コメ - みる会図書館


検索対象: コメをどうする
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1. コメをどうする

コメ農政は歴史はじまって以来の大きな曲がり角に立っている。自由米 ( ヤミ米 ) 市場 の膨張と減反政策の破綻の可能性から、食管制度は風前のともしびの状態にある。一方、 米国はコメ市場開放を要求している。「コメ聖域論」は日本人の″油断〃であった。 本書の上梓準備中にも、事態は急速に進展した。五月一日、レーガン米大統領と中曽根 首相は、ガット新一フウンドでコメ問題を協議することに合意したと伝えられる。コメと農 業をめぐる世界はどう動いていくのか。日本農業はどう対処すればいいのか コメについては、意外に知られていないことが多い。「コメづくりは日本が世界で一番」 という非常識や、「コメは国家貿易品目だから輸人しなくていい」とか、はなはだしいの きは、「輸人自由化すると外米がどっとはいってきて、日本の稲作が全滅する」という見方 かわず えさえある。井の中の蛙だ。おコメは主食としてあまりにも身近な存在であったため、知ら ま なさすぎたのだろうか。筆者も今回、本書を書きながら多くのことを勉強した。 まえがき

2. コメをどうする

の重要性は従前よりは相対的に低下していく。本来なら、農業は先進国の条件をもつ日本 に向いた産業である。 日本のコメも、技術革新と規模の利益でコストダウンしたり ( 実際、 , ハ〇キロ当たり七 〇〇〇円程度にコストダウンし、輸人米と十分競争できるコメづくりをしている農家がい る ) 、あるいははさ架け米や無農薬米など高付加価値のコメづくりを追求すれば、輸人を 自由化しても壊滅的な状態になることはない。 食管制度のもと、画一的な。ハターンでコメづくりをするのではなく、地域や農家の条件 に合わせたコメづくりをすべきだ。画一性から解放され、ゲリラ戦法的発想に戻ること が、自由化に強いコメづくりになろう。 自由化されれば、食味のいいコメは輸出も可能であろう。日本経済の国際化とともに、 論海外で生活する日本人は増える。また欧米人の中にも「ごはん」を食べる人が出てくるの 改ではないか。彼ら向けに「ごはんー用のコメを輸出すればいい。実際、いま日本の在外大 管 食使館には日本からコメを送っている。 章 農業に対する規制を緩和し、市場原理を復活させれば、コメ農業は強くなれる。以上、 第 二つの提案とも、われわれが一九八一年に発表した z —提言 ( 「農業自立戦略の研 ウラ

3. コメをどうする

田の草などとれない。あるいは、はさ架けで天日乾燥したうまいコメも、米国はつくらな い。だから、高付加価値のコメづくりこそ輸人自由化に一番強いコメづくりになるのだ。 平野部は、規模拡大と技術革新でコストダウンをして競争する。山間地の狭いところ は、高付加価値のコメづくりをする。そういう形で、それぞれの地域の条件に合った形で 最適なコメづくりを行う。そういうゲリラ戦法的発想で取り組めば、輸人自由化に強い農 業になる。いまは食管制度のもと、山間地も平野部も同じようなコメづくりをしている が、そこに日本の農業の脆弱性が出てきているのだ。 また、それぞれの地域の条件に合った形でやるほうが、秋の収穫期には伝統的なはさ架 け乾燥の風景も出るなど、古きよき農村も復元できるし、強い農業もっくり出せる。食管 制度の弊害は、そういうところに大きくあらわれているといえよう。 革 改川財政負担の矛盾 管 食 章 コメに対する財政負担 第 「過保護農政」の典型といわれるコメに対し、政府はどのぐらい財政負担をしているの 16 ラ

4. コメをどうする

3 日本の選択 揺らぐコメ聖域論 コメの輸人自由化がガットの場に持ち出される可能性は大きい。の三〇一条提訴 は一応却下されたものの、「一難去ってまた一難」だ これまで、コメは市場開放問題の「聖域」とみられてきた。水田は急峻な地形をもつ日 とよあしはらみずほ 本では国土保全に大いに寄与している。国土保全、環境保全、豊葦原瑞穂の国、稲作文化 ともかく、「コメだけは特別」とみられてきた。しか は日本民族のアイデンティティ 抛し、いまやコメも「聖域」ではなくなったといえよう。 開仮にガット新ラウンドで、わが国のコメ輸人全面禁止が非合法とされた場合、一部であ 場 市 れ輸人を行わなければならなくなる。あるいは米国の三〇一条が発動され、対日報復措置 の 「として日本製工業製品の輸人を制限する措置がとられた場合、国内の産業界、財界からコ 章 メに対する批判が一斉に吹き出すであろう。 第 コメの消費サイドからも、「安い米が人手できれば歓迎」と、輸人自由化への期待があ 141

5. コメをどうする

第 2 章自壊するコメ農政 が吹いている。第一次石油危機後、千載一遇のチャンスとばかり石油値上げでモウケ主義 に走った石油業界批判に似たものが起きている。「農業冬の時代」である。 もう一つ重要なことは、米国の精米業者協会 (czä<) のコメ市場開放要求を誘発した ことだ。日本人はコメⅡ稲作に対して特殊な気持ちをもっている、コメについて無理な要 求をすると日本の国民感情を害し、日米両国の友好関係を損ねるとし、従来、米国はコメ の市場開放要求を遠慮してきた。しかし、日本国内でコメ農業の評判が悪くなった。 はこれをチャンスと判断し、市場開放を要求してきたのである。 これが、経済原則を無視した政治米価の結末である。食管制度の見直し、コメ市場開放 の危機である。農協は食管制度に収益の基盤があるにもかかわらず、自らの手でそれを壊 してしまったのだ。 食管制度は″自爆装置〃に点火した 新たな減反政策 食管制度と表裏一体をなしてきたのが、水田利用再編対策 ( 昭和五三年度スタート ) で

6. コメをどうする

え方は世界の中でみると、特殊日本的であって、世界の常識ではない。このことをよく理 解しておく必要があると思う。 一九八六年九月、が日本のコメ市場を開放せよと要求してきた。おコメは特殊な 商品で、市場開放問題では " 聖域。だと考えていた日本人はビックリしたかもしれない が、彼らからしてみれば、これはごく当たり前のことである。米国の農民は、コメは輸出 するためにつくっているからだ ( 生産の四、六割は輸出向け ) 。 日本のように高所得国であって ( コメが高値で売れる ) 、しかもコメの大消費国である 国は、市場として大変魅力がある。そういう国が市場を閉鎖したままであれば、そこを狙 うというのは、「輸出するために農業をする」という彼らの行動様式からすればごく当た り前のことである。 海外農業調査の初期の頃、強く印象づけられたのは以上のことである。農業というの は、技術進歩の速い、研究開発型の産業だということ、彼らは輸出を前提に農業を行って いるということ、この二点を十分考えておかないと、農産物の貿易摩擦を理解することは できない。 なお、今回のの市場開放要求の背景には、このような一般的背景のほかに、コメ 126

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ある。これは、生産調整により過剰米を減らそうとするものだが、その水田利用再編対策 も、三期目が六一年度で終わり、六二年度からポスト三期対策にはいる。 水田利用再編対策はコメ過剰対策である。わが国の水田は約二八〇万ヘクタール ( 六〇 年現在、水田本地面積 ) である。これに全面作付けすれば、コメの潜在生産量は約一三八 〇万トンになる ( 平年作 ) 。ところが、コメの需要量は約一〇四〇万トンにすぎない。減 反しないと需給バランスが保てないのである。そこで政府は、転作奨励金を出して、水田 にコメ以外の作物をつくるように農家を誘導してきた。六一年度の減反 ( 転作面積 ) は六 〇万ヘクタールである。 しかし、コメ消費が減りつづける一方、技術進歩でコメの単収が増加傾向にあるので、 ポスト三期対策では過剰米を出さないためには、もっと大幅な減反をしなければならな い。また、単にコメから他作物への転換ということだけではなく、時代の要請から「産業 として自立しうる農業の確立」、「農産物の内外価格差の縮小」、「農産物市場アクセスの一 層の改善」を目標に、生産性の高い水田農業をめざさなければならない。そこで、 , ハ二年 度から新しく「水田農業確立対策」がはじまることになった。

8. コメをどうする

ニマム・アクセス ) がなされる必要がある。第二に、米国はタイ米の農村窮乏化価格には かなわない。したがって、日本が自由化しても、一番可能性の大きい加工用米市場をタイ に奪われる可能性がある。 この二つの条件から、コメ市場開放問題は、米国産コメに対し輸人枠を設定するという 方向が、一つの解決策として浮かんでくる。 いまや、コメは閉鎖的市場の象徴になっている。一方、米国側としては、国内の選挙事 情もあって、日本に何かさせなければならない。そこでコメが格好の標的になっている コメの全面自由化でなくても、一部でも市場参人を実現させることができれば、米国側に とっては国内政治上成功となる。このような諸条件を勘案してあぶり出し手法で予測する と、「輸人枠、の設定という解決策が浮かんでくるの】だ朝一 ~ ただし、米国には、業界の実利本位のホンネと、政府の自由貿易主義のタテマエがあ る。コメ業界のホンネは「輸人枠の設定」かもしれないが、米国政府は「輸人自由化」を 求めつづけるであろう。わが国の対応としては、「国家貿易品目」であることが肯定され たとき、「輸人枠の設定」で落ち着くことになろう。 140

9. コメをどうする

えれば困難だーーーこれが米国政府の立場だったと考えられる。 そこで、米国政府は自らの手を汚すのを避けるため ( ? ) 、あるいは時間かせぎ ( 問題 の先送り ) の意味もあって、国際機関であるガットの場に議論を持ち込むという選択をし た。ガットに持ち込み、いわゆるロール・バック ( 保護措置の見直し ) の問題として国家 貿易品目をとり上げ、日本のコメがガットに違反していないかどうかを多国間で協議しょ うという戦略だ。これが咋年 / ( 一九八六年 ) 一〇月段階の動きの背景であ , に」 しかし、八七年にはいって、米国政府の動きには変化がみられる。コメの市場開放問題 に関しては日本人は一枚岩だと思っていたら、意外にそうではない。市場開放賛成論もあ る。日本国民の世論は分散しているという見方が、国務省にも出はじめているようだ。も し米国政府がそういう見方に確信を抱くようになれば、コメ市場開放問題に対する米国側 の要求はより一層厳しいものになっていこう。 コメはガット国家貿易品目か のコメ市場開放要求に対して、日本政府 ( 農林水産省 ) は「日本のコメの貿易制 度 ( 輸人制限 ) は、ガット上認められた国家貿易制度である」として、の申し立て 136

10. コメをどうする

報復できるからだ。たとえば、米国がコメを自由化している場合、日本もコメの輸人を自 由化していないと、不公正慣行として報復をうける危険がある。 は八六年一〇月二三日、の対日提訴を却下した。しかし一方で、日本に 対し、八七年からはじまるガット ( 関税貿易一般協定 ) の新ラウンド ( 多角的貿易交渉 ) の場で、コメの市場開放問題を議題とするよう求めた。日本側の対応次第では、の 提訴を改めてとりあげる方針だという。あくまでも条件付き却下だ また、八七年にはいると、米議会の対日攻勢が強まり、主要コメ生産州選出議員らが、 コメ市場開放要求法案を議会に提出しはじめている。 わが国はこの問題にどう対処すればよいか。まず、のコメ市場開放要求の背景、 米国政府の対日姿勢の変化などを明らかにしよう。 放 開 場 市 先進国農業は輸出を前提 の 章 技術進歩の速い欧米農業 第 日本が否が応にも国際化していく以上、われわれは世界農業についての基礎的知識をも