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検索対象: コメをどうする
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1. コメをどうする

農家の三割は食管制度に反対している。食管制度堅持派はわずか三、四割である。農業 団体は食管制度堅持を主張しているが、現場の農民の意見は分散しているのが実態であ 心筆者は一度「脱農」宣一言をしたものの、いぜん農村を歩いている。農家の人たちの間に 食管制度に反対する声が多いのに気づき、各地でアンケート調査を行 0 てみた。本章はそ はの調査にもとづく報告である。 割 いままで農業界では、食管制度改正に関する議論はタブーに近いため、農家の声を定量 の 農的に把握したものはない。今日、農業政策と食管制度は戦後最大の曲がり角に立っている 章 が、農家自身はこの問題をどう考えているのか。本章では政策論ではなく、農村からの現 第 場報告を中心に、実態を叙述することにしたい。

2. コメをどうする

食管制度の功罪 生産・販売・価格の自由なし わが国の米麦農業に対する政策は、食糧管理制度のもとで運営されている。食管制度は 戦前の昭和一七年 ( 一九四二年 ) に制定された食糧管理法にもとづいている。 論その根幹をなす機能は二つある。一つは価格支持機能である。米価算定方式として生産 改費所得補償方式が採用され、生産コストや賃金の上昇に伴い、生産者米価は引き上げられ 管 食てきた。もう一つは政府によるコメの全量管理である。 章 つまり、コメは流通・価格の両面において国家管理のもとにおかれている。さらに、こ 第 の仕組みを維持するため、生産調整政策がとられている。減反政策と食管制度は裏腹の関 工 149

3. コメをどうする

第 1 章農家の三割は食管制度反対 のは、構造調整期を切りぬけていく経営者能力の蓄積が足りないからではないだろうか。 食管制度の最大の罪はここにある。 コメの過剰供給と財政制約の前に、いま、さしもの農業政策も市場原理の導人が不可避 の方向になってきた。しかし、長期的にみれば、それは悪いことではない。与件の変化を 先取りし、切磋琢磨する農家と地域は、むしろ末来が明るくなろう。これからの農業政策 は、市場原理を活用し、農家の経営力が高まるような政策・制度を設計することが望まし いといえよう。 ( * ) 本章は拙稿「農家の三割は食管制度反対」 ( 『エコノミスト』一九八六年六月一一四日号 ) に一部削除、 一部加筆したものである。

4. コメをどうする

乳製品 C ハター、練乳〈加糖〉、粉乳、バターミルク。ハウダー、ホェイ。ハウダー ) 、生糸、 葉たばこがある ( 注 1 ) 。 なお、日本はガット加盟以来、一七条四項の規定 ( 国家貿易品目の通告義務 ) にした がって三年に一度、制度の運用状況をガット経由で各加盟国に報告してきた経緯がある。 従来、これに異議が出なかったことは、コメが国家貿易品目として認知されていたといえ よう ( 注 2 ) 。 国家貿易品目の輸人は、すべて政府の直接管理下におかれている。すなわち、輸人窓口 を国家ないし国家機関に一元化しており、それ以外の輸人ルートは認められていない。た とえば食糧管理法第一一条は「米穀又ハ麦ノ輸出若ハ移出又ハ輸人若ハ移人ハ政令ニ別段 ノ定マル場合ヲ除クノ外政府ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ受スコトヲ得ズーと規定して いる。この規定にもとづき、コメの輸人は二〇年以上にわたり事実上、停止されてきた。 ( 注 1 ) 国家貿易品目以外の牛肉、オレンジ、乳製品など一三品目の農産物も輸人割当制度 ( 一 m をコ quota: 一条によ (Q) で輸人数量を制限している。しかし、これらの政府所管物資以外の輸人数量制限はガット って禁止されている。これら— O 品目は徐々に減らされてきたが、まだ二二品目残っているわけで、これは 「残存輸人数量制限品目」と呼ばれている。これはガット違反なので、輸出国側から制度を廃止せよと リ 8

5. コメをどうする

ング・ローン制度を実施した ( その根拠となる八五年農業法は八五年一二月に成立 ) 。 これは、農家は融資価格 ( 現在、七ドル二〇セント ) で政府に預けてある自分のコメを 国際相場 ( ローン返済レート loan 「 epayment 「 ate) で取り戻せるという制度である。こ のローン返済レートは八 , ハ年八月現在、三ドル七〇セントである。融資価格との差額一二ド ル五〇セントは財政が負担する。ローン返済レートは国際価格から逆算されたものだか ら、どんなに国際相場が下がっても、米国のコメは常に輸出競争力をもっことになる。先 の図 3 ・ 2 に示したように、八五年度から市場価格が大きく低下しているのはマーケティ ング・ローン制度の影響である ( 八五年度とは八五年八月から八六年七月まで ) 。 これは財政補助金つきのダンピングであり、競争相手であるタイをはじめ、諸外国から 批判をうけている。 情 事 減反計画参加は農民の自由な選択 米米国の価格・減反政策は二つの点で日本のそれと大きく異なっている。一つは、政府の 章 減反計画に参加しなかった農民は、市場価格 ( 農家受取価格 ) で販売することになるの 第 で、市況が下がったときは損をする。逆に、一九七〇年代のように市況が目標価格を上ま 109

6. コメをどうする

第 2 章自壊するコメ農政 が吹いている。第一次石油危機後、千載一遇のチャンスとばかり石油値上げでモウケ主義 に走った石油業界批判に似たものが起きている。「農業冬の時代」である。 もう一つ重要なことは、米国の精米業者協会 (czä<) のコメ市場開放要求を誘発した ことだ。日本人はコメⅡ稲作に対して特殊な気持ちをもっている、コメについて無理な要 求をすると日本の国民感情を害し、日米両国の友好関係を損ねるとし、従来、米国はコメ の市場開放要求を遠慮してきた。しかし、日本国内でコメ農業の評判が悪くなった。 はこれをチャンスと判断し、市場開放を要求してきたのである。 これが、経済原則を無視した政治米価の結末である。食管制度の見直し、コメ市場開放 の危機である。農協は食管制度に収益の基盤があるにもかかわらず、自らの手でそれを壊 してしまったのだ。 食管制度は″自爆装置〃に点火した 新たな減反政策 食管制度と表裏一体をなしてきたのが、水田利用再編対策 ( 昭和五三年度スタート ) で

7. コメをどうする

以上のように、食管制度に反対する理由はさまざまである。従来から、東京や関西の小 さな飯米農家 ( コメの自給自足農家 ) は、コメを販売も購人もしないわけだから、食管制 度に無関心だった。一般に西日本の農業地帯はコメ依存度が低いので、食管制度にあまり 関心がない。こうした従来からの無関心層に加えて、いまやコメの主産地の中からも食管 反対論が台頭してきたのが、新しい状況である。 なお、食糧安保上、食管制度堅持が必要だという議論があるが、「国内自由化」であれ ば輸人問題はない。国民の必要量は主産地で確保できる。輸人制限の国家貿易品目として 残る方策は、官僚の知恵が考え出すであろう。むしろ、適地適作で強い農業、消費者に喜 反ばれる良質米を供給できるようになることが、仮に市場開放になった場合への最大の対策 度 制となろう。 管 食 は 割 銘柄米の価格は上がる の 家 章 強い高級品志向 第 食管制度を自由化すると生産者米価が上がる、という見方があるのを知って、ビックリ

8. コメをどうする

係にある。こうして、コメ農業は生産、販売、価格の三面ともにがんじがらめに縛られ、 自由がない。 戦前の昭和一七年に戦時立法として制定された食糧管理法は、現代において農業政策上 プラスなのか。また、農家に利益をもたらしているのだろうか。 時代とともに変化した役割 食管制度の功罪は時代の変化の中で議論すべきものと考える。 たしかに、昭和四〇年代のはじめまで、わが国はまだコメが不足ぎみであり、国内需要 の五 % 程度を輸人に依存していた ( 巻末の資料 2 ・ 2 を参照 ) 。こういう不足の時代には、 価格支持政策は意味がある。生産者米価を高くすることによって、農家の生産意欲を刺激 し、供給を増やすことができるからだ。しかし今日、わが国はコメの過剰供給に悩んでい る また、食管制度にもとづくコメ農政は、地域政策としての役割ももっている。価格政策 や配給計画によって、稲作の不適地や生産費の高い地域でもコメづくりができるようにす ることによって、それらの地域の経済を支えてきた。実際、食管制度は産業政策ではな 1 う 0

9. コメをどうする

水田利用再編対策がはじまった昭和五三年度以降は、米価はほとんど上がっていない。 大幅な生産調整を実施しているもとでは、生産者米価の引き上げはできなかったのだ。第 二次石油危機当時もわずか二 % の上昇である。食管制度が価格支持を謳い、あるいはこの 一〇年間政治家が変わっても、生産調整のもとでは米価は上がらなかったのである。長期 的にみると、法律や政治よりも経済原則のほうが強いといえよう。 しかし現在、食管制度に対する風当たりは強い。最近二年間、生産者米価は据え置き、 すなわち引き上げ率ゼロである。それなのに、なぜ世論から批判されているのか。それは 第 2 章で述べたように、生産費が低下しているので、下がるべきなのに下がらないことに 対する批判である。 論親方日の丸 改いま、農政は「内外価格差の縮小」という課題に挑戦しており、そのため、農政の政策 管 食手段も価格政策から構造政策へシフトしはじめている。食管制度はコストダウンとどう関 章 係するのか 第 生産者米価の引き上げについて、いままでは「コストが上がったから、米価を引き上げ 巧ラ

10. コメをどうする

第 2 章自壊するコメ農政 求めて製粉工場を海外に移し、そこで製品にして日本に持ち込むことになろう。 農家保護のための政策の結果、食品産業の空洞化が起き、製造業分野で雇用が減ること になる ( 一番被害をうけるのは地方経済 ) 。そういう状況に追い込まれたとき、すでに原 料割り当ての意味はなくなっているから、製粉業界は食管制度反対の姿勢を明確にしょ コメの加工業界も同じであって、原料用米の内外価格差が大きくなれば、せんべいその 他の米菓、醸造用アルコール、清酒などの産業の空洞化現象が起きよう。加工製品が自由 化品目である以上、国際価格より数倍も高い米麦を原料に使って、日本の食品加工産業が 存続できるはずがない。 ④コメ流通業界の食管離れ ほころびはじめた食管 食管制度はすでに変質したといわれている。「変質」とは何か。食管制度は戦前の昭和 一七年制定の食糧管理法にもとづいているが、その根幹は「政府による米の全量管理」で