がある ( 後述 ) 。 しかし、最近ちょっとした異変が起きている。すでに述べたように、セルフ売りの増大である。大 手スー パ 1 が店内にフラワーコーナーを設けて、食品を買うついでに花も買ってもらおうというもの である。これは「花は花屋さんで買うもの」という意識、購買スタイルを崩すことを意味するだけで なく、「花屋さんの花は高い」という消費者の意識をも崩し、花消費増大につながるものである。 もちろん、花屋さんでのたとえばギフト用などの高級花の販売も必要であり、小売全体としては、 求作花屋さんのような花専門店と量販店への二極化流 がて が進むにちがいない 。この量販店の薄利多売の産 もう ) 形態はまた、花流通全般に影響を与えすにはおき 安はタ の束、 セかないであろう。すなわち、量販店による大規の 段花通 値の 流模単位流通は、産直のメリットあるいは大規模日 は用 花り 花卸売市場のメリットを生かして流通コストを下大 レ東げることができ ( このことが大産地形成・大規模 章 もセ 卸売市場開設を促進 ) 、小売店へのコスト低下圧 っ 第 力となるだけでなく、その流通の増大は市場と にれる 内られ 室めら産地との直接的な結びつきを弱め、公正な取引
ただし、大都市近郊の切り花農家の場合には、地方公共団体やその他団体が行うフラワーショーや イベントに直接販売することが多く、また同様に大都市近郊の鉢物農家の場合でも直接契約、直接販 売の市場外流通が少なくない。 しかし、こうした大都市近郊の対応はともかく、花需要の高まりのなかで、産地が徐々に形成され、 そこでの共選、共販、大量出荷が可能になると、市場外流通のあり方は今後問題となろう。 さて、ここで切り花の市場流通についてもう少しみてみよう。市場流通が中心となっており近代化 されているかにみえるが、問題も少なくない。第一には、卸売市場で流通する約八割は地方卸売市場 であり、その規模は零細なだけでなく、それだけに花の集荷力や価格が生産者との結びつきによって 大きく影響されるなど、前近代的な要素が存在していることである。 卸売市場は八八年現在で約三四〇ほどあるが、うち農林水産大臣認可の中央卸売市場が一五市場、 取扱高三七五億円、知事認可の地方卸売市場は二三八市場、二七五〇億円、その他卸売市場九一市場、 三四五億円となっている。このような卸売市場の零細性を反映して、卸売業者も買受人も零細で、そ のため前近代的な商習慣が支配的となっている。もちろん、産地が本格的に形成されていないという 。こうした状況を崩す契機となった大田市場花き部の開設は、その点で大 問題があることも否めない きな意義をもっている。 農水省は卸売市場法に基づいて、八六年に第四次中央卸売市場整備計画 ( 一〇か年計画 ) をたてた。 108
九〇年九月に九市場を統合した東京都中央卸売市場・大田市場花き部の開設は、その計画の一環であ る ( 図Ⅳー 7 参照 ) 。大田市場は、七四〇〇平方メ 1 トルのセリ場、一日の都内花き流通の三分の一に当 たる一二五万本を取り扱い、花市場としては日本最大の規模を誇る。 大田市場開設によるメリット をあげれば、第一にセリの機械化による合理的・近代的取引の実現、 第二に大量安定供給による価格安定と豊富な品揃え、第三に保冷設備などの完備による鮮度・品質の 保持、第四に新品種・新動向などの情報収集の機会の拡大などである。東京都では大田市場のほかに、 通 板橋市場にも花き部の新設を計画しており ( 図Ⅳー 7 参照 ) 、九四年三月から着工の予定である。 流 こうして花の流通は、、 る産地・小市場から大産地・大市場・大量流通に大きく変わろうとしている。産 生 ここで重要になってきたのが仲卸の機能と花流通情報である。 まず仲卸機能の重要性である。大田市場のように取引単位が大きくなると、これまでのように少量の ・多品目を扱う小規模な小売店のセリ参入が非常にむずかしくなるばかりか、点在していた卸売市場日 が一か所に統合されるために小売店は距離的に行きにくくなる。ここに小売店が仲卸を利用するメ大 花 リットがある 章 さらに、、 売店は電話やファックスでも注文できるようになり、保冷車をもった仲卸が店先まで配 4 達してくれるため、鮮度・品質の点でも優れている。また、仲卸は生産者と小売店の間に立ち、作柄 や需要動向など生の情報を提供できる位置にあり、花の消費促進にも重要な役割を果たしている。た
ち約半分はアールスメア市場に集中している。 卸・輸出業者の業務の仕方には三種類ほどある。一つは国内卸専門と国内外の両方を行う企業、二 つは買手の注文によりセリ市場で買付けだけを専門に行う仲買人、もう一つは自分の店をもたずにセ リ市場で買い入れた花き類をそのまま車に積み、ドイツ、フランス、イギリスなどの小売店に卸すラ インダイダーである。 小売では、これら卸業者から仕入れたり、直接自分でセリ市場で仕入れたりして販売するが ( 八八 年の小売総額は一八億ギルダー ) 、 小売販売の方法にはおおむね三種類ある。一つは、企業数三九〇〇、 販売店舗数四五〇〇、就業人員数一万四五〇〇 5 一万五〇〇〇を有する小売店での販売、二つには、 情 事 企業数・販売店舗数二〇〇〇、就業人員数三〇〇〇 5 三五〇〇の移動店舗での販売、そして三つには、 花 企業数五五〇、販売店舗数五六〇、就業人員数三五〇〇—四〇〇〇のガ 1 デンセンターでの販売であ 、カ や る。このほかスー ーマーケットやガソリンスタンドでも販売されている。 華 の これらのなかで販売シェアの最も高いのが小売店で、小売総額一八億ギルダーのうちの約五割を占界 世 め、次いで移動店舗が二 5 三割、ガーデンセンタ 1 やス 1 ーマ 1 ケットが各一割となっている。ま 章 た切り花の種類では、バラが最大の売上高を示して四億八一五五万ギルダー、二位がキクの四億二五 第 八〇万ギルダー、三位がチュ 1 リツ。フの一億九八三九万ギルダ次いでカーネーション、フリージ ア、ガーベラ、ユリの順となっている ( 八六年 ) 。
あり、図Ⅲー 1 のとおり、球根試験場は花き園芸評議会から予算の五割を助成されている。だから、 たとえば消費需要の高い品種の開発、その品種の大量増殖技術やウイルスフリー種の開発など、生産 者や輸出業者に直接役立っ研究が行われる。 飛躍的な発展の第二の要因は、花の鮮度保持が徹底的に行われている点であろう。生産者が卸売市 場の周辺に集積しているという点だけでなく、輸送もきわめて迅速で鮮度保持のためのさまざまなエ 夫がある。これによって、輸出しても輸出先の国産ものに優る鮮度と品質を保持し、輸出の伸びにも つながっている。 生産者はまず収穫時に、鮮度保持のために剤で前処理を行う。この前処理は、卸売市場の規情 定で、それが必要な品種と前処理が奨励されている品種とがあり、これを市場の品質管理部が定期的花 に検査して、生産者の処理の実行を確かめている。このようにして収穫された花きは、市場の規格にカ 合った姿にされて水入りのポリバケッまたは段ボール箱に人れ、荷が多い場合には台車で出荷される。華 の 市場では、日本の大田市場でも採用したコン。ヒューターを使った機械式のセリで、生産者から出荷さ界 れた台車のままで市場の予冷庫からセリ場へ、そして保冷庫に移動し、直ちに取引業者に引き渡され 章 る ( セリ落としてから引き取りまで一五分 ) 。こうして国内ではその日のうちに小売店頭に並べられる。 第 輸出用の場合でも、たとえばヨーロッパ各地への輸出では、高速道路網を利用した周到な輸送シス テムによって、その日の午後には花屋さんの店頭に並ぶといわれている。日本などへの輸出では、直
以上のようなリスクや問題点があるが、消費者の需要に応え、高収益を可能とする栽培の施設化は、 施設の高度化を伴っていっそう進むであろう。 三合理化と近代化が進む花き流通 ( 1 ) 再編近代化される花き市場 通 流 これまでにも宅配、セルフ売り、貿易など、流通に関して部分的にみてきたが、ここでは総体とし産 生 て花の流通をとらえ、いま何が起きているかをみることにしよう。 生産者が出荷した花きは、さまざまな経路をとおって消費者の手に届く。たとえば、花木類は植木の 業者等の注文に応じた産地取引が中心で、昭和四〇年代に植木市場ができたが、流通量は一〇 % 程度日 といわれている。芝類もほぼ同じで、産地の生産組合や卸業者が集荷して、造園業者や小売店に流れ、大 花 ほとんどが市場外流通である。球根類も芝のように集荷され、種苗業者や小売店、あるいは産直、ま 章 た切り花産地への産直が流通の中心である。 第 しかし、市場外流通ばかりではない 。これと対照的なのが切り花類、鉢物類である。切り花では九 〇 % 以上が、また鉢物では八〇 % が卸売市場に出荷され、図Ⅳー 6 のように流通する。
そ の 他 ナワ」ならびに「大城物産」と提携してバイオに進出、コチョウランの成長点培養技術を奇形・ 変異なく商業的に確立。生け花学校も開校。 日航商事【「日本航空」の子会社の同商事、八九年四月より花きの輸入業務開始。アメリカ・東南アジア・ オセアニアからカーネーション、カスミソウ、マーガレット、ディジーなどを輸入し、卸市場を 中心に阪売。 伊藤忠商事 . イタリアで製品化された枯れない植木を、八九年一一月より販売。生花の自動販売も開始。 ・フローラ」を設立、切り花や球根の輸入・卸を開 三菱商事】八九年四月、花の専門子会社「エム・シー 始。 丸紅【九〇年早々、花卸専門会社と共同出資で「フローレ幻」を設立、切り花などの卸売業に進出。 トーメン【全額出資で輸入販売の子会社「トーメン・フローレックス」を設立、九〇年四月より営業開始。 オフィスや店舗用に水耕栽培の観葉植物を販売、家庭用に。ハラやキクなどの切り花とチュー ツ。フ球根の輸人販売。バイテク応用の苗開発にも取り組む。 日本石油】多角化の一環として、、、ハイオ技術を応用してできた新品種のセント。ホーリアを、小売価格一〇〇 〇 5 五〇〇〇円程度で、九〇年春より販売開始。
といってもいいだろう。ちなみに、『東京都地方卸売市場年報 ( 花き編 ) 』 ( 平成元年 ) で平均単価をみる と、切り花全体では五二円に対し、バラ七六円、カスミソウ九四円、キク五五円、ラン類一四九円、 また鉢物全体の平均単価は五四二円に対し、ラン類二〇六一円、シクラメン一〇六七円であった。こ のような「高級花、に人気が集中している。 しかし、花や緑が日常的になるためには、高級花とともに大衆花の供給増大も必要である。「ゆと る り「うるおい」「やすらぎ」を求める新しいライフスタイルに合わせて、花が日常品としてより身近 なものになるには、値段も重要な側面であり、高級花だけでは需要に応えられなくなったのも事実でを ン ある。 レ ところが、小売店は消費者のニーズに応えていない面がある。家庭個人消費よりもギフト用や業務 用の需要が伸び、かつ高級花は販売単価が高く高収益となるために、小売店の多くは珍品種、高品質費 の高級花志向をとっている。しかし、家庭用の花も、さらに値段が安く、日持ちもよければ、個人消一 一フ 費はもっともっと伸びる可能性がある。 フ 先の『需要動向調査報告書』によれば、切り花を「自宅用に買ってくることはない」と答えた人 ( 八 章 一・三 % ) 、次いで「値段が高い , 三人 ) の理由で最も多いのが、「枯れてしまうのでもったいない」 ( 三 第 ( 二八・九 % ) 、「子供が小さいので花瓶を倒す」 ( 二六・五 % ) となっている。また『同報告書』の個人 アンケート ( 二一六八人・複数回答 ) では、「切り花は値段が高いと思う」と答えた人が五三・四 % にも
出荷場の冷蔵庫で五℃・四時間保管予冷し、出荷時に発泡スチロールの出荷箱に蓄冷剤と乾燥剤を入 れて出荷。高品質・鮮度維持がコスト高を十分に償う。 最近注目を集めているのがバケッ流通。生産者段階から、水を張った。フラスチックの。ハケツに切り 花を入れて、出荷、輸送、小売販売まで流通させるもので、すでにオラノダでは一般化しているもの である。メリットは何といっても切り花がつねに水を吸えるので鮮度が保てること、市場で買参人が セリ前に花の下見ができること、生花店での水揚げが省略できることなどである。卸売会社「フラ ワ ] オークション・ジャパン」は、この流通を本格的に広めようと、北海道月形町農協、長野県大北 農協、神奈川県秦野市農協、沖縄県経済連などとともに試験的な取り組みをしている。これで運ばれ た切り花はすべて約一割高でセリ落とされている。 氷温輸送も鮮度維持の一つの手段である。これは野菜、果物、魚介、肉類などですでに実施されて いるが、凍る寸前の温度にして呼吸量を著しく抑えて鮮度を維持するものである。生ものが生ものと して正当に扱われるわけである。たとえば、熊本県鹿本農協ではキクの輸送にこの方法を利用し、鹿 児島県沖永良部花き流通センターではグラジオラス、テッポウュリ、小ギクなどに利用している。 鮮度保持剤の利用・開発も盛んになってきた。一般的には剤 ( チオ硫酸銀 ) が使われている。 最近新たな鮮度保持剤も開発された。「協和発酵」では ( シスプロ。へニルホスホン酸 ) が、花枯れ の原因となるエチレンの作用を抑制する効果のあることを発見した。このを切り花の収穫後に 116
とえば、仲卸業者二〇社で結成した「大田市場花き部仲卸会」は、会員相互の情報交換、共同イベン トの開催、産地への売れ筋情報の提供などを行っている。 第二に花流通情報の重要性である。花需要の増大とともに、市場や農協・県連における事務量も増 大し、その迅速な処理による産地の精算事務の迅速化、生産者・市場・小売店の情報交換がこれまで 以上に求められる。これに対応して、長野、静岡、千葉、愛知の経済連と全農で構成する「花き四県 連協議会」が中心となって、産地と市場を直結する「花き流通情報システム」を 通 開発した。このシステムは二種類あり、は市場から産地への市況等の情報を通知し、Ⅱ 流 は産地から市場へ出荷量を通知するものである。これによる最終的効果として、小売価格の低下と花産 生 消費の促進が期待されている。 花 の ( 2 ) 一本一〇〇円のバラが五〇〇円になる不思議 本 日 国 生産者が一本一〇〇円で出荷した。ハラは、前述のような流通を経て、小売店では三〇〇 5 五〇〇円大 で売られているのが普通である。なかには、七〇〇円にもなっているものもある。高くしないと売れ 章 ない店もある。このような高級物を扱う小売店の社長は、普通べンツに乗っている。しかし、「花屋で 4 蔵が建った」という話もあまり聞かない それもそのはず、花の小売店は一般的には零細である。この零細性がまた、花を高くしているのも