できる仕組みをつくっている点、マイナス面が大きい。これは改善されるべき点である。 おそらく、この一点さえ改善されれば、百万の提言や叱責にもまさる効果をもとう。 区新しい農協ビジョン 地域農協と専門農協 農協の目標は加盟農家の利益極大化である。農協にとって農家は顧客であるべきだ。マ ーケティング能力が高く、購買事業等で良質のサービスを農家に供給できる農協が発展 し、逆に、そうした能力に欠ける農協は加盟農家数が減っていく状況になることが望まし い。農協間の競争があってはじめて、農家の利益は最大になる。 論 農協はもう一つ、組織改革の問題をもっている。農協の基本理念は協同組合原則であ 改る。しかし、この原則は農家が均質である場合に成立するものである。兼業農家が増え、 協 農階層分化が大きい現在、すべての農家を「農民」という社会的職能集団としてとらえ、そ 章 のもとで農協を運営することは、もはや適切でない。専業農家に専門的にサービスを供給 する「専門農協」と、兼業農家を含めた地域住民にサービスを供給する「地域農協」が存 20 み
後、稲作農家数が現状と変わらないと考えている人は二、三割である。それに対して、半 分あるいは三分の一以下に減るとみる人が二、三割もいる ( 長野では四割 ) 。自らの周辺 を見渡したとき、後継者のいない高齢農家や兼業農家が増えているからであろう。 当面、農業の経営環境は厳しい。ほんとうに経営能力の高い農家でないと、営農をつづ けることはむずかしくなっている。加えて、趨勢として高齢化や兼業化が進行している。 こうした情勢を考えると、農家らしい農家は、表 1 ・ 7 にあらわれた以上に減る可能性が ある。したがって、規模拡大の可能性は、多くの人が想定しているよりも大きいのではな いだろうか 3 農民という職業に満足しているか 農家は「農業者」という自分の職業をどう評価しているか。表 1 ・ 8 に示すように、 常に満足している農家は一割程度である。長野県の農家は一七 % と高いが、これは調査対 象者が農業経営士であり、地域の中でもトップクラスの人たちばかりだからであろう。多 くの地域で、まあまあという評価が多いが、長野を除くと、不満足 ( 五段階法でみて—
機械化だけが進んだことを指摘したかったからだ。 次の二つの条件から、農家にとってはコストダウンにつながらない技術革新も合理的な 選択であった。第一に、価格支持政策の存在である。生産者米価の決定が生産費所得補償 方式である限り、コスト上昇分は価格引き上げで面倒をみてくれるから、農家にとっては コストダウンによる農業純収益改善の誘因は乏しい。 第二に、非農業分野における所得機会の拡大である。機械化によって農業労働時間を減 らし、余った労働時間を農外就労 ( 兼業 ) に振り向ければ、仮に過剰投資で農業所得は減 っても、″農家所得〃つまり農業所得プラス農外所得はふえる可能性がある。 兼業所得が農業のコストダウンによる利益よりも大きい限り、農家にとっては資本生産 性を犠牲にしても、労働生産性の向上を追求することが経済合理性にかなっている。しか も、過剰投資によるコストアップ分は政府が価格引き上げで面倒をみてくれるわけだか ら、農家は何の損失もなしに兼業所得をふやすことができたのである。 このように、もし生産費補償の価格支持政策がなければ、これほどの過剰投資、すなわ ち奇形的技術革新は生じなかったはずである。 巧 8
れば、そこからも食管赤字の増大圧力が出てくる。 飯米農家専業農家 過剰米発生の引き金としては、じつは大潟村より大都市の市街地および近郊の兼業農家 のほうが恐い。兼業農家の多くは、水田面積五〇アール程度の農業経営であり、「飯米農 家」に近い。飯米農家とは、自らの家庭で食べるために生産するのであって、外に販売し ない農家をいう ( コメの自給自足 ) 。飯米農家はコメを販売も購人もしないわけだから、 食管制度はあってもなくてもよい。東京や関西の大都市近郊にはこういう農家が多い。 ところで、飯米農家は減反政策に協力的でない。過剰米が発生し、食管制度が崩壊して も、大して損はないからだ。また、都市化が進行し、ムラ社会の論理も弱まっているた め、農業団体の農家に対する指導力も弱く、減反を強制できない。 昭和 , ハ二年度からはじまった水田農業確立対策では、農業主産地の生産性の高い中核的 農家を育成する目的から、転作面積を大都市の市街化区域等により多く配分した。そのこ ともあって、転作割当の増えた飯米農家の中には、転作 ( コメ減反 ) に協力せず、全面作 付けする人が増えそうだ。これが過剰米発生の引き金となろう ( 注 2 ) 。
また、販売事業でも、これまではコメの集荷では九五 % のシ ェアを有し、その販売手数料が農協をうるおしたが、これも減 反の強化と自主流通米・ヤミ米の増加で、農協のシェアは減っ ていこう。仮に食管制度が改革されれば、シェアの落ち込みは 甞以田 0 っ 0 0 さらに大きくなり、手数料収人も激減する可能性がある ( 農協 5 4 5 2 高 つ」っこ 約 上 の販売利益の四割はコメの取り扱いで稼いだもの ) 。 契 の 以上のように、金融自由化、食管自由化・ーー「自由化」のも 保 業 長 とで、農協事業は困難な局面を迎えている。思いきった経営革 フーっ 0 1 ー 8 っ 0 「ー 0 Ln 0 農 4 4- つ」 , 囀新を断行しないと、大きな危機に直面することになろう。 刀ロ 3 日 高農 表 残合 金総 3 農家奉仕を忘れた農協 宀丁「 業業業業 預省 は産 事事事事業水 農協も競争相手が必要 売買用済用農 販購信共 優良銘柄米コシヒカリの産地、新潟県米山地方でのことであ 注資 る。ここも全国各地と同様、農家の兼業化と高齢化が進行して い 0 億円 ) 60 年度 6 ′ 696 5 ′ 228 37 ′ 083 幻 2 ′ 035
限らない。誰に売るのも自由である。高値で買ってくれるところに売る。したがって、穀 物の集荷をめぐって、農協と農協、さらには商社が競争している。農協の業務内容は一般 の企業となんら変わらない。農協もアグリビジネスの一員である。購買事業も同じであっ て、良い品質の資材を安く分けてくれるところから購人する。 なお、米国には購買、販売、信用事業を兼ね備えた日本流の「総合農協」はない。通常 は、購買事業と販売事業は分離されており、それぞれ別の農協になっている。そして、購 買事業は研究開発機能をもっており、質の高い技術情報を農家に提供している。 第二は、農民が農協を選択する自由をもっていることである。農協と農協が顧客である 農家を奪い合って競争する、つまり農協が切磋琢磨し農家にサービスせざるをえない状況 がある ( 米国はじめ欧米の農協システムについては、拙著『先進国農業事情』を参照 ) 。 論 革 改日本の農協は地域独占 協 農これに対し、わが国では農民による農協選択の自由がない。農協には地域ゾーニングが 章 ある。町には農協、町には農協があり、町の農家は通常、農協に加盟できな い。総合農協は地域独占になっているのである。したがって、自分の町の農協が役立たず 201
しかも、いまや農協は巨大組織に成長し、商系ア 礎 ア度 業グリビジネスを圧迫している。農家が使用する資材 っ 0 0 4 4 ・ 8 つ」 6 0 事 ノ - 4- 7 ・ 4 4- 【 0 【 0 へ 0 のほとんどは農協を通して購人するので ( 肥料は九 経 の召 係三 % 、飼料は四一 % 、農薬は七〇 % ) 、農協は″需 扱 部版 画眸要独占〃の地位にある ( 農家に対しては供給独占 ) 。 取 料料薬械メ菜実牛豚乳企 公む刀ロ 幺日 そのため、農業資材のアグリビジネスは競争が制限 農 飼肥農農コ野果肉肉生農 全計 されている。 表 一般企業系列の流通業者が農家に資材を直接売り 購買事業 販売事業 込もうとした場合、自らのシェアが減ることを恐れ る農協 ( 具体的には全農〈全国農業協同組合連合会〉 ) はそのメーカーに圧力を加え、系 列業者の競争を抑えさせる危険が生じている。メーカー系列の流通業者は自由に農家に接 触できない。したがって、メーカーがもっ有益な情報が農家に伝達される。ハイプが狭めら れている。 全農の需要独占がアグリビジネスの活性化を妨げているのだ。 194
ネスや州立大学農学部の普及事業など、専門的知識を供給する情報サービスのネットワー クが発展しているので、農家はこれを活用すればよい。情報が競争力を左右する時代にあ って、家族経営農家が大企業農場と互角に競争できる強さの秘密はここにある ( よりくわ しくは拙著『先進国農業事情』第 6 章 3 節を参照 ) 。 全農がアグリビジネスの活性化を阻害 さて、日本はどうか。わが国のアグリビジネスは農協との競争において不利になってい る。農協は農協法第一〇条によっていろいろな事業ができるようになっており、農産物の 加工市場や農業資材分野など多くのアグリビジネスに参人している。ところで、農協の事 業に対しては、設備に対する補助、流通に対する補助、低利・長期の制度金融の適用な 論ど、政府助成が行われている ( 農業基本法第一二条がその法的根拠である ) 。さらに、法 改人税・事業税も軽減措置が適用されている。法人税率 ( 標準税率 ) は一般四三 % に対し農 協 農協は二八 % だ。 章 このように、農協と一般企業はイコール・フッティングではない。明らかに競争条件の 第 不均衡がある。 19
計算ぬきで、「減反反対」という声も多い。 プロ農家は自由化賛成 また現在の食管制度のもとでは、農家は直接消費者に販売することができない。経営カ のある農家は流通マージンを自分の所得に組み人れたいと考えている。彼らにとっても、 食管制度は経営発展の妨げになっている。 各地の農家が食管制度に反対するもう一つの理由がある。保護された産業は必ず衰退す る。逆に、切磋琢磨する中で技術革新と規模拡大を行えば、いまの困難を克服し、将来は 明るい農業の時代がくると考えているプロの農業者たちが各地にいる。片手間の兼業農家 を温存する食管制度のもとでは、自分たちまで共倒れになってしまうという危機感だ。 彼らは、生涯、農業を職業としてやっていきたいと真剣に考えている。この人たちは、 生産者米価は上がらなくてもよいと考えている ( 食管制度が自由化されたほうが米価が上 がるから食管制度反対、というグループとは逆の立場にある ) 。技術力を磨き、経営力を 高めて、ほんとうに農業でやっていこうとする人が、稲作農家として残れるような政策・ 制度を要求する立場から、食管制度に反対する人たちである。
序章食管自由化こそ農業を活性化する 表 1 新規学卒の就農者数 人数 また、都市近郊では、農業収人に生計を依存しない第二種兼業農家が圧倒的に多くなっ た。高齢農家も兼業農家も、誰かに自分の農地を管理してもらって、自分は地主になると いう選択のときが目前にきている。つまり、農業の担い手が急減しようとしている。 これは農地流動化の条件が出てきたことを意味する。経営者能力さえあれば、自作地は なくても借地で農業ができる。借地で規模拡大できるチャンスが生まれている。一九九〇 年代にはいると、上地の流動化は加速していく。規模 人 万 動の零細性の制約から解放される日は近い。と同時に、 8 ( 0 の 8 8 0 7 ・ 0 た王王卒それは人材の交代を意味する。日本農業は強くなれる 学 色子のチャンスを迎えている ( 注 2 ) 。 新み不々 . 人 の 弟 万 ( 注 2 ) 日本の新しい農業革命について、くわしくは前出 ( 注 子 0 つな 0 0 0 4 「ー 8 「′ 0 ) 1 ー 4- 宀豕 1 ) の拙著を参照 4- つ」っこ【 0 っ 0 0 0 0 〔 4 ・ 4- 4 ・つこ 省 産 水 導入技術によるハイテク革命 農 日本の農業の技術水準は、欧米に立ち遅れをみせて いる。土地利用型でない施設型農業は国際水準にある うち男子 月 年 0 1-n フー 0 LO 0 一 0 0 LO 0 つ」っこ 00 っ 0 4- 4 L-n 一 -0 C.D 和 刀ロ 0 2