おわりに・ 筆勢、筆圧感の状態 ( 自然な記載文か ) 検査用機材と検査の準備 / 4 文字を分析する ( 分析識別 ) 文字形成上の字画の組み方 ( 字画構成 ) 文字体形・外周形について / 剏 7 字画線の形態 ( 一画の書線は : : : ) 書法類型の分類 ( 類似の型 ) / 川 慣習的な誤字、略字など / 川 川不明文字の鑑識 ( 多賀城出土の漆紙文書 ) 140 126 137 146 ノ 54
と書いてあるだけだった。 さらに、「筆跡鑑定ーの項は、せいぜい三頁ぐらいの記述で、 A 」、つ、力し 代 塒「筆跡は心理・物的条件によっては字体に若干の変更を見る。偽造や投書のような韜晦 草筆跡では、原形を止めない程に変形されるので、その鑑別は容易ではないー 章 「しかし各人の筆跡は多年習得の結果であるから、特殊の個性を含蓄している」 第 「鑑定に当っては〈形態、筆意、残存習癖、並びに潜在特徴〉について仔細に研究すれ ばその真相を補足することができる」 「筆跡の拡大写真はよく、筆意、特徴を強調し、尚肉眼に映じない部位も現出すること が少なくない。経験によれば、疑いある筆跡が写真によって容易に解決したものもある」 と、写真を用いる効用を強調しているほか、二つの鑑定事例をあげているが、その内容 は、あまり詳しい説明はなく、分かりにくいところもある 一般的にみて、「足跡・印影」などは、「靴底意匠ーとか「印面形象」など、概ね、定 形的なものであり、いつも同じような形を残している。必ずしも鮮明なものばかりでは ないが、その痕跡に、破損痕や磨耗状態などの特徴的なところがあれば、それを的確に
第章草創時代 0 なども、それぞれ「ロ・△・ 字の外周をなぞって一廻りして囲んでみると、「因・ , ▽」状に外周形状を形造っていることがある 配字されている並び方のほかに、おもな漢字を目で拾いながら調べていくと、ある文 字が、同じような「ロ・△・▽ー状にまとまりなから、いつも同じようにくりかえされ 一一ていることも、ひとつの「書きぐせ」として取り上げてもよいと思う。 7 字画線の形態 ( 一画の書線は : : : ) ここでは、「一画一筆ごとの書線の形状」について考えてみる。実際には、一画だけの 書線の長さや曲りの状態がどうだからといって、それが極めて有力な手がかりになるこ とではないのだが : ・ きご、つ 毛筆揮毫を書道上の審美的な観点からとらえるならば、例えば、「横画線は太く筆勢感 があり、起筆部では強く、一旦心もち止め、然るのちゅっくりと僅かに右上がりに運筆 して伸び、右側終筆では筆圧を残しふくらみ、少し下向きに曲りながら止筆している」、 などと評することになるだろ、つ これが、硬筆ペンですらすらと軽いタッチで書かれている時、或いは、一画一筆が丁
第二章草創時代ー 6 筆跡がこうした「資料条件 , を備えているならば、「筆跡鑑定」は確度の高い「結果 , が得られると思、つ。 2 筆勢、筆圧感の状態 ( 自然な記載文か ) 字を書くとき、紙面にペンが当たるときの圧力を計るのに「筆圧計」というのがあっ て、おもに研究用に使われている 例えば、計量台のようなものに用紙をセロテ 1 プで貼り付けて、ポールペンなどで大 きめの文字を書くと、一筆ごとに針がふれて、二〇〇グラムとか二五〇グラムといった 数値を示すが、これを精密にした機械が筆圧計で、グラフになって記録される。 しかし、紙に書かれた文字から筆圧を計る方法は見当たらないし、筆速を計る方法も 分からない なぜ、この点に触れるかというと、「異常」な筆跡かどうかを、その書きぶりからチェ ックするためである 「筆跡」が、普段どおりに自然に書かれたものかどうかは、その記載文字に表現されて いる強さ、速さ、丁寧さ、乱雑さ、あるいは配字などの状態を観察して認識をするのだ
113 筆跡のことⅡ 体姿勢』等を比較対照し、現物よりも極めて大なる写真印画を作成し、肉眼にては看過 され易き微妙なる筆跡特徴に着意し、これを比較検討する」 「更に、字画線を分解し、断片的線画、及び点画となし、その特徴、即ち『傾斜・曲 り・震え・肥痩・癖・始、終筆部の状態』を検査し、一致共通せる部位あるや、相違離 反する個所ありや、を総合的に鑑識し、異同判定の断案を為すものとす・ : という内容であるが、これらの趣旨は、現在も活きている基本論で、ここらから全てが 始まっていると言っても過言ではない。 その後、半世紀近く経過するなかで、「筆跡鑑定」は、警察庁科捜研や、各都道府県警 察の「鑑識」の中で育成され、その間、研究発表会などを通じ、各論的な細かい研究が 積み重ねられてきている
このような条件が整っている文書資料をもとに検査して、その筆跡の中に特異な筆致 ( 筆づかい ) を認めたならば、 ①「それは一般的に、その個人内で固定的なものとみられるものであるか」 ②「誰にでも、稀には時々起こるものであるか」 ③「特定個人内でも、例外として起こる偶発的なものであるか」 などの観点について考え、 ①については、大体特徴的なものとしてとりあげることができる これに対し②の点については、同じ人か書いたという証明にはならない。 また③については、そのような筆致が一方にあって、他の一方には存在しないという 研だけの理由で、直ちに異筆との証明にはならない。 ち の というように、筆跡内容を概観し、「勘案」すべき要点項目を並べている 研 捜 これには、充分な研究と経験を重ねた鑑定人が、「相当な」資料を手元においた状態で、 科 はじめて当を得た判断に至るものであり、その資料が不足のときには、決して〈異同〉 について意見を述べるべきではなく、意見を述べない勇気も必要になる。
進めてゆくことになるが、大体はこのような過程を経る。 原本の筆跡文書と、その拡大文字とを併せて調べながら、細かいところを明らかにし ていくのだが、 具体的にどのような部分に注目し、どのように解明し、それを依頼者に 分かって貰うために、どう書いたらよいかは、そう容易なことではない。 これをみると、まあ、同じ筆跡とみられるのだが、いつもこういう簡単なものばかり ではなく、拡大分類しただけで直ちに同じ筆跡や異筆などと言えるものではない。 「これは間違いないと思いますよ」と依頼者が主張する。「ほら、ここの書き方に特徴が あるでしよう」と一言う。 よく見ると、一見して何となく似ているところもある。しかし、目を転じて別な文字 を調べると、ど、つも違、つところもある 依頼者の目はそこまでは行かないで、「似ている」部分だけを強調するが、要するに 定「主観的」に観ていることが多い。 跡「筆跡鑑定」は、現認された状態の書かれた文字を、そのまま比較検査に用いてよいも 筆 のかという「記載上の条件ーの吟味も必要である 「自然に書かれた文字」であれば、素直な書体のものとして、これに内在する「書きぐ
が、さらに顕微鏡などで、書線の遅渋、震えなどを見て、自然、不自然さを判断してい る。 つまり、計測器具による実体的計測ではなく、器具を用いた拡大や写真等によってと らえ、記録するのであり、その筆跡資料における「筆勢筆圧感」については感覚的に判 断している 自然に書かれた筆跡状態であれば、そのまま「筆跡個性 ( 型 ) ーが表現されているもの と思料して比較照合を進め、もし不自然な書き方の筆跡と思われるときは、それなりの ことを勘案しながら、検査をするのが適当かどうかを考える。 検査用機材と検査の準備 鑑定するのに適当な資料条件を備えた「筆跡ーであっても、肉眼だけでは細かいとこ 定ろを見逃すおそれがある 跡そこで、正確に分析解明するためには、光学機材である写真機は勿論、電子写真複写 筆 機 ( コピ 1 機 ) 、鑑定書にまとめるためのタイプライター ( ワ 1 プロ ) 、写真照明器具、 斜光線撮影用具、フィルムや印画紙現像をするための「写真暗室」など、大きいものか
約三十分程で固まる。 こうした「足跡」は、古くから採取されてはいたものの、詳しい鑑定までには至らず、 単に犯人探しの参考にしかならなかった。 「証を得て、人を求める」という新しい法的制度のもとで、非舗装の多い地域では足跡 が残りやすい現場環境が多く、大都市よりも「良い足跡」がたくさん採取され、貴重な 鑑識資料として注目されつつあった。 すべての仕事が新しい鑑識の中で、人手も少なく、「足跡検査」も結局、自分で手がけ て鑑定をすることになり、勉強を始めた。しかしその頃はまだ、全国的な統一された 「足跡鑑定」というものは確立に至っていなかった。 自分で考えて、足跡検査を「足跡の種別・銘柄 [ 「大きさ ( 文数 ) ー「靴底の状態」「ど と こが、どのように磨耗しているか ( 個性 ) 」「破損部や修理の痕跡」などの項目に分けて 跡分析し、写真記録し、対象となる容疑者の履物底と照合し、その結果を鑑定書にまとめ 足 て報告したものである その頃の作業記録の一部を引用してみる。
81 新刑事訴訟法のこと 「防犯第一一一九号、昭和一一十一一年五月九日、警察部長から、県下各警察署長殿 ″刑事警察の運営に就いて″ 新憲法下における刑事警察については、さきに、一応指示したところであるが、 ( 中略 ) 七日に警保局長より通牒があったから、左記に留意し遺憾なきを期せられ度い ( 文章が 硬いので、以下、少々分かりやすく変える。 ) 行政検束について ・犯罪捜査には利用しないこと。 ・検東が必要の状態が、何らかの犯罪に相当するときは、必す、刑事手続きによるべ きこと。 ( つまり、行政検東をして、犯罪捜査上の取調べなどをしてはならない ) ・検束場と、被疑者の留置場とは区別し、或いは簿冊上も明らかに異なる扱いをする こと 2 違警罪即決例廃止に関する経過措置など 裁判所法施行法第一条をもって廃止されるが、その施行前になされた処分は、同法施