中央官庁 - みる会図書館


検索対象: 「東京集中」が日本を滅ぼす
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1. 「東京集中」が日本を滅ぼす

報化が進むと地方の権限にしてもこなしていけるということがある。しかし、逆にこれまでは民 間企業と中央官庁の直接接触が、時間と費用の両面においてむずかしかったがゆえに地方の権限 とされていたものも、ニ = 1 メディアを活用したコンタクトが容易になってしまうと、中央官庁 の権限にしてもよくなってしまうともいえる。 あるいは、沖縄の南北大東島では、これまで那覇からビデオにして送られてきたテレビ番組を 有線放送で見ていたが、衛星放送の開始で東京からの電波を直接受けることになり、テレビの分 野における那覇の情報発信機能は、この地域に対して失われた。 また、ある電器メーカーは最近、地方における営業所を大幅に集約化した。直接販売店とコン タクトしなくとも、商品の動きを刻々とっかめるようになったからである。 ともかく、これまでの動きを見る限り、情報化による経済社会活動の広域化は地方における利 便性の向上をもたらしてはいるが、ローカルな情報発信機能はむしろ衰退しつつあるといえよ それでは、地方が情報化の進展のなかで、情報発信機能を強化していくためには、どうすれば よいかといえば、従来の圏域にこだわらないより広範な、できれば全国的、さらには国際的な広 がりをもった情報発信機能を獲得していくことしかあるまい。 放置すると東京五 000 万人時代も

2. 「東京集中」が日本を滅ぼす

ている企業の不便はどうなるのか。関西や他の地方の企業は東京にいないことの不利を受けるの はしかたないが、東京の企業が役所が地方に移転して不便になるのは許しがたいとでもいうのだ ろうか。行政機関同士の問題についていえば、現行の地方自治体と中央官庁の関係に似たもの が、政府機関同士に持ち込まれるだけである。 もうひとつ出てきそうなものが、労務対策である。これは役所にしてみれば最も頭の痛い問題 であろう。どこの省庁でも、この問題があることだけでも中央官庁の地方分散などという案を支 持することを躊躇するかもしれない。通産省でも工業技術院の研究所の筑波移転に際して、これ でさんざん苦労したという話を聞く。 しかし、これについては、きめ細かく思い切った労務対策で、かなり有効に対応できるはずで ある。だいたい役所とか公共的機関の労使関係というものは、民間のそれと比べてあまりにも画 す一的で、勝った負けたの単純な話が多すぎる。民間なら会社のめざすところを極力実現しつつ、 社員にと 0 て不利にならないような道が極力労使の間で追求される。 を ところが公務員に関しては、行政改革をめぐる議論でも、公務員を困らせることが行革である 都 首 がごとき受け取り方がされる。また、民間では転勤などにしても、それが本人の生活上不便にな 国 全 らないように、いろいろな工夫がされている。持ち家の社宅としての借り上げなどその最たるも 四のだし、総合商社が海外赴任者に対してとっている仕組みのきめ細かさには感心するばかりであ 第 る。そういう神経のいきとどいた方策をとれば、かなり問題の困難さは減ずるであろう。

3. 「東京集中」が日本を滅ぼす

そこで最近注目されているのが、行政サービスも含めた第三次産業の地方分散である。このな かにはリゾート開発といった、従来型の地方振興策の延長線上にあるものもあるが、官公庁、公 的施設、大企業の本社機能といったもの、いわゆる中枢管理機能の地方分散が重要な課題として 注目されている。昭和四〇年代には、東京など大都市を中枢管理機能に特化させ、生産機能は地 方にもっていくと考えられたのがここまでかわってきたのである。 具体的な手段として、一部中央官庁の地方移転、地方分権の推進、民間に対する規制緩和、イ ンフラ整備、東京都心のオフィスに対する課税といった提案がなされ四全総でもかなり取り入れ られた。しかし、現在論じられているような政策の効果は限定されたものであろう。 一方、各界からの提案にはその構想を実行していくための手順がよく考えられていないことが 多い。また、遷都とか道州制とかリニアモーターカーとかになると、長期的課題としては面白い が、さしあたっての問題解決にはならない。黒川紀章氏らのグル 1 プが人口五〇〇万人の東京湾 新首都島、リニアモーターカ 1 を活用した関西・名古屋への首都機能分散などを提言した「東京 改造計画の緊急提言ー・ー・一一〇一一五年の国土と東京」などすばらしい構想だが、東京集中をどう排 除するかというのはもっと緊急の課題なのである。 そこで私が提案したいのは、政府のリーダ 1 シップのもとで全国的な情報発信機能をもつよう な機関の設置やイ・ヘントの開催を地方で行うことにより、首都機能を全国に広く分散し、従来の 首都東京Ⅶ地方という関係を根底から考え直そうという「全国首都化構想」である。

4. 「東京集中」が日本を滅ぼす

これは情報化というものの一面である「情報の重要性が増す , という状況についてのひとつの 真理を含んだ指摘である。だが、国際化という観点からいっても日本人はこれまでのフェース・ ・フェース過度重視を改めねばならない。「机の上に何枚名刺を置いていったとか、何回訪 ねてきたかで熱意を判断する」、「文書での問い合わせに迅速に返事を出そうとしない」、「一緒に 酒を酌み交わさないと腹を割った話ができない」などというのが国際化が進むなかで許されるも のでないし、そういう悪習を改めることは東京集中排除にも必要なことである。 それに情報化のもうひとつの側面であるニュ 1 メディアの発展は、確実にフェース・ツー = ースの接触の必要性を減らすものである。そのことについての分析は、すでに情報化が地域開 発に対してどのような影響を与えるものであるかということについて論じたときに、詳しく述べ たので一般論を繰り返すことはしないが、ニューメディアを行政機関が本当に使いこなすように なれば、中央官庁の組織の一部が地方にあっても、そう不便なものではなくなると思う。テレビ 会議設備があればヒアリングなどには十分使える。 しかし、現状からすれば役所のニューメディアへの取り組みは、恐ろしいほど遅れている。役 人の名刺には、まずファックス番号が記入してない。役所では、省庁内部の組織間相互くらいし かファックスで書類を送ったり、受け取ったりすることを、予想していないのである。 今すぐこ、 冫たとえ沖縄のような遠隔地でも中央省庁業務の一部を引き受けることも可能だと思 136

5. 「東京集中」が日本を滅ぼす

戦後四〇年の長い平和のなかで、無意味な規制や手続きが積み重なってきているのも事実であ る。ある鉄鋼会社が製鉄所を新設したときに、許認可等の申請書類が七五〇〇種類にのぼったと いう話がある。 ともかく役人にとって既存の手続きを簡素化するというのは、それ自体かなりの手間がかかる なんとも魅力のない仕事なのである。細かい手続き書類のようなものをゼロべースで見直す仕組 みにして、手続き書類が多いと中央官庁にとってむしろ面倒な状況にでもしなくてはどうにもな るまい。 また、たとえば住宅建設を促進するようなためにも、税制や金融からのアプロ 1 チより規制緩 和の方が絶対に有効である。社会福祉国家的思想の行き過ぎもあって、無意味に膨れ過ぎた政府 活動に歯止めをかけることは、先進各国のほとんどにとって必要なことでもある。 る しかし、なんでもかんでも公的なプレゼンスを減らした方がいいのかといえば、決してそう す 提いうものではない。逆に政策手段としては、政府が自ら新しい状況をつくり出す、あるいはその 化ために知恵を出すということも重要になってきているのである。民活ばやりのなかで、さすがに 首地方からは、「地方には活用すべき民間活力もない。中央民活、地方官活にして欲しい」という 全 声が聞こえてきつつあるが、当然のことである。民間にまかせておけばよいところはまかせ、公 四的にやった方がよいことは企業的センスをとり入れつつ政府自らする、あるいは民間に委託して 第 行わせるというような方向がよいのではないか。 131

6. 「東京集中」が日本を滅ぼす

でも少し論じてきたように、そういうわけでは必ずしもない。 明治政府のもとでは東北出身者には、「朝敵」という汚名がっきまとったのは事実で、南部藩 出身の原敬が大正天皇の即位式に「奥州出征のとき総督に下付されたる錦旗」が使用されようと したのを、内務大臣として「一視同仁の皇恩に浴し居る今日に於いて恰も外征におけるが如き語 句を使用する事は不穏当なりと認め、之を削除せしめた」ということもあった。 そして、実際明治政府内で東北出身者が冷遇されたというのも事実には違いない。しかし、そ れは薩長などいわゆる藩閥からはずれた地域一般にいえることでもあって、紀州出身の陸奥宗光 ですら「往昔平氏の盛時、世人之を目して平氏の族に非ざる者は人間に非ずといへり。今や薩長 の人に非らざれば、殆ど人に非らざる者のごとし」としたほどである。しかし、それもせいぜい 代 大正までのことであろう。大正七年の原敬の首相就任はその変化の象徴的事件である。 時 活しかし現在に至るまで東北の人たちと西日本出身者の間には、中央政府に対する意識の違いが ガかなり存在する。なにより東北出身の国家公務員というのはたいへん少ない。東京出身者といっ は ても不思議と何代か前に西日本からやってきたという人が多い。各地方自治体の職員の中央官庁 紀 世に対する接し方というのを、霞ヶ関の側から見ていても、西日本は積極的というか図々しく、東 日本は消極的ないし従順である。あるとき、私のいたセクションに東北のある県から出向してき 一 ~ た職員が「われわれは霞ヶ関に来るときは江戸城に上るつもりなのに、西日本の連中はなれなれ しすぎるし国を騙すことばかり考えていてけしからん」といったので笑ってしまったことがある 227

7. 「東京集中」が日本を滅ぼす

ば会議の地方開催である。会議の開催は、かなりの金銭を開催地に落とし、しかもその模様が全 国に流されることは情報発信機能の地方分散にも役立つ。 しかし、現状では、政府関係の会議が地方で開催されることはまれであるし、それどころか第 一章でも紹介したとおり、少数の中央官庁関係者に説明するために多人数の地方在住者が上京し なくてはならないことも多い。 「地方自治体や、企業の人に東京に来てもらうより、こちらから出向いた方が合理的ではない か」などという発想はまずない。 しかし、個々の省庁や公務員が、こうした習慣を改めようとしても、出張費が足らないという ことがネックになる。通産省が先に大阪に設立した研究組合の場合でも担当官の出張旅費不足が 最大の悩みという。そういうことになると馬鹿げているとわかっていても、多人数に東京に来て すもらうことにな 0 たり、ひいては地方に公的機関を設立することをディスカレッジしかねない。 提本気で政府活動の地方分散を考えるなら、出張費の確保といったことは最大級の課題になろう。 を 都 首工場よりパンダが地方振興に役立っ 全 政府がイニシアティブをとれるイベントの開催や施設の設置についても、東京偏重が改められ 章 四なくてはならない。 第 これに対して、なにをするにも東京の方が効用が大きいから、しかたないという声もある。し 139

8. 「東京集中」が日本を滅ぼす

て、仕事を地方のソフトウェア・ハウスがとることも可能である。実際、沖縄や北海道のような 従来は本土に生産品を売ることがむずかしいと考えられていた超遠隔地域での成功者が出ている ことは、注目すべきである。ただし、その前提としては、かなり人件費が安いことが条件になる ようで、歓迎すべき現象ともいえないところもある。 第三点については、ともかく「コン。ヒュ 1 タもそれ自体はただの箱で、ソフトウェアを伴って 初めて使いものになる」とまでいわれているほどであり、各地方にとってソフトウェア業の育成 というのは大きな課題となっているわけだが、ソフトウ = ア業の都道府県別の分布をみると、東 京だけで三四パーセントとなっているのが現状で ( 通産省調べ ) 、東京集中の促進要因としての性 格が強い。 第四点の、ニュ 1 メディアの発展により経済社会活動が広域化するということについては、二 面性がある。プラスの面としては、地方においても東京や日本の他の地方、さらには海外の情報 ねヘアクセスすること、逆に地域外への情報送信をすること、このいずれもが容易になるので、地 の方における生活や産業活動における利便性が向上し、場合によっては、競争力も向上するという 集 ことがある。 京 しかし、その一方、情報の流れの広域化は、ローカルな情報発信機能を不必要にしていくこと 一になることが多い。たとえば、役所の仕事について考えれば、これまで地方の出先や自治体で は、情報不足で十分な判断ができないだろうというので中央官庁の権限とされていたことも、情

9. 「東京集中」が日本を滅ぼす

東京集中防止という観点からだけでなく、地域開発などのための施策の地域指定といったもの も、複数。フロジ = クトの一括決定方式の対象とするべきである。現在はプロジ = クトごとに対象 地点を募るため、各地方自治体は耳ざわりの良いものなら、何にでもダボ ( ゼのように食いつい て誘致運動に奔走する。その結果、対象地点数は無制限にふくれあがり、それに反比例して指定 の効果は小さなものになってしまう。「指定を受ける最大の意義は、指定されないことのデメリ ットを避けること」とは、九州のある県の部長さんの言である。 これには、そのプロジ = クトのために特別立法したり新しい予算項目を獲得するためには、応 援団の数が多い方がいいという中央官庁サイドの事情もあるわけだが、いずれにせよ、まともな 状況ではない。これも一括決定方式の導入によりそれぞれの地方に本当にあったプロジ = クトが 選ばれることで、少しは、、、 し方向に向かうのではないかと期待したい。 どの地方にどんな機能を配分するかは、各地方の希望を尊重しつつも政府の責任においてそれ ぞれの地方の特質にあったものを選んでいくべきである。さきほどの国体会場のようなケースで も、最初からウェート・リフティングがいいとか、軟式野球が希望だとかいう市町村がそうある はずはないわけで、普通はパレーポールとか硬式野球とかを希望するのを、県の方から割り当て ていくのである。しかし、場合によっては何十かのプロジェクトを用意して、。フロ野球のドラフ ト会議のように、各都道府県がくじ引きで決めた順番に従って選んでいったって、良いこともあ りそうである。 146

10. 「東京集中」が日本を滅ぼす

ては、各省庁にも割り当てがある。もちろん、各省庁では全国各地で受け入れるわけだが、いき おい東京での数字が多くなる。これなど、各省庁に九州や北海道に新しい組織をつくらせてそこ で離職者を受け入れさせればよい。本書でたびたび述べてきたように、中央官庁の仕事には、部 局ごと地方へ移すことができるものもいくらでもあるし、そうでなくとも、組織を少し再編成し て遠隔地でも不便のない部局をつくることもできる。もちろん、それは若干は面倒なことかもし れないが、その少しの手間ひまを怠って政府みずから東京集中に手を貸すべきではあるまい。 ところで、沖縄では人口が増えて失業率も高いのに、どうして社会不安がおきたりしないの か、という声が当然出てきそうである。一言でいえば、ワ 1 クシ = アリングがうまくいっている のである。終身雇用制が本土ほど一般的でないという面もあるが、大学を卒業しても四月から働 る え くとは限らないし、親戚の仕事をしばらく手伝わないかということもある。 見 ワ 1 クシェアリングというのは、これからの日本にとって大きな課題だが、沖縄ほどではない のにしても、大都市に比べて地方では、はるかにシステムをうまく構築できるはずである。そし 日 明 て、それに成功した地方というのは、人口増加を通じて経済が拡大再生産の方向へ向かうのだと ら 黽田、つ 0 沖 最近、都会で失業して田舎へ帰る人も増えていることが一部地域の人口統計からもうかがえる 七が、これなども積極的な要素として活用する道があるはずだ。 249