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検索対象: フラワービジネス
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1. フラワービジネス

進展の理由として、次の点をあげることができる。施設栽培は開花調整などによる生産の周年化・ 計画化・高品質化・安定化を可能にして生産性と収益性を大幅に向上させるという点である。さらに、 機械化を伴えば近年の労力不足にも対応できる。 施設は、雨よけ程度の簡易ハウスから頑丈なガラス室まであり、その内容もたんなる加温施設のあ るものから、炭酸ガス発生装置や複合環境制御装置のあるものまでさまざまである。最近ではより高 度な施設、すなわち高省エネルギ 1 および省力タイ。フの施設が普及しつつある。 当然リスクもある。施設化は、花き生産の周年化・計画化等が可能と述べたが、これを担うのは人 である。人が花きの生産および管理技術を身につけていなければ、施設化は不可能である。だから、 花きは知識集約型農業の典型といわれるのである。また、かりに技術をもっていても、施設導入の資 金がなければその技術は生かせない。高度な施設の導入には高額な資金を要する。だから、花きは資 本集約型農業の典型ともいわれるのである。 ただし、日本の温室・施設費は高すぎるとの指摘もある。たとえば、ハウスはオランダの三倍以上 だといわれる。オランダの五〇〇〇平方メ 1 トルの価格は、幅三・二メートルの温室で一平方メート ル当たり五三ギルダー ( 三七一〇円 ) 、幅六・四メートルでは六五ギルダー ( 四五五〇円 ) である。これ に対し日本の。ハラ用温室は一平方メートル当たり一万三〇〇〇円、キクの鉄骨ハウスは一万三四一円、 ガラス温室は一万八四〇〇円だといわれる。 104

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以上のようなリスクや問題点があるが、消費者の需要に応え、高収益を可能とする栽培の施設化は、 施設の高度化を伴っていっそう進むであろう。 三合理化と近代化が進む花き流通 ( 1 ) 再編近代化される花き市場 通 流 これまでにも宅配、セルフ売り、貿易など、流通に関して部分的にみてきたが、ここでは総体とし産 生 て花の流通をとらえ、いま何が起きているかをみることにしよう。 生産者が出荷した花きは、さまざまな経路をとおって消費者の手に届く。たとえば、花木類は植木の 業者等の注文に応じた産地取引が中心で、昭和四〇年代に植木市場ができたが、流通量は一〇 % 程度日 といわれている。芝類もほぼ同じで、産地の生産組合や卸業者が集荷して、造園業者や小売店に流れ、大 花 ほとんどが市場外流通である。球根類も芝のように集荷され、種苗業者や小売店、あるいは産直、ま 章 た切り花産地への産直が流通の中心である。 第 しかし、市場外流通ばかりではない 。これと対照的なのが切り花類、鉢物類である。切り花では九 〇 % 以上が、また鉢物では八〇 % が卸売市場に出荷され、図Ⅳー 6 のように流通する。

3. フラワービジネス

( 3 ) 施設化で周年栽培と安定供給を目指す ( 鵬 ) 三合理化と近代化が進む花き流通 ) ( 1 ) 再編近代化される花き市場 ( ) ( 2 ) 一本一〇〇円のバラが五〇〇円になる不思議 ( Ⅲ ) ( 3 ) 求められる鮮度保持の流通体制 ( Ⅲ ) 第五章フラワービジネスを現地にみる 一水田地帯で急成長する北海道 ( 盟 ) ( 1 ) 急成長の要因は水田転作と端境期出荷 ( 盟 ) ( 2 ) 有望な石狩平野のフラワーゾーン ( 鵬 ) ( 3 ) 課題は雇用労力の確保と戦略花きの開発 ( ) 一一多品目総合供給産地を目指す長野 ) ( 1 ) 恵まれた自然条件を生かす ( ) ( 2 ) トルコギキョウとカーネーションの産地 ( ) ( 3 ) 小規模生産の大産地形成も一つの生き方 ( Ⅷ ) 三イノベーターが集中する花き王国愛知 ( ) ( 1 ) 王国にふさわしい花き生産 ( ) ⅵ

4. フラワービジネス

フラワ 1 ゾーンにおける労働力不足のメカニズムはこうである。米価が下がるなかで減反が増大し てくると、農産物単価の高い作物である花きや野菜の導入に集中する。これらは労働集約度のきわめ て高い作物でもあり、収穫期などの一定期間には相当量の雇用労働に依存せざるをえない。そのため に、周辺の労働力は不足する。これをさらに深刻にしているのが、工場誘致やゴルフ場開設などに伴 う労働力の吸収である。なかには五〇〇〇人くらいの町にすでにゴルフ場が三つあり、さらに数か所 の開設が予定されるなど、とりわけ婦人労働力の不足が生じている。こうしたこともあって、現場でる み は「農産物の自由化ばかりでなく、人の自由化もしたらどうだ」の声もある。 産地がいま最も頭を痛めていることの一つが、北海道でしか生産できないあるいは北海道でこそ有現 を ス 利な花きの開発である。もちろん北海道には、いまでもカスミソウといった最高のブランドフラワー ネ ジ があるが、またカスミソウぐらいしかないのも事実である。 北海道の花き生産は小規模複合生産のために夏季の集中出荷を招きやすく、これが度を越すと値崩一 ワ れの心配がある。これを回避するには大規模専業経営の育成に努めるとともに、カスミソウ以外のブラ フ ランドフラワーを開発し、施設化率も高めて、栽培周年化の方向で作型・出荷の調整も行うことがま 章 すます重要になっている。 第 現在の基幹品種であるキク、カーネーション、カスミソウ、スターチスなどについては、北海道に 適した品種の選定や出荷期間の拡大などが必要になっている。さらに、施設化によって開花調整を行

5. フラワービジネス

第四章花大国日本の花き生産と流通 機械式セリが行われる大田市場。市場・流通は いま急ピッチで近代化・合理化されつつある。

6. フラワービジネス

第五章フラワ 1 ビジネスを現地にみる トルコギキョウの大産地長野・上田。流通の近 代化・合理化に伴って産地間競争も激しくなっ てきた。

7. フラワービジネス

120 △大田花き市場の入荷 ( 左 ) とシクラメン の入荷 ( 右 ) 。 大田のように全国の花市場が近代化・ 合理化されるのはいつの日か ? 1 ↓′ 花と緑は疲れた身心を潤す 清涼剤。オフィス需要 ( 上 ) が高まっている。華やかさ を演出する花はパーティー に欠かせない ( 下 ) 。 ( フラワーゲート花門 写真提供 )

8. フラワービジネス

者のあいだからは、量の確保とともに組織革新や高品質生産、出荷等級のいっそうの差別化などを求 める動きが活発となった。もちろん、四〇年間のキク栽培の歴史はまた、こうしたイノベ 1 ションの 積み重ねでもあった。 田原町農協では、出荷規格を等級だけでなく「点数制」を導入して対応した。同じ等級でも良悪が あり、それに標準点数をつけ、その点数に応じて売上げを清算する。品質のいいキクをつくった生産 者はむくわれるわけだ。これによって高品質生産が促進・維持され、生産者も産地もプラスとなる。 これとは違った方法で差別化販売を徹底したのが渥美町農協である。組織革新・経営革新による差 別化販売である。産地活性化のために生産者が自主的に、生産技術水準に基づいて自己選別を行い 三つの出荷組織、すなわち「渥美菊出荷連合」 ( 会員二五〇人 ) 、「施設菊出荷連合」 ( 同三〇二人 ) 、「周 年菊出荷連合」 ( 同一一一人、九一年には一六〇人に ) を生産者自らがつくった。「渥美菊出荷連合」は無 加温のキク栽培で一〇〇 % 市場出荷のグルー。フであり、「施設菊出荷連合」は八か月間出荷可能な栽 培体制をもち一〇〇 % 市場出荷しているグループである。 そして、産地として最も重要になってきているのが「周年菊出荷連合」である。以下このグループ について紹介しよう。このグルー。フはキクを周年出荷できる若手 ( 平均三七歳 ) のキク専作経営の集団 であり、会員になるには「秀芳の力」という品種の白色と黄色のキクを一〇月 5 六月の期間に八か月 以上生産し、また「精雲」を六—一〇月の期間に三か月以上生産し、年間を通じて一一か月以上出荷 150

9. フラワービジネス

月から始めてこの一年の間に、リフォームのために預かった数が約二五〇〇鉢。根腐れをおこし、す でに手遅れのものなどはリフォームを断るが、それらを含めれば、持ち込まれたのは五〇〇〇鉢にも なるという。リフォームの内容は、育ちの悪い株を取り除いたり、土の入れ替えなどしながら一二 5 一六か月間管理するもので、料金は一株四三〇〇円からだという。このようなシステム、ビジネスが あれば、贈るほうも安心であろう。 最後に指摘したいことは、消費者自身も、花に対して「目が肥えてきた」ということである。花へ しいものを見分け、それを欲しがる消 の関心も高まり、専門的知識を身につけたマニアも相当いて、 費者も増大してきた。九一年二月に東京ドームで開かれた「世界ラン展」には、長蛇の列ができ、入将 場するだけで一 5 二時間もかかるという盛況ぶりであったことをみれば、消費者の花へのレベルの高ス ネ ジ さを知ることができる。 花は大衆化する一方で、高級化も進みつつあり、消費のあり方も多様化し、こうした傾向への業界一 ワ の能動的対応いかんが花消費の将来を決めるであろう。また、「五〇〇円あっても一万円あっても花ラ フ を買う . ような生活環境の形成も必要である。花の消費水準が「生活大国、の成熟度合いを示すこと 章 になろう。 第

10. フラワービジネス

一方、一般家庭以上に消費の伸びが顕著な業務上の花消費をみると、ここでも生活全般の高級志向 を背景に、結婚式やパーティ 、イベントなどの装飾用として、華やかさを演出するために大量かっ 豪華に使用する傾向が強まっている。またデパ 1 トなどでも、後述のとおりフロアアレンジメントの ためにフラワーアレンジメントを行い、売上げ向上の手段にまでなっている。さらにオフィスの O 化に伴って、息抜きを兼ねた緑空間を設置して快適なオフィス環境をつくり、業務成績向上の一助に している。こうして花消費そのものがビジネス化し、業務上でも日常的になくてはならないものに なってきている。 ( 2 ) 高級花と大衆花へのニ極化 業務用やギフト用を中心とした高級花への人気は依然として高い。ギフト用ではせつかく贈るのだ から「豪華な花、可憐な花を。との思いがあるし、業務用でもやはり豪華にみせようと高級花が志向 される。 『需要動向調査報告書』によれば、好きな花を聞いたところ ( 個人アンケート・ 複数回答 ) 、最も多い のが。ハラで四九・一 % 、次いでカスミソウ二〇・七 % 、キク一四・七 % 、ラン一三・四 % 、シクラメ ン一一・七 % という結果が出た。 ハラ・カスミソウ・キクは、相対的には価格の高い部類の花である。ラン類やシクラメンは高級花