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検索対象: コメをどうする
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1. コメをどうする

コメがコストダウンで強い農業になるためには、農家の規模拡大が重要だ。日本のコメ ノオカ一〇ヘクタール以上にならないといけな 農家の耕作規模は、現在平均一ヘクターレど : 、 い。地価のインフレで、農地を買って規模拡大するのは困難だから、先に第 2 節で述べた ように、借地農業による規模拡大だ。 そのためには、基盤整備が必要だ。分散錯圃のままでは生産性が上がらないため、借地 による規模拡大はできない。また、生産調整政策も邪魔だ。三割、五割も減反させられて は、規模の利益が出ない。生産調整はコメの高価格を支持する食管制度と裏腹の関係であ るるから、食管制度が強いコメづくりの妨げになっている。 もう一つの高付加価値農業の道は、消費者の所得水準の向上に伴い、その客観的条件は 活 を整っている。しかし、第 5 章で述べるように、たとえば無農薬米をつくろうと思っても、 そ食管制度が妨げになっている。こういう高付加価値農業は自由化にも一番強い。時代の課 題に応えるために、規制緩和が必要だ。 由 自 管 食 章先進国型農政への転換 序 農業政策は農家の適応能力を信頼したほうがよい。たしかに、後進国では優秀な人材は

2. コメをどうする

輸入自由化にも強い もう一つ重要なことは、高付加価値のコメづくりこそ輸人自由化に強いという点だ。 農薬米をつくるには手で田の草をとらないといけないが、米国のような大型農業で、手で 地にとって食管制度はプラスだったかもしれない。 しかし今日のように、ほんとうに食味のよいコメや、無農薬米など、自分の感性や好み に合ったコメに対してなら、一一倍の価格をもいとわない消費者が出現してくると、山間地 にとっては流通面の制約が大きな弊害となってくる。時代の流れの中で、食管制度のもっ 意味は逆転したのである。 ( 注 2 ) 自由化した場合、平野部は規模拡大等でコストダウンは進むが、一方、価格は下がろう。したがっ て、平野部の農家にとっては、自由化は収益性の面からいえばステイタス・クオー (Status ・ quo 現状と同 じ ) だ。もちろん、平野部も高付加価値のコメづくりが可能になるが、無農薬米等は小規模でしかできない から、山間地と競争条件は同じかそれ以下にしかならない。従来もっていた規模の利益による競争上の絶対 的優位は崩れる。これに対し、山間部は高付加価値農業が可能になると、平野部と同じ土俵で勝負できる 分、食管自由化はプラスだ。

3. コメをどうする

もちろん、先に表 3 ・ 4 に示したように、米国国内の市場価格も、従来のトン当たり二 〇〇ドル水準から、八五年度には一四四ドル、八 , ハ年度には一〇〇ドル未満に下がった。 このように、いま世界のコメ産業は深刻な不況にあえいでい。 タイ米の強さの背景 コメの国際的プ一フィス・リーダーはタイ米である。また、世界最大のコメ輸出国もタイ である。表 4 ・ 2 に示すように、一九七〇年代の最大の輸出国は米国であったが、八〇年 代にはいるとタイが米国を抜き去り、八六年現在では米国の二倍近くに達している。タイ の輸出量は世界輸出一二八六万トンのうち四三四万トンを占める。 タイ米は強い競争力をもっている。しかし、生産性は高くない。一〇アール当たり単収 開はカリフォルニアの六九〇キロ ( 玄米 ) 、日本の五〇〇キロに比べ、タイはわずか一六三 市 キロと低い。また小規模営農であるため規模の利益もない。 の 「それにもかかわらず、カリフォルニア米より生産コストが低いのはなぜか。第一には、 章 二〇分の一の低賃金である。第二に、先の表 3 ・ 3 にみるように、農薬・肥料などの近代 第 的資材を使わないために資材コストが安い。つまり、タイ米はコストをかけない粗放救培 129

4. コメをどうする

わが国では「大規模粗放農業論」が支配的で、 袋格 規模拡大すると単収が低下する、品質が悪化する という議論が多いが、米国ではマシュー氏の経営 にみるごとく、規模拡大しても単収は低下しな 営 当収 い。二五九一エーカー ( 一〇四八 ( クタール ) 規 「ー CO っこ 8 「′ 8 ロ ) 0 Ln 0 つ」 CO 8 8 ( 0 0 氏 C.O C-D 5 ) C-D 0 C-D 1 ー「ー 氏収一米 模でも単収は七〇〇キロと高い。「大規模精密農 業」と呼ぶべきである。 規模拡大に応じて技術体系を変えさえすれば、 一 / つなっこ 4- 0 「ー 4 一 c.D CD 2 」 1 ー 0 ( 0 ( 0 -. 0 4 ・ 8 問題はない。 マシュー氏も不況で苦しいと悲鳴をあげてい た。「日本はコメを輸人してくれないか」といわ 2 面 い作工 っこっムっ′ 0 一 -0 0 ) 8 0 ) 8 ( 0 4 ・ ( 、 0 (€) フー 7 ー れたので、「いまの日本の政治状況では、コメの 表耕 4- 8 0 ・ ) に 0 「ー - 0 ・ ) 4 0 ・ ) っこ CO 輸人自由化決定は原子爆弾の製造開始決定と同じ くらいむずかしい」と答えておいた。 つ」っ 0 4 ・ ′ 0 7 ・ 8 0 ) 0 ・ドル 7 . 23 9 . 64 7 . 30 . 09 図 . 39 6 . 80 6 . 08 7 . 33 6 . 田 102

5. コメをどうする

Ⅱのグループ ) と答えた人が一五、一二〇 % もいる。 この数字には、農民という職業そのものに対する不満よりも、食管制度などさまざまな 規制があるため、自由に腕を振るえない農業の現状に対する不満票も含まれているよう だ。大規模経営でかなりいい経営をしている人の中にも、不満足と答えた人がいる。 比較のため、米国の農民をみてみよう。表 1 ・ 9 は農業の一番発達している中西部コー ンベルト地帯のアイオワ州の事例であるが、農民という職業に不満足な人はわずか三 % で ある。逆に、非常に満足できるという答が六割もある。この点は農家の主婦の答も同じで ある。 自らの職業に「非常に満足」という答が、日本の農家は一割、米国の農家は六割、この 制差は大きい。これは困ったことである。農業あるいは農民という職業に対するイメージが 管 はよくならないと、若い有能な人材が農業に参人したがらないからだ。 割 ただし、日本でも先進的農家は自らの職業に満足している人が多く、また彼らは医師や の 農弁護士並みの所得をめざしていることを指摘しておきたい。 章 第

6. コメをどうする

序章食管自由化こそ農業を活性化する 注 日本では、産業レベルで精密な科学的分析の上に立った作物の栽培管理、家畜の飼養管 理の技術情報が乏しい。したがって、海外から技術導人を行っている先進的農家群はどん どん伸びる。そのくらい日本の農業は、まだ粗放なところがある。つまり、「小規模粗放 農業」である。 工業分野では、昭和三〇年代の前半に米国に生産性の研修に行った。農業では、いまよ うやく、先進農家がそれを意識的に行い出した。これからの日本農業は″大規模精密農 業〃になっていこう。工業分野に三〇年遅れて農業の飛躍がはじまった、と考えればよい ( 注 3 ) 拙稿「イノベーション農業人門 ( 連載 ) 」『農業富民』一九八六年一一月号、同八七年一月号を参 3 時代は農業に向いてきた ソフト化の時代 いま、農産物の需要で一番高い伸びを示しているのは″花〃である。日本は先進国の中

7. コメをどうする

た。価格引き上げではなく、コストを下げることによって農家利益を確保していこうとい う新しい流れの農政には、食管制度は似つかわしいものではないのである 奇形的な技術革新を生み出した価格支持政策 ところで、わが国の稲作も労働生産性は大幅に上昇してきた。これをもって稲作も技術 革新があったという人が多い。しかし、それはコストダウンにつながらない奇形的な技術 革新だったのである。 昭和三〇年代後半以降のわが国農業の労働生産性の上昇はめざましい。しかし、逆に資 本生産性は著しく低下した。一年のうち二、三日しか使わないトラクターやコンバインを 小規模の兼業農家まで保有するようになったためである。″機械化貧乏〃という一言葉に示 論されるように、過剰投資である。その結果、労働生産性は上昇したものの、資本生産性は 改低下し、結局、総合生産性はあまり上昇しなかったのである。農家はなぜそのような技術 管 食選択をしたのか 章 もちろん、労働から機械へという代替が起きたのは、相対価格の変化 ( 賃金の上昇 ) に 第 も原因がある。筆者が「奇形的」技術革新といったのは、総合生産性の上昇がないままに 巧ア

8. コメをどうする

の重要性は従前よりは相対的に低下していく。本来なら、農業は先進国の条件をもつ日本 に向いた産業である。 日本のコメも、技術革新と規模の利益でコストダウンしたり ( 実際、 , ハ〇キロ当たり七 〇〇〇円程度にコストダウンし、輸人米と十分競争できるコメづくりをしている農家がい る ) 、あるいははさ架け米や無農薬米など高付加価値のコメづくりを追求すれば、輸人を 自由化しても壊滅的な状態になることはない。 食管制度のもと、画一的な。ハターンでコメづくりをするのではなく、地域や農家の条件 に合わせたコメづくりをすべきだ。画一性から解放され、ゲリラ戦法的発想に戻ること が、自由化に強いコメづくりになろう。 自由化されれば、食味のいいコメは輸出も可能であろう。日本経済の国際化とともに、 論海外で生活する日本人は増える。また欧米人の中にも「ごはん」を食べる人が出てくるの 改ではないか。彼ら向けに「ごはんー用のコメを輸出すればいい。実際、いま日本の在外大 管 食使館には日本からコメを送っている。 章 農業に対する規制を緩和し、市場原理を復活させれば、コメ農業は強くなれる。以上、 第 二つの提案とも、われわれが一九八一年に発表した z —提言 ( 「農業自立戦略の研 ウラ

9. コメをどうする

大規模精密農業 注目したいのは、カリフォルニアのイネの品種改良は公的試験研究機関だけではなく、 農民が費用を拠出した稲作試験場でも行われている点である ( 八五年の拠出金は一〇〇ポ ンド袋につき四セント。 玄米六〇キロ当たりで一三円 ) 。 また、水田の圃場は一枚で三〇エーカー ( 一二ヘクタール ) の大きさであるが、精密な 水管理を行うため水田の均平作業にはレーザー光線を利用し、全面を等しく二インチの水 深で水をはれるという ( 農機メーカーの技術者の話によると、三〇エーカーの水田の場 合、従来は三インチはらないと全面に水が行き渡らなかったが、レーザー利用で半インチ でよくなった ) 。まさしく「大規模精密農業」だ。このレーザー光線利用も一九七〇年代 末から普及がはじまった。 情米国農業というと、その巨大さや、飛行機による播種、大型コンバインによる収穫など をいう人が多いが、私は「大規模精密農業」による高生産性、低コストであることを強調 米したい。品種改良、栽培技術の開発はまだまだつづくようだ。米国農業の技術革新能力は 章 高い。供給力の増大とコストダウンはまだまだつづく可能性をもっている。 第

10. コメをどうする

生産費は日本の九分の一 大規模生産と技術革新の成果で、カリフォルニア米の生産コストは低い。表 3 ・ 3 に示 すように、白米一トン当たり三万九五三六円で、日本の生産者米価の九分の一である。日 本は労働費と農機具費がとくに高い。これは規模の零細性からくるコスト高である。しか し、規模の利益に関係ない肥料費なども高いのは問題である。 カリフォルニア米を日本に輸人したら、価格はいくらになるか。まず、生産地から輸出 港までの米国内の流通経費を含んだ価格は、一九八六年八月現在のカリフォルニア 産中粒種「精米一等級ーで一トン当たり三三〇ドルである。これの日本への推定輸人価格 ( 運賃・保険料込みの価格 ) は三六五ドル、円換算で六万円弱である ( 一ドルⅡ一 六〇円 ) 。日本国内の流通経費を一〇キロ当たり四〇〇円とすると、一〇キロ当たり約一 〇〇〇円で消費者の手元に届くことになる。日本の標準価格米 ( 一〇キロ三八六七円 ) の 四分の一、コシヒカリ、ササニシキの銘柄米 ( 六〇〇〇円 ) の六分の一の安さだ ( 注 5 、 6 ) 。 ただし、これらの価格は、世界的なコメ不況で価格が暴落した水準との比較であ るから、カリフォルニア米の平常時の価格との比較では、格差はもっと縮小しよう。 ( 注 5 ) フレート等を小麦並みの一トン当たり三五ドルと仮定した。小麦は一トン当たりフレート一八ド