 尊敬の 語 ) 「行く」の謙譲語。参上する。参る。例「ー : る八十二月二十一日に〉訳やはり、これほどまでにご推察申し上補助動詞「給ふ」 ) 目「参らせ」が、謙譲の動詞であるもの。 氏人 ( 飃の手向 (9 けする恐 ( 3 し ) の坂に幣 ( 凸奉翁 ) げる人は ( 他には ) ないであろうか。 ( 物を ) ご献上になる。差し上けられる。 ( 行為を ) してさしあ り」〈万葉・六・一 0 = = 長歌〉訳 ( 都へ ) 参る多くの人々が供 げなさる。【」奉仕になる。例「東の御簾翁 ) 少し上げて、 え物をする恐の坂にささげ物を奉って。 弁内侍 ( じ・中務命婦 ( 離一 ) : ・ : など、さるべき限り 要点曰自の謙譲の意を添える補助動詞の用例は、 【参らす】 ( 謙譲語。動詞「参る」の平安時代中期から見られるが、平安末期以降著し取り続きー : ふ」〈栄花・初花〉訳東の簾を少し上げ まゐら・す 未然形 + 助動詞「す」 ) 日〔連語〕「す」く増加し、中世にかけて多用されるようになる。 て、弁内侍・中務命婦 (= イズレモ女房ノ名 ) : : : など、し が助動詞としてのはたらきを保っているもの。「す」が使役 なお、中世には「まらする」「まっする」などの形をも生かるべき女房だけが ( お膳を ) 次々と取り次いで差し上げられ の意を表すもの。①参上させる。おうかがいさせる。例「御じる。 る。匯動作ノ対象ハ、一条天皇ノ皇子。 後見 ( 気 ) たち、御兄 (% う ) の兵部卿 ( 2 ぶ ) の親王 9 な 日 ( 動詞の連用形に付いて ) 「参らせ」が謙譲の補助動詞 【参らせ給ふ〔連であるもの。動作の対象となる相手方と動作をする人の両 ・せ奉り給へり」〈源氏・桐壺〉訳 ( 先帝の第 まゐらーせーたま・ふ 四皇女の ) 【」後見役の人達や、兄にあたられる兵部卿の親 語〕日 ( 動詞「参る」の未然方を、尊敬する意を表す。 : ・し申し上げなさる。例「君の 王などが、 : : : ( 第四皇女を桐壺帝の后として ) 参形 + 助動詞「す」の連用形「せ」 + 尊敬の補助動詞「給御供に参るなり。御志 ( ろ ) 思ひーー・はん人々は、急ぎ続 ふ」 ) ( 「せ」が使役の場合 ) ①参上させなさる。おうかがい 内させ申し上けなさった。コノ皇女ガ藤壺噐。 き給へ」〈平家・一一・先帝身投〉訳天皇のお供に参りま ② ( 物を ) 差し上げさせる。 ( 行為を ) ご奉仕させる。例させなさる。例「左の大殿 ( い ) の六の君を、うけひかすおす。 ( 天皇を ) 心の底からお慕い申し上げなさるような人達 「大臣 ( ) は、かしこき行ひ人、葛城山 ( より請 C) ほしたることなれど、おし立ちてーー・ふべく、皆定めらる」は、遅れずに後に続きなさい。注平氏一門ガ壇ノ浦 (= 山 じ出 ( い ) でたる、待ち受け給ひて、加持ー : せむとし給ふ」〈源氏・総角〉訳 ( 匂宮皿は ) 左大臣 (= タ霧 ) の六女口県下関市ノ沖 ) テ滅亡スル時、安徳天皇ヲ抱イテ入水 スル二位ノ尼 (= 平清盛ノ妻 ) ノ言葉。 〈源氏・柏木〉訳 ( 元の ) 大臣は、霊験あらたかな行者、を、 ( 妻として ) 承知するお考えはなかったことだが、無理に 葛城山 (= 奈良県御所〕市ノ金剛山ヲ主峰トスル山地デ、 ( 彼女を匂宮の妃として ) 参上させなさるように、皆でお 修験道ノ道場トシテ有名 ) から招いて下山させた者を、待決めになった。 ロ〔第② A 三当とは、意味が近似していてまぎら ち受けなさって、 ( 重病の息子、柏木 2 れの ) 祈に奉仕② ( 物を ) 差し上げさせなさる。 ( 行為を ) ご奉仕させなさる。 わしいが、同一ではない。動作の対象となる人 (= 動作 させよ一 ? 」なさる。 例「雑色 ( ) 五、六十人ばかり、声のある限りひまなく御ノ相手 ) に対する敬意を「参る ( ら ) 」で、動作をする人 に対する敬意を「す ( せ ) 」「給ふ」の一一語で表した前者 日「す」が尊敬の意を表すもの。この場合は、必すその下に前駆 0 ーー・ふ」〈大鏡・道隆〉訳下仕えの者五、六十 まさらに尊敬の意の補助動詞が付いて、「参らせ給ふ」などと人ほどに、ありったけの声で絶え間なく先払いの声をお立て の場合、話し手は、動作の対象となる人よりも、動 させになる。 たなる。↓まゐらせたまム邑 作をする人の方に、より高い敬意を向けている。それに せ「す」が助動詞としてのはたらきを失い、「参らす」で一語 ( 「せ」が尊敬の場合。「参り給ふ」よりも尊敬の度合いが対し、動作の対象となる人に対する敬意を「参らす と認められるもの。 % ・する ( せ ) 」 (= 「参る」ョリモ動作ノ対象トナル人ニ対スル敬 ・ ) 〔他サ下一一〕 ( 謙譲語 ) 高い ) ①こ参上あそばされる。 ( 后として ) ご参内になる。 ま① ( 物を ) 差し上げる。献上する。例「御返り事書きておうかがいなさる。例「前駆 0 高う追ふ声すれば、『殿意ガョリ高イ ) で、動作をする人に対する敬意を「給 ・せむとするに」〈枕草子・殿などのおはしまさで後〉訳 ・ふなり」とて」〈枕草子・宮に初めて参りたるころ〉訳ふ」一語で表した後者では、話し手が、動作をする人
せ 七四四 やる。お : ・なる。例「我が背子 (3) が帰り来・・ー・さむ時のして来い」〈狂言・煎じ物〉訳この間おいでになった方々の次いで高い。 ますーかき【枡掻き】〔名〕 ( 近世語。「ますかけ」とも ) 枡 すため命残さむ忘れ給ふな」〈万葉・一五・三四〉訳あなたが帰所へ行って、お呼びして来い。 まっていらっしやる時のために命を保っておきましよう。 ( だか②丁寧の意を表す。 : ・ます。例「それを求めたさに、呼ばで穀物を量るときに、枡の縁」と平らに穀物をならすために ら、私を ) どうかお忘れにならないで下さい。囲恋シサニ死はって歩きまする」〈狂言・末広がり〉訳それ (= 末広ガ使う丸い棒。江戸時代、米寿↑八十八歳 ) を迎えた人 リ ) が求めたくて、叫んで歩いています。 に、これを切ってもらって使うと、縁起がよいとする風習 ニソウナノヲ、コラエティルノダト訴エル意。 があった。例「八十八の時、 ーーを切らせ」〈西鶴・ 参考主として上代に用いられた。平安時代には「おはす」 霳考室町時代末期に成立し、②の用法は引き続日本永代蔵・三・一〉訳八十八歳の時、 : : : 枡掻きを切 が主流となって、「ます」は和歌に用いられるだけになった。 いて現代でも用いられている。「参翁 ) らす」の連体形ってほしいとねだり。 ・ ) 〔自サ四〕すぐれる。秀でる。まさ ま・す【勝す】行れ 「まゐらする」が「まらする」となり、さらに「まっする」「ままーすみ【真澄み】〔名〕 ( 「ま」は美称の接頭語 ) 澄みきって る。例「笹 0 が葉のさやぐ霜夜 ( れも ) に七重 ( ) 着 ( か ) いること。多く「ますみの鏡」の形で用いられる。例「曇りな する」と変化して、「ます」となった。 る衣 ( ) にーー・せる児 ( こ ) ろが肌はも」〈万葉・ = 0 ・四四三一〉 きーーの月や天 ( にます豊岡姫翳 ) の鏡なるらむ」〈続 訳笹の葉がざわざわと音をたてる ( 寒い ) 霜の夜に、七重に ・ ) ①混合・混後拾遺・神祇〉訳一点の曇りもなく澄みわたっている月 重ね着する着物にまさる ( 温かい ) 妻の肌だったよ。注「まま・ず【交ず・混ず】〔他ザ下一一〕を・ー せる」ノ「ませ」ハ命令形、「る」ハ完了ノ助動詞「り」ノ連体入する。ませる。ませ合わせる。例「秋の前栽 ( ) をばむらは、天上にいらっしやる豊岡姫↑天照大神翳い ) の鏡な 形。防人歌デ、「着 ( か ) る」「児 ( こ ) ろ」ハ上代東国方むらほのかにーー・せたり」〈源氏・少女〉訳 ( 春、花咲くのだうつ。 言。 木々の中に ) 秋の庭の草木をひとむらすっ少しばかり植えまますみーのーかがみ【真澄みの鏡】〔名〕曇りのない澄み きった鏡。例「わが目らはー・わが爪 (8) は御弓翁ゅ ) の弓 日〔他サ四〕すぐれるようにさせる。まさらせる。秀でさせる。せてある。六条院ノ紫ノ上ノ住居ノ庭ノ様子。 ② ( 人の話に ) 口をさしはさむ。口を出す。例「君のうち眠筈 ( ) 」〈万葉・一六・一一〈会長歌〉訳私の目はよく澄んだ 例「色をも音 ( ね ) をもーー・すけちめ、殊になむ分かれける」 〈源氏・初音〉訳梅の花の色も音楽の音色も格段にすぐ ( ) りて言葉ー : ぜ給はぬを」〈源氏・帚木〉訳光源氏が鏡に、私の爪は弓の筈 (= 弓ノ両端ノ弦ヲ掛ケルトコロ ) に ( なりましよう ) 。囲「目ら」ノ「ら」ハ語調ヲ整エルタメノ接 れた物にする (= 映エル ) という差が、 ( 他の場合と ) まったく居眠りしていて口をお出しにならないのを。 尾語。 違うのだった。六条院デ管弦ノ遊ビヲシティル場面。まず【先ず】〔副〕まづ 人々ノ催馬楽翳ニ光源氏ガ唱和スルト、ドノ曲モ格段ニますおとし【枡落とし】〔名〕ネズミを捕らえるしかけのますらーたけを【益荒猛男・大夫健男】霧〔名〕勇まし 一種。枡を棒で支えてその下に餌を置き、ネズミが餌をくて、立派な男子。勇猛な武人。例「大久米 ( 驩 ) の , ー スパラシク聞コエルノテアル。 せ・ ) 〔自サ四〕数や量が多くなる。増引くと枡がかぶさるようになっている。例「そのままに転び落を先に立て靫 ( 2 ) 取り負 ( どせ」〈万葉・ = 0 ・四四六五長歌〉 ま・す【増す】しす 加する。ふえる。例「床 ()% ) に臥 ( こ ) い伏し痛けくの日に異ちたるーー」〈去来〉訳 ( ふと見ると ) ネズミがかからないまま訳久米部の勇士を先頭に立てて、靫 (= 矢ヲ入レテ背 負ウ具 ) を背負わせて。 ( け ) にーー・せば」〈万葉・一七・一一一九六九長歌〉訳 ( 病気で ) 床に転げ落ちている枡落としが目についた。 伏せって痛さが日ごとに増していくので。 ますーかがみ【真澄鏡】〔名〕 ( 「ますみのかがみ」の変化しますらーを【益荒男・丈夫・大夫】オ〔名〕勇ましくて、立 派な男子。上代では、特に、官人・武人を指すことが多 日〔他サ四〕数や量を多くする。増加させる。ふやす。例た形。上代では「まそかがみ」 ) ↓ますみのかがみ 。後には、単に男の意にも用いられる。↓たわやめ例 「色をーー・したる柳枝を垂れたる、花もえもいはぬ匂 (%) ひ日〔枕詞〕↓まそかがみニ を散らしたり」〈源氏・胡蝶〉訳緑色をました柳が枝を垂増鏡 ( 黔か ) 〔書名〕南北朝時代の歴史物語。十七巻だ「。ーの靫 ( じ取り負ひて出 ( い ) でて行けば別れを惜しみ嘆 が、十九巻・一一十巻の増補本もある。作者未詳。十四世きけむ妻」〈万葉・一一 0 ・四 = 一 = 三〉訳 ( 一家の主である ) 立派 れており、花も言葉も及ばないよい匂いをまき散らしている。 ます〔助動特活〕矚動詞および動詞型活用の助動詞紀中頃の成立。「大鏡」などを模して、嵯峨 (= 京都市右な男が靫 (= 矢ヲ入レテ背負ウ具 ) を背負って ( 防人い健に ) 京区 ) の清涼寺で老尼が昔話を語る趣向で、後鳥羽出立するので、別れを惜しんで嘆き悲しんだであろうその妻 の連用形に付く。 未然形連用形終止形連体形已然形命令形天皇降誕 ( 一一八〇 ) から後醍醐天皇の隠岐からのよ。 ます ます ませ 還幸 ( 一三三三 ) まで、約百五十年間の歴史を編年体でませ【籬・笆】〔名〕竹や木で作った低く粗い垣根 2 き。「ませ ませまし ますれ まするまする ませい 描く。文章は「源氏物語』に倣弩て優雅で、各章には「栄がき」とも。例「竜胆 ) 、朝顔のはひまじれるー・も、み 【謙譲・丁寧】①謙譲の意を表す。 : ・申し上げる。お・ : す花物語」と同じく趣のある題名が付けられ、史実にも忠な散り乱れたるを」〈源氏・野分〉訳リンドウやアサガオが る。例「この間ごさった御衆 ( ) の所へ行 ( い ) て、呼びま実。いわゆる四鏡の一つであるが、文学的価値は「大鏡た ( 倒れて ) 地面に這はうようにまとわりついているませ垣も、皆