1 アクセント習得法則 東京アクセントの法則について 東京で日常用いられる語は , 何万とある。その語をひとりひとりの東京人は , 同 じようなアクセントで発音している。これは決していちいち周囲の人のアクセント を耳に聞き , それを覚えてゆくのではない。それが証拠には , 新しい単語ができて も , 東京人である限り , 大体同じアクセントで発音される。これはなぜかという と , 前もって頭の中にアクセントの法則のようなものを心得ていて , その法則にあ わせて発音しているからである。その法則が各個人を通じて同じであるから , 大体 同じアクセントになる。 実は , この本文に掲げたすべての単語のアクセントも同様で , 基本的な幾つかの 語のアクセントをよく覚え , あとはその語のアクセントとアクセント法則によっ て , 他の語のアクセントも類推しているのである。 ーこにおいて , 東京アクセント をマスターするための近道は , こういうことになる。 “基本的な単語のアクセントを覚えること”“東京アクセントの法則を覚えるこど アクセントの法則は , 例えば , 名詞であるとか , 動詞であるとかいう品詞によって 異なり , また , その語が複合語であるとか , 転成語であるとか , 畳語・省略語であると かいう語のでき方によって異なる。なおまた , その語が和語とか , 漢語とか , 外来語と かの語の戸籍によっても異なるし , その語の拍数が何拍であるとかによっても違う。 東京アクセントは , 他の方言アクセントにくらべて法則が比較的はっきりしてい るので , それらの法則を徐徐に習得してゆけば , 個個の単語のアクセントを丸暗記 するよりもずっと楽に , 東京アクセントをものにすることができる。 こでは , そ れら東京アクセントの法則をグループ別に 0 から 99 までの項に収め , 本文から各 の単語に関係する番号を参照させた。 なお , アクセントの法則を考える場合 , 語は次のように分類される。 単純語ーーー複合していない語で , それ以上小さな語に分けられないようなもの。 〔例〕葉 , 五 , 秋 , 草 , 七 , 桜 , クリーム , 上がる , 晴れる , 青い 複合の度合が最も強く , もとの語のアクセントの影響があま 癒合語 りみられないようなもの。〔例〕青葉 , 七くさ , 秋晴れ 複合の度合が中間で , もとの語のアクセントによって定まる 結合語 もの。〔例〕葉桜 , 七草がゆ , 雨上がり , 七五調 , アイスク リーム , 晴れ上がる , 青白い , 物すごい 複合の度合が最も弱く , 前部の語のアクセントを生かす傾向 接合語 があるもの。〔例〕木の葉 , 青い鳥 , 我が子 , 雨風 , 七つ八 つ , 物言う , 見て取る 主として和語の単純語が , 形を変えて , 他の品詞及び他の用法に転じ 転成語 るもの。もとの語のアクセントによって定まるものが多い。 〔例〕暮 , 光 , 鮨の , 見える , 細める , 暖かい , 喜ばしい , 黄色い 前部の語と ( 中部の語 ) 後部の語が複合せず , 息の切れめがあって , それ 分離語 ぞれのアクセントをそのまま生かすもの。〔例〕秋の七草 , 三十六歌仙 複合語
この辞典を使う人のために く省略される以前の形や , 外来語で著しく発音の変化した場合などに用いた。 デ . ートく department store コーコー高校く高等学校 十外来語が複合した和製語であることを示す。 ジャムパン jam 〔英〕十 päo 〔葡〕 クレバス , クレバス <crayon 十 pastel ◆反対語・対照的な語を示す。 矛ツ乙 ( ←甲 ) オーテ大手 ( ←からめて ) 中他項を参照させる意を示す。 ウタマロ歌麿【人 ) ◆きたがわ ~ ( 姓名全形を参照させたい ) ウデル茹でるゆでる ( 望ましい発音を参照させたい ) 巻末のアクセント法則番号の参照に用いた。 ( ) アクセントに関しての注を示す。 五こ , ( 古は力 ) 神 モ , ( 宅こは避けたい ) 籾 アシタ , ( 副詞的にはアシタ ) 明日 ヤマダ山田 ( 姓も ) ( ) 見出し語では , 発音上の言い換えに用いた。 ( グはグとも ) ( アはヤとも ) 特に外来語では , 望ましくはないが慣用となっている形に用いた。 ファン , ( ラアン ) fan ッド , ( ット ) bed 解説にあたる部分では , 用例及び補助解説などに用いた。 ( ) 固有名詞 , 百科項目などの指示及び補注に用いた。 〔〕外来語の国籍を示した。 10 語語語語語語語語語ツ語語語語 い アダヤン ガク な 語リンシイ国鮮ン 製 し イ タ 2 フリ。へ 一フルン 来 イオギス中朝ドフポサラロ和特 外 二ロ 伊蘭希西華朝独仏葡梵霹第英 薬服画劇学楽事築語教名名名物語名 童物 物 語相医衣映演化雅軍建児宗書植人生俗動 位 略医衣映演化雅軍建児宗書植人生俗動 詞詞詞詞詞詞詞詞詞辞辞用用用 活活活 体名続動動頭尾用段→→ 名数副連代接感助助接接四上下 動頭尾ー活一一 名数副連代接感助助接接四上下 詞 ロロ 一三ロ
9 4. 記号 この辞典を使う人のために 覧 ☆ 見出し語では , 二通り以上のアクセント及び発音がある場合に用いた。 カこナリ , カこナリ雷 解説にあたる部分では , 二つ以上の同音語がある場合に用いた。 ジシン自信 , 地震 , 磁針 見出し語ではアクセントの切れめを示した。 サンジュー・サンカショ三十三箇所 解説にあたる部分では「及び」 , 「や」 , 「と」の意味を表わすのに用いた。 アオキ青木【植・姓 ) ジョ→ンエッ上信越く上野 ( 与 3 ) ・信濃 ( ) ・越後 ( ち ) ・・を伴って表わされる見出し語の 助詞・助動詞・接辞・造語成分など , うち , 前部の語のアクセントや音韻の性格により , 複合語のアクセントが 変化する場合に用いた。 ハヂガ花 ~ , デメガ雨 ~ ) 助詞・助動詞・接辞・造語成分など , ・・・・を伴って表わされる見出し語のう ち , 前部の語の拍数により , 複合語のアクセントが変化する場合に用いた。 ・・マル・・・・丸 ( キクマル菊 ~ , ランマル蘭丸 , ・・マル : ヒマル日吉 ~ , ヒ万ヲマル氷川 ~ ) 用例中 , 連続する語が同格でなく , 後の語が前の語を説明するような場合 に用いた。 イ , ウのうち引き音にも発音するものは , イ , ウのように示した。 オカガこ御鏡 ( = 鏡餅 ) 説明及び言い換えを示す。 引イネイ丁寧 アクセントの区切りのある語で , 二通り以上のアクセントがある場合 , ア 矛ッパイ ( = 乳 ) ヴ食う なるような場合は , アクセントを注記した。 用いた。なお , 省略した部分のアクセントが , 見出し語のアクセントと異 用例中で , 見出し語及び見出し語にあてた漢字かなまじりの部分の省略に ~ ( ・ ) マサムネ ~ 政宗 ダテ伊達【姓 ) らない場合 , 見出し語の部分の省略に用いた。 人名が姓の見出しに追いこまれていて , 姓にあたる部分のアクセントが変 デトノ ( ・ ) マツリ , ~ ( ・ ) マツリ 1 後の祭 クセントの変らない部分の省略に用いた。 スシ箸 ( お ~ ) ハヂ花 ( オハナ御 ~ )
アクセント習得法則 51. 文語形容詞について ( 表 3 ) ・・・ す語・接続詞・感動詞の類についたもの・・・ = ・・・ 46 , 47 77. 助詞が助詞についたもの・・・ 52. ロ語の単純形容詞及び形容詞のロ語活 ・・・ 66 用形 ( 表 4 ) ・・・ 78. 助詞が助動詞についたもの・・・ ・・・ 47 , 48 53. 転成形容司・ 79. センテンスや語句の切れめの最後にく ・・・ 49 54. 結合・接合形容詞・・・・ る助詞・・・ 55. 決まった和語の語尾をもっ擬声・擬態 . 助動詞の一般について・・・ 語の類・・ 81. 助動詞が名詞類についたもの ( 表 9 ) 56. 決まった漢語の語尾をもっ擬声・擬態 82 ・助動詞が動詞の終止形・連体形につい 語の類・・ ・・・ 51 たもの ( 表 10 ) ・・・ 57. 同じ語 , または相似した語が重複した 83. 助動詞が動詞の終止形・連体形以外の ・四拍の和語・・・ ・・・ 51 活用形についたもの ( 表 11 ) ・・ 58. 同じ語 , または相似した語が重複した ・ 68 , 72 ・一・四拍の漢語・・・ 84. 助動詞が形容詞についたもの ( 表 12 ) ・・・ 52 59. 擬声・擬態語を後部とする語・・・ ・・・ 52 60. 副詞・指示疑問を表わす語・接続詞・ 85. 助動詞が擬声・擬態語の類についたも 感動詞などについて・ ・ 52 の・・ 86. 助動詞が副詞・連体詞・指示疑問を表わ 61. 副詞・・・ ・・・ 53 62. 名飼数詞からの転成副詞・・・・・・・・・・・・・・・・ す語・接続詞・感動詞の類についたもの・・・ 71 ・・ 53 63. 連体詞・・・ 87. 助動詞が助詞についたもの・・ ・・・ 71 ・・・ 53 64 ・指示・疑問を表わす語・・・ 88. 助動詞が助動詞についたもの・・・ ・・・ 75 ・・・ 54 65. 接続詞・・・ 89. 助動詞の活用形 ( 表 13 ) ・・・ ・ 75 , 76 ・・・ 54 66. 感動司・ ・・・ 54 . 接頭辞・接尾辞などの一般について・・・・・・ 75 67. 結合してできた副詞類・・・ 91. 程度を表わす接頭辞のついたもの・・・ ・・・ 78 ・・・ 55 92. 敬語・丁寧語について・・・ ・・・ 78 68. 畳語・対立語の形をとった副詞類・・・ ・・・ 55 69. 接合してできた副詞類・・・ 93. 接尾辞がついて名詞をつくるもの・・・ ・・・ 56 94. 人名及び一般名詞などについて意味を 70. 助詞の一般について・・ ・・・ 56 71. 助詞が名詞類についたもの ( 表 5 ) ・ そえるもの・ ・・ 56 , 58 95. 自立できぬ語がついて , 名詞や形容動 72. 助詞が動詞の終止形・連体形についた 詞的な語をつくるもの・・・ もの ( 表 6 , 7 ) ・・・ ・ 57 , 60 , 62 96. 接尾辞がついて動詞・形容詞をつくる 73. 助詞が動詞の終止形・連体形以外の活 用形についたもの ( 表 6 , 7 ) ・・・ もの・・・ ・ 57 , 60 , 62 74. 助詞が形容詞についたもの ( 表 8 ) ・・・ 57 , 64 97. 分離文節 98. 接合文節・・・・ 75. 助詞が擬声・擬態語の類についたもの・ ・・ 66 . 結合文節・・・ 76. 助詞が副詞・連体詞・指示疑問を表わ 3 ・・・ 67 ・ 67 ・ 68 , 69 ・ 68 , 70 ・ 68 , 74 ・・・ 71 82 ・・・ 85 8 8 8 ・・・ 88
1. アクセントについて 現在“アクセント ' ' ということばは , さまざまに使われているが , “日本語のア クセント”という時の標準的な使い方としては , “個個の語について定まっている 高低の配置 ' ' という意味である。 “語 ' ' というのは , ほとんど文法でいう単語と同じとみていただいてよい。例え ば , 「橋」の時はシを高くいう , 「箸」の時はシを低くいう , というようなのが日本 語のアクセントである。これは既に御承知のことと思う。但しここでちょっと注意 してほしいことは , ある語を発音した時の声の上がり下がり , それがそのままアク セントだとはいえないことである。 例えば , 同じ「箸」という単語でも , 「箸 ? 」というように相手に問いかけの気持 でいう時は , シといったあとで , また語尾を上げて発音する。この場合の語尾の 高まりは , アクセントではない。なぜならば , これは特定の語について決まってい “問いかけ”つまり返事がほしいという , 一般的な心理によって決 るのではなく , こういう声の上げ下げは , 大体 , 日本語を通じて全国共通の現象 まるからである。 であるから , 特に骨を折って覚える必要はない。ところがアクセントは , その“語” について決まっているもので , それも地方によって異なるから , 特に標準語を使お うとする場合には , “学習”が必要である。 人によると , アクセントは単語によって決まっているというが , 「箸」と「箸箱」 では , 「箸」のアクセントが違って変だと思われるかもしれない。しかし , これはそ れでよい。なぜなら , 「箸箱」は一つの“複合語 ' ' であって , 「箸」とは別の単語だ からである。複合語は , アクセントの法則に従って変化をする。つまり , 基本的な語 と複合の型とを覚えれば , どうにか使いこなせるものである。そこで , この辞典で は , 巻末にアクセント習得法則をもうけ , 本文の単語から参照できるようにした。 助詞や接尾辞などはやはり単語だが , それだけを切り離して発音することがない。そと で , この辞典では , 名詞や動詞などについた時のアクセントの型を示した。 もう一度くり返せば , 日本語のアクセントは , “語による高低の配置のきまり”で ある。ここで高低の配置といっても , その高い部分と低い部分との開きが , 音楽で 4 度だとか 5 度だとかいうような , そんなやかましいものではない。ただ上がって いるか , 下がっているか程度のごく大まかなものである。つまり , すべての語は , ーアクセントの型 ' というのもごく少 低い部分と高い部分に分けられる。従って , 数しかなく , 東京アクセントでは一拍語ないし六拍語は , 次のページの第 1 表の型
アクセント習得法則 表 5 ヨ寸 名 式 平 名 式 伏 起 「が」 「か」 「さ」 ヒガ 「と」 「に」 「は」 58 「も」 「や」 「よ」 71. 名 「ほど」 「から」 「だけ紀 「しか※ 1 」 サクラカラ ウンカラ ヒカラ ヨーモリカラ 甲ノチカラ フラカラ 第カラ アヂガオカラ ミこカラ コョロカラ オトートカラ オトコカラ ヤカラ トモダチカラ 詞 「の ( ん ) 」 ヨーモリ / ノチノ フラノ アチガオノ コョロノ オトートノ オトコノ ヤマノ トモダチノ サクラノ ウシノ 十 助 が 種 の 上類 の 種 り 類 の 中 型 尾 備 語 語 語 四 語 語 語 四 語 語 拍 語 語 拍 語 四 語 ヒ ( 日 ) ( 牛 ) サクラ ( 桜 ) トモダチ ( 友達 ) ( 山 ) オトコ ( 男 ) オトート ( 弟 ) コョロ ( 心 ) ( 湖 ) アチガオ ( 朝顔 ) ( 木 ) 〒ノチ ( 命 ) ヨーモリ ( 蝙蝠 ) 考 ウシガ サクラガ トモダチガ オトコガ オトートガ コョロガ アガオガ 甲ガ フラガ ノチガ ヨーモリガ 名詞の型を変えない。平板式には高く平らに , 起伏式「か」類に似る。但し , には低く下がってつく。 尾高型には高く平ら につく点で異なる。 注※ 1 平板式名詞につく時は上記のほか , 助詞の第一拍から低く下がってつく場合がある。 ウジシカサクラシカ ※ 2 「として」は「から」類に , 「くらい ( ぐらい ) 」「どころ」「ばかり」「なんか」「なんて」「よりか」 「よりも」は「かしら」類に含まれる。但し , 「くらい ( ぐらい ) 」「どころ」「ばかり」は , そのほか , 起伏式名詞を高く平らに変え , すべてに助詞の第一拍まで高く , 二拍より下がってつく傾向がある。 ィ歹亨アライ ォ五カリ
アクセント習得法則 49 ~ 51 頭高型 , 及び〇・コ〇〇型の語が少数見出 ゴメンクダサイ ( 御免下さい ) 注意①慣用句その他 , 複合の度合が強くて される。これは音韻の法則 a. により , アク 結合動詞のようになったものは , 結合動詞 セントの高さの切れめがずれてできたもの である。例えば , 矛ーイ ( 多い ) , マチドーイ のアクセントに準じる。 ( 待ち遠い ) は , オ矛イ , マチドオイが引き ナクナル ( 無くなる・亡くなる ) ュヌル ( 夢見る ) ム手ツ ( 鞭打っ ) 音のためアクセントが前にずれたもの。 モッテクル ( 持って来る ) 注②強調の意のある接頭辞がつくと頭高型 モッテコイ ( 持って来い ) になる傾向がある。 ( 接頭辞 ( 91 ) 参照 ) バカニスル ( 馬鹿にする ) 注③新造語は中高型。日常あまり耳にしな 注意②前部が起伏式で , 拍数の多い語は複 い平板型の語も中高型変化の傾向がある。 合の度合が弱く , 複合部で切って二語に分 Ⅱ特殊な形をもつ擬声・擬態語の類一般につ けて発音する傾向がある。 いて ゼッパ・ツ〒ル ( 切羽詰まる ) その語の形によって , それぞれのアクセン ゴビ・ヘッラウ ( 媚び諂う ) ト法則に従う。例えば , 和語で決まった語尾 をもつもの , 漢語で決まった語尾をもつも の , 和語で重複した形のもの , 漢語で重複し 形容詞 , 及び特殊な形の擬声・ た形のもの , その他である。これらは規則的 擬態語の一般について で , ~ 59 を参照してほしい。 注意学校文法で説く形容動詞の多くは , Ⅱ I 形容詞の一般について の類に収めた。また , 「汽車ぼつぼ・雨こ 形容詞のアクセントは , 動詞にやや似る。 んこん」のように , 擬声・擬態語がついて 複合名詞をつくるようなものも , 便宜上こ 名詞にくらべて型の数が少ない。 一拍には頭高型 の類に収めておいた。 三拍語には平板型と中高〇 0 〇型 四拍語には平板型と中高〇 00 〇型 51. 文語形容詞について 五拍語には平板型と中高〇 000 〇型 以上のように , ニ拍語は一種類 , 三拍以上 文語形容詞は , ロ語形容詞から類推すること の語は各の拍数についてニ種類の型しかない のが原則である。つまり , 平板型と最後から こでは文語特有の形について述べ ができる。 二番めの拍まで高い型とである。 る。 注①現在日常生活で使われる文語形容詞の類 拍の数に関係なく , 型の同じ語はそれぞれ は , 熟語・ことわざ・慣用句などに多い。以 似た性質を持っている。例えば , 同じ平板式 のアカイ ( 赤い ) , ツ歹歹イ ( 冷たい ) の連用形 下 , 例文に補足を加え理解の便をはかった。 I 活用形 は , アカク , ツメタクのように同じく平板式 となり , 同じ起伏式のゴイ ( 良い ) , シイ ( 白 例えば , 終止形は次のようになる。その他の い ) , ウ・レフィ ( 嬉しい ) は , ク , ラロク , 活用形については , 文語形容詞の活用表 ( 表 3 ) ウシクのように同じく起伏式となる。 からそれぞれ類推してほしい。 ( 1 ) ロ語平板式ー後部からニ拍めまで高い中 二つの形容詞が , 拍数も型も活用形式も同 高型。 じならば , 各活用形を通じて同じアクセント アカイ→アシ ( 赤し ) となる。それゆえ基本的な活用形を一つ覚え カチジネ→カヂシ ( 悲し ) れば , 他はすべて類推することができる。 ツメタイ→ツダ歹シ ( 冷たし ) の辞典では終止形をあげ , よく使われる語に ②ロ語起伏式ーすべて起伏式。 はその活用形を掲げた。活用形の示してない ( イ ) ロ語頭高型ーすべて頭高型。 語については 52 の形容詞のロ語活用表 ( 表 4 ) チイ→ヂシ ( 無し ) ゴイ→ゴシ ( 良し ) から類推してほしい。 ( ロ ) ロ語中高型ーアクセントの高さの切れ どのような単語が , どのアクセントになる めが一拍前へずれた型になる。つまり , かは 51 ~ を参照してほしい。 ロ語三拍語の文語はすべて頭高型。 注①以上の型のほかに , 三拍以上の語には 46
( 3 ) 頭高型のもの 万シ→ヒ万シ シュギ→リコシュギ ( 干菓子 ) ( 利己主義 ) 19 宅ジ→カシラモジ ( 頭文字 ) リョーリ→ニホンリョーリ ( 日本料理 ) > 義兄弟・静御前・朝御飯・熊野権現・ 社会事業・伊豆諸島・春日神社・弘法 大師・江戸幕府・西行法師・・・ 注但し , 前・後部とも二拍以下の語には例 外が多いが , 四拍語は多く平板型になる。 コモジ ( 小文字 ) ョコモジ ( 横文字 ) イシャ ( 目医者 ) シロこソ ( 白味喉 ) Ⅱ後部が中高型の語の場合に限り , もとの高 さの切れめまで高い。但し , この場合も拍数 の多いものや , 無声化で中高型になった語な どは , 高さの切れめが前にすれる。 ニ永ン→ウ彡三・ン ( 裏日本 ) ショーベン→ネショーベン ( 寝小便 ) オックー→デ矛ックー , デオックー ( 出億劫 ) チー→カラ下 = 永ー カラ下 = ホー ( 関東地方 ) イモ・ジジアーイモジングー ( 伊勢神宮 ) 例外サ下一→カクザトー ( 角砂糖 ) 16. 後部が外来語の癒合・結合名詞 ( 外国語的複合を含む ) 外来語名詞は , 複合の度合の強いものが多く , 接合名詞的なアクセントはみられない。 I 外来語十外来語の形 ( 1 ) 癒合名飼 ( 前・後部とも二拍以下の語 ) ー 外来語単純名詞の法則に準じる。 ( 9 参照 ) アクセント習得法則 15 ~ 17 パトカー , パドカー レモンティー , レモンティー セールスマンサラ下イ筋マン 強いが , 慣用のもの以外はいちいちの注記 音には , もとのアクセントを生かす傾向が ていないもの , 及び外国語に親しい人の発 注②但し , 新しく入った語などで日本化し が前にずれる傾向がある。 注①但し拍数が多くなると , アクセント を省略した。 ンパル をッチハイク 五一ドマン ゼールスマン ザンマン クタイ ②結合名飼ー後部が平板型・頭高型の語は , 後部の第一拍まで , 中高型のものはアクセ ントの高さの切れめまで高い。 テープル→メーンテープル アルコール→メチルアルコール ゴート→スプリングコート 歹ーキ→ホットケーキ ク明ーム→アイスクリーム ス 7 ッチ→タイムスイッチ 但し , 後部が二拍語で最後の拍が撥 ( 音 語は , 後部の第一拍から下がる傾向がみら ( ン ) , 引き音 ( ー ) などで終る複合の強い れる。 ホームラン クリームパン 注③古く入った語や日常頻繁に使われてい る語の中には , まれに平板化しているもの がある。 クリームパンポールペン Ⅱ日本語十外来語の形 ( 1 ) 癒合名詞 ( 前・後部とも二拍以下の語 ) 平板型になりやすい。 トシカス ( 都市 gas ) ムシピン ( 虫 pin ) ( 2 ) 結合名飼ー I の②に準じる。 カラス→スラス ( 磨り glas) アイロン→デンキアイロン ( 電気 ir 。 n ) →タ・ジチジス ( 炭酸 gas) 五ス ク明ーム→ナマクリーム ( 生 cream) キ万ラツリカ ニホンテレビ キ歹デルプストニチラデジア Ⅲ後部がローマ字読みのもの一最後の字の 第一拍まで高い。 ォ = ビー ( o B) ピーティーエー ( P T A) ワイエムシーエー ( Y M CA) 注④ローマ字のつづり読みは , 拍数により 外来語単純名詞の法則に準じる。 ( 9 参照 ) 名詞 17. 三つ以上の語が複合した結合 ユ罘スコ , ュ・ä(UNESCO) 東京十 ( 外国語十大学 ) ト = 言 = 五歹ヨ歹イガク ァ / キキカノンヤ電気十 ( 機関十車 ) オーマソョイグサ大十 ( 待宵十草 ) れめが前にずれる傾向がある。 ( 12 ~ 16 参照 ) し , 拍数が多くなるとアクセントの高さの切 の語は後部名詞のアクセントを生かす。但 アクセントに似るが , 後部が平板型・尾高型 I 後部がすでに複合語の場合ー結合名詞の
アクセント習得法則 8 ~ 10 サンスー ( 算数 ) テンノー ( 天皇 ) 原語のアクセントを生かす傾向が強い。 フライ 注⑦「形傍よ ) 」「宮」「言」「号」「像」「天」「面」 フコード デルバム デクセントス下ッキングチンバリング 「曜」などのつくものは , ( 1 ) ②の両様にな りやすい。 注③接頭辞など造語成分を含むものは , 複 ゲッョー , ケッヨー ( 月曜 ) 合名詞のアクセントに準じる。 ( 16 参照 ) > 僧形・新宮・宣言・称号・仏像・炎 天・海面・・・ 10. 省略語・倒置語 注⑧「以」「各」「貴」「旧」「現」「故」「今」 「諸」「新」「先」「前」「尊」「当」「同」「某」 「本」「明」「両」などが連体詞的につくも A ・省略語ー全般的に , 拍の数及び , 省略のさ のは , 頭高型になりやすい。 れ方によって , アクセントが定まる。 ジョケイ ( 諸兄 ) ゼンケッ ( 先月 ) I 単純名詞 > 以東・各人・貴殿・旧教・現代・故人・ ニ拍語ー原則として頭高型。 甲 ( 医学 ) 囚ク ( 尨大 ) 歹イ ( 経済 ) 今日・新教・前世・尊兄・当人・同党・ ケ ( ロケーション ) チス ( ポーナス ) 某日・本日・明日・両人・・・ 注⑨ 人格を表わす語は , 頭高型になりやす ②三抽語ーほとんど外来語名詞で , 多く頭 高型。但し , 古く入った語や , 日常頻繁に 歹イジン ( 大臣 ) ニョーポー ( 女房 ) 使われるものは , 平板化する傾向がある。 > 関白・元帥・太閤・大将・村長・・・ スーマ ( パーマネント ) ニューム , アルこ ( アルミニューム ) 歹イヤ→ダイヤ 9. 外来語の単純名詞 ( 転成名詞及び ( ダイヤモンド , ダイヤグラム ) 外国語的造語を含む ) ( 3 ) 四拍語ーほとんど外来語名詞で , 原則と して平板型。 I(I) ニ拍語ー原則として頭高型。 インフレ ( インフレーション ) シャム穴タスイジョー アナクロ ( アナクロニズム ) ( 2 ) 三拍語ー原則として頭高型。但し , 引き 注意①和語は厳密には省略語といえないの 音で終るものは , 原語のアクセントを残す で , 複合以前のアクセントの型を生かす。 傾向がある。 Ⅱ複合名詞 グラス歹ーキ歹ンスゼット ( 1 ) ニ拍語一頭高型。 タテー ラギ , ラギ ( 市議会議員 ) フリー 甲キ , キ甲 ( 古事記・日本書紀 ) ( 3 ) 四拍以上の語ー原則として終りから三拍 宅ポ めまで高い。 ( モダンポーイ ) レゴードクリームナトリューム ②三拍語ー和語は原則として平板型。 注①但し , 終りから三拍めが引き音・撥音・ キザラ ( 黄ざらめ ) ジタマ ( 地卵 ) 促音などで , そこにアクセントの高さの切 漢語は省略意識の薄れるものが多く , 癒合 れめがくると , その切れめが前にずれる。 名詞の法則に準じる。 ス永ンサー 歹ンポ ( 健康保険 ) 五一ソ ( 労働組合 ) ストーリー Ⅱ古く入った語や , 日常頻繁に使われている クーユ ( 空中輸送 ) ・四・五拍語 ( 時に六拍語 ) では , 平板化 ( 3 ) 四拍語ー原則として平板型。 する傾向がある。 コーコー ( 高等学校 ) ゴムナガ ( ゴム長靴 ) ガラスバケッポタンフライ ムギトロ ( 麦とろろ ) ロークこ ( 労働組合 ) ァイ五ジオルガンテープルアルバム マスコこ ( マスコミュニケーション ) アルコールナンバリング 工アコン ( ェアコンディショナー ) 注②人により平板化に差が多い場合は , 平 ( 4 ) 五拍以上の語ー中高型になる。 ニヨーソ ( 日本教職員組合 ) 板型注記を割愛したものがある。 Ⅲ新しく入った語などで , 十分日本語化して ニッケイレン ( 日本経営者団体連盟 ) いないものや , 外国語に親しい人の発音には , 注数の含まれるもの , 「大」 ( 大学の略 ) のつ 14 い。
アクセント習得法則 58 ~ 側 テジデンバラバラ 田 . 同じ語 , または相似した語が重 チックバラン デップアップ 複した二・一・四拍の漢語 アメコンコン ( 雨こんこん ) I ニ拍語ーすべて頭高型。 キシャポッホ ( 汽車ぼっぽ ) ジシ ( 孜孜 ) 它ヒ ( 霏霏 ) ルル ( 縷縷 ) スッタモンダ ( 擦った揉んだ ) 不イダクダク Ⅱ 三拍語ーすべて頭高型。 ( 唯唯諾諾 ) ジクジ ( 忸怩 ) 明ンリ ( 淋漓 ) キョーこシンシン ( 興味津津 ) キ・ゾクエンエン ( 気息奄奄 ) Ⅲ四拍語ー多くは平板型。 ( 1 ) 同じ語の重複ー平板型だが〇〇型 Ⅲ複合の度合が強く一語としてのまとまりを にも発音されるものが多い。 もつもの一結合文節の法則に準じる。 ( 参 モクモク ( 黙黙 ) ガクガク ( 諤諤 ) 照 ) ( 1 ) 八拍語のもの一多く〇 ) 〇〇型。 タンタン ( 淡淡 ) コーコー ( 皓皓・煌煌 ) チ万 - ジ・ア冫ヾラバラ ユーユー , ユーユー ( 悠悠 ) ・テラ・夢・ジスラバラ ケイケイ , ケイケイ ( 烱烱 ) ズルズルッタリ ( 2 ) 相似した語の重複ーすべて平板型。 ランマン ( 爛漫 ) サンラン ( 燦爛 ) ドッコイドッコイ アイタイ ( 靉靆 ) モーロー ( 朦朧 ) シンネリムツツリ コーコツ ( 恍惚 ) ウッポッ ( 鬱勃 ) ②六拍語のもの ( ィ ) 第二拍が撥音のもの一多く〇 80 注意①外来語は名詞 ( 9 , 16 ) の法則に準 〇〇型。 チンチクリンツラ・ヅルテン 注意②学校文法で形容動詞といわれるもの の中で , 特殊な形をもたない漢語は , 一般 注①但し , 第四拍に高さの切れめをおき の漢語名詞の法則が適用されるので , その にくい語などは , アクセントの切れめが 条 ( 6 ~ 8 ) に送った。「杳 ($ ) 」「快活」「円満」 原則として前にずれる。 チラヲンカン トラ尹ンカン など。 回第二拍が促音のもの一多く〇〇〇〇 0 〇型。 59. 擬声・擬態語を後部とする語 オッチョコチョイスッカラカン スッテンテン その語の複合の度合によって異なる。原則と 内前二拍が漢語のもの一平板型。 チュ = ララジ ( 宙ぶらりん ) して文節の法則に準じる。 ( ~ 参照 ) I 前部の語と後部の語が複合しないもの ヘンテコリン ( 変挺りん ) 前・後部のアクセントを生かす。分離文節の こョーチキリン ( 妙ちきりん ) 法則に準じる。 ( 参照 ) 注②前部が名詞からなる四拍語は , 平板型 ノ歹リ・ノ歹リ の傾向がある。 ガタン・ピシャン アセダク ( 汗だく ) シワクチャ ( 皺苦茶 ) ・アンア / ・、ラ少ヾラ イイ・ダクダク ( 唯唯諾諾 ) ギョーこ・シンシン ( 興味津津 ) 8. 副詞・指示疑問を表わす語・接 キラ・エンエン ( 気息奄奄 ) 続詞・感動詞などについて Ⅱ複合の度合が弱いもの - 前部の語のアク セントを生かす。接合文節の法則に準じる。 これらの類は他にくらべて一見法則がないよ ( 98 参照 ) うだが , それでも副詞 , 指示・疑問を表わす語 , チリジリバラバラ 接続詞 , 感動詞など , それぞれのグループの中 ノ歹リノタリ でまとまった法則をつくっている。 ガ歹ンピシャン この類の語の中には , 転成してできたものや チ手ンプイプイ 複合によるものが多く , 厳密にはその成立過程 52