第三章世界の華やかな花事情 「自然とテクノロジーの調和フラワービジネス の躍進をめざして」がテーマの ' 91 東京フラワー ショー。海外 15 か国も参加して“珍しい花”に 注目が集まった。 ( 東京・晴海 )
やぐちよしお 矢ロ芳生 ( 本名 : 矢ロ克也 ) 1952 年 7 月 1981 年 3 月 1981 年 4 月 現 著 編 訳 著 在 圭 圭 圭 栃木県生まれ 東京大学大学院修了 , 農学博士 ( 東京大学 ) 国立国会図書館入館 調査および立法考査局・農林環境課勤務 昭和 63 年度より農政審議会専門委員 東京農工大学・島根大学・名古屋大学の非 常勤講師歴任 『現代蚕糸業経済論』農林統計協会 1982 ( 日本農業経済学会賞 ) 『食糧はいかにして武器となったか』日本 経済評論社 1986 『食料戦略と地球環境』日本経済評論社 1990 ほか 『産業構造調整と地域経済』農林統計協会 1990 E C 委員会編『条件不利地域農業をどうす る』農林統計協会 1991 ほか フラワービジネス 平成 4 年 1 月 15 日第 1 刷発行◎ 平成 4 年 4 月 20 日第 2 刷発行 法人 発行財団 発行人関 著者矢 定価はカバーに表示 してあります。 ロ芳生 英 農林統計協会 東京都目黒区目黒 2 ー 11 ー 14 ( 大鳥ビル ) 郵便番号 153 電話 03 ( 3492 ) 2 7 ( 代表 ) 振替東京 9 ー 70255 PRINTED IN JAPAN 1992 落丁・乱丁本はお取り替え致します。 ISBN4 ー 541 ー 01577 ー 3 C3061 統計印刷工業
四九五〇 ) 4 、 6 っ / ワ】一 .0 8 っ / / 1 8 8 0 0 / 8 -4 東京・元麻布「ザ・ロンドン・スクールオプフラワーズ」 ワけ -4 冖 / 8 1 1 0 一つ 0 っ 0 っ 0 0- 8 0- 0 1 0 っ 0 ワ」 -4 ワ 3 8 1 -4 「三井物産」と「花大」の共同で設立 【 0 っ乙行 / -4 L.n 尸 0 ワ 3 / 、、つ 0 【 0 っ 0 00 / ー、 L.n 1 した「・フローラル」が英国風 っ 0 っ 0 っーっ 0 っ 0 っ 0 00 「 / -4 / -0- 0- 0 0- 0 0- 0- 0 0 0 フラワーアレンジスクールを展開。五 校校 校校 玉阪 本戸 年間で東京・大阪・名古屋に五校を 埼大る 神 オープン予定。九〇年一〇月、東京・ を ズ校 ジ 学 ン 元麻布に第一校開校。一クラスは一五 レ ジワ門 ツルラ専 人で二年間の学費は一〇〇 5 一二〇万 の 費 円、半年ごとに一三五人を募集。校長一ワア ンカルア園 消 イ・フ ス テ にはイギリスの新進デザイナー フ一ザイ テ ワ レ 一本ワデテドン ッカー女史を迎える。ワ フ ラュン子ホ ワミロ知 ( 【〇三ー三四五六ー六〇〇一 ) フ学 章 なヤフコサ美ノ 「花の国のアリスフラワースクール」】生花業の「ロイヤルフ主ビ ミ袋苑ロ。ク 第 マ池学野日テ ラワー」は、名古屋・横浜・東京など 〇〇 全国一〇か所にフラワーコーディネー
八教授によれば、毎日主婦や子供が地元で動き回る範囲、すなわち三〇〇メートル四方での緑の充足 度を調査したところ、図ー 2 のとおり、少なくとも五〇 % ないと緑充足意識は満たされないし ( 図 の 0) 、家の周辺でも四〇 % は必要 ( 図の ) という結果である。 類似の調査では、七二年に東京都都民室が実施した「脱東京意識調査、に基づいて、品田譲氏が再 集計したものがある ( 『都市の自然史』中公新書、一九七四 ) 。これによれば、身の周りの緑地率が五〇 % 、 なかでも三〇 5 四〇 % 程度になると、東京脱出要求意識が急速に高まるという。 このように、農地や緑や水は精神的意味においてきわめて重要である。グリ 1 ン・ミニマム五〇 % を満たすためには、公園緑地だけでは困難であるばかりか、防災上も問題が多い。だから、農地、農将 業もまちづくりにビルトインする必要がある。こうして地域住民にとっての肉体的・精神的安定性、ス 快適さの確保が可能となる。そして、グリ 1 ン・ミニマム五〇 % の中身をどう充実させるかが重要とジ なる。 ワ 全国各地で花と緑のあるまちづくりが盛んになってきた。転作田の利用、環境美化など、必ずしもラ フ グリーン・ミニマム五〇 % を意識したものではないが、環境質の充実という点では大切な取り組みで 章 ある。いくつか例を示そう。 第 栃木県南河内町】「転作田をふれあいの広場に」と、転作田二・四ヘクタールを住民に開放、菜の花・マリー
③鉄鋼・電気・ガス業 新日本製鉄】同社の「堺製鉄所」は、セントボーリアの鉢植えを販売。栽培能力は年間一五万鉢、フル生産で 国内出荷量の二 % を占める。 z 【子会社である「鋼管工業」が、八四年一〇月にコチョウランの栽培開始。年間切り花一万七〇〇 〇 5 一万八〇〇〇本、鉢物七〇〇〇鉢を予定。 四国電力】八九年夏、徳島県内の農家と協力してコチョウランの冷房栽培を開始。冷房栽培は、夏に一株三 輪程度つける花を冬並みの一〇輪にする技術。 東京ガス【多角化の一環として八九年六月設立された全額出資子会社「グリーンテック東京」は、。ハラの宅 配のほかに、九〇年秋から海外で切り花と果実の生産も開始。マレ 1 シア、グアム島で栽培から 日本への輸入までを手掛ける。「東京ガスーの首都圏三〇〇のサービスセンターを利用して販売。 、ーミニバラを開発。 協和発酵】成長点の無菌培養によって、世界最小のスー 三井石油化学工業 . バイオ技術を応用してテッポウュリを量産し、八九年より試験販売。 朝日工業【八八年二月よりコチョウランのクローン苗増殖事業開始。生産農家から母株の提供を受けて培養 し、増殖した苗を再び生産農家にわたすシステム。
もちろん、どんな花でも食べられるというわけではない。スズラン、トリカプト、クリスマスロー —ー 3 に掲げた花でも、鑑賞用に栽培されて ズ、フクジュソウ、シキミなど有毒な花もある。また表 いる農薬の散布された花は食用には適さない。農薬や化学肥料は使わない有機栽培によって生産され なければならない。八九年の東京青果扱いの入荷量は約七トンで、需要は落ち着いてきている。 レストランや首都圏の食品売場を中心に販売されているサラダ用の各種エディ。フルフラワーのほか に、次のような商品がある ( 九〇年春 ) 。 東京赤坂「リビエラ」【赤・黄・紫のナスタチウム 若い女性に好評。 大阪「不ニ家」】赤いミニバラ、カーネーション、ランを豆腐に埋め込んだ「花豆腐」 ( 一丁二〇〇 円 ) 。一日に五〇〇丁は売れる。 山梨・河口湖町】町おこしの一環として、角砂糖の上に特殊加工した ( ーブの花びらを乗せた「 ( ーブ ・シ = ガー」 ( 二〇個五〇〇円 ) 。紅茶に入れると砂糖が溶けて花びらが浮く。 このように、古くからある食用花と違って、「エディブルフラワーの魅力は、その花の美しさ、いき いきした色の鮮やかさ、食卓を一瞬のうちに幻想的な華の舞台にする盛りつけの楽しさ、調理方法の 、パンジーなどの花びらを飾ったムース ( 一個三五〇円 ) 。
九〇年九月に九市場を統合した東京都中央卸売市場・大田市場花き部の開設は、その計画の一環であ る ( 図Ⅳー 7 参照 ) 。大田市場は、七四〇〇平方メ 1 トルのセリ場、一日の都内花き流通の三分の一に当 たる一二五万本を取り扱い、花市場としては日本最大の規模を誇る。 大田市場開設によるメリット をあげれば、第一にセリの機械化による合理的・近代的取引の実現、 第二に大量安定供給による価格安定と豊富な品揃え、第三に保冷設備などの完備による鮮度・品質の 保持、第四に新品種・新動向などの情報収集の機会の拡大などである。東京都では大田市場のほかに、 通 板橋市場にも花き部の新設を計画しており ( 図Ⅳー 7 参照 ) 、九四年三月から着工の予定である。 流 こうして花の流通は、、 る産地・小市場から大産地・大市場・大量流通に大きく変わろうとしている。産 生 ここで重要になってきたのが仲卸の機能と花流通情報である。 まず仲卸機能の重要性である。大田市場のように取引単位が大きくなると、これまでのように少量の ・多品目を扱う小規模な小売店のセリ参入が非常にむずかしくなるばかりか、点在していた卸売市場日 が一か所に統合されるために小売店は距離的に行きにくくなる。ここに小売店が仲卸を利用するメ大 花 リットがある 章 さらに、、 売店は電話やファックスでも注文できるようになり、保冷車をもった仲卸が店先まで配 4 達してくれるため、鮮度・品質の点でも優れている。また、仲卸は生産者と小売店の間に立ち、作柄 や需要動向など生の情報を提供できる位置にあり、花の消費促進にも重要な役割を果たしている。た
図Ⅵー 1 自由になる 1 万円の使い途 ( 主婦アンケート , 複数回答 2 つまで ) 60 回答数 = 600 46.0 276 45.8 ・ 275. 4 22.3 134 : : 16.8 16.2 97 101 11.3 がある。 東京都民銀行が実施したアンケートで 「最もうれしかった贈り物は何か」と尋ね . 花を買う たところ、第一位が花、次いで指輪、洋服 であった。これに対し、中小企業事業団が を買う クセサリ 実施した主婦アンケートで「もし自由にな 化粧品やア るお金が一万円手に入ったら何に使うか」 貯金する と尋ねたところでは、図Ⅵー 1 のとおり、将 の ス 「洋服を買う」、「美味しいものを食べる」 買う がそれそれ四六 % で最も多く、次いで「本ジ 本や雑誌を や雑誌を買う」「貯金する、と続き、「花を一 のを食べる 買う」は一一・三 % で最下位の回答率でラ 美味しいもじ 同 あった。 章 羊服を買 - フ 花がオランダのように家庭の日常生活必 第 表 需品となるためには、私達の生活全般に 7 資 「ゆとり」感が定着するような状況が必要 無 効
ることができる。 ともかく、フラワービジネスの将来が明るくすばらしいものになるかどうかは、生活者が「ゆと り、を享受して「花をとおして文化を創る」ような社会をどう創り出すか、またそうしたことに業界 がどう能動的に対応するかにかかっているだろう。 ( 2 ) 花と緑のまちづくり 「花博」を契機に、全国各地で住民参加の「花とム 緑のまちづくりーが始まっている。まちづくりは文ニ 化を創る一つの行為である。まちづくりは居住地域 ン での便利さの追求も大切であるが、同時に「ゆと一 グ り」「うるおい」「やすらぎ . などを感得できるよう な環境質が充足していることも大切である。 この環境質を充足させるには、農地や緑や水とⅥ いった面的空間的広がりが、居住地圏域 ( 三〇〇メー トル四方 ) ごとに五〇 % は必要であるといわれてい る ( グリーン・ミニマム ) 。東京農業大学の進士五十 ↑緑充足度 0 自然面率 ( % ) 資料 : 進士五十八「緑のまちづくり学」学芸出版社 , 1987 , p. 47 による。 注 : A は住居スケール , B は近隣スケール , c は地 区スケールにおける緑充足意識と自然面率の相 関関係を示す。 174
ートのフラワーアレンジメントだけでなく、一流ホテルやファションビルなどでの このようなデパ アレンジメントも増え、さらに展示会場、ビルのオープニング、クリスマスの催しなど、幅も広がっ てきている。これら催しの一件当たりの料金は、最低でも一〇万円以上、最高では三〇〇〇万円とい うものもあるといわれている。これらはすべて会社のイメージアツ。フなどの手段として本領を発揮し ている。 こうしたフラワ 1 デザインの急速な利用範囲の拡大に伴って、フラワ 1 デザイナー養成のビジネス 分野も急成長している。フラワースクールに関するものを紹介しよう。 東京・原宿「デ・マスターフラワースクール」【オランダ人の専任講師を迎え、オランダ流の花のアレンジ・ デザインを教授。一クラス一五人制で、三か月の短期集中コ 1 スで本場のテクニック をマスターできる。講師資格を目指す若い女性に人気。【〇三ー三七九七ー のシーズン性をいっそう強調するための手段として導入。 「有楽町西武」】館一階の宝飾品フロアにギフト対応の花売場「花季 ( はなごよみ ) 」を設置。華やかな 潤いのある宝飾売場にするとともに、宝飾だけでなく花を添えた優雅なギフトにする 一石二鳥の考え。