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検索対象: フラワービジネス
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1. フラワービジネス

アールの経営面積のうち、一〇アールにトルコギキョウやスタ 1 チスを栽培して三〇〇—四〇〇万円 の粗収益をあげ、ほかにはリンゴ、モモなどの果樹や稲をつくる。この担い手は妻であり、夫は農外 サラリ ーマンである。最高の規模でも花は二〇 5 三〇アールを作付け、一〇〇〇万円程度の粗収益で ある。花専業という農家は少ない。それだけに、農家にとっては農協の共選共販はメリットがある。 トルコギキョウの産地は上田市はかりではない。上山田町も産地として有名である。『生産農業所 得統計』 ( 八九年 ) によれば、花きは農業粗生産額の四〇・六 % ( 三億九〇〇〇万円 ) を占め、農業のなかる み では第一位である。 なかでもカ石地区は盛んである。現在八三戸の農家が一二ヘクタ 1 ルのトルコギキョウ、八ヘク現 タールのカーネ 4 ションを栽培している。平均的な経営の姿は、三〇—四〇アールの平均経営規模をス もって、うち二〇 5 三〇アールをトルコギキョウなどの花に、一〇アールを稲に当て、一〇〇〇万円ジ 前後の粗収益をあげている。所有面積が少ないぶん、高収益の作物に絶えす変動し、これまでにもキ一 ワ ラ クからカーネーションに、そして八七年以降トルコギキョウに栽培作物の中心が変わっている。 フ 花の産地として古いこともあって、流通の面では、市場と産地の結びつきが強く、個選個販が全体 章 の八〇 % に達している。そのために、輸送には共同荷受方式をとっている。しかし、現在の運転手不 第 足のもとでは花の集荷時間を運送業者の指定時間に合わせざるをえず、鮮度保持の点からも、個選個 販の出荷体制や共同荷受方式には限界が出てきた。今後の課題である。

2. フラワービジネス

、き・霾い気に第し 1 し、上田市の銘柄を確立していくことにある。 生産および流通現場では農協が主導的な役割を果たしている。 市上田市農協では名実ともに " 上田の花。産地を確立するために、 市と一体となって、八二年にトルコギキョウの良質苗を安定供給 色 するために共同育苗 ( ウスを設置し、また七六年からは共選共販 によって有利な販売を行っている。 工 共同育苗ハウス ( 一〇アールハウス二か所 ) では、八〇年に開発 ジ ン トルコギキョウ全作付けの五〇 % ) を中心 した上田独自の「紫泉」 ( 5 一一月に花の出荷が可能となる配苗が行われている。九 の ス 一年からは、上田では不可能であった一〇—一二月出荷の作型に チ 一るも挑戦している。トルコギキョウは育苗期に高温に会うとロゼッ スて トという状態 ( 生育が止まる状態 ) になり、これを回避するには , け 、、、、七—八月に冷房育苗をする必要があり、この技術開発に乗り出し の価こ。トルコギキョウの人気の高さ ( 「軽白淡小、の典型 ) と激化する / 自評 産地間競争に対応したものである。 田高 上で 管内三五〇戸の花農家の一般的・平均的な姿といえば、四〇 138

3. フラワービジネス

る。これは標高二〇〇 5 一〇〇〇メートルの標高差と小規模生産を生かした結果であり ( それだけにま た小産地点在という欠点はある ) 、交通も京阪神、京浜に有利な位置にあり、夏秋花き中心の多品目総合 供給の立地条件を備えている。 このような立地条件を生かして、県は農協と協力して「長野県花き基本計画ーーー心のオアシス・花 の総合供給産地信州ーー」を策定した。この基本計画の特徴は、品目別・地域別の栽培法がつくられ ており、産地形成には不可欠の安定供給体制の確立を目指すとともに、それを基礎とした共選共販体 制の強化による流通対応にも力を入れていることである。産地が古いだけに個選個販する地区も比較 的多く、そのことが販売戦略上の不利益も生じていることからすれば、当然の対応ともいえよう。 このように長野のフラワ 1 ビジネスには、産地としての生産と流通の整備が求められている。そこ で、以下いくつかの現場をみながら長野県フラワービジネスの有利性と問題点を指摘してみよう。 トルコギキョウとカーネーションの産地 気候、標高差など恵まれた自然条件のもとに、産地は比較的点在している。それでも花きの生産額 シェアが比較的高い地域と品目をあげれば、上田周辺のリンドウ、スターチス、トルコギキョウ、グ ラジオラス、諏訪地区のリンドウ、キク、カーネーション、スターチス、カスミソウ、佐久地区のキ リ、アルストロメリア、長野市周辺のカーネ 1 ション、トルコギ ク、カ 1 ネーション、上伊那のユ 136

4. フラワービジネス

図 V ー 2 長野県における花の地域別・品目別生産額 ( 1990 年 ) バラ (63%) トルコギキョウ ( 44 % ) 北 カーネーション ( 16 % ) 信 キク ( 14 % ) 北信 ( 17 % ) その他 18 % 22 % 21 % トルコギキョウ 15 % ンヨ / 中信 ( 11 % ) 45 % 33 % キカシそ クー クの ネラ他 12 ヨ 10 ン キク % ) スターチス ( 47 % ) 東トルコギキョウ ( 39 % ) 信リンドウ % ) 宿根カスミソウ ( % ) ュリ % ) カーネーション② % ) シクラメン ( 16 % ) 中信 南信 アルストロメリア ( 87 % ) シクラメン② % ) シクラメン ( 62 % ) カーネーション ( 19 % ) リンドウ ( 57 % ) キク ( 5 % ) ュリ ( 55 % ) 宿根カスミソウ ( 48 % ) カーネーション ( 42 % ) スターチス ( 37 % ) バラ ( 31 % ) キク ( 27 % ) 東信 ( 32 % ) キク 44 % その他 、ンクラメン 2 他 0 % トルコギキョウ 宿根カスミソウ 3 % ュリ 4 % 、ンクラメン スターチス 5 似ん % アルストロメリア カー、 : ー、ンヨン ラ 4 似 宿根カスミソウ 4 % リンドウ 5 % スターチス 3 % ョ 、ン 信 南 22 % 6 % ン ド ウ 資料 : 長野県農政部園芸蚕糸課資料による。 注 : 1 ) ( % ) は県内シェア。 2 ) 棒グラフの % は地域内の品目別シェア。 135 第 5 章フラワービジネスを現地にみる

5. フラワービジネス

てもいし これらとは反対に、キク、リンドウ、ユリは漸減傾向にある。ただし、ユリは八五年以降、 ハイブリッド系品種の需要の高まりに伴って、作付面積、生産量ともに増大傾向にある。またリンド ウは、九一年夏にバイテクによる大量増殖に成功し、県花としても生産増大が期待されている。。ハラ は停滞している。 花き生産額を地域別・品目別に示せば図ー 2 のようになる。図が示すように、生産の中心は南信 と東信で、この二地区で県生産額の七二 % を占める。各地区の生産品目をみると、南信ではカ 1 ネ 1 ションが地区全体の二六 % でトツ。フ、次いでキクの二二 % と続き、東信ではキク四四 % 、カーネー ション一九 % が主なものである。 品目別に県内でのシェアをみれば、バラは北信が県のバラ生産額全体の六三 % を占めてトツ。フ、 カーネーションは南信が主な産地でカーネーション全体の四二 % 、キクは東信でキク全体の五四 % を 占めている。最近伸びの著しいトルコギキョウは、北信と東信に集中してそれぞれ全体の四四 % 、三 九 % 、アルストロメリアは南信だけで八七 % の生産額をあげている。 長野のフラワービジネスの生産面を一言で表せば、多品目総合供給産地といえよう。作付面積の多 いキクのほかに、全国一の生産額を誇るカーネーション、トルコギキョウ、アルストロメリア、岩手 に一位を奪われたとはいえ作付面積の多いリンドウ、北海道と競合する宿根カスミソウなど、あげれ ばきりがない。一説では、切り花だけで五〇 5 六〇種、鉢物も含めれば八〇種にのぼるといわれてい 134

6. フラワービジネス

フラワ 1 ゾーンにおける労働力不足のメカニズムはこうである。米価が下がるなかで減反が増大し てくると、農産物単価の高い作物である花きや野菜の導入に集中する。これらは労働集約度のきわめ て高い作物でもあり、収穫期などの一定期間には相当量の雇用労働に依存せざるをえない。そのため に、周辺の労働力は不足する。これをさらに深刻にしているのが、工場誘致やゴルフ場開設などに伴 う労働力の吸収である。なかには五〇〇〇人くらいの町にすでにゴルフ場が三つあり、さらに数か所 の開設が予定されるなど、とりわけ婦人労働力の不足が生じている。こうしたこともあって、現場でる み は「農産物の自由化ばかりでなく、人の自由化もしたらどうだ」の声もある。 産地がいま最も頭を痛めていることの一つが、北海道でしか生産できないあるいは北海道でこそ有現 を ス 利な花きの開発である。もちろん北海道には、いまでもカスミソウといった最高のブランドフラワー ネ ジ があるが、またカスミソウぐらいしかないのも事実である。 北海道の花き生産は小規模複合生産のために夏季の集中出荷を招きやすく、これが度を越すと値崩一 ワ れの心配がある。これを回避するには大規模専業経営の育成に努めるとともに、カスミソウ以外のブラ フ ランドフラワーを開発し、施設化率も高めて、栽培周年化の方向で作型・出荷の調整も行うことがま 章 すます重要になっている。 第 現在の基幹品種であるキク、カーネーション、カスミソウ、スターチスなどについては、北海道に 適した品種の選定や出荷期間の拡大などが必要になっている。さらに、施設化によって開花調整を行

7. フラワービジネス

反面、高品質ものの安定的供給の不安定要因にもなる。つまり専業 温でないために、花の品質管理が行き届かず、安定出荷にも支障をき 氏たし、産地の評価を落としかねない。そうであるからこそ、産地の 田強力な生産・出荷対策がいっそう必要となっている。 る もちろん花きの専業経営が全くないわけではない。四—五ヘク 掛タールの花き栽培で四〇〇〇 5 五〇〇〇万円の粗収益をあげる経営 をもあるし、トツ。フの経営では七〇〇〇万円の売上げを誇る経営もあ ラる。たとえば、当別の花き専業経営者である池田悟氏は、約三ヘク カ っタ 1 ルある水田のほぼ全面積を花き栽培に当て ( ュリ、スプレーカー のネーション、スプレーギク、デルフィニウムなど ) 、三人の家族労働力と ワ六人の年雇 ( 延べ一〇〇〇人 ) を雇い、九二年には一億円の売上げを フ目指している。 戦 このような経営を育成し、地域全体も規模拡大するためにはいっ の 道 そうの機械化と雇用労働力の導入が必要となる。ところが、地域で 海 」は労働力が不足している。規模拡大したくとも労働力不足がこれを 阻んでいるのである。 130

8. フラワービジネス

切り花と素朴な花だという。球根切り花では、たとえばチューリツ。フでは、雪を利用した出荷調整に よって産地を形成する方向である。つまり、チ、 1 リツ。フの出荷は平常五月だが、これを遅く出荷し たい場合には雪で覆い、反対に早く出荷したい場合には雪を早く取り除くという具合である。 またもう一つは、都会の人々の新たな需要、すなわち田舎くさい、土くさい素朴で自然な花への需 要に応える方向である。たとえば、アガバンサスの端境期にはニラの花がなんと一本八〇円の値がっ いたというし、どこにでもあるススキまでが市場に出ていい値をつけているという。この点に着目し て、植え付けて五年は使える露地もの、たとえばアザミなどは北海道の気候も生かせるし、農家に とっても高収益が期待できる。このようにして新たな″月形の花〃の開発を狙っている。 さらに夏季の端境期に多品目生産し、市場の多様な需要に応える生産体制を整えることも考えてい る。夏季は花が品薄となり、北海道や長野はいい位置にあり、月形のブランドフラワ 1 の形成ととも に、市場が要求するあらゆる花を生産していくことも " 月形の花。の地位を高め、それによって産地 をいっそう力強いものにしていくことが狙いである。 浦臼は当別や月形に比べれば後発である。当別や月形が七〇年ごろから花を導 〔浦臼の花〕 人しているのに対し、浦日は七三年に二人がそれぞれカーネーションとバラを導 入したのが始まりである。生産組合にしても、浦臼で結成されるのが八四年で、当別七二年、月形七 九年 ( 七二年結成の花き研究会を改称 ) の結成と比べても遅い 128

9. フラワービジネス

億七〇〇〇万円のうち、当別四億円、月形七億一〇〇〇万円、浦臼一億四〇〇〇万円、計一二億四四 八〇万円で、全体の二七・二 % に達する。この一市三町の属する石狩・空知支庁では、全道切り花生 産額 ( 九〇年【六一億八〇〇〇万円 ) の約六割を占め、一市三町を核としたフラワーゾーンが形成されて いる。以下各地を概観しよう。 札幌市は花の大消費地であるばかりか、花き生産も盛んである。八九年の花き 〔札幌の花〕 の総生産額は五億五七〇〇万円で、市農業総生産額の五・一 % を占めている ( 農 林統計 ) 。市資料では、九〇年の花き総生産額は七億一三八一万円に達し、作付面積は八八年の三一・ 二ヘクタールをピークに九〇年には二六・九ヘクタールとなり、農家戸数は一五五戸である。しかし、 このところの地価高騰が影響して、数戸が代替地を求めて市外に移るなど、市街での花き生産にも問 題が出始めている。 札幌市には、道内最大の札幌花き地方卸売市場がある。市と民間の卸三社が共同で出資して設立し たもので、八九年度の取扱高は八一億円に達する。取扱高を月別にみると、最も多いのが正月用のキ ク、千両、松などの需要を中心とした一二月で一〇億一〇〇〇万円、次いで転勤、退職、入社、卒入 学、「ホワイトデー、などのある三月の九億三〇〇〇万円、また「母の日」のある五月が八億円となっ ている。八六年に「さっぽろ花と緑の博覧会」が開催されて以来、本市場の取扱高は毎年一〇 % 以上 の伸びを示し ( 九〇年には九二億円に達した ) 、道内花き需要のいっそうの拡大が期待されている。 124

10. フラワービジネス

かりした高品質の花きが生産できる。出荷は夏秋に集中し ( 前章図Ⅳー 4 参照 ) 、たとえば七 5 九月の出 荷割合は道全体の六四・〇 % 、六 5 一一月で九四・三 % に達する。そして夏季の切り花価格は相対的 に高く、なかでも道産切り花は全国平均より五〇 % 程度高いために、道外出荷が年々増大し、八六年 の道外出荷二五 % から九〇年には四三 % に達 した。 ン ( 2 ) 有望な石狩平野のフラワーゾーン ゾ 札幌市、当別、月形、浦臼町一帯は、北海一 道のフラワーゾーンである ( 図 > ー 1 参照 ) 。ラ フ ここはの学園都市線 ( 札沼線 ) と国道二の 七五号、さらに一九八八年八月の札幌大橋の海 完成で大消費地札幌と直結し、道内出荷はも ちろん、道外出荷にさいしても鉄道、トラッ ク、航空機いずれの手段も用いることができ、図 生産および流通上有利な位置にある。 八九年の道の資料では、切り花生産額四五 札幌、 / 別町 ) JR 学園都市線、 札幌市 浦臼町 月形町 JR 学園都市線と並行して 国道 275 号が走る 123 第 5 章フラワービジネスを現地にみる